特許第5773586号(P5773586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5773586押出加工用ダイス、押出加工用ダイス装置及び押出部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773586
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】押出加工用ダイス、押出加工用ダイス装置及び押出部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 25/02 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   B21C25/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-149312(P2010-149312)
(22)【出願日】2010年6月30日
(65)【公開番号】特開2012-11412(P2012-11412A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】折戸 昇
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−057337(JP,A)
【文献】 特開平06−023424(JP,A)
【文献】 特開2001−191109(JP,A)
【文献】 特開2003−205310(JP,A)
【文献】 特開平06−007837(JP,A)
【文献】 特開平01−284423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00−35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定間隔をあけて並設された複数の突起部を有するオスダイスと、前記オスダイスの前記突起部側と対峙するように配設され、前記突起部と対峙する領域に型孔部を有するメスダイスと、前記オスダイスの前記突起部と反対側に装着された板状のキャップ部材とを備え、前記突起部と前記型孔部との隙間に押出成形加工用の型孔が形成されて構成され、
前記キャップ部材と、前記オスダイスおよび前記メスダイスとが、押出加工用装置の支持孔内に装着された状態で、素材が、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過した後、前記型孔から押出されることによって、押出部品の押出成形が行われる押出加工用ダイスにおいて、
前記キャップ部材は、その両主面の中央に形成され、前記キャップ部材と前記支持孔との間の空間の横断面積を素材の流動方向に沿って拡張させる切り欠き部が設けられていることを特徴とする押出加工用ダイス。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記キャップ部材の厚さを前記オスダイス側に向かうに従い漸次薄くなるような傾斜面とされていることを特徴とする請求項1に記載の押出加工用ダイス。
【請求項3】
前記切り欠き部の深さが一定の深さに形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の押出加工用ダイス。
【請求項4】
前記オスダイスは、コアケースと、該コアケースに装着され、互いに所定間隔をあけて並設された複数の突起部を有するコア部材とを具備して構成され、
前記メスダイスは、ボディと、該ボディの一側に装着され、型孔部を有する入れ子部材とを具備して構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出加工用ダイス。
【請求項5】
前記切り欠き部は、前記キャップ部材を前記オスダイスに装着させることで、前記オスダイスの面と連続する深さに形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の押出加工用ダイス。
【請求項6】
前記切り欠き部の幅は、複数の前記突起部の並設方向に沿った幅に対し、1.2倍〜2.0倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の押出加工用ダイス。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の押出加工用ダイスと、
前記押出加工用ダイスが装着される支持孔を有するダイホルダとを具備し、
