【実施例】
【0069】
以下、参考例、実施例及び試験例により本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例や試験例に限定されるものではない。
【0070】
[参考例] エグジグオリド(化合物I)の全合成
1.合成計画
化合物1の(E,Z,E)-トリエン側鎖は、全合成の最終段階でビニルホウ酸エステル2とヨウ化ビニル体3の鈴木-宮浦反応により立体選択的に導入することとした(Scheme 1)。化合物3のマクロラクトン環の構築にあたり、メチレンビス(テトラヒドロピラン)4を共通合成中間体に設定し、閉環メタセシス反応(RCM)を経由するルートAとマクロラクトン化を経由するルートBを考案した。すなわち、ルートAではトリエン5のRCM により3が得られ、5は4からエステル化を経て誘導できると考えた。一方、ルートBではヒドロキシカルボン酸7の山口法によるマクロラクトン化を用いて3を得、7は4よりJulia−Kocienski 反応によるC16−C17二重結合の立体選択的形成を経て合成することとした。共通中間体4はシリルオキシケトン9の還元的エーテル化により得られ、9はヒドロキシエノン10の分子内共役付加環化反応によって合成できると考えた。化合物10は容易に調製可能な非環状のセグメントであるヒドロキシオレフィン11とエノン12とのオレフィンクロスメタセシス(CM)反応により合成することとした。
【0071】
【化10】
【0072】
2.ヒドロキシオレフィン11の合成
化合物11はKeck不斉アリル化により得たホモアリルアルコール13を出発原料として合成した(Scheme 2)。化合物13のヒドロキシ基を保護した後、二重結合を酸化的に切断してアルデヒド14へと誘導した。化合物14を臭化マグネシウムジエチルエーテル錯体存在下アリルトリメチルシランによりジアステレオ選択的にアリル化し、望む立体化学を有するホモアリルアルコール15を単一の立体異性体として得た。続いて保護基の変換を行い、ヒドロキシオレフィン11へと導いた。
【0073】
【化11】
【0074】
3.エノン12の合成
化合物12は(S)-ロシュエステルから5段階で容易に入手可能なアルデヒド16を出発原料として合成した(Scheme 3)。化合物16のBrown不斉アリル化と続くGrubbs第二世代触媒(G-II)を用いるCMにより増炭して不飽和エステル17に誘導した。化合物17を接触還元した後、エステルをWeinrebアミドへ変換し、さらに遊離のヒドロキシ基をシリル化して18を得た。化合物18にビニルリチウムを作用させ、エノン12を合成した。
【化12】
【0075】
4.メチレンビス(テトラヒドロピラン)4 の合成
化合物11と12を10 mol %のHoveyda−Grubbs第二世代触媒(HG-II)存在下ジクロロメタン中35℃で反応させると、ヒドロキシエノン10を高収率かつ単一の立体異性体として得た(Scheme 4)。続いて化合物10をテトラヒドロフラン中0℃でカリウムt-ブトキシドで処理すると、分子内共役付加環化反応が円滑に進行し、目的とするシリルオキシケトン9を単一の立体異性体として収率95%で得ることができた。最後に、化合物9にジクロロメタン中大過剰量のトリエチルシラン存在下三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を作用させ、化合物4をC9位に関する約10:1のジアステレオマー混合物として収率98%で単離した。化合物11と12に、環形成に必要な官能基群を予め適切に配置した上で、オレフィンメタセシス反応の高い官能基許容性と強力な炭素−炭素結合形成能を活用することにより、極めて高い収束性で化合物4を効率的に構築できた。実際に化合物4はグラムスケールにて容易に合成可能であった。
【0076】
【化13】
【0077】
5.RCMによる20員環の構築の試み
化合物4の加水素分解により生じたアルコールをDess−Martin 酸化して得たアルデヒド19をメチレン化し、オレフィン20へと変換した(Scheme 5)。化合物20のt−ブチルジフェニルシリル基を選択的に除去した後、生じたアルコールをカルボン酸21へと酸化した。化合物21をアルコール6と縮合してトリエン5へと導き、そのRCMを種々の条件下で検討した。
【0078】
まず、G-II触媒を用いジクロロメタン中加熱還流又はトルエン中70℃でRCMを検討したが、目的物22は痕跡量しか生成せず、反応の初期に触媒が分解した。そこでHG-II触媒を用いてトルエン中80℃で1日反応を行ったところ、化合物22が収率30%で得られ、原料5が18%回収された。しかし、反応を長時間行ったり、より高温で反応を行ったりすると、化合物22の収率は向上しないが化合物22’が副生成物として同程度生じた。これはRCMの活性種であるルテニウムメチリデン錯体がヨウ化ビニル部分と反応したために生成したものと考えられる。一方、本反応を1,2−ジクロロエタン中75℃で行うと、目的の化合物22を収率52%(原料回収24%)で得ることができ、化合物22’はわずかに痕跡量しか生成しなかった。また、チタニウムテトライソプロポキシドや2,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノンを添加剤として検討したが、本反応においては有用ではなかった。
【0079】
【化14】
【0080】
