特許第5773454号(P5773454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773454
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】アパタイトの表面中和方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20150813BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20150813BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20150813BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20150813BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20150813BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C07K1/16
   G01N30/00 B
   G01N30/88 101C
   B01J20/04 A
   B01J20/34 G
   G01N30/26 A
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-549083(P2012-549083)
(86)(22)【出願日】2011年1月13日
(65)【公表番号】特表2013-517284(P2013-517284A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】US2011021158
(87)【国際公開番号】WO2011088225
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】61/295,499
(32)【優先日】2010年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カミングス ラリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー マーク エイ.
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0265298(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/092010(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/117735(WO,A1)
【文献】 特表2003−520188(JP,A)
【文献】 特表2007−532477(JP,A)
【文献】 Archives of Biochemistry and Biophysics,1990年,276, 2,p.348-354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/16
B01J 20/04
B01J 20/34
G01N 30/00
G01N 30/26
G01N 30/88
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的分子を精製するための方法であって、該標的分子は抗体であり、該方法が、
(a) 標的分子を含む試料をアパタイト固体表面に接触させる工程であって、それによって標的分子を該固体表面に吸着させる、工程;
(b) 吸着された標的分子を含む固体表面を、7.5〜9.0のpHを有する溶液と接触させる工程であって、該溶液が
(i) 塩基性アミノ化合物及びアルカリ金属イオン;または
(ii) スルホン化されたアミン化合物及びアルカリ金属イオン
を、該アパタイト固体表面を中和するのに十分な量及び濃度で含み、標的分子が固体支持体に吸着されたままであるように該溶液が十分低いイオン強度を有する、工程;及び
(c)固体支持体を工程(b)の溶液とは異なる組成の溶液と接触させることにより、固体支持体から標的分子を溶出する工程であって、それによって試料中の標的分子を精製する、工程
を含む方法
【請求項2】
塩基性アミノ化合物が、アルギニン、ヒスチジン、Tris((HOCH2)3CNH2)、及びリジンより選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属イオンが、ナトリウム、リチウム、またはカリウムより選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
アパタイトが、ヒドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
溶液が、100mMまたはそれ未満であるアルカリ金属イオンを有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
一つまたは複数の追加的洗浄工程を、請求項1記載の工程(a)及び(b)の間または請求項1記載の工程(b)及び(c)の間にさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
一つまたは複数の追加的洗浄工程が、標的分子を固体支持体に実質的に保持している間に、固体表面から試料の少なくとも一種類の成分を取り除く、請求項6記載の方法。
【請求項8】
成分が、エンドトキシン、宿主細胞タンパク質、凝集した標的タンパク質または他の凝集物、中性脂質、荷電脂質、多糖、沈殿剤、非標的小分子、及び凝集した標的タンパク質からなる群の少なくとも一つより選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
溶液が、スルホン化されたアミン化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