素材が、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過した後、前記型孔から押出されることによって、扁平多穴チューブの押出成形が行われることを特徴とする押出加工用ダイス装置。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の押出加工用ダイスを、ダイホルダの支持孔に装着した状態で、素材を、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過させ、前記型孔から押出すことによって、扁平多穴チューブの押出成形を行うことを特徴とする押出部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種のアルミニウム熱交換器に用いられる扁平多穴チューブなどを押出加工する際に用いて好適な押出加工用ダイス、押出加工用ダイス装置及び押出部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エバポレータ、コンデンサ、ラジエータ等の熱交換器に用いられる各種のアルミニウム製熱交換用チューブを製造するにあたり、素材であるアルミニウムの融点が低いことから、押出加工法が広く用いられている。
このような押出加工法は、例えば図7に示すように、先端部にダイス101を固定したコンテナ102の孔部内にアルミニウム素材(ビレット)103を挿入し、このコンテナ102内のビレット103を加圧板(ステム)104によってダイス101に形成された開口部105方向へ押圧し、開口部105内に形成された一定の断面形状を有する隙間(型孔106)から上記アルミニウム素材103を押出すことにより、上記素材を一定の断面形状の押出部品に押出加工するものである。この押出加工法によれば、コンテナ102内に挿入されたビレット103に圧縮力を作用させることにより、一段の変形で非常に複雑な形状の押出部品を得ることができる。
【0003】
図8は、このようなアルミニウムの押出加工法によって成形される、アルミニウム製熱交換器用扁平多穴チューブ106の一例を示すものである。そして、この押出扁平多穴チューブ106の製造に好適な押出用ダイス装置として、従来から、以下の特許文献1に記載のインサート型のダイスが知られている。
図9図10に、特許文献1に記載された従来のインサート型のダイス装置の一例を示すが、この例のダイス100は、図8に示すアルミニウム製の押出扁平多穴チューブ106を押出加工するためのもので、図10に示す円盤状のダイスホルダDに形成された複数の貫通孔Hに挿脱自在とされた、嵌合離脱自在な一対の厚肉円盤ブロック状のメスダイス111とオスダイス112とから構成されている。
【0004】
図9においてメスダイス111は、先のオスダイス112と対向する端面の外周に、環状のメス側インロー部113が形成され、このインロー部113の中央側端面114に凹部115が形成されている。そして、凹部115の中央部には、メスダイス111の中心軸線に沿って一端から他端に向けて貫通するスリット状の孔部116が穿設されている。また、前記凹部115を囲む位置には、2つのねじ穴119と2つのピン穴120とが対称位置に形成されている。
【0005】
図9においてオスダイス112は、先のメスダイス111と対向する端面にオス側インロー部122が形成されている。このオスダイス112の中央部には、複数の突起片からなる櫛歯状の突起部123が形成されている。この突起部123は、先のメスダイス111の孔部116内に挿入されることによって孔部116との間に製品形状となる間隙(型孔)を画成するためのものである。そして、オスダイス112には、突起部123の両側に沿うようにオスダイス112の両端面に開口する貫通孔124、124が形成されている。また、オスダイス112において先の貫通孔124、124の周囲側には、2つのねじ穴125と2つのピン126が形成されている。
【0006】
そして、前記構成のオスダイス112とメスダイス111を互いのインロー部113、122を嵌合し、ピン126をピン穴120に嵌合させることにより両者を円柱状に一体化してダイス100が構成され、図10に示す円盤状のダイスホルダDに4基のダイス100を装着して全体を図7に示すコンテナ102に取り付けることで押出加工に供することができる。また、この構成のダイス100はダイスホルダDにおいて1基のダイス100が不良となった場合、該当する1基のダイス100のみ、あるいは、該当するメスダイス111かオスダイス112のみ交換することにより押出加工を再開できるので、一体型のダイスに比較して経済的であるなどの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−124634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記ダイスホルダDに4基のダイス100を取り付けて押出加工を行う構成のダイス装置においては、ステム104がアルミニウム素材103を4基のダイス100に均等に押し付け、アルミニウム素材の流動性を利用して、4基のダイス100のオスダイス112側の貫通孔内124、124を通過させ、さらに、メスダイス111側の孔部116と突起部123とによって形成される隙間から押出すことによって押出加工がなされる。
