(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相手側の雄端子が挿入される、底壁と上壁と両側壁とを有する中空筒状のボックス部を備え、該ボックス部の内部に、該雄端子が挿入された際に該雄端子と接触する弾性接触片が設けられた端子金具であって、
前記弾性接触片は、前記底壁の前端から後端側に向けてU字状に折り曲がって延設され、その長さ方向の略中間部が上壁に向けて凸状に屈曲したへの字状に形成されていると共に、その自由端が後端側の底壁の上面に摺動自在に支持され、前記雄端子が挿入された際に該雄端子を前記上壁側に付勢して該上壁との間で該雄端子を挟持するようになっており、
前記弾性接触片は、前記への字状の頂部及び頂部近傍の第1領域の幅方向の寸法が、該弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成され、
前記第1領域は、前記頂部から前端側に延びる第1斜面と、該頂部から後端側に延びる第2斜面とに跨るように形成されており、
前記弾性接触片の前記第1領域の上面には、前記頂部を基準にして該弾性接触片の前後方向に延び且つ該弾性接触片の厚み方向に突出する厚肉部が形成され、
前記厚肉部は、前記弾性接触片の幅方向に短径を有する長円形状若しくは角丸長方形状に形成され、前記短径の寸法が、前記弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法と略同じ寸法、或いは該第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法になっており、
さらに、前記ボックス部の両側壁には、それぞれ、前記弾性接触片の第1領域の側部が移動自在に挿入される長孔が形成されていることを特徴とする端子金具。
前記第1領域は、その中心が前記弾性接触片の頂部に位置するように形成されていると共に、該第1領域の前後両端の位置からそれぞれ前記頂部に向けて徐々に幅方向の寸法が大きくなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の端子金具。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの接続等に用いられる自動車用コネクタは、高い信頼性が要求されており、パソコンや家電の接続端子(一般端子)と比べて、大きい接触力が維持できる構造が求められている。そのため、自動車用コネクタは、所望の大きさの接触力が維持できるように設計されており、例えば、雄端子と雌端子との接触力が、一般端子と比べて、10倍程度の大きさになるように設計されている。
【0003】
ここで、従来技術の自動車用コネクタの接続端子の構造について
図13を参照しながら説明する。なお、
図13は、従来技術の自動車用コネクタの接続端子を説明するための模式図であり、(a)が自動車用コネクタの接続端子を構成する雄側の端子と雌側の端子(端子金具)を示した模式図であり、(b)が端子金具の弾性接触片を斜め上方からみた模式図である。
【0004】
図示する端子金具200は、前端側に中空角筒状のボックス部210が形成され、後端側に電線の端部を接続するための電線接続部220が形成されている。また、ボックス部210は、底壁211と上壁213と左右両側壁212とから構成され、その前端部には、雄端子300が挿入される開口210aが形成されている。また、ボックス部210の底壁211の上面側には、開口210aに雄端子300が挿入されたときに、上壁213との間で雄端子300を挟持する弾性接触片(弾性接触バネ)214が設けられている。
【0005】
この弾性接触片214は、底壁211の前端に延設した帯板状のバネ片(略同一幅寸法の帯板状のバネ片)を、その基端部で上方に折り返し且つその先端を後方側に向けて折り曲げ、後方に延びるバネ片を、その長さ方向の中間部が上壁213に向けて凸状に膨らむようにへの字状に屈曲させ、自由端(先端)を底壁211の上面にスライド可能に接触させた構成になっている。
【0006】
この端子金具200に対して、図中の矢印方向(X方向)に、雄端子300を挿入すると、への字状に屈曲した弾性接触片214の頂部に雄端子300が当接することにより、弾性接触片214が下方に弾性変位する。そして、端子金具200に挿入された雄端子300は、弾性変位した弾性接触片214の弾性力により上壁213に向けて付勢され、弾性接触片214と上壁213とで挟持される(これにより、雄端子300と端子金具300の電気的接続が図られる)。
