特許第5773408号(P5773408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773408
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】切り屑流れを改良するための工具
(51)【国際特許分類】
   B23F 21/12 20060101AFI20150813BHJP
   B23F 21/22 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B23F21/12
   B23F21/22
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-507450(P2010-507450)
(86)(22)【出願日】2008年5月7日
(65)【公表番号】特表2010-526674(P2010-526674A)
(43)【公表日】2010年8月5日
(86)【国際出願番号】US2008005870
(87)【国際公開番号】WO2008140723
(87)【国際公開日】20081120
【審査請求日】2011年1月20日
【審判番号】不服2014-4329(P2014-4329/J1)
【審判請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】60/928,611
(32)【優先日】2007年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタットフェルト、ヘルマン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フォスラー、アラン、イー.
【合議体】
【審判長】 石川 好文
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−75974(JP,A)
【文献】 特表2002−542953(JP,A)
【文献】 米国特許第5662514(US,A)
【文献】 実開昭53−87991(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有し、円の周りに沿って互いに配置される複数の歯車切削用の切刃を含む、歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドにおいて、前記複数の歯車切削用の切刃は、その間に隙間を有する一組の第1の切刃(80:94)第2の切刃(82;92)を連続して複数含み、
前記第1の切刃が、
刃先を有し、前記カッタ・ヘッド上の基準線(B)に対して前方側の横すくい角(γ)で形成される前面であって、前記基準線(B)は、前記回転軸から半径方向外側に前記第1の切刃の前記前面まで延在し、前記第1の切刃の理論上の基準前面を画定する、前面と、
背面と、を有し、
前記背面(D;D)が、背面側の横すくい角(ε)と共に前記基準線(B)に対して平行ではなく傾斜して形成され、この横すくい角(ε)によって前記連続する第2の切刃との間の隙間(86)を、前記カッタ・ヘッドから径方向に遠ざかる方向に広げ、
及び/又は
背面フック角(η)と共に周方向で見て前記カッタ・ヘッドの前記連続する第2の切刃の前面に対して平行ではなく傾斜して形成され、この背面フック角(η)によって前記連続する第2の切刃との間の隙間(96)を、前記カッタ・ヘッドから軸方向に遠ざかる方向に広げる、
正面フライス・カッタ・ヘッド。
【請求項2】
前記第1の切刃は内側切刃である、請求項1に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド。
【請求項3】
前記第の切刃は外側切刃である、請求項1に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド。
【請求項4】
前記背面側に形成された横すくい角(ε)は外側切刃である前記連続する第2の切刃の前方側の横すくい角より少なくとも3°大きい、請求項2に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド。
【請求項5】
前記背面フック角は3°〜8°の範囲である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド内で位置決め可能である歯車切削用の切刃(98)であって、前記切刃が、シャンク部と、該シャンク部の少なくとも一方の端部に形成される切削端部を含む所定の長さを有し、前記シャンク部が前面及び背面を含んでおり、前記切削端部が、少なくとも1つの刃先を有する前面及び背面(D)を含んでおり、前記切削端部の前記背面(D)の、前記シャンク部の前記背面に対する方向が、