スルホン化されたアミン化合物が、PIPES、MES、MOPS、ACES、MOPSO、及びHEPESより選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
スルホン化されたアミン化合物の濃度が、5〜100mMである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
スルホン化されたアミン化合物の濃度が、5〜50mMである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
溶液がアミノ化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
アミノ化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、及びイミダゾールからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
固体支持体がカラムであり、かつ工程(b)が、固体表面を少なくとも1カラム容量の溶液と接触させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
アミノ化合物の濃度が、5〜100mMである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
アミノ化合物の濃度が、5〜50mMである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
アパタイトが、セラミックヒドロキシアパタイトまたはセラミックフルオロアパタイトである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
アパタイトが、非セラミックアパタイトである、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年1月15日に出願された米国特許仮出願第61/295,499号に基づいて優先権を主張するものであり、あらゆる目的のために参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトは、他のアパタイト固体支持体とともに、タンパク質、炭水化物、ポリヌクレオチド、及びウイルス粒子を含む、広い範囲の生体分子の精製に使用される。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、試料中の標的分子を精製するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は以下を含む:
(a) 標的分子を含む試料をアパタイト固体表面に接触させる工程であって、それによって標的分子を該固体表面に吸着させる、工程;
(b) 吸着された標的分子を含む固体表面を溶液と接触させる工程であって、該溶液がある濃度の
(i) 塩基性アミノ化合物及びアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類イオン;または
(ii) スルホン化されたアミン化合物及びアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類イオン
を、アパタイト固体表面を中和するのに十分な濃度で含み、標的分子が固体支持体に吸着されたままであるように該溶液が十分低いイオン強度を有する、工程;及び
(c) 固体支持体を工程(b)の溶液とは異なる溶液と接触させることにより、固体支持体から標的分子を溶出する工程であって、それによって試料中の該標的分子を精製する、工程。
【0004】
いくつかの態様において、方法は以下を含む。
(a) 標的分子を含む試料をアパタイト固体表面に接触させる工程であって、それによって標的分子を該固体表面に吸着させる、工程;
(b)吸着された標的分子を含む固体表面を溶液と接触させる工程であって、該溶液が
(i)塩基性アミノ化合物及びアルカリ金属イオン;または
(ii)スルホン化されたアミン化合物及びアルカリ金属イオン
を、アパタイト固体表面を中和するのに十分な量及び濃度で含み、標的分子が固体支持体に吸着されたままであるように該溶液が十分低いイオン強度を有する、工程;及び
(c) 固体支持体を、工程(b)の溶液とは異なる組成の溶液と接触させることにより、固体支持体から標的分子を溶出する工程であって、それによって試料中の標的分子を精製する、工程。
【0005】
いくつかの態様において、アルカリ金属イオンは、リチウム、ナトリウム、またはカリウムから選択される。
【0006】
いくつかの態様において、アルカリ土類イオンは、マグネシウム及びカルシウムから選択される。
【0007】
いくつかの態様において、アパタイトは、ヒドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトからなる群より選択される。
【0008】
いくつかの態様において、標的分子はタンパク質である。いくつかの態様において、標的タンパク質は抗体である。
【0009】
いくつかの態様において、工程(b)の溶液は、pHが6.5〜9.0または7〜8.5、または7.5〜9.0である。
【0010】
いくつかの態様において、溶液は、100mM、80mM、60mMまたはそれ未満のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類イオンを含む。
【0011】
いくつかの態様において、方法は更に、段落0003もしくは段落0004の工程(a)及び(b)、または、段落0003もしくは段落0004の工程(b)及び(c)の間に、一つまたは複数の追加的洗浄工程を含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の追加的洗浄工程は、標的分子を固体支持体上に実質的に保ちながらも、固体表面から試料の少なくとも一種類の成分を取り除く。いくつかの態様において、支持体から洗浄される成分は、エンドトキシン、宿主細胞タンパク質、凝集した標的タンパク質または他の凝集物、中性脂質、荷電脂質、多糖、沈殿剤、非標的小分子、及び凝集した標的タンパク質からなる群の少なくとも一つから選択される。
