特許第5773558号(P5773558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773558
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】制御回路を備える半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150813BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20150813BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20150813BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20150813BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H01L29/78 655F
   H01L29/78 655B
   H01L29/78 656B
   H01L29/78 657B
   H01L27/06 311B
   H01L27/06 311C
   H01L27/08 102E
   H01L27/08 102F
   H01L27/08 102J
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2007-302905(P2007-302905)
(22)【出願日】2007年11月22日
(65)【公開番号】特開2009-130096(P2009-130096A)
(43)【公開日】2009年6月11日
【審査請求日】2010年10月15日
【審判番号】不服2014-11521(P2014-11521/J1)
【審判請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
【合議体】
【審判長】 鈴木 匡明
【審判官】 小野田 誠
【審判官】 加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−93078(JP,A)
【文献】 特開平10−256542(JP,A)
【文献】 特開平7−263641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/78-29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型半導体基板の一方の主面に、選択的に形成される他導電型ベース領域と、
該ベース領域表面層に選択的に形成される一導電型エミッタ領域と、
該エミッタ領域表面と前記他導電型ベース領域表面とに共通に接触するエミッタ電極と、
前記エミッタ領域表面と前記半導体基板の表面とに挟まれる前記他導電型ベース領域の表面にゲート絶縁膜を介して積層されるゲート電極と、
前記一導電型半導体基板の他方の主面に形成される他導電型コレクタ領域とを有するIGBT部の活性領域と、
該活性領域を環状に取り巻く耐圧構造部と、
前記一方の主面側で前記環状の耐圧構造部の外側に設けられ、前記半導体基板の不純物濃度より高濃度の一導電型ドレイン領域と、
該一導電型ドレイン領域の表面と前記ゲート電極との間に該ゲート電極側をアノード側とする方向に接続されるツエナーダイオードとを有し、
前記環状の耐圧構造部の内側に配置され、前記IGBT部の活性領域内の前記エミッタ電極に接続される他導電型ウエルにより環状に取り囲まれ、前記エミッタ電極からの信号により前記IGBT部の異常状態を検知して、IGBT部のゲート電圧を制御することによってIGBT部の破壊を防止するように構成される制御回路を備える半導体装置において、
前記他導電型コレクタ領域と前記一導電型半導体基板との界面の前記一導電型半導体基板側に、選択的に設けられ前記一導電型半導体基板の端部には接しない一導電型第一バッファ領域と、該第一バッファ領域以外の前記界面に設けられる一導電第二バッファ領域と、を備え、
前記第二バッファ領域の不純物濃度は前記第一バッファ領域よりも低濃度であり、かつ前記一導電型半導体基板よりも高濃度であり、
前記第一バッファ領域端部は前記半導体基板の端部から離間し、
