(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オイルリング本体に備わるコイルエキスパンダ収容凹部のオイルリング軸方向断面における曲率半径をr1、前記コイルエキスパンダのオイルリング軸方向断面における曲率半径をr2とした場合、r2/r1=0.8〜1.0未満である請求項1に記載の内燃機関用オイルリング。
前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、当該オイルリング本体の円周方向に沿った開口幅が0.5mm〜5.0mmであり、且つ、オイルリング軸方向に沿った開口高さが0.2mm〜0.8mmである請求項1又は請求項2に記載の内燃機関用オイルリング。
前記オイルリング本体に形成されるオイル戻し溝の当該オイルリング軸方向断面において構成される曲線は、前記コイルエキスパンダ収容凹部から連接する延設曲線の曲率半径が、0.01〜0.30mmである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。
前記オイルリング本体を構成するウェブに備わるオイル戻し孔の当該ウェブの周方向におけるピッチをE、当該オイル戻し孔の当該ウェブの周方向における長さをCとした場合、C/(E−C)=0.1〜1.2である請求項1〜請求項6のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本件発明に係る内燃機関用オイルリングの好ましい実施の形態について、以下に図を用いて示しながら本件発明をより詳細に説明する。
【0023】
図1は、本件発明のオイルリング本体と、当該オイルリング本体の内周に配置されるコイルエキスパンダとから構成される2ピースオイルリングの斜視図である。
図1に示すように、2ピースオイルリング1は、オイルリング本体2と、コイルエキスパンダ3とから構成されている。また、当該オイルリング本体2は、その断面が略I字型のリングであり、合口部2aを備えている。そして、このオイルリング本体2は、上側の第1レール5と、下側の第2レール6と、これらレールを連結してオイルリング本体2の中間部分に位置するウェブ4とが一体化して構成されている。
【0024】
本件発明のオイルリング本体2を構成する第1レール5及び第2レール6は、2ピースオイルリング1の周方向に略円形に形成されている。この第1レール5及び第2レール6の各々の外周摺動面は、シリンダの内壁面と油膜を介して接触し、ピストン軸方向に摺動する。また、ウェブ4は、
図1に示すように2ピースオイルリング1の周方向に略円形であって、半径方向に貫通形成されたオイル戻し孔7を備え、且つ、そのオイル戻し孔7が周方向に複数配置されている。そして、
図1に示すように、コイルエキスパンダ3は、螺旋状の形態のスプリングを円弧状としたものである。なお、図示はしないが、コイルエキスパンダ3には、当該コイルエキスパンダの合口部を接続し円環状のコイルとするために、当該合口部にジョイント用の芯線が用いられている。
【0025】
図2は、本件発明に係る内燃機関用オイルリングをピストンのオイルリング溝に装着した状態を説明するためにピストン軸方向で切断して例示した断面図である。
図2に示すように、オイルリング本体2の内周面には、第1及び第2レール5,6及びウェブ4により、コイルエキスパンダ収容凹部2bが周方向に形成されている。そして、オイルリング本体2の外周面側には、双方の第1及び第2レール5,6及びウェブ4により、オイルリング軸方向断面でみたときに凹字状の外周溝2cが形成されている。
【0026】
また、
図2に示すように、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、コイルエキスパンダ収容凹部2bがオイルリング軸方向断面でみたときに略半円状となっており、コイルエキスパンダ3がオイルリング軸方向断面でみて当該略半円状部内に包み込まれる状態で収容されている。従って、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1によれば、オイルリング本体2の内周を円弧形状とした場合に、当該オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との接触面積を大きく確保することができ、シリンダ内壁面21に対する押圧力の安定化を図ることができる。また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1のように、オイルリング本体2の内周を円弧形状とすることで、オイルリングの周方向において、シリンダ内壁面に対する押圧力に局所的なばらつきが生じ難く、オイルの掻き残しが起こり難くなる。
【0027】
ここで、
図2を参照しつつ、内燃機関用オイルリング1のオイル掻き落とし機能について、一連の流れを順を追って説明しておく。まず、シリンダ20内をピストン10が往復運動する際に、オイルリング本体2の双方の第1及び第2レール5,6の外周摺動面8,9が、シリンダ20の内壁面21に付着している余分なオイルを掻き落とす。そして、掻き落とされたオイルは、オイルリング本体2の外周溝2c内に一時的に滞留受容された後、オイル戻し孔7を通ってコイルエキスパンダ収容凹部2bに流れる。そして、コイルエキスパンダ収容凹部2bに流されてきたオイルは、オイルリング溝11と連通して設けられているオイルドレイン孔12を通ってピストン10の裏面に流下し、オイルパン(不図示)に戻される。
【0028】
上述した内燃機関用オイルリング1のオイル掻き落とし機能における一連の流れの中の、掻き落としたオイルをオイル戻し孔7を通してコイルエキスパンダ収容凹部2bへ流す際において、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1によれば、当該オイルの流れを阻害することがない。これは、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との間にオイル戻し溝2dを形成することで、オイルリング本体2に形成された当該オイル戻し孔7が塞がれないためである。すなわち、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1においては、例えオイルリング本体2のコイルエキスパンダ配置側の形状が略半円状であったとしても、当該オイル戻し溝2dが存在することで、内燃機関用オイルリング1が掻き落としたオイルをすばやくオイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン孔12に逃がすことができ、オイル消費量を低減させることが可能となる。
【0029】
更に、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dがオイルリング軸方向断面において、その外周形状が直線と当該直線に連続する曲線とから構成されることによって、オイルリング1により掻き落とされたオイルを当該オイル戻し溝2d内に滞留するのを抑制することができる。従って、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1によれば、オイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dがオイルリング軸方向断面において、その外周形状が直線と当該直線に連続する曲線とから構成されることで、オイルリング1の掻き落としたオイルをすばやくオイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン孔12に逃がすことが可能となる。なお、
図2に例示するように、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、当該オイル戻し溝2dにおける、コイルエキスパンダ収容凹部2bの開口縁及びオイル戻し孔7の開口縁を曲面で形成することで、オイルスラッジの滞留を効果的に防止し、また、酸化をも効果的に抑制して、オイル消費量の削減効果を長期間安定して発揮することができることとなる。
