(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773509
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】安定化された生物学的に利用可能な可溶性ケイ酸塩溶液
(51)【国際特許分類】
C01B 33/32 20060101AFI20150813BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20150813BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20150813BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20150813BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150813BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20150813BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150813BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20150813BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20150813BHJP
C05D 9/00 20060101ALI20150813BHJP
C05C 9/00 20060101ALI20150813BHJP
A23L 1/304 20060101ALI20150813BHJP
A23L 1/30 20060101ALI20150813BHJP
A01G 31/00 20060101ALI20150813BHJP
A23K 1/10 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
C01B33/32
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/42
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/16
C02F1/68 510B
C02F1/68 520N
C02F1/68 520G
C02F1/68 530B
C05D9/00
C05C9/00
A23L1/304
A23L1/30 Z
A01G31/00 601A
A23K1/10 Z
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-501764(P2013-501764)
(86)(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公表番号】特表2013-530109(P2013-530109A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2011054556
(87)【国際公開番号】WO2011120872
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】10162186.0
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10158686.5
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507416850
【氏名又は名称】タミンコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーズ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】デミュインク、マルク
(72)【発明者】
【氏名】デ セーガー、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ラバス、ジャン − ミシェル
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−508349(JP,A)
【文献】
特表2003−519068(JP,A)
【文献】
特開平04−059614(JP,A)
【文献】
特開2002−193837(JP,A)
【文献】
特開2009−055832(JP,A)
【文献】
特表2005−520822(JP,A)
【文献】
EUROPEAN FOOD SAFETY AUTHORITY,CHOLINE-STABILISED ORTHOSILICIC ACID ADDED FOR NUTRITIONAL PURPOSES TO FOOD SUPPLEMENTS,THE EFSA JOURNAL,2009, 948, 1-23.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
A23K1/00−1/175,1/20−3/04
A01G31/00−31/06
A23L1/27−1/308
A61K9/00−9/72,47/00−47/48
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
C02F1/66−1/68
C05B1/00−21/00
C05C1/00−13/00
C05D1/00−11/00
C05F1/00−17/02
C05G1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属ケイ酸塩を含む、安定な水性ケイ酸塩組成物であって、
少なくとも1つの第1のオスモライト化合物と、少なくとも1つの第2のオスモライト化合物とを含み、
該第1のオスモライト化合物は、グリセロール、ピニトール、ガラクチトール、タリトール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの糖アルコールであり、
該第2のオスモライト化合物は、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体、トリメチルアミン−N−オキシド(TMOA)、これらの塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのN−メチル化化合物であり、
該組成物のpHが10.8を超える、組成物。
【請求項2】
前記糖アルコールが、グリセロールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
肥料、植物保護化合物、殺虫剤、成長調整物質、アジュバント、ミネラル、殺生物剤、洗剤、乳化剤、飼料又は食品添加物、飼料又は食品サプリメント、及びこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の添加剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
多価金属イオンを10mM未満含む、請求項1から3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ケイ素濃度が0.02Mから1.6Mケイ素である、請求項1から4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のオスモライト化合物が、少なくとも1%(w/v)の濃度で存在する、請求項1から5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
総オスモライト濃度が70%(w/v)未満である、請求項1から6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの担体に会合している、請求項1から7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物を少なくとも100倍希釈することによって得られる、安定な希釈ケイ酸塩水溶液。
【請求項10】
pHが5.0から10.0である、請求項9に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液。
【請求項11】
少なくとも1つの担体に会合している、請求項9又は10に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液。
【請求項12】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9又は10に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液を、乾燥粉末が得られるまで蒸発させるステップを含むプロセスによって得られる粉末。
【請求項13】
作物を保護するための、或いは医薬組成物又は化粧用組成物又は食品若しくは飼料サプリメントを調製するための、請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9から11の何れか1項に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液の使用。
【請求項14】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9から11の何れか1項に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するキットであって、
少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1つの第1のオスモライトとを含み、