前記第一バッファ領域のコーナー部が曲率を有する形状であることを特徴とする制御回路を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第一バッファ領域の不純物濃度が1×1016cm-3〜5×1016cm-3であることを特徴とする請求項1に記載の制御回路を備える半導体装置。
【請求項3】
前記第二バッファ領域と前記コレクタ領域とのpn接合の耐圧が、前記第一バッファ領域と前記コレクタ領域とのpn接合の耐圧よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路を備える半導体装置。
【請求項4】
前記一導電型半導体基板の厚さは、前記コレクタ電極と前記エミッタ電極間に順方向耐圧の電圧が印加されたときに前記一導電型半導体基板に広がる空乏層が、前記第二バッファ領域に達しない厚さであることを特徴とする請求項3に記載の制御回路を備える半導体装置。
【請求項5】
前記第二バッファ領域の不純物濃度が5×1014cm-3よりも高いことを特徴とする請求項3または4に記載の制御回路を備える半導体装置。
【請求項6】
前記コレクタ領域、前記第一バッファ領域、前記第二バッファ領域がいずれもイオン注入によって導入された不純物によってドーピングされてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導負荷(L負荷)を含む回路に用いられる半導体装置に関し、特には内燃機関用点火装置(イグナイタ)に用いられる、制御回路を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5のイグナイタ点火回路図に示すように、誘導負荷45,42を含む回路において、電源41から一次側コイル45に流れる断続電流に対応して、二次側コイル42に生じる高電圧により前記二次側コイル42に接続された内燃機関用点火プラグ44に発生する断続スパークを利用する内燃機関用点火装置がある。この内燃機関用点火装置では、前記一次側コイルに断続電流を流すために用いられるスイッチング手段43として、従来はバイポーラトランジスタが用いられていたが、近年、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)に置き換えられつつある(特許文献1、2)。
前記内燃機関用点火装置に用いられるスイッチング手段43としてのIGBTに求められる電気特性については、特に低オン電圧特性と低スイッチング損失特性が重視される。
従来、内燃機関用点火装置に用いられるIGBTは、前者の低オン電圧特性を得るために、図4のIGBTの要部断面図に示すように、厚いp+型シリコン基板25上にn+型バッファ層24を介して薄いエピタキシャル層(n型ドリフト層)26を形成し、この薄いエピタキシャル層26の表面層にMOSゲート構造を形成するパンチスルー型IGBTが用いられてきたが、エピタキシャル層を有しているため、高コストであり、また、後者の低スイッチング損失特性については必ずしも要求特性を充分には満足させるものとは言えなかった。そこで、前記高コストとスイッチング損失とをさらに改良するために、FZ基板を用いたノンパンチスルー(以降、NPTと略記することもある)型IGBTや、さらに特性改善できるフィールドストップ(n+型バッファ層)型IGBTが検討された(特許文献3)。
【0003】
前記フィールドストップ(以降FSと略すこともある)型IGBTはパンチスルー型IGBTの一種であるが、通常、パンチスルー型IGBTとは高濃度シリコン基板上に薄いエピタキシャル層を有する構成のIGBTを言い、高コストであるのに対して、ノンパンチスルー型およびFS型IGBT(FS−IGBTとも記す)は安価なFZ−n基板を用いることができ、安価で、低オン電圧特性、低スイッチング損失特性も得られるIGBTデバイスである。
また、図4に示す従来のイグナイタ用パンチスルー型IGBTや、さらには前記NPT−IGBT、FS−IGBTにおいても、図4に示すように、IGBTがエミッタ−コレクタ間の順バイアス時の過電流、過電圧あるいは発熱などにより破壊することを防止するため、IGBTの動作状況を常時監視して異常を検知した時にはゲート信号を制御して異常を回避可能にするための制御回路21を内蔵する構成のものがある。この制御回路21はpウエル9内の表層に形成され、IGBT20のエミッタ電極22と電気的に接続されるドレイン10−1と、ソース10−2と、このドレイン10−1およびソース10−2間のpウエル9の表面にゲート絶縁膜11を介して積層されるゲート電極12とで構成されるnチャネルMOSFETを主たるトランジスタとして有する構造である。
