特許第5773495号(P5773495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773495
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】RGD含有ペプチド模倣体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/12 20060101AFI20150813BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C07K5/12ZNA
   A61K37/02
   A61K49/00 A
   A61K41/00
   A61K49/00 C
   A61P35/00
   A61P27/02
   A61P3/04
   A61K47/48
   A61K31/409
   A61P43/00 121
【請求項の数】28
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2011-532768(P2011-532768)
(86)(22)【出願日】2009年10月22日
(65)【公表番号】特表2012-506419(P2012-506419A)
(43)【公表日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】IL2009000995
(87)【国際公開番号】WO2010046900
(87)【国際公開日】20100429
【審査請求日】2012年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/107,952
(32)【優先日】2008年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512278087
【氏名又は名称】ステバ バイオテック、エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100162411
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
(74)【代理人】
【識別番号】100097870
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 斎子
(74)【代理人】
【識別番号】100140556
【弁理士】
【氏名又は名称】新村 守男
(74)【代理人】
【識別番号】100114719
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 久司
(74)【代理人】
【識別番号】100143258
【弁理士】
【氏名又は名称】長瀬 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100124969
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100132492
【弁理士】
【氏名又は名称】弓削 麻理
(74)【代理人】
【識別番号】100112243
【弁理士】
【氏名又は名称】下村 克彦
(72)【発明者】
【氏名】エレン、ドロン
(72)【発明者】
【氏名】イェチェスケル、タマー
(72)【発明者】
【氏名】サリトラ、ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】コウディノヴァ、ナタリア
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/023378(WO,A1)
【文献】 国際公開第95/28426(WO,A2)
【文献】 特表2001−501600(JP,A)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci.,2002年 2月 5日,Vol.99, No.3,p.1247-1252
【文献】 Mol. Pharm.,2006年10月,Vol.3, No.5,p.472-487
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

[式中、
アルギニン残基がそのα−アミノ基によって骨格C=Oと連結し、
Xが−NH−R−、−O−R−、又は−S−R−であり、
ここでRがエタン、エテン又はシクロプロパンから誘導されたヒドロカルビレンであり、骨格NHと連結し、且つ
が、その側鎖上にアミノ基を有し、そのカルボキシル基を介して骨格NHと連結し、且つその側鎖アミノ基を介してアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結した、アミノ酸残基であり;
該アミノ酸残基が、ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)又はリシン(Lys)から選択される]
のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)含有環状ペプチド模倣体。
【請求項2】
Xが−NH−R−、−O−R−又は−S−R−であり、且つRがエタンから誘導されたヒドロカルビレンである、請求項1に記載のRGD含有環状ペプチド模倣体。
【請求項3】
(i)Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap、Orn又はLysである;あるいは
(ii)Xが−O−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap又はLysである;
請求項1又は2に記載のRGD含有環状ペプチド模倣体。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のRGD含有環状ペプチド模倣体;と
該ペプチド模倣体中のアミノ酸残基Aのα−アミノ基と連結した、
蛍光プローブ、光増感剤、キレート剤、又は細胞毒性薬から選択されるペイロード;
とのコンジュゲート。
【請求項5】
前記ペイロードが、天然若しくは非天然アミノ酸残基、8個を超えないアミノ酸を有する小ペプチド残基、ジアミン残基、C〜C25ヒドロカルビレン又は可溶性ポリマーから選択されるスペーサーを介して、該ペプチド模倣体中のアミノ酸残基Aのα−アミノ基と連結した、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記アミノ酸がグリシン(Gly)、β−アラニン(β−Ala)、フェニルアラニン(Phe)、D−フェニルアラニン(D−Phe)、1−ナフチルアラニン(1−Nal)、D−1−ナフチルアラニン(D−1−Nal)、γ−アミノ酪酸(GABA)又は3−(アミノメチル)安息香酸から選択され、前記ジアミン残基が−HN−(CH−NH−又は−HN−(CH−NH−であり、前記C〜C25ヒドロカルビレンがOH、COOH、SOH、COSH又はNHから選択される2個の末端官能基によって置換され、したがってエーテル、エステル、アミド、チオアミド又はスルホンアミド基を形成するC〜C10アルキレン又はフェニレンであり、前記可溶性ポリマーが直鎖若しくは分岐鎖ポリエチレングリコール(PEG)又はそのコポリマー、ポリ乳酸(PLA)又はそのコポリマー、PLAに基づくポリエステル、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、又はそれらのコポリマー、或いはポリメタクリルアミドに基づくポリアミド又はそれらのコポリマーから選択され、前記ポリマーが適切な官能基を有する、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
ペイロードが蛍光プローブ、光増感剤、キレート剤、又は細胞毒性薬である、請求項4から6までのいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記蛍光プローブがBPheideタウリンアミド(BTA)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ダンシル、ローダミン、エオシン又はエリスロシンであり、
前記光増感剤がポルフィリン、クロロフィル又はバクテリオクロロフィルであり、
前記キレート剤がDTPA又はDOTAであり、且つ
前記細胞毒性薬が、
ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン系化学療法剤;
分裂阻害剤;トポイソメラーゼI阻害剤;又はトポイソメラーゼII阻害剤である、
請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
(i) ペイロードがAと直接連結したBTAであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap、Orn、若しくはLysである(ここでコンジュゲート1、4及び5をそれぞれ規定);
(ii) ペイロードがAと直接連結したダンシルであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap、Orn若しくはLysである(ここでコンジュゲート19、18及び16をそれぞれ規定);
(iii)ペイロードがAと直接連結したBTAであり、Xが−O−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap又はLysである(ここでコンジュゲート7及び8をそれぞれ規定);
(iv) ペイロードがスペーサーによってAと連結したBTAであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AがDapであり、且つスペーサーが、GABA若しくはD−Phe残基、又は1,4−ジアミノブタンの残基である(ここでコンジュゲート11、28及び33をそれぞれ規定);
(v) ペイロードがスペーサーによってAと連結したFITCであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つ
(a)AがDapであり、且つスペーサーがβ−Ala残基である(ここでコンジュゲート12を規定)、又は
(b)AがLysであり、且つスペーサーがβ−Ala若しくはGABA残基である(ここで、コンジュゲート13及び14をそれぞれ規定);
(vi) ペイロードがスペーサーによってAと連結したダンシルであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AがDap若しくはLysであり、且つスペーサーがGly残基である(ここでコンジュゲート20及び17をそれぞれ規定);
(vii) ペイロードがAと直接連結したバクテリオクロロフィル誘導体Pd−BTAであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDapである(ここでコンジュゲート34を規定);
(viii)ペイロードがAと直接連結したDTPA又はDOTAであり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDapである(ここでコンジュゲート35及び36をそれぞれ規定);
(ix) ペイロードがAと直接連結した置換BTA(タウリン残基が−NH−(CH−NHで置換されている)であり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap又Ornである(ここでコンジュゲート37及び39をそれぞれ規定);あるいは
(x) ペイロードがAと直接連結した置換BTA(タウリン残基が−NH−(CH−NH−CHで置換されている)であり、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap又Ornである(ここでコンジュゲート38及び40をそれぞれ規定);
請求項4又は5に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
請求項4から9までのいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
ペイロードが蛍光プローブである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ここで規定されたコンジュゲート1、4、5、7、8、11〜14、16〜20、28及び33から選択されるコンジュゲートを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
診断目的の、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
臓器及び組織の可視化用、又は腫瘍の診断用の、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
動的蛍光イメージング、放射線診断技法又は分子の核磁気共鳴映像法(MRI)による腫瘍診断用の、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ペイロードが光増感剤である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ここで規定されたコンジュゲート34及び37〜40から選択されるコンジュゲートを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
光線力学的療法(PDT)用の、請求項16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
腫瘍又は非腫瘍組織のPDT用の、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記腫瘍が原発腫瘍又はメラノーマ、結腸、乳、肺、前立腺、脳若しくは頭頸部癌からの転移性腫瘍である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
加齢性黄斑変性症の治療用、又は脂肪組織への血液供給を制限することによる肥満の治療用の、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ペイロードがキレート剤である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ここで規定されたコンジュゲート35又は36を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
放射線イメージング又は放射線療法において使用するための、請求項22又は23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ペイロードが細胞毒性薬である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項26】
標的化学療法において使用するための、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング若しくは放射線療法、又は標的化学療法用の医薬組成物を調製するための、請求項4から9までのいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩の使用。
【請求項28】
診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング若しくは放射線療法、又は標的化学療法用の、請求項4から9までのいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、癌の診断及び治療における、新規なアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)含有環状ペプチド模倣体及びその使用に関する。
【0002】
略語:AcOH、酢酸;Alloc、アリルオキシカルボニル;Bpheide、バクテリオフェオホルビド;BTA、(BPheideタウリンアミド)、3−オキソ−15−メトキシカルボニルメチル−ロドバクテリオクロリン13−(2−スルホエチル)アミド;BTC、ビス(トリクロロメチル)カルボネート;Dab、ジアミノ酪酸;Dap、ジアミノプロピオン酸;DCM、ジクロロメタン、;Dde、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル;DIC、ジイソプロピルカルボジイミド;DIEA、ジイソプロピルエチルアミン;DMBA、ジメチルバルビツール酸;DMF、N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO、ジメチルスルホキシド;DOTA、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸;DTPA、ジエチレントリアミン五酢酸;EtO、ジエチルエーテル;FITC、フルオレセインイソチオシアネート;Fmoc、フルオレニルメトキシカルボニル;GABA、γ−アミノ酪酸;HATU、0−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロホスフェート;HOAt、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール;HOBt、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール;Lys、リシン;MeOH、メタノール;Nal、ナフチルアラニン;Orn、オルニチン;Pbf、2,2,4,6,7−ペンタメチル−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;PyBOP、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;RP−HPLC、逆相高速液体クロマトグラフィー;RT、室温;TFA、トリフルオロ酢酸、TFE、トリフルオロエタノール;TIS、トリイソプロピルシラン。
