特許第5773468号(P5773468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5773468
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】ベルトクリーナ
(51)【国際特許分類】
   B65G 45/12 20060101AFI20150813BHJP
   B65G 45/16 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B65G45/12 B
   B65G45/12 A
   B65G45/16 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-121127(P2014-121127)
(22)【出願日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312010308
【氏名又は名称】マフレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大徳 一美
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−142027(JP,A)
【文献】 特開2014−043332(JP,A)
【文献】 実開昭57−147819(JP,U)
【文献】 実開昭56−084522(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0133990(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0116621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/12
B65G 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形棒状ゴム製の弾性体もしくは短冊状の金属製板バネの自由側端末にチップと防塵シートを取り付けたチップスティックを、ベルトコンベアの戻り側ベルトの下部に配設した架台の長溝に固定して、前記チップを前記戻り側ベルトに押圧して付着物を掻き取るベルトクリーナにおいて、複数の前記チップスティックの隣り合う側面を互いに摺動可能に接触させ、前記チップスティックの隣り合う側面に潤滑剤充填部を設け潤滑剤を充填したことを特徴とするベルトクリーナ。
【請求項2】
前記戻り側ベルトの幅方向の両端には、支持金具が配設されており、該支持金具には高さ調整自在な溝型受け具が位置決めボルトで取り付けられており、該溝型受け具には、前記架台の両端に取り付けられ四角枠を嵌めた丸パイプが載置され、該四角枠の上面には前記丸パイプを固定するための回転止めボルトが取り付けられており、前記溝型受け具の下面には前記四角枠の高さを調整するための高さ調整ボルトが取り付けられており、前記溝型受け具の側面には前記四角枠を固定するための固定ボルトが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のベルトクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原料の輸送に用いるベルトコンベアのベルト表面に付着した付着物を掻き取るベルトクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、製鉄所、化学プラント、ゴミ処理場、下水処理場などではベルトコンベアは最も効率のよい大量運搬手段であることから、各種原料、燃料、処理済み材料、廃棄物などを搬送するためにベルトコンベアが多数使用されている。一般にベルトコンベアは駆動プーリと従動プーリとの間に所定幅のゴム製ベルトをエンドレスに巻き付け、駆動プーリを回転させることによりベルトを両プーリ間で周回運動させるものである。通常搬送物はキャリアベルト(搬送側ベルト)に載せて搬送され、駆動プーリ側で払い出されリターンベルト(戻り側ベルト)となり従動プーリへ戻るが、戻り側ベルト表面に付着した搬送物(付着物)が途中で落下し、ベルト下に堆積する問題があった。又、リターンローラやキャリアローラを摩耗させたり、ローラに付着しベルトを蛇行させたりする問題があった。