長さ方向に対して垂直方向に見て背面側の横すくい角(ε)を向くように修正され、及び/又は
長さ方向に見て背面側のフック角(η)を向くように修正された、切刃。
【請求項7】
前記背面側のフック角(η)は3°〜8°の範囲である、請求項6に記載の歯車切削用の切刃
【請求項8】
回転軸を有する歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドと、前記歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッド内で位置決めされてその周りに配置される複数の歯車切削用の切刃(78、80、82)とを有する歯車切削用の切削工具であって、前記切刃のそれぞれの切削端部が前記歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドの表面から突出しており、前記歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドが、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドであり、及び/又は前記切刃は請求項6又は7に記載の歯車切削用の切刃である歯車切削用の切削工具。
【請求項9】
前記複数の歯車切削用の切刃が前記回転軸を中心に配置され、且つ、交互になっている第1の切刃である内側切刃及び第2の切刃である外側切刃を有しており、各内側切刃の背面が前記横すくい角(ε)を形成する、請求項8に記載の歯車切削用の切削工具。
【請求項10】
前記内側切刃の背面及び連続する前記外側切刃の前面が、前記歯車切削用の正面フライス・カッタ・ヘッドの上方から見て外側に開いた正の値を有する角δを形成する、請求項9に記載の歯車切削用の切削工具。
【請求項11】
前記外側切刃の前面が横すくい角を形成し、
前記内側切刃の背面側の前記横すくい角(ε)が、連続する前記外側切刃の前面側の横すくい角より大きい、
請求項9又は10に記載の歯車切削用の切削工具。
【請求項12】
前記外側切刃の背面も横すくい角を形成する、請求項9に記載の歯車切削用の切削工具。
【請求項13】
前記内側切刃の前記横すくい角(ε)は、前記連続する外側切刃の前方側の横すくい角(γ)より少なくとも3°大きい、請求項8から12までのいずれか1項に記載の歯車切削用の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月10日に出願された米国仮特許出願第60/928,611号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、傘歯車を製造するための切削工具、具体的には切り屑流れの性能が強化された切削工具を対象とする。
【背景技術】
【0003】
歯すじが湾曲している傘歯車やハイポイド歯車の製造では、使用される切削工具は、主に、正面フライスのカッタ又は正面ホブのカッタである。これらのカッタは、一般に、基部又はシャンク部と切削端部とを含む所定の長さの棒状ストック材料(例えば、高速度鋼又はカーバイド)から形成される切刃を有しており、基部又はシャンク部の一方の端部又は両方の端部に少なくとも1つの切削縁部を含んでいる。通常、複数の切刃が、切刃の切削端がカッタ・ヘッドの1つのフェースから突出するようにカッタ・ヘッドの周りに配置される。このようなタイプの切削工具は歯車製造の技術分野ではよく知られている。
【0004】
正面フライスのカッタの場合、カッタによる1回だけのプランジ加工で1つの歯溝が形成されるように、複数の切刃がカッタ・ヘッド内の所定の円の周りに配置されるが、次の歯溝を形成するためには、カッタを引っ込めて被加工物を次の歯溝位置に割出し(すなわち、間欠割出し)する必要がある。正面フライス・カッタは、通常、歯溝の内側部分及び外側部分をそれぞれ切削する、交互になっている内側切刃及び外側切刃を有する。正面フライス・カッタはまた、Gleasonによる米国特許第1,236,834号明細書、Wildhaberによる米国特許第1,667,299号明細書及びRibbeckによる米国特許出願2007/0011855号に記載されている切刃などの、歯溝全体からストック材料を除去する連続した切刃を有してもよい。所望される場合、歯溝の底部すなわち歯底部分からストック材料を除去するための1つ又は複数の「底部」切刃を有していてもよい。