【背景技術】
【0003】
フィブロネクチン(Pierschbacher and Ruoslahti、1984)及びビトロネクチンなどの細胞外マトリクス(ECM)成分のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(Arg−Gly−Asp;RGD)モチーフはインテグリンと結合する(Ruoslahti and Pierschbacher、1987;D’Souza SE et al.、1991;Joshi et al.、1993;Koivunen et al.、1994)。インテグリン仲介の接着は、細胞の生存、増殖及び移動を制御する細胞内のシグナル伝達事象をもたらす。約25のインテグリンが知られており、且つそれらの少なくとも8つが、それらのリガンドにおける一次認識配列としてRGDモチーフと結合する。
【0004】
RGD含有ペプチドを求めてスクリーニングするためのファージディスプレイ法(Pasqualini and Ruoslahti、1996)によって得たデータは、腫瘍血管の内皮細胞層との、それらの選択的結合を示している(Ruoslahti、1996;Pasqualini et al.、1997)。
【0005】
インテグリンの発現は、活性状態の内皮細胞(EC)では高いが、静止状態の内皮細胞(EC)ではより制限されることが報告されているので、低分子合成RGD含有ペプチドは、血管内皮細胞及び腫瘍細胞の増殖を妨害するアンタゴニストとして提案されている。さらにRGDペプチドはシグナル伝達を遅らせ、細胞の移動に影響を与え、且つ腫瘍細胞の退行又はアポトーシスを誘導する(Su et al.、2002)。RGDアナログは、腫瘍イメージング(Haubner et al.、2001)、抗血管新生手法(Kawaguchi et al.、2001;Pasqualini et al.、2000)で使用され、且つ放射性核種の腫瘍ターゲティング(van Hagen et al.、2000)及び化学療法剤(Arap et al.、1998;Zitzmann et al.、2002)で使用される。
【0006】
インテグリンは癌細胞においても発現され、癌細胞の浸潤、転移、増殖及びアポトーシスにおいて重要な役割を果たす。選択された臓器への腫瘍細胞の転移浸潤は、腫瘍細胞と臓器特異的内皮マーカーの間の接着相互作用に依存する細胞ホーミング現象を表すものであり得る(Ruoslahti and Rajotte、2000)。インテグリンと内皮細胞又は腫瘍細胞のいずれかの結合によって、RGDペプチドは、転移プロセスに必要不可欠である腫瘍細胞−ECM及び腫瘍細胞−ECの結合を阻害することによって、in vivoでの細胞移動を調節することができる。いくつかの試験は、RGD含有化合物は、in vitro(Goligorsky et al.、1998;Romanov and Goligorsky 1999)及びin vivo(Saiki et al.、1989;Hardan et al.、1993)での腫瘍細胞の転移プロセスに干渉することができることを示している。
【0007】
個々のインテグリンに特異的であるペプチドは相当興味深く、潜在的な医学的重要性を有する。αβインテグリンは、腫瘍の血管新生と関係があることが示された最初のインテグリンであった。αβインテグリンを特異的に阻害するRGDペプチドは、腫瘍及び網膜血管新生の阻害剤、骨粗しょう症の阻害剤としての有望性、並びに腫瘍血管系への薬剤のターゲティングにおける有望性を示す(Assa−Munt et al.、2001)。抗癌剤ドキソルビシン又はアポトーシス促進ペプチドとαβインテグリン結合RGDペプチドのカップリングによって、マウスにおいて異種移植腫瘍に対して試験したとき、非修飾薬剤より活性があり毒性が低い化合物が生成される(Ruoslahti、2000;Arap et al.、1998;Arap et al.、2002;Ellerby et al.、1999)。したがって、インテグリン結合ペプチド及びペプチド模倣体を設計及び生成する際に、多量の作業が注ぎ込まれた(Haubner et al.、1996;Locardi et al.、1999;Lark et al.、1999;Raboisson et al.、2006;Belvisi et al.、2005;Dijkgraaf et al.、2006;Banfi et al.、2007;米国特許第5,849,692号)。
【0008】
米国特許第6,576,239号、EP0927045及びWO98/010795は、アミノ酸配列RGD又はNGRを含む腫瘍ホーミングペプチドを含むコンジュゲートであって、前記ペプチドが治療用又は診断用成分と連結し、ただし前記成分がファージ粒子ではないコンジュゲートを開示する。治療用成分は細胞毒性薬、又はドキソルビシンなどの癌用化学療法剤であってよい。このコンジュゲートは、in vivo投与によって血管新生血管系に選択的にホーミングする。腫瘍ホーミングペプチドは、最大20若しくは30アミノ酸又は50〜100アミノ酸長の直鎖又は環状ペプチドであってよい。1つの好ましいペプチドは、環状ノナペプチドCDCRGDCFC又はH−Cys−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys−NHである。
【0009】
WO2008/023378は、RGD含有ペプチド又はRGDペプチド模倣体と、ポルフィリン、クロロフィル又はバクテリオクロロフィルから選択される光増感剤とのコンジュゲートを開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、
一般式I:
【化1】

[式中、
アルギニン残基がそのα−アミノ基によって骨格C=Oと連結し、
Xが−NH−、−NH−R−、−O−R−、−S−又は−S−R−であり、RがC〜Cアルカン、C〜Cアルケン、C〜Cアルキン、C〜C10シクロアルカン、C〜C10シクロアルケン、C〜C14単環又は多環芳香族炭化水素、又は1個若しくは2個のC〜Cアルキル、Cアルケニル又はCアルキニルによって置換されたC〜C14単環若しくは多環芳香族炭化水素から誘導されたヒドロカルビレンラジカルであり、又はRが、それが結合した窒素原子と一緒に、酸素、窒素又はイオウから選択される1〜2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する5−又は6−員飽和又は不飽和複素環を形成し、且つ
が、そのα−若しくは側鎖カルボキシル基によって骨格NHと連結し、且つそのα−若しくは側鎖アミノ基によってアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結した、その側鎖上にアミノ基若しくはカルボキシル基のいずれかを有する天然若しくは非天然アミノ酸残基である]、
又は一般式II:
【化2】

[式中、
が、そのα−若しくは側鎖カルボキシル基によってアルギニン残基のα−アミノ基と連結し、且つそのα−若しくは側鎖アミノ基によって骨格C=Oと連結した、その側鎖上にアミノ基若しくはカルボキシル基のいずれかを有する天然若しくは非天然アミノ酸残基であり、
が、そのα−アミノ基によって骨格C=Oと連結し、且つそのα−カルボキシル基によってAのα−若しくは側鎖アミノ基と連結した、天然若しくは非天然アミノ酸残基であり、且つ
が、そのα−若しくは側鎖アミノ基の1つによってAのカルボキシル基と連結し、且つそのα−若しくは側鎖アミノ基のもう1つによってアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結した、その側鎖上にアミノ基を有しそのC末端でアミド化した天然若しくは非天然アミノ酸残基である]
のRGD含有環状ペプチド模倣体に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、前に定義したRGD含有環状ペプチド模倣体と、ペイロードの成分のコンジュゲートであって、Aが側鎖アミノ基を有するとき、前記ペイロード成分が場合によってスペーサーによってAのα−又は側鎖アミノ基のいずれかと連結し、且つAがジカルボン酸アミノ酸残基であるとき、前記ペイロード成分が場合によってスペーサーによってAのα−又は側鎖カルボキシル基のいずれかと連結するという条件で、前記ペイロードの成分が、ペプチド模倣体中でアミノ酸残基Aと連結した蛍光プローブ、光増感剤、キレート剤、又は細胞毒性薬から選択される上記コンジュゲートに関する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、RGD含有環状ペプチド模倣体と前に定義したペイロード成分とのコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明の医薬組成物は、様々な目的、例えば(i)ペイロードが蛍光プローブであるとき、診断目的用、特に臓器及び組織の可視化用、及び腫瘍の診断用に、(ii)ペイロードが光増感剤であるとき、光線力学的療法(PDT)用、特に腫瘍又は非腫瘍組織のPDT用に、(iii)ペイロードがキレート剤であるとき、放射線イメージング又は放射線療法用に、(iv)ペイロードが細胞毒性薬であるとき、標的化学療法用に使用することができる。
【0014】
さらに別の態様では、したがって本発明は、診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング若しくは放射線療法、又は標的化学療法用の医薬組成物を調製するための、RGD含有環状ペプチド模倣体と前に定義したペイロード成分とのコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
【0015】
他のさらなる態様では、本発明は、診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング又は放射線療法、又は標的化学療法用の、RGD含有環状ペプチド模倣体と前に定義したペイロード成分とのコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】CD−1ヌードマウスの乳房中の同所性ヒト乳MDA−MB−231−RFP原発性巨大腫瘍における、コンジュゲート1の蓄積パターンを示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、腫瘍細胞とコンジュゲートの両方の蛍光を、Xenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して第1〜7日にモニタリングした。上図は腫瘍によって生じた蛍光シグナルを示し(赤色蛍光イメージング)、下図はコンジュゲートによって生じた蛍光シグナルを示す(近赤外蛍光イメージング)。腫瘍によって生じたシグナルとコンジュゲートによって生じたシグナルの一致は、腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を示唆する。
図1B】CD−1ヌードマウスの乳房中の同所性ヒト乳MDA−MB−231−RFP原発性巨大腫瘍における、コンジュゲート4の蓄積パターンを示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、腫瘍細胞とコンジュゲートの両方の蛍光を、Xenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して第1〜7日にモニタリングした。上図は腫瘍によって生じた蛍光シグナルを示し(赤色蛍光イメージング)、下図はコンジュゲートによって生じた蛍光シグナルを示す(近赤外蛍光イメージング)。腫瘍によって生じたシグナルとコンジュゲートによって生じたシグナルの一致は、腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を示唆する。
図1C】CD−1ヌードマウスの乳房中の同所性ヒト乳MDA−MB−231−RFP原発性巨大腫瘍における、コンジュゲート41の蓄積パターンを示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、腫瘍細胞とコンジュゲートの両方の蛍光を、Xenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して第1〜7日にモニタリングした。上図は腫瘍によって生じた蛍光シグナルを示し(赤色蛍光イメージング)、下図はコンジュゲートによって生じた蛍光シグナルを示す(近赤外蛍光イメージング)。腫瘍によって生じたシグナルとコンジュゲートによって生じたシグナルの一致は、腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を示唆する。
図2A】乳癌腫瘍の壊死領域におけるコンジュゲート1の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、蛍光はXenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して注射後第6日にモニタリングした。示すように、腫瘍の中心部分中の壊死領域は赤色蛍光を失うが(左図)、コンジュゲートの蓄積を示す(右図)。
図2B】乳癌腫瘍の壊死領域におけるコンジュゲート4の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、蛍光はXenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して注射後第6日にモニタリングした。示すように、腫瘍の中心部分中の壊死領域は赤色蛍光を失うが(左図)、コンジュゲートの蓄積を示す(右図)。
図2C】乳癌腫瘍の壊死領域におけるコンジュゲート41の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、蛍光はXenograph IVIS(登録商標)システム(光子の単位のカラースケール/秒/cm/ステラジン)を使用して注射後第6日にモニタリングした。示すように、腫瘍の中心部分中の壊死領域は赤色蛍光を失うが(左図)、コンジュゲートの蓄積を示す(右図)。
図3A】MLS卵巣腫瘍と比較したLNCaP前立腺癌腫瘍における、コンジュゲート1の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、移植腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を、Xenograph IVIS(登録商標)システムを使用して注射後の特定時間地点(コンジュゲート1に関して8、11、14、24及び48時間)でモニタリングした。前立腺腫瘍中(上図)と卵巣腫瘍中(下図)のコンジュゲートの蓄積プロファイルはほぼ同じであった。両方の場合において、最高蛍光レベルは注射後8〜11(コンジュゲート1)時間で観察し、コンジュゲートはコンジュゲート1の場合最大48時間腫瘍中に残った。上左図中の矢印は前立腺腫瘍の場所を示す。各図中の右図は注射後14時間で摘出した臓器を示し、肝臓及び腎臓において観察した高い蛍光レベルはこれらの臓器を介したコンジュゲートの除去を示唆する。
図3B】MLS卵巣腫瘍と比較したLNCaP前立腺癌腫瘍における、コンジュゲート4の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、移植腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を、Xenograph IVIS(登録商標)システムを使用して注射後の特定時間地点(コンジュゲート4に関して8、14、24及び48時間)でモニタリングした。前立腺腫瘍中(上図)と卵巣腫瘍中(下図)のコンジュゲートの蓄積プロファイルはほぼ同じであった。両方の場合において、最高蛍光レベルは注射後8〜14(コンジュゲート4)時間で観察し、コンジュゲートはコンジュゲート4の場合最大48時間腫瘍中に残った。上左図中の矢印は前立腺腫瘍の場所を示す。各図中の右図は注射後14時間で摘出した臓器を示し、肝臓及び腎臓において観察した高い蛍光レベルはこれらの臓器を介したコンジュゲートの除去を示唆する。
