(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773488
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】水性スラリ注入装置、及び水性スラリ注入方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-173494(P2011-173494)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-36241(P2013-36241A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】松井 悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 則雄
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−061134(JP,U)
【文献】
特開2009−019477(JP,A)
【文献】
実開平07−043114(JP,U)
【文献】
特開平05−261720(JP,A)
【文献】
特開平09−241638(JP,A)
【文献】
特開平08−047919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−13/10
B28C 3/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物を含有する水性スラリを注入する水性スラリ注入装置であって、
前記水性スラリ注入装置は、
水硬性組成物の供給機と、
水硬性組成物と水とを混練する第1及び第2のミキサと、
前記供給機と前記ミキサとの間に設けられた水硬性組成物の輸送路と、
水性スラリの貯蔵槽と、
前記ミキサで混練された水硬性組成物と水とを含有する水性スラリを前記貯蔵槽に輸送する為の前記各々のミキサと前記貯蔵槽との間に設けられた輸送路と、
前記貯蔵槽内の水性スラリを目的個所に排出・輸送するポンプ
とを具備してなり、
前記ミキサは、その混練容量が、何れも、50リットル以下のミキサであり、
前記水性スラリ注入装置は、
該水性スラリ注入装置の初期開始時より後の段階で前記貯蔵槽内の水性スラリ量が規定量より少なくなった場合において、前記供給機が水硬性組成物を前記ミキサに供給する場合、水硬性組成物を前記全てのミキサに、同時には、供給せず、少なくとも一つのミキサには水硬性組成物を供給しない制御手段
を具備する
ことを特徴とする水性スラリ注入装置。
【請求項2】
供給機から水硬性組成物を保有していない空のミキサに水硬性組成物が供給されるよう構成されると共に、この供給された水硬性組成物と水とのミキサ混練による水性スラリがミキサから貯蔵槽に供給されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1の水性スラリ注入装置。
【請求項3】
ポンプによる水性スラリの排出・輸送中にあっても貯蔵槽内の水性スラリが規定量を保持するようミキサから該貯蔵槽に水性スラリが順に供給されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の水性スラリ注入装置。
【請求項4】
貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、ミキサから貯蔵槽への水性スラリの供給が停止されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項5】
貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給されないよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項6】
ミキサは水硬性組成物計量器を具備してなり、
前記水硬性組成物計量器によって前記ミキサ内に規定量の水硬性組成物が供給されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項7】
ミキサは水計量器を具備してなり、
前記水計量器によって前記ミキサ内に規定量の水が供給されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項8】
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器を具備してなり、
前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、ミキサへの水硬性組成物の供給が停止されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項7いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項9】
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器を具備してなり、
前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、ミキサに水硬性組成物が供給されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項8いずれかの水性スラリ注入装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9いずれかの水性スラリ注入装置が用いられた水性スラリ注入方法であって、
ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップと、
ミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップと、