【0004】
前記図4のIGBTの説明については、一般的なIGBTと同様であるので、符号の説明にとどめ、詳細な機能、動作の説明は省略する。符号1、2、3はそれぞれIGBTのコレクタ、ゲート、エミッタの各端子である。符号6、7、13、14はそれぞれpウエル、n+型エミッタ領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極などからなるIGBTのMOSゲート構造である。符号22、40はIGBTの主電極となるエミッタ電極、コレクタ電極である。符号8、15、24、25、26は制御回路21を取り巻くpウエルコンタクト領域およびIGBTのそれぞれドレイン領域、n+型バッファ層、p+型半導体基板、n型ドリフト層である。符号16、18、20、21はゲート−ドレイン間に接続されるツエナーダイオード、IGBTの電界緩和構造、IGBT(の活性領域)部、IGBT部の異常を検知し回避するための制御回路である。
ところが、前記図5のイグナイタ用の誘導負荷回路では、スイッチング手段43として採用されたIGBTがオン状態からオフ状態に移る際に、オン電流が急激に減少する過程(di/dt)では、一次側コイルにはそのコイルインダクタンスLとそのコイルに流れる電流の減少とに対応してその減少を抑制する方向の電圧(=L×di/dt(IGBTのコレクタ側が正の方向))が急激に上昇し、オフ状態になると急激に前記電圧が下降する(サージ電圧)現象が生じる。この急激に発生するサージ電圧(数100V)がIGBTのコレクタ−ゲート間にゲート側をアノード側とするように配置されるツエナーダイオード16に予め設定された逆耐電圧によってクランプされると、前記一次側コイル45の電圧が二次側コイル42に誘起され、二次側コイル42に逆方向の電圧が発生し、点火プラグにスパークが発生する。前述した一連の過程で、前記一次側の正のサージ電圧は下降時に負電圧(数10〜100V)に至ることがある。一次側コイルが逆方向の電圧になると、前記IGBTのコレクタ1に逆バイアス(コレクタに負電圧)がかかることになるので、IGBTが破壊されることがあった。
【0005】
この破壊について図6を参照して説明する。エミッタ3−コレクタ1の端子間にコレクタを負とする逆バイアス30が印加された場合、IGBTの表面側を構成するpウエル6とn型ドリフト層26との間のpn接合17は順方向バイアスとなる。一方で、IGBTのコレクタ層となるp+型シリコン基板25とn型バッファ層24との間のpn接合19は逆バイアスとなる。したがって、この逆バイアスでは、pn接合19の阻止能力で耐圧が決まる。このpn接合19はウエハ段階でp+型シリコン基板25の全面にn型バッファ層24をエピタキシャル形成する際に形成されるので、大径ウエハから賽の目状のIGBTチップに切断する際に、前記pn接合19も同時に切断されて、個別の各チップの四方の切断端面にpn接合19の終端部32が露出する。また、この切断は通常、ダイシング装置などによる機械的切断がされるので、この四方の切断端面には多くの結晶ダメージが存在している。このため、前記四方の切断端面の全周囲に露出する前記pn接合19の終端部32は、場所によってpn接合19の逆耐圧が著しくばらついて、局部的に非常に耐圧の低い場所が存在する。その結果、IGBTのコレクタに逆バイアスサージが印加されると、この耐圧の低い領域に大きな電流が局部的に集中して素子が破壊され易くなるということが知られている。
【0006】
この逆バイアスによるIGBTの素子破壊は、前述の順バイアス時の異常を検知し、回避させるためにIGBTに内蔵される制御回路によっては防ぐことはできない。
この逆バイアスサージによる素子破壊は、前述したNPT−IGBTやFS−IGBTにおいて特に顕著である。その理由は、NPT−IGBTやFS−IGBTではp型コレクタ層が1μm程度の極めて薄い層で形成されており、しかも、最も欠けなどの発生しやすい表面端部近傍にpn接合が存在するからである。