しかしながら、従来のダイスを用いた押出加工装置では、図8に示す薄肉の扁平多穴チューブ106を押出加工する場合、扁平チューブ状の空間を複数の流路に区画する隔壁が、設定した厚さより薄くなったり、一部欠損したりするなどの形成不良の問題が生じている。
この原因について本発明者らが研究したところ、従来のダイス100では、型孔より上流側の流路、すなわち貫通孔124、124内を通過する際の素材の流動抵抗が高いために、型孔での素材の流動性が悪化しており、このことが隔壁の形成不良が生じる原因となっていることが判明した。
【0009】
本発明は前記した問題に鑑み創案されたものであり、型孔より上流側の流路における素材の流動抵抗を低減することによって、型孔における素材の流動性を改善し、隔壁が所定の肉厚で形成された扁平多穴チューブを押出加工することができる押出加工用ダイス、これを用いた押出加工用ダイス装置、および、押出部品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の押出加工用ダイスは、互いに所定間隔をあけて並設された複数の突起部を有するオスダイスと、前記オスダイスの前記突起部側と対峙するように配設され、前記突起部と対峙する領域に型孔部を有するメスダイスと、前記オスダイスの前記突起部と反対側に装着された板状のキャップ部材とを備え、前記突起部と前記型孔部との隙間に押出成形加工用の型孔が形成されて構成され、前記キャップ部材と、前記オスダイスおよび前記メスダイスとが、押出加工用装置の支持孔内に装着された状態で、素材が、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過した後、前記型孔から押出されることによって、押出部品の押出成形が行われる押出加工用ダイスにおいて、前記キャップ部材は、その両主面の中央に形成され、前記キャップ部材と前記支持孔との間の空間の横断面積を素材の流動方向に沿って拡張させる切り欠き部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記切り欠き部は、前記キャップ部材の厚さが、前記オスダイス側に向かうに従い漸次薄くなるような傾斜面とされていることを特徴とする。
本発明において、前記切り欠き部の深さが一定の深さに形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記オスダイスは、コアケースと、該コアケースに装着され、互いに所定間隔をあけて並設された複数の突起部を有するコア部材とを具備して構成され、前記メスダイスは、ボディと、該ボディの一側に装着され、型孔部を有する入れ子部材とを具備して構成されていることを特徴とする。
本発明において、前記切り欠き部は、前記キャップ部材を前記オスダイスに装着させることで、前記オスダイスの面と連続する深さに形成されていても良い。
本発明において、前記切り欠き部の幅は、複数の前記突起部の並設方向に沿った幅に対し、1.2倍〜2.0倍であっても良い。
【0013】
本発明の押出加工用ダイス装置は、本発明の押出加工用ダイスと、前記押出加工用ダイスが装着される支持孔を有するダイホルダとを具備し、素材が、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過した後、前記型孔から押出されることによって、扁平多穴チューブの押出成形が行われることを特徴とする。
【0014】
本発明の押出部品の製造方法は、本発明の押出加工用ダイスを、ダイホルダの支持孔に装着した状態で、素材を、前記キャップ部材と前記支持孔との間に形成される空間、および、前記オスダイスと前記支持孔との間に形成される空間を順次通過させ、前記型孔から押出すことによって、扁平多穴チューブの押出成形を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、押出加工用ダイスにおいて、キャップ部材の両主面の中央に切り欠き部を設けたので、押出加工用ダイスをダイホルダの支持孔に装着したときに、キャップ部材と支持孔との間に形成される空間の横断面積が、切り欠き部が設けられていない場合に比べて拡張する。これにより、素材を、支持孔の導入口から導入し、支持孔内の各空間部を経由して、型孔から押出す際に、素材の流動抵抗が低減し、円滑な素材の流れを生み出すことができる。これにより、型孔の形状を精密に反映させて押出加工を行うことができ、隔壁部が所定の肉厚で形成された扁平多孔チューブを確実に得ることができる。また、素材が支持孔内の各空間および型孔を通過する際の流速を大きくすることができ、扁平多孔チューブなどの押出部品を効率良く製造することができる。
【0016】
また、切り欠き部が、キャップ部材の厚さがオスダイス側に向かうに従い漸次薄くなるような傾斜面とされている構成、あるいは、切り欠き部が一定の深さとされている構成にあっては、キャップ部材と支持孔との間に形成される空間における素材の流れがより円滑になり、型孔における素材の流れもより円滑になる。これにより、型孔の形状をより精密に反映させて押出加工を行うことができる。
