(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773512
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】時間領域データ内のパルスの通過時間位置を測定するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20150813BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20150813BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01N21/27 F
G01B11/00 Z
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-158677(P2014-158677)
(22)【出願日】2014年8月4日
(62)【分割の表示】特願2010-516294(P2010-516294)の分割
【原出願日】2008年7月14日
(65)【公開番号】特開2014-238417(P2014-238417A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】60/959,196
(32)【優先日】2007年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/959,883
(32)【優先日】2007年7月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/961,771
(32)【優先日】2007年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505409166
【氏名又は名称】ピコメトリクス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ジェフリー、エス.
(72)【発明者】
【氏名】フィクター、グレゴリー、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジムダース、デイビッド、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン、スティーブン、エル.
【審査官】
喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−108845(JP,A)
【文献】
米国特許第6078047(US,A)
【文献】
国際公開第2006/008456(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0235658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00−21/61
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波形を解釈するシステムであって、
テラヘルツ放射パルスを出力するように構成されたテラヘルツ送信機と、
テラヘルツ放射パルスの少なくとも一部分を受信するように構成されたテラヘルツ受信機と、
テラヘルツ放射パルスの第一光インターフェイス反射部分をテラヘルツ受信機へ反射し、テラヘルツ放射パルスのほとんどの部分を透過する、第一光インターフェイスと、
テラヘルツ放射パルスの第二光インターフェイス反射部分をテラヘルツ受信機へ反射する、第二光インターフェイスと、
第一光インターフェイスと第二光インターフェイス間で定義されるエタロン間隔であって、テラヘルツ放射パルスによって照射されるべきサンプルを受け入れるように構成された、エタロン間隔と、を含み、
前記サンプルは、その前面においてテラヘルツ放射パルスのサンプル反射第一部分をテラヘルツ受信機へ反射し、その背面においてテラヘルツ放射パルスのサンプル反射第二部分をテラヘルツ受信機へ反射し、
前記テラヘルツ受信機がデータ取得システムに時間領域テラヘルツ波形を電子的に出力し、時間領域テラヘルツ波形が、前記第一光インターフェイス反射部分、前記第二光インターフェイス反射部分、前記サンプル反射第一部分、前記サンプル反射第二部分を含む、
システム。
【請求項2】
前記エタロン間隔が固定されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記エタロン間隔が測定可能な距離である、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記データ取得システムは、少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形を解釈するために、ピークからピークの解析法、エッジ中点解析法、デコンボリューション解析法、モデル当てはめ解析法、前記デコンボリューション解析法と前記モデル当てはめ解析法の組み合わせのいずれかを選択するように構成されているプロセッサを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記エッジ中点解析法において、前記プロセッサは、
少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大振幅点を探知し、
前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最小振幅点を探知し、
前記最大振幅点と前記最小振幅点のどちらが時間的に最初に発生するかを決定するように、構成され、
前記最小振幅点が時間的に最初に発生する場合、前記最大振幅点から前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形に沿って時間的に後退して、前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最小振幅点を探知し、
前記最大振幅点が時間的に最初に発生する場合、前記最小振幅点から前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形に沿って時間的に後退して、前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大振幅点を探知し、
