【実施例】
【0027】
[材料]
実施例において、使用したものは以下のとおりである。
CNT:
#1:L−SWNT(直径2nm未満、長さ5〜15μm、純度90%)
#2:S−SWNT(直径2nm未満、長さ1〜5μm、純度60%)
#3:L−MWNT(直径60〜100nm、長さ5〜15μm、純度95〜98%)
#4:S−MWNT(直径60〜100nm、長さ1〜2μm、純度95〜98%)
(いずれもShenzen Nanotechnology Port(NTP)社製)
#5:HiPco SWNT(直径約2nm、長さ約1μm)(UNIDYM, INC.)
フラーレン:
#6:フラーレン(C
60)
#7:水素化フラーレン(C
60H
n;n=約10)
#8:酸化フラーレン(C
60O:約40%、C
60O
2:約30%)
#9:水酸化フラーレン(C
60(OH)
n;n=約10)
いずれもフロンティアカーボン株式会社製
DNA:サケ精子DNA(フナコシ社製)
合成オリゴヌクレオチド:オペロン社に合成委託、製造
酵素:
A:ズブチリシンカールスベルグ(Sigma Alrich社、米国)
B:トリプシン(Becton Dickinson社製)
C:カタラーゼ(ウシ肝臓由来:和光純薬工業株式会社)
D:α−アミラーゼ(Bacillus subtilis由来:和光純薬工業株式会社)
E:リパーゼ(ブタ膵臓由来:和光純薬工業株式会社)
F:エステラーゼ(Saccharomyces cerevisiae由来:Fluka(シグマ・アルドリッチ)社)
G:エラスターゼ(ブタ膵臓由来:和光純薬工業株式会社)
H:グルコースオキシ
ダーゼ(インビトロジェン社製)
振とう機:TAITEC BioShaker M・BR−022UP
【0028】
[酵素活性の算出方法]
酵素のNative activity(以下、基準酵素活性)は、何の処理も施していない酵素の単位質量(mg)あたりの酵素活性である。DNA/炭素同素体/酵素複合体、又は炭素同素体/酵素複合体の酵素活性は、後述する方法で、DNA/炭素同素体又は炭素同素体に施与された酵素量単位質量あたりの酵素活性を、上記基準酵素活性で除して、相対酵素活性を算出した。
【0029】
[実施例1〜13]
表1に示す組み合わせで、以下の方法により、酵素が施与された炭素同素体を調製した。
【0030】
[DNAが施与された炭素同素体の調製]
最初に、炭素同素体を1mg/mlの濃度で蒸留水に添加後、8時間超音波処理を行い、以後の炭素同素体分散液とした。次に、10mg/mlに調製したDNA水溶液を15μl、1mg/mlの炭素同素体分散液を50μl、蒸留水235μlを混合し、振とう処理を1200rpm、30℃で1時間行った。
【0031】
なお、実施例3及び4においては、15μlの1mg/ml HiPco社製のSWNT(直径約2nm、長さ約1nm)、75μlの200mMポリA、ポリG、ポリC、ポリTオリゴヌクレオチド、及び10μlの蒸留水を混合後、1200rpm、30℃で1時間振とう処理を行った。
【0032】
[DNA及び酵素が施与された炭素同素体の調製]
上記で調製したDNAが施与された炭素同素体の分散液に、20mg/mlの酵素溶液を45μl加え、1200rpm、30℃で1時間振とう処理を行った。処理後、該溶液を15000rpm、4℃で30分遠心処理し、遠心上清を取り除いた。沈殿物を滅菌蒸留水に再分散して、さらにマイクロピペットを用いたピペッティング操作で沈殿を懸濁後、上清を取り除いた。この操作を5回繰り返した。
【0033】
毎回の遠心後に回収した遠心上清中の酵素量を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより測定し、上清中に含まれる遊離酵素量の総和を算出した。初めに炭素同素体/DNA混合溶液中に加えた酵素量から、全上清中の酵素量の合計(遊離酵素量の総和)を引いて、炭素同素体に施与された推定酵素量を算出した。濃度測定に用いたBCAアッセイは、PIERCE社のBCAProteinAssayKit、及びMicroBCAProteinAssayKitを用いて行った。
【0034】
実施例及び比較例における、炭素同素体、DNA、酵素の組み合わせを、表1に示す。
【表1】
【0035】
[比較例1−1及び1−2]
