特許第5773515号(P5773515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5773515-スチール製の燃料圧送配管 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773515
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】スチール製の燃料圧送配管
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   F02M55/02 320P
   F02M55/02 320W
   F02M55/02 340V
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-165881(P2010-165881)
(22)【出願日】2010年7月23日
(65)【公開番号】特開2012-26357(P2012-26357A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 和夫
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−007651(JP,A)
【文献】 特開2003−034877(JP,A)
【文献】 特開2004−156561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンを圧送するスチール製の燃料圧送配管であって、燃料圧送配管の全内周面に厚み1〜15μmのNiめっき層を有し、ガソリンの流入側端部の前記Niめっき層上にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層が形成され、前記防錆皮膜層は、厚み0.1〜8μmの範囲で設けられ、且つ、前記燃料圧送配管の内径がDmmである場合に、前記燃料圧送配管端部から内部に向かってD〜6Dmmの位置まで設けられていることを特徴とするスチール製の燃料圧送配管。
【請求項2】
ガソリンを圧送するスチール製の燃料圧送配管であって、燃料圧送配管の全内周面に厚み1〜15μmのNiめっき層を有し、ガソリンの流入側端部および流出側端部の前記Niめっき層上にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層が形成され、前記防錆皮膜層は、厚み0.1〜8μmの範囲で設けられ、且つ、前記燃料圧送配管の内径がDmmである場合に、前記燃料圧送配管端部から内部に向かってD〜6Dmmの位置まで設けられていることを特徴とするスチール製の燃料圧送配管。
【請求項3】
前記燃料圧送配管の外表面の一部または全部がZnめっき層またはZn基合金めっき層で被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスチール製の燃料圧送配管。
【請求項4】
ガソリン直噴エンジンシステムにおけるガソリンを高圧ポンプから直噴レールに圧送する燃料圧送配管であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のスチール製の燃料圧送配管。
【請求項5】
V型ガソリンエンジンにおける直噴レール同士を連結するバイパス配管であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のスチール製の燃料圧送配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン直噴エンジンシステムにおける燃料をエンジンに供給する配管に関するものである。
特に、本発明は、粗悪な腐食性成分を含む燃料に対して耐性のある配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上による環境負荷低減を目的として自動車産業で開発・市場投入が進んでいるガソリン直噴エンジンシステムでは、図1に示すように、燃料(ガソリン)を燃料タンク10からポンプ20を経てエンジン(図示せず)の直噴レール30に供給する配管1に対して、既存の各気筒吸気ポート噴射(MPI:Multi Point Injection)エンジンよりも高耐圧性・高機密性が要求されている(特許文献1、2など参照)。
【0003】
また、同じく環境負荷低減を目的としたバイオ由来のアルコール燃料に代表されるような代替燃料の市場拡大に加え、中国・インドに代表されるような新興国の台頭による自動車産業のグローバル化が進んだことにより、バイオ由来又は粗悪な環境下で供給された水分、塩類、および腐食性因子(主に酸)などを含有する腐食性成分を多く含む燃料(以下、「腐食性燃料」と称す)を用いて、ガソリン直噴エンジンを搭載した自動車が運用されることを基準として、それら粗悪な腐食性燃料に対しても耐性のある配管が要求されている。
【0004】
このガソリン直噴エンジンシステムに使用される燃料の圧送配管(図1、符号1で示される)においては、自動車産業、特に製造拠点のグローバル化を踏まえた上で安定的な材料供給が可能であって、且つ前述の耐圧性、機密性、耐食性などの諸性能を有する仕様として、ステンレス系の材料に各種塑性加工(管末成形加工、曲げ加工等)や接合加工(ロウ付け加工等)を施して(ステンレス系材料特有の耐食性能により特異な表面処理を施すことをせず)製品とされたものが標準として最も多く採用されている。