なお、
図13に示す端子金具200と同様の構造の弾性接触片214を備える端子金具は、例えば、特許文献1の
図8に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術の端子金具200は、雄端子300が挿入された際に、への字状の頂部にかかる荷重により発生する応力の影響により、弾性接触片214の頂部がへたって永久変形することがあるという技術的課題を有している。その結果、上述した端子金具200を採用した自動車用コネクタでは、例えば、使用している最中に、弾性接触片214がへたってしまい、所望の接触力が維持できないことがあった。
すなわち、上述した従来技術の端子金具200は、弾性接触片214が、同一幅の帯板状のバネ片をへの字状に屈曲させて形成した構成であるが(
図13(b)参照)、この構成では、雄端子300が挿入された際、への字状の頂部にかかる荷重により発生する応力に十分に対応できず、弾性接触片214の頂部がへたり永久変形することが発生している。
【0009】
なお、近年、自動車用コネクタは、小型化される傾向にあり、これにともない、コネクタの端子金具の大きさ寸法も小さくなっている。そして、上述した従来技術の端子金具200は、小型化されると、弾性接触片214の大きさ寸法も小さくなるため、その強度が低下し、ますます、弾性接触片214が永久変形し易くなる。すなわち、従来技術の端子金具200は、小型化の要望に十分に対応できない構造になっている。
【0010】
本発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、相手側端子との間で所望の接触力を維持できるコネクタ用の端子金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、相手側の雄端子が挿入される、底壁と上壁と両側壁とを有する中空筒状のボックス部を備え、該ボックス部の内部に、該雄端子が挿入された際に該雄端子と接触する弾性接触片が設けられた端子金具であって、前記弾性接触片は、前記底壁の前端から後端側に向けてU字状に折り曲がって延設され、その長さ方向の略中間部が上壁に向けて凸状に屈曲したへの字状に形成されていると共に、その自由端が後端側の底壁の上面に摺動自在に支持され、前記雄端子が挿入された際に該雄端子を前記上壁側に付勢して該上壁との間で該雄端子を挟持するようになっており、前記弾性接触片は、前記への字状の頂部及び頂部近傍の第1領域の幅方向の寸法が、該弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成され、
前記第1領域は、前記頂部から前端側に延びる第1斜面と、該頂部から後端側に延びる第2斜面とに跨るように形成されており、前記弾性接触片の前記第1領
域の上面には
、前記頂部を基準にして該弾性接触片の前後方向に延び且つ該弾性接触片の厚み方向に突出する厚肉部が形成され、前記厚肉部は、前記弾性接触片の幅方向に短径を有する長円形状若しくは角丸長方形状に形成され、前記短径の寸法が、前記弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法と略同じ寸法、或いは該第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法になっており、
さらに、前記ボックス部の両側壁には、それぞれ、前記弾性接触片の第1領域の側部が移動自在に挿入される長孔が形成されていることを特徴とする。
なお、本発明において長円形状とは、楕円形や、レーストラック形状(相対向する一対の直線部と、当該直線部の両端を結ぶ一対の円弧部とを有する形状)のことをいう。
【0012】
本発明では、雄端子が挿入された際に最大応力が生じる「弾性接触片の頂部及び頂部近傍の領域(第1領域)」の寸法を、弾性接触片の第1領域以外の領域の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成している。この構成により、端子金具が小型化されても、第1領域の上面に、弾性接触片の厚み方向に突出する厚肉部を形成することができる。また、上記構成により、「厚肉部を、弾性接触片の幅方向に短径を有する長円形状若しくは角丸長方形状に形成すると共に、短径の寸法を、弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法と略同じ寸法、或いは該第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法」に形成することができ、弾性接触片のなかで最大応力が生じる第1領域の強度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の端子金具は、弾性接触片のなかで最大応力が生じる第1領域の強度を高めた構成になっているため、上述した従来技術(