【0017】
また、オスダイスが、コアケースと、該コアケースに装着され、互いに所定間隔をあけて並設された複数の突起部を有するコア部材とを具備して構成され、メスダイスが、ボディと、該ボディの一側に装着され、型孔部を有する入れ子部材とを具備して構成された構成にあっては、押出加工が繰り返し行われることによって、突起部や型孔の周面が摩耗した場合でも、コア部材と入れ子部材のみを交換することにより押出加工を再開できるので、一体型のオスダイスおよびメスダイスに比べて経済的に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る一実施形態の押出加工用ダイス装置を備えた押出加工装置の一例を示す断面図。
図2図2は、同装置と押出部品とを示すための簡略図。
図3図3は、同装置に備えられるダイホルダの平面図。
図4図4は、本発明に適用される組立ダイスの一例を示すもので、図4(A)はボディと入れ子部材とコアケースとコア部材とキャップ部材の組立図、図4(B)はボディの正面図、図4(C)は入れ子部材の正面図、図4(D)はコアケースの正面図、図4(E)はコア部材の正面図、図4(F)はキャップ部材の正面図。
図5図5は、本発明に適用される組立ダイスに備えられるボディの一例を示すもので、図5(A)は平面図、図5(B)は右側面図、図5(C)は正面図。
図6図6は、同組立ダイスに備えられるキャップ部材の一例を示すもので、図6(A)は正面図、図6(B)は右側面図、図6(C)は平面図。
図7図7は従来の押出加工装置の一例を示す断面図。
図8図8は押出加工装置により製造される熱交換器用扁平多穴チューブの一例を示す斜視図。
図9図9は従来の押出加工装置に適用されている組立ダイス装置の一例を示す分解斜視図。
図10図10は同組立ダイス装置の一例が取り付けられるダイホルダの一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の押出加工用ダイス、押出加工用ダイス装置および押出部品の製造方法の実施形態について説明する。
まず、本発明の押出加工用ダイスを適用した押出加工装置の一例について説明する。
図1は本発明に係る実施形態の押出加工用ダイスを備えた押出加工装置の一例を示す断面図、図2は同押出加工装置の簡略図、図3はダイスホルダの背面図、図4はダイスホルダに取り付けられる組立ダイスの一例を示す分解図、図5は同組立ダイスのボディ部分の詳細図、図6は同組立ダイスのキャップ部材の詳細図である。
図1に示す実施形態の押出加工装置Aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる素材ビレットBを収容する収容部1を備えた肉厚筒形容器であるコンテナ2と、このコンテナ2の一側に設けられて収容部1の素材ビレットBを押出自在に設けられたステム(加圧手段)3と、コンテナ2においてステム3の設置側と反対側に設けられたダイホルダ5とバックプレート6とボルスター7とを主体として構成されている。
【0020】
図1に示す実施形態の構造では、ダイリング8の内側に肉厚円盤状のダイホルダ5とバックプレート6とが挿入されて一体化された構成とされている。
前記ダイホルダ5の内部にはその中心軸回りの対称位置に4つの支持孔9が形成され、これらの支持孔9にそれぞれ図4に示す構造の組立ダイス(押出加工用ダイス)10が装着されている。
図4に示す如くこの例の組立ダイス10は、円筒ブロック状のボディ11と、このボディ11の中心部に装着される平面視レーストラック形状の厚肉のプレート部材(入れ子部材)12と、プレート部材12の上側においてボディ11に重ねるように装着されるコアケース13と、このコアケース13に挿入されるコア部材15と、このコア部材15を部分的に覆ってコアケース13とボディ11とに装着されるキャップ部材16とを主体として構成されている。
この例の組立ダイス10では、ボディ11とプレート部材12とがメスダイスMDを構成し、コアケース13とコア部材15とがオスダイスODを構成する。
【0021】
前記ボディ11は、図5に詳細に示す如く、円筒状の基台部20と、この基台部20の上部側から傾斜面21を有して若干先窄まり状に形成された嵌合部22と、この嵌合部22の上部両側に180゜間隔で突出形成された2つの突起部23とを主体として構成されている。また、各突起部23はそれらの中央部分で嵌合溝部24を介して2つに分割されているとともに、各突起部23の外周面は上窄まり状のテーパを有した傾斜面23aとされている。更に、基台部20の上面側において左右の突起部23、23の間の部分は幅広で先の嵌合溝部24よりも若干深い位置にあって基台部20の両端部まで達する凹溝部30が形成されている。