【0005】
正面ホブ切りでは、切刃が互いに隣り合わせに並ぶのではなくグループを形成するようにカッタの周りに配置され、1つのグループにつき通常2つ又は3つの切刃が含まれる。Blakesleyによる米国特許第4,575,285号明細書、Kitchenらによる米国特許第4,621,954号明細書、Krenzerによる米国特許第4,525,108に記載れているような2つの刃のグループでは、刃の対は内部切刃及び外部切刃を有する。Kotthausによる米国特許第3,760,476号明細書に記載されているような3つの刃のグループでは、内側切刃及び外側切刃に加えて「底部」切刃が含まれる。歯溝の形成においてすべての切刃が歯溝を通過するほとんどの正面フライス工程とは異なり、正面ホブ切りでは、切刃の連続するグループのそれぞれが連続する歯溝を個々に通過し、グループ内の各刃により歯溝の長手部分に沿って1回の完全な切削がなされる。カッタ及び被加工物が互いにタイミングを合わせて回転することにより、被加工物の連続的な割出しが可能となり、歯車の各歯溝を連続的に形成することが可能となる。したがって、正面ホブ切りでは、切削工具による1回だけのプランジ加工で、被加工物のすべての歯溝が形成される(すなわち、連続割出し)。
【0006】
切刃は、(例えば、M2、M4、Rex45、Rex54、Rex76、T15、Rex121などの)任意の合金組成の従来の高速度鋼(HSS)又はパワード・メタル・ハーデンド・ハイ・スピード・スチール(powered metal hardened high speed steel)といったような任意適当な工具材料から作られてよく、或いは、Pグレード及びKグレードなど任意の合金組成のカーバイド硬質金属から作られてよい。切刃の磨耗表面は、例えば、TiN、TiCN、TiAlN、AlTiN、CrAlN、ZrN、CrNなどの又はその他の、市販されている任意の磨耗コーティング又は複数の磨耗コーティングの組合せで構成されるPVDの単層コーティング又は複層コーティングが被覆されていてよい(また、研磨後に再被覆されてもよい)。歯車切削処理は冷却剤又は潤滑剤を利用して行われてよく(すなわち、湿式切削)、又は、冷却剤又は潤滑剤などを一切使用せずに実施されてもよい(すなわち、乾式切削)。乾式切削処理は、通常、カーバイド材料を含む切刃を使用して行われる。一般に、この乾式切削の速度及びそれに伴う単位時間当たりの切り屑の除去量は、HSS材料を使用した湿式切削工程で得られる速度及び除去量を大幅に超える。
【0007】
上で述べたように、高速の乾式切削における単位時間当たりの切り屑の除去量は、高速度鋼を用いた湿式切削と比較して大幅に大きくなる(例えば、2倍から5倍)。連続する2つの切刃の隙間に留まることがある切り屑は、最終的には、次の切削において刃先隙間の端部(blade clearance edge)と歯の側面との間に位置する可能性があり、それにより、表面仕上げの質が低下したり、切り屑の溶着が起こったり、及び/又は、刃の損傷が酷くなる可能性がある。切り屑が隙間に留まっている場合、これらの切り屑により、その後の切削動作中に形成される新たな切り屑がこの隙間から離れることをが妨害される可能性もあり、それによりこの隙間に切り屑が蓄積される場合がある。蓄積される切り屑が増えると、切り屑はより強く互いに圧迫しあい、隙間が密着した束の切り屑で埋め尽くされる。この状態は「切り屑詰まり」と呼ばれ、多くの場合、消費電力が高くなりすぎて工作機械が自動的に止まることになる。切り屑詰まりが存在する間に切削された部分は通常は破損しており、ほとんどの場合において使用することはできない。また、切り屑詰まりは刃の切削縁部を損傷させることもあり、それにより刃が破損してしまう場合もある。
【0008】
湿式切削では、切り屑詰まりは、切り屑が蓄積されて切り屑詰まりを発生させるよりも前に切り屑を流し出すことを目的として切削油を径方向でヘッド・カッタに向けて急激に流すことにより減少又はさらには解消され得る。乾式切削では、圧縮空気を使用して切り屑を吹き飛ばす試みがなされてきた。工場用圧縮空気はコストが高く、空気流は一般に機械及び切削工程の許容騒音レベルを超えてしまうために作業環境においては否定的にみられている。圧縮空気内に含まれる水は部品を錆びさせる大きな要因であり、さらには、切刃縁部上の温度衝撃の原因となる場合もあり、それにより高温になったカーバイドの刃に微小な亀裂が生じることがある。