6.マクロラクトン化を経由する20員環の構築と全合成の完遂
次に、山口法による20員環の構築を検討した(Scheme 6)。まず、アルデヒド19と別途調製したスルホン8とのJulia−Kocienski反応を検討した。その結果、テトラヒドロフラン/ヘキサメチルホスホアミド(4:1)中−78°Cで化合物8をリチウムビス(トリメチルシリル)アミドで処理して対応するアニオンを発生させた後、化合物20を加え反応溶液を徐々に室温まで昇温させると、目的とする(E)-オレフィン23を収率63%(原料回収23%)で単離できた。化合物23のt-ブチルジフェニルシリル基を選択的に除去し、生じたアルコールを二段階の酸化反応とメチルエステル化によりエステル24へ変換した。化合物24のp−メトキシベンジル基はトリエチルシラン存在下三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体で処理すると最も効率よく脱保護できることを見いだし、アルコール25を収率89%で得た。化合物25を加水分解し、得られたヒドロキシカルボン酸を山口法でマクロラクトン化すると、20員環ラクトン22を収率94%(2段階通算)で単離することができた。化合物22のトリイソプロピルシリル基を除去して得たアルコールを酸化し、ケトン26を定量的に得た。化合物26 に対しキラルホスホナート27とナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを用いてHorner−Wadsworth−Emmons反応を行い、化合物3をE/Z異性体の混合物(E/Z = ca. 1:5)として収率94%で得た。これら異性体はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離可能であった。最後に、(E,Z,E)-トリエン側鎖の立体選択的導入を行った。すなわち、化合物3とビニルホウ酸エステル2との鈴木−宮浦反応は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体/トリフェニルヒ素触媒系と酸化銀 を用いるとテトラヒドロフラン中室温で円滑に進行し、化合物(−)-1を単一の異性体として収率73%で得ることに成功した。合成品の化合物(−)-1の各種スペクトルデータ(
1H及び
13C NMRスペクトル、高分解能質量分析スペクトル)は天然物のそれらと完全に一致した。また合成品の比旋光度([α]
24D −121.5 (c = 0.22、クロロホルム))は、天然物のそれ([α]
25D −92.5 (c = 0.069、クロロホルム))と良い一致を示した。
【0081】
【化15】
【0082】
[合成実施例]
(1)類縁体1及び2の構造式は、下式の化合物III及びIVでそれぞれ表される。化合物IIIは、文献公知の化合物I(H. Fuwa, M. Sasaki, Organic Letters, 12, 574−577 (2010))と文献公知の(Z)-ビニルホウ酸ピナコールエステルII(H. Fuwa, M. Sasaki, Organic Letters, 12, 574−577 (2010))との鈴木−宮浦反応により合成した。化合物IVは、化合物IIIを無水酢酸とピリジンでアセチル化して得た。
【0083】
【化16】
【0084】
(2)類縁体3及び4の構造式は、下式の化合物VII及びVIでそれぞれ表される。化合物VIは、化合物Iと文献公知のビニル錫V(T. Hosoya, K. Sumi, H. Doi, M. Wakao, M. Suzuki, Org. Biomol. Chem., 4, 410−415(2006))とのStille反応により合成した。化合物VIIは、化合物VIを無水酢酸とピリジンでアセチル化して得た。
【0085】
【化17】
【0086】
(3)類縁体5及び6の構造式は、下式の化合物IX及びXでそれぞれ表される。化合物IXは、文献公知の化合物VIII(H. Fuwa, M. Sasaki, Organic Letters, 12, 574−577 (2010))と市販のフェニルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木−宮浦反応により合成した。また、化合物Xは、化合物VIIIと市販のビニルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木−宮浦反応により合成した。
【0087】
【化18】
【0088】
(4)類縁体7及び8の構造式は、下式の化合物XII及びXIVでそれぞれ表される。化合物XIIは、文献公知の化合物XI(H. Fuwa, M. Sasaki, Organic Letters, 12, 574−577 (2010))と化合物IIとの鈴木−宮浦反応により合成した。また、化合物XIVは、化合物XIをJulia−Kocienski反応(C. Aissa, The Journal of Organic Chemistry, 2006, 71, 360−363)によりメチレン化して調製した化合物XIIIに対し、化合物IIとの鈴木−宮浦反応を行うことで合成した。
【0089】
【化19】
【0090】
[実施例1] 化合物III(類縁体1)の合成
【化20】
【0091】