【0003】
ベルトに搬送物が付着するとリターンベルト表面の付着物が落下し、ベルト下に堆積するが、特にスナッププーリ、テンションプーリ、リターンローラの下に選択的に落下・堆積しやすい。堆積物を放置するとリターンローラや戻りベルトの位置まで成長しこれらを摩耗させる。又、落下物の放置は作業環境の悪化や資源の損失となるため、定期的に落下物の回収作業を実施しているが、ベルトの全長に渡り落下しているので多大の労力と費用がかかっている。又、落鉱回収作業は機械化が困難であり人力に頼る必要があり3K作業の繰り返しとなっている。落下した落下物は回収して再利用する場合もあるが、土砂や小石などとの篩分けが必要となりコスト高となるため、廃棄処分する場合が多く資源の無駄遣いとなっている。このため、出来るだけベルトクリーナを用いて一定の場所で落下物を掻き落として効率的に回収する方法が採用されている。ベルトクリーナとしては、固定された掻き板をベルトに押し付けることにより付着物を掻き板で掻き取るスクレーパ式、ブラシをベルトに接触させるブラシ方式や高圧の流体を吹き付けて付着物を除去する洗浄方式があるが、構造が簡単なことや整備性の優れたスクレーパ方式が多用されている。
【0004】
コンベアベルトは使用するにつれ徐々に摩耗するが、均一に摩耗するのではなく中央部が選択的に大きく摩耗する。従ってベルトが古くなるとベルト中央部と端部では5〜6mmの厚み差が生じる。又、100m以上の機長の長いベルトになると、コストや作業時間の制約の点からベルトの取り換えを全長に渡り一括してやらない場合もあり、中央部が大きく摩耗している古いベルトと摩耗していない新しいベルトが混在することもある。摩耗状態が不均一なベルトに対するベルトクリーナの押圧調整は摩耗の大きな部分即ちベルト中央部の付着物がきちんと掻き取れるようにするのであるが一枚板のベルトクリーナを中央の凹み部に当接させるのは不可能である。又、ベルトのエンドレス部は経年的に剥離してエンドレス端部が剥がれてくる。この剥がれ部はベルト表面から突出するのでベルトクリーナの撓み限界を超えるとベルトクリーナを破損したり、ベルトクリーナの押圧力が大きいと逆にエンドレスの剥がれ量を助長したりしてベルト切断の要因となる。従って、ベルトクリーナはベルト表面の付着物を掻き取るために必須のアイテムではあるが、適切な取り付けや使用方法を間違うとベルトを破損させ生産障害を起こす場合がある。又、ベルトクリーナの付着物掻き取り性能を適正に維持するためには、ベルト稼動中に付着物の掻き取り状況を見ながらベルトクリーナとベルトとの接触圧の調整を行うのが最良であるが、安全上の問題で困難であった。このようにベルトクリーナがクリアするべき課題はたくさんあり最大公約数的に全ての課題に対応するのは極めて困難である。今まで様々な形状、機能のベルトクリーナが提案されているが未だメンテナンスフリーで掻き取り効率に優れたベルトクリーナは具現化されていない。
【0005】
スクレーパ式のベルトクリーナに必要な要件は以下でありこの条件を全てクリアしないとベルトコンベアの多様な付着物に追随できない。(1)確実に、長時間にわたり付着物を掻き取ることができる。(2)ベルトに対するベルトクリーナの押し付け力調整をベルトコンベア稼働中に実施できる。(3)チップの交換が容易である。(4)掻き取り部の変形能力が大きく強靭であり、ベルト逆転にも対応可能である。(3)掻き取り部のチップの寿命が長く調整周期や取り換え周期が長い。(5)ベルトクリーナ本体に付着物が付着しない、もしくは付着物の量が極めて少ない。(6)付着物がベルトに強固に付着している場合やベルトのエンドレス部(接続部)に剥がれが生じている場合、チップがベルトの搬送方向に大きく撓むことによりこれらをやり過ごすことによりベルトクリーナの破損を回避できる。(7)ベルトクリーナの構造がシンプルでコンパクトでありヘッドプーリの下部にも取り付け可能である。(8)ベルトクリーナの取り付け取り外しが容易である。以上の特性を満足しようとして従来多種多様のベルトクリーナが提案されているがそれぞれ問題あり根本的な方法は具現化されていない。