前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の最良当てはめ直線を計算するために、前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の線形回帰を使用し、
前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形のパルス時間を前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の最良当てはめ直線の中点とする、
請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記デコンボリューション解析において、前記プロセッサは基準波形を使用して、少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形をデコンボルバおよびフィルタ処理し、デコンボルバされた時間領域テラヘルツ波形を作成する、
請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記テラヘルツ送信機と前記テラヘルツ受信機は、互いに隣接して配置されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記テラヘルツ送信機が放射したテラヘルツ放射パルスが反射されて隣接する前記テラヘルツ受信機に向かうように、前記テラヘルツ送信機と前記テラヘルツ受信機は傾けて配置されている請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記デコンボルバおよびフィルタ処理された波形の最大と最小を識別し、
基準のデコンボルバおよびフィルタ処理された波形を供給し、
前記基準のデコンボルバおよびフィルタ処理をされた波形を前記デコンボルバおよびフィルタ処理をされた波形の少なくとも1つの特徴に最良当てはめを行い、前記デコンボルバおよびフィルタ処理された波形のピークの時間と振幅を出力する、
請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記最良当てはめに、シンプレックス法を使用する
請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記モデル当てはめ解析法において、前記プロセッサは、
少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大と最小を識別し、
基準時間領域テラヘルツ波形を供給し、
前記基準時間領域テラヘルツ波形を前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の少なくとも1つの特徴に最良当てはめを行い、前記時間領域テラヘルツ波形のピークの時間と振幅を出力する、
請求項4記載のシステム。
【請求項12】
前記最良当てはめに、シンプレックス法を使用する
請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記テラヘルツ放射パルスの1部分は前記サンプルを1回より多く通過する、
請求項1記載のシステム。
【請求項14】
テラヘルツ波形を解釈するシステムであって、
テラヘルツ放射パルスを出力するように構成されたテラヘルツ送信機と、
テラヘルツ放射パルスの少なくとも一部分を受信するように構成されたテラヘルツ受信機と、
光インターフェイスであって、その前面においてテラヘルツ放射パルスの光インターフェイス反射第一部分をテラヘルツ受信機へ反射し、その背面においてテラヘルツ放射パルスの光インターフェイス反射第二部分をテラヘルツ受信機へ反射する、光インターフェイスと、
を含み、
サンプルは、その前面においてテラヘルツ放射パルスのサンプル反射第一部分をテラヘルツ受信機へ反射し、その背面においてテラヘルツ放射パルスのサンプル反射第二部分をテラヘルツ受信機へ反射し、
前記光インターフェイスは前記テラヘルツ送信機と前記サンプルの間に置かれ、
前記テラヘルツ受信機がデータ取得システムに時間領域テラヘルツ波形を電子的に出力し、時間領域テラヘルツ波形が、前記光インターフェイス反射第一部分、前記光インターフェイス反射第二部分、前記サンプル反射第一部分、前記サンプル反射第二部分を含む、
システム。
【請求項15】
前記データ取得システムは、少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形を解釈するために、ピークからピークの解析法、エッジ中点解析法、デコンボリューション解析法、モデル当てはめ解析法、前記デコンボリューション解析法と前記モデル当てはめ解析法の組み合わせのいずれかを選択するように構成されているプロセッサを含む、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記エッジ中点解析法において、前記プロセッサは、
少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大振幅点を探知し、
前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最小振幅点を探知し、
前記最大振幅点と前記最小振幅点のどちらが時間的に最初に発生するかを決定するように、構成され、
前記最小振幅点が時間的に最初に発生する場合、前記最大振幅点から前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形に沿って時間的に後退して、前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最小振幅点を探知し、
前記最大振幅点が時間的に最初に発生する場合、前記最小振幅点から前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形に沿って時間的に後退して、前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大振幅点を探知し、
