特許第5773635号(P5773635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773635
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20150813BHJP
   B23K 20/24 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B23K20/00 310P
   H01L21/02 B
   B23K20/24
   B23K20/00 310L
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-280409(P2010-280409)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-125817(P2012-125817A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】津野 武志
(72)【発明者】
【氏名】井手 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅典
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−087278(JP,A)
【文献】 特開2006−005240(JP,A)
【文献】 特開平01−097335(JP,A)
【文献】 特開2006−092777(JP,A)
【文献】 特開2003−141975(JP,A)
【文献】 特開2005−246575(JP,A)
【文献】 実開平03−109783(JP,U)
【文献】 特開2007−266058(JP,A)
【文献】 特開2006−332519(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0255980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
B23K 20/24
H01L 21/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被接合体の第1接合面と第2被接合体の第2接合面を予め活性化した後に、前記第1接合面と前記第2接合面とを付き合わせて前記第1被接合体と前記第2被接合体を接合する接合装置であって、
前記第1被接合体が吸着される吸着面を備える接合体保持部と、
前記接合体保持部に対する前記第1被接合体の吸着の有無を検知する検知センサと、
前記第1被接合体の前記第1接合面と前記第2被接合体の前記第2接合面を活性化するための活性化成分を出力する活性化部と、
前記検知センサの検知結果に基づいて、前記活性化部からの前記活性化成分の出力を制御する制御部と、を備え、
前記検知センサは、
前記吸着面よりその一部が突出し、前記接合体保持部に前記第1被接合体が吸着されていない第1の位置と、前記接合体保持部に吸着されている前記第1被接合体に接触することにより移動される第2の位置と、の間を変位する可動部と、
前記可動部の変位を検知する検知部と、
を備え、
前記接合体保持部は、
前記第1の位置と前記第2の位置との間を変位する際に、前記可動部の前記その一部が進退する検知窓、を備え、
前記検知窓は、前記接合体保持部により吸着される前記第1被接合体により覆われる領域に形成されるとともに、
前記制御部は、前記検知センサが前記接合体保持部への前記第1被接合体の吸着を検知していないときは、前記活性化部をインターロックして、前記活性化成分を出力できない状態とする、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記検知センサは、
前記接合体保持部に近接して配置され、前記検知センサを収容するケースを備え、
前記検知窓は前記ケースに設けられる、
請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
記接合体保持部は、前記検知センサを収容する収容部を備え、
前記検知窓は、前記吸着面に開口する、
請求項1に記載の接合装置。
【請求項4】
前記検知センサの前記可動部は、揺動運動することにより、前記第1の位置と前記第2の位置との間を変位する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項5】
前記検知センサの前記可動部は、鉛直方向に往復直線運動することにより、前記第1の位置と前記第2の位置との間を変位する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項6】
前記検知センサは、前記第1の位置と前記第2の位置との間で検知される磁気の変化により前記第1被接合体の吸着の有無を検知する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項7】
前記検知センサは、前記第1の位置と前記第2の位置との間で検知される光の変化により前記第1被接合体の吸着の有無を検知する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検知センサを備えた常温接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な電気部品や機械部品を集積化したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。MEMSとしては、マイクロリレー、圧力センサ、加速度センサなどが例示される。MEMSは、大きな接合強度を持ち、かつ荷重による押し付けや加熱処理を必要としない常温接合法を用いて製造されることが望まれている。常温接合法は、真空雰囲気で活性化された基板表面同士を接触させ、2枚の基板を常温にて接合するものであり、広義には表面活性化接合法と称される。