【0030】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2に備わるコイルエキスパンダ収容凹部2bにおけるオイル戻し溝2dを除く曲面のオイルリング軸方向断面の曲率半径をr1、コイルエキスパンダ3の外径のオイルリング軸方向断面の曲率半径をr2とした場合、r2/r1=0.8〜1.0未満であることが好ましい。
【0031】
図3は、本件発明のオイルリング本体の内周側形状を説明するための要部斜視図である。また、
図4は、本件発明のオイルリング本体に備わるコイルエキスパンダ収容凹部の曲率半径について説明するための要部斜視図である。
図3には、コイルエキスパンダ3の外径が破線により示されている。
図3及び
図4に示すように、コイルエキスパンダ収容凹部2bにおけるオイル戻し溝2dを除く曲面のオイルリング軸方向断面の曲率半径をr1、コイルエキスパンダ3の外径のオイルリング軸方向断面の曲率半径をr2とした場合に、r2/r1が0.8〜1.0未満の範囲内となることで、当該コイルエキスパンダ3とコイルエキスパンダ収容凹部2bとの接触面積をより広くとることができるようになり、オイルリング1によるシリンダ内壁面への押圧力をリング周方向で安定させることができる。ここで、当該r2/r1が0.8未満の場合、コイルエキスパンダ3の外径が小さいためコイルエキスパンダの外径に対する全長が長くなり、組み合わせるオイルリング1に無理がかかることや、ピストン組付け性の悪化に繋がることが懸念される。更に、この場合、コイルエキスパンダ3の外径が小さくなり過ぎてオイルリング本体のオイル戻し溝2dに当該コイルエキスパンダ3が入り込み、オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との間に十分な隙間を形成できないため、オイルリング1により掻き落とされたオイルが当該オイルリング1の内周側にスムーズに排出されず、オイル消費の増大を招く恐れがある。また、当該r2/r1が1.0以上となる場合、コイルエキスパンダ3がオイルリング本体のコイルエキスパンダ収容凹部2bと干渉したり、当該コイルエキスパンダ収容凹部2bに入らなくなる恐れがある。
【0032】
すなわち、本件発明のオイルリング本体2は、コイルエキスパンダ収容凹部2bにおけるオイル戻し溝2dを除く曲面のオイルリング軸方向断面の曲率半径r1を、コイルエキスパンダ3の外径のオイルリング軸方向断面の曲率半径r2との関係において、本件発明の条件を満足させることで、オイルリングの周方向においてコイルエキスパンダの収容状態が不安定になり難く、オイルリング内周面に摩耗の発生するのを効果的に抑制できる。従って、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1によれば、オイルリングの張力をオイル消費量の増大を招かない範囲で極力低めに設定することが可能となり、オイルリングの設計の自由度が大きくなる。
【0033】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2は、オイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さをAとし、ウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/B=0.05〜0.50
である。
【0034】
図5は、本件発明のオイルリング本体に形成されるオイル戻し溝について、
図2に示すオイル戻し溝と異なる形状をオイルリング軸方向で切断して例示した断面図である。
図5に示すように、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2が、オイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さをAとし、ウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅(JIS B 8032(1993年)の第21頁表14(X拡大図)において「a13−a4」で表される幅)をBとした場合、A/Bを0.05〜0.50の範囲内に設定されることで剛性を確保することができ、また、オイルリング本体2の加工の際に形状にばらつきが生じることなく、製品品質を向上させることができる。なお、
図5には、オイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さA、及びウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅Bの、基準となる位置を破線(図中コイルエキスパンダ3の外周との接線)により示している。
【0035】
ここで、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さをAとし、ウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合において、A/Bが0.05未満の場合には、オイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さAが当該オイルリング径方向幅Bに対して浅くなり過ぎて、ピストン裏面へのオイル戻し機能を十分に発揮することができない。すなわち、この場合には、オイルリング本体2におけるオイル戻し溝2dの占める割合が小さくなり過ぎるため、当該オイルリング本体2のウェブ4に形成されるオイル戻し孔7がコイルエキスパンダ3によって大きく塞がれてしまい、オイル戻し孔7を通過したオイルがオイルリング本体2の内周側にスムーズに排出されない恐れがある。一方、当該A/Bが0.50を超える場合には、オイル戻し溝2dのオイルリング径方向深さAが当該オイルリング径方向幅Bに対して深くなり過ぎて当該ウェブ4の幅が薄くなるため、オイルリング本体2の加工の際に変形が起こりやすく、また、オイルリング1の耐久性及びオイル掻き機能の低下を招いてしまう。
【0036】
ちなみに、本件発明のオイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dは、オイルリング径方向深さをAとし、ウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0.05程度の極めて浅い深さの溝であってもオイル消費量の削減効果を得ることができる。よって、オイルリングの剛性とオイル消費性能とのバランスを考慮すると、当該A/Bを0.05〜0.50の範囲内に設定
する。
【0037】
なお、
図5に例示するように、本件発明のオイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dの形状は、
図2に示した形状に限定されるものではない。
図5に示すオイルリング1の断面図では、図中Gで示す箇所からオイル戻し溝2dの底面に向けて構成される直線が略テーパー形状で形成されている。このように、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、コイルエキスパンダ収容凹部2bの開口縁の曲面とオイル戻し孔7の開口縁の曲面との間に構成されるオイル戻し溝2dの側壁を、当該コイルエキスパンダ収容凹部2bの開口側に向けて離間するように傾斜して形成することもできる。本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dがオイルリング軸方向断面における外周形状を直線と当該直線に連続する曲線とで構成される限り、オイルスラッジの滞留を効果的に防止し、また、酸化をも効果的に抑制して長期間安定してオイル消費量の削減効果を発揮することができる。
