(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773497
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】歯科治療装置
(51)【国際特許分類】
A61C 1/02 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
A61C1/02 E
A61C1/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-119893(P2012-119893)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-244193(P2013-244193A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】藤森 朋奈
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄三
(72)【発明者】
【氏名】藁品 大介
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−273718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/02−1/18
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙切削用のインスツルメント、及び、該インスツルメントによる歯牙切削箇所を冷却する冷却水を供給する水回路を有し、歯牙切削治療中、歯牙切削箇所に前記水回路を通して該歯牙切削箇所を冷却する機能を有する歯科治療装置において、前記冷却水を前記インスツルメントに送給するためのポンプと、該ポンプの回転を検出する回転センサとを有し、前記ポンプの回転数が基準設定値以下に低下したときに警報を発生する警報手段を有するとともに、前記ポンプの回転数が前記基準設定値以下に低下したときに前記インスツルメントの駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載の歯科治療装置。
【請求項2】
前記ポンプを回転させるモータと、該モータの逆起電力を検出するセンサとを有し、該逆起電力の大きさによって、前記ポンプの回転数を検出することを特徴とする請求項1に記載の歯科治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療装置、より詳細には、歯牙(骨も含む)切削箇所に注水し、該歯牙切削箇所を冷却する機能を有する歯科治療装置において、歯牙切削用のインスツルメントを駆動したときに、前記冷却水が前記歯牙切削箇所に十分に供給されているか否かを検知し、不足している場合に、警報を発し、或いは、前記インスツルメントの駆動を停止するようにした歯科治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用される水回路を備えた歯科治療装置の一例を説明するための概略構成図で、該歯科治療装置は、治療椅子1,ワークテーブル2,スピットン3,給排水ボックス4,インスツルメントホルダ5,フットスイッチ6,アシスタントインスツルメントホルダ7(例えば、バキューム,シリンジ,排唾管等を有する)等から成り、インスツルメントホルダ5には、歯科治療において使用する種々のインスツルメント8(例えば、エアータービン,マイクロエンジン(モータ),ファイル,スケーラ,シリンジ等)が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は治療椅子1に座り、頭を安頭台9に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。
【0003】
歯科治療においては、主として、エアータービン、マイクロエンジン(モータ)、超音波治療器、骨切削機器等、歯牙(骨も含む)を切削する機能を有するインスツルメント(ハンドピース)を使用して治療することが行われているが、これらインスツルメントは、切削箇所を冷却するための注水機能を有し、歯牙治療中、切削箇所に注水して歯牙を冷却する必要がある。
【0004】
しかし、インスツルメントに冷却水を供給する水回路の詰り、水回路の漏れ、注水システムの故障等により、注水が確実に行わなければ、歯牙切削具の刀部と歯牙治療(切削)部位との接触面を確実に冷却できない可能性があり、確実な冷却ができなければ、治療部位の発熱による細胞の壊死や火傷等による損傷が起こる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、歯牙切削を伴う歯科治療においては、従来より、歯牙切削箇所を冷却しながら歯牙切削治療を行っているが、冷却不良による事故等は報告されていない。しかし、歯牙切削箇所に冷却水を供給する水回路の詰り、水回路の漏れ(給水チューブの破損)、注水システム(ポンプ系統)の故障等により、冷却水の放射が十分に行われない場合が考えられるが、術者が治療に専心している場合、そのことに気付かずに歯牙(骨)切削治療を続行してしまい、思いも掛けない治療ミスを犯してしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、歯牙切削治療中、歯牙切削箇所に冷却水が十分に供給されているか否かを、注水システムを監視することによって検知し、冷却水の不足に伴う不慮の損傷を防止することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述目的を達成するために、請求項1の発明は、歯牙切削用のインスツルメント、及び、該インスツルメントによる歯牙切削箇所を冷却する冷却水を供給する水回路を有し、歯牙切削治療中、歯牙切削箇所に前記水回路を通して該歯牙切削箇所を冷却する機能を有する歯科治療装置において、前記冷却水を前記インスツルメントに送給するためのポンプと、該ポンプの回転を検出する回転センサとを有し、前記ポンプの回転数が基準設定値以下に低下したときに警報を発生する警報手段を有する