該第1のオスモライト化合物は、グリセロール、ピニトール、ガラクチトール、タリトール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの糖アルコールである、キット。
【請求項15】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9から11の何れか1項に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するキットであって、
少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1つの第2のオスモライトとを含み、
該第2のオスモライト化合物は、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体、トリメチルアミン−N−オキシド(TMOA)、これらの塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのN−メチル化化合物である、キット。
【請求項16】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9から11の何れか1項に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として用いるためのオスモライト化合物溶液であって、
少なくとも1つの第1のオスモライト化合物を含み、
該第1のオスモライト化合物は、グリセロール、ピニトール、ガラクチトール、タリトール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの糖アルコールである、溶液。
【請求項17】
請求項1から8の何れか1項に記載の安定な水性ケイ酸塩組成物又は請求項9から11の何れか1項に記載の安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として用いるためのオスモライト化合物溶液であって、
少なくとも1つの第2のオスモライト化合物を含み、
該第2のオスモライト化合物は、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体、トリメチルアミン−N−オキシド(TMOA)、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つのN−メチル化化合物である、溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に利用可能な形態のケイ素を含む水性溶液の分野に関する。より詳しくは、本発明は、植物の肥沃化プログラム、又は医薬用、化粧用、若しくは栄養用調製物などで用いるのに適するオスモライトで安定化したアルカリケイ酸塩組成物、並びにオスモライトで安定化したアルカリケイ酸塩を調製するなどのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素(Si)は、地殻においてアルミニウム(Al)に次いで2番目に最も豊富な元素であるが、天然では元素(金属)の形態では見出されない。実際、ケイ素は、酸素を引きつける力が非常に強く、水中において安定で最も優勢な形態で、モノケイ酸(Si(OH)
4)として、4個の酸素に結合している四面体構造を形成する。この弱酸は、9.8という最も低いpKa値を持つ4つの酸官能基を示す。これは、モノケイ酸は、pH9.8では、50%が非解離酸型で、50%がモノイオン性の塩形態(ケイ酸イオン)で存在することを示唆する。他のpKa値は11.8から13.5の間である。これは、非常に強力なアルカリを加えたときだけ、ケイ酸から出発して、4個の酸基全てを解離させて4個のケイ酸イオンにすることができることを意味する。10.8を超えるpH値ではケイ酸塩が優先的に形成される。
【0003】
pH2からpH8の間で、モノケイ酸又はオルトケイ酸は中性の分子である。これはpH2からpH3の間では優先的に無電荷である。3mMを超える濃度で、縮合反応によって重合し始める。したがって、特別な安定化剤を導入しなければ、室温のときに安定である高濃度(>4mM)のモノケイ酸を合成することは不可能である。2つのモノケイ酸分子間で第1の縮合反応をし、水分子を遊離して、ジケイ酸(即ち、二量体である(OH)
3Si−O−Si(OH)
3)が形成される。この二量体が更なる重合反応の決定的な出発分子である。Si濃度、温度、及び他の分子又はイオンの存在に応じて、重合は、三量体、四量体、より大型のオリゴマー(直鎖状若しくは環状)の形成へと進行する。より高濃度では、より大型の直鎖状分子のケイ酸が形成され、これは更に成長し、一緒に縮合し始め、コロイド構造又はシリカを形成する。
【0004】
懸濁液中のこれらの構造は全て、希釈時に加水分解し、水分子を消費して再びより小さな分子が形成される。
【0005】
コロイドが更に重合されると、沈降物又はゲルの形成下で非晶質シリカの形成を生じる。最小の形態のケイ酸(モノ及びジケイ酸)だけが、生物(植物、藻類、地衣類、動物、ヒトなど)にとって生物学的に利用可能である。これらの分子は、土壌水、河川、海、源泉(sources)、海洋などにおいて入手できる。これら生物学的に利用可能な酸の水中ケイ素濃度は低濃度(<3〜5mM)に制限される。特に、植物及び藻類は、これらの酸を生体に必要なシリカに変換し、このシリカは非常にゆっくりと水中に溶解してモノケイ酸となる。
【0006】
最近の10年間で、ケイ酸の他に、モノケイ酸塩及びモノケイ酸塩複合体も生物学的に利用可能な特徴を示すという証拠が存在するに至っている。それにもかかわらず、これら化合物の生物学的利用能を証明するのは困難である。
【0007】
小さなケイ酸分子は、全種類の細胞膜を通じて拡散することができ、モノケイ酸に対し特異なアクアポリン(エントリーチャンネル)又はトランスポータータンパク質が植物及び藻類中に検出された。ケイ酸イオン(モノ又はジケイ酸イオン)が同様の方法で膜に入ることができるのは明らかである。小さなケイ酸とそれから派生するケイ酸イオンとの間の違いを示すのは化学的に困難である。ケイ酸イオンが膜中に入る間にケイ酸に変換される可能性もあるし、或いは別のチャンネルを通って複合体として入る可能性もある。本発明は、それ自身に特異なアクアポリンを有する適合性の溶質がケイ酸塩を細胞膜中に送達することができるという知見に端を発する。
【0008】
ケイ酸及びケイ酸塩は細胞中で様々な活性を遂行する可能性がある。細胞の特異性は、様々な生物体におけるイオン形態で異なり得る。我々は、植物、動物、及びヒトにおいて両方の種類のケイ素が生物学的に利用可能であり、構造的又は生理学的な効果が投与後に検出できると考えている。現在まで、殆どの際立った効果はケイ酸の補充後に検出された。
【0009】
ケイ酸は、水中における天然の生物学的に利用可能なケイ素源である。食物中のケイ素は、様々な形態で存在し、殆どが生物起源ケイ酸、並びにそれとタンパク質及び糖などの巨大分子との複合体として存在する。ケイ酸塩複合体及び不溶性ケイ酸塩も存在することがある。食品中のケイ素含有量とヒトにおけるケイ素の摂取との間には相関はない。従って、ケイ素化合物の生物学的利用能は、重要である。(モノ)ケイ酸以外の殆どの化合物の生物学的利用能は研究されていない。
【0010】
本発明により、オスモライトで安定化した可溶性ケイ酸塩を同等量補充すると、ケイ酸を補充した際と同様の効果を示すことができ、その一方で、安定化されていないケイ酸塩では効果がより低いことが実証された。
【0011】
天然において最も一般的なケイ素の形態は、ケイ酸(モノケイ酸から不溶性シリカまで)及びケイ酸塩である。殆どのケイ酸塩は、土壌ミネラル及び岩石中に存在するアルミノケイ酸塩である。これらの構造は安定であり、物理的な力(機械的及び生物学的な破砕、凍結解凍など)、その後の酸の作用による化学的風化によって破壊されるにすぎない。モノケイ酸は、このような化学的又は生物学的反応からの結果として、新たなケイ酸塩と共に形成され、水中に可溶化される。ケイ酸塩は大部分非常に複雑な構造を形成し、様々なミネラルの混合物を含み得る。ケイ酸塩は、通常強アルカリ条件において、可溶化され溶解される。
【0012】
殆どのケイ酸塩は、pH2から8でのケイ酸よりも、高いpHで水により溶け易い。
【0013】
シリカ(高度に重合化したケイ酸)の水中の溶解度は、一般に200ppm未満である。高度に濃縮したシリカの工業用水において、シリカは、逆浸透法又はイオン交換法を用いて、膜の透過を妨げる沈殿又は析出を抑制するために除去される。従って、これらの技術を用いて精製された飲料水は、ケイ素を殆ど含まないか、全く含まない。
【0014】
シリカ粒子は、その表面上に不規則な負の荷電を示すが、塩の沈降をもたらす本来のアニオンと考えてはならない。これらは、実のところ、ケイ酸として沈降し、ひたすらゆっくりと可溶化する。水を含むシリカ粒子が多いほど(架橋は少なく、より多くのOHが存在する)、シリカ粒子はより容易に再び可溶化する。OH
−及び水が接近することは、重合化したケイ酸及びケイ酸塩が分解してモノケイ酸又はモノケイ酸塩となるのに不可欠である。
【0015】
シリカ粒子は、OH基を含んでいる多糖、タンパク質、フェノールなどの巨大分子を、水素(O−H)結合を通じて、引きつけ、結合する、高度にヒドロキシル化した表面を含んでいる。
【0016】
ケイ酸塩は、シリカから、強アルカリ条件下での、Si−O−Si結合の解離、及びSi−OM(Mは金属イオンである)結合をもたらすSi−OH酸基のイオン化を通じて、工業的に調製される。得られるケイ酸塩の溶解性は、補充されるOH
−イオンの濃度及びSi−O−Si結合の解離の度合いに依存する。シリカ濃度が高いほど、完全に溶解し可溶化するのにより多くのアルカリが用いられ、生物学的利用能に必要とされるモノ及びジケイ酸塩がより高濃度でもたらされる。