【0006】
特開2002−46851号広報において、スクレーパブレードを弾性体に取り付けてベルトに押圧する方法が提案されている。この方法の問題点は以下である。(1)1枚のスクレーパブレードの幅が広いので、ベルト中央部に向けて摩耗が大きくなるようなベルトの凹凸に柔軟に追随できないので掻き取り残しが生じる。(2)スクレーパブレードの幅が広いために大きな押圧力が必要であり、その分ブレードの剛性が高くなるため、強固な付着物やエンドレスの剥がれによる衝撃を瞬間的に回避できないので大きな衝撃をまともに受けることになりベルトクリーナやベルトを破損する危険性がある。(3)超硬合金製掻き刃チップは鋼鈑製ブレードにロウ付されており、チップが摩耗した場合は掻き刃チップとブレード本体を一体で交換する必要があり取り換えのためのコストが高くなる。
【0007】
特開2000−7135号広報において、各チップは鋼板で形成された矩形の基板に帯板状の超硬合金がロウ付けされている。この方法においては、チップは板に取り付けられており、板の幅が広い為ベルトに均一に当接できず掻き取り残しが発生する問題がある。又、チップが摩耗した場合はチップ取り付け板全体を交換する必要があり、コスト高となっている。
【0008】
特開2014−043332号広報において、チップと金属製板バネを接合してなる複数のチップスティックを、ベルトの幅方向に並べ、チップスティックの下部を、ベルトの幅方向に配設した架台に固定したベルトクリーナが提案されているが、チップスティック表面にダストが付着しチップスティックの摺動面の摩擦が大きくなる問題があった。
【0009】
特願2014−049700号広報において、ゴムからなる弾性体の自由端部にアンカー部を埋め込んでチップスティックを形成し、チップスティックを戻り側ベルトの幅方向に配設した架台に複数並べ、チップスティックの隣り合う側面を互いに摺動可能にして弾性体の固定端を固定したベルトクリーナが提案されているが、チップスティック表面にダストが付着しチップスティックの摺動面の摩擦が大きくなる問題があった。
【0010】
メーカーカタログにカバーシートが設けられたベルトクリーナが提案され、掻き取られた付着物がベルトクリーナに付着しないように工夫しているが、カバーシートの幅が広いため大量の付着物が堆積し重たくなり慣性モーメントが増大するのでベルトクリーナの動きが低下しベルトの凹凸に柔軟に追随できない問題があった。チップごとにそれぞれカバーシートが付いているのではなく、複数のチップに共通のカバーシートが1枚付いているだけであり必然的にカバーシートが広くなりダスト堆積物で重たくなっていた。又、カバーシートはチップの後面に取り付けられているので、チップ同士の隙間にダストが侵入してチップの動きを阻害していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献01】特開2002−46851号広報
【特許文献02】特開2000−7135号広報
【特許文献03】特開2014−043332号広報
【特許文献04】特願2014−049700号広報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献01】カバーシート付きベルトクリーナ(メーカーカタログ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以下の課題を解決するものである。(1)ベルト表面の摩耗状況や付着物の付着力に応じて柔軟にチップが追随して確実に付着物を掻き取ることができるようにする。そのためにはチップの幅を小分割にしてベルトの小さな凹凸に細かに追随できるようにする。(2)強固な付着物やエンドレスの剥がれなどの障害物に対してはチップが逃げられるようにする。その手段として、チップをベルトの搬送方向に大きく撓ませてこれらの障害物をやり過ごせるようにする。又、高速で衝突する障害物を瞬時に回避するためにチップスティックの幅を極力小さくして軽量化しチップスティックの慣性モーメントを低減する。(3)複数のチップスティックを押え板で押し付けた際にチップスティックが溝から脱落しないようにする。