前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の最良当てはめ直線を計算するために、前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の線形回帰を使用し、
前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形のパルス時間を前記最大振幅点と前記最小振幅点の間の最良当てはめ直線の中点とする、
請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記デコンボリューション解析において、前記プロセッサは基準波形を使用して、少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形をデコンボルバおよびフィルタ処理し、デコンボルバされた時間領域テラヘルツ波形を作成する、
請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記テラヘルツ送信機と前記テラヘルツ受信機は、互いに隣接して配置されている、
請求項14記載のシステム。
【請求項19】
前記テラヘルツ送信機が放射したテラヘルツ放射パルスが反射されて隣接する前記テラヘルツ受信機に向かうように、前記テラヘルツ送信機と前記テラヘルツ受信機は傾けて配置されている請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記デコンボルバおよびフィルタ処理された波形の最大と最小を識別し、
基準のデコンボルバおよびフィルタ処理された波形を供給し、
前記基準のデコンボルバおよびフィルタ処理をされた波形を前記デコンボルバおよびフィルタ処理をされた波形の少なくとも1つの特徴に最良当てはめを行い、前記デコンボルバおよびフィルタ処理された波形のピークの時間と振幅を出力する、
請求項17記載のシステム。
【請求項21】
前記最良当てはめに、シンプレックス法を使用する
請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記モデル当てはめ解析法において、前記プロセッサは、
少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の最大と最小を識別し、
基準時間領域テラヘルツ波形を供給し、
前記基準時間領域テラヘルツ波形を前記少なくとも1つの時間領域テラヘルツ波形の少なくとも1つの特徴に最良当てはめを行い、前記時間領域テラヘルツ波形のピークの時間と振幅を出力する、
請求項15記載のシステム。
【請求項23】
前記テラヘルツ放射パルスの1部分は前記サンプルを1回より多く通過する、
請求項14記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時間領域波形データ内のパルスの通過時間値を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時間領域テラヘルツデータを用いてサンプル特性を決定する例を示す。テラヘルツ電磁放射線は多くの工業測定応用において有用である。TD−THzでは、本質的に単サイクルのパルス(幅が約1ps、
図1)を同期的に生成して検出する。この同期法により、或る波形時間窓全体の放射線の電界強度を高い忠実度で測定することができる。この窓のこの幅は、用いる計測器に従って広い範囲にわたって変わってよい。THz放射線パルスは時間的に非常に短いので、非常に広帯域の周波数(10GHzから50THzまで)を含む。
【0003】
TD−THzパルスが或るサンプルと相互作用すると、得られる時間領域データから多数の有用な測定値を取り出すことができる。可能な測定値として、サンプルの質量、厚さ、密度、屈折率、密度および表面の変動、および分光学的特性(例えば、含水率、多形識別)などがあるが、これらに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図2はテラヘルツ送信器10およびテラヘルツ受信器12を示す。TD−THzでは、材料と相互作用した後のTHzパルスの変化を時間領域波形で記録する。例えば、パルスがサンプル14を透過すると、受信器に到着するパルスは、同じパルスが空気中を透過するときに比べて減衰しまた遅れる(
図2)。パルスの遅れの大きさは、材料のグループ屈折率の値とサンプルビーム内の質量の大きさとにより決まる。パルスの減衰は、材料の屈折率(フレネル(Fresnel)反射損)、サンプルでの放射線の散乱、および材料によるパルスの周波数の減衰に依存する。
【0005】
上側の図で、空気中を通るとき、THzパルスの飛行時間は最小でありまた振幅は減衰しない。本質的に透明な固体材料(例えば、プラスチックス、紙、および布)をTHzビーム経路に加えると(左下)パルスの飛行時間は長くなる。飛行時間の増加は材料の質量および屈折率に比例する。右下の図に示すような散乱させまたは吸収する媒体(泡または水を含んだ布)があると、パルスの飛行時間が遅れるだけでなくパルス振幅が減少する。
【0006】
サンプルからのTD−THzパルスの反射を用いると多くの測定を行うことができる(
図3)。この図は、可能な相互作用の一部と、これにより測定可能なサンプル特性とを示す。全ての測定において必ず必要なことは、TD−THzパルスの通過時間値を正確に決定することである。
【0007】
測定の一例としてサンプルの厚さの測定がある。この測定は、透過または反射の光学的配置で行うことができる。透過では、サンプル14によるTHzパルスの遅れを用いて厚さを測定することができる(
図4)。
図4では、線16はサンプルがない場合を示す。線18は薄いサンプルを示す。線20は厚いサンプルを示す。この方法では、2つの異なる時間(すなわち、ビームがサンプルに入ったときと出たとき)に得た2つの時間領域波形からピークの時間位置を決定する必要がある。この方法では、計器または環境の条件のためにいずれかのピークの位置がシフトした場合は、オフセットまたはスケーリング誤差を生じる。
【0008】
他方で、THzパルスは任意の界面でエネルギーの一部を反射する(例えば、フレネル反射)。