また、流路圧力が400kPa(4バール)である圧縮空気の運動エネルギーの大きさは、ポンプ圧力が400kPa(4バール)でありポンプ量が毎分160リットルである急激な油流れより小さく、これが圧縮空気が切り屑詰まりを回避するための有効な解決策とはならない別の理由である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、歯車切削工具、特に傘歯車の切削工具での切り屑詰まりを減少させる又は解消する手法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも一部の切刃の背面がすくい角の面及び/又はフック角の面を導入することにより修正され、それにより、連続する切刃間の隙間が、切削工具から離れる径方向又は軸方向に広げられる。このように広げられることにより、切削の際に切削工具が回転することで切刃の間から切り屑を除去することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削工具が交互に内側及び外側を向いた切刃を有している、歯車製造のための正面フライス切削工程を示した図である。
図2】切削工具が、それぞれが1つの歯溝の全歯形を切削するためのものである連続する切刃を有している、歯車製造のための正面フライス切削工程を示した図である。
図3】切削工具が内側切刃及び外側切刃からなるグループを有しており、連続するグループのそれぞれが歯車の連続する歯溝を個々に切削する、歯車製造のための正面ホブ切り工程を示した図である。
図4】切り屑詰まりを軽減する手法として、刃を「突き出す」ことによって切り屑用の隙間(chip gap)の大きさを増大させる従来技術を示した図である。
図5】切り屑詰まりを軽減するためにヘッド・カッタ内の切刃を1つおきに取り除く従来技術のアプローチを示した図である。
図6】切り屑詰まりを軽減するために、切り屑用の隙間を広げるために刃の厚さを薄くする従来技術のアプローチを示した図である。
図7】切り屑詰まりを軽減するために、切り屑用の隙間を広げるために一部の刃の間の間隔を変更する従来技術のアプローチを示した図である。
図8】外側切刃及び内側切刃の配置を示している、一般的な正面フライス工具の上面図である。
図9】内側切刃の背面を修正することを含む本発明の第1の実施例を示す、本発明の正面フライス工具の一部分の上面図である。
図10】内側切刃の背面を修正することを含む本発明の第2の実施例を示す、本発明の正面フライス工具の一部分の周方向の図である。
図11】本発明の発明性のある実施例を示した、切刃の背面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
単に例として本発明を表すことを意図した添付図面を参照しながら本発明を詳細に考察する。
【0013】
図1及び図2は、傘歯車を製造するための正面フライス工程を大まかに示している。本発明の文脈では、「傘(bevel)」歯車という用語は、傘歯車として知られているタイプの歯車、「ハイポイド」歯車、並びに、「冠」歯車又は「正面」歯車として知られている歯車を含むような広い範囲の歯車として理解される。
【0014】
図1は、カッタ・ヘッド(図示せず)上で互いに隣り合わせ(例えば、円6)に並ぶように配置された内側切刃2及び外側切刃4を有する、刃が交互になっているタイプの正面フライス・カッタを示している。説明のために、全切刃2、4のうちの一部のみが示されている。切刃2、4は、12で示されている被加工物の歯溝10を形成するために矢印8の方向に回転される。内側切刃2は歯溝10の個々の内側側面14を切削し、一方外側切刃4は歯溝10の個々の外側側面16を切削する。カッタの回転中、カッタのすべての切刃2、4が被加工物の1つの溝を通過する。切刃2、4は、歯溝が最終的な深さに到達するまで被加工物12の方向へと送られる。その後、カッタが引っ込められると、被加工物は次の歯溝(例えば、18)の位置に割出しされ、切削が再開される。この一連の動作は、被加工物のすべての歯溝が形成されるまで繰り返される。
【0015】
図2は、(例えば、円6上で)互いに隣り合わせに並ぶように配置される連続する切刃20を有する他の正面フライス切削用の刃の構成を示しており、ここでは、各切刃20が歯溝10の両側面14、16を切削する。説明のために、全切刃20のうちの一部のみが示されている。図1の交互になっている刃の構成と同様に、カッタの回転中、カッタのすべての切刃20が被加工物の1つの溝を通過する。切刃20は、歯溝が最終的な深さに到達するまで被加工物の方向へと送られる。その後、カッタが引っ込められると、被加工物は次の歯溝(例えば、18)の位置に割出しされ、切削が再開される。この一連の動作は、被加工物のすべての歯溝が形成されるまで繰り返される。