アルコールI(10.2mg、0.0197mmol)と(Z)−ビニルホウ酸ピナコールエステルII(29.2mg、0.110mmol)のテトラヒドロフラン/水(体積比10:1)の混合溶液1.1mLに酸化銀(22.8mg、0.0984mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(2.7mg、0.0029mmol)及びトリフェニルヒ素 (7.2mg、0.024mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌した後、不溶物をセライト濾過により除去し、瀘液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:40〜60%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物III(10.0mg、収率96%)を淡黄色液体として得た。
【0092】
[α]
25D=−121.4(c=0.14,ベンゼン);IR(薄膜)3454,2928,1737,1436,1372,1326,1263,1183,1157,1090,1039,975,903,680cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム):δ=6.66(dd,J=15.1,11.3Hz,1H),6.37 (d,J=11.3Hz,1H),6.18 (dd,J=11.3,11.3Hz,1H),5.96(dd,J=11.3,11.3Hz,1H),5.66(dd,J=15.1,6.9Hz,1H),5.53(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),5.23(m,1H),5.06(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),3.85−3.74(m,2H),3.68(s,3H),3.27(m,1H),3.20(m,1H),3.12(m, 1H),3.10(s,2H),2.56(m,1H),2.53(dd,J=14.1,11.0Hz,1H),2.43(dd,J=14.1,2.8Hz,1H),2.32(m,1H),1.96(m,1H),1.84(m,1H),1.83(s,3H),1.77−1.72(m,2H),1.62(m,1H),1.54−1.01(m,13H),0.92ppm(d,J=6.5Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重ベンゼン):δ=170.7,170.3,135.8,133.2,133.1,132.2,128.5,126.1,124.3,78.0,75.7,75.3,72.9,72.1,67.7,50.9,44.9,44.4,43.5,42.4,41.3,41.2,40.2,33.1,32.7,32.0,24.3,21.9,16.4,14.5ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:553.3136[(M+Na)
+];実測値:553.3148.
【0093】
[実施例2] 化合物IV(類縁体2)の合成
【化21】
【0094】
化合物III(2.6mg、0.0049mmol)のピリジン溶液0.5 mLに無水酢酸0.5 mLを加え、反応溶液を室温で終夜撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:10〜30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物IV(2.4mg、収率86%)を無色液体として得た。
【0095】
[α]
23D=−111.8(c=0.12,ベンゼン);
1H NMR(600MHz,重ベンゼン):δ=6.95(dd,J=15.1,11.3Hz,1H),6.38(d,J=11.7Hz,1H),6.16(dd,J=11.7,11.0Hz,1H),5.98(dd,J=11.3,11.0Hz,1H),5.82(dd,J=14.8,9.6Hz,1H),5.73(dd,J=15.1,6.8Hz,1H),5.65(m,1H),5.12(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),4.83(m,1H),3.71(m,1H),3.50(m,1H),3.40(m,1H),3.26(s,3H),2.97(m,1H),2.87(m,1H),2.80(s,2H),2.38−2.30(m,2H),2.03(dd,J=14.4,2.8Hz,1H),1.95(dd,J=12.7,11.3Hz,1H),1.72−1.44(m,12H),1.38(m,1H),1.32−1.01(m,9H),0.99ppm(d,J=6.9Hz,3H);
13C NMR(150MHz,重ベンゼン):δ=170.9,170.2,169.4,135.9,133.2,133.1,132.1,128.5,126.1,124.3,78.3,75.9,75.4,73.0,72.1,70.3,51.2,45.2,44.5,43.8,42.7,41.3,37.6,36.6,33.4,32.9,32.2,24.5,22.1,20.8,16.6,14.7ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:595.3241[(M+Na)
+];実測値:595.3260.