図3C】MLS卵巣腫瘍と比較したLNCaP前立腺癌腫瘍における、コンジュゲート41の蓄積を示す図である。マウスは材料及び方法中に記載したように処置し、移植腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を、Xenograph IVIS(登録商標)システムを使用して注射後の特定時間地点(コンジュゲート41に関して8、12及び24時間)でモニタリングした。前立腺腫瘍中(上図)と卵巣腫瘍中(下図)のコンジュゲートの蓄積プロファイルはほぼ同じであった。両方の場合において、最高蛍光レベルは注射後8〜12(コンジュゲート41)時間で観察し、コンジュゲートはコンジュゲート41の場合最大24時間腫瘍中に残った。上左図中の矢印は前立腺腫瘍の場所を示す。各図中の右図は注射後14時間で摘出した臓器を示し、肝臓及び腎臓において観察した高い蛍光レベルはこれらの臓器を介したコンジュゲートの除去を示唆する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一態様では、本発明は、前に定義したαβ及びαβインテグリンリガンドである、新規なアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(Arg−Gly−Asp;RGD)含有環状ペプチド模倣体を提供する。
【0018】
本明細書で互換的に使用する用語「RGD含有環状ペプチド模倣体」、「環状ペプチド模倣体」及び「αβ及びαβインテグリンリガンド」は、RGDモチーフを有するペプチドを模倣する、RGDモチーフとも呼ばれるRGD配列を含有する環状非ペプチド化合物を指す。本発明の環状ペプチド模倣体は、前に定義した一般式I又は一般式IIのいずれかを有する任意の環状化合物であってよい。
【0019】
本明細書の以後のスキーム1中に詳細に示すように、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体はRGDモチーフを含有する環状化合物であり、その中で側鎖アミノ基(A)を有するジカルボン酸アミノ酸又はアミノ酸のいずれかの残基は、アミド結合によって一方側でRGDモチーフ中のアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基、及び他方側で骨格NHと連結しており、前記骨格NHは様々な考えられる架橋形成単位によってRGDモチーフ中のアルギニン残基のα−アミノ基と連結している。さらに示すように、一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体はRGDモチーフを含有する環状化合物であり、その中で側鎖アミノ基(A)を有するジカルボン酸アミノ酸又はアミノ酸のいずれかの残基は、アミド結合によって一方側でRGDモチーフ中のアルギニン残基のα−アミノ基、及び他方側でそのアミノ基によって骨格C=Oと連結しており、骨格C=Oは別のアミノ酸残基のα−アミノ基(A)と連結しており、それは、アミド結合によってRGDモチーフ中のアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結した、側鎖アミノ基を有しそのC末端でアミド化したさらなるアミノ酸の残基(A)とアミド結合によって連結している。
【0020】
用語「ヒドロカルビレン」は、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、環状若しくは非環状、又は芳香族であってよく、C〜Cアルカン、C〜Cアルケン、C〜Cアルキン、C〜C10シクロアルカン、C〜C10シクロアルケン、C〜C14単環又は多環芳香族炭化水素、或るいは1個若しくは2個のC〜Cアルキル、Cアルケニル又はCアルキニルによって置換されたC〜C14単環又は多環芳香族炭化水素から誘導されてよい、炭素及び水素原子のみを含有する二価ラジカルを指す。
【化3】
【0021】
用語「C〜Cアルカン」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を典型的には意味し、例えば、メタン、エタン、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、n−ヘキサンなどを含む。好ましいのはC〜Cアルカン、より好ましいのはエタンである。用語「C〜Cアルケン」及び「C〜Cアルキン」は、2〜6個の炭素原子及びそれぞれ1個の二重又は三重結合を有する直鎖及び分岐鎖炭化水素を典型的には意味し、エテン、3−ブテン、2−エテニルブテンなど、及びプロピン、2−ブチン、3−ペンチンなどを含む。用語「C〜C10シクロアルカン」は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環式又は二環式炭化水素を意味し、用語「C〜C14単環又は多環芳香族炭化水素」は、ベンゼン、ナフタレン及びアントラセンなどの芳香族カルボン酸分子を示す。
【0022】
基NHR中では、Rは前に定義したヒドロカルビレンであり、又はRが、それが結合した窒素原子と一緒に、酸素、窒素又はイオウから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和、好ましくは5−又は6−員複素環を形成する。このような環は、環、例えばピペラジン環中の第二窒素原子において、例えば1又は2個のC〜Cアルキル基で、又は1個のアルキル若しくはヒドロキシアルキル基で置換することができる。
【0023】
用語「アミノ酸」は、それらのL及びD立体異性体での天然と非天然アミノ酸の両方を指し、特に、側鎖アミノ基を有するアミノ酸及びジカルボン酸アミノ酸を含む。側鎖アミノ基を有するアミノ酸の非制限的な例にはリシン(Lys)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、ジアミノ酪酸(Dab)及びオルニチン(Orn)があり、ジカルボン酸の例には、非制限的に、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)及びアミノアジピン酸がある。
【0024】
一実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NH−又は−NH−R−であり、即ち、尿素成分がアルギニン残基のα−アミノ基で形成され、且つRが直鎖C〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、好ましくはC〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、より好ましくはエタンから誘導されたヒドロカルビレンである、一般式Iの環状化合物である。
【0025】
別の実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NH−R−であり、且つRが2個のC〜Cアルキルによって置換されたC〜C14単環又は多環芳香族炭化水素、好ましくは1,3−ジメチルベンゼン−1,3−ジイル、即ち、メチル基によって連結したm−キシレンから誘導されたヒドロカルビレンである、一般式Iの環状化合物である。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NH−R−であり、且つRが、それが結合した窒素原子と一緒に、5−又は6−員飽和又は不飽和複素環、好ましくはピペリジン−1,4−ジイル、即ち、位置1及び4を介して連結したピペリジンを形成する、一般式Iの環状化合物である。
【0027】
さらに別の実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−O−R−であり、即ち、カルバメート成分がアルギニン残基のα−アミノ基で形成され、且つRが直鎖C〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、好ましくはC〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、より好ましくはエタンから誘導されたヒドロカルビレンである、一般式Iの環状化合物である。
【0028】
なお別の実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−S−又は−S−R−であり、即ち、カルバモチオ成分がアルギニン残基のα−アミノ基で形成され、且つRが直鎖C〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、好ましくはC〜Cアルカン、C〜Cアルケン又はC〜Cアルキンから、より好ましくはエタンから誘導されたヒドロカルビレンである、一般式Iの環状化合物である。
【0029】
他のさらなる実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、AがLys、Dap、Dab及びOrn、好ましくはLysなどの側鎖アミノ基を有するアミノ酸の残基、又はGlu、Asp及びアミノアジピン酸などのジカルボン酸アミノ酸の残基である、一般式IIの環状化合物である。
【0030】
なおさらなる実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Aがフェニルアラニン(Phe)、D−フェニルアラニン(D−Phe)、バリン(Val)、Gly及びAspなどのアミノ酸の残基である、一般式IIの環状化合物である。
【0031】
なお別の実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Aが、そのC末端でアミド化したLys、Dap、Dab及びOrnなどの側鎖アミノ基を有するアミノ酸の残基である、一般式IIの環状化合物である。
【0032】
本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、例えば、本明細書の以後の材料及び方法中に記載したように、当技術分野で知られている任意の方法によって調製することができる。
【0033】
好ましい一実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NHであり、且つAがDapである、一般式Iの環状化合物である。
【0034】
他の好ましい実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NH−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap、Dab、Orn又はLysである、一般式Iの環状化合物である。
【0035】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−NH−R−であり、Rがプロパン、n−ブタン又はn−ヘキサンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがOrnである、一般式Iの環状化合物である。
【0036】
なお他の好ましい実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、Xが−O−R−であり、Rがエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAがDap又はLysである、一般式Iの環状化合物である。
【0037】
他のさらなる好ましい実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、AがLysであり、AがPhe、Val、D−Phe又はAspであり、且つAがそのC末端でアミド化したDapである、一般式IIの環状化合物である。
【0038】
なおさらなる好ましい実施形態では、本発明のRGD含有環状ペプチド模倣体は、AがLysであり、AがPheであり、且つAがそのC末端でアミド化したDab、Orn又はLysである、一般式IIの環状化合物である。
【0039】
本発明のαβ及びαβインテグリンリガンドは、卵巣癌、結腸、乳及び前立腺癌などのαβ及びαβを発現する腫瘍中に蓄積し、したがって様々な「ペイロード」成分との結合による診断法と治療法の両方において使用することができる。
【0040】
別の態様では、したがって本発明は、前に定義したRGD含有環状ペプチド模倣体、即ち一般式I又はIIの環状ペプチド模倣体と、ペイロードの成分とのコンジュゲートであって、Aが側鎖アミノ基を有するとき、前記ペイロード成分が場合によってはスペーサーによってAのα−又は側鎖アミノ基のいずれかと連結し、且つAがジカルボン酸アミノ酸残基であるとき、前記ペイロード成分が場合によってはスペーサーによってAのα−又は側鎖カルボキシル基のいずれかと連結するという条件で、前記ペイロードの成分が、ペプチド模倣体中でアミノ酸残基Aと連結した蛍光プローブ、光増感剤、キレート剤、又は細胞毒性薬から選択される上記コンジュゲートに関する。
【0041】
一実施形態では、コンジュゲートのペイロード成分は、環状ペプチド模倣体のアミノ酸残基Aと直接連結する。
【0042】
別の実施形態では、ペイロード成分は、スペーサーによって環状ペプチド模倣体のアミノ酸残基Aと連結する。
【0043】
ペイロード成分と本発明の環状ペプチド模倣体中のアミノ酸残基Aを連結するスペーサーは、天然若しくは非天然アミノ酸の成分、8個を超えないアミノ酸を有する小ペプチドの成分、ジアミン残基、C〜C25ヒドロカルビレン、又は可溶性ポリマーの成分から選択することができる。
【0044】
一実施形態では、スペーサーは、Gly、β−アラニン(β−Ala)、Phe、D−Phe、1−ナフチルアラニン(1−Nal)、D−1−ナフチルアラニン(D−1−Nal)、γ−アミノ酪酸(GABA)及び3−(アミノメチル)安息香酸だけには限られないが、これらなどの、天然又は非天然アミノ酸の成分である。環状ペプチド模倣体のAが側鎖アミノ基を有するアミノ酸の残基である場合、これらのスペーサーは、それらのα−カルボキシル基によってAのα−又は側鎖アミノ基と、且つそれらのα−アミノ基によってペイロードのカルボキシル基と連結する。或いは、Aがジカルボン酸アミノ酸残基の残基である場合、スペーサーは、それらのα−アミノ基によってAのα−又は側鎖カルボキシル基と、且つそれらのα−カルボキシル基によってペイロードのアミノ基と連結する。
【0045】
別の実施形態では、スペーサーは、8個を超えないアミノ酸を有する小ペプチドの成分である。環状ペプチド模倣体のAが側鎖アミノ基を有するアミノ酸の残基である場合、これらのスペーサーは、それらのC末端カルボキシル基によってAのα−又は側鎖アミノ基と、且つそれらのN末端アミノ基によってペイロードのカルボキシル基と連結する。或いは、Aがジカルボン酸アミノ酸残基の残基である場合、スペーサーは、それらのN末端アミノ基によってAのα−又は側鎖カルボキシル基と、且つそれらのC末端カルボキシル基によってペイロードのアミノ基と連結する。
【0046】
さらなる実施形態では、スペーサーは一般式−HN−R’−NH−のジアミン残基であり、前式でR’は不在である、又は飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、環状若しくは非環状、又は芳香族であってよく、C〜C12アルカン、C〜C12アルケン、C〜C12アルキン、C〜C10シクロアルカン、C〜C10シクロアルケン、C〜C14単環又は多環芳香族炭化水素、或いは1個若しくは2個のC〜Cアルキル、Cアルケニル又はCアルキニルによって置換されたC〜C14単環又は多環芳香族炭化水素から誘導されてよい、炭素及び水素原子のみを含有する二価ラジカルである。そこからこのような残基を誘導することができるジアミンの非制限的な例には、ヒドラジン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、p−フェニレンジアミン、シクロペンタン1,3−ジアミン、シクロヘキサン1,4−ジアミン、シクロヘプタン1,4−ジアミン、シクロオクタン1,5−ジアミン、ナフタレン−2,6−ジアミン及び9H−フルオレン−3−6−ジアミンがある。
【0047】
さらに別の実施形態では、スペーサーは、C〜C25ヒドロカルビレン、好ましくは2個の末端官能基によって置換されたC〜C10アルキレン又はフェニレンであり、それによってスペーサーは、一方で環状ペプチド模倣体のアミノ酸Aのα−若しくは側鎖アミノ又はカルボキシルのいずれかと、及び他方ではペイロード成分と結合する。このような末端官能基は、OH、COOH、SOH、COSH又はNHから選択することができ、したがってエーテル、エステル、アミド、尿素、チオアミド又はスルホンアミド基を形成することができる。
【0048】
なお別の実施形態では、スペーサーは、直鎖若しくは分岐鎖ポリエチレングリコール(PEG)又はそのコポリマー、ポリ乳酸(PLA)又はそのコポリマー、PLAに基づく適切な官能基を有するポリエステル、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、又はそれらのコポリマー、或いはポリメタクリルアミドに基づくポリアミド又はそれらのコポリマーだけには限られないが、これらなどの可溶性ポリマーであり、前記ポリマーは環状ペプチド模倣体のアミノ酸残基A及びペイロード成分と連結するのに適した官能基を有し、前記官能基は、例えばヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、メルカプト、スルホン酸基などである。