なお、既存のMPIエンジンシステムで標準的に採用されるステンレス系材料よりも安価なスチール系の材料についても、要求性能が満たされる特定の製品については採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−152852号公報
【特許文献2】特開2002−54534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塑性加工や接合加工が施されたステンレス系配管では、以下のような問題点が挙げられる。
(1)寒冷地や海洋沿岸地域における自動車使用環境特有の塩害に対する応力腐食割れ(SCC)。
(2)水分や塩類(特に塩素などの腐食性陰イオン)を高濃度含有し、直噴システムなどの高圧・高温条件で使用されることによって腐食性が極めて高くなっている燃料に対する耐食性。
(3)接合加工時の熱影響による、鋭敏化(SCCの発生危険度の上昇)や機械的性質低下(強度の低下)。
【0007】
そのため、これらの問題によって製品加工条件、材質、製品仕様が制限され、工程の追加や高精度の要求によるコスト高や安定的な材料供給不能となるばかりか、製品実現が不可能となることもある。
【0008】
このようなステンレス系配管に対し、低炭素鋼などのスチール系配管は塑性加工や接合加工に伴う問題は、耐食性を除いて十分満足するものである。唯一かつ最大の問題点である耐食性についても、外部環境に起因する塩害に対して外表面にZn系やAl系の犠牲防食機構を有する防錆めっきを、腐食性燃料に対して内表面にNi系、Cr系、Co系、Sn系などのバリアー性に優れる防錆めっきを施すことによって、その耐食性を飛躍的に高められることが知られている。
【0009】
ただし、水分や塩類を含む腐食性燃料に対してはバリアー防食機構のみに特化した防錆めっきのみでは、腐食基点となり得るピンホール等の欠陥を完全に無くすために相当量の膜厚(例えば、数十μm〜百数十μmレベル)を施したり、複数の皮膜を複層化・複合化(合金化)したりする必要がある。しかし、その反面で厚膜あるいは複雑となったことによってコスト高となることはもちろん、皮膜強度や母材との密着強度が低下してめっき皮膜が破壊(亀裂)や脱離(剥離)を起してしまい、むしろバリアー性が低下して耐食性が悪くなって要求性能を満たすことができず、製品が実現できないケースもある。
【0010】
その対策として、耐塩害に優れるZn系やAl系の犠牲防食機構を有する防錆めっきを内表面にも施すことが考えられるが、犠牲防食機能を有するが故に腐食性燃料に防錆めっき成分であるZnやAlがイオンとして溶け出してしまい、これら溶出イオンが内燃機関各所に各種弊害をもたらす新たな問題の発生が懸念される。
【0011】
そこで本発明は、このような問題を解決する腐食性燃料に対する高い耐性を有すると共に直噴エンジンの機能を損なわずに信頼性を維持するガソリン直噴エンジンシステムにおける高圧ポンプと直噴レール間を繋ぐスチール製燃料圧送配管、およびV型ガソリンエンジンにおける直噴レール同士の連結用バイパス配管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では耐食性、特に腐食性燃料に対する燃料配管の内表面について鋭意研究を重ね、腐食性燃料に溶出するイオン量を極力低減した、腐食性燃料への耐性に優れる内表面処理を有するスチール製のガソリン用配管を発明したものである。
【0013】
本発明の第1の発明は、ガソリン直噴エンジンシステムにおけるガソリンを高圧ポンプ直噴レールに圧送するスチール製の燃料圧送配管、ならびにV型ガソリンエンジンにおける直噴レール同士を連結するバイパス配管に用いられるスチール製の燃料圧送配管であって、その燃料圧送配管は、当該配管の全内周面に厚み1〜15μmのNiめっき層を有し、ガソリンの流入側端部の前記Niめっき層上にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層が形成され、前記防錆皮膜層は、厚み0.1〜8μmの範囲で設けられ、且つ、前記燃料圧送配管の内径がDmmである場合に、前記燃料圧送配管端部から内部に向かってD〜6Dmmの位置まで設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の第2の発明は、ガソリン直噴エンジンシステムにおけるガソリンを高圧ポンプ直噴レールに圧送するスチール製の燃料圧送配管、ならびにV型ガソリンエンジンにおける直噴レール同士を連結するバイパス配管に用いられるスチール製の燃料圧送配管であって、その燃料圧送配管は、当該配管の全内周面に厚み1〜15μmのNiめっき層を有し、ガソリンの流入側端部および流出側端部の前記Niめっき層上にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層が形成され、前記防錆皮膜層は、厚み0.1〜8μmの範囲で設けられ、且つ、前記燃料圧送配管の内径がDmmである場合に、前記燃料圧送配管端部から内部に向かってD〜6Dmmの位置まで設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明の第の発明は、本発明の第1第2の発明における燃料圧送配管の外表面の一部または全部がZnめっき層またはZn基合金めっき層で被覆されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高圧ポンプからインジェクターを備える直噴レールへと、高い圧力を掛けられて送り出されるガソリン(燃料)に含まれる腐食性因子による燃料圧送配管内部の腐食をよく防止し、ガソリン直噴エンジンシステムの信頼性、寿命を大きく高め、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】直噴エンジンにおける燃料タンクからインジェクターへの燃料流路を示す概略図である。