【0096】
[実施例3] 化合物VII(類縁体3)の合成
【化22】
【0097】
化合物VI(5.6mg,0.012mmol)のピリジン溶液0.5mLに無水酢酸0.5mLを室温で加え、反応溶液を室温で終夜撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:10〜20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物VII(5.7mg,収率93%)を分離不能な5:1の幾何異性体の混合物として得た(異性体の比率は
1H−NMRスペクトルにより見積もった。なお主生成物のC22位二重結合の幾何異性はZである)。
【0098】
[α]
23D=−49.3(c=0.57,クロロホルム);IR(薄膜):2927,2862,1740,1453,1373,1325,1239,1188,1160,1090,1031,975,905,677cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム,主生成物のシグナル):δ=6.49(dd,J=15.1,11.0Hz,1H),5.94(dd,J=11.3,11.0Hz,1H),5.58(dd,J=15.1,6.8Hz,1H),5.52(dd,J=15.1,9.3Hz,1H),5.45(m,1H),5.21(m,1H),5.06(m,1H),4.90(m,1H),3.85(dddd,J=11.3,11.3,2.4,2.4Hz,1H),3.26(m,1H),3.20−3.13(m,2H),2.53(m,1H),2.50(dd,J=14.0,10.6Hz,1H),2.40(dd,J=14.0,3.1Hz,1H),2.34(m,1H),2.18−2.13(m,2H),2.06(m,1H),2.01(s,3H),1.98(m,1H),1.89(m,1H),1.77−1.70(m,2H),1.62(m,1H),1.54−1.00(m,15H),0.92(d,J=6.9Hz,3H),0.89ppm(t,J=7.2Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重クロロホルム,主生成物のシグナル):δ=170.8,170.5,135.3,133.5,132.6,129.7,128.0,127.6,78.7,76.0,75.2,72.7,72.0,70.2,44.1,43.1,42.0,41.4,37.2,36.3,33.0,32.4,31.7,31.6,27.5,23.9,22.3,21.8,21.2,14.3,13.9ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:539.3343[(M+Na)
+];実測値:539.3340.
【0099】
[実施例4] 化合物VI(類縁体4)の合成
【化23】
【0100】
アルコールI(9.6mg,0.019mmol)と(Z)-ビニルスズV(34.6mg,0.0925mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液1mLにトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(2.5mg,0.0027mmol)とトリフェニルヒ素(6.8mg,0.022mmol)を室温で加えた。反応溶液を室温で6時間30分撹拌した後、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を瀘別し、瀘液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:30〜45%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物VI(5.6mg,収率64%)を分離不能な5:1の幾何異性体の混合物として得た(異性体の比率は
1H−NMRスペクトルにより見積もった。なお主生成物の22位の二重結合の幾何異性はZである)。
【0101】
[α]
24D=−43.4(c=0.50, クロロホルム);IR(薄膜):3443,2927,2862,1738,1461,1372,1322,1183,1122,1090,1040,975,900,678cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム, 主生成物のシグナル):δ=6.49(dd,J=15.4,11.3Hz,1H),5.95(dd,J=11.3,11.0Hz,1H),5.58(dd,J=15.1,6.8Hz,1H),5.52(dd,J=15.1,9.7Hz,1H),5.45(m,1H),5.21(m,1H),5.06(m,1H),3.84(m,1H),3.79(dddd,J=11.3,11.0,2.5,2.0Hz,1H),3.27(m,1H),3.19(m,1H),3.11(m,1H),2.54(m,1H),2.52(dd,J=14.4,11.0Hz,1H),2.41(dd,J=14.4,2.8Hz,1H),2.34(m,1H),2.18−2.14(m,2H),1.96(m,1H),1.84(m,1H),1.77−1.71(m,2H),1.62(m,1H),1.54−1.00(m,17H),0.92(d,J=6.9Hz,3H),0.89ppm(t,J=7.2Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重クロロホルム,主生成物のシグナル):δ=171.0,135.3,133.4,132.6,129.8,127.8,127.6,78.6,76.0,75.3,72.8,72.2,68.1,44.2,43.1,42.0,41.4,41.1,40.2,33.0,32.4,31.7,31.6,27.5,23.9,22.3,21.8,14.3,13.9ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:497.3237[(M+Na)
+];実測値:497.3233.