前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて該ミキサに供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップと、
前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップ
とを具備してなり、
前記水硬性組成物供給ステップの初期開始時より後の段階で貯蔵槽内の水性スラリ量が規定量より少なくなった場合に水硬性組成物が前記ミキサに供給される場合、水硬性組成物が前記全てのミキサに、同時には、供給されず、少なくとも一つのミキサには水硬性組成物が供給されないように制御される
ことを特徴とする水性スラリ注入方法。
【請求項11】
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備し、
前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給が停止される
ことを特徴とする請求項10の水性スラリ注入方法。
【請求項12】
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備し、
前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給される
ことを特徴とする請求項10の水性スラリ注入方法。
【請求項13】
ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップと、
複数個のミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップと、
前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップと、
前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップと、
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップ
とを具備してなり、
前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給がされず、前記水硬性組成物供給ステップの初期開始時より後の段階で前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物が前記全てのミキサに同時には供給されず、少なくとも一つのミキサには水硬性組成物が供給されないように制御されて水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給される
ことを特徴とする水性スラリ注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性スラリ注入技術に関する。特に、例えばセメント等の水硬性無機物質を有効成分とする注入材を地盤や岩盤あるいは空洞などに注入する為の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤や岩盤の止水、軟弱地盤の改質、空洞充填などの為に注入材が使用されている。好ましい注入材として、例えばセメント系の注入材が提案されている。すなわち、セメント系注入材は、一般的に、水ガラス系やシリカゾル系よりも、コストが安く、高い強度発現性が得られ易く、耐久性に優れているからである。セメント系注入材は、一般的には、セメント等を有効成分とする水性スラリの1液型注入材と、作業上有要な可使時間を確保調整し易く、注入後は速やかに凝結し、高い強度が得られ易い2液型注入材とに分けられる。2液型注入材は、急硬性物質や凝結促進物質を有効成分とする水性スラリと、ポルトランドセメント等のセメントを有効成分とする水性スラリとの2剤を作液し、注入時に、両者が混合される。
【0003】
ところで、1液型注入材にしても2液型注入材にしても、この種の水性スラリの作液には、特許文献1〜特許文献6に示される如く、連続式ミキサが用いられたり、特許文献7に示される如く、バッチ式ミキサが用いられている。尚、車上プラント方式や狭隘箇所では、コンパクトな点から、連続式ミキサが使用される場合が多い。
【0004】
しかしながら、供給機内粉体の嵩密度が異なることが有り、このような場合、連続式ミキサが用いられた場合には、材料を連続的に供給することに限界が有る。更に、水性スラリの注入中に、水性スラリのリークや作業の中断が有った場合、連続式ミキサも運転を一時中止せざるを得ない。この時、運転開始後における水性スラリの品質にバラツキが出来てしまう。そして、所望品質の水性スラリが得られるようになるには時間が掛かる。
【0005】
これに対して、バッチ式ミキサは、バッチ毎に各材料を計量する為、品質にバラツキが少ない。
【0006】
しかしながら、一度に大量の水性スラリを作液するようになる為、水性スラリが無駄になる場合も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−241638号公報
【特許文献2】特開2000−202266号公報
【特許文献3】特開2006−342549号公報
【特許文献4】特開2007−23496号公報
【特許文献5】特開2007−331265号公報
【特許文献6】特開2009−96040号公報
【特許文献7】特開2001−219419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決することである。特に、従来のバッチ式ミキサの大きな問題点、即ち、水性スラリの無駄が少なくなること、かつ、連続式ミキサの大きな問題点、即ち、中止後再開時における水性スラリの品質のバラツキが少なくなること、更には水性スラリの注入に際して、水性スラリを効率良く、かつ、連続的な如く水性スラリを提供でき、しかも、そのような水性スラリを提供できる装置はコンパクトな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、