【0012】
いくつかの態様において、溶液は、スルホン化されたアミン化合物を含む。いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物は、PIPES、MES、MOPS、ACES、MOPSO、及びHEPESから選択される。いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物の濃度は、5〜500mMである。いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物の濃度は、5〜100mMである。いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物の濃度は、5〜50mMである。
【0013】
いくつかの態様において、溶液はアミノ化合物を含む。いくつかの態様において、アミノ化合物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(例えば、Tris(商標))、リジン、ヒスチジン、アルギニン、及びイミダゾールからなる群より選択される。いくつかの態様において、アミノ化合物の濃度は、5〜500mMである。いくつかの態様において、アミノ化合物の濃度は、5〜100mMである。いくつかの態様において、アミノ化合物の濃度は、5〜50mMである。
【0014】
いくつかの態様において、固体支持体はカラムであり、工程(b)は、固体表面を、カラム体積の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8倍またはそれを超える量の溶液と接触させることを含む。
【0015】
いくつかの態様において、アパタイトは、セラミックヒドロキシアパタイトまたはセラミックフルオロアパタイトである。いくつかの態様において、アパタイトは、非セラミックアパタイトである。
[本発明1001]
試料中の標的分子を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) 標的分子を含む試料をアパタイト固体表面に接触させる工程であって、それによって標的分子を該固体表面に吸着させる、工程;
(b) 吸着された標的分子を含む固体表面を溶液と接触させる工程であって、該溶液が
(i) 塩基性アミノ化合物及びアルカリ金属イオン;または
(ii) スルホン化されたアミン化合物及びアルカリ金属イオン
を、該アパタイト固体表面を中和するのに十分な量及び濃度で含み、標的分子が固体支持体に吸着されたままであるように該溶液が十分低いイオン強度を有する、工程;及び
(c)固体支持体を工程(b)の溶液とは異なる組成の溶液と接触させることにより、固体支持体から標的分子を溶出する工程であって、それによって試料中の標的分子を精製する、工程。
[本発明1002]
アルカリ金属イオンが、リチウム、ナトリウムまたはカリウムより選択される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
アパタイトが、ヒドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
標的分子がタンパク質である、本発明1001の方法。
[本発明1005]
タンパク質が抗体である、本発明1004の方法。
[本発明1006]
工程(b)の溶液が、pH6.5〜9.0である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
溶液が、100mMまたはそれ未満であるアルカリ金属イオンを有する、本発明1001の方法。
[本発明1008]
一つまたは複数の追加的洗浄工程を、本発明1001の工程(a)及び(b)の間または本発明1001の工程(b)及び(c)の間にさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
一つまたは複数の追加的洗浄工程が、標的分子を固体支持体に実質的に保持している間に、固体表面から試料の少なくとも一種類の成分を取り除く、本発明1008の方法。
[本発明1010]
成分が、エンドトキシン、宿主細胞タンパク質、凝集した標的タンパク質または他の凝集物、中性脂質、荷電脂質、多糖、沈殿剤、非標的小分子、及び凝集した標的タンパク質からなる群の少なくとも一つより選択される、本発明1009の方法。
[本発明1011]
溶液が、スルホン化されたアミン化合物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
スルホン化されたアミン化合物が、PIPES、MES、MOPS、ACES、MOPSO、及びHEPESより選択される、本発明1011の方法。
[本発明1013]
スルホン化されたアミン化合物の濃度が、5〜100mMである、本発明1011の方法。
[本発明1014]
スルホン化されたアミン化合物の濃度が、5〜50mMである、本発明1011の方法。
[本発明1015]
溶液がアミノ化合物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
アミノ化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、及びイミダゾールからなる群より選択される、本発明1015の方法。
[本発明1017]
固体支持体がカラムであり、かつ工程(b)が、固体表面を少なくとも1カラム容量の溶液と接触させる工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
アミノ化合物の濃度が、5〜100mMである、本発明1015の方法。
[本発明1019]
アミノ化合物の濃度が、5〜50mMである、本発明1015の方法。