【0038】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2を構成するウェブ4のオイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅Bが0.3mm以上
である。
【0039】
図5には、ウェブ4のオイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅がBにより示されている。ここで、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、当該ウェブ4の当該オイル戻し溝2d形成前におけるオイルリング径方向幅Bが0.3mm未満となると、当該ウェブ4の幅が薄くなり過ぎてオイルリング本体2の強度が低くなり、オイルリングを内燃機関用として用いた場合に、十分な耐久性を得ることができない。また、当該ウェブ4の幅が薄くなり過ぎると、オイルリング本体2の加工の際に変形が起こりやすく、オイルリング1のオイル掻き機能の安定化を図ることができない。
【0040】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2を構成するウェブ4に設けるオイル戻し孔7は、当該オイルリング本体2の円周方向に沿った開口幅(
図6中Cで示す幅)が0.5mm〜5.0mm、且つ、オイルリング軸方向に沿った開口高さ(
図6中Dで示す高さ)が0.2mm〜0.8mmであることが好ましい。
【0041】
図6は、本件発明のオイルリング本体に備わるオイル戻し孔の形状を説明するためにオイルリング径方向外方からみた要部正面図である。
図6より、本件発明のオイルリング本体2は、開口幅Cが0.5mmより短いか、又は開口高さDが0.2mmより低い場合には、オイル戻し孔7の開口面積が小さ過ぎて、オイルリング1が掻き落としたオイルを速やかに当該オイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン孔12へ排出することができない。また、本件発明のオイルリング本体2は、当該開口幅Cが5.0mmより長いか、又は当該開口高さDが0.8mmより高い場合には、オイル戻し孔7の面積が大き過ぎて、オイルリング本体2の強度が低下し、当該オイルリングを内燃機関用として用いた場合に十分な耐久性を得ることができない。また、当該オイル戻し孔7の面積が大き過ぎると、オイルリング本体2の加工の際に変形が起こりやすく、オイル掻き機能の低下を招いてしまう。なお、当該オイル戻し孔7の形状は、
図6に示すような、長方形形状の両端部の開口高さDに相当する辺を一定の曲率半径Rを備える弧状辺として形成したものに限定されない。例えば、オイルリングとしての要求特性を満たす限りにおいて長方形、円形状、楕円形状、開口高さDに相当する辺を曲線形状としたもの等の種々の形状を適宜選択して使用することができる。
【0042】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2のオイルリング軸方向幅(
図2中h1で示す幅)は、1.0mm〜2.5mmであることが好ましい。
【0043】
ここで、
図2に示すように、オイルリング本体2のオイルリング軸方向幅h1が1.0mmよりも薄い場合には、外周摺動面8,9においてシリンダ20の内壁面21に対する接触面積が小さくなると共に、オイルリング本体2の強度の低下を招く恐れがある。またこの場合、オイルリング1は、オイル戻し孔7の開口面積を大きく取ることが出来なくなり、掻き落としたオイルがオイル戻し孔7を通ってオイルリング本体2の外周溝2cから内周側のコイルエキスパンダ収容凹部2bへ流れ難くなるため、結果として、オイル消費量が増大してしまう。そして、内燃機関用オイルリング1のオイルリング本体2のオイルリング軸方向幅h1が2.5mmよりも厚い場合には、オイルリング1の張力を高くしないとオイルリング本体2のシリンダ内壁面21への押圧力が低下するため、オイル消費量が増大してしまう。
【0044】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング1のシリンダボア径に対する張力比は、0.05N/mm〜0.5N/mmであることが好ましい。
【0045】
本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、シリンダボア径(図示せず)に対する張力比([オイルリングの張力(N)]/[シリンダボア径(mm)]で算出される値)を0.05N/mm〜0.5N/mmに設定している。ここで、シリンダボア径に対する張力比が0.05N/mmよりも小さい場合には、オイルリング本体2の外周摺動面8,9のシリンダ20の内壁面21に対する押圧力が不十分となる。したがってこの場合、当該外周摺動面8,9は余分なオイルを十分に掻き落とすことができず、オイル消費量の増大を招いてしまう。また、シリンダボア径に対する張力比が0.5N/mmよりも大きい場合には、当該外周摺動面8,9のシリンダ20の内壁面21に対する押圧力が大きくなり過ぎて摩擦力が高くなり、燃費の低下を招いてしまう。一般的に、シリンダとオイルリングとの摩擦力は、オイルリングの張力の大きさに比例する傾向にある。
【0046】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dの当該オイルリング軸方向断面において構成される曲線は、コイルエキスパンダ収容凹部2bから連接する延設曲線の曲率半径が、0.01〜0.30mmであることが好ましい。
【0047】
図3(a)は、
図3においてaで囲まれた箇所を例示している。本件発明のオイルリング本体2に形成されるオイル戻し溝2dの、当該オイルリング軸方向断面において構成される曲線は、コイルエキスパンダ収容凹部2bから連接する延設曲線の曲率半径(
図3(a)におけるR)が、0.01〜0.30mmであることで、当該延設曲線部分と接触するコイルエキスパンダ3の摩耗損傷を抑制すると共に、オイル消費量の低減を図ることができる。ここで、当該延設曲線の曲率半径Rが0.01mm未満である場合には、コイルエキスパンダ3が摩耗損傷し易くなり、当該コイルエキスパンダの張力が低下するために、オイル消費が多くなると共に、ガスシール性の低下を招いてしまう。また、当該延設曲線の曲率半径Rが0.30mmを超える場合には、当該コイルエキスパンダ3とコイルエキスパンダ収容凹部2bとの接触面積が小さくなり、オイルリング1のシリンダ内壁面21に対する押圧力を安定させることが困難となる。
【0048】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2を構成するウェブ4に備わるオイル戻し孔7の当該ウェブ4の周方向におけるピッチ(
図6中Eで示すピッチ)は、3.5mm〜10.0mmであることが好ましい。
【0049】
図6には、オイルリング本体2を構成するウェブ4に備わるオイル戻し孔7の当該ウェブ4の周方向におけるピッチがEにより示されている。本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、当該ピッチEが3.5mm〜10.0mmの範囲内であることで、オイルリング1の耐久性とオイル消費性能とを共に向上させることができる。ここで、当該ピッチEが3.5mm未満の場合には、ウェブ4におけるオイル戻し孔7の間隔が短か過ぎてオイルリング本体2の強度が弱くなり、オイルリング1の耐久性が劣ることとなり好ましくない。また、当該ピッチEが10.0mmを超える場合には、ウェブ4におけるオイル戻し孔7の間隔が長過ぎて、オイルリング1が掻き落としたオイルをピストン裏側に逃がすことができなくなるためオイル消費の増大を招いてしまう。
【0050】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1において、オイルリング本体2を構成するウェブ4に備わるオイル戻し孔7の当該ウェブ4の周方向におけるピッチをE、当該オイル戻し孔の当該ウェブ4の周方向における長さをCとした場合、C/(E−C)=0.1〜1.2であることが好ましい。