(4)チップスティックの隣り合う側面を互いに接触せしめて配列することにより隣り合う側面間にダストが侵入しないようにする。(5)チップスティックに防塵カバーを設け、チップスティックの隣り合う側面にダストが侵入しないようにする。(6)防塵カバーに堆積したダストを払い落とすようにする。(7)チップスティックの隣り合う側面に潤滑剤充填部を設けて潤滑剤を充填し、隣り合う側面同士の摺動を円滑にするとともに、チップスティック間にダストが侵入しないようにする。(8)チップスティックの固定部に取り付け座を設け、チップスティック同士を平行に取り付けるとともに抜け防止を図る。(9)チップをセラミックスや超硬金属で製作し耐摩耗性を向上させる。本発明は以上の課題を満足するベルトクリーナを具現化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、四角形棒状ゴム製の弾性体もしくは短冊状の金属製板バネの自由側端末にチップと防塵シートを取り付けたチップスティックを、ベルトコンベアの戻り側ベルトの下部に配設した架台の長溝に固定して、前記チップを前記戻り側ベルトに押圧して付着物を掻き取るベルトクリーナにおいて、複数の前記チップスティックの隣り合う側面を互いに摺動可能に接触させ、前記チップスティックの隣り合う側面に潤滑剤充填部を設け潤滑剤を充填したことを特徴とするベルトクリーナである。
【0015】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記戻り側ベルトの幅方向の両端には、支持金具が配設されており、該支持金具には高さ調整自在な溝型受け具が位置決めボルトで取り付けられており、該溝型受け具には、前記架台の両端に取り付けられ四角枠を嵌めた丸パイプが載置され、該四角枠の上面には前記丸パイプを固定するための回転止めボルトが取り付けられており、前記溝型受け具の下面には前記四角枠の高さを調整するための高さ調整ボルトが取り付けられており、前記溝型受け具の側面には前記四角枠を固定するための固定ボルトが取り付けられていることを特徴とするベルトクリーナである。
【発明の効果】
【0016】
第1の解決手段による効果は、チップスティックの隣り合う側面に潤滑剤充填部を設けて潤滑剤を充填し、隣り合う側面同士の摺動を円滑にするとともに、チップスティック間にダストが侵入しないことである。
【0017】
第2の解決手段による効果は、チップの位置決めや固定が簡単に正確かつ安全にできることである。即ち、1ステップで、チップの先端をベルトに近接せしめて溝型受け具を位置決めボルトで指示金具に固定する。2ステップで、丸パイプを廻してチップとベルトの角度を決め四角枠に丸パイプを回転止めボルトで固定する。3ステップで、高さ調整ボルトで角パイプの高さを微調整しチップをベルトに適宜量押し付ける。4ステップで溝型受け具側面の固定ボルトで四角枠を溝型受け具に固定することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】はゴム弾性体のチップスティックをベルトに取り付けた斜視図である。
図2】はゴム弾性体のチップスティックの側面図である。
図3】はチップをゴム弾性体端末側面に取り付けた縦断面図である。
図4】はゴム弾性体のチップスティックの押し付け座の例を示した図である。
図5】は板バネのチップスティックをベルトに取り付けた斜視図である。
図6】はチップを板バネに取り付けた縦断面図である。
図7】はチップスティックの前面と後面にチップを取り付けた部分断面図である。
図8】は架台取り付け部の横断面図である。
図9】は架台取り付け部の側面の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を請求項1及び2、図1ないし図9に基づいて説明する。
【0020】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、四角形棒状ゴム製の弾性体22もしくは短冊状の金属製板バネ23の自由側端末22a、23aにチップ21と防塵シート70を取り付けたチップスティック20を、ベルトコンベアの戻り側ベルト31の下部に配設した架台40の長溝40aに固定して、前記チップ21を前記戻り側ベルト31に押圧して付着物を掻き取るベルトクリーナ10において、複数の前記チップスティック20の隣り合う側面22b、23bを互いに摺動可能に接触させ、前記チップスティック20の隣り合う側面22b、23bに潤滑剤充填部25を設け潤滑剤を充填したベルトクリーナ10である。