【0003】
このような常温接合を行う装置として、特開2009−208084号公報(特許文献1)に記載された常温接合装置が知られている。この常温接合装置には、基板を真空雰囲気で接合する接合チャンバが設けられている。この接合チャンバには、上側基板を静電チャックにより吸着して保持する上側基板保持機構と、上側基板と接合される下側基板を保持する下側基板保持機構が備えられている。上側基板が上側基板保持機構に保持され、下側基板との間隔を空けた状態で、上側基板と下側基板の接合面がイオンガンにより照射される荷電粒子にて活性化される。その後、上側基板保持機構を鉛直下方向に移動させることにより、上側基板と下側基板とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208084号公報
【0005】
この常温接合装置において、基板の静電チャックへの吸着状態の確認は、接合チャンバに設けられた可視光を透過する窓を通して、ユーザの目視により行われている。このユーザの作業負担を減らし、なおかつ、基板の静電チャックへの吸着確認を確実に行い常温接合装置の信頼性を向上するために、基板の静電チャックへの吸着確認をセンサで検知することが望まれている。また、基板が静電チャックに吸着されていない状態でイオンガンの照射が行われると、照射された荷電粒子により静電チャックの表面がエッチングされたり、また、エッチングされて真空雰囲気内に浮遊した不純物等が静電チャックの表面に付着して、静電チャックが基板を吸着できなくなるという問題が生じる。したがって、静電チャックの保護という観点からも、基板の静電チャックへの吸着状態を検知するセンサを常温接合装置に搭載することが望まれている。
【0006】
しかし、次のような問題があるため、基板検知センサは未搭載のままである。
接合チャンバ内に検知センサを設けると、イオンガンの照射により基板の表面から除去され、真空雰囲気中に浮遊した不純物等が検知センサに堆積し、検知センサの検知性能を維持することができなくなる。
具体的には、接合チャンバ内に光電式の検知センサを搭載する場合には、不純物等が付着して発光面と受光面を覆ってしまうとセンサとしての機能が失われてしまう。また、不純物等の発光面と受光面への付着を避けるために、接合チャンバの外部に光電式の検知センサを設置して、接合チャンバの窓を介して検知することも考えられるが、不純物等が窓にスパッタされ、基板の吸着状態を正確に検知することができなかった。
また、接合チャンバ内に機械的に動作する検知センサを搭載する場合には、不純物が検知センサに堆積して機械的な動作が妨げられ、やはりセンサとしての機能が失われてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、活性化に起因する不純物の影響を受けにくく、基板などの被接合体が静電チャックに吸着されていることを検知する検知センサを備えた、信頼性のある接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもとになされた本発明は、第1被接合体の第1接合面と第2被接合体の第2接合面を予め活性化した後に、第1接合面と第2接合面とを付き合わせて接合する接合装置に関するものである。
この接合装置は、第1被接合体が吸着される吸着面を備える接合体保持部と、接合体保持部に対する第1被接合体の吸着の有無を検知する検知センサと、第1被接合体の第1接合面と第2被接合体の第2接合面を活性化するための活性化成分を出力する活性化部と、検知センサの検知結果に基づいて、活性化部からの活性化成分の出力を制御する制御部と、を備える。
この検知センサは、第1の位置と第2の位置との間を変位する可動部と、可動部の変位を検知する検知部と、を備える。第1の位置は、接合体保持部に第1被接合体が吸着されていない場合に対応し、吸着面より可動部の一部が突出する。また、第2の位置は、接合体保持部に吸着されている第1被接合体に接触することにより移動される位置に対応する。
本発明に係る接合体保持部は、第1の位置と第2の位置との間を変位する際に、可動部のその一部が進退する検知窓を備える。この検知窓は、接合体保持部により吸着される第1被接合体により覆われる領域に形成される。
このように、第1被接合体が接合体保持部に吸着されると、検知窓が第1被接合体に覆われる。したがって、第1接合面と第2接合面の表面を活性化することに起因する不純物が検知窓を通って検知センサに堆積するなどの影響を受けることがない。したがって、接合装置の接合チャンバ内にて検知センサを使用したとしても、被接合体が接合体保持部へ吸着されていることをユーザの手を借りることなく長期に亘って確認することが可能となり、接合装置の信頼性を向上することができる。
また、制御部は、検知センサが接合体保持部への第1被接合体の吸着を検知していないときは、活性化部をインターロックして、活性化成分を出力できない状態とする。これにより、接合体保持部に第1被接合体が吸着されていない状態で活性化が誤って行われることを未然に防ぐことができる。
なお、以上では第1被接合体についてのみ言及しているが、第2被接合体が吸着される接合体保持部をさらに備える場合には、この接合体保持部について同様の検知窓を設けるとともに、同様の検知センサを設けることができる。つまり、本発明の特徴部分は、第1被接合体及び第2被接合体の一方又は双方に適用されることを包含する。
【0009】
本発明において、検知センサを設けるのに、検知センサを収容するケースを別体として設け、これを接合体保持部に近接して配置する形態と、接合体保持部の内部に検知センサを収容する領域を設ける形態と、を含む。前者の場合、検知窓は当該ケースに設けられることになる。また、後者の場合、検知窓は、吸着面に開口するように形成される。なお、検知センサを収容するケースを設ける場合、本発明の接合体保持部はこのケースを包含するものとする。
【0010】