【0016】
図3は歯車製造の正面ホブ切り形式を示している。正面ボブ切りでは、切刃が互いに隣り合わせに並ぶのではなくグループを形成するようにカッタの周りに配置され、1つのグループにつき通常2つ又は3つの切刃が含まれる。図3では、1つのグループにつき2つの切刃(外側切刃22及び内側切刃24)が示されている。説明のために、全切刃グループのうち一部分のみ(すなわち、切刃22、24)が示されている。歯溝の形成においてすべての切刃が1つの歯溝を通過するほとんどの正面フライス工程とは異なり、正面ホブ切りでは、切刃22、24の連続するグループのそれぞれが連続する歯溝を個別に通過し、グループ内の各刃が歯溝の長手部分に沿って完全な切り口を形成する。図3では、例えば、切刃22’及び24’のグループが歯溝26の外側面28及び内側面30をそれぞれ切削し、一方で、切刃22”及び24”の連続するグループが次の歯溝32の対応する面を切削する。カッタ及び被加工物が互いにタイミングを合わせて回転することにより、被加工物の連続的な割出しが可能となり、歯車の各歯溝を連続的に形成することが可能となる。したがって、正面ホブ切りでは、切削工具による1回だけのプランジ加工で、被加工物のすべての歯溝が形成される。
【0017】
傘歯車の製造では、上述したタイプの正面フライス工具及び正面ホブ切り用の工具は、創成工程及び非創成工程のいずれにおいても使用される。正面フライス切りの創成工程では(間欠割出し)、回転工具が被加工物内の所定の深さまで送られる。この深さに到達すると、工具及び被加工物は、あたかも被加工物が理論的な創成歯車と噛み合って回転しているかのように、創成転造(generating roll)として知られている所定の相対転造運動をするように共に回転される。この理論的な創成歯車の歯は工具のストック材料除去面によって表される。歯の歯形形状は創成転造時の工具及び被加工物の相対運動によって形成される。その後、工具が引っ込められると、被加工物は次の歯溝の位置に割出しされ、この工程はすべての歯が形成されるまで繰り返される。創成正面ホブ切り(連続割出し)工程では、工具及び被加工物はタイミングを合わせて回転され、工具が適当な深さまで送られる。それにより、工具による1回だけのプランジ加工ですべての歯溝が形成される。全深さに達した後、創成転造が開始される。
【0018】
非創成工程は間欠割出し又は連続割出しのどちらか一方であり、被加工物の歯の歯形形状が工具の輪郭形状によって直接に形成される工程である。工具が被加工物の方向へ送られて、工具の歯形形状が被加工物に伝えられる。創成転造が使用されていなくても、理論上の「冠歯車」の形状をした理論上の創成歯車の概念は非創成工程に適用可能である。この冠歯車は、歯面が非創成工程における被加工物の歯面と補完関係にある理論的な歯車である。したがって、工具上の切刃は非創成加工される被加工物の歯面を形成するときの理論上の冠歯車の歯を表している。
【0019】
上で述べたように、切刃間の切り屑詰まりを減少させる又は解消するためのこれまでの取り組みでは、油を用いて流し出すこと又は空気を吹き付けることが含まれる。他に試みられた処置では、2つのヘッド・カッタ区間34、36の周方向の図である図4に見られるように、刃の突き出し量を増やすことが含まれる。カッタ・ヘッド区間34は、カッタ・ヘッドのフェース42上で一定の突き出し距離を有する2つの刃38、40を含んでいる。この突き出し量は、カッタのフェースと歯車素材との間の干渉を回避するように、切削される歯車の深さ及びカッタ・ヘッドのサイズによって画定される。カッタ・ヘッド区間36にある刃44、46は一定量ΔXだけ突き出し量が増加されており、それにより切り屑用の隙間の大きさが増大される。しかし、突き出し量が増すと、カッタ・ヘッドと刃と間の構成が脆弱になり、切削処理中に振動及びびびりが発生する場合がある。
【0020】
図5は、2つのカッタ・ヘッド区間48、50の周方向の図である。カッタ・ヘッド区間48は、刃の間の距離がNである3つの刃52、54、56を含んでいる。この距離(すなわち、隙間)をNからN’へと増大させるために、カッタ・ヘッド区間50に示すように刃を1つおきに取り除くことができる。これにより、切削工程の生産性は50%低下する。刃を1つおきに取り除くことは、刃の全輪郭が同じである場合にのみ実施されてよい。内側刃と外側刃とが交互になっている場合、刃のグループを1つおきに除去することが可能である。切り屑詰まりは主に外側刃の手前で発生することから、望ましい効果を得るためには、ある外側刃の手前の内側刃と外側刃とを除去する必要がある。正面ホブ切りカッタ・ヘッドでは、刃のグループの数が奇数である場合は刃又は刃のグループを1つおきに除去することはできない。