【0102】
[実施例5] 化合物IX(類縁体5)の合成
【化24】
【0103】
ビニルヨウ素体VIII(3.5mg,0.0061mmol)とフェニルボロン酸ピナコールエステル (10.0mg,0.0376mmol)のテトラヒドロフラン/水(体積比10:1)の混合溶液0.55mLに酸化銀(7.1mg,0.031mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0.8mg,0.0009mmol)及びトリフェニルヒ素(2.2mg,0.0072mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。不溶物をセライト濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮した。粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:7.5%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物IX(3.0mg,93%)を無色液体として得た。
【0104】
[α]
23D=−61.7(c=0.30,クロロホルム);IR(薄膜):2928,1718,1651,1435,1373,1236,1154,1090,969,748,678cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム):δ=7.36(d,J=7.6Hz,2H),7.29(dd,J=7.9,7.6Hz,2H),7.22(dd,J=7.9,7.9Hz,1H),6.56(d,J=15.8Hz,1H),6.16(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),5.68(s,1H),5.56(dd,J=15.1,9.2Hz,1H),5.35(m,1H),5.10(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),3.87(app.d,J=13.4Hz,1H),3.81(m,1H),3.67(s,3H),3.31(m,1H),3.23−3.16(m,2H),2.61−2.49(m,3H),2.43(m,1H),2.22(dd,J=12.4,12.4Hz,1H),2.12(app.d,J=13.4Hz,1H),1.97(dd,J=12.7,12.4Hz,1H),1.80−1.73(m,2H),1.63−1.47(m,2H),1.45(ddd,J=14.1,11.3,2.8Hz,1H),1.40(m,1H),1.25−1.04(m,7H),0.93ppm(d,J=6.5Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重クロロホルム): δ=170.7,166.8,156.7,136.5,135.5,132.5,132.0,128.5(2C),127.7,126.7,126.5(2C),115.0,78.7,76.0,75.4,74.9,74.1,51.0,44.1,43.1,42.5,42.1,41.6,34.8,33.1,32.5,31.6,23.9,21.8,14.4ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:545.2874[(M+Na)
+];実測値:545.2881.
【0105】
[実施例6] 化合物X(類縁体6)の合成
【化25】
【0106】
ビニルヨウ素体VIII(4.1mg,0.0072mmol)とビニルボロン酸ピナコールエステル(5.0mg,0.032mmol)のテトラヒドロフラン/水(体積比10:1)の混合溶媒1.1mLに酸化銀(8.3mg,0.036mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(1.0mg,0.0011mmol)及びトリフェニルヒ素(2.6mg,0.0085 mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。不溶物をセライト濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮した。粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:7〜10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物X(3.2mg,94%)を無色液体として得た。
【0107】
[α]
23D=−75.9(c=0.32,クロロホルム);IR(薄膜):2929,1738,1652,1435,1373,1236,1090,1045,1008,975,903,858,679cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム):δ=6.33(ddd,J=16.8,10.4,10.3Hz,1H),6.19(dd,J=15.1,10.3 Hz,1H),5.68(s,1H),5.64(dd,J=15.1,6.2Hz,1H),5.52(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),5.23−5.17(m,2H),5.10(app.d,J=10.0Hz,1H),5.06(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),3.86(app.d,J=13.4Hz,1H),3.79(m,1H),3.67(s,3H),3.29(m,1H),3.20−3.14(m,2H),2.56−2.46(m,3H),2.32(dddd,J=16.1,7.3,6.9,2.1Hz,1H),2.20(dd,J=12.7,12.0Hz,1H),2.11(app.d,J=13.4Hz,1H),1.95(dd,J=12.7,12.7Hz,1H),1.78−1.71(m,2H),1.61−1.47(m,2H),1.43(ddd,J=14.1,11.3,2.8Hz,1H),1.38(m,1H),1.25−1.03(m,4H),1.03(d,J=6.8Hz,3H),0.92ppm(d,J=6.9Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重クロロホルム): δ=170.7,166.8,156.7,135.4,132.6,132.5,130.8,117.9,115.0,78.2,76.0,75.3,74.9,74.1,51.0,44.0,43.1,42.5,41.9,41.5,34.8,33.0,32.4,31.6,23.9,21.8,14.3ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:495.2717[(M+Na)
+];実測値:495.2698.