これに対して、IGBTチップの切断端面にpn接合の終端部を露出させないようにpn接合を前記切断端面に至る前の内側で湾曲させてpn接合の終端部を基板表面の耐圧構造領域に出すようにして、エミッタ−コレクタ間にコレクタを負とする逆サージ電圧に対して十分な耐圧を維持できるようにする工夫が公知になっている(特許文献4)。また、別の方法として、表面側にコレクタと同電位のn型領域を設けて、これをワイヤボンディングでコレクタと接続することにより、前記素子破壊を回避する方法が公開されている(特許文献5)。またさらに、パンチスルー型IGBTで、厚いp+コレクタ基板とn+バッファ層とのpn接合の逆耐圧の調節を容易にできるようにすることにより、オン電圧、スイッチング損失、サージ耐量を最適に設定することのできるIGBTについて文献が公開されている(特許文献6)。
【特許文献1】特開2000−310173号公報
【特許文献2】特開2002−4991号公報
【特許文献3】特開2001−153011号公報
【特許文献4】特開2007−165424号公報
【特許文献5】特許第2959127号公報
【特許文献6】特開2006−173297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献4に記載の方法では、100μm以上の深いp型の拡散領域を必要とし、同時に面方向にもp型の拡散領域が拡がるために広い面積領域を個々の半導体チップ周辺に確保する必要があること、およびそのためには100時間以上の長い時間を要する熱処理工程が必要であることから、スループットが極めて悪く、また高温長時間の熱処理によって、シリコン半導体基板中に多くの結晶欠陥が導入されて、歩留まりが著しく低下し易くなるなどの問題がある。
また、前記特許文献5に記載の方法は本来、前述のイグナイタに用いられるIGBTのコレクタに負電圧がかかる逆サージ電圧への対策ではなく、インバータなどのL負荷駆動回路において、フライホイーリングダイオードを外付けで追加するのを回避するために設けられたものである。この方法では、コレクタに逆バイアスが印加されても、コレクタ側にpn接合ではなく、オーミック部分があるため、そこを通して大きな電流が流れることから、電圧降下がほとんどなく、熱の発生が少なく、また電流が集中することが無い。しかしながら、半導体装置表面に大きなn型領域を形成する必要があり、このためチップサイズが増大するという問題がある。
この特許文献5については、さらに別の問題もある。自動車用の半導体デバイスなどでは、直流電源の電池が誤って逆に接続される場合がある。この場合でも、自動車用の半導体デバイスでは少なくとも1分は素子が破壊せずに耐えることが要求される。しかしながら、前記特許文献5にあるようなフライホイーリングダイオードを内蔵する方法では、電池を逆に接続した瞬間に素子の温度が上昇して破壊に至るため、このような注意が必要な自動車用デバイスとしては使えないという問題である。
【0008】
前記特許文献6については、バッテリの端子が逆方向に誤接続されたとしても、IGBT部へ電流が流れないように、IGBTのpコレクタ−nバッファ層間のpn接合の逆耐圧を利用する構造であるが、高濃度基板上に成長させるエピタキシャルシリコン基板を用いるので、高コストであることを免れない。さらに、オン電圧、スイッチング損失、サージ耐量の間にはオン電圧を良くしようとするとスイッチング損失やサージ耐量が低下するなどトレードオフの関係があり、最適化を計ったとしても一定の限界が見られる。
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、長時間拡散に伴うチップサイズの拡大をせず、高価なエピタキシャル基板を用いることなく、安価なシリコン基板を用いて、IGBT部がオンからオフに移る際にコレクタ側を負電圧とする方向の逆サージ電圧が生じても破壊され難い、制御回路を備える半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許請求の範囲記載の発明によれば、一導電型半導体基板の一方の主面に、選択的に形成される他導電型ベース領域と、該ベース領域表面に選択的に形成される一導電型エミッタ領域と、該エミッタ領域表面と前記他導電型ベース領域表面とに共通に接触するエミッタ電極と、前記エミッタ領域表面と前記半導体基板の表面とに挟まれる前記他導電型ベース領域の表面にゲート絶縁膜を介して積層されるゲート電極と、前記一導電型半導体基板の他方の主面に形成される他導電型コレクタ層