水硬性組成物を含有する水性スラリを注入する水性スラリ注入装置であって、
前記水性スラリ注入装置は、
水硬性組成物の供給機と、
水硬性組成物と水とを混練するn(nは2以上の整数)個のミキサと、
前記供給機と前記n個のミキサとの間に設けられた水硬性組成物の輸送路と、
水性スラリの貯蔵槽と、
前記ミキサで混練された水硬性組成物と水とを含有する水性スラリを前記貯蔵槽に輸送する為の前記n個の各々のミキサと前記貯蔵槽との間に設けられた合計n個の輸送路と、
前記貯蔵槽内の水性スラリを目的個所に排出・輸送するポンプ
とを具備してなり、
前記n個のミキサは、その混練容量が、何れも、50リットル以下のミキサである
ことを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0010】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記供給機から水硬性組成物を保有していない空のミキサに水硬性組成物が供給されるよう構成されると共に、この供給された水硬性組成物と水とのミキサ混練による水性スラリが前記ミキサから前記貯蔵槽に供給されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0011】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記ポンプによる水性スラリの排出・輸送中にあっても前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を保持するようミキサから前記貯蔵槽に水性スラリが順に供給されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0012】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、前記ミキサから前記貯蔵槽への水性スラリの供給が停止されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0013】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給されないよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0014】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記ミキサは水硬性組成物計量器を具備してなり、前記水硬性組成物計量器によって前記ミキサ内に規定量の水硬性組成物が供給されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0015】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記ミキサは水計量器を具備してなり、前記水計量器によって前記ミキサ内に規定量の水が供給されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0016】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器を具備してなり、前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、ミキサへの水硬性組成物の供給が停止されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0017】
前記課題は、前記水性スラリ注入装置であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器を具備してなり、前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、ミキサに水硬性組成物が供給されるよう構成されてなることを特徴とする水性スラリ注入装置によって解決される。
【0018】
前記課題は、
前記水性スラリ注入装置が用いられた水性スラリ注入方法であって、
ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップと、
n(nは2以上の整数)個のミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップと、
前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて該ミキサに供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップと、
前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップ
とを具備することを特徴とする水性スラリ注入方法によって解決される。
【0019】
前記課題は、前記水性スラリ注入方法であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備し、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給が停止されることを特徴とする水性スラリ注入方法によって解決される。
【0020】
前記課題は、前記水性スラリ注入方法であって、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備し、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給されることを特徴とする水性スラリ注入方法によって解決される。
【0021】
前記課題は、
ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップと、
n(nは2以上の整数)個のミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップと、