図5はマルチパスのサンプル室21を示す。ミラー22および24を用いたサンプルの前面および背面からの反射を
図6に示す。これらの2つの反射ピークの間の時間遅れは、材料の質量と屈折率とにより決まる。したがって、サンプルの質量、厚さ、および/または密度を単一の時間領域波形から測定することができる。この方法で測定を行うと、オフセットまたは時間傾斜誤差が減少する。
【0009】
THzパルスをマルチパスでサンプルに通すと、パルス時間測定の不正確さは変わらずに、観測される時間遅れが大きくなる(十分な信号雑音比が保たれる限り)。この考え方を図
5に示す。この方法を用いると全体のサンプル厚さの測定精度が増す。
【0010】
反射波形の興味深い点は波形パルスの極性である。TD−THzは直接電界を測定するので、パルスの極性は電界の極性を示す。透過測定では、サンプルが存在してもパルスの極性に影響しない。しかし反射測定では、屈折率の低い方から高い方にまたは金属境界で反射するときパルスの極性が反転する。
図6の反射波形の第1のパルス(空気からサンプルへ)の極性が反転するのはこのためである。反射の強さは、種々の要因の中でも、2つの材料の間の屈折率の差に依存する。この情報を用いて、界面をはさむ2つの材料のデルタ屈折率変化(デルタの符号を含む)を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】時間領域テラヘルツ(TD−THz)波形を示す。
【
図3】TD−THzパルスの反射相互作用の例を示す。
【
図4】空気および種々の厚さのサンプルの透過測定を示す。
【
図6】サンプルからの反射TD−THz波形を示す。
【
図7】種々の材料厚さから反射されたTD−THzパルスのシミュレーション例を示す。
【
図8】種々のサンプル厚さに適用したエッジ中点アルゴリズムのプロットを示す。
【
図9】サンプル厚さに対するピークからピークの反射波形振幅のプロットを示す。
【
図11】選択されたエッジ中点の直線の当てはめを示す。
【
図13】多重ピーク発見のための2つの標準的な事例を示す。
【
図14】多重ピーク発見のための2つの非標準的な「二極」の事例を示す。
【
図15】第1のピークが二極として、また第2のピークが標準のタイプとして認められる事例を示す。
【
図17】第1の2つのピークがプラスチックシム、第2の2つのピークがシリコン標準エタロンの場合のサンプル波形を示す。
【
図20】256点を用いた、モデル波形のサンプル波形への試行当てはめ開始点を示す。
【
図22】プラスチックシム(Shim)厚さ測定結果を示す。
【
図23】デコンボリューション法のサンプルデータを示す。
【
図25】サンプルを基準で割ったときの周波数領域の結果を示す。
【
図26】
図25の結果にチコノフ(Tikhonov)フィルタを適用すると信号雑音比が大きい周波数の方に向かってデータの重み付けが変わることを示す。
【
図27】
図26のデータの逆フーリエ変換を示す。これは
図23のデータの完了したデコンボリューションである。
【
図28】デコンボリューション結果に適用されたモデル当てはめを示す。
【
図29】
図27とガウシアンとのコンボリューションの結果を示す。
【
図33】内部較正エタロンセンサおよび単層サンプルからの反射波形を示す。
【
図34】ICE/背面反射物構造であって、左側の図は空の構造、右側の図はサンプルを含む構造を示す。
【
図35】内部較正エタロン/背面反射物構造内のサンプルのTD−THz波形を示す。
【
図37】同時基準空気路を持つマルチパス・サンプル・エタロンを示す。
【
図38】本発明の原理を実現する汎用コンピュータのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多数の異なるサンプル特性を測定するには、TD−THzパルスの通過時間を正確に決定する必要がある。これはいくつかの方法で行うことができる。TD−THzパルスをデータの例として用いて、高速で高精度のパルス時間値を求める3つのアルゴリズムを示す。すなわち、エッジ中点法、モデル当てはめ法、および当てはめ法とのデコンボリューションである。最も良いアルゴリズムを決定するための指針について以下に説明する。
【0013】
アルゴリズムの選択は多くの要因による。
図7を用いてこの点を示す。波形26は前面の反射と背面の反射との間の10ps遅れ(n=1.5の材料の3mmに対応する)をシミュレートする。波形28は2ps(0.6mm)、波形30は0.02ps(60ミクロン)、波形32は0.005ps(15ミクロン)である。エッジ中点アルゴリズムは一般に高速の計算法であるが、一般に、非常に薄いサンプルではうまく機能しない(
図8)。ピークからピークの振幅法も高速であるが、非常に薄いサンプルでのみ機能する(
図9)。モデル当てはめおよびデコンボリューション・アルゴリズムは一般に全てのサンプルで機能しまた精度は高い(表1)が、計算が遅い。
【0014】
エッジ中点法では、パルスのエッジの中点を決定し、これをオフセットして0Vにする。0Vの中点の周りの多数の点を分析のために選択する(
図10)。次にこの中点の周りの点についてデータの直線当てはめを行う(図
11)。得られた直線当てはめ式をその切片について解くと、その値がそのピークに割当てた時間である。この方法は計算が簡単でありかつ高精度のピーク時間位置が得られる。これは波形測定点間隔の1/75程度であり、タイミング精度は極めて高い。
【0015】
選択された点の直線の当てはめは計算が最も簡単なので、エッジ中点を正確に決定するための最も速い方法である。しかし、より高次の当てはめも可能であり、時間の正確さを更に高めることができる。3次多項式は優れた当てはめ精度を示した。他の非線形または高次の当てはめも可能である。
【0016】
中点決定のための方法の詳細を示すフローチャート34を
図12に示す。ピークの形の例を
図13に強調して示す。これは多重ピーク発見のための2つの標準的な事例である。Vmin/Vmaxの比が大きすぎる場合は、下に示すようにピークは二極と考えられる。Vmin/Vmin2(またはVmax/Vmax2)の比が大きすぎる場合は、ピークは不規則と考えられる(タイプ3)。