とを有するIGBT部の活性領域と、該活性領域を環状に取り巻く耐圧構造部と、前記一方の主面側で前記環状の耐圧構造部の外側に設けられ、前記半導体基板の不純物濃度より高濃度の一導電型ドレイン領域と、該一導電型ドレイン領域の表面と前記ゲート電極との間に該ゲート電極側をアノード側とする方向に接続されるツエナーダイオードとを有し、前記環状の耐圧構造部の内側に配置され、前記IGBT部の活性領域内の前記エミッタ電極と表面で接触する他導電型ウエルにより環状に取り囲まれ、前記エミッタ電極からの信号により前記IGBT部の異常状態を検知して、IGBT部のゲート電圧を制御することによってIGBT部の破壊を防止するように構成される制御回路を備える半導体装置において、前記他導電型コレクタ領域と前記一導電型半導体基板との界面の前記一導電型半導体基板側に、選択的に設けられ前記一導電型半導体基板の端部には接しない一導電型第一バッファ領域と、該第一バッファ領域以外の前記界面に設けられる一導電第二バッファ領域と、を備え、前記第二バッファ領域の不純物濃度は前記第一バッファ領域よりも低濃度であり、かつ前記一導電型半導体基板よりも高濃度であり、前記第一バッファ領域端部は前記半導体基板の端部から離間し、前記第一バッファ領域のコーナー部が曲率を有する形状である半導体装置とする
【0010】
前記第一バッファ領域の不純物濃度が1×1016cm-3〜5×1016cm-3であってもよい。
記第二バッファ領域と前記コレクタ領域とのpn接合の耐圧が、前記第一バッファ領域と前記コレクタ領域とのに形成されるpn接合の耐圧よりも高くてもよい。
前記一導電型半導体基板の厚さは、前記コレクタ電極と前記エミッタ電極間に順方向耐圧の電圧が印加されたときに前記一導電型半導体基板に広がる空乏層が、前記第二バッファ領域に達しない厚さであってもよい。
前記第二バッファ領域の不純物濃度が5×1014cm-3よりも高くてもよい。
前記コレクタ領域、前記第一バッファ領域、前記第二バッファ領域がいずれもイオン注入によって導入された不純物によってドーピングされてなってもよい。
本発明は、半導体装置のp型コレクタ層に接するn型半導体基板側界面に選択的に設けられ、該n型半導体基板の不純物濃度より高濃度のn型バッファ領域を備え、かつそのpn接合の耐圧をバッテリ電圧よりわずかに大きくした構成のIGBTを含む制御回路を備える半導体装置とすることにより、前記本発明の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長時間拡散に伴うチップサイズの拡大をせず、高価なエピタキシャル基板を用いることなく、安価なシリコン基板を用いて、IGBT部がオンからオフに移る際にコレクタ側を負電圧とする方向の逆サージ電圧が生じても破壊され難い、制御回路を備える半導体装置を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる制御回路を備える半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下、実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1にかかる過電圧防止機能を有する制御回路を備えるIGBTの要部断面図である。この実施例1では、600V耐圧のIGBTの場合、抵抗率30Ωcm(1.5×1014cm-3)のFZ−n型半導体基板4を用い、図1に示すような周知の所定のIGBT(の活性領域)部20を形成する。コレクタ1−ゲート2間にゲート2をアノードとする方向に接続されるツエナーダイオードの構成と機能は前記図4と同様であるので、重複する説明を避けるために、ここでの説明を省略する。過電圧防止機能を有する制御回路21についても、前記図4の制御回路21と同様の構成および機能を有する。すなわち、制御回路21の機能は、IGBTが過電流や過電圧、また発熱による破壊を防止するため、動作状況を監視して異常時にはゲート信号を制御することである。この制御回路21はpウェル9内部に形成され、ドレイン10−1がIGBTのエミッタ電極22と接続されるnチャネルMOSFETを主たるトランジスタとして構成している。