前記基台部20の中央側には基台部20の中央部を貫通するスリット状の長円形状の中央孔25が形成されるとともに、基台部20の中央上部側には中央孔25に連通する入れ子用の挿入孔26が先の凹溝部30の中央部に開口するように形成されていて、この挿入孔26に前記プレート部材(入れ子部材)12が嵌め込まれるように構成されている。また、基台部20の両側には基台部20と嵌合部21とを貫通して嵌合溝部24の中央部に開口する取付孔27が形成されている。これらの取付孔27は、後述するコアケース13とキャップ部材16とをボディ11に装着した場合にそれらの両端側に後述の如く形成されている孔と位置合わせができるように形成されている。
【0022】
前記プレート部材(入れ子部材)12はその中央部にスリット状の長円形の型孔部31が形成され、この型孔部31は先のボディ11の中央孔25とほぼ同じ横断面形状とされている。このプレート部材12は前記ボディ11の挿入孔26に嵌め込み自在な大きさとされていて、挿入孔26にプレート部材12を嵌合した場合にプレート部材12の型孔部31がボディ11の凹溝部30の中央部に位置して前記ボディ11の中央孔25と連通するように形成されている。
【0023】
図4に示すコアケース13は、前記ボディ11における2分割された突起部23の間の嵌合溝部24に、コアケース13の左右両端部13aを嵌め込み自在な大きさの横長の板状に形成され、コアケース13の両端部13aを嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において、前記ボディ11の突起部23の外側面の凸曲面状のテーパ面に沿うように、コアケース13の両端部13aの外側面には凸曲面状の傾斜面13bが形状されている。
【0024】
前記コアケース13は、前記嵌合溝部24の溝底側に向く底面13cとその両側に配置された前述の傾斜面13bと、これらの傾斜面13b、13bと底面13cに連続する支持面13d、13dと、前記底面13cに対向する支持面13eを有してなり、コアケース13の中央部には、後述のコア部材15を嵌め込むためのスリット状の嵌合孔35がコアケース13を貫通して底面13cと支持面13eの中央部に開口するように形成され、底面13cにおいて嵌合孔35の開口部の両側には突起部36が形成されている。
更に、コアケース13の両端部13aには、コアケース13の両端部13aを嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において前述のボディ11の取付孔27に連通するための挿通孔37が両端部13aを個々に貫通するように形成されている。また、前記突起36の底面13cからの突出長さは、図4(A)に示す如くコアケース13の両端部13aをボディ11の嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において、突起部36の先端がボディ11内のプレート部材12に若干の間隙をあけて対向するように形成されている。
次にコアケース13の支持面13d、13dの中央側に、突起部36、36の間に位置して先の嵌合孔35の延在方向に沿って支持面13dの上部側から底部側にまで延出する段部13gが形成されている。これらの段部13g、13gは押出加工時にコアケース13に沿って流動する素材ビレットの流れを円滑にするための作用を奏する。
【0025】
前記コア部材15は、前記コアケース13のスリット状の嵌合孔35に挿通自在な大きさの扁平のヘッド部15aとヘッド部15aの先端部側に形成された櫛刃部(突起部)15bとヘッド部15aの後端側に左右に突出するように形成されたストッパ片15dとからなり、ヘッド部15aの後端部左右側において各ストッパ片15dの基端部側には半円形状の受部15eが形成されている。この構成のコア部材15は、ヘッド部15aを先のコアケース13の嵌合孔35に挿通すると同時に、ストッパ片15dがコアケース13の支持面13eに当接することにより、ヘッド部15の櫛刃部15bを先のプレート部材12の長円形状の型孔部31に部分的に対峙させて、型孔部31の開口部と櫛刃部15bの先端部との間に隙間を形成することで、この隙間を組立ダイス10における押出成形用の型孔10Aとするように構成されている。
【0026】
前記キャップ部材16は、図4および図6に示すように、先のコアケース13の支持面13eに当接される所望の肉厚の横長の板状の部材であり、コアケース13の支持面13eに当接される底面16aと、この底面16aに連続する左右の側面16bと、正面または背面となる主面16dと、先の底面16aに対向する天面16eを有してなる。
また、キャップ部材16の主面16dの中央には、キャップ部材16とコアケース13とを接合一体化した際に先に説明のコアケース13に形成されている段部13gと連続する段部(切り欠き部)16gが形成されている。このキャップ部材16の段部16gにあっても先のコアケース13の段部と同様に押出加工時の素材ビレットの流れを円滑にする。この段部16gについては、後に詳述する。
【0027】