【0108】
[実施例7] 化合物XII(類縁体7)の合成
【化26】
【0109】
ケトンXI(7.1mg,0.014mmol)と(Z)-ビニルホウ酸ピナコールエステルII(15.2mg,0.0571mmol)のテトラヒドロフラン/水(体積比10:1)の混合溶液1.1mLに酸化銀(16.0mg,0.0690mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(1.9mg,0.0021mmol)及びトリフェニルヒ素(5.1mg,0.017mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌した。不溶物をセライト濾過して除去した後、瀘液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:20〜30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物XII(7.4mg,収率100%)を無色液体として得た。
【0110】
[α]
23D=−84.2(c=0.74,ベンゼン);IR(薄膜):2928,1737,1433,1370,1329,1257,1214,1156,1091,973,949,680cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重ベンゼン):δ=6.93(dd,J=14.8,11.7Hz,1H),6.37(d,J=11.7Hz,1H),6.17(dd,J=11.3,11.3Hz,1H),5.98(dd,J=11.0,11.0Hz,1H),5.77−5.65(m,3H),5.13(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),3.78(m,1H),3.47(m,1H),3.39(m,1H),3.27(s,3H),3.06(m,1H),2.83(m,1H),2.80(s,2H),2.36(dddd,J=16.1,7.2,7.2,1.7Hz,1H),2.22(dd,J=14.4,10.7Hz,1H),1.99−1.81(m,5H),1.78(dd,J=14.4,12.0Hz,1H),1.69(s,3H),1.65(m,1H),1.56(m,1H),1.49(m,1H),1.41(m,1H),1.28−1.20(m,3H),1.18(d,J=6.9Hz,3H),1.07−1.00(m,2H),0.99ppm(d,J=6.8Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重ベンゼン):δ=204.0,170.9,169.7,136.0,133.3,133.0,131.8,128.5,127.9,126.3,124.2,78.3,75.9,75.2,74.5,73.2,51.2,47.7,46.4,45.2,44.4,43.8,42.6,41.3,33.5,32.8,32.1,24.9,24.4,22.1,16.7,14.6ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:551.2979[(M+Na)
+];実測値:551.2974.
【0111】
[実施例8] 化合物XIV(類縁体8)の合成
【化27】
【0112】
オレフィンXIII(4.0mg,0.0078mmol)と(Z)-ビニルホウ酸ピナコールエステルII(9.6mg,0.036mmol)のテトラヒドロフラン/水(体積比10:1)の混合溶媒1.1mLに酸化銀(9.0mg,0.039mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(1.1mg,0.0012mmol)及びトリフェニルヒ素(2.9mg,0.0095mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌した。不溶物をセライト濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮した。粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:7%酢酸エチル/ヘキサン)続いて薄層クロマトグラフィー(E. Merck silica gel 60 F
254 plates (0.25-mm thickness),25mm×25mm,8%酢酸エチル/ヘキサンで二度展開した後、12%酢酸エチル/ヘキサンで展開)により精製し、化合物XIV(3.0mg,収率73%)を無色液体として得た。
【0113】
[α]
24D=−69.2(c=0.23,クロロホルム);IR(薄膜):2930,1739,1434,1368,1328,1255,1214,1156,1092,1045,976cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重ベンゼン): δ=6.95(dd,J=15.1,11.3Hz,1H),6.38(d,J=9.6Hz,1H),6.16(dd,J=11.3,11.3Hz,1H),5.98(dd,J=11.3,11.3Hz,1H),5.86(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),5.75(dd,J=14.8,6.8Hz,1H),5.69(m,1H),5.13(dd,J=14.8,9.6Hz,1H),4.66(s,1H),4.65(s,1H),3.77(dddd,J=11.0,10.6,3.1,2.8Hz,1H),3.56(m,1H),3.43(m,1H),3.26(s,3H),3.08(m,1H),2.90(m,1H),2.80(s,2H),2.40−2.34(m,2H),2.13(dd,J=14.8,2.8Hz,1H),2.01(m,1H),1.89−1.71(m,4H),1.69(s,3H),1.65(m,1H),1.59−1.42(m,4H),1.32−1.21(m,2H),1.20(d,J=6.9Hz,3H),1.14(m,1H),1.06(m,1H),0.99ppm(d,J=6.5Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重ベンゼン): δ=170.9,170.4,144.5,135.9,133.2,133.1,132.2,128.5,126.1,124.3,109.3,78.2,76.0,75.9,75.5,75.0,51.2,45.2,44.8,43.8,42.7,41.6,40.9,39.9,33.4,32.9,32.2,24.5,22.1,16.6,14.7ppm; HRMS(ESI):m/z 計算値:549.3187[(M+Na)
+];実測値:549.3187.