図13参照)と比べ、弾性接触片がへたり永久変形することが防止される。また、本発明によれば、所望の接触力を維持することができる端子金具が提供され、この端子金具を用いることにより所望の接触力が維持されるコネクタが得られる。
また、本発明の端子金具は、上述した従来技術の接続端子(
図13参照)と比べて、弾性接触片の強度が高い構造になっており、小型化されても弾性接触片がへたり永久変形することが防止されているため、小型化の要望に対応することができる。
【0014】
また、本発明は、相手側の雄端子が挿入される、底壁と上壁と両側壁とを有する中空筒状のボックス部を備え、該ボックス部の内部に、該雄端子が挿入された際に該雄端子と接触する弾性接触片が設けられた端子金具であって、前記弾性接触片は、前記底壁の前端から後端側に向けてU字状に折り曲がって延設され、その長さ方向の略中間部が上壁に向けて凸状に屈曲したへの字状に形成されていると共に、その自由端が後端側の底壁の上面に摺動自在に支持され、前記雄端子が挿入された際に該雄端子を前記上壁側に付勢して該上壁との間で該雄端子を挟持するようになっており、前記弾性接触片は、前記への字状の頂部及び頂部近傍の第1領域の幅方向の寸法が、該弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成され、前記弾性接触片の前記第1領域の上面には、該弾性接触片の厚み方向に突出する厚肉部が形成され、前記厚肉部は、前記弾性接触片の幅方向に短径を有する長円形状若しくは角丸長方形状に形成され、前記短径の寸法が、前記弾性接触片の第1領域以外の幅方向の寸法と略同じ寸法、或いは該第1領域以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法になっており、前記厚肉部の断面は、前記頂部を基準に、前記弾性接触片の長手方向の前後に
対称な形状に形成されていることを特徴とする。また、前記第1領域は、その中心が前記弾性接触片の頂部に位置するように形成されていると共に、該第1領域の前後両端の位置からそれぞれ前記頂部に向けて徐々に幅方向の寸法が大きくなっていることが望ましい。
【0015】
このように、厚肉部の断面を、への字状の弾性接触片の頂部を基準にして、弾性接触片の長手方向の前後に
対称な形状に形成しているのは以下の理由による。具体的には、本発明の端子金具に雄端子を挿入すると、への字状の弾性接触片の頂部に雄端子が接触する。そして、弾性接触片は、前記頂部が荷重点となり、下方(上壁から底壁へ向かう方向)の荷重を受けて下方に弾性変位する。このときに、弾性接触片には、荷重点(頂部)を中心に長手方向両側にわたって応力が発生する。そこで、本発明では、弾性接触片の荷重点(頂部)を基準に長手方向の前後両側に
対称な断面形状を持つ厚肉部を設け、この応力に効果的に対応できるようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、相手側端子との間で所望の接触力を維持できるコネクタ用の端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の端子金具の斜視図であり、(a)が本実施形態の端子金具の外観を示した斜視図であり、(b)が本実施形態の端子金具を切断して内部を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の端子金具の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態の端子金具の側面図である。
【
図4】本発明の実施形態の端子金具の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態の端子金具の構成を説明するための模式図であり、ボックス部の上壁を取り外した状態を示した模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の端子金具の断面を示した模式図である。