前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップと、
前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップと、
貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップ
とを具備してなり、
前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給が停止され、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給される
ことを特徴とする水性スラリ注入方法によって解決される。
【発明の効果】
【0022】
従来のバッチ式ミキサの大きな問題点、即ち、水性スラリの無駄が改善され、かつ、連続式ミキサの大きな問題点、即ち、中止後再開時における水性スラリの品質のバラツキと言った問題点が改善される。
【0023】
特に、水性スラリの注入に際して、安定した品質の水性スラリを効率良く、かつ、連続式ミキサの如く水性スラリを提供できる。
【0024】
更には、上記特長を奏する装置はコンパクトに構成できる。特に、従来のバッチ式ミキサに比べると、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本発明の水性スラリ注入装置の車上搭載形態での概略平面図
【
図4】本発明で作液された水性スラリの密度変動のグラフ
【
図5】本発明で作液された水性スラリの密度変動のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の発明は水性スラリ注入装置である。本装置は、特に、水硬性組成物を含有する水性スラリを注入する装置である。本装置は、例えば車に搭載されている。この場合、移動可能になる。本装置は供給機(水硬性組成物の供給機)を具備する。本装置はミキサ(水硬性組成物と水とを混練するミキサ)を具備する。前記ミキサの数はn(nは2以上の整数)個である。実用的には10個以下である。好ましくは5個以下である。更に好ましくは3個以下である。2個であっても良い。その理由は、数が少ない方が、全体として小型になるからである。そして、2個の場合でも、水性スラリの作液は準連続的である。前記ミキサは、その混練容量が、何れも、50リットル以下のミキサである。好ましくは、30リットル以下のミキサである。更に好ましくは、20リットル以下のミキサである。5リットル〜15リットルのミキサであっても良い。下限値は、実用的には、5リットルであろう。複数個のミキサは、その混練容量が異なるものでも良いが、現実的には、互いに、同等なものが選ばれる。尚、混練容量が互いに異なるミキサが採用されても、これ等のミキサで混練される量は実質上同等である。なぜならば、混練量が異なると、制御が厄介になるからである。本装置は第1の輸送路(前記供給機と前記n個のミキサとの間に設けられた水硬性組成物の輸送路)を具備する。この第1の輸送路は、前記n個のミキサに応じて、合計、n個有っても良い。すなわち、一つのミキサに対応して一つの輸送路が独立して設けられていても良い。尚、各輸送路の一部が共用されても良い。或いは、前記輸送路が可動式に構成されておれば、即ち、ミキサに水硬性組成物を供給するに際して、前記輸送路の水硬性組成物排出口を各々のミキサに対応して位置させ、各々のミキサ内に水硬性組成物を供給できるようにしておくならば、一つでも済む。本装置は貯蔵槽(水性スラリの貯蔵槽)を具備する。本装置は第2の輸送路(前記ミキサで混練された水硬性組成物と水とを含有する水性スラリを前記貯蔵槽に輸送する為の輸送路)を具備する。前記第2の輸送路は、前記n個の各々のミキサと前記貯蔵槽との間に設けられたものである。従って、前記第2の輸送路の数は、合計、n個である。このn個の輸送路は、n個のミキサが互いに独立したものであるから、互いに、独立したものである。尚、各輸送路の一部が共用されても良い。従って、n個のミキサで作液された水性スラリは、各々、直接、貯蔵槽に供給される。本装置はポンプ(前記貯蔵槽内の水性スラリを目的個所に排出・輸送するポンプ)を具備する。
【0027】
本装置は、前記供給機から水硬性組成物を保有していない空のミキサ(複数個のミキサの中、現在、混練動作が行われていないミキサ)に水硬性組成物が供給されるよう構成されている。この供給された水硬性組成物と水とのミキサ混練による水性スラリが、前記ミキサから前記貯蔵槽に供給されるよう構成されている。好ましくは、前記ポンプによる水性スラリの排出・輸送中にあっても、前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を保持するようミキサから前記貯蔵槽に水性スラリが順に供給されるよう構成されている。好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、前記ミキサから前記貯蔵槽への水性スラリの供給が停止されるよう構成されている。好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリが規定量を越えた場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給されないよう構成されている。好ましくは、水硬性組成物計量器を具備し、前記水硬性組成物計量器によって前記ミキサ内に規定量の水硬性組成物が供給されるよう構成されている。水硬性組成物計量器は供給機またはミキサに設けられる。好ましくは、各ミキサに設けられる。ミキサに設けられるのが好ましい。なぜならば、ミキサ内への供給直前に計量されるから、ミキサ内に供給(投入)される水硬性組成物の量がより正確になる。好ましくは、水計量器を具備し、前記水計量器によって前記ミキサ内に規定量の水が供給されるよう構成されている。水計量器は、水源部位またはミキサに設けられる。好ましくは、各ミキサに設けられる。ミキサに設けられるのが好ましい。なぜならば、ミキサ内への供給直前に計量されるから、ミキサ内に供給(投入)される水量がより正確になる。好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器を具備する。そして、前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、ミキサへの水硬性組成物の供給が停止されるよう構成されている。或いは、前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、ミキサに水硬性組成物が供給されるよう構成されている。
