(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記心拍数のリアルタイムの計測値が前記目標心拍数に略一致するか否かを判定し、判定結果に従って前記開始タイミングを制御する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記呼吸指示部は、前記被検体のリアルタイムの呼吸レベルの計測値と前記呼吸レベルの目標値との大小関係及び差分の少なくとも一方に応じた前記呼吸指示を実行する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記制御部は、前記被検体のリアルタイムの呼吸レベルの計測値が前記呼吸レベルの目標値に略一致するか否かを判定し、判定結果に応じて前記開始タイミングを制御する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わるX線CT装置を説明する。
【0009】
X線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転するROTATE/ROTATEタイプや、リング状に多数の検出素子が配列され、X線管のみが被検体の周囲を回転するSTATIONARY/ROTATEタイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプにも本実施形態は適用可能である。ここでは、ROTATE/ROTATEタイプとして説明する。
【0010】
また、X線コンピュータ断層撮影装置により利用される画像再構成法には、フルスキャン法とハーフスキャン法とがある。フルスキャン法では、1ボリュームのCT画像のデータを再構成するために、被検体の周囲1周、すなわち約2π[rad]分の投影データが必要である。また、ハーフスキャン法では、1ボリュームのCT画像のデータを再構成するために、π+α[rad](α:ファン角)分の投影データが必要である。本実施形態は、フルスキャン法とハーフスキャン法とのいずれの方法も適用可能である。しかし、以下、説明を具体的に行なうため本実施形態は、フルスキャン法を採用するとする。
【0011】
本実施形態に係るX線CT装置は、被検体の心臓をスキャン対象とし、心臓領域内の診断部位の造影効果が異なる2つのタイミングの各々において心臓スキャンを実行する。心臓スキャンは、以下の2つのスキャン方式を含む。1つ目は、心電波形に同期して特定の心電位相のみX線を照射して投影データを収集する方式。この場合、収集された投影データに基づいてCT画像のデータを再構成する。2つ目は、X線を連続的に照射しながら複数周分の投影データを収集する方式(いわゆるダイナミックスキャン)。この場合、収集された投影データのうちの特定の心電位相の投影データに基づいてCT画像のデータを再構成する。本実施形態においては、上記の2種類の心臓スキャンが適用可能であるが、以下の説明の簡単のため2番目の心臓スキャンを実行するものとする。
【0012】
本実施形態においては心臓スキャンを2回実行するものとする。初めに実行される心臓スキャンを第1の心臓スキャン、第1の心臓スキャンの後に実行されるものを第2の心臓スキャンと呼ぶことにする。
【0013】
図1と
図2とは、本実施形態に係るX線CT装置の概略的なシステム構成を示す図である。
図1に示すシステム構成においては、X線CT装置と心電計と呼吸センサとがケーブルを介して接続されている。
図1のシステムにおいて被検体や操作者は、X線CT装置に搭載されたモニタと呼吸センサに搭載されたモニタとを利用できる。一方、
図2に示すシステム構成においては、呼吸センサが内蔵されたX線CT装置と心電計とがケーブルを介して接続されている。
図2のシステムにおいて被検体や操作者は、X線CT装置に搭載されたモニタのみを利用である。以下の説明を具体的に行うため、本実施形態に係るX線CT装置は、
図1のシステム構成下にあるものとする。
【0014】
図3は、本実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。
図1に示すように、スキャン機構(ガントリ)10と画像処理装置30とを搭載する。
【0015】
スキャン機構10は、被検体PをX線でスキャンするための様々な機構を有する。具体的には、スキャン機構10は、円環又は円板状の回転フレーム12を搭載する。回転フレーム12の内周側には、天板14に載置された被検体Pが挿入されるスキャン領域が形成される。天板14は、図示しない寝台により長手方向と上下方向とに沿ってスライド可能に支持されている。
【0016】