図14は多重ピーク発見のための2つの非標準「二極」の事例を示す。上の結果から、エッジ中点検出アルゴリズムを用いれば、多重ピークおよびピーク毎のエッジを分離して定量化できることが確認される。
【0017】
図12を参照すると、方法34はステップ36に示すように、まず波形を得る。ステップ38で、波形の最大電圧が最小値の絶対値より大きいかどうか判定する。ステップ38が「はい」の場合は、ステップ40で、最小値が最大値より前に起こったかどうか判定する。次にステップ42で、最大値から後退して最小値を見つける。方法34は次にステップ48に進む。これについては、次のパラグラフで詳細に説明する。
ステップ38が「いいえ」の場合は、ステップ44で、最大値が最小値より前に起こったかどうか判定する。ステップ44が「いいえ」の場合は、この方法はステップ48に進む。これについては後で詳細に説明する。そうでない場合は、この方法はステップ46に進み、最小値から後に戻って最大値を決定する。
ステップ48で、波形の最小値と最大値の間のデータ点の部分集合の線形回帰を用いて直線の当てはめを行う。最後に、ステップ50で、パルス時間は線形回帰線が最大電圧と最小電圧の中点のときと決定する。
【0018】
このモデル当てはめ法はモデル波形の当てはめの起点としてエッジ中点法を用いる。モデル波形は、サンプル波形(
図17、
図19)と同じ条件を用いてできるだけ多く収集した単一THzパルス(
図16、
図18)である。エッジ中点を用いてモデル当てはめの起点を作り、次にシンプレックス最適法を用いて、変化する時間および振幅を持つ一連の試行波形を評価して、最も良い解決パラメータに集束させる。
【0019】
最初のテストでは、モデル波形の2つのコピーを用いて、0.5mm(0.02”)の厚さのプラスチックシムの前面と背面を当てはめる。
図20では、波形52はサンプル波形であり、波形54は試行波形であって、256点を用いた、モデル波形のサンプル波形への試行当てはめの開始点である。
図21は方法を最適化した後の最終結果を示す。波形56はサンプル波形であり、波形58は試行波形である。最適化では、2つのコピーのタイミングと波形の全体のスケーリングとを変化させる。タイミングΔτはフーリエ変換の位相を変えて変化させる。
【数1】
なぜなら、この周波数領域法は内挿せずに正確な結果を与えるからである。
【0020】
試行波形は次式によりモデル波形から生成する。
【数2】
ただし、W
trialおよびW
refは時間領域の試行波形および基準波形、Cは倍率、φ(v)はモデルピークから第1のサンプルピークへの位相シフト、δ(v)は第1のサンプルピークから第2のサンプルピークへの位相シフトである。最適化は試行波形とサンプル波形との差のRMS値を最小にすることである。すなわち、
【数3】
【0021】
最初に得られる結果は、モデル波形が最適でない場合でも、この方法はゼロ交差法より常に少し優れているということである。すなわち、
【表1】
【0022】
デコンボリューション法では、THz測定は固有の計器応答(光伝導材料特性、レーザパルス波形、送信器および受信器のアンテナ形状などによる)とサンプルの表面とのコンボリューションと考えることができる。例えば基準表面を用いることにより計器応答を別個に決定することができる場合は、THz測定値をデコンボリューションすればサンプル表面のデータだけを取り出すことができる。デコンボリューションはTHz3D再構築についてすでに報告されている。ここでユニークな点は、デコンボリューションを厚さ測定に応用したことである。モデル当てはめの前にデコンボリューションを行うと結果の精度が向上する。
2つの関数のコンボリューションはそのフーリエ変換の積に相当する。
【数4】
【0023】
THz信号では、得られるテラヘルツ波形y(t)は基準波形または計器応答h(t)と実際の対象x(t)からのフレネル反射とのコンボリューションである。対象は、異なる屈折率、吸収、および厚さを持つ多重の層を有してよい。F(x)およびF
-1(t)は順および逆フーリエ変換をそれぞれ表す。
デコンボリューションは、得られたTHz波形とTHz基準波形とが与えられたときに未知の対象を再構築する逆操作である。デコンボリューションの最も簡単な方法はフーリエ領域内の割り算を用いる。すなわち、
【数5】
【0024】
この割り算を行うと非常に雑音の多い結果が得られる。なぜなら、THz測定ではエイリアジング(aliasing)を防ぐためにオーバーサンプリングするからである。オーバーサンプリングした測定値は一部の周波数範囲でSNRがゼロまたは最小であって、この周波数範囲では割り算の結果は雑音を増幅する。その解決法は測定値を濾波することである。1つの方法は簡単な帯域フィルタである。しかしこれは各THzシステム構成の帯域幅において調整する必要があり、インパルス応答アーチファクト(artifacts)を生成することがある。別のフィルタR(ω)はチコノフフィルタである。これは簡単でゆるやかなフィルタで、スペクトルの低SNR部分を除去する。
【数6】
【0025】
この方法はイメージング・デコンボリューションの文脈で提案されている。濾波とデコンボリューションとを同時に行うと、必要な変換の数が減少する。すなわち、
【数7】
【0026】
図23はサンプルTHz測定値および基準測定値を示す。線58は塗装した板からの反射THz測定値である。線60は別個に測定した計器応答である。
図24は測定値のフーリエ変換を示す。
図25および
図26はフーリエ領域での割り算の結果を示す。
図25では、信号を予め帯域濾波して2.2THzに制限した。しかし、高周波での信号の変動が大きい(例えば、0.5THz付近に対して2THz付近)のは広帯域THzパルスのSNR変動の結果である。
図26は、
図25の結果にチコノフフィルタを適用するとSNRの大きい周波数の方に向かってデータの重み付けが変わるという結果を示す。線62は基準パルスを自身で割って同じ濾波を行った結果である。
【0027】
図27は完了したデコンボリューションを示す。ピーク幅が狭くて対称形なので、元の波形に比べて識別しやすい。線64は
図26のデータの逆フーリエ変換で、