【0017】
最も興味深い可溶性ケイ酸塩はアルカリ金属ケイ酸塩であり、好ましくはケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムである。これらは、精製したシリカから合成され、特にモノケイ酸塩及びジケイ酸塩を放出するアルカリ条件下で高度に可溶性である。
【0018】
このような溶液は、通常ケイ酸アニオンの混合物を含んでいる。これら全てのアニオンの構成単位は、モノケイ酸と同様に、中央にケイ素原子及び四角錐の隅に酸素を有する四面体のアニオン:SiO
44−である。これは単量体のケイ酸アニオン(モノ又はオルトケイ酸アニオン)である。水素イオン、カリウムイオン、又はナトリウムイオンは各酸素と会合している。重合化すると、四面体は、Si−O−Si結合によって相互に連結する。非共有の酸素原子の負電荷は、ケイ酸塩構造の間隙中にランダムに間隔をおいて配置されているアルカリカチオンの存在によってバランスが取られる。
【0019】
ケイ酸塩はシリカから生成されるので、シリカの重合度、添加した水酸化アルカリの濃度、及び分解の程度に応じて様々な構造が存在する。分解すると、可溶化したケイ酸塩は分子種の分化を生じる。溶液中のケイ酸アニオンの混合物は、一般式
xSiO
2:M
2O
によって表されるモノ、ジ、トリ、及びより多くの直鎖状、環状、及び3次元のケイ酸アニオン構造を示し、式中、Mはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、又はカリウム)であり、xはシリカの金属酸化物に対するモル比(MR)を表し、アルカリ金属酸化物1モルあたりのシリカのモル数を規定している。モル比が高いほど、ケイ素の網目構造中に存在するアルカリ金属イオンは少なく、ケイ酸塩のアルカリ性は低い。工業的応用では、重量比が示され(WR)、これはMRから導かれる。ケイ酸カリウムではMR=1.56WRである。ケイ酸カリウムは、殆ど、1.3から2.5の範囲の重量比で生成される。
【0020】
水性のアルカリ溶液中では、モノマー、オリゴマー、及びポリマーのケイ酸イオンの混合物が形成され、これらは動的平衡状態にある。このxの比率がアニオンの分配に影響を及ぼす。比率が低いと(<2)モノ及びジケイ酸塩並びに小さなオリゴマーの濃度は高くなり、比率が高いと(>2.2)、構造はより複雑になり、より大きな環及びポリマーになる。濃縮された生成物のpH値は通常10から13の間である。pH11〜12を超えると、不溶性の非晶質シリカのない、単量性及び重合性ケイ酸イオンの安定な溶液が得られるが、pHが9まで低くなると可溶性は急速に低下する。このpH未満では、不溶性ケイ酸塩の他には、非常に低率で単量性ケイ酸アニオンとして存在するにすぎない。ポリマー又は非晶質のシリカゲルが形成され、これらは3次元の網目構造の隙間からアルカリイオンが失われていることを特徴とする。
【0021】
濃縮されたケイ酸塩溶液を水で希釈することにより、ケイ酸塩構造の新たな分配を生じる。希釈溶液のpHは低下し、ケイ素濃度に応じて不溶性ケイ酸塩が形成される。希釈されたケイ酸塩溶液のpHの低下は、ケイ酸塩の緩衝効果及びそのpK値が10から13の間であることにより、予想され得るほどではない。ケイ酸塩はゆっくりと沈降し、又は重合化する。
【0022】
希釈された試料での酸の添加は、濃縮ケイ酸塩溶液(>0.1M Si)から出発してケイ酸を形成するのに必要である。ケイ酸アニオンは、pH8を超えると、OHを含有する巨大分子と複合体を形成することができる。可溶性ケイ酸塩は、全ての種類の水及び媒体中に存在する多価カチオンと反応することもでき、これらイオンの消費により、対応する不溶性金属ケイ酸塩が形成され、生物学的利用能の低下がもたらされる。
【0023】
以下の可溶性ケイ酸塩がEU規制にしたがって登録されている:
ケイ酸ナトリウム(NaO:xSiO
2)、
メタケイ酸二ナトリウム、無水、
メタケイ酸二ナトリウム、五水和物、
メタケイ酸二ナトリウム、一水和物、
ケイ酸カリウム(K
2O:xSiO
2)、
ケイ酸リチウム(Li
2O:xSiO
2)。
【0024】
ケイ素は、生存する全ての生物体にとって必須元素であるとはまだ完全に認められていないが、植物、微生物、動物、及びヒトに有益な効果があるとの十分な証拠が存在する。
【0025】
有益な効果は、非生物的及び生物的なストレスに曝された植物において特に顕著である(Epstein E.(1999年)Silicon Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology、50巻、641〜664頁)。Epstein及びBloomは、植物がケイ素を組み入れるための必須元素の定義を改変さえした(Epstein E.及びBloom A.J.(2005年)Mineral Nutrition of Plants Principles and Perspectives;第2版、Sunderland、M A、USA;Sinauer associates)。植物の地上部分では、ケイ素濃度は乾燥重量の0.1%から10.0%まで変化する。ケイ素の取込み及び輸送においては違いがあり、ケイ素取込みに関する植物の分類がもたらされる。能動的取込み及びケイ素の蓄積を示す植物が存在し(いくつかのカヤツリグサ科及びイネ科の植物、例えば、イネ、コムギ、ドクムギ、及びオオムギ)、他の群はケイ素の受動的な拡散を許容するが(キュウリ、メロン、イチゴ、及びダイズなどのいくつかの双子葉類)、その一方で、一部の双子葉類はケイ素を排除さえする(例えば、トマト及びマメ)。ケイ素のトランスポーターは、イネにおいて、根及び導管への積み込みを担うことが同定された。他の単子葉類又は双子葉類におけるSiの取込み及び輸送に関しては殆ど情報がない。能動的及び受動的メカニズムの両方がSi蓄積性植物におけるSiの取込み、及び輸送で作動することが示された(Epstein E.(2009年)Annals of Applied Biology、155巻、155〜160頁;Kvedaras O.L.ら(2009年)Annals of Applied Biology、155巻、177〜186頁;Liang Y.C.ら(2007年)Environmental Pollution、147巻、422〜428頁;Brunings A.M.ら(2009年)Annals of Applied Biology、155巻、161〜170頁)。
【0026】
本発明者らは、強力に酸性化したケイ酸塩での毎週の葉面散布処理を用いて、ケイ素蓄積性植物、ケイ素拡散植物、及びケイ素拒絶性植物でいくつかの実験を行い、保証されたケイ酸(0.02mg/mlSiを含む溶液)での葉面処理をもたらした。
【0027】
これら全ての試験において、成長、生産、感染に対する抵抗性、果実の色;保存寿命などに対する明らかな効果が得られ、ケイ素は、実際に、葉面処理を利用して全ての植物においてケイ酸として取り込まれることを示した。科学者の中には葉面処理技術を拒絶し、根部改善技術のみを信じる者もある。
【0028】
一般的に、文献において発表されたケイ素肥沃化の実験は、土壌と混合された固体(例えば、ケイ酸カルシウム及びケイ酸ナトリウム)、或いは多価ミネラル及び他の不純物を含むプロセス水(pH<9)での適切な希釈化を伴う土壌潅漑又は土壌混合技術を利用する、可溶化したケイ酸塩溶液(例えば、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウム)のいずれかを用いて行われた。1mMから100mMの間のケイ素濃度が通常用いられる(1mMSi=28マイクログラムSi/ml)。葉面処理は頻繁には用いられないが、同様の濃度が適用され、この葉面処理は実験室内の実験では有効性が低いと考えられる。土壌肥沃化の間、ケイ酸塩は根の周囲に非常に長く留まり、ゆっくりと溶解するが、葉面処理したケイ酸塩の場合では、ケイ素を含む薄い水フィルムが急速に乾燥する。
【0029】
殆どの著者は、ケイ酸塩ではなくモノケイ酸が有効成分であると主張している。希釈したケイ酸塩の濃度が、生物学的に利用可能な化合物であることが確認され、証明されているケイ酸に完全に変換されているのを示すのは困難であるか、全く不可能である。第一に、希釈するとpHの大幅な低下をきたし重合シリカを生じる。普遍的に存在する多価の金属イオンは不溶性ケイ酸塩の形成をもたらし、濃縮Si溶液pH>12から出発してプロセス水pH>6で十分なプロトンを欠くため、ケイ酸の完全な形成が阻害される。−OH含有天然化合物との複合体形成が起こり得る。
【0030】
本発明は、高度に濃縮した可溶性ケイ酸塩溶液中に選択されたオスモライトを含有する混合物を用いて、おそらくケイ酸イオンをその濃縮形態及び希釈中において重合化から保護する新たな配合組成をもたらし、これは希釈後にケイ酸に匹敵する高い生物活性を示す。
【0031】
ケイ素は、植物において様々な非生物的及び生物的なストレスに対する耐性を付与する。ケイ素は、真菌又は細菌の侵入を阻害する細胞壁における重合化によって生物起源シリカとして蓄積するだけではなく、木部の流動性を保護し、毒性金属を中和し、塩分及び干ばつに対抗し、膜の構造、完全性、及び機能に影響を及ぼし、脂質の過酸化を阻害し、栄養のバランスを改善し、野菜及び果実の保存寿命を増大したりする。
【0032】
最近の20年間で、植物、動物、及びヒトにおけるケイ素の恩恵を示す何百もの出版物がある(Robberecht H.ら(2009年)、Science of the Total Environment、407巻、16号、4777〜4782頁;Sripanyakorn S.ら(2009年)、British Journal of Nutrition、102巻、6号、825〜834頁)。それにもかかわらず、適切な濃度、最善且つ最も安いケイ素化合物種の形成、適用する際の最適pH、主要な作用の決定、及び他の化合物との相乗効果はまだ提示されていない。ある種のケイ素組成物の植物における生物学的活性を実証するための簡単な試験さえ存在しない。