【0051】
図6には、上述したウェブ4の周方向におけるピッチがEにより示され、また、オイル戻し孔7の当該ウェブ4の周方向における長さがCにより示されている。本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、当該ピッチEと、当該オイル戻し孔7の当該ウェブ4の周方向における長さCとの関係「C/(E−C)」が、0.1〜1.2の範囲内であることで、オイルリング1の耐久性とオイル消費性能とを共に向上させる際により安定性を増す。ここで、当該ピッチEと、当該オイル戻し孔の当該ウェブ4の周方向における長さCとの関係「C/(E−C)」が、0.1未満の場合には、ウェブ4におけるオイル戻し孔7の間隔が長くなるため、オイルリング1が掻き落としたオイルをピストン裏側に逃がすことができなくなり、オイル消費の増大を招くこととなる。また、当該ピッチEと、当該オイル戻し孔の当該ウェブ4の周方向における長さCとの関係「C/(E−C)」が、1.2mmを超える場合には、ウェブ4におけるオイル戻し孔7の間隔が短くなるため、オイルリング本体の強度が低下し、オイルリング1の耐久性が劣化する恐れがある。なお、当該「C/(E−C)」は、オイルリング1の耐久性及びオイル消費性能の観点からみて0.2〜1.0の範囲内であることがより好ましく、更に好ましくは0.2〜0.6の範囲内であることが好ましい。
【0052】
また、本件発明に係る内燃機関用オイルリング1は、オイルリング本体2の外表面に窒化処理を施す際に、窒化層の厚さを150μm以下に設定するのが好ましい。オイルリング本体2は、窒化処理を施すことで外表面を硬化させて耐久性を向上させることができる。これは、最近の自動車用内燃機関の高速、高負荷化により、オイルリング本体2についてもより高い耐摩耗性が要求されている背景があるためである。オイルリング本体2は、その材質に主に鉄鋼材料が用いられ、オイルリング本体2に窒化処理を行うことでクロムや鉄と反応して作られる窒化物からなる極めて硬い窒化層を備えることとなる。すなわち、オイルリング本体2は、その表面に窒化層を形成することで、耐摩耗性及びシリンダに対する耐スカッフ性に優れたものとなり、より過酷な状況下での使用に耐え得る内燃機関用オイルリングを提供することが可能となる。しかし、窒化処理を行うことによって、オイルリング本体2の母材全体が窒化されることとなると、オイルリング本体2は硬くなり過ぎて脆くなり、耐折損性を低下させてしまう。そのため、本件発明のオイルリング本体2に窒化を施す場合には、窒化層の厚さが150μm以下となるように設定することが好ましい。
【0053】
図7は、本件発明のオイルリング本体の外表面に窒化処理を施した状態をオイルリング軸方向で切断して示した断面図である。
図7には、オイルリング本体2の外表面に窒化層30の形成されているのが示されている。ここで、図中Fで示す窒化層30の厚さは、150μm以下となるように設定することが好ましい。
【0054】
また、オイルリングの耐久性は、オイルリング外周摺動面とシリンダ内壁面との摩擦力の大きさに影響するため、上述したように、オイルリングの張力の大きさを考慮するが、摺動する金属の組み合わせ方によっても影響を受ける。例えば、摺動する金属の材質をクロム同士やアルミ同士にすると、焼き付きを起こし易くなる。そこで、当該金属の材質を考えた上で、耐摩耗性に優れたコーティングを施すのが一般的であり、オイルリング本体の外表面に窒化処理を施すのも同じ理由によるものである。また同様に、オイルリング外周摺動面には、必要に応じ、クロム窒化物(Cr
2N、CrN)からなる皮膜や、クロム窒化物(Cr
2N、CrN)とクロム(Cr)の混合物からなるイオンプレーティング皮膜を形成することも耐摩耗性の観点からみるとより好ましい。その他、オイルリング外周摺動面に、クロム−ボロンよりなる窒化物(Cr−B−N)、DLC(ダイヤモンド ライク カーボン)等の皮膜を形成することによってもオイルリングの耐久性の向上を図ることができる。
【0055】
以下、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
実施例1では、排気量が2000cc、シリンダボア径が86mmの4気筒ガソリンエンジンの実機試験を行い、オイルリングのコイルエキスパンダ収容凹部の内周面にオイル戻し溝が有るものと無いものとでオイル消費量に違いが生じるか否かについての確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、全負荷(WOT)で回転数5000rpmで10時間行った。そして、ピストンリングの組み合わせは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。このときの1stリングは、10Cr鋼からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)2.9mmのものにガス窒化処理を施したものを用いた。2ndリングは、FC材からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)3.4mmのものを用いた。
【0057】
なお、念のために1stリングを構成する10Cr鋼及び2ndリングを構成するFC材に関して述べておく。ここで言う10Cr鋼は、炭素0.50質量%、ケイ素0.21質量%、マンガン0.30質量%、クロム10.1質量%、リン0.02質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備え、且つ、ガス窒化処理を施したものである。そして、ここで言うFC材とは、炭素3.41質量%、ケイ素2.05質量%、マンガン0.65質量%、リン0.30質量%、硫黄0.08質量%、クロム0.10質量%、銅0.10質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるFC250材相当のものである。
【0058】
そして、オイルリングは、上述の実施の形態で述べた2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。実施例1で用いるオイルリングは、オイルリング本体の軸方向幅(h1)が2.00mm、オイルリング径方向幅(a1)が2.00mm、コイルエキスパンダ配置後のオイルリングのオイルリング径方向幅(a12)が2.74mmに設定されたものである。また、実施例1で用いるオイルリングは、そのコイルエキスパンダ収容凹部に連接して形成されるオイル戻し溝の形状が、オイルリング軸方向断面の外周形状において、直線と当該直線に連続する曲線とから構成されるものであって、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面(曲率半径が0.10mm)を備えたものである。また、実施例1のオイルリングは、当該オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、当該ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0.08となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲内となるものである。すなわち、実施例1で用いるオイルリングは、具体的には下記に示す仕様のものである。なお、実施例1で用いるオイルリングのより詳細な設定については、以下の表1に示してある。なお、下記及び以下の表1に示す、オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X)は、
図3においてXで示した幅を言う(以下同様)。