この回路21を内蔵するIGBTでは、IGBTがオンして導通状態のとき、コレクタ端子1から正孔が表面のpウエル6へ向かって流れ込む。この正孔による電流はIGBTの主電流となるが、それだけではなく、前述の制御回路21を構成するpウエル9へも流れ込む。この正孔による回路21へと流れ込む電流は、回路部21に存在する寄生トランジスタの動作を誘発することがあるため、その動作を抑制する目的で、前記IGBT(の活性領域)部20と前記回路部21との間に環状に前記回路21を取り囲む形状のpウエルコンタクト領域8を設け、大きなコンタクト面積でエミッタ電極と短絡することにより、前記pウエル9へ流れ込む電流をエミッタ電極へ逃がして回路部21へ流れる電流を少なくする構成をとっている。
【0014】
前述のIGBT(の活性領域)20を形成する際、IGBTチップの裏面側、すなわち、p型コレクタ層5とn型半導体基板(n型ドリフト層)4間のコレクタpn接合31−1には、このコレクタpn接合31−1のn型ドリフト層4側であって、チップの切断端面33には接しないように切断端面33の内側に選択的に前記n型ドリフト層4より高濃度のn型バッファ領域(第一バッファ領域)46が付加されている。p型コレクタ層5と付加したn型バッファ領域46との間のコレクタpn接合部分31−2の耐圧は、n型バッファ領域(第一バッファ領域)46の不純物濃度が前記n型ドリフト層4よりも高くされているので、前記コレクタpn接合31−1の耐圧より低くなるが、電池電圧よりも少しだけ高い電圧に設定される。具体的には12V電池ではおおよそ26V〜30Vに設定する。このとき付加されるn型バッファ領域46の不純物濃度は1×1016cm-3程度で深さは1μm程度である。一方のp型コレクタ層5の不純物濃度は1×1017cm-3程度である。このように設定することにより、電池が誤って逆方向に接続されても、前記コレクタpn接合部分31−2の耐圧により阻止されて過大な電流は素子には流れず破壊を防止することが可能となる。
その一方で、大きな逆コレクタサージ(コレクタを負とするコレクタ−エミッタ間バイアス)が印加された場合には、付加されたn型バッファ領域46とp型コレクタ層5とで形成されるpn接合部分31−2の耐圧でクランプされた状態で、大きな電流がこの部分に流れる。そのため、コレクタ電圧はpn接合部分31−2の耐圧以上大きな負電圧にはならず、そのほかの領域での耐圧を超えることが無く、電界集中を防止することが可能になる。
【0015】
n型バッファ領域46の平面パターンは、大径ウエハを機械的にダイシングして単体のIGBTチップに分割するときに、切断面にn型バッファ領域46がかからないように、切断ラインから内側に(約50μm程度の内側)n型バッファ領域46の端が来るように配置することが肝要である。n型バッファ領域46の面積はIGBTの表面側のエミッタ電極より大きくすることがサージを吸収する場合にはサージ電流密度の上昇が少なくなるのでよい。n型バッファ領域46のコレクタ領域全体に対する面積比率はオン電圧、スイッチング損失特性にも関係するので、それらの特性を勘案して必要に応じて適宜決めることができる。n型バッファ領域46は一つの領域ではなく、島状、ストライプ状、格子状に分割されていてもよい。また、n型バッファ領域46の周囲の形状は耐圧に関係するので、なるべく電界集中が緩和されるようにコーナー部の曲率半径を大きくするかまたは大きくでき難いパターンの場合は、碁盤目に島状のn型バッファ領域46を規則正しく並べるパターンのように、電界集中箇所を均一に分散させるようなパターンとすることが好ましい。
【実施例2】
【0016】
図2は実施例2にかかるIGBTの要部断面図である。実施例2のIGBTではさらに特性を向上させるため、コレクタpn接合のうち、前記第一バッファ領域46が接する部分のpn接合部分以外のpn接合にも接する、第一バッファ領域46より不純物濃度の低いn型バッファ領域(第二バッファ領域)47を形成する構造とした。これはFS−IGBT構造と同様にn型ドリフト層4の厚さを薄くしてオン抵抗を下げる効果があるが、それとは別に高温でのリーク電流を抑える効果がある。すなわち、自動車などで、150℃以上での動作が必要な用途においては、高温でのリーク電流が重要になるから、特にイグナイタ用途においてはフィールドストップとして利用するのではなく、リーク電流を抑えるのに使用する場合に、特に利点が生じる。このとき、n型ドリフト層4の厚さは、最大耐圧印加時の空乏層がコレクタ側のn型第二バッファ層47に達しない程度に厚くしておいてよい。具体的には600V素子では90〜100μm程度となる。また、このn型バッファ領域(第二バッファ領域)47の濃度は、前記付加されるn型バッファ領域46よりも耐圧を高くしておく必要があるため、濃度が低い必要がある。具体的には1×1016cm-3程度かそれ以下が好ましい。ただし、この濃度が5×1014cm-3を下回るようになると、高温でのリーク電流を防止する効果がなくなってくるため、それ以上である必要がある。