図23のデータの完了したデコンボリューションである。線66は基準パルスのデコンボリューションで、精度を高めるためにサンプルパルスに当てはめてよい。デコンボリューション法の後にモデル当てはめを行う。上に述べたように、当てはめ関数のタイミングおよび振幅はシンプレックス多次元探索法を用いて変化させる。
図28は、デコンボリューション結果にモデル当てはめを行ったものである。線68は基準パルスの3つのコピーをサンプルパルスに当てはめた結果である。線70は残留誤差である。
【0028】
更に改善するには、
図29および
図30に示すように、デコンボリューション結果と、ガウシアンなどの円滑でコンパクトな関数とをコンボリューションする。
図29は
図27とガウシアンとをコンボリューションした結果である。ガウシアンは比較的コンパクトなサポートを有しまたリップル(ripple)を最小にする。ただし、ピークのFWHMは少し増加する。
図30は
図29のモデル当てはめである。
更に改善するには、
図31に示すように層の材料の既知のまたは推定の屈折率値を用いてサンプル内の内部反射を計算する。黒丸は主な反射の振幅およびタイミングを示し、星印は塗料層の間のテラヘルツパルスの多重反動を示す。点線はやはり残留誤差を示す。
【0029】
デコンボリューション/当てはめ法の主な利点は、サンプルの前面と背面からの反射の間のデルタ通過時間をサンプルの厚さに当てはめるときの期待される線形挙動を、一層薄いサンプルに拡張できることである(
図22)。
上に述べたように、時間領域のテラヘルツ波形パルスの主な測定特性はパルスの時間位置および振幅である。よく理解されているように、計器または環境の条件(例えば、雑音、ドリフト)は測定に影響を与え、この場合はピーク時間位置または振幅の測定の精度を下げる。システム内部基準は正しいシステム動作を保証すると共に、必要であれば、サンプル波形結果に訂正用のデータ(例えば、振幅のスケーリングまたは時間の較正)を与える。
【0030】
前に述べたように、全ての屈折率界面はTHzパルスを反射する。
図32に示すように、本発明およびここに示す実施の形態は、システムおよび測定値の較正に用いる反射信号を生成する内部較正エタロン72をセンサヘッド74内に設ける。注意すべきであるが、ここに示す内部較正エタロンおよび単層のフィルムタイプのサンプルを持つセンサでは4つの界面(エタロンの前面および背面とサンプルの前面および背面)が存在する。したがって、4つの反射ピーク(
図33に参照番号74、76、78、および80で示す)が予想される。かかる実験的構成のTD−THz波形を図
33に示す。予想される4つの反射ピークが見られる。
【0031】
また注意すべきであるが、この考え方は4つの界面に限定されるのではなく、任意の数の界面(例えば多層サンプルまたは積層サンプル)に拡張することができる。
較正エタロンは理想的には、熱膨張係数が低く、THz周波数での屈折率が低く、また非常に吸収度が低い、安定な材料から作るとよい。高密度ポリエチレン(HDPE)は妥当なターゲット材料である。低抵抗シリコンまたは石英ガラスもよい。
【0032】
この較正エタロンの目的は、個別の波形を取得するときに、エタロンおよびサンプルのタイミングおよび振幅を同時に測定することである。計器または環境の条件の変化は較正エタロンのピークの変化として反映される。エタロンは安定な信号を与えるように選ぶので、エタロン測定値の変化を用いてサンプル測定値を調整することができる。調整の例としては、サンプルのデルタ時間測定をスケーリングすることや、較正信号の振幅情報を用いてモデル当てはめアルゴリズムを改善することを含む。この較正/基準情報が個別のTD−THz反射波形内に含まれることに再び注意する必要がある。TD−THz波形時間窓は、較正エタロンおよびサンプル反射がこの窓の中で確実に起こるように十分長くなければならない。前に述べたパルス時間位置法およびアルゴリズムは、精度を十分高くしてこの較正標準を有用にするのに重要である。また、反射パルスの振幅を用いて反射サンプル波形パルスをモデル化するのを(特にピークからピークの振幅およびモデル当てはめ法について)支援することができる。
【0033】
エタロンの厚さを変えて較正精度を最高にすることができる。理想的には、エタロンはTHzパルスのほんの一部だけを反射し、パルスエネルギーの大部分は通過させてサンプルに当てる。エタロンが比較的厚い場合は、2つの明確に分離された反射ピークが得られる(
図6および図
33に示すような)。この場合は、2つの較正エタロン・ピークの間のデルタ時間という測度は好ましい時間分析法であろう。エタロンが十分薄い場合は、反射するTHzエネルギーが少ないので好ましい。しかし、この場合は個々の界面は時間分離をしないので、前に述べた振幅当てはめ法を用いるモデル当てはめが必要になろう。どの方法およびアルゴリズムを用いればサンプル測定精度が良いかはサンプルおよび実験条件(例えば、測定速度)に依るであろう。
【0034】
図34に示すように、内部較正エタロン(ICE)
82と共に背面反射物
84を用いることにより、他のサンプル特性の測定精度を高めることができる。一つの例はサンプルの絶対厚さである。サンプルの厚さを計算する一般的な方法は、サンプルの前面および背面からのTD−THzパルス反射のデルタパルス通過時間の値と、サンプルの屈折率の値とを必要とする。ICEおよび背面反射物を用いると、サンプル材料の屈折率を知らなくても高精度の厚さ測定を行うことができる。
この方法では、空構造のデルタパルス通過時間値を測定して記録する必要がある。この値を絶対サンプル厚さの計算に用いる。
【0035】
サンプルを構造内に挿入すると、少なくとも4つのパルスが見られる(
図35)。上に述べた高精度法を用いて、全てのパルスの通過時間(T
pk#)を見つける必要がある。
かかる高精度の値を用いると、サンプルの絶対厚さは次式で計算することができる。
[数8]
厚さ=(T
Ref−T
Pk1−T
Pk3+T
Pk2)xc
【0036】
全てのT
Pk時間はT
Pk0時間に関係する。T
Refの値は空のICE/背面反射物構造で測定する。cは既知の値であって光速である。この計算は、サンプル材料構成に関係なく、サンプル厚さの高精度の結果を与える。
図