【
図7】本発明の実施形態の端子金具の弾性接触片を説明するための模式図であり、(a)が弾性接触片を斜め上方から見た模式図であり、(b)が弾性接触片の平面を示した模式図であり、(c)が弾性接触片を側面から見た模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の端子金具のプレス加工前の端子原型プレートを示した模式図である。
【
図9】本発明の実施形態の端子金具の動作を説明するための模式図であり、(a)が雄端子が挿入される前の端子金具を示した模式図であり、(b)が雄端子を挿入された状態の端子金具を示した模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の端子金具の弾性接触片にかかる荷重方向を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の実施形態の第1変形例を示した模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の第2変形例を示した模式図である。
【
図13】従来技術の自動車用コネクタの接続端子を説明するための模式図であり、(a)が自動車用コネクタの接続端子を構成する雄端子と雌端子を示した模式図であり、(b)が雌端子の弾性接触片を斜め上方からみた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の端子金具について図面を用いて説明する。
先ず、本実施形態の端子金具の構成について
図1〜7、
図10を参照しながら説明する。
【0019】
図示するように、本実施形態の端子金具Wは、金属等の導電性部材により構成されており、その前端側に雄端子T(
図9参照)が挿入される中空角筒状のボックス部10が形成され、その後端側に電線の端部を接続する電線接続部50が形成されている。また、ボックス部10の内部には、挿入された雄端子Tと接触する弾性接触片(弾性接触バネ)14が設けられている。この端子金具Wは、例えば、自動車用接続コネクタのコネクタハウジング(図示せず)に挿嵌され、自動車用コネクタとして用いられる。なお、電線接続部50は、上述した従来技術の電線接続部220(
図13参照)と同様の構造であり、周知技術により実現されるものであるため、以下では、その説明を省略し、ボックス部10及び弾性接触片14の構成を詳細に説明する。
【0020】
先ず、ボックス部10の詳細な説明を行う。
具体的には、
図1〜
図4に示すように、ボックス部10は、底壁11と、底壁11と相対向している上壁13と、底壁11の両側部から立設する左右両側壁12とを備え、その前端部には、雄端子Tが挿入される開口10aが形成されている。なお、ボックス部10内部の底壁11の上面側には、雄端子Tが挿入された際に、上壁13との間で雄端子Tを挟持する弾性接触片(弾性接触バネ)14が設けられている。
【0021】
また、
図4及び
図6に示すように、上壁13は、一方の側壁12の上端から内側に略直角に折曲した上壁13aと、他方の側壁12の上端から内側に略直角に折曲した上壁13bとにより構成され、上壁13bの上に、上壁13aを重合させた構成になっている。また、上壁13bには、挿入される雄端子Tと接触する端子接触部13b1が設けられている。また、ボックス部10前端の下方側(底壁11側)には、一方の側壁12の前端から他方の側壁12側に折曲した板片17aと、他方の側壁12の前端から一方の側壁12側に折曲した板片17bとが形成されている(
図1、
図4参照)。
【0022】
また、ボックス部10の左右両側壁12には、それぞれ、側壁12を貫通する孔12aが形成されている(
図3、
図6参照)。この孔12aには、後述する「弾性接触片14の幅広部15a」が移動自在に挿入され、弾性接触片14の幅広部15aが側壁12と干渉しないようになっている。なお、図示する例では、孔12aは、角丸長方形状に形成されているが、この形状は例示に過ぎない。
【0023】
次に、弾性接触片14の構成を説明する。
図1及び
図6に示すように、弾性接触片14は、底壁11の前端から後端に向けてU字状に折曲して延設されており、その長さ方向の略中間部が上壁13に向けて凸状に屈曲したへの字状に形成されている。また、弾性接触片14は、その自由端が後端側の底壁11の上面に摺動自在に支持されている。