[本発明1020]
アパタイトが、セラミックヒドロキシアパタイトまたはセラミックフルオロアパタイトである、本発明1001の方法。
[本発明1021]
アパタイトが、非セラミックアパタイトである、本発明1001の方法。
【0016】
定義
「固体アパタイト表面の中和」とは、固体表面がヒドロニウムイオンを、続く溶出緩衝液のpHに著しく影響を与える(すなわち、0.2を超える酸性寄りのpHシフトを起こす)ほど十分含まないように、アパタイト表面の表面を処理することをいう。
【0017】
「抗体」とは、免疫グロブリン、その複合体、または断片をいう。この語句は、ヒト化、ヒトの、単鎖の、キメラの、合成された、組み換え型の、ハイブリッドの、変異型の、移植された、及びインビトロで産生された抗体のような、天然のまたは遺伝子組換えされた型を含む、ヒトまたは他の哺乳類の株化細胞由来のクラスIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含み得るが、これに限定されない。「抗体」はまた、免疫グロブリン部分を含む融合タンパク質を含む複合体を含み得るが、これに限定されない。「抗体」はまた、抗原結合性機能を保持しているか否かによらず、Fab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fc及び他の組成のような抗体断片を含みうる。
【0018】
「アパタイト固体表面」は、溶融ナノ結晶(セラミックアパタイト)、マイクロ結晶、または、合成(compounded)マイクロ結晶を含む。セラミックアパタイトは、セラミックハイドロアパタイト(例えば、CHT(商標))またはセラミックフルオロアパタイトを含むが、これに限定されない。セラミックアパタイトは、ナノ結晶が凝集して粒子となり、高温で溶融してクロマトグラフィー適用に好適な安定なセラミック微粒子となる、アパタイトミネラルの一形態である。合成マイクロ結晶は、HA Ultragel(登録商標)(Pall Corp.)を含むが、これに限定されない。マイクロ結晶は、Bio-Gel HTP、Bio-Gel(登録商標)HT、DNA-Grade HT(Bio-Rad)及びHypatite C(Clarkson Chromatography)を含むが、これに限定されない。
【0019】
「ヒドロキシアパタイト」とは、構造式Ca10(PO4)6(OH)2のリン酸カルシウムの不溶性ヒドロキシル化ミネラルを含む混合型支持体をいう。その相互作用の基本モードは、ホスホリル陽イオン交換及びカルシウム金属親和性である。ヒドロキシアパタイトは、種々の形態で商業的に入手可能であり、セラミック、結晶体、及び複合体を含むが、これに限定されない。複合体は、アガロースまたは他のビーズの孔内に封入されたヒドロキシアパタイトマイクロ結晶を含む。
【0020】
「フルオロアパタイト」とは、構造式Ca10(PO4)6F2のリン酸カルシウムの不溶性フッ化ミネラルを含む混合型支持体をいう。それの相互作用の基本モードは、ホスホリル陽イオン交換及びカルシウム金属親和性である。フルオロアパタイトは、種々の形態で商業的に入手可能であり、セラミック、結晶体複合体を含むが、これに限定されない。
【0021】
「試料」とは、関心対象の標的分子または粒子を有するすべての組成物をさす。試料は、精製されていなくてもよいし一部精製されていてもよい。試料は、血液、または血液の要素(血清を含むがこれに限定されない)、尿、唾液、大便、及び組織を含むがこれに限定されない、生物由来の試料を含み得る。
【0022】
「アルカリ土類イオン」とは、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)を含む、周期律表のIIA族のすべての陽イオン元素をいう。当業者は、Mg及びCaがクロマトグラフィーにおいて最も一般的に使用されると認識するであろう。アルカリ土類イオンは、例えば、一つまたは複数のイオン性対イオンとの塩(例えば、CaCl2等)として、溶液に送達されうる。
【0023】
「アルカリ金属イオン」は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、及びフランシウム(Fr)を含む、周期律表のI族のすべての陽イオン元素をいう。当業者は、Na及びKがクロマトグラフィーにおいて最も一般的に使用されると認識するであろう。アルカリ金属イオンは、例えば、一つまたは複数のイオン性対イオンとの塩(例えば、KOH、NaOH、NaCl等)として、溶液に送達されうる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
I.概説
本発明は、部分的には、アミノ化合物またはスルホン化アミン化合物を含む中和溶液が、アルカリ金属イオン、及び任意でアルカリ土類イオンと組み合わされると、後の段階で溶出されるべき標的分子を著しく溶出することなく、クロマトグラフィー精製に使用されるアパタイト固体表面を中和するのに効果的であるという発見に基づいている。本願は、標的分子(例えば、タンパク質または他の分子)をアパタイト固体表面に吸着させ、本明細書で述べるように中和溶液でアパタイト表面を中和し、その後、標的分子を分離溶液または中和溶液とは異なる組成を有する溶液で溶出する方法を提供する。
【0025】
中和溶液は、アミノ化合物またはスルホン化アミン、または両方を含み得る。好適な条件下では、アルカリ土類またはアルカリ金属イオンは、アパタイト表面でヒドロニウムイオンと置換し、アミノ化合物またはスルホン化アミン化合物は、ヒドロニウムイオンのアクセプターとして働き、それによって、アパタイト固体表面を傷つけることなく、溶液のpHを実質的に変更することなく、また精製されるべき標的化合物を実質的に溶出することなく、ヒドロニウムイオンを取り除く。言い換えると、本発明は、アパタイト表面で緩衝液が陽イオンをヒドロニウムイオンと交換できる条件下で、緩衝液と接触させることにより中和する方法を提供する。ここで、ヒドロニウムイオンは、中和溶液の別の成分(すなわちアミノ化合物またはスルホン化されたアミン化合物)により捕捉される。表面の中和に続いて、異なる溶液が標的分子を溶出するのに使用される。