本発明において、検知センサの可動部は第1の位置と第2の位置との間を変位するが、これは揺動運動あるいは鉛直方向への往復直線運動により実現することができる。検知センサを設ける位置に応じて適宜設定すればよいが、後述する実施形態に示されるように、上述したケースを設ける形態の場合には揺動運動する可動部を適用し、接合体保持部の内部に検知センサを収容する領域を設ける形態の場合には鉛直方向への往復直線運動する可動部を適用することができる。
【0011】
本発明において、可動部が第1の位置と第2の位置との間を変位することを検知する具体的な手法としては、磁気の変化、または、光の変化を利用することができる。つまり本発明による検知センサは、第1の位置と第2の位置との間で検知される磁気の変化により第1被接合体の吸着の有無を検知することができる。また、本発明による検知センサは、第1の位置と第2の位置との間で検知される光の変化により第1被接合体の吸着の有無を検知することができる。ただし、これは一例であり、後述するように、他の検出手法を利用できる。
【0012】
本発明の接合装置は、検知結果に基づいて警告音などの警告情報を出力し、この出力情報に基づいてユーザが活性化部からの活性化成分の出力を制御することもできる
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知窓が第1被接合体に覆われると検知センサは吸着面に形成される検知窓を通じた外部との連通が遮蔽されるため、第1接合面と第2接合面の表面を活性化することに起因する不純物が検知センサに堆積するなどの影響を受けにくい。したがって本発明により、被接合体の吸着または非吸着を検知する検知センサを備えた、信頼性のある接合装置が提供される。イオンガンの照射による影響を受けにくく、基板の静電チャックへの吸着を自動で検知する検知センサを備えた接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態における常温接合装置を示す平断面図である。
図2】(a)は本実施の形態における常温接合装置を示す概略図であり、(b)は第1実施形態の上側基板支持機構の概略図である。
図3】第1実施形態の検知センサの構成を示す側断面図であり、(a)は基板が検知センサに接触していない状態を示し、(b)は基板が検知センサに接触しているときの状態を示す。
図4】第1実施形態のセンサ本体の斜視図であり、(a)は基板がセンサ本体に接触していない状態を示し、(b)は基板がセンサ本体に接触しているときの状態を示す。
図5】(a)は第1実施形態の上側基板支持機構を吸着面側からみた図であり、(b)は(a)の検知センサ近傍を示す部分拡大図である。
図6】第2実施形態の上側基板支持機構を示す部分断面図であり、(a)は基板が検知センサに接触していない状態を示し、(b)は基板が検知センサに接触しているときの状態を示す。
図7】拡経部を示す拡大断面図である。
図8】(a)は第3実施形態の検知センサの概略図、(b)は第4実施形態の検知センサの概略図である。
図9】(a)は第5実施形態の上側基板支持機構を示す部分断面図であり、(b)および(c)は揺動型の可動部を用いたときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、常温接合装置を例にして、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1に示されているように、常温接合装置1は、接合チャンバ2とロードロックチャンバ3とを備えている。接合チャンバ2とロードロックチャンバ3は、内部を環境から密閉する容器であり、一般的には、ステンレス鋼、アルミニウム合金などにより形成されている。常温接合装置1は、さらに、ゲートバルブ5を備えている。ゲートバルブ5は、接合チャンバ2とロードロックチャンバ3との間に介設され、接合チャンバ2の内部とロードロックチャンバ3の内部とを接続するゲートを閉鎖し、または、開放する。
【0016】
ロードロックチャンバ3は、上側カートリッジ台6と下側カートリッジ台7と搬送装置8とを内部に備えている。上側カートリッジ台6には、上側カートリッジ11が配置される。下側カートリッジ台7には、下側カートリッジ12が配置される。ロードロックチャンバ3は、その内部が真空排気及び大気開放がされるように、図示されない真空ポンプと開閉扉とを備えている。
【0017】
搬送装置8は、第1アーム15、第2アーム16及びハンド17を備えている。第1アーム15は、ロードロックチャンバ3の床板に支持される第1節18により、回転軸22を中心に回転可能に支持されている。第1アーム15と第2アーム16は、第2節19により、回転軸23を中心に互いに回転可能に支持されている。第2アーム16とハンド17は、第3節20により、回転軸24を中心に互いに回転可能に支持されている。なお、回転軸22、23及び24は、鉛直方向を向いて配置されている。
【0018】
搬送装置8において、第1アーム15、第2アーム16及びハンド17は、図示されない昇降機構及び伸縮機構により、鉛直方向及び水平方向への移動が可能とされている。そして、昇降及び伸縮を制御することにより、上側カートリッジ台6に配置されている上側カートリッジ11または下側カートリッジ台7に配置されている下側カートリッジ12を、ゲートバルブ5を介して接合チャンバ2に搬送し、または、その逆の搬送を行う。
【0019】
接合チャンバ2は、真空ポンプ31とイオンガン(表面活性化部)32と電子銃33とを備えている。接合チャンバ2には、容器を形成する壁34の一部分に排気口35が形成されている。真空ポンプ31は、接合チャンバ2の外部に配置され、排気口35を介して接合チャンバ2の内部から気体を排気する。