なお、弾性接触片14は、例えば、底壁11の前端から延設している帯板状のバネ片を、その基端部で上方に折り返し且つその自由端を後方側に向けて折り曲げ、さらに、後方に折り曲げたバネ片を、その長さ方向の中間部が上壁13に向けて凸状に膨らむようにへの字状に屈曲させることにより構成されている。
【0024】
また、
図5〜
図7に示すように、弾性接触片14は、への字状の頂部及び頂部近傍の中央領域15(
図7(b)、(c)に示す斜線部分)の幅方向の寸法が、弾性接触片14の中央領域(第1領域)15以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成されている。また、この中央領域15は、凸状の頂部から前端側に延びる第1斜面14aと、当該頂部から後端側に延びる第2斜面14bとに跨るように形成されている(
図6及び
図7(c)参照)。
なお、中央領域15は、長手方向の中心が、弾性接触片14の頂部に位置するように形成されている。また、
図7(b)に示すように、中央領域15は、自身の前後両端の位置15b、15cからそれぞれ前記頂部に向けて徐々に幅方向の寸法が大きくなっている(平面視で略樽形状に形成されている)。
【0025】
このように、弾性接触片14に、幅方向の長さ寸法が大きい中央領域15を設ける構成を採用したのは以下の理由による。
具体的には、端子金具Wに雄端子Tを挿入すると、への字状の弾性接触片14の頂部に雄端子Tが接触し、この頂部が荷重点となり、弾性接触片14には、上壁13から底壁11へ向かう方向の荷重がかかり、弾性接触片14は下方に弾性変位する。このときに、弾性接触片14には、荷重点(頂部)を中心に、長手方向両側にわたって応力が発生する。すなわち、端子金具Wに雄端子Tを挿入すると、弾性接触片14のなかで前記頂部及び頂部近傍の領域に最大応力が発生する。
そのため、本実施形態では、弾性接触片14の荷重点(頂部)を中心に長手方向両側に跨るように、幅方向の長さ寸法が大きい中央領域15を形成し、この中央領域15に、弾性接触片14の強度を高めるための、後述する厚肉部16を形成できるようにした。
【0026】
また、中央領域15には、その幅方向の寸法が、ボックス部10の幅方向の寸法(底壁部11の幅方向の寸法)より大きい幅広部15a(第2領域)が形成されている。また、この幅広部15aは、ボックス部10の左右両側壁12に形成された孔12aに移動自在に挿入されて配置されている(幅広部15aは、側壁12の孔12aに対して、上下方向に移動自在になるように配置されている)。この構成により、弾性接触片14が、挿入されてきた雄端子Tと接触し、ボックス部10内部で弾性変位して上下方向に動作した場合に、ボックス部10の側壁12に干渉しないようになる。
したがって、本実施形態によれば、弾性接触片14の幅方向の寸法を、ボックス部10の幅方向の寸法に制限されることなく設定することができる。すなわち、本実施形態によれば、ボックス部10の幅方向の寸法に制限されることなく、弾性接触片14の強度を高めることができる。
【0027】
また、
図5〜7に示すように、中央領域15には、弾性接触片14の厚み方向に突出する厚肉部16(弾性接触片14の上面側において上壁13側に突出している厚肉部16)が形成されている。この厚肉部16は、中央領域15と同様、弾性接触片14の凸状の頂部から前端側に延びる第1斜面14aと、当該頂部から後端側に延びる第2斜面14bとに跨るように形成されている。
また、図示する例では、厚肉部16は、平面視で長円形状に形成されている。具体的には、厚肉部16は、長手方向に長径を有し且つ幅方向に短径を有する長円形状に形成されており、
図5に示すように、その短径の寸法d2が、弾性接触片14の中央領域15以外の幅方向の寸法d1と略同じ寸法に形成されている(d1≒d2)。また、厚肉部16の断面は、前記頂部を基準に、弾性接触片14の前後方向に
対称な形状に形成されている(
図7(c)参照)。なお、本実施形態において長円形状とは、楕円形状や、レーストラック形状(相対向する一対の直線部と、当該直線部の両端を結ぶ一対の円弧部とを有する形状)等の形状のことをいう。
また、図示する例では、短径の寸法d2が、弾性接触片14の中央領域15以外の幅方向の寸法d1と略同じ寸法に形成されているが特にこれに限定されるものではない。短径の寸法d2が、弾性接触片14の中央領域15以外の幅方向の寸法d1よりも大きくなるように(d1<d2)、厚肉部16が形成されていてもよい。