【0049】
本明細書の以後の例1は、太字のアラビア数字1〜36によって本明細書で識別する、様々なコンジュゲートの合成を記載し、その中で一般式Iの異なるαβ及びαβインテグリンリガンドは、蛍光プローブ、特に、BTA、FITC若しくはダンシル、バクテリオクロロフィル誘導体、特にPd−BTA、又はキレート剤、特にDTPA若しくはDOTAと直接、又はスペーサーによってのいずれかで連結する。調製したコンジュゲート、及びそれらの構造特性の一覧は表1中に要約する。例2は、太字のアラビア数字41〜48によって本明細書で識別する、様々なコンジュゲートの合成を記載し、その中で一般式IIの異なるαβ及びαβインテグリンリガンドは、モデルペイロードとしての蛍光プローブBTAの成分と直接連結する。調製したコンジュゲート、及びそれらの構造特性の一覧は表2中に要約する。環状ペプチド模倣体と連結したときの、使用した様々なペイロード成分の化学構造はスキーム2中に示す。
【0050】
コンジュゲート1〜36を、in vitroインテグリン結合アッセイとin vivo卵巣癌モデルの両方を使用して、MLSヒト卵巣癌細胞との結合に関して試験した。これらのコンジュゲートのいくつかは、in vivoとin vitroの両方でHT29ヒト結腸癌細胞との結合に関しても試験し、コンジュゲート1及び4は、in vitroとin vivoの両方でLNCaP前立腺癌細胞との結合に関してさらに試験した。コンジュゲート41〜48は、in vitroインテグリン結合アッセイを使用して、MLSヒト卵巣癌細胞との結合に関して試験し、活性コンジュゲートは、同様にin vivo卵巣癌モデルを使用して試験した。コンジュゲート41及び42は、in vivoとin vitroの両方でHT29ヒト結腸癌細胞との結合に関して試験し、コンジュゲート41は、in vitroとin vivoの両方でLNCaP前立腺癌細胞との結合に関してさらに試験した。
【0051】
一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づく異なるコンジュゲートの生物活性をスクリーニングしたとき、環状ペプチド模倣体の特定の構造特性、即ち、環状化合物の環の大きさ、及びいくつかの環状化合物中に存在するジアミン残基の大きさ及び構造、並びに環状化合物とペイロード成分を連結するスペーサーは、本明細書で以後記載するようにコンジュゲートの生物活性に影響を与える可能性があることが分かっている。
【0052】
本明細書の以後の例3は、異なる環の大きさを有する一般式Iの環状ペプチド模倣体を含む様々な蛍光プローブ−コンジュゲートの生物活性を示す。環状ペプチド模倣体の環の大きさは、環状化合物の2つの構造パラメーター、特に(i)そのα−又は側鎖カルボキシル基によって骨格NHと連結し、且つそのα−又は側鎖アミノ基によってアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結したアミノ酸残基、即ち一般式I中のA、及び(ii)骨格カルボニルと骨格NHで架橋形成するラジカル、即ち一般式I中のラジカルXを変更することによって変えた。使用した特異的アミノ酸残基Aは、それぞれ側鎖中に1〜4個のメチレン単位を有するDap、Dab、Orn又はLysの残基であり、使用した異なるラジカルXは、骨格NHと一緒にヒドラジン又は特定アルキルジアミンのいずれかの成分を形成する、−NH−、−NH(CH2〜4−及び−NH(CH−であった。特に示すように、試験したコンジュゲートの生物活性は16原子から19〜20原子への環状ペプチド模倣体の環の大きさの増大と共に増大したが、しかし、それは環の大きさのさらなる増大と共に低下した。これらの結果は、アルギニン残基のα−アミノ基とラジカルXを架橋形成する尿素結合によって環状化合物はさらに剛性になる一方で、最大19〜20原子を有するより大きな環はインテグリンとの結合に望ましい立体配座をとるほどさらに柔軟であることを示す。他方で、環状ペプチド模倣体の環の大きさが20原子を超える場合、環状化合物は、インテグリンとの結合に望ましい立体配座をおそらくとることができない。
【0053】
例4は、アミド結合によってアミノ酸残基Aのα−又は側鎖カルボキシル基のいずれかと連結し、且つ骨格C=Oによってアルギニン残基のα−アミノ基と連結した異なるジアミン残基を有する、一般式Iの環状ペプチド模倣体を含む様々なBTA−コンジュゲートの生物活性を示す。試験した具体的なコンジュゲートは、その中でアミノ酸残基AがOrnであり、BTA成分がペプチド模倣体環のN末端と直接連結し、且つXで示すラジカルが式−NH(CH2〜4−、1,3−ジメチルベンゼン−1,3−ジイル又はピペリジン−1,4−ジイルのラジカルであるようなコンジュゲートであった。特に示すように、その中でアルキルジアミン残基がAと骨格C=Oで架橋形成するコンジュゲートの生物活性は、アルキル鎖の長さの増大と共に低下した。さらに、Xで示すラジカルがm−キシレン又はピペリジンから誘導された場合、生物活性は測定されず、このようなコンジュゲート中のペプチド模倣体環は剛性であり、インテグリンとの相互作用に望ましくない立体配座をとることが示された。
【0054】
例5は、環状ペプチド模倣体のN末端と蛍光プローブ成分を連結する異なるスペーサーを有する、一般式Iの環状ペプチド模倣体を含む様々な蛍光プローブ−コンジュゲートの生物活性を示す。使用した特異的スペーサーは、異なる天然若しくは非天然アミノ酸、特にGly、β−Ala、Phe、D−Phe、1−Nal、D−1−Nal、GABA及び3−(アミノメチル)安息香酸の成分、又は異なるジアミン、特に1,2−エチレンジアミン及び1,4−ジアミノブタンの残基であった。示すように、おそらくBTA成分は環状化合物とインテグリンの結合に干渉しないので、その中で蛍光プローブ成分が環状ペプチド模倣体と直接連結したBTAコンジュゲートは高い生物活性を示した。それとは対照的に、その中でGly又はβ−Ala成分をスペーサーとして使用し、環状ペプチド模倣体とBTA成分の間の距離が増大したコンジュゲートは、おそらく多量のBTA成分のため低い活性を示した。興味深いことに、環状ペプチド模倣体とBTA成分の間の距離を、スペーサーとしてGABA成分を使用してさらに増大したとき、このコンジュゲートの生物活性は、その中でGly又はβ−Ala成分をスペーサーとして使用したコンジュゲートのそれより高く、おそらくGABAはインテグリンと結合するさらなる自由度を環状ペプチド模倣体に与えるほど十分長いが、しかし、ペプチド模倣体環を超えるBTA成分のフォールディングを引き起こすほど長すぎないことが示された。BTAより小さいFITC及びダンシルを使用した場合、蛍光プローブ成分と環状ペプチド模倣体のN末端の間の距離は、コンジュゲートの生物活性に対して全く影響がなかった。さらに示すように、その中でPhe、1−Nal、D−Phe又はD−1−Nal成分をスペーサーとして使用したBTAコンジュゲートは、おそらくインテグリンの疎水性ポケットとの相互作用をもたらすフェニルアラニン又はナフチルアラニンの芳香族側鎖のため、その中でGly成分を使用した対応するコンジュゲートより活性があった。その中でD−Phe成分をスペーサーとして使用したコンジュゲートの生物活性は、その中でPhe又は1−Nal成分を使用したコンジュゲートのそれより高かったことは注目すべきであり、D形状はL形状より良くインテグリンの疎水性ポケットに適合する可能性があることを示す。D−1−NalはD−Pheより反応性が低く、フェニル環はナフチルより良く疎水性ポケットに適合することを示す。その中でそれぞれ1,2−エチレンジアミン又は1,4−ジアミノブタンの残基をスペーサーとして使用し、且つ尿素結合が環状ペプチド模倣体とスペーサーの間で形成されるコンジュゲート32及び33は、コンジュゲート10及び11のそれと類似した生物活性を有しており、尿素結合はアミド結合とほぼ同じ活性を有し、それがペプチド模倣体の立体配座に影響を与えないことを示すことに留意しなければならない。コンジュゲート32のそれと比較したコンジュゲート33の強い生物活性は、インテグリンの結合部位と相互作用するさらなる自由度をペプチド模倣体環に与える、ペプチド模倣体環とペイロード成分の間の4個のメチレン単位の距離に原因がある可能性がある。
【0055】
他方で例6は、その中で尿素成分がアルギニン残基のα−アミノ基によって形成される一般式Iの環状ペプチド模倣体を含むBTA−コンジュゲートは、その中でカルバメート成分が形成された対応するコンジュゲートのそれと類似した生物活性を有していたことを示し、アルギニン残基のα−アミノ基で形成された成分の性質は、コンジュゲートの生物活性に対して全く影響がないことが示された。
【0056】
例7は、その中でタウリンが異なる求核試薬によって置換されたBTA誘導体成分と直接連結した一般式Iの異なるαβ及びαβインテグリンリガンドからなる、アラビア数字37〜40によって本明細書で識別する4個の非金属バクテリオクロロフィル誘導体−コンジュゲートの合成を記載する。示すように、in vitroインテグリン結合アッセイを使用して測定した、これらのコンジュゲートの生物活性は類似しており、これらの場合において、アミノ基は生物活性に対して全く影響がないこと、及びその挙動はタウリン中スルホネートのそれとほぼ同じであることが示された。
【0057】
一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づく異なるコンジュゲートの生物活性をスクリーニングしたとき、環状ペプチド模倣体の特定の構造特性、即ち、環状化合物の環の大きさ、及びアミノ酸残基Aの特性は、本明細書で以後記載するようにコンジュゲートの生物活性に影響を与える可能性があることが分かっている。
【0058】
本明細書の以後の例8〜9は、異なる環の大きさを有する一般式IIの環状ペプチド模倣体を含む様々なBTA−コンジュゲートの生物活性を示す。環状ペプチド模倣体の環の大きさは、環状化合物の2つの構造パラメーター、特に(i)アスパラギン酸残基のα−カルボキシル基及びAのカルボキシル基と連結したアミノ酸残基、即ちアミノ酸残基A、及び(ii)そのα−アミノ基によって骨格C=Oと、且つそのα−カルボキシル基によってアミノ酸残基Aと連結したアミノ酸残基、即ちアミノ酸残基Aを変更することによって変えた。コンジュゲート活性に対するAの影響を試験するために、異なるアミノ酸残基Aではなく同じアミノ酸残基A及びA、特にそれぞれ側鎖中に1〜4個のメチレン単位を有するDap、Dab、Orn及びLysを有するBTA−コンジュゲートを試験した。同様に、コンジュゲート活性に対するAの影響を試験するために、異なるアミノ酸残基Aではなく同じアミノ酸残基A及びA、特にPhe、Val、D−Phe、Gly及びAspを有するBTA−コンジュゲートを試験した。例8中に示すように、試験したコンジュゲートの生物活性は、20原子から23原子への環状ペプチド模倣体の環の大きさの増大と共に低下し、最適な環の大きさは20原子であること、及びそれを超える環の大きさはインテグリンの結合部位に適合しないことが示された。例9は、疎水性アミノ酸残基Aを有するコンジュゲートの生物活性は、おそらくインテグリンの結合部位中の疎水性ポケットとの疎水性相互作用のため、より極性が高いコンジュゲートのそれより高かったことを示し、D形状は疎水性ポケットに完全には適合しないことをさらに示唆する。
【0059】
例10は、in vitroアッセイを使用した、ヒトαβインテグリンと本発明の特定のコンジュゲートの競合結合レベルを示し、定性的に同じin vitro結合を有するコンジュゲート1、4、7、28及び41は、コンジュゲート5及び11より活性があることを具体的に実証する。
【0060】
例11は、その中で巨大乳癌腫瘍におけるコンジュゲート1、4及び41の蓄積パターンを、注射後第1〜7日にモニタリングした試験を記載する。示すように、腫瘍の壊死領域中にこれらのコンジュゲートは蓄積し、本発明のコンジュゲートは診断用途に使用することができることが示された。壊死性コアの検出は、様々な型の癌、例えば乳癌において重要な予後マーカーであり、腫瘍境界の検出は腫瘍の完全な除去に必須であるからである。
【0061】
例12は、その中でαβインテグリンを発現する前立腺癌細胞におけるコンジュゲート1、4及び41の蓄積パターンを、注射後第2日までモニタリングした試験を記載する。示すように、注射後8〜11〜14時間で腫瘍領域において最高蛍光レベルを観察し、コンジュゲートはコンジュゲート1及び4の場合最大48時間、及びコンジュゲート41の場合最大24時間腫瘍中に残った。さらに示すように、前立腺腫瘍中と卵巣腫瘍中のこれらのコンジュゲートの蓄積プロファイルはほぼ同じであった。
【0062】
例13は、前記コンジュゲートの注射後第5日で、50mg/kgの用量において、肝臓中又は腎臓中で壊死又は炎症の証拠を観察しなかったことを示し、これらのコンジュゲートは試験した用量において毒性ではないことを示唆する、コンジュゲート1、4及び41の毒性試験を記載する。
【0063】
前述の全てを鑑みて、一実施形態において、本発明のコンジュゲートのペイロード成分は、BTA、FITC、ダンシル、ローダミン、エオシン及びエリスロシンだけには限られないが、これらなどの蛍光プローブの成分である。
【0064】
好ましい一実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはアミノ酸残基Aと直接、即ちスペーサーなしで連結したBTAであり、Xは−NH−であり、且つAはDapである(本明細書で識別するコンジュゲート2)。
【0065】
他の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはAと直接連結したBTAであり、Xは−NH−R−であり、且つ(i)Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAはそのα−若しくは側鎖アミノ基によってBTAと連結したDap、Dab、Orn、若しくはLysであり(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート1、3、4、5及び6)、(ii)Rはプロパン、n−ブタン若しくはn−ヘキサンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAはOrnであり(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート24、25及び26)、又は(iii)Rは1,3−ジメチルベンゼン−1,3−ジイル若しくはピペリジン−1,4−ジイルであり、且つAはOrnである(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート15及び23)。
【0066】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはAと直接連結したダンシルであり、Xは−NH−R−であり、且つ(i)Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AはDap、Orn又はLysであり(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート19、18及び16)、又は(ii)Rはn−ブタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AはOrnである(本明細書で識別するコンジュゲート21)。
【0067】
他のさらなる好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはAと直接連結したBTAであり、Xは−O−R−であり、Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAはDap又はLysである(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート7及び8)。
【0068】
なお他の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはスペーサーによってAと連結したBTAであり、Xは−NH−R−であり、Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AはDapであり、且つスペーサーはGly、β−Ala、GABA、Phe、D−Phe、1−Nal、D−1−Nal若しくは3−(アミノメチル)安息香酸の成分、又は1,2−エチレンジアミン若しくは1,4−ジアミノブタンの残基である(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート9、10、11、27、28、29、30、31、32及び33)。
【0069】