イオンガン32は、照射方向36に向けて加速された荷電粒子(活性化成分)を放出する。その荷電粒子としては、アルゴンイオンが例示される。ただし、イオンガン32は、被接合体である基板(以下、単に基板と言うことがある)の表面を活性化することのできる他の表面活性化部に置換することができる。その表面活性化部としては、プラズマガン、高速原子ビーム源などが例示される。
電子銃33は、イオンガン32により荷電粒子が照射される対象に向けて加速された電子を放出する。
【0020】
壁34は、一部分に扉37が形成されている。扉37は、ヒンジ38により、壁34に対して回転可能に支持されている。壁34は、さらに、一部分に窓39が形成されている。窓39は、気体を透過しないで可視光を透過する材料から形成されている。窓39は、ユーザがイオンガン32により荷電粒子が照射される対象または、接合状態を接合チャンバ2の外部から見えるように配置されていれば壁34のどこに配置されてもかまわない。
【0021】
接合チャンバ2は、図2(a)に示されているように、上部に配置された上側基板支持機構40と、接合チャンバ2の下部に配置された下側基板支持機構60とをさらに内部に備えている。
【0022】
上側基板支持機構40は、圧接機構41と、ロードセル42と、角度調整機構43と、基板保持部44(接合体保持部に対応)とを備えている。
ロードセル42は、接合チャンバ2に対して鉛直方向に移動可能に支持されている。
角度調整機構43は、図2(b)に示すように、基板保持部44と接合される球フランジ43bと、かしめにより球フランジ43bに固定される固定フランジ43cと、球フランジ43bに密着する球座面を有し、ロードセル42に接合される球座43aとを備える。基板保持部44は、この角度調整機構43を介して、任意の向きへの角変位ができるようにロードセル42に支持されている。
基板保持部44の下端には、切り欠き部45aを有する静電チャック(誘電層)45が設けられている。静電チャック45と静電チャック45に吸着される基板との間に電圧が印加され、鉛直方向の上向きに作用する静電力によって静電チャック45の吸着面46に基板を吸着して保持する(図5も参照)。
基板保持部44の側面であって切り欠き部45aの近傍には、基板が静電チャック45へ吸着しているか否かを検知する検知センサ50が設けられている。検知センサ50は、図示しない配線によりイオンガン32の動作を制御する制御部4に接続されている。制御部4は、検知センサ50が基板(上側基板)の静電チャック45への吸着を検知しているときは、イオンガン32のインターロックを解除し、荷電粒子の照射を開始できる状態とし、検知センサ50が基板の静電チャック45への吸着を検知していないときは、イオンガン32をインターロックして、荷電粒子を照射できない状態とする。なお、検知センサ50と制御部4とで、基板検知部を構成する。
圧接機構41は、ユーザの操作により、基板保持部44を接合チャンバ2に対して鉛直方向に移動させる。
【0023】
イオンガン32は、上側基板支持機構40に支持される上側基板と下側基板支持機構60に支持される下側基板とが離れているときに、上側基板と下側基板との間の空間に向けられている。すなわち、イオンガン32の照射方向36は、上側基板と下側基板との間を通り、接合チャンバ2の内側表面に交差する。
【0024】
下側基板支持機構60は、円盤状のステージキャリッジ61を備えている。ステージキャリッジ61は、その中心の軸が鉛直方向になるように配置されている。搬送装置8で搬送された上側カートリッジ11および下側カートリッジ12は、ステージキャリッジ61の平坦な支持面に載置される。
【0025】
下側基板支持機構60は、さらに、図示されていない2つの撮像装置と位置決め機構とを備えている。撮像装置は、周知の方法にて上側カートリッジ11および下側カートリッジ12に載せられた基板のアライメントマークの画像を撮影する。位置決め機構は、ユーザの操作により、ステージキャリッジ61を水平方向に移動させる。
【0026】
ここで、本実施の形態に係る検知センサ50について詳しく説明する。
図3および図4に示すように、検知センサ50は、静電チャック45の吸着面46に基板が吸着しているか否かを検知するセンサ本体51と、センサ本体51を内部に収容する収容ケース52と、からなる。なお、図3は、検知センサ50から収容ケース52の正面部を取り除いた状態を示している。
【0027】
センサ本体51は、上側基板(以下、上側基板SA(第1被接合体に対応))に接触して変位する可動部53と、可動部53が上側基板SAに接触して変位したことを検知する固定検知部54と、からなる。
【0028】
可動部53は、非磁性体のステンレス鋼、アルミニウム合金、フッ素系樹脂等からなり、長手方向の一端側に埋め込まれた永久磁石57と、他端側に設けられ可動部53を変位可能に支持する回転軸56と、を備える。回転軸56は、収容ケース52に対して固定されている。永久磁石57としては、ネオジム磁石(Nd−Fe−B系磁石)やサマリウムコバルト磁石(Sm−Co系磁石)を用いることができる。
また、可動部53には、その長手方向の中間の位置から垂直方向に突出し、静電チャック45に吸着された上側基板SAと接触する接触部55が設けられている。接触部55は、フッ素系樹脂や高分子材料など低摩擦係数の部材により被覆されており、接触部55との接触による上側基板SAの損傷や位置ずれを防止することができる。
可動部53は、接触部55が静電チャック45に吸着された上側基板SAに接触すると、回転軸56を支点にして、永久磁石57が埋め込まれた一端側が上方に変位する(図3(b)、図4(b))。
【0029】
固定検知部54は、図4に示すように、ホールIC素子59が埋め込まれた検知部71と、上側基板SAに接触していない状態の可動部53を水平方向に支持する支持部72と、からなる。検知部71は、図示しない配線により制御部4に接続されている。
ホールIC素子59は、センサ本体51の接触部55に吸着された上側基板SAが接触することで変位したときの永久磁石57の位置に対応するように設けられている。検知部71および支持部72は、ともに非磁性体材料からなる。検知部71は支持部72にネジ止めされ、支持部72は、収容ケース52の内側に固定される。