【0021】
チップ21の材質はセラミックスや超硬合金やサーメットを使用できる。セラミックスには例えばアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、炭化ケイ素などを使用できる。超硬合金には例えばWC−Co系合金、WC−TiC−Co系合金、WC−TaC−TaC−Co系合金などを使用できる。サーメットはTiCやTiN、NbCを主成分とし、Co、Ni、Mo等の金属との複合材料が使用できる。
【0022】
図2図3において2点鎖線で囲っている部分がチップ21と四角形棒状のゴム製の弾性体22をネジ24で固定したチップスティック20であり、図5図6において2点鎖線で囲っている部分がチップ21と短冊状の金属製板バネ23をネジ24で固定したチップスティック20である。
【0023】
図2において、四角形棒状のゴム製の弾性体22からなるチップスティック20は、架台40の溝40aに挿入配列されている。図5において、短冊状の金属製板バネ23からなるチップスティック20は架台40の溝40aに挿入配列されている。図2図5に示すように、架台40は押し付け板41、受け板42、底板43からなり溝40aを形成している。押し付け板41にはナット45が溶接され、ナット45には押し付けボルト44が取り付けられ、押し付けボルトで押え板46を押し付けることによりチップスティック20を受け板42に押し付けて固定している。
【0024】
四角形棒状のゴム製の弾性体22はチップ21をベルト30に押圧するための押圧力が必要であるとともにベルト30の微妙な凹凸に柔軟に追随し復元力を有する必要があるためにゴムを使用する。ゴムには例えば天然ゴムやアクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが使用できる。
【0025】
四角形棒状のゴム製の弾性体22の横断面は四角形であるが正方形もしくは正方形に近い棒状が望ましい。正方形にすることによりチップ21が偏荷重を受けた際に捩じれにくくなる。四角形棒状のゴム製の弾性体22の捩じれを防止することにより隣り合うチップスティック20の摺動性が円滑になり、チップスティック20間に隙間が生じることがないのでダストが侵入してチップスティック20同士が互いに固着することがない。四角形棒状のゴム製の弾性体22の幅Wは10〜30mm角がよい。10mm以下であると剛性が弱く掻き取り能力が小さくなる。30mmより大きくなると剛性が大きすぎて撓みが小さくなりベルト30の小さな凹凸に柔軟に追随しなくなる。四角形棒状のゴム製の弾性体22の長さLは50〜300mmよい。50mmより短いと撓みが小さすぎてベルトへ30の追随性が低下する。300mmより長いと撓み量が大きすぎて掻き取り力が低下する。四角形棒状のゴム製の弾性体22の撓み量は幅W(図1記載)、長さL(図3記載)によって適宜決定できる。
【0026】
短冊状の金属製板バネ23はチップ21をベルト30に押圧するための押圧力が必要であるとともにベルト30の微妙な凹凸に柔軟に追随し復元力が必要であるために、SUS、炭素鋼、チタン、銅板、バネ鋼などの金属が使用できる。短冊状の金属製板バネ23の横断面は図5図6に示すように短冊状であり、縦方向に細長い長方形である。短冊状の金属製板バネ23は隣り合う側面23bの厚みTが薄いのでダストがチップスティック間に侵入した場合でも固着することなく円滑な摺動運動を持続できる。短冊状の金属製板バネ23の厚みは1〜5mmがよい。1mmより薄いと剛性が弱く撓みすぎる。5mmより厚いと剛性が大きすぎて撓みが小さくなりベルト30の凹凸に対する追随性が低下する.短冊状の金属製板バネ23の幅Wは10〜30mmがよい。10mm以下であると剛性が弱く掻き取り能力が小さくなる。30mmより大きくなると剛性が大きすぎて適切に撓まなくなりベルト30への追随性が低下する。短冊状の金属製板バネ23の長さLは50〜300mmよい。50mmより短いと撓みが小さすぎてベルト30への追随性が低下する。300mmより長いと撓み量が大きすぎて掻き取り力が低下する。短冊状の金属製板バネ23の撓み量は図7に示す板厚T、幅W、長Lさによって適宜決定できる。