回転フレーム12は、天板14に載置された被検体Pを挟んで対向するようにX線管16とX線検出器18とを支持する。回転フレーム12は、回転駆動部20からの駆動信号の供給を受けてX線管16とX線検出器18とを回転軸Z周りに回転させる。回転フレーム12の回転軸Zは、典型的には、天板14の長軸に平行に配置される。回転駆動部20は、画像処理装置30内のスキャン制御部44による制御に従って回転フレーム12を回転する。
【0017】
X線管16は、高電圧発生部22から高電圧の印加を受けてX線を発生する。高電圧発生部22は、画像処理装置30内のスキャン制御部44による制御に従ってX線管16に高電圧を印加する。
【0018】
X線検出器18は、X線管16から発生され被検体Pを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた電流信号を生成する。X線検出器18には、データ収集回路(DAS)24が接続されている。
【0019】
データ収集回路24は、スキャン制御部44による制御に従ってX線検出器18から電流信号を読み出す。データ収集回路24は、読み出された電流信号を増幅し、増幅された電流信号をデジタル変換することによって、デジタル信号である投影データを生成する。生成された投影データは、図示しない非接触データ伝送部を介して画像処理装置30に供給される。なお、1のビュー(X線の照射角度)に関する投影データの集合を投影データセットと呼ぶことにする。
【0020】
画像処理装置30には、ケーブル等を介して心電計100と呼吸センサ200とが接続されている。
【0021】
心電計100は、被検体Pの心臓から生じる電気信号(心電図信号)を電気的に検出し、検出された心電図信号に基づいて心電図波形を生成する。生成された心電図波形のデータは、画像処理装置30に供給される。また、心電計100は、被検体Pに関する心拍数を計測する。具体的には、そして心電計100は、生成された心電図波形から1分間あたりの心拍数を計測する。心拍数の計測値(以下、心拍数値と呼ぶことにする。)は、画像処理装置30に供給される。このように心電計100は、心電図波形の生成部と心拍数の計測部として機能する。
【0022】
呼吸センサ200は、被検体Pに関する呼吸レベルを計測する。呼吸レベルは、被検体Pの呼吸動に伴って周期的に変化する計測値である。呼吸センサ200としては、既存のあらゆるタイプのものが利用可能である。例えば、被検体Pの腹部の動きを計測するレーザ波長器が利用可能である。この場合、典型的には、呼吸レベルは、呼吸動に伴って変化する被検体Pの腹部表面の位置に対応する。呼吸レベルの計測値(以下、呼吸レベル値と呼ぶことにする。)は、画像処理装置30に供給される。また、呼吸センサ200は、呼吸レベル値に基づいて被検体Pの息止め経過時間をリアルタイムで計測する。息止め経過時間は、被検体Pが息止めを開始した時間から計測時間までの経過時間である。息止め経過時間は、理想的には呼吸レベル値が一定値を保っている期間、実際的には呼吸レベル値が既定範囲内に留まっている期間として規定される。息止め経過時間の計測値(以下、息止め経過時間値と呼ぶことにする。)は、画像処理装置30に供給される。このように呼吸センサ200は、呼吸レベルの計測部と息止め経過時間の計測部として機能する。
【0023】
画像処理装置30は、インターフェース部32、前処理部34、再構成部36、減算部38、呼吸指示部40、記録部42、スキャン制御部44、モニタ46、スピーカ48、操作部50、記憶部52、及びシステム制御部54を備える。
【0024】
インターフェース部32は、スキャン機構10、心電計100、及び呼吸センサ200と画像処理装置30との間のデータの送受信を行う。
【0025】
前処理部34は、データ収集回路24から供給された投影データに対数変換や感度補正等の前処理を施す。前処理が施されることにより、画像再構成に利用される投影データが生成される。なお投影データセットは、心電計100からの心電図波形上の心電位相に関連付けられて管理される。
【0026】
再構成部36は、前処理が施された投影データに基づいて被検体Pの心臓に関するCT画像のデータを再構成する。具体的には、再構成部34は、特定の一心電位相に関する複数の投影データセットに基づいて、この特定の心電位相に関するCT画像のデータを発生する。上述のように本実施形態においては、第1の心臓スキャンと第2の心臓スキャンとが実行される。第1の心臓スキャンにより収集された投影データに基づくCT画像のデータを第1のCT画像のデータ、第2の心臓スキャンにより収集された投影データに基づくCT画像のデータを第2のCT画像のデータと呼ぶことにする。
【0027】