【0033】
要約すると、Siは現在、植物に不可欠な栄養素と考えられており、微生物、動物、及びヒトにおける有益な効果について十分な証拠が存在する。ケイ素は、非生物学的及び生物学的ストレスに曝された植物に特に有益である。ここ10年間で、モノ及びジケイ酸の他に、ケイ酸塩及びケイ酸塩複合体も、ある程度まで生物学的に利用可能なケイ素の供給源であり得る証拠が見られるようになっている。
【0034】
ケイ酸又はケイ酸塩を用いることの障害は、これらには急速に沈降及び重合化する傾向があり、それによってこれらの生物学的利用能が低減することである。ケイ酸塩は、強アルカリ条件でのみ可溶性である。pH<9.5では、モノケイ酸は急速に重合化し、三量体、四量体、及びより大型の直鎖状又は環状オリゴマーを形成する。より高濃度では、ケイ酸のより大型の直鎖状分子が形成され、これは更に成長し、コロイド構造へと凝縮し始める。このコロイドが更に重合化し、沈殿物又はシリカゲルとして非晶質シリカが形成される。水中でケイ酸として生物学的に利用可能なケイ素は、<3〜5mMの濃度にすぎない。
【0035】
可溶性ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩である。これらは精製シリカから合成され、アルカリ条件下で高度に可溶性で特にモノ及びジケイ酸塩を放出する。ケイ酸塩の工業的製造では、濃縮されたケイ酸塩溶液を生じ、これは適当に希釈する必要がある。しかし、これらの濃縮ケイ酸塩溶液はあまり安定ではなく、その希釈液もあまり安定ではない。希釈するとpHは低下し、ケイ素濃度及び多価金属イオンの存在に応じて不溶性ケイ酸塩が形成される。水又は媒体などからの多価カチオンとの反応により、対応する金属ケイ酸塩の沈降が引き起こされることがあり、それによってその生物学的利用能は低減される。
【0036】
生物学的に利用可能であるケイ素を得るための一つの方法は、国際特許出願第WO2003/077657号に記載されている。ここでは、オルトケイ酸などのケイ酸を、非常に低いpHとし遊離のヒドロキシル基がない塩基性化合物で穏やかにアルカリ化して2未満のpHとして使用することが記載されている。調製物中にケイ酸塩は存在しない。これは完全なケイ酸での手法である。
【0037】
生物学的に利用可能であるケイ素を得るための一つの方法は、国際特許出願第WO2001/047807号に記載されている。この特許は、非毒性の溶媒(液体)の存在下でケイ酸塩を加水分解してpH0〜4の溶液にすることによってオルトケイ酸を生成することを記載している。ケイ酸溶液の生成にオスモライトは言及されてなく、必要とされてもいない。これもやはりケイ酸での手法である。
【0038】
このように、当技術分野においては、それから高濃度物質を容易に得ることができる、ケイ酸塩などの安価なバルク材料から、濃縮形態及び希釈形態の両方において安定性が高い、生物学的に利用可能なケイ素溶液を生成することに対する明らかな要求がある。濃縮ケイ素溶液をあらゆるタイプの水で希釈することに対する要求もある。実際に、希釈すると、アルカリで可溶化したケイ酸塩の安定性は、媒体の組成に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明の目的は、生物学的に利用可能なケイ酸塩を生物体に提供するための良好な組成物、及び生物学的に利用可能なケイ酸塩組成物を調製するための良好な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記の目的は、本発明による組成物、方法、及び使用によって達成される。
【0041】
本発明は、アルカリ金属ケイ酸塩を含む安定な水性ケイ酸塩組成物であって、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1のオスモライト化合物と、N−メチル化化合物から選択される少なくとも1つの第2のオスモライト化合物とを含むことを特徴とする、組成物に関する。アルカリ金属ケイ酸塩が生物学的に利用可能なケイ素の供給源となるために可溶化されていることが不可欠である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によると、アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される。本発明の利点は、溶解されるケイ酸塩が、アルカリ金属ケイ酸塩であり、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物の安定化した溶解状態を実現することである。
【0043】
本発明の重要な一つの特徴は、アルカリ金属ケイ酸塩が、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物内で、最小限で2つのオスモライトで安定化されることである。その結果、安定な水性ケイ酸塩組成物は室温で少なくとも1年安定である。更に、ケイ酸塩が溶解した状態であり、組成物は、植物、微生物、動物、及びヒトなどの生存する生物体の健康上の利益のために生物学的に利用可能なケイ素の供給源となる。
【0044】
驚くべきことに、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物は、植物にとって生物学的に利用可能なケイ素の供給源を提供し、作物に適用した場合、殺菌剤の比率が低減し、殺菌剤の殺菌効率が増強し、作物の収量が増大し、収穫した作物の品質パラメータが改良されるといった驚くべき効果がある。
【0045】
本発明の一の利点は、安定な水性ケイ酸塩組成物が非常に用途が多いことである。したがって、この安定な水性ケイ酸塩組成物は、栄養サプリメント、治療用組成物、化粧用組成物、肥料、又は植物保護組成物などの全範囲の生産物に適用し、又は加えることができる。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態によると、糖アルコールは、グリセロール、ピニトール、ガラクチトール、タリトール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、安価で広範囲に利用でき、容易に適用できる生成物であるグリセロールを用いる。
【0047】
本発明の別の好ましい一実施形態によると、N−メチル化化合物は、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体、トリメチルアミン−N−オキシド(TMOA)、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される。
【0048】
安定な水性ケイ酸塩組成物は、任意選択によって、タウリン、クレアチン、コリン−o−硫酸塩、グリセロホスホリルコリン、ジグリセロール−ホスフェート、トリメチルグリシンのスルホニオ類似体、ジメチルスルホニオプロピオネート、エクトイン、ヒドロキシルエクトイン、プロリン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタメート、スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、マルトース、トレハロース、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される第3のオスモライト化合物を更に含むことができる。
【0049】
安定な水性ケイ酸塩組成物は、任意選択によって、肥料、植物保護化合物、殺虫剤、成長調整物質、アジュバント、ミネラル、殺生物剤(biocide)、洗剤、乳化剤、飼料又は食品添加物、飼料又は食品サプリメント、及びこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の添加剤を更に含むことができる。従って、好都合なことに、本発明の組成物は、生物学的に利用可能であるケイ素を提供するだけではなく、上記に列挙した第4の化合物などの他の保護化合物又は成長を支持する化合物も提供することができるため、植物に対して複数の健康上の利益をもたらす組成物である。
【0050】
安定な水性濃縮ケイ酸塩組成物内の多価金属イオンの濃度は、溶解しているケイ酸塩の長期の安定性を支持するために、10mMより低く、且つ/又は組成物のpHが10.8を超えるのが好ましい。
【0051】
また、組成物のケイ素濃度は、0.02Mから1.60Mケイ素であることが好ましい。
【0052】
第1のオスモライト化合物は、少なくとも1.0%(w/v)の濃度で存在することが好ましい。組成物中に含まれる全てのオスモライトの総オスモライト濃度が70.0%(w/v)未満であることが好ましい。
【0053】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、1つ又は複数の担体と会合しており、例えば、非毒性の担体上若しくはゴム上に吸着されたり、又は増粘剤若しくはビーズなどの担体上に吸着されている。
【0054】
本発明はまた、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物を、少なくとも100倍、任意選択によって少なくとも250倍、任意選択によって少なくとも500倍、任意選択によって少なくとも750倍、又は任意選択によって少なくとも1500倍希釈することによって得ることができる安定な希釈ケイ酸塩水溶液に関する。
【0055】
本発明の一つの利点は、本発明の組成物などの高度に濃縮した可溶性ケイ酸塩溶液中に選択されたオスモライトを含む混合物を用いることによって、ケイ酸イオンが濃縮形態においてのみならず希釈後も重合化から保護され、希釈後も高い生物学的活性を示すことである。
