【実施例】
【0014】
図1〜
図9に実施例とその特性を示す。図において、2はガスセンサで、MEMSタイプのセンサ本体4をベースに固着し、センサ本体4の図示しないパッドをピン13にリード線11により接続してある。そしてキャップ12とベース10で囲まれたスペースに、センサ本体4が配置されている。14は粒状、シート状等の活性炭から成る吸着剤、16は例えば粒状あるいはシート状の活性炭-Ptから成る酸化触媒、18は吸着剤14と酸化触媒16を固定するための不織布で、紙あるいは多孔質の合成樹脂フィルム等でも良く、吸着剤14と酸化触媒16とがシート状の場合は不織布18は不要である。19は
図1での下側の不織布18を押さえる押さえリングである。ガスセンサ2の構造、形状、材料は、MEMSタイプのガスセンサで、外部からセンサ本体4へ至る通気路の外側に吸着剤14が、中間に酸化触媒16が、内側にセンサ本体4が置かれている点が重要で、他の点は任意である。
【0015】
吸着剤14はここでは粒状活性炭
で、形状は粒状でもシート状でも良い。酸化触媒16はここでは粒状の活性炭-Ptであるが、シート状の活性炭にPtを担持して
も良い。また活性炭-Pd、
活性炭-RuO2等の酸化触媒でも良く、これらは室温でエタノール酸化活性を有する酸化触媒
である。室温でエタノール等の有機溶媒を酸化するため、酸化触媒16はPt,Au,Pd,Rh,RuO2等の貴金属を
活性炭から成る担体に担持した触媒
とする。吸着剤14を前段に配置することにより、酸化触媒の負担を軽減し、その必要量を少なくできる。また吸着剤14の材料を酸化触媒16の担体とすることにより、材料を統一できる。
【0016】
図2はセンサ本体4の構造を示し、シリコン基板20の一面にシリカ、酸化タンタル等の絶縁膜22が設けられ、絶縁膜22の底部に空洞21がある。Pt膜等の膜状のヒータ6が空洞21の上部で絶縁膜22上に設けられ、第2の絶縁膜23で被覆されている。絶縁膜23上に例えば一対のPt膜から成る電極24,24とSnO2膜8とが設けられている。なおヒータ6を一方の電極に兼用しても良い。実施例ではSnO2膜8の膜厚は30μmで、SnO2の100mass%に対し1.5mass%のPdを含んでいる。センサ2の構造、材料は任意で、SnO2に代えてWO3、In2O3等の他の金属酸化物半導体を用いても良い。またγアルミナ等の担体にPt等の触媒を担持し、可燃性ガスの燃焼熱を検出する接触燃焼式ガスセンサとしても良い。しかし発明者の経験によると、エタノール等による被毒はSnO2等の金属酸化物半導体ガスセンサで深刻で、接触燃焼式ガスセンサでは軽微であった。これは、接触燃焼式ガスセンサではエタノール等への酸化能力が充分に高いため、被毒が弱くなるためと考えられる。
【0017】
図3にガス検出装置30の回路構成を示す。31は負荷抵抗でSnO2膜8に接続され、32は電源としての電池である。34はガスセンサ2の駆動回路としてのマイクロコンピュータで、ヒータドライブ36,検出回路38,スタート回路40として作用する。ヒータドライブ36は例えばPWM(パルス幅変調制御)によりヒータ6への電力を制御し、例えば低レベル(0.4秒間)、高レベル(0.1秒間)、0レベルの順に例えば30秒周期でヒータ6を駆動する。検出回路38はヒータ電力が高レベルでのSnO2膜8の抵抗値、あるいはこれに相当する量、実施例ではSnO2膜8に加わる電圧から、検出対象ガスのメタンを検出する。SnO2膜8の抵抗値あるいはこれに相当する量をセンサ出力と呼び、検出回路38はADコンバータを備えてSnO2膜の抵抗値等を求め、これを適宜の基準値と比較することにより、メタン濃度を求める。検出回路38は、低レベルでのセンサ出力からエタノール等の有機溶媒の濃度を求めても良い。スタート回路40は、停止していたガス検出装置30を起動する際に、例えば図示しないスイッチ等により電池32とマイクロコンピュータ34とが接続された際に、常時の0.4秒よりも長い1秒〜20秒間、実施例では4秒間、センサ2を低レベルに加熱するように、ヒータドライブ36に信号を送る。
【0018】
図4、
図5にガスセンサ2の駆動アルゴリズムを示す。ここでは低レベルでのSnO2膜8の温度を100℃、高レベルでのSnO2膜8の温度を470℃とする。高レベルでの温度は例えば300℃〜550℃とする。またセンサを所定のレベルあるいは温度に加熱するとは、SnO2膜8を所定の電力であるいは所定の温度へ加熱することである。電源を投入した際に、例えば4秒間、好ましくは1〜20秒間、センサを低レベルに加熱し、放置中にSnO2膜8に蓄積した有機溶媒を蒸発もしくは酸化する(ステップ1)。次いで例えば30秒周期で、ガスセンサ2を駆動し、最初の0.4秒間、好ましくは最初の0.1〜2秒間低レベルに(ステップ2)、次の0.1秒間、好ましくは次の0.02秒間〜0.5秒間高レベルに加熱し(ステップ5)、残る区間はヒータをオフ(ステップ6)する。30秒周期とするのはメタンの検出遅れを30秒程度とするためで、周期は例えば5秒〜10分とする。
【0019】