比較例1−1及び1−2では、CNTを用いず、10mg/mlに調製したDNA水溶液を15μlと、20mg/mlの酵素溶液を45μlとを混合し、1200rpm、30℃で1時間振とうして、混合液を調製した。
【0036】
[比較例2−1、2−2及び3]
比較例2−1、2−2及び3では、DNAの施与を行わずに、炭素同素体の分散液にプロテアーゼのみを実施例1と同様にして施与した。
【0037】
以上のようにして得られた試料について、下記評価を行った。
【0038】
[実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2、2−1及び2−2:プロテアーゼ活性の比較]
下表2に示す各試料のプロテアーゼ活性を、アンソン法(Anson ML (1938), J Gen Physiol 22, 79-89)で測定した。基質にハマステインカゼイン(メルク社製)を用い、ズブチリシンは50℃、トリプシンは37℃で、pH10.5で反応させた。結果を
図1に示す。いずれのプロテアーゼも、実施例1では基準プロテアーゼ活性の6〜11倍の相対プロテアーゼ活性を示したが、DNAを用いていない比較例2では、基準プロテアーゼ活性の20%程度の相対プロテアーゼ活性を示した。以上の結果から、CNTとDNAの2つの要素が、プロテアーゼ活性を相乗的に高めると考えられた。
【表2】
【0039】
[実施例2−1〜2−4:単層CNT及び多層CNTの比較]
下表3に示す各試料のプロテアーゼ活性を、実施例1と同様に測定した。結果を
図2に示す。試験したすべての形状のCNTで、基準プロテアーゼ活性の2〜6倍の相対プロテアーゼ活性が確認できた。
【表3】
【0040】
[実施例3−1〜3−4:合成オリゴヌクレオチド種の比較]
下表4に示す各試料のプロテアーゼ活性を、実施例1と同様に測定した。結果を
図3に示す。ポリG及びポリdCでは12〜20倍の相対プロテアーゼ活性が観測された。
【表4】
【0041】
[実施例4:合成オリゴヌクレオチドの塩基長がプロテアーゼ活性に及ぼす影響]
プロテアーゼ活性は実施例1と同様に測定した。結果を
図4に示す。ポリdGでは8〜25塩基長の間で全体的に相対プロテアーゼ活性が7〜25倍の範囲であり、10塩基長の場合、相対プロテアーゼ活性が最も高かった。ポリdCでは、10〜30塩基長の間で相対プロテアーゼ活性が9〜46倍の範囲であり、15塩基長の場合に相対プロテアーゼ活性が最も高くなった。
【0042】
[実施例5:DNAおよびプロテアーゼが施与されたHiPco SWNTの相対プロテアーゼ活性]
プロテアーゼ活性は実施例1と同様に測定した。結果を
図5に示す。DNAおよびプロテアーゼが施与されたHiPco SWNTも、高い相対プロテアーゼ活性(約6倍)を示した。
【0043】
[実施例6及び比較例3:DNAおよびプロテアーゼが施与されたフラーレンの相対プロテアーゼ活性]
プロテアーゼ活性は実施例1と同様に測定した。結果を
図5に示す。DNA及びプロテアーゼが施与されたフラーレンは、DNA及びプロテアーゼが施与されたCNTと同様に、高い相対プロテアーゼ活性(約4.5倍)を示した。DNAを用いていない比較例3では、ほとんどプロテアーゼ活性を示さなかった。以上の結果から、フラーレンとDNAの2つの要素も、プロテアーゼ活性を相乗的に高めると考えられた。
【0044】
[実施例7−1〜7−4、比較例1−1及び比較例3:DNAおよびプロテアーゼが施与された修飾フラーレンの相対プロテアーゼ活性の比較]
下表5に示す各試料のプロテアーゼ活性を、実施例1と同様に測定した。結果を
図6に示す。いずれのDNA及びプロテアーゼが施与された修飾フラーレンも、DNA及びプロテアーゼが施与されたフラーレンと同様の相対プロテアーゼ活性を示した。
【表5】
【0045】
[実施例8:DNAおよびカタラーゼが施与されたCNTの相対カタラーゼ活性]
カタラーゼ活性は、Catalase Assay Kit(Cayman Chemical Company社)を用い、添付の使用説明書に従って測定した。結果を
図7に示す。DNA及びカタラーゼが施与されたCNTは、基準カタラーゼ活性の約2.5倍の相対カタラーゼ活性を示した。
【0046】
[実施例9:DNAおよびアミラーゼが施与されたCNTの相対アミラーゼ活性]