【0056】
本発明の一つの利点は、安定な希釈ケイ酸塩水溶液が、植物、微生物、動物、及びヒトなどの生存する生物体に健康上の利益を付与するのに適することである。
【0057】
好都合なことに、希釈は、飲料水(例えば、動物用飲料水)などの利用可能なあらゆるタイプの水で行うことができる。希釈液は、ヒト又は動物が消費するための食品と混合することもできる。
【0058】
安定な希釈ケイ酸塩水溶液のpHは、5.0から10.0であることが好ましい。
【0059】
好ましい一実施形態において、本発明の安定な希釈ケイ酸塩水溶液は、1つ又は複数の担体と会合しており、例えば、非毒性の担体上若しくはゴム上に吸着されたり、又は増粘剤若しくはビーズなどの担体上に吸着されている。
【0060】
本発明は更に、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物又は本発明の安定な希釈ケイ酸塩水溶液を、乾燥粉末が得られるまで蒸発させるステップを含むプロセスによって得られ得る粉末に関する。
【0061】
本発明によるこの粉末が、貯蔵、輸送、販売、及び取扱いが容易であることは一つの利点である。重量が軽く、必要とになるまでの貯蔵が容易であり、入手可能なあらゆるタイプの水に所望の濃度で再生する利点を提示できるので、粉末は、消費者が手軽に使える形態でもある。
【0062】
本発明はまた、作物を保護するための、或いは医薬組成物又は化粧用組成物又は食品若しくは飼料サプリメントを調製するための、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物、又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液の使用に関する。それゆえ、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物は、生物学的に利用可能なケイ素を生存する生物体に提供するのに用いることができる。
【0063】
本発明はまた、安定な水性ケイ酸塩組成物を調製するための方法に関する。
【0064】
本発明は更に、作物の表面の少なくとも一部分に、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物の有効量を適用することによって、作物を保護するための方法に関する。
【0065】
本発明は更に、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物、又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するキットであって、少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩、並びに尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1のオスモライトを含む、キットに関する。
【0066】
任意選択によって、このキットは、N−メチル化化合物から選択される第2のオスモライト化合物も含むことができる。
【0067】
任意選択によって、キットは、タウリン、クレアチン、コリン−o−硫酸塩、グリセロホスホリルコリン、ジグリセロール−ホスフェート、トリメチルグリシンのスルホニオ類似体、ジメチルスルホニオプロピオネート、エクトイン、ヒドロキシルエクトイン、プロリン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタメート、スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、マルトース、トレハロース、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される第3のオスモライト化合物も含むことができる。
【0068】
本発明は更に、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物、又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するキットであって、少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩、及びN−メチル化化合物から選択される少なくとも1つの第2のオスモライトを含む、キット関する。
【0069】
任意選択によって、このキットは、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される第1のオスモライトも含むことができる。
【0070】
任意選択によって、キットは、タウリン、クレアチン、コリン−o−硫酸塩、グリセロホスホリルコリン、ジグリセロール−ホスフェート、トリメチルグリシンのスルホニオ類似体、ジメチルスルホニオプロピオネート、エクトイン、ヒドロキシルエクトイン、プロリン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタメート、スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、マルトース、トレハロース、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される第3のオスモライト化合物も含むことができる。
【0071】
本発明は更に、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物、又は安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として用いるためのオスモライト化合物溶液であって、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1のオスモライト化合物を含むことを特徴とする、オスモライト化合物溶液に関する。
【0072】
任意選択によって、このオスモライト化合物溶液は、N−メチル化化合物から選択される第2のオスモライト化合物も含むことができる。
【0073】
任意選択によって、このオスモライト化合物溶液は、タウリン、クレアチン、コリン−o−硫酸塩、グリセロホスホリルコリン、ジグリセロール−ホスフェート、トリメチルグリシンのスルホニオ類似体、ジメチルスルホニオプロピオネート、エクトイン、ヒドロキシルエクトイン、プロリン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタミン酸塩、スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、マルトース、トレハロース、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される第3のオスモライト化合物も含むことができる。
【0074】
本発明は更に、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物、又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として用いるためのオスモライト化合物溶液であって、N−メチル化化合物から選択される少なくとも1つの第2のオスモライト化合物を含むことを特徴とする、オスモライト化合物溶液に関する。任意選択によって、このオスモライト化合物溶液は、尿素、及び糖アルコール、及びこれらの組合せから選択される第1のオスモライトも含むことができる。
【0075】
任意選択によって、このオスモライト化合物溶液は、タウリン、クレアチン、コリン−o−硫酸塩、グリセロホスホリルコリン、ジグリセロール−ホスフェート、トリメチルグリシンのスルホニオ類似体、ジメチルスルホニオプロピオネート、エクトイン、ヒドロキシルエクトイン、プロリン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタミン酸塩、スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、マルトース、トレハロース、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、カダベリン、及びこれらの組合せ、及びこれらの塩からなる群から選択される第3のオスモライト化合物も含むことができる。
【0076】
本発明の特定の且つ好ましい態様を、添付の独立及び従属の特許請求の範囲に記載する。
【0077】
本技術分野におけるケイ酸塩組成物には絶え間なく改善、変更、及び発展があるが、本発明の概念は、従来の実践からの逸脱を含む実質的に新規且つ奇抜な改善を提示するものであり、この種の組成物で、より効果的で、安定で、信頼できる組成物を提供し得るものと考えられる。
【0078】
本発明の教示は、溶解したケイ酸塩を提供するための改善された方法及び生成物の設計を許容する。本発明の、上記の、及び他の特徴、特性、及び利点は、添付の図面と組み合わせて理解され、例によって本発明の原理を説明する、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】様々なレベルの殺菌剤1及び/又は本発明による組成物を用いた、3つの異なる圃場試験における、ジャガイモ夏疫病菌(Alternaria solani)に感染したジャガイモの、収量の増加を示すグラフである。
【
図2】ブドウのウドンコ病感染の重症度を示すグラフである:(A)非処理のブドウ;(B)本発明による組成物1L/haで処理したブドウ。
【
図3】様々なレベルの殺菌剤と共に、本発明による組成物0.65L/haを用いない(白バー)又は用いた(斜線バー)3つの異なる圃場試験におけるジャガイモの葉枯れ病感染の低減を示すグラフである。
【