【0017】
(製造工程)
図3は以上説明した実施例1、2にかかるIGBTを製造するための主要な製造工程を示す要部断面図である。括弧内の数字は主要な製造工程ステップを示し、図3中の括弧内の数字に対応する。ステップ(1)ではエピタキシャルシリコン基板ではなく、FZ型シリコン結晶あるいはCZ型シリコン結晶などの高抵抗シリコン基板4を用意する。ステップ(2)では通常のIGBTの製造工程により、基板4の表面にMOSゲート構造を含むIGBT(の活性領域)部20や耐圧構造部18および制御回路部21などの表面デバイス構造を製造する。ステップ(3)では半導体基板4の表面側を保護フィルム35で保護した後、裏面側の鎖線で示す部分を研削して所定の厚さにする。ステップ(4)では裏面側にフォト工程によって、フォトレジストフィルムを開口し、矢印で示すイオン注入などの方法でn型バッファ層46を形成するためにn型不純物、たとえば、リンを導入する。次に、ステップ(5)ではウエハ裏面の全面にp型コレクタ層5を導入する場合にp型不純物としてボロンを、またn型バッファ層47を付加する場合にはn型不純物のリンなどを全面にイオン注入する。この工程ではフォト工程は不要である。その後、400℃程度の熱処理を行って、導入した不純物を熱的に活性化する。このとき、この温度では導入した不純物は100%活性化できないことから、さらに濃度を高めるためには、たとえば、レーザーアニール装置によれば、ほぼ100%の活性化を達成することができる。その後、ステップ(6)において裏面側コレクタ電極40を形成して完成する。このとき、裏面側のシリコン基板面と直接接触する金属としては、シリコンと容易に電気的なオーミック接触がとれるようにTiやAlなどを用いるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように、本発明にかかる過電圧保護機能を有する制御回路を備えるMOSFETまたはIGBTは、サージが頻繁に発生する自動車のイグナイタやリレー代替用のスイッチなど、さまざまなパワースイッチング用半導体装置として使用され有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1にかかる制御回路を備えるIGBTの要部断面図である。
図2】本発明の実施例2にかかる制御回路を備えるIGBTの要部断面図である。
図3】本発明にかかる制御回路を備えるIGBTの製造工程ごとの制御回路を備えるIGBTの要部断面図である。
図4】従来のイグナイタ用制御回路を備えるIGBTの要部断面図である。
図5】一般的なイグナイタ点火回路図である。
図6】コレクタに負電圧をかける逆サージ電圧による制御回路を備えるIGBTの破壊を説明するためのIGBTの要部断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 コレクタ端子
2 ゲート端子
3 エミッタ端子
4 n型半導体基板、n型ドリフト層
5 p型コレクタ層
6 pウエル
7 n+型エミッタ領域
8 pウエルコンタクト領域
9 pウエル
10−1 ドレイン
10−2 ソース
11 ゲート絶縁膜
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極
15 ドレイン領域
16 ツエナーダイオード
17 pn接合
18 電界緩和構造
19 pn接合
20 IGBT(の活性領域)部、IGBT
21 制御回路部
25 p+型シリコン基板
26 エピタキシャル層、n型ドリフト層
30 逆バイアス
31−1 pn接合部分
31−2 pn接合
32 pn接合の終端部
33 切断端面33
35 保護フィルム
40 コレクタ電極
46 n型バッファ領域、第一バッファ領域
47 n型バッファ領域、第二バッファ領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6