減算部38は、第1のCT画像のデータと第2のCT画像のデータとを減算処理し、第1のCT画像のデータと第2のCT画像のデータとに基づく差分画像のデータを発生する。例えば、減算部38は、差分画像のデータを発生するために、第1のCT画像のデータから第2のCT画像のデータを減算する。
【0028】
呼吸指示部40は、モニタ46やスピーカ48を介して息止めの開始指示や息止めの終了指示を実行する。息止めの開始指示において呼吸指示部40は、目標息止めレベルを利用して被検体Pに呼吸指示をする。例えば、呼吸指示部40は、目標息止めレベルをモニタ46に表示することにより、被検体Pに目標息止めレベルを報知する。これにより被検体Pに目標息止めレベルで息止めすることを促す。目標息止めレベルは、息止めをするにあたって被検体Pが目標とする呼吸レベルの目標値であり、異なるタイミングのスキャン間に亘って被検体Pに均一な呼吸レベルでの息止めを促すための目印となる。被検体Pは、息止め時において呼吸レベルのリアルタイムの計測値が目標息止めレベルに一致するように息止めをする。
【0029】
記録部42は、心電計100からの心拍数値をモニタリングし、心臓スキャン時における心拍数値を記録する。記録された心拍数値は、その後の心臓スキャンの開始タイミングにおける心拍数の目標値(以下、目標心拍数と呼ぶことにする。)として利用可能である。また、記録部42は、呼吸センサ200からの息止め経過時間値をモニタリングし、心臓スキャン時における息止め経過時間値を記録する。記録された息止め経過時間値は、その後の心臓スキャンの開始タイミングにおける息止め経過時間の目標値(目標息止め経過時間と呼ぶことにする。)として利用可能である。また、記録部42は、呼吸センサ200からの呼吸レベル値をモニタリングし、心臓スキャン時(すなわち、被検体Pの息止め時)における呼吸レベル値(以下、息止めレベルと呼ぶことにする。)を記録する。記録された息止めレベルは、その後の心臓スキャンにおける目標息止めレベルとして利用可能である。
【0030】
スキャン制御部44は、被検体PをX線でスキャンするためにスキャン機構10を制御する。具体的には、まずスキャン制御部44は、心電計100からのリアルタイムの心拍数値が目標心拍数に基づくスキャン開始条件(以下、心拍数条件と呼ぶことにする。)を満たすか否かを判定する。心拍数条件を満たすと判定した場合、スキャン制御部44は、スキャン機構10を制御し、心臓スキャンを開始する。一方、心拍数条件を満たさないと判定した場合、スキャン制御部44は、心臓スキャンの開始を待機する。心拍数値による判定の代替としてスキャン制御部44は、息止め経過時間値を利用してもよい。この場合、具体的には、まずスキャン制御部44は、呼吸センサ200からのリアルタイムの息止め経過時間値が目標息止め経過時間に基づくスキャン開始条件(以下、息止め経過時間条件と呼ぶことにする。)を満たすか否かを判定する。息止め経過時間条件を満たすと判定した場合、スキャン制御部44は、スキャン機構10を制御し、心臓スキャンを開始する。一方、息止め経過時間条件を満たさないと判定した場合、スキャン制御部44は、心臓スキャンの開始を待機する。このようにスキャン制御部44は、目標心拍数と被検体Pのリアルタイムの心拍数値とに従って、又は目標息止め経過時間と被検体Pのリアルタイムの息止め経過時間値とに従って、スキャン機構10による被検体Pの心臓スキャンの開始タイミングを制御する。
【0031】
モニタ46は、心臓スキャン時において被検体Pに視認可能な位置に設置されている。モニタ46は、呼吸センサ200からの呼吸レベル値の波形や目標息止めレベルを既定の表示レイアウトで表示する。また、モニタ46は、各種のCT画像を表示してもよい。
【0032】
スピーカ48は、呼吸指示のための音声を出力する。例えば、スピーカ48は、「息止めを開始して下さい」や「息止めを終了して下さい」等の音声を出力する。
【0033】
操作部50は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。入力デバイスとしては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。
【0034】
記憶部52は、投影データや、各種のCT画像のデータを記憶する。また、記憶部52は、目標息止めレベル、目標心拍数、目標息止め経過時間を記憶する。また、記憶部52は、X線CT装置の制御プログラムを記憶している。この制御プログラムは、後述する心臓スキャンの開始タイミングの制御機能をシステム制御部54に実行させるためのものである。
【0035】
システム制御部52は、X線CT装置の中枢として機能する。具体的には、システム制御部52は、記憶部50に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0036】