【0030】
ホールIC素子59は、周知のホール効果を利用して磁気を検知するホール素子とアンプ回路を備える磁気センサである。ホールIC素子59は、磁気量の変化を出力電圧の変化に変換し、制御部4の信号処理回路に送る。ホールIC素子59から出力された出力信号電圧が、しきい値としての基準信号電圧よりも大か小かを信号処理回路にて比較することにより、上側基板SAの静電チャック45への吸着有無を判定する。
ホール素子は樹脂でモールドされているが、一辺が数mm以下の小さいサイズのものを使用できるため、高真空下の接合チャンバ2の内部で用いても放出ガスは微量である。
【0031】
収容ケース52は、非磁性材料からなり、図3に示すように、吸着面46と平行な底部に検出窓Wが設けられている。また、図5(b)に示すように、検出窓Wは、接触部55の変位を許容する大きさである。
【0032】
このように、本実施形態の検知センサ50は、放出ガスが少ない材料から構成されているため、高真空下で用いることが可能である。また、センサ本体51の接触部55が低摩擦係数の材料により覆われているため、接触部55との接触による上側基板SAの損傷や位置ずれを防止することができる。さらに、センサ本体51が収容ケース52にほぼ密閉された状態で収容されているため、センサ本体51がイオンガン32の照射に起因するエッチングやスパッタによるデポジションの影響を受けにくく、接合チャンバ2内で用いてもセンサ本体51の検知性能を維持することができる。
【0033】
次に、検知センサ50の位置について説明する。
図3および図5(a)に示すように、検知センサ50は、接合チャンバ2内の基板保持部44の側面に、静電チャック45の切り欠き部45aに部分的にオーバーラップするように取り付けられる。検知センサ50は、静電チャック45に上側基板SAが吸着されていない状態では、接触部55が静電チャック45の吸着面46より下方に位置し(図3(a)、第1の位置)、静電チャック45に上側基板SAが吸着している状態では、接触部55が吸着面46の同一面内に位置するように(図3(b)、第2の位置)、設置される。可動部53は、第1の位置と第2の位置との間を揺動運動する。そして、接触部55は、第1の位置と第2の位置を変位する際に、検出窓Wを進退する。
検知センサ50は、水平方向についてみると、図1図2に示されているように、基板保持部44及び静電チャック45を挟んで、イオンガン32と反対の位置に配置されている。つまり、検知センサ50は、イオンガン32に対して基板保持部44及び静電チャック45の影に隠れており、照射される荷電粒子の影響を受けにくい位置に配置されている。
【0034】
検出センサ50による上側基板SAの検出動作を説明する。
図3(a)、図4(a)に示すように、上側基板SAが静電チャック45に吸着されていないとき、可動部53は支持部72により水平に支持され、接触部55は第1の位置に位置する。この位置では、永久磁石57とホールIC素子59は互いに最も離れた位置にあり、ホールIC素子59が検知する永久磁石57の磁気は最も弱い。このとき、イオンガン32は、制御部4によりインターロックされており、荷電粒子を照射できない。
図3(b)に示すように、上側基板SAが静電チャック45に吸着されると、接触部55が上側基板SAに接触して吸着面46と同一面内(第2の位置)に押し込まれる。このとき、永久磁石57とホールIC素子59が互いに最も接近して、ホールIC素子59の出力信号電圧にも変化が生じる。このホールIC素子59の出力信号電圧は、制御部4の信号処理回路においてしきい値である基準信号電圧と比較され、上側基板SAが静電チャック45に吸着されていると判定される。この判定結果に基づき、制御部4はイオンガン32のインターロックを解除するので、イオンガン32は荷電粒子の照射をすることができるスタンバイ状態となる。
静電チャック45に吸着された上側基板SAが吸着面46から外れると、可動部53が自重により変位し、接触部55は検出窓Wを通って第1の位置に戻る。そうすると、制御部4は、イオンガン32を再びインターロックし、照射のスタンバイ状態を強制的に終了する。
【0035】
本実施の形態に係る常温接合装置1を用いた常温接合方法を説明する。
ユーザは、まず、ゲートバルブ5を閉鎖して、真空ポンプ31を用いて接合チャンバ2の内部に真空雰囲気を生成し、ロードロックチャンバ3の内部に大気圧雰囲気を生成する。ユーザは、ロードロックチャンバ3の蓋を開けて、上側カートリッジ11を上側カートリッジ台6に配置し、下側カートリッジ12を下側カートリッジ台7に配置する。ユーザは、上側カートリッジ11の所定の位置に上側基板SAを載せる。ユーザは、下側カートリッジ12の所定の位置に下側基板SB(第2被接合体に対応)を載せる。ユーザは、次いで、ロードロックチャンバ3の蓋を閉めて、ロードロックチャンバ3の内部に真空雰囲気を生成する。
【0036】
ユーザは、ロードロックチャンバ3の内部に真空雰囲気が生成された後に、ゲートバルブ5を開放する。ユーザは、まず、搬送装置8を用いて、上側基板SAが載せられた上側カートリッジ11を上側カートリッジ台6から下側基板支持機構60のステージキャリッジ61の上まで搬送する。ユーザは、搬送装置8のハンド17を降下させる。このとき、上側カートリッジ11は、ステージキャリッジ61の所定の位置に保持される。
【0037】