【0059】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0.04mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.49mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0.70mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :2.00mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.50mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.24N/mm
【0060】
また、ここで言うオイルリングを構成するオイルリング本体は、炭素0.70質量%、ケイ素0.25質量%、マンガン0.30質量%、クロム8.0質量%、リン0.02質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成の所謂8Cr鋼を用いた。なお、ガス窒化処理を施した際に、オイルリング軸方向断面にて外周摺動面の窒化層(
図7中Fで示す層)を確認した結果、オイルリング径方向において、厚さ100μmの窒化層が形成されていることを確認した。そして、コイルエキスパンダは、炭素0.55質量%、ケイ素1.41質量%、マンガン0.65質量%、クロム0.68質量%、銅0.06質量%、リン0.01質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるSWOSC−V材相当の素材を用いた。
【0061】
実施例1において、オイルリング本体の材質に所謂8Cr鋼を用いたが、通常、車種等によって用いられる材質は使い分けられる。例えば、クロム含有量を増加した10Cr鋼や13Cr鋼、更にクロム含有量を増加した17Cr鋼(SUS440相当)は主にエンジンがより高負荷にさらされるディーゼル車に用いられる。なお、オイルリングの材質としては、今回実施例で用いた8Cr鋼や、上述した10Cr鋼、13Cr鋼及び17Cr鋼の他に、SWRH材等が好適に用いられるが、これらの材質に限定されるものではない。
【0062】
ここで、本件発明のオイルリングに窒化を施した場合、オイルリングにどのような影響を及ぼすかについて簡単に述べておく。例えば、クロム鋼に窒化処理を施すと、窒素原子が表面から鋼中に侵入、拡散して窒化層を形成する。窒化層中の窒化物は、主にクロム、バナジウム、モリブデンとの化合物又は鉄を固溶したそれらの化合物である。鋼中のクロムは、母材中に固溶する他、クロム炭化物として存在するが、炭素よりも窒素との親和力が大きいため、窒化処理により表面から拡散してくる窒素とクロム炭化物が反応してクロム窒化物を生成する。例えば、13Cr鋼や17Cr鋼はクロム含有量が比較的多いため、上述の理由により硬いクロム窒化物が多く分散することで比較的硬度の高い窒化層が得られると共に、優れた耐摩耗性、及び耐スカッフィング性を備える。また窒化処理は、その処理コストが安価であり、クロムめっきに比べて環境へ及ぼす影響も小さい。そして、上述した窒化処理は、その方法として液体窒化(塩浴窒化)法やガス窒化法等が挙げられる。なお、本件発明において窒化処理を施す場合には、安価なガス窒化法を用いることが好ましい。また、オイルリング本体の一部分にのみ窒化層を形成する場合は、オイルリング本体の全面に窒化層を形成した後、後処理により不必要な部分の窒化層を除去する方法や、マスキング処理として、例えば予め窒化層を形成しない部分に窒化防止剤(水ガラスやニッケル−リンめっき等)を付着させ、その後窒化処理を施す方法等により、窒化層を部分的に形成することが可能である。また、窒化層を部分的に形成可能なイオン窒化により形成することもできる。
【0063】
なお、この実施例1では、シリンダボア径に対する張力比を0.24N/mmとしたオイルリングを使用して、オイル消費量の確認を行った。表1には、実施例1のオイル消費量比を、本件発明の条件を満足しないオイルリング(以下に示す比較例2)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、実施例1のオイル消費量比は0.78となった。
【実施例2】
【0064】
実施例2では、排気量が1500cc、シリンダボア径が73mmの4気筒ガソリンエンジンの実機試験を行い、オイルリングのコイルエキスパンダ収容凹部の内周面にオイル戻し溝が有るものと無いものとでオイル消費量に違いが生じるか否かについての確認を行った。また、実施例2では、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させて、用いるオイルリング本体の形状等の相違がオイルリングの特性(オイル消費性能)にどのような影響を及ぼすかについて確認を行った。そして、用いるピストンリングは、実施例1と同様に、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。このときの1stリングは、実施例1と同様に、10Cr鋼からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)2.9mmのものにガス窒化処理を施したものを用いた。2ndリングは、実施例1と同様に、FC材からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)3.4mmのものを用いた。また、実施例2のオイルリングは、実施例1と同様に、2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。このときのオイルリングは、実施例1と同様に、オイルリング本体が8Cr鋼からなるものにガス窒化処理を施した(
図7中Fで示す窒化層の厚さが100μmに形成されていることを確認)ものを用い、コイルエキスパンダがSWOSC−V材相当材からなるものを用いた。そして、実施例2で用いる1stリング、2ndリング、及びオイルリングの組成は、実施例1と同様とした。但し、実施例2で用いるオイルリングは、その形状に関して実施例1と異なるものを用いた。
【0065】
実施例2で用いるオイルリングは、オイルリング本体の軸方向幅(h1)が1.50mm、オイルリング径方向幅(a1)が1.70mm、コイルエキスパンダ配置後のオイルリングのオイルリング径方向幅(a12)が2.14mmに設定されたものである。また、実施例2で使用するオイルリングは、そのコイルエキスパンダ収容凹部に連接して形成されるオイル戻し溝の形状が、オイルリング軸方向断面の外周形状において、直線と当該直線に連続する曲線とから構成されるものであって、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面(曲率半径が0.09mm)を備えたものものである。また、実施例2のオイルリングは、当該オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、当該ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0.18となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲内となるものである。すなわち、実施例2で用いるオイルリングは、具体的には下記に示す仕様のものである。なお、実施例2で用いるオイルリングのより詳細な設定については、以下の表2に示してある。
【0066】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0.09mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.49mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0.65mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :1.50mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.40mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.07N/mm