次に本実施形態に係るX線CT装置の動作例を具体的な検査シーケンスを例に挙げて説明する。以下の検査シーケンスにおいて、第1の心臓スキャンは造影スキャンであり、第2の心臓スキャンは非造影スキャンであるとする。なお造影スキャンは、造影剤の注入期間のような、造影効果が比較的に高い造影相に実行されるスキャンを意味する。造影スキャンとしては、例えば、CTA(CT Angiography)が該当する。反対に非造影スキャンは、造影剤の注入終了後のような、造影効果が比較的に低い非造影相に実行されるスキャンを意味する。なお本実施形態において、非造影相には、遅延造影(Late Enhance)のためのスキャンに対応する期間も含まれるとする。
【0037】
図4は、システム制御部54の制御のもとに行われる、本実施形態に係る検査シーケンスの一例を示す図である。
図4に示すように、第1の心臓スキャンの前に、造影効果をモニタリングするためのモニタリングスキャンが実行される。まず、技師等の操作者により被検体Pに造影剤が注入される。そして造影剤の注入開始後、操作者は、操作部50を介してモニタリングスキャンの開始指示を入力する。操作部50を介して開始指示が入力されたことを契機としてスキャン制御部44は、モニタリングスキャンを開始する。モニタリングスキャン中においてスキャン制御部44は、回転フレーム12を回転させながら、第1の心臓スキャンに比して低いX線量を有するX線をX線管16から連続的に照射し、データ収集部24に投影データを収集させる。再構成部36は、収集された投影データに基づいて既定の断面に関するCT画像のデータを時系列で発生する。既定の断面は、例えば、検査部位を含むように設定される。スキャン制御部44は、時系列で発生されたCT画像上の既定のROIにおける造影剤濃度指標値(例えば、平均CT値)をモニタリングする。平均CT値や時系列のCT画像は、モニタ46に表示される。
【0038】
スキャン制御部44によりモニタリングされている平均CT値が既定の閾値に到達したことを契機として呼吸指示部40は、息止め開始指示を実行する。なお、呼吸指示部40は、ユーザにより操作部50を介して息止めの開始指示が入力されることを契機として息止め開始指示を実行してもよい。息止め開始指示において呼吸指示部40は、モニタ46やスピーカ48を介して、被検体Pに息止めを開始する旨のメッセージを報知する。この際、呼吸指示部40は、
図5に示すように、被検体Pの呼吸レベル値の波形に目標息止めレベルTLを示すラインを重ね合わせてモニタ46に表示する。被検体Pは、モニタ46を観察し、自身の呼吸レベルが目標息止めレベルに一致するタイミングで息止めを試みる。
【0039】
息止めが行われると記録部42は、呼吸センサ200からの呼吸レベルをモニタリングし、息止めレベルを記録する。記録部42は、例えば、ユーザにより操作部50を介して記録指示がなされたことを契機として、記録指示がなされた時点における呼吸レベル値を息止めレベルとして記録する。他の記録方法として記録部50は、息止めレベルの判定条件が満足されたタイミングにおける呼吸レベル値を息止めレベルとして記録する。息止めレベルの判定条件は、時間経過に伴う息止めレベルの典型的な変化パターンに従って規定される。例えば、息止めレベルの判定条件は、呼吸レベル値が既定期間(例えば、1秒等)既定範囲内にあることである。既定範囲は、操作部50を介して操作者により任意に設定可能である。記録された息止めレベルは、記憶部52に記憶される。
【0040】
造影効果が所望のレベルに達すると、スキャン制御部44は、モニタリングスキャンを停止し、第1の心臓スキャンを開始する。第1の心臓スキャンが開始されると記録部42は、第1の心臓スキャン時の心拍数値や息止め経過時間値を記録する。なお第1の心臓スキャンは、ある時間幅において実行される。そのため“造影スキャン時”とは、造影スキャンの開始時点、中間時点、終了時点等の造影スキャン期間内におけるあらゆる時点を指す。すなわち“造影スキャン時の心拍数や息止め経過時間”は、造影スキャン中における任意の時点の心拍数や息止め経過時間を指す。また、“造影スキャン時の心拍数や息止め経過時間”は、心臓スキャン期間内における心拍数値や息止め経過時間値の平均値や中間値、最大値、最小値、最頻値等でもよい。
【0041】
スキャン制御部44により第1の心臓スキャンが終了されると呼吸指示部40は、モニタ46やスピーカ48を介して被検体Pへの息止め終了指示を実行する。息止め終了指示が実行されることにより被検体Pは、呼吸を再開する。
【0042】