他のさらなる好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはスペーサーによってAと連結したFITCであり、Xは−NH−R−であり、Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つ(i)AはDapであり、且つスペーサーはβ−Ala成分であり(本明細書で識別するコンジュゲート12)、又は(ii)AはLysであり、且つスペーサーはβ−Ala又はGABAの成分である(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート13及び14)。
【0070】
なおさらなる好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはスペーサーによってAと連結したダンシルであり、Xは−NH−R−であり、且つ(i)Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AはDap又はLysであり、且つスペーサーはGly成分であり(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート20及び17)、又は(ii)Rはn−ブタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、AはOrnであり、且つスペーサーはβ−Ala成分である(本明細書で識別するコンジュゲート22)。
【0071】
他の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはAと直接連結したBTAであり、AはLysであり、AはPhe、Val、D−Phe、Gly又はAspであり、且つAはそのC末端でアミド化したDabである(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート41、42、43、44及び45)。
【0072】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体と蛍光プローブの成分のコンジュゲートであり、この場合前記蛍光プローブはAと直接連結したBTAであり、AはLysであり、AはPheであり、且つAはそのC末端でアミド化したDab、Orn又はLysである(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート46、47及び48)。
【0073】
光線力学的療法(PDT)は、光増感剤と呼ばれる非毒性薬剤を光と共に投与して、細胞を不活性化することができる細胞毒性反応酸素種をin situで生成する、腫瘍の非外科手術治療である。二元治療モダリティであるので、一般に使用される化学療法又は放射線療法と比較したとき、PDTはさらに高い特異性を与え、より選択的、ただし低くはない破壊性である可能性がある。
【0074】
ポルフィリンは臨床分野において主な光増感剤として利用されている。光による最適な組織透過はおそらく650〜800nmの間で行う。ポルフィマーナトリウム(Photofrin(登録商標)、Axcan Pharma Inc.)は、食道及び気管支内非小細胞性肺癌の治療に関してFDAの承認を得た酸を用いた処理によって、ヘマトポルフィリン−IXから得るモノマー、ダイマー、及び高次オリゴマーの複合及び非分離混合物である。
【0075】
好ましいスペクトル領域(650〜850nm)中のその強烈な吸収及び処置後のその容易な分解のため、クロロフィル及びバクテリオクロロフィル誘導体は、腫瘍のPDT用の卓越した増感剤として、且つポルフィリンと比較して優れた性質を有すると同定されている。特に、バクテリオクロロフィルはクロロフィルと比較して有用である可能性がある。それらは、クロロフィル誘導体より強烈な近赤外バンド、即ち、相当長い波長を示すからである。
【0076】
腫瘍細胞自体ではなく腫瘍血管系を破壊するための光線力学療法用試薬のターゲティングは、腫瘍細胞の増殖及び発生は連続的な酸素及び栄養素供給に非常に依存するので、治療上の利点をもたらす可能性がある。さらに、腫瘍血管内皮細胞(EC)層のターゲティングは、治療用マクロ分子による腫瘍間質のわずかな透過を回避すると予想される。腫瘍血管は腫瘍微小環境によって影響を受け、腫瘍関連の「痕跡」を得る可能性があるが、それらは悪性ではなく、薬剤耐性を示す可能性は低い。さらに、ターゲティングされる抗血管新生剤が腫瘍細胞に対しても活性があるとき、さらなる有効性の利点が予想され得る。したがって、一薬剤において抗血管性と抗腫瘍細胞毒性活性を組み合わせることによって、その有効性は増大すると予想することができ、必要とされる有効細胞毒性用量は、したがって低下する可能性がある。
【0077】
選択的血管ターゲティングは、腫瘍及び正常血管の治療剤に対する差次的感受性及び結果として生じる応答に依存し得る。或いは、差次的エンドサイトーシスは、細胞毒性薬又は他の治療剤の選択的取り込みを促進する可能性がある。インテグリンαβ、αβ及びαβが、例えば腫瘍を伴う血管新生した血管内皮細胞に典型的な発現パターンにおいて同定されている。
【0078】
この目標を達成するために異なる戦略が進められている。血管系中の特定部位をターゲティングする、循環ペプチド、ペプチド模倣体又は抗体は、大部分が血管壁などの生理的障壁を越えて位置する腫瘍細胞を直接ターゲティングするようなコンジュゲートに優る理論上の利点をもたらす、治療剤及び診断剤の担体として魅力的である。
【0079】
Chaleix et al.(2003)は、非金属ポルフィリン大員環が、4−メチルフェニル又はアセチル化グルコシルオキシフェニルによって位置10、15、20の各々において、及びスペーサーアームによって大員環と連結した直鎖RGD含有ペプチドの残基によって位置5において置換された、PDT用途の考えられる候補としてのRGD−ポルフィリンコンジュゲートの合成を開示する。
【0080】
別の実施形態では、本発明のコンジュゲートのペイロード成分は、したがって、ポルフィリン、クロロフィル又はバクテリオクロロフィルだけには限られないが、これらなどの光増感剤の成分である。
【0081】
本発明の目的は、増感剤を腫瘍血管系に特異的にターゲティングする光増感剤コンジュゲートを提供することである。従来の化学療法による血管ターゲティングに優る血管用光増感剤によるターゲティングのいくつかの利点が存在する。第一に、ターゲティングされる従来の薬剤は、その蓄積中、プロドラッグでない限り活性状態であることが多く、一方でターゲティングされる光増感剤は、局所照射するまで活性状態ではない。第二に、ターゲティングされる従来の薬剤はホーミング性を示す望ましくない標的とも結合及び作用し、一方でターゲティングされる光増感剤は関連照射部位でのみ活性化し得る。さらに、腫瘍中の血管新生内皮のシグネチャーへとターゲティングされる光増感剤を用いたPDTは、光線力学的療法による内皮細胞損傷を誘導する際に非常に選択的である可能性がある。
【0082】
インテグリンαβは、腫瘍増殖中に既存の血管系からの新たな血管の成長を含む腫瘍転移及び血管新生において、重要な役割を果たすことが報告されているので、腫瘍増殖及び拡大の考えられるマーカーであり得る。したがって、リアルタイムでαβインテグリンの発現を視覚的にモニタリングするための非侵襲的イメージング法は、治療的介入を評価するため、及び転移を検出するための機会を与える。
【0083】
インテグリンはRGDモチーフを認識することによって細胞の細胞内細胞骨格と細胞外マトリクスを結合させる。RGDペプチドはインテグリン受容体部位と相互作用し、細胞のシグナル伝達プロセスを開始させ、多くの異なる疾患に影響を与えることができる。したがって、インテグリンRGD結合部位は魅力的な薬剤標的である。インテグリンαβは、RGD結合部位、及びホーミングしαβインテグリンのアンタゴニストとして作用するRGD配列を含有するペプチド又はペプチド模倣体を有する。
【0084】
本発明の二官能性コンジュゲートでは、ホーミング性はRGD含有環状ペプチド模倣体によって与えられ、一方PDT効果は光増感剤によって与えられる。これらのコンジュゲートは、診断目的及び光線力学的療法による破壊のために、原発性固形腫瘍の新たな血管及びおそらく個々の転移に増感剤をターゲティングすることができるはずである。それらはさらに抗血管新生剤として働き、新生内皮及び血管露出腫瘍細胞のアポトーシスによる破壊を開始することができる。
【0085】
好ましい実施形態では、ペイロード成分は、金属又は非金属であってよく、且つアルキル、アリール、ヘテロアリール及び/又は官能基などの異なる置換基によって末端において場合によっては置換されていてよい、ポルフィリン、クロロフィル又はバクテリオクロロフィル誘導体である。これらの官能基は、正に帯電した基、負に帯電した基、生理条件下で正に帯電した基に転換される塩基性基、及び生理条件下で負に帯電した基に転換される酸性基から選択することができる。
【0086】
用語「正に帯電した基」は、N含有基から誘導されたカチオン、又はNを含有しないオニウム基から誘導されたカチオンを指す。腫瘍内皮は多数のアニオン部位によって特徴付けられるので、正に帯電した基又は生理条件下で正に帯電した基に転換される塩基性基は、本発明のコンジュゲートのターゲティング効率を高める可能性がある。
【0087】
用語「負に帯電した基」は酸から誘導されたアニオンを指し、カルボキシレート(COO)、チオカルボキシレート(COS)、スルホネート(SO)、及びホスホネート(PO2−)を含み、且つ「生理条件下で負に帯電した基に転換される酸性基」は、カルボン酸(−COOH)、チオカルボン酸(−COSH)、スルホン酸(−SOH)及びホスホン酸(−PO)基を含む。
【0088】
より好ましい実施形態では、ペイロード成分は、修飾が大員環中に施された、及び/又は周辺及び/又は中心Mg原子が不在である可能性がある、又はそれが診断の目的及び/若しくはPDTの目的に適した他の金属原子によって置換された化合物を含めた、クロロフィル又は、最も好ましくは、クロロフィル又はバクテリオクロロフィルの天然若しくは合成非天然誘導体であってよいバクテリオクロロフィル誘導体である。このような金属の例には、Pd、Pt、Co、Ni、Sn、Cu、Zn、Mn、In、Eu、Fe、Au、Al、Gd、Er、Yb、Lu、Ga、Y、Rh、Ru、Si、Ge、Cr、Mo、Re、Tl及びTc並びにその同位体があるが、これらだけには限られない。
【0089】
特定の好ましい一実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体とバクテリオクロロフィル誘導体の成分のコンジュゲートであり、この場合前記バクテリオクロロフィル誘導体はAと直接連結したPd−BTAであり、Xは−NH−R−であり、Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAはDapである(本明細書で識別するコンジュゲート34)。
【0090】
さらなる実施形態では、本発明のコンジュゲートのペイロード成分はキレート剤、即ち、テクネチウム−99m(99mTc)などの放射性核種をキレート化することができる作用物質である。このようなキレート剤の非制限的な例には、DTPA及びDOTAがある。このようなコンジュゲートは、放射線イメージング及び放射線療法の作用物質として有用である可能性がある。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体とキレート剤の成分のコンジュゲートであり、この場合前記キレート剤はAと直接連結したDTPA又はDOTAであり、Xは−NH−R−であり、Rはエタンから誘導されたヒドロカルビレンであり、且つAはDapである(それぞれ本明細書で識別するコンジュゲート35及び36)。
【0092】
現在使用されている化学療法剤の大部分は正常細胞に対しても毒性があるので、標的化学療法、即ち、腫瘍細胞を特異的にターゲティングする化学療法剤の開発は非常に重要である。ターゲティングされる細胞毒性ペプチドコンジュゲートは、腫瘍細胞上の受容体及び細胞毒性成分と結合するペプチド担体から構成されるハイブリッド分子である。この手法は、化学療法における細胞毒性薬の特異性及び有効性を効率よく増大させ、毒性副作用も低下させるはずである。
【0093】
したがって、他のさらなる実施形態では、本発明のコンジュゲートのペイロード成分は細胞毒性薬である。
【0094】
好ましい一実施形態では、本発明の細胞毒性薬はアントラサイクリン系化学療法剤である。アントラサイクリン系化学療法剤は、ドキソルビシン(アドリアマイシンとしても知られる)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンを含めた、アントラサイクリンファミリーの任意の化学療法剤であってよい。より好ましい実施形態では、アントラサイクリン系化学療法剤は、キニン含有アントラサイクリンであり腫瘍学の分野で利用される最も広く処方される有効な化学療法剤である、ドキソルビシンである。ドキソルビシンは膀胱、胃、卵巣、肺及び甲状腺の腫瘍を含めた広範囲のヒト悪性腫瘍において示され、乳癌並びに急性リンパ性及び骨髄性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、ユーイング及び骨形成腫瘍、軟部組織肉腫、並びに神経芽細胞腫及びウィルムス腫瘍などの小児癌を含めた他の兆候の治療に利用可能な、最も活性がある作用物質の1つである。
【0095】
他の好ましい実施形態では、細胞毒性薬は、肺、卵巣、乳癌、頭頸部癌、及び進行形カポジ肉腫を有する患者の治療、並びに再狭窄の予防に現在使用されているパクリタキセルなどの分裂阻害剤、カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、又はエリプチシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤である。
【0096】
さらなる態様では、本発明は、RGD含有環状ペプチド模倣体と前に定義したペイロード成分のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
一実施形態では、医薬組成物は、前に定義した環状ペプチド模倣体、即ち一般式I又はIIの環状ペプチド模倣体と、蛍光プローブの成分のコンジュゲートを含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、前に定義したコンジュゲート1〜33及び41〜48からなるコンジュゲートの群から選択されるコンジュゲートを含む。このような医薬組成物は、例えば、血管標的化イメージング(vascular−targeted imaging)(VTI)の、より好ましくは腫瘍の診断の方法において、診断目的、好ましくは臓器及び組織の可視化に使用することができる。
【0098】
別の実施形態では、医薬組成物は、前に定義した環状ペプチド模倣体、即ち一般式I又はIIの環状ペプチド模倣体と、前に定義した光増感剤の成分のコンジュゲートを含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、前に定義したコンジュゲート34及び37〜40からなるコンジュゲートの群から選択されるコンジュゲートを含む。このような組成物は光線力学的療法(PDT)中で使用することができる。一実施形態では、医薬組成物は腫瘍学において、特に腫瘍のPDTに使用するためのものである。任意の適切な固形腫瘍、原発腫瘍と、メラノーマ、結腸、乳、肺、前立腺、脳若しくは頭頸部癌だけには限られないが、これらから選択される転移性腫瘍の両方が本発明によって包含される。別の実施形態では、医薬組成物は非腫瘍疾患に、非腫瘍組織又は臓器のPDTに使用するためのものである。一実施形態では、医薬組成物は、加齢性黄斑変性症(AMD)などの血管疾患、又は脂肪組織への血液供給を制限し、それによってその増殖を阻害することにより肥満などの障害の治療に使用する。
【0099】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、前に定義した環状ペプチド模倣体、即ち一般式I又はIIの環状ペプチド模倣体と、放射性核種をキレート化することができる作用物質の成分のコンジュゲートを含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、前に定義したコンジュゲート35又は36を含む。このような組成物は、適切な放射性核種で標識したとき、放射線イメージング又は放射線療法に使用することができる。
【0100】
なお別の実施形態では、医薬組成物は、前に定義した環状ペプチド模倣体、即ち一般式I又はIIの環状ペプチド模倣体と、前に定義した細胞毒性薬の成分のコンジュゲートを含む。このような組成物は、標的化学療法に使用することができる。
【0101】
本発明によって提供する医薬組成物は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy、19th Ed.、1995中に記載されたように、従来の技法によって調製することができる。組成物は固体、半固体又は液体形であってよく、薬剤として許容される充填剤、担体又は希釈剤、及び他の不活性成分及び賦形剤をさらに含むことができる。さらに、医薬組成物はコンジュゲートの徐放用に設計することができる。組成物は任意の適切な経路、例えば静脈内、経口、非経口、直腸、又は経皮によって投与することができる。用量は患者の状態に依存し、当業者によって適切であると考えられるように決定する。