図2】本発明の圧送配管の第一の実施形態を示す模式断面図である。
図3】本発明の圧送配管の第二の実施形態を示す模式断面図である。
図4】本発明の圧送配管の第三の実施形態を示す模式断面図である。
図5】本発明の圧送配管の第四の実施形態を示す模式断面図である。
図6】本発明の燃料圧送配管の燃料流入側端の部分拡大断面図である。
図7】従来の燃料圧送配管を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は耐食性、特に腐食性燃料に対する燃料圧送用配管の内表面について鋭意研究を重ねた結果から得られた以下の知見を基に本発明の完成に至ったものである。
第一に、図1示す燃料圧送用配管1では、腐食は特に配管のポンプ側、すなわち燃料の流入側端(図1の破線丸印で示す範囲)で発生しやすいこと。
第二に、配管の内表面全面にZn系などの犠牲防食機構を有する層を設けた場合には、腐食には有効であるが、Znが燃料に過剰に溶出した場合には、配管以降のエンジン各部に悪影響を与える恐れがあること。
第三に、配管内表面の特定部位にZn系などの犠牲防食機構を有する層を設けた場合に、配管内表面全体にわたり、腐食性燃料による腐食が防止可能であること。
【0019】
このような知見からなされた本発明の燃料圧送用配管の実施態様の例を図2から図5に示す。これらの図は、配管の燃料流入側端の断面の形状を示す模式断面図である。図2から図5において2は配管母材、3は配管外表面のZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる外部防錆皮膜層、3a、3bは配管内面に設けられるZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層、Lは配管内面の防錆皮膜層の配管先端からの被覆距離、4はNiめっき層、白抜き矢印は燃料の流れ方向を示すものである。
図2に示す燃料圧送配管1aは、配管外表面にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる外部防錆皮膜3、燃料流入側端の内面および燃料流出側端の内面にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層(3a、3b)を有する燃料圧送配管、図3の燃料圧送配管1bは、配管外表面にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる外部防錆皮膜3、燃料流入側端の内面のみにZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層3aを有する燃料圧送配管、図4の燃料圧送配管1cは、燃料流入側端の内面および燃料流出側端の内面にのみZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層(3a、3b)を有する燃料圧送配管、図5の燃料圧送配管1dは、燃料流入側端の内面にのみZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層3aを有する燃料圧送配管を示している。
【0020】
図2から図5の1aから1dで代表して示す本発明の燃料圧送配管は、Niめっき層4を設けた配管内面に配管先端、特に燃料流入側端(図1における高圧ポンプ20側端)から燃料の流れ方向(直噴レール中央方向)に向かって距離L(mm)の位置までZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層3aをNiめっき層4上に設けた構造を採っている。さらに、燃料流出側端にも同様にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層3bを設けてあっても良い。
【0021】
本発明は燃料圧送配管1の内面に、燃料流入側の配管端から適当な距離(本発明で規定する符号Lで示される距離)までNiめっき層4の表面にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層(3a、3b)を被覆することによって、水分、塩類、酸などの腐食性因子を多く含む腐食性燃料による配管腐食の防止を特徴としている。
【0022】
その腐食に対する防止効果の詳細はまだ明らかでないが、以下のように考えられる。
内径が8mm位までの燃料圧送配管の管内面に設けられたZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層より腐食性燃料に溶け出したZnイオンが、腐食性燃料中の腐食因子成分(塩類等)を中和して燃料の腐食性を抑制することにより、防錆皮膜層が被覆されている管内表面の一部分だけでなくNiめっき層だけの部位においても管素材の腐食を防ぐことができる。