吸着剤14はエタノール等の有機溶媒とシリコーン蒸気等の他の被毒ガスを吸着する。吸着剤14を通過するほど高濃度の被毒ガスが長時間存在することが考えられるのは、エタノール等の有機溶媒の場合である。有機溶媒が吸着剤14を通過すると、低濃度の有機溶媒が長時間、酸化触媒16へ到達する。酸化触媒16は有機溶媒を酸化し、センサ本体へ到達する有機溶媒の量を少なくする。低レベルへの加熱でセンサは例えば100℃に加熱される。エタノール等の有機溶媒は沸点が一般に100℃弱なので、有機溶媒は100℃でセンサ本体4から蒸発し、あるいは貴金属を担持したSnO2により酸化される。このため有機溶媒が、縮合等によりセンサ本体から脱離が困難な物質に変化することを、防止できる。
【0020】
ガスセンサ2は、低レベルの加熱温度で有機溶媒への感度を持つので、低レベルであるいは低レベルと高レベルとの中間の温度で有機溶媒の濃度を求めて、所定値以上の場合は次回以降も低レベルへの加熱を行い、所定値未満の場合は次回以降は低レベルへの加熱を省略しても良い(ステップ2,3)。この判定は例えば100周期毎に、好ましくは10〜1000周期毎に行う。ステップ2,3の意味は消費電力を節減することにあり、問題点はセンサに有機溶媒を蓄積させる可能性がある点で、ステップ2,3を省略しても良い。
【0021】
図6〜
図9にガスセンサ2の特性を示す。吸着剤としての活性炭と酸化触媒としての活性炭−Ptの総量を150mg/センサとし、
・ 150mg全部を単なる活性炭として酸化触媒を設けない従来例、
・ 20mgを活性炭−Pt、130mgを単なる活性炭とした実施例、
・ 30mgを活性炭−Pt、120mgを単なる活性炭とした実施例、
の3種類のガスセンサを製造した。なお活性炭−Pt中のPt濃度は5質量%である。酸化触媒16の貴金属量は、センサ当たりで例えば0.5〜5mgが好ましい。キャップ内のガス濃度を求めるため、メタンセンサの代わりに、MEMSタイプのエタノールセンサ(SnO2膜の貴金属含有量をエタノール検出用に少なくし、動作温度を常時300℃としたもの)を配置し、2日間、1日2時間ずつ3000ppmのエタノールに曝した。キャップ内のガス濃度(エタノール換算)を
図6に示す。活性炭のみでは数十ppmのエタノールがキャップ内に存在するが、活性炭-Ptを追加することにより、キャップ内のエタノール濃度は10ppm未満となり、またエタノール濃度が増加するまでのタイムラグが長くなる。以上のように活性炭-Ptは、キャップ内の有機溶媒濃度の最大値を低下させ、かつ有機溶媒濃度が増加するまでの時間を長くする。
【0022】
図7は、120mgの粒状活性炭と30mgの活性炭-Pt(Pt5質量%)とを有するセンサを、100℃に0.4秒、470℃に0.1秒、室温に29.5秒放置する30秒周期で駆動しながら、毎日20分ずつ3000ppmのエタノールに曝した際の特性を示す。
図8は、
図7と同じセンサを470℃に0.1秒間と室温に29.5秒間の30秒周期で駆動しながら、毎日20分ずつ3000ppmのエタノールに曝した際の特性を示す。
図9は、活性炭150mgのみを有するセンサ(酸化触媒無し)を470℃に0.1秒間と室温に29.5秒間の30秒周期で駆動しながら、毎日20分ずつ3000ppmのエタノールに曝した際の特性を示す。測定に用いたセンサは各2個ずつで、
図7〜
図9では結果の平均を示す。
【0023】
図9では、1週間でメタン感度がほぼ失われ、メタン中の抵抗値、水素中の抵抗値、空気中の抵抗値が何れも増加した。なお被毒を受けたセンサは、正常雰囲気中で1ヶ月程度駆動することにより、回復する。
図8では最初の3週間は被毒の影響が小さいが、4週間目には大きな影響を受けている。
図7では、4週間経過しても被毒の影響を無視できる。エタノールの沸点は100℃弱なので、100℃への加熱によりSnO2膜からのエタノールの蒸発が生じているものと推定できる。また貴金属触媒を担持したSnO2でのエタノールの着火点も100℃弱なので、SnO2中でのエタノールの酸化も寄与していることが考えられる。以上のように、酸化触媒を設けることにより被毒の影響を小さくでき、これに100℃付近への加熱を組み合わせることにより、被毒の影響を無視できるようにできる。
【0024】
発明者は低レベルの最適温度を検討し、その結果、80℃と100℃では同性能、60℃と120℃でも同性能で、100℃加熱に比べてセンサの耐被毒性が劣り、200℃でも低レベル加熱を行わない場合に比べ耐被毒性能は向上するが、効果が小さいことが判明した。従って低レベルの加熱温度は80〜100℃が最も好ましく、より広くは70〜110℃、さらに広くは60〜120℃、最も広くは60〜200℃とする。低レベルの1周期当たりの加熱時間は、例えば0.1秒以上で効果があるので0.1〜2秒とし、0.2秒以上で効果が大きくなり、1秒を超えると消費電力への影響が大きいので、好ましくは0.2〜1秒とする。
【0025】
実施例ではエタノールによる被毒を示したが、メタノール、イソプロパノール等の有機溶媒による被毒も酸化触媒により除去でき、さらに低レベルへの加熱を追加することにより、被毒の影響を無視できる程度に小さくできる。またシリコン基板20を、スルーホールを備えたプリント基板あるいは他のシリコン基板等に固定し、スルーホールに酸化触媒を支持させても良い。