5に示すように、透過測定においてサンプルを通してTHzパルスをマルチパスさせると、タイミング測定の不正確さは増さずに、空気基準とサンプルスキャンとの間の飛行時間遅れが大きくなることが観測される。これは望ましいことである。
【0037】
しかし、透過測定で望ましくない点は、空気標準スキャンの変化(例えば、ドリフト)またはTHz送信器/受信器の間隔の変化(例えば、機械的な動き)が一般にサンプル内の変化と区別できないことである。次のシステムおよび方法はこの問題に対処する。
【0038】
図36は、サンプル14を含む第1のマルチパス・サンプル室86と、サンプルを含まない第2のマルチパス・サンプル室88とを示す。第1のマルチパス・サンプル室86と第2のマルチパス・サンプル室88とはそれぞれ完全反射ミラー90および92と部分反射ミラー94および96とを含む。マルチパス・サンプル室86および88について得られるサンプル波形98および100も示す。マルチパス・サンプル室86および88の片側を選んで部分反射だけさせると、同じ時間領域波形内で多数の透過THzパルスを得ることができる。
【0039】
サンプルの厚さは、空気に比べてサンプルを透過するパルスの間隔が大きいことにより決定することができる。したがって、空気のパルスデルタ時間値が必要である。しかしこの値は比較的容易に測定することができる。なぜなら、デルタ時間はサンプル・マルチパス・エタロン間隔により決まるからである。この間隔を適当な距離に設定すれば透過パルス間を明確に分離することができる。全てのサンプル厚さについてこの最小の分離を保つ。すなわち、薄いサンプルの反射測定で見られるように、2つのパルスは互いにコンボリューションおよび干渉をしない。このことは透過測定において大きな利点である。また、測定した飛行遅れが大きい(サンプルを通るパスの数の倍数として)という多重透過パスの利点はやはり存在する。すなわち、第1と第3の透過パルスの間の遅れは空気/単パス透過の遅れの4倍である。これは、デルタ時間測定の精度が大幅に向上するということである。
【0040】
測定に対する機械的安定の影響は、送信器と受信器との距離ではなくエタロン間隔だけに依存するので、更なる改善を行うことができる。熱的および機械的安定性を大きくするエタロンの材料および構築法は容易に選ぶことができる。サンプル室エタロン安定性が増すと、測定の精度はそれだけ向上する。
【0041】
図37はマルチパス・サンプル室86の別の実施の形態を示す。これは、第1の透過パルス102、第2の透過パルス104、および第3の透過パルス106を示す。THzビーム内にサンプルを含まないときに所定のパルス・エタロン反射が起きるようにエタロンを増やすことができる場合は、得られる波形はエタロンの情報と、サンプルを通る透過パルスの飛行時間の増加とを同時に与える。
図37は得られる波形108も示す。
【0042】
図38は、一般的なコンピュータシステムの実施の形態の一例を110で示す。コンピュータシステム110は一組の命令を含み、この命令を実行すると、コンピュータシステム110はここに開示した任意の1つ以上の方法またはコンピュータベースの機能を実行する。コンピュータシステム110は独立の装置として動作してもよいし、例えばネットワークを用いて他のコンピュータシステムまたは周辺装置に接続してもよい。
【0043】
ネットワーク展開では、コンピュータシステムはサーバの資格で、またはサーバ・クライアントユーザ・ネットワーク環境内のクライアントユーザ・コンピュータとして、またはピア・トゥ・ピア(または分散)ネットワーク環境内のピアコンピュータシステムとして動作してよい。また、コンピュータシステム110は種々の装置として実現しまたは種々の装置内に組みまれてよい。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、移動体装置、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、通信装置、無線電話、陸上有線電話、制御システム、カメラ、スキャナ、ファクシミリ、プリンタ、ページャ、パーソナルトラステッド装置、ウェブ機器、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、または機械が行う活動を指定する一組の命令(シーケンシャル他)を実行する機能を持つ任意の他の機械などである。或る実施の形態では、コンピュータシステム110は、音声、ビデオ、またはデータの通信を行う電子装置を用いて実現してよい。また、図には単一のコンピュータシステム
110を示しているが、「システム」という用語は、1つ以上のコンピュータ機能を実行する一組または複数の組の命令を個別にまたは共同で実行するシステムまたはサブシステムの任意の集合を含むと考えてもよい。
【0044】
図38に示すように、コンピュータシステム110はプロセッサ112(例えば、中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、またはその両者)を含んでよい。更に、コンピュータシステム110は、バス118を介して互いに通信することのできる主メモリ114およびスタティックメモリ116を含んでよい。図に示すように、コンピュータシステム110は更に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)、フラットパネルディスプレイ、固体ディスプレイ、陰極線管(CRT)などのビデオディスプレイユニット120を含んでよい。また、コンピュータシステム110は、キーボードなどの入力装置122や、マウスなどのカーソル制御装置124を含んでよい。コンピュータシステム110はまた、ディスクドライブユニット126、スピーカまたは遠隔制御などの信号発生装置128、およびネットワークインターフェース装置130も含んでよい。
【0045】
図
38に示す或る実施の形態では、ディスクドライブユニット126はコンピュータ読取り可能媒体132を含んでよく、その中に一組以上の命令134(例えば、ソフトウエア)を埋め込んでよい。また、命令134はここに述べた1つ以上の方法または論理を実現してよい。或る実施の形態では、コンピュータシステム110により実行中は、命令134は主メモリ114、スタティックメモリ116、および/またはプロセッサ