【0027】
防塵シート70の材料には、フッ素、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド、ナイロン、シリコン、アクリル、ポリエステルなどの樹脂シートが使用できる。ダストの剥離性に対してはフッ素樹脂シートが優れている。
【0028】
図1図2図3は四角形棒状のゴム製の弾性体22からなるチップスティック20に防塵シート70を取り付けたものである。図5図6は短冊状の金属製板バネ23からなるチップスティック20に防塵シート70を取り付けたものである。図3は、防塵シート70を、ネジ24で四角形棒状のゴム製の弾性体22と座金26で挟んで取り付けた例を示している。図6において、防塵シート70を、ネジ24で短冊状の金属製板バネ23と座金26で挟んで取り付けた例を示している。座金26により防塵シート70を均一かつ強固に抑えることができる。ネジ24は少なくとも2本以上使用するのがよい。チップ21や座金25や防塵シート70がベルトからの水平力や振動を受けて回転するのを防止できる。
【0029】
防塵シート70は四角形棒状のゴム製の弾性体22や短冊状の金属製板バネ23の細長い形状に合うように短冊状にしている。防塵シート70の幅はチップスティック20同士の摺動を妨げないように、チップ21や四角形棒状のゴム製の弾性体22及び短冊状の金属製板バネ23の幅Wと同一もしくは小さめにする。防塵シート70を四角形棒状のゴム製の弾性体22や短冊状の金属製板バネ23と同様に短冊状にしたことによりチップスティック20と一体に搖動することができるのでチップスティック20の摺動運動を阻害しない。又、防塵シート70の長さはチップスティック20の長さLと同程度にする。短すぎるとチップスティック20間にダストが侵入する問題がある。長すぎると重たくなりチップスティック70の摺動運動を阻害する。防塵シート70の厚みは0.1〜1.0mmがよい。0.1mmより薄いと剛性がなくなり防塵シート70がダストの重みでチップスティック20と密着してしまう問題がある。1.0mmより厚いと防塵シート70の剛性が大きくなり、防塵シート70が隣同士で摺り合うときにチップスティック20の摺動性が低下する。
【0030】
チップスティック20同士は接触して摺動しているので、チップスティック20間にダストは侵入しないが、チップスティック20の表面に堆積したダスト同士が結合するので次第にチップスティック20の摺動運動が低下する。防塵シート70を設けることによりダストは防塵シート70に堆積し、直接チップスティック20に堆積することがないので、チップスティック20間へのダストの侵入を防止できる。又、ダストは防塵シート70間で分断され連結することがないのでチップスティック20の摺動運動を阻害しない。
【0031】
図3は、四角形棒状のゴム製の弾性体22に取り付けたチップ21の前面21aに短冊状の防塵シート70を座金26で挟んでネジ24止めしたものである。図6は、短冊状の金属製板バネ23に取り付けたチップ21の前面21aに短冊状の防塵シート70を座金26で挟んでネジ24止めしたものである。
【0032】
図3図5に示すように、チップ21は四角形棒状のゴム製の弾性体22もしくは短冊状の金属製板バネ23から突き出して取り付けているので、チップ21の前面に防塵シート70を取り付けることにより、防塵シート70と四角形棒状のゴム製の弾性体22もしくは短冊状の金属製板バネ23の間に空間70aが形成されることから、防塵シート70にダストが堆積した際にダストの重みでチップスティック20に密着することがないので、チップスティック20の円滑な摺動運動が維持できる。又、防塵シート70の隙間からダストや汚水が浸み込んだ際でも、ダストや汚水は防塵シート70に沿って滑り落ちていきチップスティック20の間に侵入することがない。
【0033】