検査部位における造影効果が十分に低下し、また、スキャン機構10が第2の心臓スキャン(非造影スキャン)に備えたスタンバイ状態にセットされると操作者は、第2の心臓スキャンのための息止めの開始指示(2回目の息止め開始指示)を、操作部50を介して入力する。開始指示が入力されたことを契機として呼吸指示部40は、2回目の息止め開始指示を実行する。なお、第2の心臓スキャンは、操作者による開始指示がなされることを契機として実行されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、予め設定された検査プログラムにより自動的に実行されてもよい。
【0043】
2回目の息止め開始指示において呼吸指示部40は、第1の心臓スキャンのための息止め開始指示(1回目の息止め開始指示)と同様に、被検体Pの呼吸レベル値の波形に目標息止めレベルを重ねてモニタ46に表示する。2回目の息止め開始指示における目標息止めレベルは、2パターンが可能ある。以下にその2パターンの目標息止めレベルについて説明する。
【0044】
図6は、2回目の目標息止めレベルTL2の第1のパターンを示す図である。
図6の場合、1回目の目標息止めレベルTL1と2回目の目標息止めレベルTL2とは、同一値である。
図7は、2回目の目標息止めレベルTL2の第2のパターンを示す図である。
図7の場合、2回目の目標息止めレベルTL2は、記録部42により記録された1回目の実際の息止めレベルHLに等しい。なお、2回目の目標息止めレベルTL2は、被検体Pや操作者の好みに応じて、上述の第1パターンと第2パターンとから任意に選択可能である。目標息止めレベルが表示されると被検体Pは、自身の呼吸レベルが目標息止めレベルに一致したタイミングで息止めを試みる。
【0045】
この際、呼吸指示部40は、被検体Pの呼吸レベルを目標息止めレベルに誘導するように、被検体Pの実際の息止めレベルと目標息止めレベルとの大小関係に応じた呼吸指示を実行してもよい。例えば、被検体Pの実際の息止めレベルが目標息止めレベルよりも大きい場合、呼吸指示部40は、被検体Pの呼吸レベルの振幅を小さくするため、スピーカ48から「もっと浅く呼吸をして下さい」等の音声を出力する。また、被検体Pの実際の息止めレベルが目標息止めレベルよりも小さい場合、呼吸指示部40は、被検体Pの呼吸レベルの振幅を大きくするため、スピーカ48から「もっと深く呼吸をして下さい」等の音声を出力する。このような実際の息止めレベルと目標息止めレベルとの大小関係に応じた呼吸指示をすることにより、目標息止めレベルにより近い呼吸レベルで被検体Pに息止めをさせることができる。
【0046】
さらに、呼吸指示部40は、被検体Pの実際の息止めレベルと目標の息止めレベルとの差分が許容範囲内にあるか否かに応じた呼吸指示を実行してもよい。例えば、差分が許容範囲外にある場合、呼吸指示部40は、モニタ46やスピーカ48を介して息止めのやり直しを報知するとよい。差分が許容範囲外にある場合、スキャン制御部44は、第2の心臓スキャンを中断(スタンバイ状態をオフ)させてもよい。
【0047】
また、息止めの開始指示が実行されるとシステム制御部54は、第2の心臓スキャン(非造影スキャン)の開始タイミングの制御処理を実行する。
図8は、システム制御部54の制御のもとに行われる第2の心臓スキャンの開始タイミングの制御処理の典型的な流れを示す図である。
【0048】
ステップS1においてシステム制御部54は、心電計100に計測処理を実行させる(ステップS1)。ステップS1において心電計100は、息止め時における被検体Pの心拍数を計測する。心拍数値は、画像処理装置30に供給される。
【0049】
ステップS1が実行されるとシステム制御部54は、スキャン制御部44に判定処理を実行させる(ステップS2)。ステップS2においてスキャン制御部44は、心電計100からの心拍数値が目標心拍数に基づく心拍数条件を満足するか否かを判定する。心拍数条件は、例えば、心拍数が目標心拍数に基づく閾値に一致することや、心拍数値が目標心拍数に基づく閾値範囲に含まれることである。閾値は、例えば、目標心拍数に等しい値や、目標心拍数に既定値を加算又は減算した値等に設定される。閾値範囲は、例えば、目標心拍数及び既定値の和(上限心拍数)と、目標心拍数及び既定値の差(下限心拍数)との間の範囲に設定される。このように、ステップSにおいてスキャン制御部44は、心拍数値が目標心拍数に略一致するか否かを判定する。
【0050】
ステップS2においてスキャン制御部44が心拍数条件を満足しない(心電計100からの心拍数値が目標心拍数に略一致しない)と判定した場合(ステップS2:NO)、システム制御部54は、再びステップS1に進む。そして、ステップS2において心拍数条件が満足されるまで、ステップS1とステップS2とが繰り返される。
【0051】