【0028】
そして、本実施形態の装置によれば、従来のバッチ式ミキサの大きな問題点、即ち、水性スラリの無駄が改善される。かつ、連続式ミキサの大きな問題点、即ち、中止後再開時における水性スラリの品質のバラツキと言った問題点が改善される。特に、水性スラリの注入に際して、安定した品質の水性スラリを効率良く、かつ、連続式ミキサの如く水性スラリを提供できる。更には、上記特長を奏する装置はコンパクトに構成できる。特に、従来のバッチ式ミキサに比べると、小型化できる。又、従来のバッチ式ミキサを用いた場合に比べて、ミキサや貯蔵槽を小さく出来る為、作業後に行われるミキサ等の洗浄も簡単になる。洗浄時間も短縮される。洗浄水が少なくて済むから、廃液処理も容易である。
【0029】
第2の発明は水性スラリ注入方法である。前記水性スラリ注入装置が用いられた水性スラリ注入方法である。本方法は、ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップを具備する。本方法は、n(数(n)は前記に準じる)個のミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップを具備する。本方法は、前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて該ミキサに供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップを具備する。本方法は、前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップを具備する。本方法は、好ましくは、前記貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備する。そして、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給が停止される。及び/又は、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給される。
【0030】
第3の発明は水性スラリ注入方法である。本方法は、ポンプによって貯蔵槽内の水性スラリが目的個所に排出・輸送される排出・輸送ステップを具備する。本方法は、n(数(n)は前記に準じる)個のミキサの中の或るミキサに規定量の水硬性組成物が供給される水硬性組成物供給ステップを具備する。本方法は、前記水硬性組成物供給ステップで供給された水硬性組成物と、該水硬性組成物供給ステップに先んじて供給されている規定量の水とが該ミキサによって混練される混練ステップを具備する。本方法は、前記混練ステップで得られた水性スラリが貯蔵槽内に供給される水性スラリ供給ステップを具備する。本方法は、貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出ステップを具備する。そして、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内への水硬性組成物の供給が停止され、前記水性スラリ量検出ステップによって検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、水硬性組成物を保有していない空のミキサ内に水硬性組成物が供給される。
【0032】
水硬性組成物を供給する供給機には第1の輸送路が設けられている。この第1の輸送路は、例えば排出用スクリュで構成される。例えば、ミキサと同じ数の排出用スクリュが設けられる。排出用スクリュの排出口端には開閉弁が設けられている。水硬性組成物の計量開始時に開閉弁が開き、スクリュが回転してミキサにセメント系水硬性組成物が供給される。水硬性組成物が所望量だけ計量されると、スクリュが停止し、開閉弁が閉じる。スクリュの動作(回転)はインバータで制御されている。従って、単位時間当たりの供給量が調整できる。計量値に近付くと、スクリュの回転を遅くすることも出来る。このようにしておくと、タイムラグによる誤差を少なくできる。従って、計量精度が高まる。供給機の形状・寸法などは、使用量等に適ったものを適宜選定すれば良い。セメント系水硬性組成物が補充でき易い形状で、ステンレス等の錆難い材質からなるものが良い。供給機は、例えばミキサや貯蔵槽と連動している。ポンプの圧送量に応じて運転され、ミキサに規定量の水硬性組成物が供給される。
【0033】
ミキサは、本発明にあっては、複数、存在する。ミキサの数は、好ましくは、前述の通り、2〜5台である。更に好ましくは2〜3台である。各ミキサには、供給機から供給(排出)されるセメント水硬性組成物を計量できる計量器が備わっている。各ミキサには、1バッチ当たりの配合水を計量できる水計量器が備わっている。練り混ぜる水性スラリの配合に適った配合水量が計量される。各ミキサの形状・寸法は特に限定されない。但し、本発明の目的が大きく奏されるのは、前述の通り、50リットル以下のミキサである。好ましくは、30リットル以下のミキサである。更に好ましくは、20リットル以下のミキサである。5リットル〜15リットルのミキサであっても良い。従来のバッチ式ミキサの如く、100リットル以上、例えば200リットルもの大きさになると、本発明の目的が奏され難い。別の表現で言うならば、各々のミキサにおける単位時間当たりの撹拌(混練)容量は、施工(水性スラリ注入作業)に必要なポンプ(圧送用ポンプ)の単位時間たりの圧送量以下である。かつ、連続運転が可能な範囲であって、出来るだけ小型なものである。各ミキサにおける撹拌羽根の形状・寸法は、特には、限定されない。ミキサ内壁に撹拌効率を上げる為のじゃま板等が適宜設けられていても良い。撹拌羽根の回転数は、短時間での撹拌が要請されることから、例えば1分間当たり500〜1500回転である。好ましくは800〜1000回転である。各ミキサは供給機や貯蔵槽と連接して設けられている。各ミキサは圧送ポンプの圧送量に応じて運転される。