図7に示すように、四角形棒状のゴム製の弾性体22もしくは短冊状の金属製板バネ23の自由側端末22a、23aの前面20aと同様に後面20bにもチップ21を取り付けることにより、後面20bの防塵シート70とチップスティック20の間に空間70aを形成できるのでチップスティック20の間にダストや汚水が侵入しなくなる。
【0034】
チップスティック20の固定側端末22c、23cに取り付け座22d、23dを設けることで、押え板46で受け座22d、23dを溝底43に押し付けることができるので、溝底43に対してチップスティック20を直立にセッティングできる。その結果チップスティック20同士を平行に配列できるので、チップスティック20の隣り合う側面22b、23bの摺動を円滑にすることができる。又、チップスティック20の抜け防止となる。
【0035】
図2図3に示すように、四角形棒状のゴム製の弾性体22からなるチップスティック20の受け座22dは、四角形棒状のゴム製の弾性体22の固定部端末22cに突起を設けて受け座22dを形成してもよい。又、図4(a)(b)に示すように四角形棒状のゴム製の弾性体22の固定部端末22cに凹み部を設けて受け座22dを形成してもよい。この場合は押え板46に突起部46aを形成する必要がある。図5図6に示すように短冊状の金属製板バネ23からなるチップスティック20の受け座23dは、短冊状の金属製板バネ23の固定側端末23cをL字状に曲げて形成することができる。
【0036】
チップスティック20の隣り合う側面22b、23bに潤滑剤充填部25を設けて潤滑剤を充填し、隣り合う側面22b、23b同士の摺動を円滑にする。又、予めチップスティック20間に潤滑剤が充填することにより外部からダストが侵入できなくなる。又、潤滑剤は撥水性があるのでチップスティック20間に水分が侵入しない。
【0037】
潤滑剤充填部25はチップスティック20の隣り合う側面22b、23bに設ける。図1図2図3図5図6図7に示すように、チップスティック20に万遍なく潤滑剤を供給するために、潤滑剤充填部25の形状はチップスティック20の長手方向に沿って細長い溝を形成するのがよい。短冊状の金属製板バネ23のように隣り合う側面23bが狭い場合は、図7に示すように横方向潤滑剤充填部25aや斜め方向潤滑剤充填部25bを形成する方法もある。いずれにしても長期に渡り安定して潤滑剤を保持できる構造であればよい。四角形棒状のゴム製の弾性体22の潤滑剤充填部25の幅は1.0〜5.0mm程度が望ましい。1.0mmより小さいと潤滑剤を十分に充填できないのですぐに潤滑剤が消耗する。5.0mmより大きいとチップスティック20が摺動する際に潤滑剤充填部25が露出し潤滑剤がこぼれる問題がある。短冊状の金属製板バネ23の潤滑剤充填部25の幅は0.1〜3.0mm程度が望ましい。0.1mmより小さいと潤滑剤を十分に充填できないのですぐに潤滑剤が消耗する。3.0mmより大きいとチップスティック20が摺動する際に潤滑剤充填部25が露出し潤滑剤がこぼれる問題がある。
【0038】
潤滑剤は粘性の高いグリースが適しており、フルオロエーテルグリース、シリコングリース、リチウム石鹸基グリース、アルミニウム石鹸基グリース、ナトリウム石鹸基グリースなどがありいずれのグリースも使用可能である。
【0039】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記戻り側ベルト31の幅方向の両端には、支持金具50が配設されており、該支持金具50には高さ調整自在な溝型受け具60が位置決めボルト51で取り付けられており、該溝型受け具60には、前記架台40の両端に取り付けられ四角枠61を嵌めた丸パイプ48が載置され、該四角枠61の上面61aには前記丸パイプ48を固定するための回転止めボルト66が取り付けられており、前記溝型受け具60の底板60bには前記四角枠61の高さを調整するための高さ調整ボルト62が取り付けられており、前記溝型受け具60の側板60cには前記四角枠61を固定するための固定ボルト64が取り付けられているベルトクリーナ10である。
【0040】