図4】本発明による組成物0.65L/haと共に、3つの異なるプログラムで殺菌剤を噴霧した葉枯れ病感染したジャガイモの収量の増加を示すグラフである。
【
図5】本発明による組成物2L/haを使用せず(白バー)又は使用して(斜線バー)果樹園で行った圃場試験から収穫した果実の質に関する効果を示すグラフである。
【
図6】本発明による組成物2L/haを使用せず(白バー)又は使用して(斜線バー)果樹園において行った圃場試験から収穫した果実の貯蔵病害汚染に対する遅延を示すグラフである。
【0080】
異なる図面において、同じ参照記号は同じ又は類似の要素を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明を、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。図面は概略的に記載するにすぎず、非限定的なものである。
【0082】
特許請求の範囲において用いられる「含んでいる」の語は、その後に列挙する手段に制限されるものと解釈してはならず、他の要素又は工程を除外するものではないことに留意すべきである。したがって、これは言及する特性、ステップ、又は構成成分の存在を特定するものと解釈すべきであるが、1つ又は複数の他の特性、ステップ、又は構成成分、又はこれらの群の存在又は付加を排除するものではない。
【0083】
以下の語は、もっぱら本発明の理解を助けるために提供するものである。これらの定義は、当業者によって理解されるより少ない範囲を有すると解釈してはならない。
【0084】
「ケイ酸塩」は、ケイ酸塩又はケイ酸塩粉末を意味する。
【0085】
「総オスモライト濃度」は、第1の、第2の、及び第3のオスモライト化合物の濃度の合計を意味する。
【0086】
「作物」は、果実、野菜、穀物、マメ科植物、樹木、低木、花、草、根、景観植物、観賞植物、及び作物植物などのあらゆるタイプの植物又は植物の生成物を意味し得る。
【0087】
「作物の保護」は、太陽及び/又は熱の望ましくない作用を防ぎ、且つ/又は低減し、且つ/又は最小にする、本発明の生成物の能力を意味する。作物に対する太陽及び/又は熱の望ましくない作用には日焼け及び熱のストレスが含まれ、その総ては、光合成の間の蒸散を増大し、又は果実、野菜、及び繊維などの植物生成物に視覚的な損傷を引き起こすことがある。作物の保護はまた、本発明の化合物が植物生成物に対する昆虫の蔓延及び/又は損傷を予防し、且つ/又は低減し、且つ/又は最小にする能力も意味する。
【0088】
本開示において用いられる「安定性」の語は、本発明の組成物中の個々のケイ酸塩が、懸濁液中又は容器の底部の癒着物において、重合化(ゾル若しくはゲルの形成)、沈降、凝固又は凝集するのを防ぐことを特に意味する。本開示の実際的な目的では、重合化又は凝固のプロセスが平穏な輸送容器中で知覚できる沈降を形成するのに少なくとも5日かかるほど遅い場合、懸濁液は安定であるとみなされる。
【0089】
第1の態様において、本発明は安定な水性ケイ酸塩組成物に関する。
【0090】
特定の一実施形態において、この組成物は>0.02のケイ素濃度及び>10.8のpHを有し、第1のオスモライト化合物のモル濃度はケイ素のモル濃度の4分の1よりも高い:[第1のオスモライト化合物]>0.25[Si]。
【0091】
第2の態様において、本発明は安定な希釈ケイ酸塩水溶液に関する。
【0092】
特定の一実施形態において、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物は、安定な希釈ケイ酸塩水溶液が得られるように希釈される。希釈は、全ての種類の水、又は溶液、乳液、懸濁液において、或いは清涼飲料、スープ、コーヒー、茶、ジュース、又は牛乳などの飲料において、或いはこれらの組合せにおいて行うことができる。このようにして、安定な希釈ケイ酸塩水溶液は、原核細胞及び真核細胞、植物、動物、及びヒトに対する、生物学的に利用可能なケイ素の供給源となる。
【0093】
安定な希釈ケイ酸塩水溶液のpHは、pH5.0からpH10.0の間が好ましい。例えば、0.55MのSiを含む本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物を500倍希釈した溶液のpHは、例えば、水道水中で希釈した場合には、7.0から8.0の間になるであろうし、例えば、精製水中で希釈した場合には、8.0から9.0の間のpHであろう。
【0094】
特定の一実施形態において、組成物又はその安定な希釈液は、1つ又は複数の担体と会合しており、例えば、セルロース、セルロース誘導体、タンパク質、塩、糖、デンプン、加工デンプン、処理済みデンプン、デンプンのホスフェート及びそのエステル、ヒドロキシプロピルデンプン、及び加水分解したデンプン、並びにこれらの混合物からなる群から選択される非毒性の担体上に吸収され、これらは、溶液、乳液、ゲル、又は懸濁液をもたらす。
【0095】
安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は更に、ゼラチン、コラーゲン、小麦粉、脂肪、穀物、穀粒、糖、ラクトース、マンニトール、多糖、アミノ糖、糖重合体、及びゲル、及びこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤などの1つ又は複数の担体に吸着されるのが特に適している。
【0096】
安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液はまた、アルギネート、アルギネート、セルロース、及びペクチン、並びにこれらの修飾物及びポリマー及び混合物からなる群から選択されるビーズなどの1つ又は複数の担体に吸着されるのも特に適している。
【0097】
特定の一実施形態において、組成物又はその安定な希釈液は、寒天、アルギン酸、ベータグルカン、カラギナン、ダンマル樹脂、グルコマンナン、グアーゴム、アルギン酸ナトリウム、及びザンタンゴム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゴムなどの1つ又は複数の担体上に吸着される。
【0098】
第3の態様において、本発明は粉末に関する。
【0099】
特定の一実施形態において、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物又はその希釈液は、粉末を得るために蒸発させられる。
【0100】
特定の一実施形態において、本発明の粉末は1つ又は複数の担体と会合しており、例えば、非毒性の担体若しくはゴムに吸着されており、又は増粘剤若しくはビーズなどの担体上吸着されている。
【0101】
第4の態様において、本発明は使用に関する。
【0102】
上記の記載から理解できるように、安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は、微生物、植物、動物、及びヒトに適用するための、生物学的に利用可能なケイ素の供給源として広範囲の用途において用いることができる。
【0103】
特定の一実施形態において、安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は、作物の生産において用いられる。溶解したケイ酸塩の他に、この組成物又はその安定な希釈液は、植物保護化合物、殺虫剤、成長調節物質、又は作物の生産に用いられる他の化合物を更に含むことができる。より具体的には、この組成物は、液体肥料などの肥料として、又は葉面処理若しくは点滴灌漑で植物保護化合物として用いることができる。それに加えて、この組成物は、例えば、灌漑流(「施肥灌漑」)において、土壌の施肥灌漑において、又は液体注入によって、混合される。この組成物は、例えば、液体散布機、回転円盤散布機、液滴散布機を用いて、畝間湛水灌漑(furrow and flood irrigation)、表面適用及び流水適用において使用することができる。
【0104】
別の特定の一実施形態において、安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は、軟膏剤、クリーム剤、ミルク、ゲル剤、水ベースの液剤、乳剤、溶液剤、ローション剤、マスク、パッチ剤、噴霧剤、飲料、飲み物、シロップ剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、ソフトゲル剤などの、医薬組成物又は治療用製剤において、又は医薬組成物又は治療用製剤を調製するために用いられる。
【0105】
別の特定の一実施形態において、安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は、化粧用組成物において、又は化粧用組成物を調製するために用いられる。
【0106】
別の特定の一実施形態において、安定な水性ケイ酸塩組成物又はその安定な希釈液は、食品若しくは飼料のサプリメントにおいて、又は食品若しくは飼料のサプリメントを調製するために用いられる。
【0107】
第5の態様において、本発明は、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として使用するためのオスモライト化合物溶液であって、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1のオスモライト化合物を含むことを特徴とする、オスモライト化合物溶液に関する。特定の一実施形態において、オスモライト化合物溶液は、例えば、尿素又は糖アルコール又は両方を含む水溶液であってよく、任意選択によって、N−メチル化化合物から選択される第2のオスモライト化合物が、このオスモライト化合物溶液中に存在し、又はそれに加えられる。
【0108】