とともに、前記ポンプの回転数が前記基準設定値以下に低下したときに前記インスツルメントの駆動を停止することを特徴としたものである。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項
1の発明において、前記ポンプを回転させるモータと、該モータの逆起電力を検出するセンサとを有し、
該逆起電力の大きさによって、前記ポンプの回転数を検出することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、歯牙(骨)切削箇所に冷却水を注水し、該歯牙切削箇所を冷却する機能を有する歯科治療装置において、前記冷却水を送給するシステムにおけるポンプ又は該ポンプを駆動するモータの回転数が基準設定値以下であるときに警報を発し、或いは、歯牙切削中のインスツルメント(ハンドピース)の駆動を停止するようにしたので、術者の不注意による(冷却水不注入による)、治療(切削)部位の過熱による壊死や損傷の恐れを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による歯科治療装置の実施例を示す要部概略構成図である。
【
図2】本発明が適用される水回路を備えた歯科治療装置の一例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(A)乃至
図1(C)は、それぞれ発明の実施例を説明するための要部概略構成図で、図中、10は、歯科治療用インスツルメント8に冷却水を送給する水回路、20は制御器部で、制御器部20には水回路10からの冷却水をインスツルメント8に送給するためのポンプ21を有し、該ポンプ21は、モータ22によって回転駆動されるようになっている。歯科治療において、術者が必要とされる歯牙切削用のインスツルメント8をインスツルメントホルダより取り出し、該インスツルメントの駆動操作を行うと、該インスツルメントが回転駆動され、同時に、モータ22が駆動されて、該モータに連結されているポンプ21が駆動され、同時に該インスツルメントの水回路に設けられている遮断弁26が開かれて、水回路10を通して送給される冷却水がインスツルメント8の先端より放出され、治療箇所を冷却しながら歯牙(又は骨)の切削治療等が行われる。
【0013】
歯牙(又は骨)の切削治療においては、前述のように、歯牙切削箇所に冷却水を注水して、切削箇所の過熱を防止することが行われているが、インスツルメント8を駆動し、モータ22を駆動しても、モータ22とポンプ21との連結部23での何らかの故障によりポンプ21が回転しなかったり、或いは、モータ22の電気の回線の故障等によりモータ22が回転しなかったりして、治療部位に冷却水を送給することができない事態が生じる恐れがある。
【0014】
本発明は、上述の事態に対処するために提案されたもので、
図1(A)に示す実施例は、ポンプ21を駆動するモータ22と該ポンプ21との連結機構23に何らかの故障が発生し、ポンプ21よりの送水が不良となった場合の対処例を示す図である。
図1(A)に示す実施例においては、冷却水を送給するポンプ21の回転軸に、該ポンプ21の回転を電気的に検出するセンサ(例えば、ロータリーエンコーダ)24を設け、前述のようにして、術者がインスツルメント8を駆動操作した時に、該センサ24に電気出力が現れない場合、或いは、該センサの出力電圧が設定基準値以下の場合は、制御器部20、例えば、ワークテーブルに設けられているスピーカ31、ディスプレイ32等により、冷却水が注水されていることを術者及びアシスタントに警告し、或いは、インスツルメント8に設けられている、例えば、赤色ランプ33を点滅し、術者に冷却水が注水されていないことを知らせ、更には、インスツルメント8を停止する。
【0015】
図1(B)に示す実施例は、ポンプ21を駆動するモータ22に何らかの故障が生じ、術者がインスツルメント駆動操作をしたのにも関わらず、モータ22が回転せず、ポンプ21よりの送水が不良となった場合の対処例を示す図である。
図1(B)に示す実施例においては、モータに例えば逆起電力検出手段25を設け、術者がインスツルメント8を駆動する操作をした時に、該モータ22の駆動回路に何らかの故障(例えば、断線)が生じて、該モータ22に駆動電流が流れない場合(逆起電力が発生しない場合)に、当然に、ポンプ21も回転しないものとして、スピーカ31、ディスプレイ32等により冷却水が供給されていないことを術者及びアシスタントに警告し、更には、インスツルメント8に設けられている、例えば、赤色ランプ33を点滅して、冷却水が供給されていないことを術者に知らせ、更には、インスツルメント8の駆動を停止する。
【0016】
図3(C)に示した実施例は、
図1(A)及び
図1(B)に示した両実施例を備えた場合の実施例を示す図で、この実施例の場合、センサ24、25のいずれが作動した場合においても、警報手段31、32、33が作動し、より確実に冷却水の供給不良を術者及びアシスタントに知らせることができる。
【符号の説明】
【0017】
10…冷却水回路、20…制御器部、21…冷却水送給ポンプ、22…ポンプ駆動モータ、23…連結軸、24,25…センサ、26…遮断弁、31,32,33…警報手段。