【0067】
なお、この実施例2では、シリンダボア径に対する張力比を0.07N/mmとしたオイルリングを使用して、オイル消費量の確認を行った。表1には、実施例2のオイル消費量比を、本件発明の条件を満足しないオイルリング(以下に示す比較例4)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、実施例2のオイル消費量比は0.85となった。
【実施例3】
【0068】
実施例3では、実施例2と同じエンジンを用い、また、実施例2と同じ駆動条件でエンジンを駆動させて、用いるオイルリング本体の形状等の相違がオイルリングの特性(オイル消費性能)にどのような影響を及ぼすかについて確認を行った。そして、用いるピストンリングは、実施例1及び実施例2と同様に、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。このときの1stリングは、実施例1及び実施例2と同様に、10Cr鋼からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)2.9mmのものにガス窒化処理を施したものを用いた。2ndリングは、実施例1及び実施例2と同様に、FC材からなる軸方向幅(h1)1.2mm、径方向幅(a1)3.4mmのものを用いた。また、実施例3のオイルリングは、実施例1及び実施例2と同様に、2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。このときのオイルリングは、実施例1及び実施例2と同様に、オイルリング本体が8Cr鋼からなるものにガス窒化処理を施したもの(
図7中Fで示す窒化層の厚さが100μmに形成されていることを確認)を用い、コイルエキスパンダがSWOSC−V材相当材からなるものを用いた。そして、実施例3で用いる1stリング、2ndリング、及びオイルリングの組成は、実施例1及び実施例2と同様とした。但し、実施例3で用いるオイルリングは、その形状に関して実施例1及び実施例2と異なるものを用いた。
【0069】
実施例3で用いるオイルリングは、オイルリング本体の軸方向幅(h1)が1.50mm、オイルリング径方向幅(a1)が1.70mm、コイルエキスパンダ配置後のオイルリングのオイルリング径方向幅(a12)が2.32mmに設定されたものである。また、実施例3で使用するオイルリングは、そのコイルエキスパンダ収容凹部に連接して形成されるオイル戻し溝の形状が、オイルリング軸方向断面の外周形状において、直線と当該直線に連続する曲線とから構成されるものであって、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面(曲率半径が0.09mm)を備えたものものである。また、実施例3のオイルリングは、当該オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、当該ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0.30となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲内となるものである。すなわち、実施例3で用いるオイルリングは、具体的には下記に示す仕様のものである。なお、実施例3で用いるオイルリングのより詳細な設定については、以下の表2に示してある。
【0070】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0.17mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.57mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0.65mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :1.50mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.40mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.07N/mm
【0071】
なお、この実施例3では、シリンダボア径に対する張力比を0.07N/mmとしたオイルリングを使用して、オイル消費量の確認を行った。表1には、実施例3のオイル消費量比を、本件発明の条件を満足しないオイルリング(以下に示す比較例4)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、実施例3のオイル消費量比は0.85となった。
【0072】
[比較例1]
比較例1は、実施例1との対比用として用いる。比較例1では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例1のピストンリングは、実施例1と同様に、ピストンリングは、1stリング、2ndリング、オイルリングを組み合わせたものを使用した。ここで、1stリング及び2ndリングは実施例1で使用したものと同様のものである。また、比較例1のオイルリングに関しては、オイルリング本体のオイル戻し溝の形状を除き、実施例1と同じ設定条件のものを用いた。ちなみに、比較例1のオイルリングは、オイルリング本体にオイル戻し溝の形成がされているものの、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接する延設曲面が備わっていないものである。具体的には、比較例1で用いるオイルリングは、下記に示す仕様のものである。なお、比較例1で用いるオイルリングのより詳細な設定については、実施例1と併せて以下の表1に示してある。
【0073】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0.04mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.49mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0.70mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :2.00mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.50mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.24N/mm
【0074】
ここで、比較例1のオイルリングは、オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが約0.08となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲内となるものである。そして、この比較例1では、実施例1と同様に、シリンダボア径に対する張力比が0.24N/mmのものを用いて、オイル消費量の確認を行った。表1には、本件発明の条件を満足しないオイルリング(以下に示す比較例2)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、比較例1のオイル消費量比は0.80となった。
[比較例2]