【0114】
[実施例9] 化合物XIIIの合成
【化28】
【0115】
ケトンXI(7.3mg,0.014mmol)と1-tert-ブチル-5-メタンスルホニル-1H-テトラゾール(28.6mg,0.140mmol)のテトラヒドロフラン溶液1mLを−78°Cに冷却した後、この溶液にナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液,0.140mL,0.14mmol)をゆっくり滴下した。反応溶液を85分間かけてゆっくりと−17°Cまで昇温した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を瀘別し、瀘液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Fuji Silysia BW-300 silica gel;展開溶媒:5%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物XIII(7.3mg,収率100%)を無色液体として得た。
【0116】
[α]
25D=−22.4(c=0.36,クロロホルム); IR(薄膜):2929,1740,1431,1368,1326,1254,1214,1179,1154,1091,1045,975,946,894,680cm
−1;
1H−NMR(600MHz,重クロロホルム):δ=6.49(dd,J=14.5,6.2Hz,1H),6.33(dd,J=14.5,1.1Hz,1H),5.48(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),5.12(m,1H),5.07(dd,J=15.1,9.6Hz,1H),4.729(s,1H),4.726(s,1H),3.74(m,1H),3.23(m,1H),3.15(m,1H),3.07(m,1H),2.53(m,1H),2.51(dd,J=14.1,10.3Hz,1H),2.46(dd,J=14.1,3.4Hz,1H),2.31(dddd,J=16.2,7.2,6.9,1.7Hz,1H),2.22(app.d,J=12.7Hz,1H),2.11(app.d,J=13.1Hz,1H),2.04(app.d,J=12.7Hz,1H),1.99(app.d,J=13.1Hz,1H),1.77−1.70(m,2H),1.62(m,1H),1.50−1.40(m,3H),1.37(m,1H),1.25−1.01(m,6H),0.91ppm(d,J=6.8Hz,3H);
13C−NMR(150MHz,重クロロホルム):δ=170.8,143.8,142.9,136.0,131.7,109.5,79.5,79.3,76.0,75.7,75.2,74.7,44.2,43.0,41.4,41.1,40.6,39.8,32.9,32.4,31.6,23.9,21.7,14.3ppm;HRMS(ESI):m/z 計算値:537.1472[(M+Na)
+];実測値:538.1499.
【0117】
[試験例1]エグジグオリドのヒト培養がん細胞パネルによる薬剤感受性試験
方法
財団法人癌研究会癌化学療法センター分子薬理部 矢守教授に依頼して、39系のヒト培養がん細胞パネルを用いたin vitro 薬剤感受性試験により、エグジグオリドの制がん効果を調べた。
【0118】
試験は、肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系、及びメラノーマ1系の計39系のがん細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日所定の濃度のエグジグオリドを含む検体溶液を添加し、2日間培養した後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。測定結果をコンピュータに入力し、GI
50、TGI、LC
50の3種類のパラメータを指標として、エグジグオリドに対する各細胞の感受性パターン(増殖率及びフィンガープリント、後述)を解析した。各データは、細胞増殖阻害を示す公知の化合物に対する感受性との比較解析も行った。
【0119】
増殖率(%)は、各細胞ごとにPercent Growthの値を薬剤濃度(対数)に対してプロットして臓器がん別にまとめた(
図3:Dose-Response曲線)。各曲線が増殖率50%、0%、−50%の横線と交わる点の濃度がそれぞれLog GI
50、Log TGI、Log LC
50に相当する。
【0120】
また検定したすべての細胞株についてLog GI
50の平均値を求め、この平均値と個々の細胞でのLog GI
50値との差(つまり個々の細胞でのGI
50が平均値の何倍あるいは何分の一かが対数値で示される)を求め、それらを平均Log GI
50値を中心(目盛0)として左右に棒グラフで描き、フィンガープリント(Finger Print:
図4)を作成した。感受性が高い細胞株ほど右側に長くバーが伸びる。
【0121】
結果
結果を
図2〜4に示す。下表1及び表2はその抜粋である。表1に示されるように、ヒト肺がん細胞株NCI-H460(human lung large cell carcinoma)とA549(human lung adenocarcinoma)、ヒト卵巣がん細胞株SK−OV−3(human ovarian carcinoma)、及びヒト胃がん細胞株MKN−74(human gastric carcinoma)について、エグジグオリドに対する顕著な感受性が認められた。
【0122】
【表1】
【0123】
NCI-H460、A549、及びSK−OV−3細胞株に対して、エグジグオリドはマイクロモル以下のGI