また、図示する例では、厚肉部16が長円形状に形成されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、厚肉部16が、弾性接触片14の長手方向に長径を有し且つ幅方向に短径を有する「角丸長方形」に形成されていてもよい。また、例えば、厚肉部15が長方形状に形成されていてもよい(この場合、弾性接触片14の長手方向に長辺が形成され、幅方向に短辺が形成される)。
【0028】
このように、中央領域15に、上記の厚肉部16を設けることにより、弾性接触片14の頂部及び頂部近傍の領域の強度を高めることができ、その結果、弾性接触片14がへたり永久変形するとことを効果的に防止することができる。
【0029】
また、本実施形態の弾性接触片14は、
図6に示すように、自由端に、底壁11の上面に対して円弧凸状に湾曲している円弧部14cが形成され、この円弧部14cが底壁11と摺動自在に当接する。これにより、弾性接触片14が、底壁11の上面をスムーズに移動できるようになっている。
【0030】
次に、本実施形態の端子金具Wの製造方法について一例を挙げて説明する。
具体的には、
図8に示す、1枚の端子原型プレートAをプレス加工することにより、端子金具Wを形成することができる。以下、端子原型プレートAについて、説明の便宜上、プレス加工後の名称を用いて説明する。なお、
図8は、本実施形態の端子金具のプレス加工前の端子原型プレートを示した模式図である。
【0031】
具体的には、端子原型プレートAは、底壁11と、この底壁11の両側に延設された一対の側壁12と、一対の側壁12の側端部に延設された一対の上壁13a、13bと、一対の側壁12の前端に延設された一対の板片17a、17bと、底壁11の一端側(前端側)から延設された帯板状のバネ片(弾性接触片14になる帯板状のバネ片)とを有している。また、一対の側壁12には、それぞれ、孔12aが形成されている。また、上壁13bには、矩形凸状に突出した端子接触部13b1が形成されている。この端子原型プレートAをプレス加工により、所定の折曲部を折り曲げ加工することにより、
図1に示す構成の端子金具Wが形成される。
【0032】
次に、
図9、10を用いて、本実施形態の端子金具Wの動作を説明する。
なお、
図9は、本実施形態の端子金具の動作を説明するための模式図であり、(a)が雄端子が挿入される前の端子金具を示した模式図であり、(b)が雄端子が挿入された状態の端子金具を示した模式図である。また、
図10は、本実施形態の端子金具の弾性接触片にかかる荷重方向を説明するための模式図である。
【0033】
具体的には、端子金具Wは、開口10aに雄端子Tが挿入されると、への字状の弾性接触片14の頂部に雄端子Tが接触し、弾性接触片14のへの字状の頂部が押圧されて下方に弾性変位する。すなわち、
図10に示すように、弾性接触片14の頂部に、下方向に荷重Fがかかり、弾性接触片14が弾性変位する。この弾性変位にともない、自由端の円弧部14cが底壁11の上面を摺動しながら、図示するX方向に移動する。このときに、弾性接触片14は、頂部にかかる荷重に対する反力により(弾性力により)、上壁13bの端子接触部13b1に向け、挿入されている雄端子Tを付勢する。これにより、雄端子Tが、弾性接触片14と、上壁13bの端子接触部13b1との間に挟持される(
図9(b))。
【0034】
そして、本実施形態では、弾性接触片14の凸状の頂部及び頂部近傍の領域(中央領域15)の幅方向の寸法が、弾性接触片14の中央領域15以外の領域の幅方向の寸法よりも大きく形成されている。また、中央領域15には、弾性接触片14の厚み方向に突出する厚肉部16が形成されている。この構成により、雄端子Tが挿入された際、弾性接触片14のなかで最大応力が生じる領域(凸状の頂部及び頂部近傍の領域)の強度が高められる。その結果、本実施形態によれば、弾性接触片14の頂部がへたって永久変形することが効果的に防止される。すなわち、本実施形態の端子金具Wは、弾性接触片14のへたりの発生が防止された構造になっているため、所望の接触力が維持できる端子金具Wが提供できる。
【0035】
また、本実施形態では、弾性接触片14の中央領域15に、ボックス部10の幅方向の寸法(底壁部11の幅方向の寸法)より大きい幅広部15aが設けられている。また、ボックス部10の左右両側壁12に孔12aを設け、幅広部15aを、左右両側壁12の孔12aに移動自在に挿通させるように配置し、幅広部15aと、ボックス部10とが干渉しないように構成している。