この場合、腐食性燃料の通液入口(燃料流入側)となる配管端部にZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層を施すことにより、腐食性燃料が必ず最初に防錆皮膜層に触れ、Znイオンが溶出して腐食因子が中和されることによって、より確実に管内表面のNiめっき層のみの部位の腐食を防ぐことができる。
【0023】
また、防錆皮膜層が腐食性燃料に対して犠牲防食反応を起すことだけで、閉鎖的な管内においては腐食性燃料の腐食性が緩和されてしまう。そのため結果としてNiめっき層だけの部位においても管素材の腐食を防ぐことができる。この場合、腐食性燃料の通液入口となる配管端部に防錆皮膜層を設けることにより、腐食性燃料が必ず最初に防錆皮膜層に触れ、犠牲防食反応を起すため、より確実に管内表面のNiめっき層のみの部位の腐食を防ぐことができる。
【0024】
次に、各要素の限定理由を説明する。
〔内面のZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層〕
内面に設けられる防錆皮膜層としては、Znめっき層もしくはZn−Ni合金、Zn−Sn合金などのZn基合金めっき層が設けられる。
このZnめっき層あるいはZn基合金めっき層の形成は、管内面へ直接に電気めっきする方法、あるいは管外表面にZnめっき層を設けるような場合に、管外表面へのZnめっき層形成時に管内面へのZnめっき層の巻き込みによってZnめっき層を形成する方法などを用いることができるが、本発明に規定する配管内面に設けられる防錆皮膜層であるZnめっき層またはZn基合金めっき層の条件(被覆距離L)を満足する方法なら、どのような方法であっても何ら差支えない。
なお、燃料圧送配管内のガソリン燃料(腐食性燃料)に対する防錆皮膜層(Znめっき層、Zn基合金メッキ層)から溶出されるZnイオンの溶出量は1ppm未満であることが好ましい。Znイオンの溶出量が1ppm未満であれば、少なくとも内燃機関各所に各種弊害をもたらすことはないからである。但し、Znめっき層のめっき量が少なすぎても(Znイオンの溶出量が0.1ppm未満)、今度は防錆力(耐食性燃料を中和抑制する能力)が低下するため好ましくない。
【0025】
図6に配管内面のZnめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層の様子を示す。図6は本発明の燃料圧送配管の燃料流入側端の部分拡大断面図である。
配管内面の防錆皮膜層3aの配管先端からの被覆距離Lは配管内径がDmmである時に、D〜6Dmmの位置まで防錆皮膜層3aが設けられていることが望ましい。
また図6に示すように、この防錆皮膜層3aにおける層厚みtZnは、0.1〜8μmの厚みで設けられていることが望ましい。
なお、燃料流出側端における防錆皮膜層3bについても同様の条件で設けられる。
【0026】
[Znめっき層またはZn基合金めっき層からなる外部防錆皮膜]
燃料圧送配管の一部または全部の外表面に設けられる外部防錆皮膜層3は、外部の腐食因子から配管の腐食を防ぐ役割を果たすもので、3〜25μm、望ましくは5〜13μmの厚みで電気めっき法などの方法で設けられる。なお、外表面に外部防錆皮膜層3を設ける仕様の燃料圧送配管の場合には、外表面の外部防錆皮膜層3を設ける際に、同時に所定の形態の内面を被覆する防錆皮膜層(3a、3b)を設けても良い。
【0027】
〔Niめっき層〕
Niめっき層4は燃料圧送配管の配管母材2の内面と直接に接する位置に例えば電気めっき法や無電解めっき(化学めっき)などの方法で設けられることで、配管母材2の内面を覆って腐食性燃料と配管母材との接触を断つ、バリアーの役目を果たすものである。なお、Niめっき層を形成後に、拡散層を生成して配管母材との密着性を高めるために適宜熱処理を行っても良い。
その厚みは、1〜15μmが望ましく(Niめっき層の拡散層がある場合には該Niめっき層の拡散層も含めて、1〜15μm)、3〜9μmがより望ましい(Niめっき層の拡散層がある場合には該Niめっき層の拡散層も含めて、3〜9μm)。1μm未満では腐食性燃料からの配管母材への腐食攻撃に対するバリアー機能が十分機能しないためである。また9μmを超えると効果の度合いが緩やかになり、15μmを超えては、製造コストの上昇に見合う効果の向上が見られないばかりか、配管の塑性加工(例えば曲げ加工など)を行った際にめっき皮膜に亀裂(ワレ)が発生しやすくなって、むしろバリアー機能が低下する問題が生じるためである。また、Niめっきが外面(全体)にもつき回っても良い。
【0028】
〔配管母材〕
本発明の燃料圧送配管に用いられる配管母材2には、圧送される燃料の高圧力に耐えうる耐圧性を有するスチール製のシームレス管が好適である。
【0029】
〔腐食性燃料〕
本発明に係る燃料圧送配管は、日本で一般に市販されている「高品質の燃料」に対して用いられるよりも、「腐食性燃料」に対して用いられた場合に、より有効な作用効果を得ることが出来る。
即ち、本発明の燃料圧送配管は、腐食性燃料となりやすいバイオ由来のアルコール混合燃料に含まれるアルコールがバイオ由来、すなわち化学合成であることによって、不純物の「塩素イオン」や「水分」などが混入した燃料を使用した場合、あるいは長期滞留に伴い酸化が進み、腐食因子となる蟻酸、酢酸などの酸が生じている劣化ガソリンを含むガソリンを使用する場合、劣悪な環境下で製造、供給される腐食性因子を多く含むガソリンなどに対して特に有効である。