112内に完全にまたは少なくとも部分的に常駐してよい。主メモリ114およびプロセッサ112はコンピュータ読取り可能媒体を含んでもよい。
【0046】
別の実施の形態では、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理アレイ、およびその他のハードウエア素子などの専用のハードウエア機器を構築して、ここに述べた1つ以上の方法を実現してよい。種々の実施の形態の機器およびシステムを含むアプリケーションは種々の電子およびコンピュータシステムを広く含んでよい。ここに述べた1つ以上の実施の形態は、モジュールの間でまたはモジュールを通して通信可能な関連する制御およびデータ信号を持つ2つ以上の特定の相互接続されたハードウエアモジュールまたは装置を用いて、または特定用途向け集積回路の一部として、種々の機能を実現してよい。したがって、本システムはソフトウエア、ファームウエア、およびハードウエアの具体化を含む。
【0047】
この開示の種々の実施の形態において、ここに述べた方法はコンピュータシステムが実行可能なソフトウエアプログラムにより実現してよい。また、制限されない実施の形態の例として、種々の具体化は分散処理、構成要素/オブジェクト分散処理、および並列処理を含んでよい。または、仮想コンピュータシステム処理を構築して、ここに述べた1つ以上の方法または機能を実現してよい。
この開示は、命令134を含みまたは伝播信号に応じて命令134を受けまたは実行するコンピュータ読取り可能媒体を考えているので、ネットワーク136に接続する装置は音声、ビデオ、またはデータをネットワーク136により伝送することができる。また、命令134はネットワークインターフェース装置130を介してネットワーク136により送信または受信してよい。
【0048】
コンピュータ読取り可能媒体を単一の媒体として示したが、「コンピュータ読取り可能媒体」という用語は、集中または分散データベースなどの単一媒体または多重媒体、および/または一組以上の命令を記憶する関連するキャッシュおよびサーバを含む。「コンピュータ読取り可能媒体」という用語は、プロセッサが実行する一組の命令を記憶し、符号化し、または搬送することのできる、またはここに開示した任意の1つ以上の方法または動作をコンピュータシステムが実行できるようにする、任意の媒体も含む。
【0049】
制限のない或る例示の実施の形態では、コンピュータ読取り可能媒体は、1個以上の不揮発性のリードオンリーメモリを内蔵するメモリカードまたは他のパッケージなどの半導体メモリ(solid−state memory)を含んでよい。また、コンピュータ読取り可能媒体はランダムアクセスメモリまたは他の揮発性の書換え可能メモリでよい。更に、コンピュータ読取り可能媒体は、伝送媒体により伝送される信号などの搬送波信号を捕らえるディスクまたはテープまたは他の記憶装置などの光磁気媒体または光媒体を含んでよい。電子メールまたは他の独立の情報アーカイブまたはアーカイブの集合のディジタルファイルアタッチメントは有形の記憶媒体と同等な分散媒体と考えてよい。したがって、この開示はデータまたは命令を記憶できるコンピュータ読取り媒体または分散媒体および他の同等物および後継媒体の任意の1つ以上を含むと考える。
【0050】
この仕様書は特定の標準およびプロトコルを参照して特定の実施の形態で実現できる構成要素および機能を説明したが、本発明はかかる標準およびプロトコルに限定されるものではない。例えば、インターネットおよび他のパケット交換ネットワーク伝送(例えば、TCP/IP、UDP/IP、HTML、HTTP)用の標準は最新の例である。かかる標準は、実質的に同じ機能を有する更に高速のまたは効率的な同等物に断続的に置換されている。したがって、ここに開示したものと同じまたは同様の機能を有する置換え標準およびプロトコルは同等物と見なす。
【0051】
ここに述べた実施の形態の例は種々の実施の形態の構造を一般的に理解できるようにするために示したものである。これらの例は、ここに述べた構造または方法を用いる機器およびシステムの全ての要素および機能を完全に記述するものではない。この開示を見れば、多くの他の実施の形態が当業者に明らかであろう。他の実施の形態を用いてまたこの開示から得て、この開示の範囲から逸れずに構造および論理の代替および変更を行ってよい。また、図面は単に説明のためのものであって、正確な縮尺率で描いたものではない。図面の中には割合を大きくしたものも小さくしたものもある。したがって、この開示および図面は制限するものではなく例示と見なすべきである。
【0052】
この開示の1つ以上の実施の形態をここでは個別におよび/または集合的に「発明」という用語で呼ぶが、これは単に便宜上であって、この出願の範囲をいずれかの特定の発明または新規な概念に自発的に限定するものではない。また、特定の実施の形態についてここに図示して説明したが、同じまたは同様の目的を達成するよう設計されたその後の装置により、ここに示した特定の実施の形態を置換してよいことを認識すべきである。この開示は、種々の実施の形態の任意のおよび全てのその後の適応または変更をカバーするものである。上の実施の形態と、ここに特定して述べていない他の実施の形態との組合せは、この説明を見れば当業者に明らかであろう。
【0053】
詳細な説明の中で、この開示を簡素にするために、種々の機能をまとめたり1つの実施の形態で述べたりしてよい。クレームした実施の形態が各クレーム内に明示していない他の機能を必要とするという意図を反映するというようにこの開示を解釈してはならない。むしろ、以下のクレームが反映するように、本発明の主題はここに開示した任意の実施の形態の全ての機能以下に向けられている。したがって、以下のクレームは詳細な説明の中に含まれており、各クレームは別個にクレームした主題を定義するものとして独立している。
【0054】
上に開示した主題は例示であって、制限的と考えてはならない。また添付のクレームは本発明の精神および範囲内にある全てのかかる変更、拡張、および他の実施の形態をカバーするものである。したがって、法の許可する最大限において、本発明の範囲は以下のクレームおよびその同等物の最も広い範囲の許される解釈により決定されるものであって、上に述べた詳細な説明により限定または制限されるものではない。