【0102】
投与の経路は、適切又は所望の作用部位に活性化合物を効率よく運ぶ任意の経路であってよく、静脈内経路が好ましい。固形担体を経口投与に使用する場合、調製物を錠剤化し、粉末又はペレット形で硬質ゼラチンカプセル中に置くことができ、又はそれはトローチ剤の形であってよい。液体担体を使用する場合、調製物はシロップ、エマルジョン、又は軟質ゼラチンカプセルの形であってよい。タルク及び/又は炭水化物担体又は結合剤などを有する錠剤、糖衣錠又はカプセルは、経口施用に特に適している。錠剤、糖衣錠又はカプセルに好ましい担体には、ラクトース、コーンスターチ及び/又はジャガイモデンプンがある。
【0103】
なお別の態様では、したがって本発明は、診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング若しくは放射線療法、又は標的化学療法用の医薬組成物を調製するための、RGD含有環状ペプチド模倣体と、前に定義したペイロード成分のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
【0104】
他のさらなる態様では、本発明は、診断目的、光線力学的療法(PDT)、放射線イメージング若しくは放射線療法、又は標的化学療法用の、RGD含有環状ペプチド模倣体と、前に定義したペイロード成分のコンジュゲート、又は薬剤として許容されるその塩に関する。
【0105】
ここで本発明を、以下の非制限的な実施例によって例示する。
【実施例】
【0106】
材料及び方法
(i)材料。2−クロロトリチルクロリド樹脂、Fmoc−Asp−O−アリル、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−β−Ala−OH、Fmoc−GABA−OH、モノFmoc−ジアミン、HOBt、PyBOP、HATU及びHOAtはNovabiochem(米国)から購入した。Fmoc−Dap(Alloc)−OH、Fmoc−Dab(Alloc)−OH及びFmoc−Lys(Alloc)−OHはBachem(スイス)から購入した。Fmoc−Orn(Alloc)−OH、1−Fmoc−4−アミノピペリジンヒドロクロリド及び4−(Boc−アミノメチル)−アニリンはNeoMPS(フランス)から購入した。FITC、塩化ダンシル、DIEA、DIC、DMBA、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、TFE、TIS、TFA、乾燥DCM及びMeOHはSigma(米国)から購入した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムはAcros(ベルギー)から購入した。DMF、DCM及びアセトニトリルはJ.T.Baker(米国)から購入した。DTPA及びDOTAはMacrocyclics(米国)から購入した。
【0107】
Shimadzu1240 UV−Vis分光光度計を使用してUV−Visスペクトルを得た。HPLC MSの分析値は、Applied Biosystems 150EX single−quad質量分析計と接続した、YMC Pro−RP−C18逆相カラムを備えるAgilent1100HPLCを使用して得た。HPLC分析は(他に記さない限り)、標準条件、20〜95%アセトニトリル水中(pH=4.5、酢酸によって維持)勾配、30分間、0.2ml/分の流速で実施した。調製HPLCは、Millenium v3.05プログラムによって制御される、Waters486UV−VIS可変吸光度検出器及びWatersフラクションコレクターを備えるWaters Delta Prep4000システムを使用して実施した。流速は調製カラム(Vydac C18、218TP101550、50×250mm、10〜15μm)を使用して75ml/分に設定した。HPLC精製において使用した溶媒は、溶媒A(50mMの酢酸アンモニウム水溶液)及び溶媒B(アセトニトリル)であった。ELISAプレートはThermo Labsystems Multiscan Spectrum装置で読みとった。蛍光イメージングは、Xenogen IVIS(登録商標)100シリーズイメージングシステム(Alameda、California)を使用して実施した。
【0108】
(ii)H−Arg(Pbf)−Gly−Asp(αO−アリル)−2−クロロトリチル樹脂とモノFmoc−ジアミンのカップリングに関する一般的な手順。モノFmoc−ジアミンヒドロクロリド(1.05mmol)をDCM(10ml)に溶かした。DIEA(1.26mmol)を溶液に加え1分間攪拌し、次にBTC(0.35mmol)及びDIEA(3.15mmol)を加えた。得られた溶液をDCMで事前に洗浄した0.21mmolペプチジル樹脂に加え、1時間反応させた。カップリング後、樹脂をDCM(3×6ml、それぞれ1分)及びDMF(6×6ml、それぞれ1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。
【0109】
(iii)ペプチジル樹脂とBTA又はPd−BTAのカップリングに関する一般的な手順。BTA(0.42mmol)、PyBOP(0.42mmol)及びHOBt(0.42mmol)をDMF(10ml)に溶かし、次いでDIEA(1.89mmol)を溶液に加え、5分間攪拌した。得られた溶液を0.21mmolペプチジル樹脂に加え、アルゴン下で2時間振とうした。カップリング後、樹脂をDMF(6〜8×6ml、1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験によってモニタリングした。環状ペプチジル樹脂とPd−BTAのカップリングは、BTAに関して記載したのと同じカップリング条件下で実施した。
【0110】
(iv)ペプチジル樹脂とFITCのカップリングに関する一般的な手順。DMF(5ml)にFITC(0.63mmol)を溶かした溶液を0.21mmolペプチジル樹脂に加え、1.5時間振とうした。カップリング後、樹脂をDMF(6×6ml、それぞれ1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験によってモニタリングした。
【0111】
(v)ペプチジル樹脂と塩化ダンシルのカップリングに関する一般的な手順。DCM(5ml)に塩化ダンシル(1.05mmol)及びDIEA(1.47mmol)を溶かした溶液を、DCMで事前に洗浄した0.21mmolペプチジル樹脂に加え、1時間反応させた。カップリング後、樹脂をDCM(5×5ml、1分)及びDMF(2×5ml、1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験によってモニタリングした。
【0112】
(vi)保護ジペプチドFmoc−Arg(Pbf)−Gly−OH、ペプチド合成の構成単位の調製。乾燥DCM(100ml)にFmoc−Gly−OH(4.162gr;14mmol)及びDIEA(9.755gr;56mmol)を溶かした溶液を、10grの2−クロロトリチルクロリド樹脂(置換1.4mmol/gr)と共に1時間室温で攪拌した。混合物は焼結ガラス底を備える反応器に移し、樹脂はDCM/MeOH/DIEA(17:2:1)(3×100ml)、DCM(3×100ml)、DMF(3×100ml)、DCM(2×100ml)、MeOH(2×100ml)及びDMF/DCM(1:1)(3×100ml)で洗浄した。Fmoc基は5%ピペリジンDMF/DCM(1:1)中(100ml、10分)、次に20%ピペリジンDMF(100ml、5分及び2×15分)を用いた処理によって除去し、DMF(7×100ml)で樹脂を洗浄した。DMF(130ml)に溶かしたFmoc−Arg(Pbf)−OH(18.17gr;28mmol)を、室温で15分間DIC(4.34ml;28mmol)及びHOBt(4.29gr;28mmol)で活性化し、反応容器に加えた。混合物は室温で2時間振とうした。ペプチジル樹脂はDMF(5×100ml)、DCM(3×100ml)、MeOH(2×100ml)及びDCM(3×100ml)で洗浄し、3時間真空中で乾燥させた。保護ジペプチドは、1時間室温でAcOH/TFE/DCM(1:1:3)(250ml)の溶液と攪拌することによって樹脂から切断した。樹脂を濾過し同じ溶液(3×50ml)で洗浄した。組み合わせた濾液をn−ヘキサンと混合して共沸混合物としてのAcOHを除去し、蒸発させて油状残渣を得て、それを低温エーテルによる処理によって凝固させた(1l)。濾過及び低温エーテル(150ml)による洗浄によって、約99%の均一性(HPLC)で白い粉末(8.64g;87.5%)を得た。C3643S。MS(LC−MS)計算上m/z=705.84;実測:706.30(M+H)。産物はさらなる精製なしで使用した。
【0113】
(vii)樹脂からのペプチドコンジュゲートの切断に関する一般的な手順。結合後、ペプチジル樹脂をDMF(5×3ml)及びDCM(5×3ml)で洗浄し、次いで減圧下において3時間乾燥させた。ペプチドコンジュゲートは、5分間0℃で、次いで1時間室温で、TFA/チオアニソール/HO/TIS(85:5:5:5)(6ml)の切断剤カクテルを使用して樹脂から切断した。樹脂を濾過し、同じ切断剤カクテル(4ml)で洗浄した。組み合わせた濾液はN流によって約半分の体積まで蒸発させ、ペプチドは低温エーテル(25ml)を加えることによって沈降させた。エーテル層の遠心分離及びデカンテーション、並びに低温エーテル(2×25ml)を用いた追加処理により非保護ペプチドを得て、6時間真空中で乾燥させた。粗製産物はRP−HPLCによって精製した。
【0114】
(viii)ELISAによるインテグリン結合試験。Nuncイムノモジュールストリップ(Nunclon、カタログ番号167008、Daniel Biotech、イスラエル)を、0.06M炭酸塩−重炭酸塩バッファーに溶かした2μg/mlヒトインテグリンαβ(Chemicon、カタログ番号CC1020、Biotest、イスラエル)で一晩コーティングした。ストリップはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Biological Industries、イスラエル)に溶かした2%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma、カタログ番号A−9647、イスラエル)で室温で2時間ブロッキングした。アッセイバッファー(50mMトリスHCl、pH=7.7、0.5%BSA、0.15MNaCl、0.01%Tween20)に希釈したc[RGDfK]−ビオチン(10−3M)と異なる濃度(10−2、10−3、10−4及び10−5M)の試験化合物の混合物を、コーティングしたストリップに加え、振とうしながら室温で一晩インキュベートした。PBSで洗浄した後、アルカリホスファターゼによって標識した抗ビオチン抗体(1:200)(Miltenyi Biotec、Almog、イスラエル)を加え、室温で1時間インキュベートした。サンプルはp−ニトロフェニルホスフェート基質(p−NPP、Calbiochem、Mercury、イスラエル)とインキュベートし、405nmで読みとった。
【0115】
(ix)In−vivo卵巣癌モデル。メスのCD−1ヌードマウス(7〜9週齢、23〜28gr)に麻酔をかけ、(Prof.M.Neeman、the Weizmann Institute of Science、イスラエルから得た)MLSヒト卵巣癌細胞縣濁液(2〜3×10個の細胞/マウス)を皮下(SC)移植した。腫瘍は2〜3週間以内に治療サイズ、直径6〜8mmに達した。
【0116】
2%イソフルオラン(Medeva、Bethlehem、パレスチナ自治区)を含有する7:3のNO:Oの混合物を含むガスによって、又は5mg/kgのケタミン(Rhone Merieux、Lyon、フランス)と1mg/kgのポンパン(Bayer、Leverkusen、ドイツ)(85:15、v:v)の混合物の腹腔内(IP)注射によって動物に麻酔をかけた。
【0117】
(x)In−vivo結腸癌モデル。このモデルは、HT29ヒト結腸癌細胞(ATCC、米国、2〜3×10個の細胞/マウス)をMLSヒト卵巣癌細胞の代わりに使用した事実以外、前の(ix)中に記載したin vivo卵巣癌モデルと同様である。
【0118】
(xi)In−vivo前立腺癌モデル。LNCaP細胞(3×10個の細胞/マウス)を重症複合型免疫不全症(SCID)マウスの背部にSC移植した。腫瘍は60〜70日間増殖させた。腫瘍が治療サイズ(0.7〜0.8cm)に達したとき、動物に麻酔をかけ、試験化合物溶液を静脈内(IV)注射した。IVISにおけるイメージは注射後第8、11、14、24及び48時間で得た。
【0119】
(xii)In−vivo乳癌モデル。メスのCD−1ヌードマウス(6〜8週齢、20〜25g、Harlan Biotech イスラエル、Rehovot、イスラエルから得た)に、MDA−MB−231−RFPヒト乳癌細胞(4×10個の細胞/マウス)を移植した。実際これらの細胞は、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子でトランスフェクトし、したがって赤色蛍光を有する、MDA−MB−231ヒト乳癌細胞(ATCC、米国)である。腫瘍が壊死腫瘍に関する1〜1.5cmの大きさに達したとき、85:15のケタミン:キシラジンの30μl混合物のIP注射によってマウスに麻酔をかけ、次いで試験コンジュゲート(15mg/kg)を尾静脈に注射した。
【0120】
(xiii)BTA−RGDコンジュゲートに関する蛍光イメージングプロトコル。試験化合物(8mg/kg)を、IP麻酔した腫瘍含有マウスの尾静脈に注射した。ガス麻酔した動物のイメージは、IVIS(登録商標)100シリーズイメージングシステムを使用して注射後第6、8、10、12、14及び24時間(いくつかの場合さらに第48及び72時間)で得た。励起及び蛍光フィルターは、IVISにおいてそれぞれ710〜760nm及び810〜860nmに設定した。IVISの標準構成で利用可能なフィルターの中で、化合物の発光ピークに最も近い波長を有する蛍光フィルターを選択した。
【0121】
(xiv)FITC−RGDコンジュゲートに関する蛍光イメージングプロトコル。試験化合物(8mg/kg)を、IP麻酔した腫瘍含有マウスの尾静脈に注射した。ガス麻酔した動物のイメージは、注射後第6及び8時間で得た。動物は第8時間で屠殺し、臓器(腫瘍、腎臓、肝臓)を摘出し、臓器のイメージはIVIS(登録商標)100シリーズイメージングシステムを使用して得た。励起及び蛍光フィルターは、IVISにおいてそれぞれ445〜490nm及び515〜575nmに設定した。IVISの標準構成で利用可能なフィルターの中で、FITCの発光ピークに最も近い波長を有する蛍光フィルターを選択した。
【0122】
(xv)In−vitro結合アッセイ。MLSヒト卵巣癌細胞を、1g/lのD−グルコース、pH7.4、10%のウシ胎児血清(FCS)、グルタミン(2mM)、ペニシリン(0.06mg/ml)及びストレプトマイシン(0.1mg/ml)を含有する最小必須培地(MEM−アルファ)中で単層として培養し、5%CO−湿度雰囲気において37℃において増殖させた。実験48時間前に、細胞を6ウエルプレートに接種した(3×10個細胞/ウエル)。
【0123】
MLS細胞におけるαβインテグリンの発現。細胞はカバーガラス上で増殖させた。一晩の血清飢餓、4%パラホルムアルデヒド(Sigma、イスラエル)での固定及び0.2%Triton X−100(Sigma、イスラエル)での浸透処理後、細胞はブロッキング溶液(10%のウマ血清)(Biological Industries、イスラエル)中で室温で1時間インキュベートした。次いで細胞を、マウス抗ヒトαβインテグリン抗体(1:100)(Chemicon、Biotest、イスラエル)と共に室温において1時間インキュベートした。二次ウサギFITC標識抗マウスIgG(1:200)(Sigma、イスラエル)を、室温で1時間細胞に施した。イメージングはデジタルカメラ(DVC Company,Inc.、Austin、TX)を備える蛍光顕微鏡(Nikon Optiphot2、日本)によって実施した。
【0124】
In vitro結合アッセイ。RGDコンジュゲートを最初にDMSOに溶かして4×10−3Mを得た。次いでストック溶液を培養培地に1:40に希釈し、MLS又はHT29細胞(100μM/ウエル)に加えた。細胞は3時間5%CO−湿度雰囲気において37℃でインキュベートした。次いで細胞はPBSで3回洗浄し、イメージングはXenogen IVIS(登録商標)100シリーズイメージングシステムで実施した。BTA−RGDに関してIVISにおいて設定した励起及び蛍光フィルターは、それぞれ710〜760nm及び810〜860nmであり、FITC−RGDに関してはそれぞれ445〜490nm及び515〜575nmであった。