アミラーゼ活性は、0.2mg/mlのアミラーゼ溶液、又は酵素濃度 0.12mg/mlのDNA及びアミラーゼが施与された炭素同素体の分散液0.2mlを、反応緩衝液(50mM CH
3COONa−CH
3COOH (pH4.8))0.1ml、5mMの合成基質(4−Nitrophenyl−α−D−maltopentaoside(シグマ・アルドリッチ社))0.1ml、脱イオン水0.1mlを混合した溶液に加え、20℃で1時間処理した後、1Mの炭酸ナトリウム水溶液0.5mlを加え、400nmで吸光度を測定した。基準アミラーゼ活性は、上記のDNA及びアミラーゼが施与された炭素同素体の分散液に代えて、0.2mg/mlのアミラーゼ溶液を用いて測定した。
【0047】
結果を
図8に示す。DNA及びアミラーゼが施与されたCNTは、基準アミラーゼ活性の約6倍の相対アミラーゼ活性を示した。
【0048】
[実施例10:DNAおよびリパーゼが施与されたCNTの相対リパーゼ活性]
リパーゼ活性は、酵素濃度 0.3mg/mlのDNA及びリパーゼが施与された炭素同素体の分散液0.2mlを、反応緩衝液(50mM Glycine−NaCl−NaOH(pH9.0))0.1ml、5mMの合成基質(4−Nitrophenyl stearate(シグマ・アルドリッチ社))0.1ml、脱イオン水0.1mlを混合した溶液に加え、37℃で1時間処理した後、1M炭酸ナトリウム水溶液0.5mlを加え、400nmで吸光度を測定した。基準リパーゼ活性は、上記のDNA及びリパーゼが施与された炭素同素体の分散液に代えて、0.3mg/mlのリパーゼ溶液を用いて測定した。
【0049】
結果を
図9に示す。DNA及びリパーゼが施与されたCNTは、基準リパーゼ活性の約4.5倍の相対リパーゼ活性を示した。
【0050】
[実施例11:DNAおよびエステラーゼが施与されたCNTの相対エステラーゼ活性]
エステラーゼ活性は、酵素濃度0.25mg/mlのDNA及びエステラーゼが施与された炭素同素体の分散液0.2mlを反応緩衝液(50mM MOPS−MOPS・Na(pH7.0))0.1ml、5mMの合成基質(4−Nitrophenyl butylate(シグマ・アルドリッチ社製))0.1ml、脱イオン水0.1mlを混合した溶液に加え、30℃で1時間処理した後、1Mの炭酸ナトリウム水溶液0.5mlを加え、400nmで吸光度を測定した。基準エステラーゼ活性は、上記のDNA及びエステラーゼが施与された炭素同素体の分散液に代えて、0.65mg/mlのエステラーゼ溶液を用いて測定した。
【0051】
結果を
図10に示す。DNA及びエステラーゼが施与されたCNTは、基準エステラーゼ活性の約10倍の相対エラスターゼ活性を示した。
【0052】
[実施例12:DNAおよびエラスターゼが施与されたCNTの相対エラスターゼ活性]
エラスターゼ活性は、エラスチン‐コンゴーレッドを基質として、消化によって可溶化される色調を485nmで測定する、和光純薬工業株式会社コードNo.058−05361の活性測定法に準じて行った(Hall, D.A. : Biochem.J.,101, 29(1966)、Sachar, L. A., Winter, K. K., Sicher, N. and Frankel, S. : Proc.Soc. Exp. Biol. Med.,90,323(1955)、Huebner, P. F.: Amal. Biochem., 74,419 (1976)、Shotton, D. M.: Meth. Enzymol.,19,113 (1970)等を参照)。
【0053】
結果を
図11に示す。DNA及びエラスターゼが施与されたCNTは、基準エラスターゼ活性の15倍の相対エラスターゼ活性を示した。
【0054】
[実施例13:DNA及びグルコースオキシ
ダーゼが施与されたCNTの相対グルコースオキシ
ダーゼ活性]
グルコースオキシダーゼ活性測定は、invitrogen社製Amplex Red Glucose/Glucose Oxidase Assay Kitを用いて行った。検出波長は590nmで行った。結果を
図12に示す。DNA及びグルコースオキシ
ダーゼが施与されたCNTは、基準グルコースオキシ
ダーゼ活性の3.2倍の相対グルコースオキシ
ダーゼ活性を示した。