【0036】
この構成により、弾性接触片14の幅方向の寸法を、ボックス部10の幅方向の寸法に制限されることなく設計することができる。すなわち、左右両側壁12に孔12aを設けたことにより、弾性接触片14の幅方向の寸法を、ボックス部10の幅方向よりも大きくでき、弾性接触片の強度を高めることができる。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態によれば、上述した従来技術と比べて、弾性接触片14の強度を高めた端子金具Wが提供され、その結果、所望の接触力が維持できるコネクタ用の端子金具Wが提供される。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上述した実施形態の端子金具Wにおいて、弾性接触片14の自由端と、ボックス部10の底壁11側との接触部分を、
図11に示すように変形してもよい。ここで、
図11は、本発明の実施形態の第1変形例を示した模式図である。
具体的には、
図11に示すように、ボックス部10の底壁部11に、底壁部11から斜め上方に(上壁13に向け)切り起こした切起片18を形成し、この切起片18の自由端に弾性接触片14の自由端を摺動自在に支持させるようにしてもよい。この場合、この切起片18の自由端(先端部)に円弧凸状の湾曲部18aを形成し、湾曲部18aと、弾性接触片14の自由端とを当接させるようにする。この構成においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
また、この構成によれば、弾性接触片14の変形に伴い、切り起こした切起片18の根元にも応力が発生するため、雄端子Tに受ける強度は減少するが、中央領域15付近に発生する応力は減少するため、全体として低い応力値となり、安定した性能を得ることが出来る。
【0040】
また、例えば、上述した実施形態の端子金具Wにおいて、弾性接触片14の自由端と、ボックス部10の底壁11側との接触部分を、
図12に示すように変形してもよい。ここで、
図12は、本発明の実施形態の第2変形例を示した模式図である。
具体的には、
図12に示すように、弾性接触片14の自由端が断面視でC字状に湾曲させて形成した円弧部19を設け、この円弧部19が、ボックス部10の底壁11に摺る動自在に支持されるように構成してもよい。この構成においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
また、この構成によれば、弾性接触片14の変形に伴い、円弧部19にも応力が発生するため、上記の第1変形例と同様、中央領域15付近に発生する応力は減少し、全体として低い応力値となり、安定した性能を得ることが出来る。
【0041】
また、本実施形態は、弾性接触片14は、その一端部が底壁11から延設された構成になっているが、特にこれに限定されるものではない。弾性接触片14は、その一端部が底壁11の前端部に固定された構造になっていればよく、例えば、弾性接触片14の一端部と、底壁11の前端が溶接により固定されていてもよい。
【0042】
W…端子金具
T…雄端子
A…端子原型プレート
10…ボックス部
10a…開口
11…底壁
12…側壁
12a…孔
13、13a、13b…上壁
13b1…端子接触部
14…弾性接触片
14a…第1斜面(弾性接触片)
14b…第1斜面(弾性接触片)
14c…円弧部
15…中央領域(弾性接触片)
15a…幅広部(弾性接触片)
16…厚肉部(弾性接触片)
17a、17b…板片
50…電線接続部
【解決手段】相手側の雄端子Tが挿入される、底壁11と上壁13と両側壁12とを有する中空筒状のボックス部10を備え、ボックス部10の内部に、雄端子Tが挿入された際に雄端子Tと接触する弾性接触片14が設けられた端子金具Wであって、弾性接触片14
は、底壁11の前端から後端側に向けてU字状に折り曲がって延設され、その長さ方向の略中間部が上壁に向けて凸状に屈曲したへの字状に形成されていると共に、その自由端が底壁11の上面に摺動自在に支持され、雄端子Tが挿入された際に雄端子Tを上壁側13に付勢して上壁13との間で雄端子Tを挟持するようになっている。弾性接触片14は、への字状の頂部及び頂部近傍の中央領域15が、弾性接触片14の中央領域15以外の幅方向の寸法よりも大きい寸法に形成されている。