【0034】
前記ミキサで混練・作液された水性スラリは貯蔵槽に供給(排出)される。作業開始時においては、各々のミキサで混練・作液された水性スラリは、一度に、貯蔵槽に供給(排出)されても良い。勿論、規定量の水硬性組成物が各々のミキサに順に供給され、混練が順に行われ、水性スラリが貯蔵槽に順に供給(排出)されても良い。しかし、水性スラリによって貯蔵槽が満たされた後では、水硬性組成物は前記ミキサには順に供給され、混練は順に行われる。そして、水性スラリの貯蔵槽への供給(排出)は順に(間歇的に)行われる。水性スラリの作液は順に(間歇的に)行われることから、水硬性組成物の無駄が少なくなる。貯蔵槽の形状・寸法は、特には、限定されない。貯蔵槽の容量は、好ましくは、施工(水性スラリ注入作業)に必要な圧送用ポンプの単位時間当たりの圧送量の2倍以下である。かつ、連続運転が可能な範囲であって、出来るだけ小型なものである。貯蔵槽内の水性スラリ量が検出される水性スラリ量検出器が設けられている。この水性スラリ量検出器の出力信号で水硬性組成物の供給が制御される。例えば、前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より多い場合、ミキサへの水硬性組成物の供給が停止される。前記水性スラリ量検出器で検出された水性スラリ量が規定量より少ない場合、ミキサに水硬性組成物が供給される。貯蔵槽には、必要に応じて、アジテータが取り付けられる。貯蔵槽は、供給機やミキサと連動しており、圧送ポンプの圧送量に応じて運転され、圧送ポンプに水性スラリが供給される。
【0035】
貯蔵槽内に貯蔵されている水性スラリは、ポンプ(例えば、圧送ポンプ)によって、水性スラリを必要とする個所(注入個所)に供給される。ポンプ(圧送ポンプ)の型式は、特には、限定されない。例えば、水性スラリの輸送(圧送)に適した構造のものであれば、如何なるものでも良い。ポンプの輸送(圧送)量に応じて、供給機やミキサが連動して運転される。
【0036】
本実施形態の水性スラリ注入装置は、水硬性組成物(例えば、セメント系水硬性組成物)を含有してなる水性スラリを注入材として用いるものである。水性スラリは1液型のものでも良く、2液型のものでも良い。何れのタイプのものにも適用可能である。セメント系水硬性組成物は、セメントを有効成分とする水硬性組成物である。セメント以外にも、例えば凝結促進剤、凝結遅延剤、速硬剤などの凝結や硬化状態をコントロールする成分、増粘剤や分散剤などの他の機能を付与する成分を配合含有したものでも良い。このような成分は、モルタルやコンクリートに使用可能なものであって、注入性状に支障を及ぼさず、本発明の効果を喪失させるものでない限り、何れのものでも良い。尚、この種の剤は、適宜、例えば水計量器(或いは、ミキサ)に供給され、配合される。使用されるセメントも限定されない。具体的には、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメント、エコセメント等の特殊セメントを用いることが出来る。石膏などの水硬性物質を含むものでも良い。前記水性スラリに砂やスラグ等の細骨材が添加された流動性の大きいモルタルであっても良い。
【0037】
以下、具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。本実施形態ではミキサが二つの場合で説明される。但し、本発明は以下の記述に限定されるものでは無い。前述の本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明に含まれる。
【0038】
図1は本発明の一実施形態になる水性スラリ注入装置の概略図、
図2は
図1の装置が車上搭載形態での概略平面図、
図3は水性スラリ注入装置の動作概略図である。
図1には、A液とB液との2液で構成される2液型タイプの注入材に用いられる装置が示されている。尚、1液で構成される1液型タイプの注入材が用いられる場合は、A液側の部位の装置が用いられるに過ぎず、基本的な技術思想は同様である。
【0039】
各図中、3は水タンクである。4は水供給ポンプである。11,21は供給機である。11a,21aは、供給機11,21への資材の投入口である。A11b,B21bはモータである。A11c,B11c,A21c,B21cはスクリュである。A11d,B11d,A21d,B21dは排出弁である。A11e,B11e,A21e,B21eは排出口である。A12,B12,A22,B22は水計量器である。A12a,B12a,A22a,B22aは供給弁である。A12b,B12b,A22b,B22bは計量センサである。A12c,B12c,A22c,B22cは排出弁である。A13,B13,A23,B23はミキサである。ミキサA13,B13,A23,B23の単位時間当たりの混練容量は、例えば10リットルである。A13a,B13a,A23a,B23aは計量器である。A13b,B13b,A23b,B23bはモータである。A13c,B13c,A23c,B23cは撹拌翼である。A13d,B13d,A23d,B23dは排出弁である。14,24は貯蔵槽である。貯蔵槽14,24の最大容積は、例えば30リットルである。14a,24aは検出センサである。14b,24bはモータである。14c,24cは撹拌翼である。15,25は圧送ポンプである。16,26は流量計である。17,27は圧力計である。
【0040】