ステップS2においてスキャン制御部44が判定条件を満足する(心電計100からの心拍数値が目標心拍数に略一致する)と判定した場合(ステップS2:YES)、システム制御部54は、スキャン制御部44に第2の心臓スキャンを実行させる(ステップS3)。ステップS3においてスキャン制御部44は、第1の心臓スキャンと同様にスキャン機構10を制御し、第2の心臓スキャンを実行する。
【0052】
以上でシステム制御部54による第2の心臓スキャンの開始タイミングの制御処理が終了する。なお、上述の
図8の説明は、心拍数に従って第2の心臓スキャンの開始タイミングを制御する場合について説明した。しかしながら、開始タイミングの制御処理はこれに限定されない。例えば、心拍数値の代わりに、呼吸センサ200からの息止め経過時間値に従って開始タイミングが制御されてもよい。この場合の開始タイミングの制御処理は、心拍数値を利用した場合と同様の処理過程により実現可能である。すなわち、上述の第2の心臓スキャンの開始タイミングの制御処理の説明中の“心拍数値”を“息止め経過時間値”に読み替えることにより、実行可能である。従って、息止め経過時間を利用した開始タイミングの制御処理の説明は省略する。
【0053】
上記のように本実施形態に係るX線CT装置は、第2の心臓スキャンにおける息止め指示において、1回目の目標息止めレベル又は1回目の実際の息止めレベルを利用する。これにより、第1の心臓スキャン時と第2の心臓スキャン時とにおける呼吸位相を比較的揃えることができる。さらに本実施形態に係るX線CT装置は、第2の心臓スキャンを実施するにあたり、被検体Pの心拍数(又は息止め経過時間)が第1の心臓スキャン時における心拍数(又は息止め経過時間)に略一致するタイミングで第2の心臓スキャンを開始する。従ってX線CT装置は、第1の心臓スキャン時と第2の心臓スキャン時とにおける被検体Pの心電位相を比較的揃えることができる。
【0054】
これら2つの工夫により、本実施形態に係るX線CT装置は、造影スキャン時と非造影スキャン時とにおいて、スキャン領域内における心臓の位置や形状を比較的揃えることができる。これに伴い、造影相に関するCT画像と非造影相に関するCT画像とにそれぞれ含まれる心臓領域の位置や形状が比較的揃う。従って、造影相に関するCT画像と非造影相に関するCT画像との差分による血管領域の抽出精度が従来に比して改善され、造影相に関するCT画像と非造影相に関するCT画像との差分画像の画質が従来に比して向上する。
【0055】
かくして本実施形態に係るX線CT装置は、造影効果の異なる複数のタイミングにおいて心臓をスキャンすることにおいて、心臓の位置及び形状合わせの精度向上を実現することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0057】
(変形例1)
図9は、変形例1に係る検査シーケンスの一例を示す図である。
図9に示すように、変形例1に係る検査シーケンスおいて息止め開始指示は、
図8のようにモニタリングスキャン中に行われるのではなく、モニタリングスキャン後に行われる。このため変形例1に係るX線CT装置は、モニタリングスキャンと造影スキャンとの時間間隔が比較的長い場合にも、第1の心臓スキャン時と第2のスキャン時とにおける被検体Pの呼吸位相を揃えやすい。
【0058】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る検査シーケンスの一例を示す図である。
図10に示すように、変形例2に係る検査シーケンスにおいて第1の心臓スキャンは非造影スキャンであり、第2の心臓スキャンは造影スキャンであるとする。変形例2に係る非造影スキャンとしては、例えば、Ca Score(カルシウムスコア)のためのスキャンが該当する。変形例2に係る造影スキャンは、CTAが該当する。変形例2に係るスキャン制御部44は、非造影スキャン時に記録された息止め経過時間を利用して、造影スキャンの開始タイミングを制御する。
【0059】
(変形例3)
本実施形態においては、心電計100に心電図波形の生成部と心拍数の計測部とを実装させ、呼吸センサ200に呼吸レベルの計測部と息止め経過時間の計測部とを実装させるものとした。変形例3においては、心電計100に心拍数の計測部を実装させず、また、呼吸センサ200に息止め経過時間の計測部をさせない。代替的に変形例3に係るX線CT装置は、心拍数の計測部と息止め経過時間の計測部とをさらに備えている。
【0060】
これにより、心拍数の計測と息止め経過時間の計測とをX線CT装置内で実行することができる。
【0061】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。