比較例2は、実施例1との対比用として用いる。比較例2では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例2のピストンリングは、実施例1と同様に、ピストンリングは、1stリング、2ndリング、オイルリングを組み合わせたものを使用した。ここで、1stリング及び2ndリングは実施例1で使用したものと同様のものである。また、比較例2のオイルリングに関しては、オイルリング本体にオイル戻し溝が形成されていない点を除き、実施例1と同じ設定条件のものを用いた。具体的には、比較例2で用いるオイルリングは、下記に示す仕様のものである。なお、比較例2で用いるオイルリングのより詳細な設定については、実施例1と併せて以下の表1に示してある。
【0075】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.45mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :2.00mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.50mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.20N/mm
【0076】
ここで、比較例2のオイルリングは、オイル戻し溝の形状に関し、オイルリング軸方向断面における外周形状が直線のみで構成されているものを用いた。そして、比較例2のオイルリングは、オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲外となるものである。そして、この比較例2では、シリンダボア径に対する張力比が0.20N/mmのものを用いてオイル消費量の確認を行った。なお、表1には、上述したように、比較例2のピストンリングの組合せを用いて実機試験をして得られたオイル消費量比を基準「1」として示している。
【0077】
[比較例3]
比較例3は、実施例2及び実施例3との対比用として用いる。比較例3では、実施例2及び実施例3と同じエンジンを用いて、実施例2及び実施例3と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例3のピストンリングは、実施例2及び実施例3と同様に、ピストンリングは、1stリング、2ndリング、オイルリングを組み合わせたものを使用した。ここで、1stリング及び2ndリングは実施例2及び実施例3で使用したものと同様のものである。また、比較例3のオイルリングに関しては、オイルリング本体のオイル戻し溝の形状を除き、実施例2と同じ設定条件のものを用いた。ちなみに、比較例3のオイルリングは、オイルリング本体にオイル戻し溝の形成がされているものの、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接する延設曲面が備わっていないものである。具体的には、比較例3で用いるオイルリングは、下記に示す仕様のものである。なお、比較例3で用いるオイルリングのより詳細な設定については、実施例2及び実施例3と併せて以下の表2に示してある。
【0078】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0.09mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.49mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0.65mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :1.50mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.40mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.07N/mm
【0079】
ここで、比較例3のオイルリングは、オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲外となるものである。そして、この比較例3では、実施例2及び実施例3と同様に、シリンダボア径に対する張力比が0.07N/mmのものを用いてオイル消費量の確認を行った。表2には、本件発明の条件を満足しないオイルリング(以下に示す比較例4)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、比較例3のオイル消費量比は0.87となった。
【0080】
[比較例4]
比較例4は、実施例2及び実施例3との対比用として用いる。比較例4では、実施例2及び実施例3と同じエンジンを用いて、実施例2及び実施例3と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例4のピストンリングは、実施例2及び実施例3と同様に、ピストンリングは、1stリング、2ndリング、オイルリングを組み合わせたものを使用した。ここで、1stリング及び2ndリングは実施例2及び実施例3で使用したものと同様のものである。また、比較例4のオイルリングに関しては、オイルリング本体にオイル戻し溝が形成されていない点を除き、実施例2と同じ設定条件のものを用いた。具体的には、比較例4で用いるオイルリングは、下記に示す仕様のものである。なお、比較例4で用いるオイルリングのより詳細な設定については、実施例2及び実施例3と併せて以下の表2に示してある。
【0081】
オイル戻し溝のオイルリング径方向深さ(A) :0mm
ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅(B):0.49mm
オイル戻し溝のオイルリング軸方向幅(X) :0mm
オイル戻し孔の開口幅(C) :1.50mm
オイル戻し孔の開口高さ(D) :0.40mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.07N/mm
【0082】
ここで、比較例4のオイルリングは、オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合、A/Bが0となり、当該A/Bが本件発明の条件である0.05〜0.50の範囲外となるものである。そして、この比較例4では、実施例2及び実施例3と同様に、シリンダボア径に対する張力比が0.07N/mmのものを用いてオイル消費量の確認を行った。なお、表2には、上述したように、比較例4のピストンリングの組合せを用いて実機試験をして得られたオイル消費量比を基準「1」として示している。
【0083】
[実施例と比較例との対比]
実施例1と比較例1及び比較例2との対比:
図8は、軸方向幅が2.00mmのオイルリングを用いた場合において、オイル戻し溝のオイルリング軸方向断面形状とオイル消費量比との関係を示すグラフである。
図8には、以下の表1に示したオイルリングの形状がそれぞれ異なる、実施例1、比較例1、及び比較例2について、オイル消費量を対比した結果を示している。この
図8のオイル消費量比は、比較例2のオイルリング(オイル戻し溝なし)を用いたときのオイル消費量(g/h)の数値を1.00とした場合の比率である。これらの結果を対比可能なように、
図8に纏めて示す。
図8より、最もオイル消費量の少ない結果となったのが実施例1のオイルリングを用いた場合であり、オイルリング本体に形成されるオイル戻し溝が、コイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面(曲率半径が0.10mm)を備えたものである。その次にオイル消費量の少ない結果となったのが比較例1のオイルリングを用いた場合であり、オイルリング本体にオイル戻し溝の形成がされているものの、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面が備わっていないものである。そして、最もオイル消費量が多い結果となったのが比較例2のオイルリングであり、オイル戻し溝の形成されていないものである。
【0085】