上記説明から理解されると思われるが、1の数字で始まる符号はA液側における各部位の装置を示し、2の数字で始まる符号はB液側における各部位の装置を示す。数字の前に付されているAは第1ミキサに対応するものであり、数字の前に付されているBは第2ミキサに対応するものである。A液側の装置とB液側の装置とは、処理対象物が異なるに過ぎず、基本的に同じである。従って、以下では、A液側の装置の作用について説明する。B液側についても同じであるから、B液側の装置の作用は以下の説明から簡単に類推される。
【0041】
供給機11はセメント系水硬性組成物の供給機である。供給機11は、複数の排出用スクリュA11c,B11cを具備する。排出用スクリュA11c,B11cは、各々、モータA11b,B11b(B11bは図示されず)で駆動される。尚、モータA11bとモータB11bとは、基本的に、同時には作動しない。異なる時間において別々に駆動される。この駆動に連動して排出弁A11d,B11dが作動する。セメント系水硬性組成物は、投入口11aから補充(供給)される。排出用スクリュA11c,B11cの運転時においても、セメント系水硬性組成物は、投入口11aから補充(供給)できる。
【0042】
水計量器A12,B12で計量された規定量の水(配合水)がミキサA13,B13に供給される。ミキサA13とミキサB13とにセメント系水硬性組成物は、基本的に、同時に供給(投入)されないことを説明したが、水(配合水)はミキサA13とミキサB13とに同時に供給(投入)されても良い。勿論、セメント系水硬性組成物の場合と同様に順に供給(投入)されても良い。但し、水(配合水)がミキサA13,B13に供給(投入)された後、セメント系水硬性組成物がミキサA13,B13に供給(投入)される。
【0043】
規定量の水(配合水)がミキサA13,B13に供給された後、セメント系水硬性組成物がミキサA13,B13に供給される。すなわち、供給機11から排出されたセメント系水硬性組成物が計量器A13a,B13aで計量される。計量器A13a,B13aは、排出用スクリュA11c,B11cのモータA11b,B11b(B11bは図示されず)、及び排出弁A11d,B11dと連動している。例えば、計量器A13a,B13aによって、ミキサA13,B13内へのセメント系水硬性組成物の供給量(投入量)が規定量になったことが検出されると、モータA11b,B11bは停止すると共に、排出弁A11d,B11dが閉まる。従って、規定量以上のセメント系水硬性組成物の供給(投入)は起こらない。
【0044】
規定量のセメント系水硬性組成物のミキサ内への供給(投入)が開始されると、モータA13b,B13bの駆動が開始される。これにより、撹拌翼A13c,B13cによる撹拌(混練)が開始される。所定時間の撹拌(混練)後、排出弁A13d,B13dが開く。これにより、セメント系水硬性組成物と水との混練物(水性スラリ)が排出される。そして、水性スラリは貯蔵槽14に供給(投入:貯蔵)される。
【0045】
本発明の装置は複数個のミキサを具備している。本実施形態では2台のミキサが有る。前述の通り、ミキサA13とミキサB13とに、特別な場合(開始時)を除いて、同時に、セメント系水硬性組成物が供給(投入)されることは無い。勿論、如何なる場合でも、セメント系水硬性組成物が、交互に、ミキサA13とミキサB13とに供給(投入)されても良い。例えば、ミキサA13が撹拌(混練)作業中に、ミキサB13による撹拌(混練)作業の準備(撹拌(混練)作業の待機)が行われる。ミキサB13が撹拌(混練)作業中に、ミキサA13による撹拌(混練)作業の準備(撹拌(混練)作業の待機)が行われる。すなわち、一方のミキサ内に投入された規定量の水と規定量のセメント系水硬性組成物とが混練されている時には、他方のミキサ内には規定量の水が投入されるに止まる。すなわち、この時点では、他方のミキサ内にセメント系水硬性組成物の投入は未だである。
【0046】
ミキサA13による撹拌(混練)作業が終了すると、セメント系水硬性組成物含有水性スラリが貯蔵槽14に排出(投入)される。排出(投入)後、貯蔵槽14に設けられた検出センサ14aによって、貯蔵槽14内の水性スラリ量が検出される。この検出量が閾値より少ない場合、規定量の水が投入されているに過ぎない待機状態(準備状態)にあるミキサB13に規定量のセメント系水硬性組成物が排出(投入)される。そして、撹拌(混練)作業が行われる。撹拌(混練)作業終了後、セメント系水硬性組成物含有水性スラリが貯蔵槽14に排出(投入)される。前記検出量が閾値より多い場合、ミキサB13内へのセメント系水硬性組成物の排出(投入)は行われず、待機状態のままである。
【0047】
貯蔵槽14内の水性スラリは圧送ポンプ15によって、目的個所(水性スラリ注入個所)に排出・輸送される。圧送ポンプ15の作動によって貯蔵槽14内の水性スラリ量は減少する。貯蔵槽14内の水性スラリの検出量が閾値より少なくなると、待機状態にあるミキサに規定量のセメント系水硬性組成物が排出(投入)され、撹拌(混練)作業が行われ、この後、水性スラリは貯蔵槽14内に排出(投入)される。これによって、間歇的ではあるものの、貯蔵槽14内に所定量の水性スラリが貯蔵されていることになる。従って、圧送ポンプ15によって、連続的に、水性スラリを注入個所に注入できるようになる。注入中は、流量計16と圧力計17とによって、注入量と注入圧とが管理されている。モータ、排出弁、水計量器、計量センサ、検出センサ等は、制御盤によって、集中制御されている。
【0048】
以下、A液側ミキサによるセメントスラリの作液例が説明される。
供給機(W760mm L2210mm H1700mm 容量0.65m
3)11に、超微粒子セメント(アロフィクスMC 太平洋マテリアル製)が補充された。水計量器A12に水タンク(容量:2m