前記底面部16aの中央部には先のコア15のストッパ片15dを嵌め込み覆うことができる凹部16fが形成され、キャップ部材16の両端部側にはキャップ16をコアケース13の支持面13eに当接させた状態においてコアケース13の挿通孔37に連通するためのネジ穴40が形成されている。
これらのネジ穴40は、ボディ11に対して図4(A)に示すようにプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを装着した状態において、コアケース13の挿通孔37とボディ11の段付き孔型の取付孔27とに連通するように形成されていて、これらの孔を貫通してネジ穴40にボルトなどの締結具を螺合することでボディ11とプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを強固に一体化できるように構成されている。
【0028】
以上説明の如く構成されたボディ11に、図4(A)に示す如くプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを装着し、ボディ11の取付孔27とコアケース13の挿通孔37を介してボルトをキャップ部材16のネジ穴40に螺合することによりこれらを一体化し、組立ダイス10とすることができる。
この組立ダイス10を4基用意し、これらを図1に示すダイホルダ5の4つの支持孔9に個々に挿入することでダイホルダ5が完成する。
【0029】
ダイホルダ5の支持孔9は、コンテナ2の収容部1側に向いて若干先窄まり状となっている輪郭釣鐘型形状とされている。この支持孔9において収容部1側が導入口9aとされ、この導入口9aの部分から若干拡がるように形成された保持孔9bの部分に図4(A)に示す如く組み立てられた組立ダイス10が挿入され、固定されている。支持孔9の導入口9aの部分にはこの導入口9aの中心部を通過するようにロッド状のブリッジ部41が形成されるとともに、導入口9aの開口周縁部には、ダイホルダ5の収容部1側の面に段部42を形成して導入口9aの開口部が拡張されている。ブリッジ部41は、素材ビレットBからの圧力を直接受けるように構成されている。これにより、ブリッジ部41の背後側に存在する組立ダイス10に作用する素材ビレットからの圧力が軽減し、組立ダイス10の破損や損傷を防止あるいは抑制することができる。
【0030】
本実施形態において、円盤型のダイホルダ5には図3に示す如くその中心部を囲む点対称位置に等間隔で4つの支持孔9が設けられている。そして、このダイホルダの各導入口9の周囲には、段部42が形成されている。ダイホルダ5において、4つの導入口9aは収容部1側から見ると図3に示す如く個々にブリッジ部41にて2分割されたように見えているので、実際に1つの導入口9aに対してそれぞれ対になるように上下に段部42a、42bが形成されている。このような段部42a、42bが設けられていることにより、素材導入時の流動抵抗が減少し、押出加工に要する押圧力を低減することができる。
【0031】
これらの支持孔9に組立ダイス10を嵌合して組立ダイス10をダイホルダ5に取り付ける場合、組立ダイス10のキャップ部材16をブリッジ部41の長さ方向に揃って隣接するように配置する。これにより、支持孔9の内部側に、ブリッジ部41の両側に配置された導入口9a、9aから、キャップ部材16の幅方向両側の空間部と、コアケース13の幅方向両側の空間部に連通する素材ビレットの流動路を画成することができる。また、この流動路はボディ11の凹溝部30に至り、組立ダイス10のコア部材15とプレート部材12の開口部との間に画成されている型孔10Aを介し、プレート部材12の内部空間を通過してボディ11の中央孔25に至る一連の流動路を構成する。
【0032】
そして、本発明では、図4および図6に示すように、キャップ部材16の両主面16dの中央に、段部16gが形成されており、キャップ部材16の幅方向両側の空間部の横断面積が、段部16gが設けられていない場合に比べて拡張している。
これにより、後述する素材ビレットを押し出す際の流動抵抗が低減し、支持孔9内の各空間および型孔10Aにおいて円滑な素材の流れを生み出すことができる。その結果、型孔10Aの形状を精密に反映させて押出加工を行うことができ、隔壁部51が所定の肉厚で形成された扁平多孔チューブCを確実に得ることができる。また、支持孔9内の各空間および型孔10Aにおける素材ビレットの流速を大きくすることができ、扁平多孔チューブCを効率よく製造することができる。
【0033】
ここで、段部(切り欠き部)16gは、前記キャップ部材16の厚さが、コアケース13側に向かうに従い漸次薄くなるような傾斜面とされているか、あるいは、深さが一定の段部16gであることが好ましい。これらの構造により、キャップ部材16の幅方向両側の空間部における素材の流れがより円滑になり、型孔10Aにおける素材の流れもより円滑になる。これにより、型孔10Aの形状をより精密に反映させて押出加工を行うことができる。