好ましい一実施形態において、本発明のオスモライト化合物溶液は、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液を調製するための成分として用いるためのものであって、オスモライト化合物溶液が、N−メチル化化合物から選択される少なくとも1つの第2のオスモライト化合物を含むことを特徴とする。特定の一実施形態において、オスモライト化合物溶液は、例えば、N−メチル化化合物を含む水溶液であってよく、任意選択によって、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される第1のオスモライト化合物が、このオスモライト化合物溶液中に存在し、又はそれに加えられる。
【0109】
N−メチル化化合物は、例えば、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体及びその塩、トリメチルアミン−N−オキシド(TMAO)、並びにこれらの組合せ、並びにこれらの塩からなる群から選択されるN−メチル化化合物である。
【0110】
第6の態様において、本発明は、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するためのキットであって、少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩、並びに尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1のオスモライトを含むキットに関する。
【0111】
任意選択によって、このキットは、N−メチル化化合物から選択される第2のオスモライト化合物も含むことができる。
【0112】
本発明は更に、本発明による安定な水性ケイ酸塩組成物又は本発明による安定な希釈ケイ酸塩水溶液の調製に寄与するためのキットであって、少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩、並びにN−メチル化化合物から選択される少なくとも1つの第2のオスモライトを含むキットに関する。
【0113】
任意選択によって、このキットは、尿素及び糖アルコール及びこれらの組合せから選択される第1のオスモライトも含むことができる。
【0114】
N−メチル化化合物は、例えば、トリメチルグリシン、カルニチン、N−メチルアラニン、トリメチルアミノ−酪酸、プロリン−ベタイン、サルコシン、N−メチル−グリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−メチルアスパラギン酸、アラニン−ベタイン、ヒスチジン−ベタイン、N−メチルタウリン、コリン、コリン誘導体及びその塩、トリメチルアミン−N−オキシド(TMAO)、並びにこれらの組合せ、並びにこれらの塩からなる群から選択されるN−メチル化化合物である。
【0115】
第7の態様において、本発明は、安定な水性ケイ酸塩組成物を調製するための方法に関する。
【0116】
特定の一実施形態において、本発明の安定な水性ケイ酸塩組成物の調製は、最小で2つの選択されたオスモライトでの安定化を伴う。この調製方法は、例えば、以下のステップを伴う。
【0117】
第1に、アルカリケイ酸塩又はシリカ粉末を、強アルカリ水酸化物中で完全に可溶化する。或いは、可溶化したアルカリケイ酸塩を用いてもよい。濃縮ケイ素溶液をこのようにして得、ケイ素濃度は、例えば、3M Siより高い。pHが12.5を超えるまでアルカリ水酸化物でpHを上げるのが好ましい。その後、この強アルカリ性ケイ酸塩溶液を、糖アルコール(例えば、グリセロール)、尿素、又は両方の混合物を含む溶液で希釈する。澄明な溶液が得られる。次いで、第2のN−メチル化オスモライトを加える。この時点で他の任意のオスモライトを加えることができる。好ましくは0.02Mから1.6Mの間のケイ素濃度が得られる。この溶液を室温で維持する。この最終調製物をミネラルウオーター、精製水、又は水道水で20倍以上に希釈すると澄明な溶液がもたらされ、これは、室温で少なくとも2週間安定である。
【0118】
特定の一実施形態において、この方法は、(アルカリ)を除いた、1%より高く、好ましくは5%から20%の間の濃度の植物又は動物起源の可溶性タンパク質又はタンパク質加水分解物を加えるステップを更に含む。タンパク質は、精製水で希釈した後に加える。溶液を蒸発させると、生物学的に利用可能なケイ酸塩を含む粉末を生じる。
【0119】
第8の態様において、本発明は作物を保護するための方法に関する。
【0120】
特定の一実施形態において、作物を、上記に記載した生物学的に利用可能なケイ酸塩の供給源として溶解したケイ酸塩を含む組成物などの本発明の組成物で処理する。特に、作物を、生物学的に利用可能なケイ酸塩の供給源としての溶解したケイ酸塩と、1つ又は複数の植物保護化合物、殺虫剤、成長調節物質、又は作物の生成に用いられる他の化合物とを含む本発明の組成物で処理することもできる。必要とされる量の本発明の組成物を、作物を育成する農地に供給することによって、作物は保護される。
【実施例】
【0121】
例1
ケイ酸カリウム:0.9MSi
グリセロール:10%(v/v)
尿素:20%(w/v)
トリメチルグリシン:5%(w/v)
水に溶解し100vol%とする(pH13.0)
【0122】
例2
ケイ酸カリウム:0.25MSi
グリセロール:25%(v/v)
尿素:5%
トリメチルグリシン:3%
水に溶解し100vol%とする(pH12.3)
【0123】
例3
ケイ酸カリウム:0.5MSi
グリセロール:25%
尿素:20%
硝酸カリウム:6%
トリメチルグリシン:3%
水に溶解し100vol%とする(pH12.9)
【0124】
例4
ケイ酸カリウム:0.5MSi
グリセロール:20%
N−メチル−グリシン:6%
尿素:20%
水に溶解し100vol%とする(pH12.8)
【0125】
例5
ケイ酸カリウム:0.3MSi
グリセロール:20%
尿素:20%
ソルビトール:5%
ジメチルグリシン:5%
硝酸カリウム:5%
水に溶解し100vol%とする(pH12.5)
【0126】
例6
ケイ酸ナトリウム:0.3MSi
グリセロール:10%
トリメチルグリシン:3%
マンニトール:10%
水に溶解し100vol%とする(pH12.4)
【0127】
例7
ケイ酸ナトリウム:0.55MSi
グリセロール:15%
トリメチルグリシン:12%
スクロース:10%
水に溶解し100vol%とする(pH13.0)
【0128】
例8
ケイ酸カリウム:0.55MSi
グリセロール:20%
TMAO(トリメチル−アミン−N−オキシド):6%
トリメチルグリシン:6%
水に溶解し100vol%とする(pH12.8)
【0129】
例9
ケイ酸カリウム:0.25MSi
トリメチルグリシン:6%
L−プロリン:10%
グリセロール:10%
水に溶解し100vol%とする(pH12.5)
【0130】
例10
ケイ酸カリウム:0.5MSi
トリメチルグリシン:6%
グリセロール:20%
塩化コリン:20%
水に溶解し100vol%とする(pH12.9)
【0131】
例11
ケイ酸ナトリウム:0.3M
グリセロール:25%
トリメチルグリシン:6%
ソルビトール:8%
水に溶解し100vol%とする(pH12.3)
【0132】
例12
ケイ酸カリウム:0.3MSi
グリセロール:10%
尿素:10%
トリメチルグリシン:1%
水に溶解し100vol%とする(pH12.9)
【0133】
例13
ケイ酸カリウム:0.3MSi
グリセロール15%
尿素:10%
TMAO(トリメチル−アミン−N−オキシド):1%
ケイ酸リチウム:0.02%Si
水に溶解し100vol%とする(pH12.9)
【0134】
例14
ケイ酸カリウム:0.535MSi
グリセロール:20%(v/v)
トリメチルグリシン:5%(w/v)
尿素:10%(w/v)
水に溶解し100vol%とする(pH12.9)
【0135】
例15
相溶性(compatible)の溶質を含まない組成物を含むケイ酸塩の調製
ケイ酸カリウム(2.15M Si、pH13)を、精製水(pH6.4)、水道水(pH6.6)、ミネラルウオーター(pH7.0)、温室で用いられるプロセス水(pH6.5)、植物栄養混合液で1000倍希釈し、室温で2日間安定化した後、モリブデンブルー法を用いてケイ酸(単量体のケイ酸又はケイ酸塩)の最終濃度を測定した。Siの標準対照としてSiF
6を用いた。精製水での希釈のみが許容値(モノケイ酸又はモノケイ酸塩の検出が60%を超える)をもたらした。他の検出値は50%より低かった。したがって、植物の栄養摂取に用いられた希釈したケイ酸塩は、実際に、可溶化したモノケイ酸塩、重合化したケイ酸塩、及び懸濁液中に沈降したケイ酸塩の混合物であることが明らかである。
【0136】
例16:オスモライトを含まない対照のケイ酸溶液で処理した作物の保水能力
本発明者らは、ケイ酸を含み、オスモライトを含まない対照溶液で処理した植物を注意深く観察し、これにならって試験を展開した。驚くべきことに、本発明者らは、低投与量(1mM未満)のモノケイ酸(溶液1)で処理した(週2回)植物は、対照の植物よりもはるかに長期間水分を保持する葉を発達させることを検出した。葉を収穫し(摘み取り)、室温又は40℃で乾燥させた。結果の解釈は直接的で迅速である。ケイ素適用の間、新しく形成された3週齢から6週齢の植物からの葉を収集し(摘み取り)、プラスチック箔上に注意深く分散させた後、野外(open air)で乾燥させた。対照の(ケイ酸処理していない)葉は、ケイ素処理した葉よりもはるかに速く収縮し、乾燥した。
【0137】