架台40の両端にはフランジ47を設け、フランジ47に丸パイプ48を取り付ける。丸パイプ48に四角枠61を嵌め溝型受け具60に載置する。位置決めボルト51、位置決めナット52で指示金具50に溝型受け具60の主板60aを固定する。支持金具50には長穴50aが設けてあり溝型受け具60の高さ調整が可能である。丸パイプ48を廻しながらチップ21とベルト30の接触角度を調整し、回転止めボルト66で丸パイプ48を四角枠61に固定する。回転止めボルト66は四角枠61に固定した回転止めナット67で締め付けられる。溝型受け具60の底板60bに取り付けた高さ調整ボルト62で四角枠61の高さを調整する。高さ調整ボルト62は底板60bに固定した高さ調整ナット63で締め付けられる。四角枠61の高さを調整することによりチップ21とベルト30の押し付け量を調整する。押し付け量の調整が完了したら溝型受け具60の側板60cに取り付けた固定ボルト64で四角枠61を溝型受け具60に固定する。固定ボルト64は側板60cに取り付けられた固定ナット65で締め付けられる。
【0041】
1ステップで、チップ21の先端をベルト30に近接せしめて溝型受け具60を位置決めボルト51で支持金具50に固定する。2ステップで、丸パイプ48を廻してチップ21とベルト30の角度を決め、回転止めボルト66で丸パイプ48を四角枠61に固定する。3ステップで、高さ調整ボルト62で四角枠61の高さを微調整しチップ21をベルト30に適宜量押し付ける。4ステップで溝型受け具60側板60cの固定ボルト64で四角枠61を溝型受け具60に固定する。
【0042】
ベルトクリーナ10はベルト30に対して、ベルト30とチップ21の接触角度、ベルト30とチップ21の押し付け量を調整する必要がある。チップ21の角度調整は、架台40の両端に丸パイプ48を取り付けて、丸パイプ48を廻すことにより簡単に調整ができる。角度調整が完了したら、四角枠61の回転止めボルト66で角度を固定する。チップ21の押し付け量調整は、溝型受け具60の底板60bに取り付けた高さ調整ボルト62で四角枠61の高さを調整することで正確に調整できる。高さ調整が完了したら、溝型受け具60の側板60cの固定ボルト64で四角枠61を固定する。
【符号の説明】
【0043】
10:ベルトクリーナ
20:チップスティック
20a:前面
20b:後面
21:チップ
21a:前面
22:四角形棒状のゴム製の弾性体
22a:自由側端末
22b:隣り合う側面
22c:固定側端末
22d:受け座
23:短冊状の金属製板バネ
23a:自由側端末
23b:隣り合う側面
23c:固定側端末
23d:受け座
24:ネジ
25:潤滑剤充填部
25a:横方向潤滑剤充填部
25b:斜め方向潤滑剤充填部
26:座金
30:ベルト
31:戻り側ベルト
40:架台
40a:長溝
41:押し付け板
42:受け板
43:底板
44:押し付けボルト
45:ナット
46:押え板
46a:突起部
47:フランジ
48:丸パイプ
50:支持金具
50a:長穴
51:位置決めボルト
52:位置決めナット
60:溝型受け具
60a:主板
60b:底板
60c:側板
61:四角枠
61a:上面
62:高さ調整ボルト
63:高さ調整ナット
64:固定ボルト
65:固定ナット
66:回転止めボルト
67:回転止めナット
70:防塵シート
70a:空間
T:厚み
W:幅
L:長さ
【要約】
【課題】弾性体の先端にチップを取り付けたチップスティックをベルトの幅方向に複数並べたベルトクリーナは、隣り合うチップスティック同士がお互いにベルトの幅方向に支え合うことで、ベルトの長手方向にだけ搖動運動し、チップスティック同士が円滑に摺動し、ベルトの凹凸に対して柔軟に当接し、強固な付着物やベルトのめくれに対しては瞬時に回避する機能を有するが、チップスティック間にダストや汚水が侵入し摺動運動の円滑性が失われチップの追随性が低下していた。
【解決手段】チップスティックに短冊状の防塵シートを設け、チップスティック上へのダストの体積を防止しチップスティック間へのダストの侵入を防止した。又、防塵シートはチップの前面に取り付け、防塵シートと四角形棒状のゴム製の弾性体もしくは短冊状の金属製板バネの間に空間を形成し、防塵シートがチップスティックに接触しないようにしダスト侵入を防止した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9