【0125】
(xvi)競合結合実験(IC50の決定)。イムノモジュールストリップMAXISORP(Nunc、Danyel Biotech、イスラエル)を、50μl/ウエルの2μg/mlヒトαβインテグリン(Chemicon、米国)で一晩コーティングし、室温で2時間2%BSA(Sigma、イスラエル)でブロッキングした。トリス緩衝生理食塩水−Tween(TBST)バッファーで洗浄した後、RGDペプチドc[RGDfK]−ビオチン(10−3M)と異なる濃度(10−2、10−3、10−4及び10−5M)の試験したRGDコンジュゲートの混合物を三連で加え、一晩インキュベートし室温で振とうした。PBSバッファーで洗浄した後、アルカリホスファターゼによって標識した抗ビオチン抗体(1:200)(Miltenyi Biotec、ドイツ)を加え、室温で1時間インキュベートした。サンプルはp−NPP基質と共にインキュベートし、Multiscan Spectrum(Labotal、イスラエル)において405nmで読みとった。データはRGDコンジュゲートの濃度からの結合率の依存性のグラフにプロットし、IC50値を決定した。
【0126】
(例1.一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づくコンジュゲートの合成)
1(i)BTA−及びPd−BTA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート1、3〜6、15、23〜26及び34の合成−方法A
トリペプチドFmoc−Arg(Pbf)−Gly−Asp(αO−アリル)−2−クロロトリチル樹脂を、Fmoc−Arg(Pbf)−Gly−OHと樹脂結合H−Asp−O−アリル残基のカップリングによって固相で調製した。
【0127】
第一アミノ酸の結合は、2−クロロトリチルクロリド樹脂(300mg、置換1.4mmol/gr)とFmoc−Asp−O−アリル(83mg、0.21mmol)及びDIEA(147μl、0.84mmol)を5ml乾燥DCMに溶かした溶液を室温で1時間攪拌して約0.7mmol/gの充填をもたらすことによって実施した。カップリング終了時に、相当する体積の溶媒及び試薬溶液で、材料及び方法中に記載したように樹脂を処理(洗浄及びFmoc除去)した。Fmoc−Arg(Pbf)−Gly−OH(223mg、0.315mmol)、HOBt(48mg、0.315mmol)及びDIC(49μl、0.315mmol)を5mlのDMFに溶かし、室温で20分間攪拌した。生成した溶液を洗浄したH−Asp−O−アリル樹脂に加え、混合物は室温で2時間振とうした。ペプチジル樹脂はDMF(5×5ml)で洗浄した。Fmoc基の除去は、20%ピペリジン(5ml)DMF中(2×15分)の添加、次にDMF洗浄(7×5ml、1分)によって行った。材料及び方法中に記載したようにモノFmoc−ジアミンのカップリングを実施し、次にFmoc脱保護及びDMF洗浄を実施した。Fmoc−Lys(Alloc)−OH、並びにFmoc−Dap(Alloc)−OH、Fmoc−Dab(Alloc)−OH及びFmoc−Orn(Alloc)−OHとテトラペプチドのカップリングは、HOBt(0.63mmol)及びDIC(0.63mmol)で(15分間)予め活性化したFmoc−Lys(Alloc)−OH(0.63mmol)のDMF溶液(5ml)を加えることによって、1時間のカップリング時間で実施した。カップリング後、樹脂をDMFで洗浄した(6×5ml、1分)。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。アリル及びAllocの脱保護は、アルゴン下において室温で2時間、DCM(5ml)に溶かした[(CP]Pd(0.252mmol)及びDMBA(3.57mmol)の溶液とペプチジル樹脂を攪拌することによって行った。樹脂はDCM(3×5ml、1分)、DMF(3×5ml、1分)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩(0.5%、DMF中、4×5ml、2分)及び最後にDMF(5×5ml、1分)で洗浄した。樹脂上での環化は、室温で2時間、DMF(4ml)に溶かしたPyBOP(0.63mmol)及びDIEA(1.26mmol)の溶液を使用することによって行った。Fmocの脱保護後、BTAと非保護ペプチジル樹脂の結合、及び樹脂からペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0128】
1(ii)BTA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート2の合成−方法B
H−Arg(Pbf)−Gly−Asp(αO−アリル)−2−クロロトリチル樹脂の合成を、方法Aに関して前に記載したように実施した。
【0129】
非保護トリペプチドとFmoc−NH−NH塩酸塩のカップリング。モノFmoc−ヒドラジン塩酸塩(1.05mmol)を、ジオキサンと1,3−ジクロロプロパン(10ml)の1:1混合物に溶かした。DIEA(1.26mmol)をこの溶液に加え、1分間攪拌し、次にBTC(0.35mmol)及びDIEA(3.15mmol)を加えた。溶液を(1:1ジオキサン:1,3−ジクロロプロパンで予め洗浄した)ペプチジル樹脂(0.21mmol)に加え、55℃で1時間反応させた。カップリング後、樹脂をDCM(3×6ml、1分)、次にDMF(6×6ml、1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。合成の残り部分は方法Aに関して記載した通りである。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0130】
1(iii)BTA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート9〜11及び27〜33の合成−方法C
シクロペンタペプチドの合成を、方法Aに関して前に記載したように実施した。
【0131】
アミノ酸スペーサーとシクロペンタペプチドのカップリング。Fmocアミノ酸(0.63mmolのFmoc−Gly−OH、Fmoc−β−Ala−OH、Fmoc−GABA−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−D−Phe−OH、Fmoc−1−Nal−OH、Fmoc−D−1−Nal−OH又はFmoc−3−アミノメチル安息香酸)をDMF(5ml)に溶かし、HOBt(0.63mmol)及びDIC(0.63mmol)を次いで加え、15分間反応させた。溶液をFmoc脱保護シクロペンタペプチド−2−クロロトリチル樹脂(0.21mmol)に加え、1時間振とうした。樹脂をDMF(6×5ml、1分)で洗浄し、次にFmocを脱保護した。BTAのカップリング及び樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0132】
ジアミンスペーサーとシクロペンタペプチドのカップリング。モノFmoc−ジアミン塩酸塩(1.05mmolのFmoc−エチレンジアミン塩酸塩又はFmoc−ジアミノブタン塩酸塩)をDCM(10ml)に溶かした。DIEA(1.26mmol)を溶液に加え1分間攪拌し、次にBTC(0.35mmol)及びDIEA(3.15mmol)を加えた。得られた溶液はDCMで予め洗浄した0.21mmolペプチジル樹脂に加え、1時間反応させた。カップリング後、樹脂をDCM(3×6ml、それぞれ1分)及びDMF(6×6ml、それぞれ1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。BTAのカップリング及び樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0133】
1(iv)BTA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート7及び8の合成−方法D
H−Arg(Pbf)−Gly−Asp(αO−アリル)−2−クロロトリチル樹脂の合成を、方法Aに関して前に記載したように実施した。
【0134】
Fmoc脱保護トリペプチドとFmocグリシノールのカップリング。Fmocグリシノール(1.05mmol)をDCM(10ml)に溶かし、次いでBTC(0.35mmol)をこの溶液に加え、次にDIEA(3.15mmol)を加えた。5分間攪拌した後、得られた溶液はDCMで予め洗浄したペプチジル樹脂(0.21mmol)に加え、室温で1時間反応させた。樹脂はDCM(3×6ml、1分)及びDMF(6×6ml、1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。合成の残り部分は方法Aに関して記載したように実施した。樹脂からのペプチドコンジュゲートの切断は、15%DCM+5%TIS及び5%チオアニソールを含有するTFA溶液(6ml)を用いて実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0135】
1(v)FITC−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート12〜14の合成−方法E
シクロペンタペプチドの合成を、方法Aに関して前に記載したように実施した。Fmocの脱保護後、DMF(5ml)に溶かしたFmoc−β−Ala−OH又はFmoc−GABA−OH(0.63mmol)、HOBt(0.63mmol)及びDIC(0.63mmol)の溶液を15分間混合し、ペプチジル樹脂(0.21mmol)に加え、1時間反応させた。樹脂はDMF(6×5ml、1分)で洗浄した。Fmoc基の除去は、20%ピペリジンDMF中(2×15ml、15分)を加え、次にDMFで洗浄すること(6×5ml、1分)によって実施した。FITCと非保護ペプチジル樹脂のカップリング及び樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0136】
1(vi)ダンシル−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート16〜22の合成−方法F
環状ペプチドの合成を方法Aに関して前に記載したように実施し、Fmocの脱保護後、材料及び方法中に記載したように、これらの化合物を塩化ダンシルと直接反応させた。
【0137】
スペーサーを含有する化合物を、方法Eに関して記載したのと同じ条件下でFmoc−Gly−OH、又は代替的にFmoc−β−Ala−OHと最初に反応させ、次に塩化ダンシルとカップリングさせた。樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0138】
1(vii)DTPA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート35の合成−方法G
環状ペプチドの合成を方法Aに関して前に記載したように実施した。Fmocの脱保護後、HATU(0.42mmol)、HOAt(0.42mmol)及びDIEA(0.42mmol)によって活性化したDMF(3ml)中のDTPA−テトラ(t−Buエステル)(0.42mmol)の溶液をペプチジル樹脂(0.14mmol)に加え、室温で2時間振とうした。樹脂はDMFで洗浄した(4ml、5回、各回1分)。樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。
【0139】
1(viii)DOTA−環状ペプチド模倣体コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート36の合成−方法H
環状ペプチドの合成を方法Aに関して前に記載したように実施した。Fmocの脱保護後、HATU(0.42mmol)、HOAt(0.42mmol)及びDIEA(0.42mmol)によって活性化したDMF(3ml)中のDOTA−トリス(t−Buエステル)(0.42mmol)の溶液をペプチジル樹脂(0.14mmol)に加え、60℃で3時間振とうした。樹脂はDMFで洗浄した(4ml、5×1分)。樹脂からのペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。
【0140】
表1は、合成したコンジュゲート、及びそれらの構造特性を列挙する。
【表1】
【0141】
(例2.一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づくBTA−コンジュゲートの合成)
焼結ガラス底を備える反応容器内で、リンクアミドMBHA樹脂(300mg、置換0.58mmol/g)を、一晩の攪拌によってDMF中で膨張させた。15分間(3ml)の20%ピペリジンDMF中を用いた処理によって樹脂からFmoc基を除去した。この動作を2回繰り返した。樹脂はDMFで洗浄した(4ml、2分、5回)。Fmoc−Dap(Alloc)−OH、並びにFmoc−Dab(Alloc)−OH、Fmoc−Orn(Alloc)−OH及びFmoc−Lys(Alloc)−OHと樹脂のカップリングは、HOBt(0.52mmol)及びDIC(0.52mmol)で(15分間)予め活性化したFmoc−Dap(Alloc)−OH(0.52mmol)のDMF溶液(2.5ml)を加えることによって、1時間のカップリング時間で実施した。カップリング後、樹脂をDMFで洗浄した(4ml、2分、5回)。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験(カイザー試験)によってモニタリングした。Fmoc除去及びFmoc脱保護後のDMF洗浄は、前に記載したように実施した。Fmoc−Asp(O−tBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH及びFmoc−Lys(Dde)−OHのカップリング、並びに各カップリング間のFmoc脱保護は、Fmoc−Dap(Alloc)−OHに関して記載したのと同じ条件下で実施した。
【0142】
ペンタペプチドLys(Dde)−Arg(Pbf)−Gly−Asp(O−tBu)−X−リンクアミド樹脂とアミノ酸アリルエステルのカップリングに関する一般的な手順
TsOH塩(0.87mmol)としてのアミノ酸アリルエステルをDCM(7ml)に溶かした。DIEA(1.05mmol)を溶液に加え1分間攪拌し、次にBTC(0.29mmol)及びDIEA(2.6mmol)を加えた。得られた溶液はDCMで予め洗浄した0.174mmolペプチジル樹脂に加え、1時間反応させた。カップリング後、樹脂をDCM(3×6ml、それぞれ1分)及びDMF(6回×6ml、それぞれ1分)で洗浄した。カップリングの終了は定性ニンヒドリン試験によってモニタリングした。
【0143】
アミノ酸アリルエステルのカップリング及びDMF洗浄後、樹脂をDCMで洗浄した(4回、4ml、それぞれ1分)。アリル及びAllocの脱保護は、アルゴン下において室温で2時間、DCM(5ml)に溶かした[(CP]Pd(0.21mmol)及びDMBA(2.61mmol)の溶液とペプチジル樹脂を攪拌することによって行った。樹脂はDCM(3×5ml、1分)、DMF(3×5ml、1分)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩(0.5%、DMF中、4×5ml、2分)及び最後にDMF(5×5ml、1分)で洗浄した。樹脂上での環化は、室温で2時間、DMF(4ml)に溶かしたPyBOP(0.52mmol)及びDIEA(1.04mmol)の溶液を使用することによって行った。環化後、2%ヒドラジン一水和物DMF中(3回、各回3分)の添加、次にDMF洗浄(4ml、6回、各回2分)によってDde基を除去した。BTAと非保護ペプチジル樹脂の結合、及び樹脂からペプチドの切断は、材料及び方法中に記載したように実施した。産物はRP−HPLCによって精製した。
【0144】
表2は、合成したコンジュゲート、及びそれらの構造特性を列挙する。
【表2】
【0145】
(例3.一般式Iの環状ペプチド模倣体の環の大きさは、それに基づくコンジュゲートの生物活性に影響を与える)
一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体の環の大きさが、コンジュゲートの生物活性に影響を与えるかどうかを調べるために、異なる環の大きさを有する一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づく様々な蛍光プローブ−コンジュゲートの活性を、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivo卵巣癌モデルとin vitro結合アッセイの両方において試験した。
【0146】