(対照の)ケイ酸溶液を調製するために、最初に、濃縮ケイ酸ナトリウム溶液(pH13.0)を、pHが2.0未満である強酸中で急速に加水分解してケイ酸(0.535M Si)を得た。この濃縮した溶液を直接精製水中に希釈し、安定化のためのオスモライトの非存在下で、重合を阻害するはるかに低い濃度のモノケイ酸及びオリゴマーを含む溶液を得た(溶液1)。同濃度のケイ酸カリウム溶液をプロセス水pH6.5で希釈して、オスモライトを含まないプロセス水中で希釈されたケイ酸塩として0.7mM Siの濃度にした(溶液2)。
【0138】
5週齢の白色セロリ植物を、プロセス水希釈液(溶液2)で、5週間の間週1回処理した(葉面噴霧)。植物3個からの葉をはさみで摘み取り、プラスチック箔上で室温で乾燥させた。1時間を過ぎると、葉は丸まり始めたが、処理した葉はその最初の形状を保っていた。
【0139】
1日後、違いは更に際立つものであった。対照(非処理)及び溶液2処理した植物は収縮し、色は青白くなり辺縁の乾燥は目で見ることができた。一方、溶液1(ケイ酸)処理した植物はその最初の形状及び色を依然として保っていた。
【0140】
例17:例14の組成物で処理した作物の保水能力
例14の組成物を、ケイ素濃度が0.7mMに到達するまで(750倍希釈を意味する)水道水で希釈した。
【0141】
対照の調製物4個を作成した:
【表1】
【0142】
実験は、上記で記載したようにして、セロリ植物で行った。セロリ葉をプラスチック箔上で室温で2日間乾燥させた後、2つの群、即ち、対照1群及び例14の組成物で処理した群の葉が明らかに優れた保水性を示した。非処理群(対照4)は完全に収縮した葉を示した。対照2及び対照3の調製物での処理は、非処理群(対照4)のものと同様に収縮した葉を示したが、葉の辺縁は乾燥がより少なく、緑色がより保たれていた。対照1群と、例14の組成物で処理した群との間には明らかな類似性がある。これらの群において、セロリ葉の形態及び形状は実際に影響を受けておらず、これらの色は最も保持されており、依然として柔軟性であった。この実験は、ケイ酸、及び濃縮したアルカリから調製し、特定の適合性の溶質で安定化した希釈ケイ酸塩の葉面処理は、葉に対して同様の生物学的効果を示すことを示している。ケイ酸単独(対照1)ではオスモライトを必要とせず、オスモライト単独(対照2)では同じ効果を誘発することができない。オスモライトの非存在下では(即ち、対照3)植物の保護的性質が観察されなかったため、この実験は、オスモライトのケイ酸塩溶液に対する添加(即ち、例14の組成物)は、植物に保護的性質を付与するのに不可欠であることも示している。
【0143】
これは、オスモライトで安定化した可溶性ケイ酸塩の適用により、より高い水分保持がもたらされ、したがって植物がこの重大な作用を遂行するための特定の構造を生成するように刺激されていることを示唆する。
【0144】
例18:0.375%の濃度で希釈した例1の組成物の希釈液を用いた圃場試験
例1の組成物を、野菜の乾物含有量を試験するために適用した。この圃場試験では、0.375%の比率で水で希釈した例1の組成物(266倍希釈を意味する)を1区画のセロリに10日間隔で4回葉面噴霧した。収穫時、液汁の収量及び体積を測定した(表1)。固形分の含量は、茎重量と液汁量との間の差として計算する。
【表2】
【0145】
組成物での処理は茎重量を増大しただけではなく、固形分含量も増大させた。固形分の増大により、切断したばかりのセロリの保存寿命の延長が可能になる(更なる評価により、例1の組成物で処理した切断セロリは、非処理の植物に比べて6日間新鮮さを獲得したことが示されている)。
【0146】
例19
ケイ酸カリウム:0.03MSi
コラーゲン加水分解物:20%(w/v)
トリメチルグリシン:5%(w/v)
キシリトール:8%(w/v)
を含む組成物の水希釈液。
pH7.5のこの溶液を、70℃より低い温度で急速に蒸発させて粉末にする。
【0147】
例20
ケイ酸カリウム:0.01MSi
コリン:0.5%(w/v)
マンニトール:2%(w/v)
プロリン:5%(w/v)
カルニチン:2%(w/v)
ホウ酸:0.15%(w/v)
クエン酸:0.1%
セレン酸ナトリウム:0.01%(w/v)
を含む組成物の水希釈液。
pH6.8のこの溶液を、動物用の飲料水で希釈する。
【0148】
例21
ケイ酸カリウム:180mMSi
トリメチルグリシン:0.1%(w/v)
TMAO(トリメチルアミン−N−オキシド):0.9%(w/v)
アスパラギン酸:0.5%(w/v)
尿素:0.2%(w/v)
硝酸カリウム:2%(w/v)
殺菌剤
を含む組成物の水希釈液。
pH6.3のこの溶液を、植物用の肥料及びオスモライト供給源として用いる。
【0149】
例22
例9の組成物1リットルを、セルロース0.5kg及びグアーゴム0.75kgの混合物に吸着させる。得られたペーストを、ケイ素及びオスモライトの供給源として用い、動物飼料と混合する。
【0150】
例23:例12の組成物を用いてジャガイモ夏疫病菌(A.solani)感染したジャガイモを処理する圃場試験
この組成物を殺菌剤の比率を低減するために用いた。
【0151】
圃場試験の結果を
図1に示す:(A)ジラム76WGを1.5kg/haで用い、例12の組成物を用いずに行った圃場試験、(B)ジラム76WGを1.5kg/haで、例12の組成物を0.39L/haで用いて行った圃場試験、(C)ジラム76WGを2.5kg/haで用い、例12の組成物を用いずに行った圃場試験。
【0152】
0.5%の例12の組成物(250倍希釈を意味し、0.39L/haに等しい)を、認可された比率の60%で用いた接触性殺菌剤に添加すると、同レベルの有効性(1.5kg/haの殺菌剤が2.5kg/haのものを代替する)を達成することが認められた。圃場試験は、ジャガイモ夏疫病菌に感染したジャガイモに対して行った。5回処理し、噴霧体積は260L/haである。
【0153】
例24:例12の組成物を用いてエリシフェネカトール(E.necator)に感染したブドウを処理する圃場試験
例12の組成物を、ウドンコ病エリシフェネカトール(Erysiphe necator)に感染したブドウに関する圃場において用いた。7回処理し、噴霧体積は400L/haである。
【0154】
結果を
図2に示す。0.25%(500倍希釈を意味し、1L/haに等しい、)の例12の組成物を単独で噴霧して、ウドンコ病の感染の重症度が54%低減された。
【0155】
例25:例12の組成物を用いて葉枯れ病に感染したジャガイモを処理する圃場試験
例12の組成物を、葉枯れ病(ジャガイモ疫病菌(Phytophtora infenstans))を制御するためにジャガイモに対して行った圃場試験において用い、3つの異なるタイプの殺菌剤(浸透移行性、接触性、治療用)を単独で、及び0.25%の比率の(250倍希釈を意味する)の例12の組成物と組み合わせて適用した。
【0156】
圃場試験の結果を
図3に示す:(A)浸透移行性殺菌剤1(プロパモカルブ72SL)を1.0L/haで用いて行った圃場試験、(B)接触性殺菌剤2(ジラム76WG)を3.0kg/haで用い、例12の組成物を0.39L/haで用いて行った圃場試験、(C)接触性殺菌剤3を2.0L/haで用いて行った圃場試験。
【0157】
0.25%(500倍希釈を意味し、0.65L/haに等しい)の例12の組成物を噴霧混合物に添加すると、殺菌剤のタイプが何であっても、ウドンコ病に対して60%から200%の更なる効能がもたらされた。試験1において、殺真菌剤1は60%の効力を有し、殺真菌剤1+例12の組成物は80%の効力を有する。したがって、例12の組成物は試験1において殺真菌剤1の効力を30%改善し、試験2において殺菌剤2の効力を50%改善し、試験3において殺真菌剤3の効力を200%改善する。評価は、噴霧体積260L/haで8回処理後の葉に対して行い、非処理の葉において50%の葉が感染していた。
【0158】
例26:ジャガイモに対して例12の組成物を用いた圃場試験
例12の組成物の500倍希釈液を、ジャガイモに対して行った圃場試験において用い、例12の組成物を0.65L/haで11回適用したことによる商業的収量の増大を評価した。例12の組成物の収量に対する影響を、殺菌剤の3つの異なる噴霧プログラムで評価した。
【0159】
結果を
図4に示す:(A)浸透移行性殺菌剤1(プロパモカルブ72SL)を1L/haで用いる噴霧プログラム、(B)接触性殺菌剤2(ジラム76WG)を3kg/haで用いる噴霧プログラム、(C)接触性殺菌剤3を2L/haで用いる噴霧プログラム。非処理における商業的収量は20.0h/haであり、例12の組成物による収量の増大は2.1%から16.1%の範囲であった。
【0160】
例27:プラム(ミラベル(Mirabelle))に対して例12の組成物を用いた圃場試験
400倍希釈の例12の組成物を、収穫時及び貯蔵の間、生成された果実の品質パラメータに対する本発明の組成物の効果を評価するためにプラム(ミラベル1725種(var. Mirabelle1725)に対して行った圃場試験において用いた。0.25%の例12の組成物を収穫前1週間間隔で4回適用した。酸性度(
図5A)、着色(緑色度が低い)(
図5B)、色素沈着(
図5C)、モリニア病によって汚染された果実の%(
図5D)、過熟の果実の%(
図5E)、及び花柄のある果実(
図5F)の評価で、例12の組成物の影響は、収穫時に顕著であった。果実の品質パラメータは全て、非処理に比べて本発明によって改善された。
【0161】
例12の組成物で処理した木から収穫した果実は、貯蔵病害菌であるモニリア(Monilia)に対してより抵抗性であり、対照に比べて更に6日を超える貯蔵が可能であった(
図6)。
【0162】
好ましい実施形態、並びに特定の濃度及び希釈、並びにこれらを調製するための方法を、本明細書において本発明による組成物について論じてきたが、形式及び詳細において様々な変更又は修飾を行うことができることを理解されたい。例えば、本発明において、例えば濃縮組成物を記載しているが、本発明はこのような濃縮した組成物のあらゆる可能な希釈液にも関連する。