ユーザは、搬送装置8のハンド17をロードロックチャンバ3の内部に退避させる。ユーザは、次いで、基板保持部44を鉛直下方向に下降させて、基板保持部44の静電チャック45を上側基板SAに接触させ、基板保持部44に上側基板SAを保持させる。ユーザは、基板保持部44を鉛直上方向に上昇させて、上側基板SAを上側カートリッジ11から離す。所定の位置まで基板保持部44を上昇させて上側基板SAが上側カートリッジ11から離れた後、検出センサ50は、上側基板SAが静電チャック45に吸着しているか否かの検知を開始する。検出センサ50が、吸着していることを検知すると、制御部4の制御によりイオンガン32のインターロックが解除され、荷電粒子の照射ができるスタンバイ状態となる。ユーザは、上側基板SAが上側カートリッジ11から離れた後で、搬送装置8を用いて、上側基板SAが載せられていない上側カートリッジ11をステージキャリッジ61から上側カートリッジ台6に搬送する。
【0038】
次いで、ユーザは、上側基板SAを基板保持部44に保持させた後に、下側基板SBをステージキャリッジ61に保持させる。ユーザは、搬送装置8を用いて、下側基板SBが載せられた下側カートリッジ12を下側カートリッジ台7からステージキャリッジ61の上まで搬送する。ユーザは、搬送装置8のハンド17を降下させる。このとき、下側カートリッジ12は、ステージキャリッジ61の予め定められた位置に保持される。ユーザは、搬送装置8のハンド17をロードロックチャンバ3の内部に退避させる。
【0039】
ユーザは、ゲートバルブ5を閉鎖して、基板保持部44に保持された上側基板SAとステージキャリッジ61に保持された下側基板SBとを常温接合する。すなわち、ユーザは、基板保持部44に保持された上側基板SAとステージキャリッジ61に保持された下側基板SBとが離れた状態で、上側基板SAと下側基板SBとの間にイオンガン32を向けて荷電粒子を放出する。その粒子は、上側基板SAと下側基板SBとに照射され、その表面に形成される酸化物等の不純物を除去して活性化する。ユーザは、圧接機構41を操作して、基板保持部44を鉛直下方向に下降させて、上側基板SAと下側基板SBとを近づける。ユーザは、ステージキャリッジ61の位置決め機構を操作して、上側基板SAと下側基板SBとが設計通りに接合されるように、ステージキャリッジ61に保持された下側基板SBの位置を移動する。ユーザは、基板保持部44の圧接機構41を操作して、基板保持部44を鉛直下方向に下降させて、上側基板SAを下側基板SBに接触させる。上側基板SAと下側基板SBとは、その接触により接合され、1枚の接合基板が生成される。
【0040】
ユーザは、その接合基板を基板保持部44からデチャックさせる。このとき、検知センサ50は、接合基板が静電チャック45に吸着していないことを検知し、制御部4によりイオンガン32がインターロックされる。ユーザは、後に、基板保持部44を鉛直上方向に上昇させる。ユーザは、次いで、ゲートバルブ5を開放し、搬送装置8を用いて、その接合基板が載せられている下側カートリッジ12をステージキャリッジ61から下側カートリッジ台7に搬送する。ユーザは、ゲートバルブ5を閉鎖して、ロードロックチャンバ3の内部に大気圧雰囲気を生成する。ユーザは、ロードロックチャンバ3の蓋を開けて、下側カートリッジ台7に配置された下側カートリッジ12からその接合基板を取り出す。
【0041】
以上説明した常温接合装置1によれば、上側基板SAが静電チャック45に吸着されると、接触部55は上側基板SAにより吸着面46と同一面内に押し込まれ、検知センサ50は吸着面46を介して外部と連通する検出窓Wが閉じられる。したがって、上側基板SAの接合面SA2に対してイオンガン32により荷電粒子が照射されても、イオンガン32の照射に起因する不純物が検出窓Wを通じて侵入して検知センサ50に堆積するおそれがない。
このような検知センサ50を接合チャンバ2内で使用することにより、上側基板SAが静電チャック45に吸着したか否かをリアルタイムに検知することが可能となるので、従来のような目視による接合状態の確認は不要となり、常温接合装置1の信頼性を向上することができる。
さらに、上側基板SAが静電チャック45に吸着されていない状態では、イオンガン32がインターロックされるため荷電粒子が誤って照射されることがない。そして、イオンガン32の照射中に上側基板SAが外れたとしても、検知センサ50がその状態を直ちに検出し、イオンガン32をインターロックして照射を強制的に終了する。したがって、静電チャック45や吸着面46がイオンガン32の照射に直接曝されることがないので、静電チャック45の損傷や吸着面46の劣化が防止される。
また、検知センサ50は、バネ等を用いることなく、可動部53の自重による変位によってセンシングを行うという簡易な構成であるため、製作コストを抑えることができる。
さらに、検知センサ50は、基板保持部44の側面に外付けされるため、メンテナンスも容易に行うことができる。
なお、図3に示されるように、検知センサ50は、その図中の下面と吸着されている上側基板SAの図中の上面との間に隙間があるように配置されている。これは、検知センサ50に上側基板SAが接触するのを回避するためである。しかし、検知センサ50は、上述したように、イオンガン32に対して基板保持部44及び静電チャック45の影に隠れており、この隙間から荷電粒子が浸入するおそれはきわめて小さい。
【0042】
<第2実施形態>
図6に示すように、第2実施形態の常温接合装置1は、検知センサ50の構成および設置位置を変更した外は、第1実施形態と同様に構成されている。したがって、図6において、図3と同符号は図3と同じ構成部分を示している。
【0043】
図6に示すように、検知センサ150は、鉛直方向に往復直線運動可能に支持される可動部153と、可動部153が上端位置にあることを検知する固定検知部154と、からなる。検知センサ150は、基板保持部44の平面方向の中心近傍に設けられている。
【0044】