以上の結果より、軸方向幅が2.00mmのオイルリングを用いた場合において、オイルリングは、オイルリング本体にオイル戻し溝を形成することでオイル消費量を大幅に削減することができることが分かった。また、このときに、当該オイル戻し溝のオイルリング径方向深さAが、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bとの関係において、本件発明に規定する条件(A/B=0.05〜0.50)を満足することで、更にオイル消費量の削減効果の向上が図られることが分かった。また、実施例1と比較例1との対比結果より、オイルリング本体に形成されるオイル戻し溝が、コイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面を本件発明に規定する条件の曲率半径(0.01〜0.30mm)により備えることが、オイル消費の削減の観点からみてより好ましいことが分かった。
【0086】
実施例2及び実施例3と比較例3及び比較例4との対比:
図9は、軸方向幅が1.50mmのオイルリングを用いた場合において、オイル戻し溝のオイルリング軸方向断面形状とオイル消費量比との関係を示すグラフである。
図9には、以下の表2に示したオイルリングの形状がそれぞれ異なる、実施例2、実施例3、比較例3、及び比較例4について、オイル消費量を対比した結果を示している。この
図9のオイル消費量比は、比較例4のオイルリング(オイル戻し溝なし)を用いたときのオイル消費量(g/h)の数値を1.00とした場合の比率である。これらの結果を対比可能なように、
図9に纏めて示す。
図9より、最もオイル消費量の少ない結果となったのが実施例2及び実施例3のオイルリングを用いた場合であり、オイルリング本体に形成されるオイル戻し溝が、コイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面(曲率半径が0.09mm)を備えたものである。その次にオイル消費量の少ない結果となったのが比較例3のオイルリングを用いた場合であり、オイルリング本体にオイル戻し溝の形成がされているものの、当該オイル戻し溝にコイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面が備わっていないものである。そして、最もオイル消費量が多い結果となったのが比較例4のオイルリングであり、オイル戻し溝の形成されていないものである。
【0088】
以上の結果より、軸方向幅が1.50mmのオイルリングを用いた場合においても、上述の軸方向幅が2.00mmのオイルリングを用いて試験を行った場合と同様に、オイルリングは、オイルリング本体にオイル戻し溝を形成することでオイル消費量を大幅に削減することができることが分かった。また、このときに、当該オイル戻し溝のオイルリング径方向深さAが、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bとの関係において、本件発明に規定する条件(A/B=0.05〜0.50)を満足することで、更にオイル消費量の削減効果の向上が図られることが分かった。ここで、当該A/Bが0.18の実施例2と、当該A/Bが0.30の実施例3とは、共にオイル消費量比が0.85であることから、本件発明に規定する条件(A/B=0.05〜0.50)を満足する限りにおいて、オイル消費量に及ぼす影響に差が生じないと考えられる。また、実施例2及び実施例3と比較例1との対比結果より、オイルリング本体に形成されるオイル戻し溝が、コイルエキスパンダ収容凹部から連接した延設曲面を本件発明に規定する条件の曲率半径(0.01〜0.30mm)により備えることが、オイル消費の削減の観点からみてより好ましいことが分かった。
【0089】
以上において、本件発明に規定する条件を満たした実施例のオイルリングは、当該条件を満たさない比較例のオイルリングと比較してオイル消費量の削減効果が得られることを示したが、オイルリング本体の寸法を本件発明で規定する条件範囲内に設定することが好ましい根拠を、更に以下の確認試験を行うことにより示す。
【0090】
[オイルリング本体を構成するウェブのオイルリング径方向幅に対する発生応力確認試験]
オイルリング本体を構成するウェブのオイルリング径方向幅と発生応力との関係を確認するために、実施例と同じ運転条件でエンジンを稼働させた場合にオイルリングにかかる荷重を想定し、当該荷重をオイルリングに負荷したときに発生する応力σを測定した。具体的には、コイルエキスパンダを配置した状態でオイルリングをシリンダに装着した時に、オイルリング本体を構成するウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bと発生応力との関係を算出した。
【0091】
図10は、オイルリング本体を構成するウェブのオイルリング径方向幅と発生応力との関係を示すグラフである。
図10には、上述した応力測定方法に基づいて試験を実施し、オイルリング本体を構成するウェブのオイルリング径方向幅と発生応力との関係についての結果が示してある。
図10に示すように、当該ウェブのオイルリング径方向幅が0.06mmのときの発生応力は約550MPa、当該ウェブのオイルリング径方向幅が0.20mmのときの発生応力は約250MPa、当該ウェブのオイルリング径方向幅が0.45mmのときの発生応力は約220MPaとなった。
図10には、ここで得られた各データを平滑線でつないだものを示している。
【0092】
内燃機関用オイルリングに必要とされる耐久性を考慮した場合、500MPa以下であることが好ましい。
図10より、オイルリング本体に発生する応力が500MPaを超えるのは、オイルリングを構成するウェブのオイルリング径方向幅が約0.08mm未満となるときであることが分かる。この結果より、内燃機関用オイルリングに必要とされる耐久性を考慮すると、オイルリング本体を構成するウェブのオイルリング径方向幅は約0.08mm以上必要であることが分かる。但し、本件発明に係る内燃機関用オイルリングのように、ウェブにオイル戻し溝を形成する形態においては、本件発明に規定する条件「オイル戻し溝のオイルリング径方向深さをAとし、ウェブの当該オイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅をBとした場合に、A/B=0.05〜0.50」を満足する必要がある。ここで、当該A/Bが0.50の場合を考慮すると、オイルリング本体を構成するウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bは、計算上約0.16mm以上の幅が必要になる。なお、内燃機関用オイルリングは、例えばディーゼルエンジン用オイルリング等のように過酷な条件下での使用を考慮すると、経験的に約350MPa以下であることがより好ましい。
図10より、オイルリング本体に発生する応力が350MPaを超えるのは、オイルリングを構成するウェブのオイルリング径方向幅が、約0.15mm未満となるときであることが分かる。ここで、当該A/Bが0.50の場合を考慮すると、ウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bは、計算上約0.30mm以上の幅が必要になる。以上のことから、本件発明に係る内燃機関用オイルリングは、過酷な条件下での使用を考慮すると、オイルリング本体を構成するウェブのオイル戻し溝形成前におけるオイルリング径方向幅Bが、0.30mm以上あることがより好ましい。
【0093】
以上のことから、本件発明に係る内燃機関用オイルリングは、オイルリング本体の内周側に連接して形成するオイル戻し溝をオイルリング軸方向断面でみて、その外周形状が直線と当該直線に連続する曲線とで構成されることで、内燃機関の駆動時のオイル消費量を確実に低減させることができることとなる。また、本件発明に係る内燃機関用オイルリングによれば、当該オイル戻し溝が本件発明に規定する条件を満足する形状となることによって、シリンダ内壁面の余分なオイルを掻き取り、ピストン裏面に流下させる機能を長期間安定して得ることができる。