3)3から水中ポンプ4で水が供給され、8Lの水が計量された。この8Lの水がミキサ(φ260mm H400mm 撹拌容量10L)A13に供給された。この後、直ちに、ミキサA13のモータA13bが駆動され、撹拌翼A13cが回転(900rpm)し始めた。次に、モータA11bが駆動され、スクリュA11cが回転(払い出し量25kg/分)し始め、ミキサA13内にセメントが投入され始めた。セメント量はミキサに取り付けられている計量器(ロードセル)A13aで計量された。6kgのセメントが計量された時点で、排出弁A11dが閉じられた。これによって、ミキサA13へのセメント投入は停止された。セメントの投入開始から停止までの計量時間は15秒であった。計量後、更に、5秒間の撹拌(混練)が続行された。この撹拌(混練)によって得られた水性スラリ(セメントスラリ)は、排出弁A13dが開かれ、貯蔵槽(φ400mm H250mm 容量30L)14内に供給(排出)された。排出後、排出弁A13dが閉じられ、予め、水計量器A12で計量されている8Lの水がミキサA13に供給された。尚、8Lの水がミキサA13に供給された後、直ちに、次のバッチの計量が行われる。
【0049】
貯蔵槽14内に供給(排出)された水性スラリ(セメントスラリ)は、撹拌翼14cで撹拌されている。貯蔵槽14に設けられた電極式の検出センサ14aによって、貯蔵槽14内の水性スラリ(セメントスラリ)量が検知されている。すなわち、水性スラリ(セメントスラリ)量が最低液位(LL:本例における最低液位の水性スラリ量5L)と最高液位(HL:本例における最高液位の水性スラリ量22L)との間にあるか否かが検知されている。水性スラリ量が最高液位以下の場合、引き続き、ミキサA13の場合と同様にして、ミキサB13に8Lの水と6kgのセメントとが投入され、撹拌(混練)が行われた後、この混練による水性スラリが貯蔵槽14内に供給(排出)される。水性スラリ量が最高液位を越えている場合、ミキサB13内へのセメントの投入は行われず、ミキサB13は停止状態のままである。
【0050】
貯蔵槽14と圧送ポンプ15とはサクションホースで連結され、圧送ポンプ15から排出口(注入口)までは注入ホース(途中に流量計16及び圧力計17)が連結されている。そして、貯蔵槽14内の水性スラリ(セメントスラリ)は排出口(注入口)から供出(排出)されている。この供出(排出)に際しては、流量計16による流量制御が、又、圧力計17による圧力制御が行われている。注入個所への水性スラリの注入によって、貯蔵槽14内の水性スラリ(セメントスラリ)が消費されることから、貯蔵槽14内の液位は低下する。液位がHL以下になった時点で、その検出信号を基にしてミキサA13又はミキサB13の何れか一方の待機状態にあるミキサにセメントの計量が開始される。セメントの計量、そして混練(撹拌)の後、そのミキサから水性スラリ(セメントスラリ)が貯蔵槽14内に供給(排出)される。
【0051】
貯蔵槽14内の液位が、万が一にも、最低液位(LL)より低下した場合は、圧送ポンプ15の運転は自動的に停止する。
【0052】
上記工程の説明、即ち、ミキサA13(ミキサ1)やミキサB13(ミキサ2)の動作状況(水の供給・計量、セメントの供給・計量、水とセメントとの混練(撹拌)、混練(撹拌)後の水性スラリ(セメントスラリ)の貯蔵槽14内への排出の状況)、貯蔵槽14の動作状況(貯蔵槽14内の液位の状況)、及び圧送ポンプ15の動作状況が、
図3に示される。これによれば、一方のミキサが動作中の時には、他方のミキサが待機中(ここで、待機中とは、水硬性組成物がミキサ内に投入(供給)されない状態を意味する。水はミキサ内に投入(供給)されていても良い。)であり、動作・待機を順に繰り返すことによって、二つのミキサによる混練が交替で行われ、準連続的に水性スラリ(セメントスラリ)の貯蔵槽14内への排出が行われる。従って、水性スラリ(セメントスラリ)の注入作業に際して、基本的に、水性スラリ(セメントスラリ)が貯蔵槽14内から無くなっていると言った事故は起き難い。しかも、従来のバッチ式ミキサに比べて、ミキサA13,B13の容積は小さく、合計しても、容積は小さく、従って無駄になるセメント量も必然的に少なくなる。しかしながら、一つ一つのミキサは基本的にはバッチ式ミキサであるから、ミキサの中止・再開時における水性スラリの品質のバラツキの問題は起きない。そして、水性スラリの注入に際して、水性スラリを効率良く、かつ、連続的な如く水性スラリを提供できる。しかも、水性スラリを提供できる装置はコンパクトである。
【0053】
上記のようにして得られた水性スラリ(セメントスラリ)の品質が調べられたので、その結果が
図4,5に示される。
図4は、ミキサA13(ミキサ1)やミキサB13(ミキサ2)で作液された水性スラリ(セメントスラリ)の密度の変動具合のグラフである。密度の計算値は1.4g/cm
3であるのに対して、密度の計測値は1.397〜1.411g/cm
3であり、水性スラリ(セメントスラリ)の品質(密度)は安定していることが判る。
図5は、圧送ポンプの動作時・停止後の動作開始時における密度の変動具合のグラフである。圧送ポンプが一時停止しても、水性スラリ(セメントスラリ)の品質(密度)は安定していることが判る。
【0054】
上記説明は一液型の注入材の場合であった。二液型の場合には、B液側の部位の装置も同様に用いられ、注入に際して、貯蔵槽14内のA液と貯蔵槽24内のB液とが各々ポンプ15,25で圧送・供出(排出)され、途中で、混合された後、注入が行われる。そして、基本的な技術思想は同じであるから、詳細な説明は省略される。
【符号の説明】
【0055】
3 水タンク
4 水供給ポンプ
11,21 供給機
A11c,B11c,A21c,B21c スクリュ
A11d,B11d,A21d,B21d 排出弁
A11e,B11e,A21e,B21e 排出口
A12,B12,A22,B22 水計量器
A12b,B12b,A22b,B22b 計量センサ
A12c,B12c,A22c,B22c 排出弁
A13,B13,A23,B23 ミキサ
A13a,B13a,A23a,B23a 計量器
A13c,B13c,A23c,B23c 撹拌翼
A13d,B13d,A23d,B23d 排出弁
14,24 貯蔵槽
14a,24a 検出センサ
15,25 圧送ポンプ