50で増殖を阻害した。構造が類似するブリオスタチン1のNCI-H460、A549、及びSK−OV−3細胞株に対する抗増殖活性は、それぞれ−5.6、−5.4、及び−5.3であることが知られており(National Cancer Institute データベース http://dtp.nci.nih.gov/branches/btb/ivclsp.html)、エグジグロリドはヒトがん細胞株に対してブリオスタチン1の10〜1000倍の増殖阻害活性を示すことが確認された。
【0124】
エグジグオリドは、表2に示す3種の薬剤:ピラルビシン、マイトマイシンC、SM−5887とわずかな相関が認められたが、100以上のそれ以外の薬剤との相関はみとめられなかった。このことから、エグジグオリドは既存の抗がん剤とは異なる作用機序で細胞の増殖を阻害している可能性が示唆された。
【0125】
【表2】
【0126】
[試験例2] 新規マクロライド化合物の抗増殖活性試験
方法
実施例に示したエグジグオリドとその類縁体の抗増殖活性を、肺がん由来であるA549及びH460細胞株、およびヒト神経膠芽腫細胞由来であるA172細胞株を使用して調べた。各細胞株は10%ウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地(H460細胞株とA172細胞株の場合)、又は10%ウシ胎児血清を添加したDMEM培地(A549細胞株の場合)を用いて維持した。増殖期にある細胞を96ウェルプレートにトリプリケート(n=3)で播種し、72時間、種々の濃度の化合物の存在下で培養した。培養終了時に、培地の1/10量のAlamarBlue溶液(インビトロジェン)を加え3時間静置した。蛍光強度をFluoroskan Ascent(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用して測定した。ヒトさい帯静脈内皮細胞(HUVECs)は正常細胞対照群として使用した。相対蛍光強度を対象群の強度に対する実験群の強度として求めてプロットし、それぞれのがん細胞において50%増殖阻害(IC
50)を達成する化合物濃度を、GraphPad Prismソフトウェアを使用したStandard slopeの非線形回帰モデルによって算出した。
【0127】
結果
結果を
図5(A、B)及び
図6に示す。(−)エグジグオリドのIC
50は、H460では0.28μM、A549では0.59μM、A172では0.46μM。そのほかの類縁体(analogue1-8)のIC
50は、2〜100μMの範囲であった。一方、HUVECsに対するIC
50はがん細胞のそれに比べ約10倍高かった。
【0128】
類縁体のなかでは、とくに類縁体1,4,7について顕著な細胞増殖抑制効果が認められた。類縁体の増殖抑制効果は(-)エグジグオリドと遜色なく、また積極的に細胞死を誘導している所見があった(データは示していない)。増殖抑制のみならず、細胞死を誘導する類縁体は、抗癌剤としての有用性が高い可能性がある。
【0129】
[試験例3] 新規マクロリド化合物の細胞周期停止効果
エグジグオリドの細胞周期停止作用を検討した。H460細胞株に対してエグジグオリド1μMを暴露し、各細胞周期の割合をフローサイトメーターによって測定した。DNA染色試薬にはヨウ化プロピディウムを使用した。またA549細胞株に対して、エグジグオリド(0.01μM〜5μM)を72時間暴露し、細胞周期制御因子であるRbの活性をウエスタンブロッティングにて測定した。
【0130】
結果を
図7に示す。エグジグオリドに暴露すると、細胞周期G1の割合が一貫して上昇している。これは細胞周期がG1で停止していることを示唆する。またG1を制御する蛋白質であるRbはエグジグオリドの濃度に応じてリン酸化が低下し、活性が落ちていると考えられた。これらの結果から、エグジグオリドはRb蛋白質の制御を通じて、細胞周期をG1で停止させ細胞増殖抑制効果を発揮すると考えられた。
【0131】
[試験例4] 新規マクロリド化合物のin vivo腫瘍縮小試験
ヒト肺癌細胞(H460、A549等)を免疫不全マウス(BALB/cAJcl-nu/nu)皮下に接種した。皮下腫瘍容積が約200mm
3になった段階で、エグジグオリド投与群(n=2)と対照群(n=4)に無作為に割付し、投与群にはエグジグオリド0.2mg/kgを、対照群にはPBS(200μl)とDMSO(5〜10μl)を毎日腹腔内投与(1日1回)した。観察は、H460細胞株については15日間、A549細胞株については25日間行い、皮下腫瘍を体表より確認し、腫瘍径変化をノギスで測定した。A549細胞株について、H460細胞株よりも長く観察を行ったのは、A549細胞株はH460細胞株よりも腫瘍の増殖が遅いためである。観察終了後、マウスをハロセンにて安楽死させ、腫瘍を摘出して腫瘍サイズおよび重量、病理所見を観察した。
【0132】
結果を
図8(H460)及び
図9(A549)に示す。図の縦軸(Relative volume)は、腫瘍の長径をa、短径をbとしたときの(a×b
2) / 2=推定腫瘍体積を、day0における各群の推定腫瘍体積に対する相対値として示したものである。
【0133】
実験終了時における相対腫瘍重量比(投与群/対照群)は、H460では3.35/19.52=0.17(17%)、1.17/3.52=0.33(33%)だった。一般に、相対腫瘍重量比が50%未満であれば抗腫瘍効果ありと認められる。以上の結果より、エグジグオリドは特定のがん細胞株について顕著な抗腫瘍効果を有することが確認された。
【0134】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。