【0026】
II.ヒドロニウムイオン
標的タンパク質または他の標的分子の、アパタイト表面からの溶出は、ヒドロニウムイオンを著しく放出し得、それは、標的分子及び/またはアパタイト固体表面に有害であり得、それにより、アパタイト材料を再利用する能力を損なう。本発明者らは、標的分子のアパタイト固体表面への吸着に続き、アパタイト表面をアミノ化合物またはスルホン化アミン化合物と、標的分子が実質的に溶出するのを避けるために十分低い濃度及びイオン強度のアルカリ土類またはアルカリ金属イオンとを組み合わせて接触させることによって、アパタイト上のヒドロニウムイオンを取り除き中和できることを発見した。
【0027】
A. 一般論
初めに、標的分子を含む試料が、クロマトグラフィー技術において公知のようにアパタイト表面に吸着される。アパタイト表面は、任意で、あらかじめ表面への標的の吸着に先立って、滅菌及び/または平衡化される。一つまたは複数の洗浄工程が任意に、中和工程の前または後に行われうる。いくつかの態様では、中和工程それ自体がまた、洗浄工程として、すなわち、実質的に固体支持体から試料の少なくとも一種類の成分を取り除く工程として、機能する。洗浄工程は、標的タンパク質を保持しつつ、試料の一種または複数種の非標的成分を取り除くようにデザインされうる。それに代わるものとして、または追加的に、さらなる洗浄工程が、一種または複数種のエンドトキシン、宿主細胞タンパク質、標的タンパク質の凝集塊または他の凝集塊、中性脂肪、多糖、小分子、荷電脂質、または、先立つ精製工程から出た沈殿剤の残留物のような他の非標的分子を、洗浄中固体支持体に標的タンパク質を実質的に保持しつつ(例えば、少なくとも80%、90%、95%、またはそれを越えて保持して)脱着するのに使用されうる。
【0028】
中和は、吸着標的を含むアパタイト表面を6.5〜9.0の範囲で緩衝することができ、ヒドロニウムイオン受容体として作用するのに好適なpH(例えば、pH6.5〜9.0)及び濃度(例えば、5〜500mMまたは5〜100mM)の、さらに詳しくは下記で論ずる緩衝溶液(アミノ化合物及び/またはスルホン化アミン化合物を含むが、これに限定されない)を含む溶液と接触させることを含む。これと組み合わせて、十分なアルカリ土類イオン(及び任意でアルカリ金属イオンもまた)が、アパタイト表面のヒドロニウムイオンと置換するために、アパタイト表面に接触される。しかし、緩衝溶液(例えば、アミノ化合物及び/またはスルホン化アミン化合物)の濃度は陽イオンの濃度と同様に、アパタイトに吸着した標的分子の溶出させない程度に十分低い。このような濃度は、アパタイトに吸着した標的分子によって変化しうるが、いくつかの態様においては、500mM未満、100mM未満、または50mM未満であり、例えば、5〜100mM、または10〜50mM、または10〜30mMである。さらに中和溶液のpHは、緩衝溶液が、アパタイト表面からの標的分子を著しく溶出させずに、ヒドロニウムイオンの受容体として作用できるように、調製されうる。
【0029】
アパタイト表面の中和は容易に測定できる。例えば、標的分子の溶出中に、クロマトグラフィーの溶出物のpHを測定できる。中性のアパタイト表面は、注入及び中和に続く溶出の間、pHの変化は、0.1または0.2を越えないであろう。例えば、溶出緩衝液のpHが7.0で注入されるならば、表面が中和されているとき、溶出の間の溶出物は6.8未満には落ちないであろう。または、表面が中和されているかどうかを決定するために、溶出物のカルシウムイオンを測定することができる。放出された遊離ヒドロニウムイオンの存在下、アパタイトはカルシウムを放出する。従って注入用緩衝液にあるものより、溶出物中により多くのカルシウムが存在することは、表面が中和されていないことを示す。
【0030】
中和、及び任意の洗浄工程に続いて、標的分子は溶出される。溶出は、例えば、pH及び/または塩の条件を中和条件と比較して変えることにより、または洗浄組成物を変えることにより達成される。いくつかの態様において、溶出は、液相の塩条件の変化によって達成される。例えば、いくつかの態様において、塩及び/または液相の伝導率が、標的が溶出する点まで(直線的に、または段階的に)増加させられる。いくつかの態様において、中和溶液の緩衝剤は、溶出に先立って実質的に取り除かれる。いくつかの態様において、標的の溶出は、アパタイト表面を、中和溶液中に緩衝剤を欠く溶出溶液と接触させることにより開始される。中和段階からの余った緩衝剤が存在するかもしれないが、そうであったとしても、溶出溶液中には緩衝剤が欠如しているため、溶出中に濃度が次第に減っていくことが期待されるであろう。
【0031】
B. 例示的な緩衝剤:アミノ化合物
アミノ化合物とは、アミノ基、すなわち-NH2を持つ化合物をいう。実施例で示されるように、広い範囲のアミノ化合物を、ヒドロニウムイオン受容体として使用することができ、それにより、イオンを中和する。代表的なアミノ化合物は、ヒスチジン、アルギニン、Tris((HOCH2)3CNH2)及びリジンを含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、アルギニンの濃度は5〜100mMであり、例えば、5〜50、5〜30、または10〜30mMである。いくつかの態様におけるアルギニン溶液のpHは7〜9であり、例えば、7.5〜8.5である。
【0032】
いくつかの態様において、アミノ化合物はヒスチジンである。実施例で述べるように、ヒスチジンは、アパタイト表面におけるヒドロニウムイオンの中和に効果的である。いくつかの態様において、ヒスチジン溶液は、pHが6.5〜9、または7〜9、または8.1〜9であり、例えば、8.2〜8.6であり、濃度が、5〜500mMであり、例えば、5〜100mM、5〜50、または5〜30mMである。
【0033】