【0021】
図5と同様の手法として、歯溝の数が少ないカッタ・ヘッドが使用されてきた。しかし、そのためには、高速切削の経済的利点を相殺してしまう特別なカッタ・ヘッドが必要となる。
【0022】
図6は、2つのカッタ・ヘッド区間58、60の周方向の図である。カッタ・ヘッド区間58は、一定の隙間Fを有する2つの刃62、64を含んでいる。切刃62と切刃64との間の切り屑用の隙間の大きさを拡大するために、切刃の厚さを減少させることにより、切刃(好適には、外側刃)の前面側の距離を増大させることができる。カッタ・ヘッド区間60に示すように、刃62の厚さが減少されることにより、切り屑用の隙間の大きさがF’に拡大される。しかし、前面側の距離を増大させる分だけ必要となる研磨時間が長くなり、さらには、この修正により刃は脆弱になる。脆弱な刃はより振動しやすくなり、切削工程中にびびりを発生させる可能性がある。
【0023】
図7は2つのカッタ・ヘッド区間66、68の周方向の図である。カッタ・ヘッド区間66は、一定の距離Hだけ空いている3つの刃70、72、74を含んでいる。切り屑用の隙間の大きさを拡大するために、刃の間隔は、外側刃70の手前の切り屑用の隙間の大きさが図に示すように右側にH’まで増大されるように修正されてよい。この修正には特別なデザインのカッタ・ヘッドが必要となり、また、内側刃及び外側刃と歯車の歯との間のタイミングが変更されることから、正面ホブ切りではこのような修正は不可能である。
【0024】
発明者らは、歯車切削中に、特に正面フライス工程の場合は切り屑詰まりが主に外側切刃の手前で発生していることを観察した。内側切刃は、外側に向かって開いているテーパ状の隙間を形成する横すくい角を前方側に有する(図8、δ1)。逆に、外側刃は、平行な、又は外側に向かって閉じているテーパ状の隙間を形成する横すくい角を有している(図8、δ2)。切削工程中、カッタ・ヘッドが高速回転することにより、カッタ・ヘッドの外側に向かう径方向の遠心力が切り屑に作用する。この遠心力は、カッタの毎分回転数に応じて、重力「g」の50倍から100倍の大きさとなる。外側刃の切削により生じる切り屑は丸まって、ヘッド・カッタの中心に向かうように移動する。それにより、(歯溝の長さに応じて)一定の長さを有する切り屑を外側へ放り出すことができなくなり、切り屑が隙間の傾斜(図8、δ2)により切刃間に押し込まれてしまう。
【0025】
図8は、等しい間隔(間隔の角度φ)の刃(外側刃78、内側刃80及び外側刃82)を有する正面フライス・カッタ・ヘッド76のフェースの一部分を示した上面図である。図5の線A、B及びCは刃の間隔線である。外側刃78(OB−1)、内側刃80(IB−1)及び外側刃82(OB−2)の理論上の基準となる前面は正確に刃の間隔線の位置にある。前方側の横すくい角−γにより外側刃が外側に向かって鋭利になり、前面側の横すくい角+γにより内側刃が内側に向かって鋭利になる。切刃の理論上の(実際の場合のほとんどの)背面は刃の理論上の前面と平行であり、したがってそれぞれの間隔線とも平行である。角δ1は、刃IB−1の前面と刃OB−1の背面と間の相対角度である。角δ1により切り屑用の隙間84が外側に開いている。角δ2は、刃OB−2の前面と刃IB−1の背面との間の相対角度である。角δ2により、切り屑用の隙間86は外側に向かって実質的に閉じている。δは以下のように計算される:
δ=φ+γ (1)
例えば
δ1=11.25°+12°=23.25°
又は、
δ2=11.25°−12°=−0.75°
となる。隙間84、86の中央の遠心力を矢印で示した。これらの遠心力は、カッタ76が回転することにより隙間内の切り屑に作用する。
【0026】
図9図8と同様のカッタ構成を示しているが、ここでは図8の刃IB−1の背面D1が修正されている。図9の背面D2は間隔線Bと平行ではなくなっており、εだけ傾斜している。ここでは、δ2は以下のように計算される:
δ=φ+γ+ε (2)
すなわち、例えば
δ2=11.25°−12°+12°=11.25°
のようになる。したがって、内側刃の修正された背面により、遠心力が作用する方向に正の角δ2が画定され、それにより、刃OB−2の手前の隙間86がカッタ・ヘッド76の外側に向かって開かれる。