可動部153は、上端部に永久磁石157が埋め込まれた第1円柱部152と、上側基板SAと接触する接触部155を下端部に有する第2円柱部156と、第1円柱部152と第2円柱部156との間に介在し、第1円柱部152と第2円柱部156よりも径の大きなストッパ部158と、を備える。第1円柱部152と、第2円柱部156と、ストッパ部158は、非磁性体のステンレス鋼、アルミニウム合金、フッ素系樹脂等から一体的に形成することができる。第1円柱部152および第2円柱部156は、円柱に限らず、角柱状あるいは板状でもよく、第1円柱部152の一端側に永久磁石157を設けることができるだけのサイズがあればよい。第2円柱部156の断面積は、第1円柱部152の断面積よりも小さくすることができる。接触部155には、接触した上側基板SAの損傷を防止するために、フッ素系樹脂などの低摩擦係数の部材を設けてもよい。
【0045】
可動部153は、基板保持部44の内部の検知室Rから静電チャック45の吸着面46に貫通する収容路P内に設けられている。収容路Pは、その断面積がストッパ部158の径よりも小さく形成されている。ただし、収容路Pの鉛直方向の中央近傍には、図7に示すように、ストッパ部158を収容する拡経部Peが設けられている。可動部153は、上側基板SAが静電チャック45に吸着していない状態において、ストッパ部158が拡経部Peの底部Pebに保持され、接触部155が吸着面46から突出するように設けられる。可動部153は、上側基板SAが静電チャック45に吸着すると、上側基板SAに押されて上昇する。なお、検知室Rと収容路Pにより本発明の収容部を構成する。
【0046】
固定検知部154は、ホールIC素子159と、ホールIC素子159を支持する支持部170とからなり、検知室Rに設けられている。支持部170は、ホールIC素子159を可動部153の鉛直方向の延長線上に支持する。ホールIC素子159は、第1実施形態のホールIC素子59と同様の構成ものを使用することができる。
【0047】
第2実施形態の検知センサ150による検出動作を説明する。
図6(a)に示すように、上側基板SAが静電チャック45に吸着されていないとき、可動部153のストッパ部158は拡経部Peの底部Pebに保持され、接触部155は吸着面46から突出している(第3の位置)。このとき、永久磁石157とホールIC素子159は互いに最も離れた位置にあり、ホールIC素子159が検知する永久磁石157の磁気は最も弱い。接触部155が第3の位置にあるとき、イオンガン32は制御部4によりインターロックされており、荷電粒子を照射することができない。
図6(b)に示すように、上側基板SAが静電チャック45に吸着されると、接触部155が上側基板SAに接触して吸着面46と同一面内に押し込まれ、可動部153が上昇する(第4の位置)。このとき、上側基板SAが吸着面46に開口した収容路Pを覆う。さらに、このとき、永久磁石157とホールIC素子159が互いに最も接近してホールIC素子159が永久磁石157から受ける磁気量が変化し、第1実施形態と同様に、制御部4は、イオンガン32のインターロックを解除し、荷電粒子の照射を行えるようにスタンバイする。
イオンガン32の照射による基板の接合面の活性化中に、上側基板SAが静電チャック45から外れると、可動部153は自重により下降し、接触部155が第3の位置に戻る。そうすると、制御部4は、イオンガン32を再びインターロックして、荷電粒子の照射を強制的に終了する。
【0048】
このように、検知センサ150は、上側基板SAが静電チャック45に吸着することにより基板保持部44の内部に密閉されるため、上側基板SAが静電チャック45に吸着された状態で行われるイオンガン32による照射から遮蔽される。したがって、イオンガン32の照射に起因する不純物が収容路Pを通じて検知センサ150に達することがない。よって、検知センサ150は、長期間に亘って、上側基板SAの静電チャック45への吸着状態をリアルタイムに検知することが可能となる。また、上側基板SAが静電チャック45へ吸着していない状態が検知されると、制御部4によりイオンガン32がインターロックされて照射が強制的に終了されるため、上側基板SAを吸着していない静電チャック45や吸着面46がイオンガン32の照射に曝されることがない。したがって、イオンガン32の照射に起因する静電チャック45や吸着面46の損傷を防止することができる。
さらに、第2実施形態の検出センサ150は、接触部155が吸着面46の中心近傍から突出するように設けられるため、基板の径が小さくなっても吸着状態を検知することができる。したがって、このような検出センサ150を用いれば、径の異なる基板を連続して処理することが可能となり、より自由度が高く効率的な接合基板の生産を実現することができる。
また、検出センサ150の可動部153は、鉛直垂直方向へ移動するものであるため、吸着する上側基板SAと接触しても上側基板SAに水平方向成分の力が加わらないので、上側基板SAに位置ずれをおこされることがなく、接合作業前の位置決めが容易である。
【0049】
<第3実施形態>
図8(a)に示すように、第3実施形態は、検知センサ150の構成を部分的に変更した外は、第2実施形態と同様に構成されている。したがって、図8(a)において、図6と同符号は図6と同じ構成部分を示している。
図8(a)に示すとおり、第3実施形態の検知センサ250は、一端部に永久磁石257を備え、他端部が検知室Rの底部Bにボルト256にて固定される弾性板251を備える。可動部253は、第1円柱部252の先端に永久磁石が設けられていないことを除いて、第2実施形態と同様に構成されている。
上側基板SAが静電チャック45に吸着すると、可動部253の図示しない接触部が基板に接触し可動部253が上昇する。そうすると、第1円柱部252の上端が弾性板251を押し上げるので、弾性板251は上向きに撓み、永久磁石257が検知室Rに設けられたホールIC素子259に近接する。
上側基板SAがもし静電チャック45から外れると、可動部253(第1円柱部252)が自重にてより下降して弾性板251も元の位置に弾性復帰し、永久磁石257とホールIC素子259との距離に変化が生じる。この永久磁石257とホールIC素子259の距離の変化により、第2実施形態と同様に、ホールIC素子259が磁気量の変化を出力電圧の変化に変換し、制御部4の信号回路処理にて上側基板SAの静電チャック45への吸着有無が判定される。そして、第2実施形態と同様に、この判定結果に基づき、イオンガン32に対してインターロックおよびインターロック解除が制御部4により指示される。