いくつかの態様において、アミノ化合物はTrisである。いくつかの態様において、Trisの濃度は、5〜50mM、例えば、5〜30mMであり、標的を著しく溶出させない程度に十分低い。実施例に示されるように、これと組み合わせて、ある量のナトリウムイオンが、アパタイト表面からヒドロニウムイオンを置換するのに使用できる。しかし、別のところで述べるように、他のアルカリ土類陽イオンも使用できる。いくつかの態様において、pHは6.5〜9であり、例えば7.5〜8.5である。
【0034】
本明細書の開示内容の観点からは、固体表面からヒドロニウムイオンを受容するための本発明の方法に基づけば、他のアミノ化合物もまた、中和溶液に使用することができることが認識されるであろう。いくつかの態様において、中和溶液は、二つまたはそれを超える異なったアミノ化合物を、ヒドロニウム受容体として含む。
【0035】
C. 例示的な緩衝剤:スルホン化されたアミン
スルホン化されたアミン化合物とは、スルホキシド基及びアミンを含む化学的化合物をいう。アミンは、一級、二級、三級、または四級アミンであり得る。スルホキシド基は、直接アミンに結合していてもよいが、そうでなくてもよい。
【0036】
実施例に示されるように、十分高いpHで十分な量で用いられるとき、ピペラジン2スルホン酸(PIPES)は有効な中和剤である。いくつかの態様において、PIPESの濃度は、5〜500mMであり、例えば、5〜100mM、5〜50mMである。実施例に示されるように、ナトリウムイオン源は、アパタイト表面からヒドロニウムイオンを置換するのに用いられうる。いくつかの態様において、ナトリウム濃度は、1〜20mMであり、例えば、1〜10mMである。しかし、別のところで述べられるように、他のアルカリ土類またはアルカリ金属陽イオンも使用できる。いくつかの態様において、pHは7〜9であり、例えば7.5〜8.5である。
【0037】
いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物は、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)またはHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)である。いくつかの態様において、MESまたはHEPESの濃度は、5〜100mMであり、例えば、5〜50mMである。さらに、ナトリウムイオン源が、アパタイト表面からヒドロニウムイオンを置換するのに使用できる。いくつかの態様において、ナトリウム濃度は、1〜100mMであり、例えば、10〜80mM、例えば、10〜50mMである。しかし、別のところで述べられるように、他のアルカリ土類またはアルカリ金属陽イオンも使用でき、その濃度は上記のナトリウム濃度と同じである。いくつかの態様において、pHは6.5〜9であり、例えば7.5〜8.5である。
【0038】
いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物は、米国特許公開第2009/0264651に記載されたもののひとつであり、該公開公報の請求項12または13に記載されたものを含むが、これに限定されない。
【0039】
いくつかの態様において、スルホン化されたアミン化合物は、任意で、他のスルホン化されたアミンについて上述したのと同じ条件下で、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、またはMOPSO(3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)である。
【0040】
本明細書の開示内容の観点からは、固体表面からヒドロニウムイオンを受容するための本発明の方法に基づけば、他のスルホン化されたアミン化合物もまた、中和溶液に使用することができることが認識されるであろう。いくつかの態様において、中和溶液は、二つまたはそれを超える異なったスルホン化されたアミン化合物を、ヒドロニウム受容体として含む。いくつかの態様において、中和溶液は、一種または複数種のアミノ化合物及び一種または複数種のスルホン化されたアミン化合物を含む。
【0041】
D. アルカリ土類イオン及びアルカリ金属イオン
アルカリ金属陽イオン(及び任意でアルカリ土類陽イオンもまた)を、アパタイト表面からヒドロニウムイオンを置換するのに使用することができる。ヒドロニウムイオンは続いて、中和緩衝液の他の成分によって捕捉される。アルカリ金属イオン及び/またはアルカリ土類イオンは、始めはアミノ化合物またはスルホン化アミン化合物との塩の形態であり得、または、別途中和溶液に、例えば他の対イオン(例えば、-OH、-Cl等)の塩として添加され得る。
【0042】
III.アパタイト
当業者は、数々の種類のアパタイト固体表面が、本発明において使用できることを認識するであろう。セラミックヒドロキシアパタイトの商業的事例は、CHTタイプI及びCHTタイプIIを含むが、これに限定されない。セラミックフルオロアパタイトの商業的事例は、CFT(商標)タイプI及びCFTタイプIIを含むが、これに限定されない。特に記載がなければ、セラミックヒドロキシアパタイト及びセラミックフルオロアパタイトは、任意の平均直径の、すなわち約10、20、40、及び80μmが含まれるが、これに限定されない直径の、ほぼ球状の多孔性粒子をいう。ヒドロキシアパタイトまたはフルオロアパタイト、タイプ、及び平均粒子直径の選択は、当業者により決定することができる。他の非セラミックタイプのアパタイト固体表面(「ゲル」として売られているものを含む)もまた、本発明に基づいて使用され得る。非セラミック固体アパタイトの例は、合成マイクロ結晶(例えば、HA Ultragel(登録商標)(Pall Corp.))及びマイクロ結晶(例えば、Bio-Gel HTP、Bio-Gel(登録商標)HT、DNA-Grade HT(Bio-Rad)及びHypatite C(Clarkson Chromatography))を含むが、これに限定されない。