RGD含有環状ペプチド模倣体の環の大きさは、環状化合物の2つの構造パラメーター、特に(i)そのα−又は側鎖カルボキシル基によって骨格NHと、且つそのα−又は側鎖アミノ基によってアスパラギン酸残基のα−カルボキシル基と連結したアミノ酸残基、即ち一般式I中のラジカルA、及び(ii)骨格カルボニルと骨格NHで架橋形成するラジカル、即ち一般式I中のラジカルXを変更することによって変えた。使用した特異的アミノ酸残基は、それぞれ側鎖中に1〜4個のメチレン単位を有するジアミノプロピオン酸(Dap)、ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン(Orn)及びリシン(Lys)の残基であり、使用した異なるラジカルXは、骨格NHと一緒にそれぞれヒドラジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン及びジアミノヘキサンの成分を形成し、Aと骨格カルボニルで架橋形成する、NH、NH(CH、NH(CH、NH(CH及びNH(CHであった。
【0147】
表3は、試験した様々な蛍光プローブ−コンジュゲート、及びそれらの生物活性を示す。示すように、試験したコンジュゲートの活性は16原子から18〜20原子への環状ペプチド模倣体の環の大きさの増大と共に増大したが、しかし、それは環の大きさのさらなる増大と共に低下した。これらの結果は、アルギニン残基のα−アミノ基とラジカルXを架橋形成する尿素結合によって環状化合物はさらに剛性になる一方で、最大18〜20原子を有するより大きな環はインテグリンとの結合に望ましい立体配座をとるほどさらに柔軟であることを示す。他方で、環状ペプチド模倣体の環の大きさが20原子を超える場合、環状ペプチド模倣体は、インテグリンとの結合に望ましい立体配座をおそらくとることができない。
【表3】
【0148】
(例4.一般式Iの環状ペプチド模倣体中のジアミン残基の大きさ及び構造は、それに基づくコンジュゲートの生物活性に影響を与える)
アミド結合によって一般式I中のアミノ酸残基Aのα−又は側鎖カルボキシル基のいずれかと、且つ骨格カルボニルによってアルギニン残基のα−アミノ基と連結したジアミン残基の大きさ及び構造が、コンジュゲートの生物活性に影響を与えるかどうかを調べるために、前に定義した異なるジアミン残基を有する一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づく様々なBTA−コンジュゲートの活性を、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivo卵巣癌モデルとin vitro結合アッセイの両方において試験した。
【0149】
試験した具体的なコンジュゲートは、その中でアミノ酸残基Aがオルニチンであり、BTA分子がスペーサーなしでペプチド模倣体環のN末端と連結し、一般式I中のXで示すラジカルがそれぞれ−NH(CH2〜4−、1,3−ジメチルベンゼン−1,3−ジイル又はピペリジン−1,4−ジイルである、コンジュゲート4、24、25、15及び23であった。
【0150】
表4は、試験した様々なコンジュゲート、及びそれらの生物活性を示す。示すように、コンジュゲート4の生物活性は、その中でアルキルジアミン残基がAと骨格C=Oで架橋形成するコンジュゲートの中で最高であり、これらのコンジュゲートの生物活性は、アルキル鎖の長さが増大すると低下することが示された。さらに、ペプチド模倣体環が剛性になるとき、アルキルジアミン残基以外のラジカルを使用したコンジュゲート15及び23の場合と同様に、生物活性は測定されず、このようなコンジュゲート中のペプチド模倣体環は、インテグリンとの相互作用に望ましくない立体配座をとることが示された。
【表4】
【0151】
(例5.一般式Iの環状ペプチド模倣体とペイロード成分を連結するスペーサーは、コンジュゲートの生物活性に影響を与える)
この実験では、環状ペプチド模倣体のN末端、即ちアミノ酸残基Aのα−又は側鎖アミノ基のいずれかと蛍光プローブ成分を連結する異なるスペーサーを有する、一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づく様々な蛍光プローブ−コンジュゲートの生物活性を、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivo卵巣癌モデルとin vitro結合アッセイの両方において試験した。使用した具体的なスペーサーは、様々な天然又は合成アミノ酸、特にグリシン、β−アラニン、フェニルアラニン、D−フェニルアラニン、1−ナフチルアラニン(1−Nal)、D−1−ナフチルアラニン(D−1−Nal)、γ−アミノ酪酸(GABA)及び3−(アミノメチル)安息香酸の成分であった。
【0152】
表5は、試験した様々なコンジュゲート、及びそれらの生物活性を示す。示すように、おそらくBTA分子は環状ペプチド模倣体とインテグリンの結合に干渉しないという事実によって、BTA分子と環状ペプチド模倣体の間にスペーサーを有さないコンジュゲート1は高い生物活性を示した。それとは対照的に、その中でグリシン又はβ−アラニン成分をスペーサーとして使用し、環状ペプチド模倣体とBTA分子の間の距離が増大したコンジュゲートは、おそらく多量のBTA分子のためより低い生物活性を示した。スペーサーとしてGABA成分を使用した、即ち環状ペプチド模倣体とBTA分子の間の距離がさらに増大したコンジュゲート11の場合、in vitroとin vivoの両方の結果が高い蛍光を示し、おそらくGABAはインテグリンと結合するさらなる自由度をペプチド模倣体環に与えるほど十分長いが、しかし、ペプチド模倣体環を超えるBTA分子のフォールディングを引き起こすほど長すぎないことが示された。
【0153】
より小さい蛍光プローブ、即ちFITC又はダンシルを使用した場合、蛍光プローブ成分とペプチド模倣体環のN末端の間の距離は、コンジュゲートの生物活性に対して全く影響がなかった。
【0154】
その中でそれぞれフェニルアラニン及びD−フェニルアラニン成分をスペーサーとして使用したコンジュゲート27及び28は、おそらくインテグリンの疎水性ポケットとの相互作用をもたらすフェニルアラニンの芳香族側鎖のため、その中でグリシン成分をスペーサーとして使用したコンジュゲート9より活性があった。コンジュゲート27のそれより高かったコンジュゲート28の生物活性は、フェニルアラニンのD形状はL形状より良くインテグリンの疎水性ポケットに適合する可能性があり、したがって結合を改善することをさらに示し得る。
【0155】
その中でそれぞれ1,2−エチレンジアミン及び1,4−ジアミノブタンの残基をスペーサーとして使用し、且つ尿素結合が環状ペプチド模倣体とBTA成分の間で形成されるコンジュゲート32及び33は、コンジュゲート10及び11とほぼ同じ生物活性を有しており、尿素結合はアミド結合とほぼ同じ活性を有し、それがペプチド模倣体の立体配座に影響を与えないことが示された。
【表5】
【0156】
(例6.その中で尿素成分がアルギニン残基のα−アミノ基によって形成された一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づくコンジュゲートの生物活性は、その中でカルバメート成分が形成されたコンジュゲートのそれと同等である)
この実験では、その中で尿素成分がアルギニン残基のα−アミノ基によって形成された一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づくコンジュゲート、特にBTA−コンジュゲートの生物活性を、その中でカルバメート成分が形成されたコンジュゲートのそれと比較した。
【0157】
試験した具体的なコンジュゲートは、その中で一般式I中のアミノ酸残基Aがそれぞれジアミノプロピオン酸又はリシン残基であり、BTA分子がスペーサーなしで環状ペプチド模倣体のN末端と連結し、且つ一般式I中のXで示すラジカルが−NH(CH−であるコンジュゲート1及び5、並びにXで示すラジカルが−NH(CH−の代わりに−O(CH−である類似した構造を有するコンジュゲート7及び8であった。コンジュゲートの生物活性は、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivoとin vitro結合アッセイの両方中で、結腸癌モデル及び卵巣癌モデルにおいて試験した。
【0158】
卵巣癌モデルにおけるコンジュゲート1及び5の生物活性は表3中に記載する。表6中に示すように、その中で尿素成分がアルギニン残基のα−アミノ基によって形成されたコンジュゲートは、その中でカルバメート成分が形成された対応するコンジュゲートのそれと同等の生物活性を有しており、アルギニン残基のα−アミノ基によって形成された成分の性質は、コンジュゲートの生物活性に対して影響を与えないことが示された。
【表6】
【0159】
(例7.その中でBTAのタウリン残基が異なるジアミンによって置換された一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づくBTA誘導体−コンジュゲートの生物活性は、対応する非誘導体化コンジュゲートのそれと同等である)
一般式Iの環状ペプチド模倣体に基づく4個の異なるバクテリオクロロフィル誘導体−コンジュゲート、本明細書で識別するコンジュゲート37〜40を合成し、MLSヒト卵巣癌細胞におけるそれらの生物活性を、インテグリン結合アッセイを使用して試験した。これらのコンジュゲートは、その中でBTA成分中のタウリン残基(−NH−(CH−SOH)が異なる求核試薬、特に−NH−(CH−NH及び−NH−(CH−NH−CHによって置換されたコンジュゲート1及び4に基づいた。
【0160】
これらのコンジュゲートの環状ペプチド模倣体は、前に記載した方法Aに従い合成した。環化及びDdeの除去後、DMF中PyBoP(2当量)、HOBt(2当量)、DIEA(6当量)によって活性化したBpheide(2当量)の溶液をペプチジル樹脂に加え、アルゴン下で2時間振とうした。樹脂はDMFで8回洗浄した(ニンヒドリン試験によってモニタリング)。DMF中ジアミン(30当量)の溶液をペプチジル樹脂に加え、アルゴン下で1時間振とうし、次にDMFで洗浄した。材料及び方法中に記載したように樹脂からペプチドを切断し、粗製コンジュゲートはRP−HPLCによって精製した。表7中に示すように、これら全てのコンジュゲートの生物活性は類似しており、これらの場合において、アミノ基は生物活性に対して全く影響がないこと、及びその挙動はタウリン中のスルホネートのそれとほぼ同じであることが示された。
【表7】
【0161】
(例8.一般式IIの環状ペプチド模倣体の環の大きさは、それに基づくコンジュゲートの生物活性に影響を与える)
一般式IIの環状ペプチド模倣体の環の大きさが、コンジュゲートの生物活性に影響を与えるかどうかを調べるために、異なるアミノ酸残基Aではなく同じアミノ酸残基A(Lys)及びA(Phe)、特にそれぞれ側鎖中に1〜4個のメチレン単位を有するDap、Dab、Orn及びLysを有する一般式IIの環状ペプチド模倣体に基づく様々なBTA−コンジュゲートの活性を、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivo卵巣癌モデルとin vitro結合アッセイの両方において試験した。
【0162】
表8は、試験した様々なBTA−コンジュゲート、及びそれらの生物活性を示す。示すように、試験したコンジュゲートの生物活性は、20原子から23原子への環状ペプチド模倣体の環の大きさの増大と共に低下し、20原子を超える環の大きさはインテグリンの結合部位に適合しないことが示された。
【表8】
【0163】
(例9.一般式IIの環状ペプチド模倣体中のアミノ酸残基Aの特性は、それに基づくコンジュゲートの生物活性に影響を与える)
そのα−アミノ基によって骨格C=Oと、且つそのα−カルボキシル基によってアミノ酸残基Aと連結した、一般式IIの環状ペプチド模倣体中のアミノ酸残基Aの大きさ及び構造が、コンジュゲートの生物活性に影響を与えるかどうかを調べるために、異なるアミノ酸残基Aではなく同じアミノ酸残基A(Lys)及びA(Dap)、特にPhe、Val、D−Phe、Gly及びAspを有する一般式IIの環状ペプチド模倣体に基づく様々なBTA−コンジュゲートの活性を、材料及び方法中に記載したようにヒト卵巣癌細胞を使用して、in vivo卵巣癌モデルとin vitro結合アッセイの両方において試験した。
【0164】
表9は、試験した様々なBTA−コンジュゲート、及びそれらの生物活性を示す。示すように、疎水性アミノ酸残基Aを有するコンジュゲート41、42及び43の生物活性は、おそらくインテグリンの結合部位中の疎水性ポケットとの疎水性相互作用のため、より極性が高いコンジュゲート44及び45のそれより高かった。コンジュゲート43はコンジュゲート41より活性が低かったという事実は前者の形状が原因である可能性があり、D形状は疎水性ポケットに完全には適合しないこと示唆した。
【表9】
【0165】
(例10.ヒトαβインテグリンと本発明の様々なBTA−コンジュゲートの競合結合)
この試験では、ヒトαβインテグリンと本発明の様々なBTA−コンジュゲートの競合結合レベル、即ちIC50を、材料及び方法中に記載したようにビオチン−c[RGDfK]に対して試験した。試験した具体的なコンジュゲートは、コンジュゲート1、4、5、7、11及び28(一般式IのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づく、例1参照)、並びにコンジュゲート41(一般式IIのRGD含有環状ペプチド模倣体に基づく、例2参照)であり、これらのコンジュゲートに関して測定したIC50値は表10中に示す。
【0166】
示すように、コンジュゲート1、7、28及び41は最も低いIC50(10−4M)、即ち最も高い生物活性を示し、コンジュゲート4のIC50は若干高く(3×10−4M)、コンジュゲート5及び11のIC50は最も高かった(3×10−3M)。
【表10】
【0167】
(例11.コンジュゲート1、4及び41は、MDA壊死性腫瘍の壊死性コア中に蓄積する)
この試験では、腫瘍によって生じた蛍光シグナル、及びこれらのコンジュゲートによって生じた蛍光シグナルによってモニタリングした乳癌モデルの同所性原発性病変におけるコンジュゲート1、4及び41の特異的蓄積パターンを調べた。経時的な腫瘍中のコンジュゲートの局在も決定した。動物は材料及び方法中に記載したように治療し、腫瘍細胞とコンジュゲート1、4及び41の両方の蛍光を、IVIS(登録商標)100イメージングシステムによって第1〜7日にモニタリングした。
【0168】
図1A、1B及び1Cは、Xenogen IVIS(登録商標)システムを使用した、CD−1ヌードメスマウスの乳房中の同所性ヒト乳MDA−MB−231−RFP原発性巨大腫瘍における、それぞれコンジュゲート1、4及び41の蓄積パターンを示す。全動物のイメージを、励起フィルター500〜550nm及び蛍光フィルター575〜650nmを含むフィルターセットを使用して同時に記録した。組織自己蛍光の控除用のバックグラウンドフィルターセット、励起フィルター460〜490nm及び蛍光フィルター575〜650nm。光増感剤イメージングメインフィルターセット、励起フィルター665〜695nm、蛍光フィルター810〜875nm。
【0169】
全てのコンジュゲートは肝臓から完全に除去される一方で腫瘍中に蓄積し、第3日以降からフォローアップ期間の最後、注射後第7日まで選択的腫瘍イメージング、及びその後の非常に遅いクリアランスを得た。腫瘍の大きさ及び位置は、in vivoの赤色の全身イメージによって見られるように実験を通じて変わらなかった。図2A、2B及び2C中に示すように、注射後第6日でのこれらのコンジュゲートの局在は腫瘍の壊死領域中であった。
【0170】
(例12.前立腺癌細胞におけるコンジュゲート1、4及び41の生物活性)
この試験では、αβインテグリンを発現するLNCaP前立腺癌細胞におけるコンジュゲート1、4及び41の生物活性を調べた。前に示したように、これらの具体的なコンジュゲートは、卵巣癌、結腸癌及び乳癌細胞において活性を示した。
【0171】
移植腫瘍中のコンジュゲートの蓄積を、Xenograph IVIS(登録商標)システムを使用して注射後第8、11、14、24及び48時間でモニタリングし、図3A、3B及び3C中に示すように、それぞれコンジュゲート1、4及び41を参照すると、注射後8〜11〜14時間で腫瘍領域において最高蛍光レベルを観察し、コンジュゲートはコンジュゲート1及び4の場合最大48時間、及びコンジュゲート41の場合最大24時間腫瘍中に残った。さらに示すように、前立腺腫瘍中と卵巣腫瘍中のこれらのコンジュゲートの蓄積プロファイルはほぼ同じであった。
【0172】
(例13.ラットにおけるコンジュゲート1、4及び41の毒性)
コンジュゲート1、4及び41の毒性試験を、ウィスターラット(5匹のメス、170〜190g、及び5匹のオス、288〜315g)で実施した。様々なコンジュゲートを50mg/kgの用量で、1〜2分間尾静脈に注射した。動物は生存し、如何なる挙動又は運動性の問題も示さなかった。5日後、これらの動物の肝臓又は腎臓中で壊死又は炎症の証拠は見られず、これらのコンジュゲートは試験した用量において毒性ではないことを示唆した。
【化4】

(参考文献)


図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]