より詳しくは、有機酸(蟻酸および酢酸)100〜1000ppm或いはそれ以上、水分1〜10%或いはそれ以上、塩素1〜100ppm或いはそれ以上を含むような腐食性に富む腐食性燃料に対して顕著な効果を示すものである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を詳細する。
実施例では、配管内面に施した防錆皮膜層の示す効果について、腐食性燃料に対する腐食試験を行い、腐食状況(耐食性)を目視並びに顕微鏡で観察して判定した。また、Znめっき層またはZn基合金めっき層からなる防錆皮膜層からのZn溶出の度合いを判定する目的で腐食試験後の試験液を成分分析して、その溶出量を測定した。
さらに、配管内のめっき層の密着性をJASO−M−101に準拠した曲げ試験を行い評価した。剥がれ、ワレを生じた場合を「×」とした。
【0031】
[内面の防錆皮膜層および外部防錆皮膜層の形成法]
1.Znめっき層
市販のジンケート浴(JASCO社製)を用い、電流密度3A/dmで管外表面に電着めっきを施すと同時に、管内面に対してはスチール製ワイヤの疑似陽極を併用して所望の被覆距離(L)の範囲に電着した。なお、外表面と内面で異なる種類の皮膜層を設ける場合には、個々にめっきを施すが、それぞれに影響を与えないようにマスキングを施して行うと良い。
【0032】
2.Zn基合金めっき層/Zn−Ni合金めっき層
市販のアルカリ浴(JASCO社製)を用い、電流密度5A/dmで管外表面に電着めっきを施すと同時に、管内面に対してはニッケル製ワイヤの疑似陽極を併用して所望の被覆距離(L)の範囲に電着した。
【0033】
3.Zn基合金めっき層/Sn−Zn合金めっき層
市販の中性浴(ディップソール社製)を用い、電流密度2A/dmで管外表面に電着めっきを施すと同時に、管内面に対してはステンレス製ワイヤの疑似陽極を併用して所望の被覆距離(L)の範囲に電着した。
【0034】
[Niめっき層の形成法]
1.電気Niめっき
市販の酸性浴(ワット浴)及びニッケル製ワイヤの陽極を用い、電流密度3A/dmで管内面全域に電着めっきを施した。
2.無電解NiPめっき(実施例3のみ使用)
市販の酸性浴(カニゼンめっき)を用い、浴温:90〜95℃で管内面全域に対して化学めっきを施した。
【0035】
〔腐食試験細目〕
・試験液;腐食性燃料
・20%アルコール混合燃料(ガソリン)
有機酸(蟻酸および酢酸)500ppm、水分5%、塩素10ppmを含む
・試験方法
試験燃料を管内に封入して下記条件に放置した時の管内の腐食状況を確認。さらに、封入してあった試験燃料を採取して、成分分析(水分抽出後に遊離Znイオン濃度を測定)を実施。
・試験温度:100℃
・試験時間:1000時間(試験液は100時間ごとに新しい試験液に交換)
・腐食評価:錆の有無を目視観察。
【実施例1】
【0036】
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径5mm(D=5mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み10μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZnめっき層とし、その被覆距離Lを10mm(L=2D=10mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZnめっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0037】
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径8mm(D=8mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み10μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZn−Ni層とし、その被覆距離Lを24mm(L=3D=24mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZn−Ni合金めっきを施して、防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0038】
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径3mm(D=3mm)の高圧用スチール製管材を用いて、無電解NiPめっきにより厚み5μmのNiめっき層を設け、内面の防錆皮膜層をSn−Zn合金めっき層とし、その被覆距離Lを9mm(L=3D=9mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでSn−Zn合金めっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0039】