【0043】
試料をアパタイト支持体と接触させるための準備として、カラム内の化学的環境は通常平衡化される。これは、例えば、平衡化バッファーをカラムを通して流し、好適なpH、伝導率、同一性、分子量、及び他の関連する変数を確立することによって、達成されうる。
【0044】
いくつかの態様において、試料調製もまた、カラム平衡化バッファーに準拠する条件に平衡化される。いくつかの態様において、これは、ロードに先立って試料調製のpHを調節することを含む。
【0045】
いくつかの態様において、カラム及び試料調製物が平衡化されたのち、準備された試料を、カラムと接触させる。試料調製物は、例えば、約50〜600cm/hrの範囲で、直線的な流速で適用されうる。好適な流速は、当業者によって決定されうる。
【0046】
いくつかの態様において、本発明は、充填ベッドカラム、流動床/膨張床ベッドカラム、及び/または、支持体が試料調製物とある一定の時間混合されるバッチ操作で実行される。いくつかの態様において、アパタイト支持体が、カラムに充填される。いくつかの態様において、アパタイト支持体は、少なくとも内径5mmで、高さが少なくとも25mmのカラムに充填される。
【0047】
別の態様は、アパタイト支持体を、調製用途への適用のためにすべての寸法のカラムに充填して使用する。特定の適用の要件に基づいて、カラムの直径は、1cm未満から1mを越える範囲であり得、カラムの高さは、1cm未満から30cmを超える範囲であり得る。好適なカラムの寸法は、当業者により決定されうる。
【0048】
使用した後、混合型のカラムは、任意で洗浄、滅菌され、好適な薬剤中に保管され、任意で再使用されうる。実際、本発明の中和溶液の一つの利点は、アパタイトカラムの分解を避けることができる、または遅らせることができることである。このように、いくつかの態様において、カラムを10またはそれを超える回数、例えば、20を超える、30を超える、40を超える、または、50を超えるサイクルの精製に使用することができる。
【0049】
IV.使用
本発明の方法は、本質的に、複合試料中の任意の標的分子を精製するために使用できる。いくつかの態様において、精製される標的分子は、生物学的試料の成分である。そのような成分の例は、タンパク質、脂質、糖、炭水化物、ウイルス粒子、アミノ酸、核酸を含むがこれに限定されず、それらの組み合わせ、例えば、脂質付加されたまたはグリコシル化されたタンパク質、またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの態様において、本方法が適用される試料は、天然の、合成された、または組替えによる原料からの、未精製または一部精製された生体分子を含む。未精製試料は、例えば、血漿、血清、腹水、乳、植物抽出物、溶菌液、酵母溶菌液、または条件細胞培地から由来しうる。いくつかの態様において、一部精製された試料は、少なくとも一回のクロマトグラフィー、限外濾過、沈殿、他の分画工程、またはそれらの任意の組み合わせによって処理された非精製調製物に由来する。代表的な標的分子は、抗体(モノクローナル抗体及び/または抗体断片を含むが、これに限定されない)または他のペプチドまたはポリペプチドである。クロマトグラフィーの一つの工程または複数の工程は、分子ふるい、親和性、陰イオン交換、陽イオン交換、プロテインA親和性、疎水性相互作用、固定化金属親和性クロマトグラフィー、または混合型クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない任意の方法をも使用できる。沈殿工程または複数工程は、例えば、塩またはPEG沈殿、または有機酸、有機塩基、または他の薬剤を用いた沈殿を含みうる。他の分画工程は、結晶化、液液分離、または膜ろ過を含みうるが、これに限定されない。限外濾過は、試料の直接濃縮及び/またはダイアフィルトレーションを含みうる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、請求項の発明を限定するためではなく説明するために提供される。
【0051】
種々のアパタイトクロマトグラフィー支持体が、タンパク質精製のために使用されうる。しかし、吸着及びそれに続くアパタイト支持体からのタンパク質の溶出は、支持体の化学的分解に帰し、支持体の再使用を制限する、塩酸及び硝酸を含む強酸を発生しうる。
【0052】
我々は、緩衝化合物(塩基性アミノまたはアミノスルホナート化合物)及びアルカリ金属またはアルカリ土類化合物を含む溶液が、吸着されたタンパク質を著しく溶出することなしに、アパタイトクロマトグラフィー支持体の表面を中和することを発見した。したがってタンパク質溶出の間、より少ないヒドロニウムイオンがヒドロキシアパタイト表面から放出され、それによって、他の場合では起きるであろう条件よりも穏やかな条件を生じさせ、強酸の発生及びそれに続くアパタイト支持体の分解を避ける。
【0053】
実施例1
ロードした後の表面中和は、下記のように決定された。ヒドロキシアパタイト(CHTタイプI)カラムは、滅菌用溶液(1M NaOH/1M NaCl)で滅菌され、平衡化バッファー(5mMリン酸ナトリウム/0.1M NaCl、pH6.5)で軽くリンスされ、再生バッファー(0.4Mリン酸ナトリウム、pH7.0)で調整され、平衡化バッファー20容量(平衡化に10カラム容量、シミュレートされたタンパク質ロードとして8カラム容量、及びロード後のリンスのために2カラム容量)でリンスされ、1.0カラム容量の、0.1Mのアルギニンを含むpH11のロード後の溶液と接触させられた。我々は1.0カラム容量のロード後の工程によりpHが急速に8以上にシフトすることを見出した。カラムは、その後溶出バッファー(0.55M NaCl/5mMリン酸ナトリウム、pH6.5)で溶出された。溶出バッファー流出液のカルシウムイオン濃度は検出されず、pH11の0.1Mアルギニンがアパタイト表面の中和に十分であることが示された。
【0054】
実施例2