また、段部16gを傾斜面とする場合の傾斜角度θはキャップ部材16の板厚をDとした場合、傾斜面が段部16gの底面16a側に達した位置におけるキャップ部材16の肉厚が薄くなりすぎないように緩やかな傾斜面とすることが好ましい。なお、傾斜面とすることなく一定の深さの段部16gとする場合はθ=0゜となるが、その場合にキャップ部材16の板厚Dに対して段部16gの部分の肉厚が薄くなり過ぎないように深さを設定する必要があるのは勿論である。
【0034】
また、この空間部における素材の流れをより円滑にする観点から、段部16gの幅Wは、コア部材15の櫛刃部15bの幅に対し1.2〜2.0倍程度であることがより好ましい。なお、図4図6に示す如く段部16gの幅は凹部16fより幅狭とされ、凹部16fの両端側においてはキャップ部材16の肉厚が充分に確保されているので、凹部16fにコア部材15のストッパ片15dを嵌め込み位置決めした場合においてコア部材15を保持する構造として強固な保持構造を確保することができる。
【0035】
また、段部16gを一定の深さに形成する場合は、キャップ部材16の厚さそのものを薄くし過ぎないようにする必要がある。キャップ部材16においてこの段部16gの部分での厚さが薄過ぎる場合には、キャップ部材16の機械的強度が不足し、押出成形時に印加される圧力によって、キャップ部材16が破損・損傷するおそれがある。また、この部分で段部16gの深さが浅すぎる場合には、段部16gを設ける効果、すなわち、素材ビレット3の流れを円滑にしたり、その流速を大きくしたりする効果が十分に得られない可能性がある。前記段部16gの深さについては、前記コアケース13の段部13gの深さと同程度でよい。
【0036】
そして、前述の如く4つの支持孔9が形成されているダイホルダ5の背面側に図1に示す如く設けられたバックプレート6にはダイホルダ5の各支持孔9に連通する通過孔6aが形成され、更にその背面側に設けられているボルスター7にも同様に通過孔7aが形成され、組立ダイス10にて押出加工した押出部品Cを移動することができるように構成されている。なお、図1の構造ではボルスター7の外側に更にプッシュ部材Pが設けられているが、この部材は略しても差し支えない。
【0037】
以上説明の如く構成された押出加工装置により熱交換器用の扁平多穴チューブなどの押出部品を製造するには、組立ダイス10をダイホルダ5に装着して図1に示す押出加工装置にセットし、収容部1にアルミニウムあるいはアルミニウム合金などの素材ビレットBを収容し、この素材ビレットBにステム3で圧力を加える。
この操作により素材ビレットBは収容部1から段部42a、42bを介してダイホルダ5の導入口9a側に流入し、キャップ部材16の幅方向両側の支持孔内空間部と、コアケース13の幅方向両側の支持孔内空間部を通過し、ボディ11の凹溝部30側に至り、組立ダイス10のコア部材15とプレート部材12の開口部との間に画成されている型孔10Aを通過し、この型孔10Aの形状に加工された後、バックプレート6の通過孔6aとボルスター7の通過孔7aとを通過して押出部品Cとして得られる。
本実施形態では図4に示す如く櫛刃部15bと長円形状の型孔部31を有するプレート部材12とにより画成される型孔10Aにより、図2に概略で示す横断面形状の扁平多穴チューブ(押出部品)Cが得られる。この扁平多穴チューブCは、横断面長円形状の周壁50の内側に複数の隔壁51が平行に所定の間隔で複数並列形成された扁平筒形のものとなる。
【0038】
ここで、本実施形態では、キャップ部材16の両主面16dの中央に、段部16gが形成されており、キャップ部材16の幅方向両側の空間部の横断面積が、段部16gが設けられていない場合に比べて拡張していることにより、素材ビレットを押し出す際の流動抵抗が小さく、支持孔9内の各空間および型孔10Aを素材ビレットが円滑に通過する。このため、型孔10Aの形状を精密に反映して押出加工が行われ、隔壁部51が所定の肉厚で形成された扁平多孔チューブCを確実に得ることができる。その結果、扁平多孔チューブ製造時の歩留まりの向上を図ることができる。また、支持孔9内の各空間および型孔10Aにおける素材ビレットの流速を大きくすることができ、扁平多孔チューブを効率良く精密に製造することができる。
【符号の説明】
【0039】
A…押出加工装置、B…素材ビレット、C…扁平多穴チューブ(押出部品)、OD…オスダイス、MD…メスダイス、1…収容部、2…コンテナ、3…ステム、5…ダイホルダ、6…バックプレート、7…ボルスター、8…ダイリング、9…支持孔、10…組立ダイス(押出加工用ダイス)、10A…型孔、11…ボディ、12…プレート部材(入れ子部材)、13…コアケース、15…コア部材、16…キャップ部材、16g…段部(切り欠き部)、41…ブリッジ部、42…開口部、42a、42b…段部、50…ダイホルダ
図1
図2
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図10