【0027】
本発明の工具では、遠心力の方向に流れ最適化された(flow optimized)デザインの隙間が採用される。このように最適化することは、外側刃の手前の隙間にとって特に有益である。本発明の解決策は、カッタ・ヘッドの外側に向かう切り屑流れの最適化を実現する一方で、切刃が脆弱化されるのを回避(又は、緩和)する。この解決策は、外側刃(図8のOB−2)の手前の隙間(図8の86)の前端を形成している、内側刃の背面側(図8の面D1)を少なくとも修正するものである。この場合の修正点とは、外側刃の手前の横すくい角と間隔の角度との正味の効果(図9の−δ)を相殺するくらい十分に大きな背面上の横すくい角εである。その結果、好適にはδ2は正の値となる。
【0028】
図10は2つのカッタ・ヘッド区間88、90の周方向の図である。カッタ・ヘッド区間88は、刃の間の距離が軸向きの刃の方向(axial blade direction)に沿って平行である2つの刃92、94を含んでいる。カッタ・ヘッド区間90は、内側切刃94の背面側Dに対する修正を示している(角η)。この第2の修正により軸向きの刃の方向に開いたテーパ形状の隙間96が形成され、切り屑が隙間96から離れることができるようになる。
【0029】
図11は、スティック状すなわち棒状の内側刃98の背面側D4の三次元の図である。本発明の修正を実現するために、3つのパラメータが定義される。εは背面側の横すくい角、ηは背面側のフック角、並びに、DBFは背面側のフェース距離である。
【0030】
好適な実施例では、背面側の横すくい角は12°、又は少なくとも外側刃の前面側横すくい角より大きい3°である。これにより、内側刃の背面側と外側刃の前面側との間に、外側に向かって勾配がつけられた切り屑用の隙間が形成され、それにより、遠心力により切り屑が放り出されるようになる。また、本発明の切り屑用の隙間が形成されることで、カッタの回転及びコリオリ加速度により切り屑がカッタの外側へ誘導されるようになる。
【0031】
本発明の工具デザインの他の実施例では、内側刃の背面(背面側のフック角)の角度傾斜により、カッタのフェースから離れる軸向きの刃の方向に開いている隙間が形成される。好適な実施例では3°から8°の間のフック角が採用される。
【0032】
切刃の背面上に横すくい角を設ける実施例及び切刃の背面が角度傾斜している実施例は、互いに別個に採用されも互いに組み合わせて採用されてもよい。
【0033】
本発明の内側刃の背面は、3つのパラメータによって画定され得る:
−背面側の距離DFB
−背面側のすくい角ε;
−背面側のフック角η。
【0034】
また、切り屑流れの効果を最適化するために湾曲面又は高次面が導入されてもよい。
【0035】
本発明の実施例は正面フライス・カッタの内側切刃の背面に(単独又は組合せで)適用されることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。本発明の実施例は、個々の刃の隙間をより広くするために、正面ホブ切り・カッタの内側切刃の背面さらには正面フライス・カッタ又は正面ホブ切り・カッタの外側切刃の背面にも同様に適用可能である。また、本発明による、背面の実施例は、歯溝の両側を同時に切削するような刃(例えば、図2に示したような刃)に対しても同じように適用可能である。
【0036】
本発明を、一般にスティック・タイプ又は棒タイプの刃と言われるような切刃などの、カッタ・ヘッドのフェース内で位置決めされる又はカッタ・ヘッドのフェースから突出している歯車用切刃を参照しながら考察してきたが、本発明の概念は、切り屑詰まりを発生させる又は発生させやすい他の切刃構成にも同様に当てはまる。例としては、通常はカッタ・ヘッドの前面から離れるように突出するフォーム・リリーブド・ブレード(form relieved blade)として知られる切刃、又は、カッタ・ヘッドの円周面から離れるように径方向に突出する切刃が含まれる。本発明はまた、連続して配置された複数の切刃を有する工具を使用する、その他の金属のフライス加工処理などの、歯車切削以外の切削処理にも同様に適用可能である。
【0037】
本発明を好適な実施例を参照しながら説明してきたが、本発明はその特定のものに限定されないことを理解されたい。本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく主題が関連する、当業者には明白である修正形態を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11