記載と同じ条件が繰り返されたが、今回は、ロード後のカラム容量は、わずか0.8だった。塩基性へのpHシフトは、ロード後の減少したカラム容量の結果として最小限に抑えられた。このこと及び上記の実験は、アルギニンがCHTカラムの表面の中和に効果的であることを示した。
【0055】
実施例3
我々はその後、吸着タンパク質に対するアルギニンのロード後の溶液の効果を試験した。異なる記載がない場合、下記の各実験においては、論じたロード後の種々の溶液に続き、タンパク質は、溶出バッファー(0.55M NaCl、5mMリン酸ナトリウム、pH6.5)で溶出された。ウシIgGを始めにCHTカラムに吸着させ、このカラムを5mM PB、0.1 NaCl pH6.5で平衡化し、続いて、ロード後の処理として、0.8カラム容量の0.1Mアルギニン pH 11と接触させた。ウシIgGはカラムには保持されなかった。それはおそらく、アルギニン溶液の高いpHにより、タンパク質が陽イオン交換によって置換されたからであると考えられる。
【0056】
実施例4
0.1Mクエン酸アルギニンpH8が、ロード後の溶液として使用された。すべてではないがほとんどのウシIgGがこの条件下で溶出され、より低いpHが、陽イオン交換体としてアルギニンが作用し、IgGを置換する能力を減少させたことを示した。我々は、120mMクエン酸pH8.3の使用が有効な表面中和剤である一方、CHTカラムを溶解することを見つけたので、このことは特に興味深かった。
【0057】
実施例5
ロード後におけるクエン酸アルギニンpH8.0の濃度は、20mMに減らされた。このロード後の濃度は、ロード後の工程の間保持されたタンパク質の量を非常に増加させ、IgGの 90%より多くが、4.67カラム容量のロード後の工程の後、カラムに保持された。
【0058】
実施例6
我々は、ピペラジン2スルホン酸(PIPES)が、ロード後の処理として十分高いpHで、十分な量で適用されるとき、非常に有効なカラム中和剤であることを特定した。例えば、pH8.25の25mM PIPES/5mM リン酸ナトリウム/25mM NaCl/4ppmカルシウムが、ロード後の処理として少なくとも6カラム容量使用されるとき、カラムを中和するのに有効であった。溶出バッファー流出液に含まれるカルシウムイオンは、4ppm未満であった。通常、表面が中和されなければ、カルシウムイオン濃度は、52ppmである。
【0059】
実施例7
種々の代替のロード後の溶液が試された。4mMリン酸3ナトリウムpH8.1; 20mM炭酸水素ナトリウムpH8.1または9.0; 50mM MES pH7.13; 20mMヒスチジンpH8.0; 50mM酢酸ナトリウム pH7.51のどれも、カラムの中和に有効でなかった。しかし、pH8.4の25mMヒスチジン、25mM NaCl、5mMリン酸は、中和に効果的であった。同様に、pH8.4の20mM MES、25mM NaCl、5mMリン酸も、中和に効果的であった。
【0060】
実施例8
我々は、Trisが、ロード後の処理として十分高いpHで、十分な量で適用されるとき、結合したたんぱく質を置換しない、有効なカラム中和剤であることを特定した。例えば、pH9.03または10.3の比較的高い濃度のTris(例えば、50mM)が、カラムの中和に十分であったが、IgGを著しく溶出する結果になった。しかし、25mM Tris、25mM NaCl、pH8.4は、ロード後の処理として6カラム容量が使用されるとき(1.9カラム容量では、カラムを中和するのに十分でなかった)、結合されたIgGを溶出しない一方、カラムを中和するのに有効であった。したがって、比較的低い濃度のTrisがいくつかのカラム容量を超えて適用されるとき、結合されたタンパク質の著しい溶出なしに(例えば、10%未満または5%未満)カラム表面を中和するのに有効である。
【0061】
別のタンパク質であり、pIが5.9〜6.4であるヒト血清アルブミン(HSA)は、ロード後の処理により優先して脱着されるタンパク質の一例である。これらの実験において、HSA及びIgGはカラムに吸着され、その後ロード後の処理において、4カラム容量の25mM Tris-HCl、25mM NaCl pH8.4で洗浄された。ロード後の処理は、カラム表面を中和し、HSAを脱着させたがIgGは保持された。したがってロード後の洗浄は、HSAを溶出するがIgG標的タンパク質を溶出せずにカラム表面を中和するのに有効である。
【0062】
このように、本発明のいくつかの態様において、タンパク質のアパタイトカラムへの吸収に続いて、一種または複数種の塩基性アミノ化合物またはスルホン化されたアミン化合物溶液は、pH6.5〜9.0で、100mM未満のアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム等)またはアルカリ土類(カルシウム、マグネシウム等)の存在下、標的タンパク質の溶出に先立って、カラム表面を中和するのに用いられる。いくつかの態様において、タンパク質は、pH6.5及び7.4の低いイオン強度の溶液で、始めに固体表面に吸着されているが、当業者は他の条件でもまた、タンパク質吸着が行われうることを認識するであろう。
【0063】
下記の表は、いくつかの異なるバッファー調製からの中和データを要約している。
合格=中和された。
不合格:著しいカルシウム浸出またはカラム質量の減少を示す。不合格の回は、中和する洗浄バッファーの体積が不十分であるか、pHが低すぎるか、洗浄バッファー中のNaClが足りないか、それらの組み合わせを示しうる。
【0064】
本明細書で述べられた実施例及び態様は、単に説明の目的のためのものであり、種々の修正または変更が、本発明の観点において当業者に示唆され、かつ、この出願の精神及び範囲、並びに、添付の請求項の範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用されたすべての出版物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照によって組み入れられる。