【0050】
<第4実施形態>
図8(b)に示すように、第4実施形態は、検知センサ150の構成を変更した外は、第2実施形態と同様に構成されている。したがって、図8(b)において、図6と同符号は図6と同じ構成部分を示している。
第4実施形態の検知センサ350は、検知室Rの底部Bに設けられた弾性板351の変位を歪ゲージ357が検知することで、上側基板SAの静電チャック45への吸着状態を検知するものである。可動部353は、第1円柱部352の先端に永久磁石が設けられていないことを除いて、第2実施形態の可動部153と同様に構成されている。
可動部353の図示しない接触部が上側基板SAに接触し、可動部353が上昇すると、第1円柱部352の上端が、検知室Rの底部Bにボルト356にて一端が固定され、歪ゲージ357を備えた弾性板351を押し上げて、弾性板351が上方に撓む。この撓みを歪ゲージ357が検知し、この検知信号は制御部4に送られる。そうすると、制御部4は、イオンガン32のインターロックを解除し、荷電粒子の照射をスタンバイする。上側基板SAが静電チャック45から外れると、可動部353(第1円柱部352)が自重にて下降して弾性板351も元の位置に弾性復帰し、歪ゲージ357からの信号送信は停止される。そうすると、制御部4は、イオンガン32をインターロックする。
【0051】
<第5実施形態>
図9(a)に示すように、第5実施形態は、検知センサ50を光電式の検知センサ450とした外は、第2実施形態と同様に構成されている。したがって、図9(a)において、図6と同符号は図6と同じ構成部分を示している。
検知センサ450は、発光部459aと受光部459bとからなる光電式検知部459を検知室Rに備えている。発光部459aは、受光部459bに向けて検知光459cを発光している。受光部459bが検知光459cを受光しているとき、光電式検知部459からの信号により、制御部4は、イオンガン32をインターロックする。
検知センサ450は、可動部453を備えている。可動部453は、第1円柱部452に永久磁石を備えていないことを除いて、第2実施形態の可動部153と同じ構成である。
上側基板SAが静電チャック45に吸着して可動部453が上昇すると、第1円柱部452の先端が検知光459cを遮蔽し、受光部459bが検知光459cを受光できなくなる。そうすると、制御部4は、上側基板SAが静電チャック45に吸着していると判定し、イオンガン32のインターロックを解除する。
このように、上側基板SAが吸着されると外部から遮蔽される検知室Rに光電式検知部459を設けることにより、発光部459aの発光面や受光部459bの受光面がイオンガン32による荷電粒子の照射に起因するデポジションの影響を受けることがない。したがって、検知センサ450の検知性能を長期に渡り維持することが可能となる。
なお、光電式のセンサは、鉛垂直方向に昇降する可動部453以外にも、図9(b)(c)に示すように、回転軸556を支点として変位する揺動型の可動部553を適用にすることもできる。図9(b)に示すように、上側基板SAが静電チャック45に吸着していない状態では、可動部553は発光部559aから受光部559bに向けて発せられる検知光559cを遮蔽している。上側基板SAが静電チャック45に吸着して可動部553の接触部555が上側基板SAに接触すると、可動部553が回転軸556を支点に変位し、検知光559cが受光部559bにより受光され、上側基板SAの静電チャック45への吸着を検知する。
【0052】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
以上では常温接合装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、プラズマ照射により接合面を活性化した後に接合を行う方法・装置など、他の接合方法であって、被接合体が吸着されながら保持される部位を備える接合装置に広く適用することができる。
また、以上では、第1被接合体(上側基板SA)と第2被接合体(下側基板SB)とが鉛直方向に対向して配置された状態で接合面が活性化され、かつ接合される形態を説明したが、本発明はこれに限定されない。要は、第1被接合体(又は第2被接合体)が吸着された状態にありながら、吸着が不十分なために第1被接合体が鉛直方向に落下し、あるいは吸着面からずれ落ちる可能性がある状態で活性化処理される接合装置に広く適用できる。例えば、第1被接合体(第1接合面)及び第2被接合体(第2接合面)がともに水平方向に沿っているが軸同士が偏心して配置されている場合、あるいは、第1被接合体及び第2被接合体がともに鉛直方向に沿って配列されている場合、も本発明に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1…常温接合装置、2…接合チャンバ、4…制御部、32…イオンガン、40…上側基板支持機構、41…圧接機構、42…ロードセル、43…角度調整機構、44…基板保持部、45…静電チャック、46…吸着面、50、150、250、350、450…検知センサ、51…センサ本体、52…収容ケース、53、153、253、353、453、553…可動部、54…固定検知部、57、157、257…永久磁石、59、159,259…ホールIC素子、60…下側基板支持機構、61…ステージキャリッジ、71…検知部、72…支持部、459…光電式検知部、459a、559a…発光部、459b、559b…受光部、459c、559c…検知光、P…収容路、Pe…拡経部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9