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径8mm(D=8mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み15μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZnめっき層とし、その被覆距離Lを8mm(L=1D=8mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZnめっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0040】
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径5mm(D=5mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み5μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZnめっき層とし、その被覆距離Lを30mm(L=6D=30mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZnめっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径8mm(D=8mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み5μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZnめっき層とし、その被覆距離Lを80mm(L=10D=80mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZnめっきを施して、防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
(比較例2)
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径3mm(D=3mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み20μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をZn−Ni合金めっき層とし、その被覆距離Lを12mm(L=4D=12mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでZn−Ni合金めっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(比較例3)
図2に示す構造の本発明の燃料圧送配管1aにおいて、配管母材2に内径8mm(D=8mm)の高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み5μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成し、ついで管端からの防錆皮膜層をSn−Zn合金めっき層とし、その被覆距離Lを4mm(L=0.5D=4mm)とし、この位置まで0.1〜8μmの厚みでSn−Zn合金めっきを施して防錆皮膜層3a、3bを形成し、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
(比較例4)
図7に示す構造の従来の燃料圧送配管50において、配管母材2に高圧用スチール製管材を用いて、その内面全体に厚み5μmのNiめっきを施してNiめっき層4を形成して、圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液として腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
(比較例5)
配管母材にSUS304製管材を用いた圧送燃料配管の供試材を作製した。この供試材を用いて試験液に腐食性燃料に対する腐食試験を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなように、Niめっき厚、防錆皮膜層の被覆距離共に、本発明範囲内にある実施例1から5では、密着性、耐食性共に良好で、試験燃料内のZnイオンの溶出量も1ppmを下回っているのがわかる。
【0048】
一方、防錆皮膜層の被覆距離が長すぎる比較例1では、Znイオンの溶出量が2.8ppmと増えており、内燃機関の各所に弊害を引き起こしやすくなると考えられる。他方、防錆皮膜層の被覆距離が短い比較例3では、Znイオンの溶出量が少ないことから耐食性が劣化していることがわかる。
また、Niめっき層の厚みの値が大きい比較例2では、密着性に劣ってしまうことがわかる。さらに、防錆皮膜層を有しない比較例4、およびSUS304製管材を用いた圧送燃料配管の比較例5では、耐食性が劣っている。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b、1c、1d 圧送燃料配管
2 配管母材
3 配管外表面の外部防錆皮膜層
3a 燃料流入側端の配管内面被覆防錆皮膜層
3b 燃料流出側端の配管内面被覆防錆皮膜層
4 Niめっき層
10 燃料タンク
20 高圧ポンプ
30 直噴レール
31 インジェクター
50 従来圧送燃料配管
L 防錆皮膜層の被覆距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7