(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記成分(A)〜(D)を有してなる繊維強化プロピレン系樹脂組成物であって、重量平均分子量Mwの序列が成分(D)>成分(B)>成分(C)である繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
(A)強化繊維 1〜75重量%
(B)オレフィン成分のプロピレンから導かれる構成単位が50〜99モル%である第1のプロピレン系樹脂 0.01〜10重量%
(C)重合体鎖に結合したカルボン酸塩を、樹脂1グラム当たり、式(I)で表される基換算で総量0.05〜5ミリモル当量の濃度で含む第2のプロピレン系樹脂 0.01〜10重量%
(D)第3のプロピレン系樹脂 5〜98.98重量%
−C(=O)−O−・・・式(I)
前記成分(C)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の50〜100%が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩より選択される、1種または2種以上の金属塩で転化されてなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
前記成分(B)が、重量平均分子量Mwが30,000以上150,000未満の範囲であるプロピレン系樹脂(B−1)30〜100重量%と、重量平均分子量Mwが150,000以上500,000以下の範囲であるプロピレン系樹脂(B−2)0〜70重量%とを有してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
前記成分(C)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の50〜100%が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩より選択される、1種または2種以上の金属塩で転化されてなるものである、請求項10に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
前記成分(B)が、重量平均分子量Mwが50,000以上150,000未満の範囲であるプロピレン系樹脂(B−1)30〜100重量%と、重量平均分子量Mwが150,000以上500,000以下の範囲であるプロピレン系樹脂(B−2)0〜70重量%とを有してなる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
カルボン酸および/またはその塩の基の、樹脂1グラム当たり、式(I)で表される基換算でのミリモル当量の序列が、成分(C)≧成分(B)≧成分(D)である、請求項10〜15のいずれか1項に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
−C(=O)−O−・・・式(I)
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、強化繊維(A)、オレフィン成分のプロピレンから導かれる構成単位が50〜99モル%である第1のプロピレン系樹脂(B)、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含む第2のプロピレン系樹脂(C)、第三のプロピレン系樹脂(D)を有してなる繊維強化プロピレン系樹脂組成物である。
【0040】
また、本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物において、強化繊維(A)、第1のプロピレン系樹脂(B)、第2のプロピレン系樹脂(C)および第3のプロピレン系樹脂(D)の合計が100重量%となる。
【0041】
このうち、強化繊維(A)は1〜75重量%、好ましくは5〜65重量%、より好ましくは10〜50重量%である。強化繊維(A)が1重量%未満では、得られる成形品の力学特性が不充分となる場合があり、75重量%を超えると射出成形などの成形加工の際に流動性が低下する場合がある。
【0042】
また、第1のプロピレン系樹脂(B)は0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜9重量%、より好ましくは1〜8重量%である。第1のプロピレン系樹脂(B)が0.1重量%未満では、第1のプロピレン系樹脂(B)と第3のプロピレン系樹脂(D)との親和性が不充分となる場合があり、10重量%を超えると、成形品の力学特性を低下させる場合がある。
【0043】
また、第2のプロピレン系樹脂(C)は0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜9重量%、より好ましくは1〜8重量%である。第2のプロピレン系樹脂(C)が0.01重量%未満では、強化繊維とプロピレン系樹脂との界面接着性が不充分となる場合があり、10重量%を超えると、成形品の力学特性を低下させる場合がある。
【0044】
また、第3のプロピレン系樹脂(D)は5〜98.98重量%、好ましくは25〜94重量%、より好ましくは50〜88重量%であり、この範囲内で用いることで、本発明の効果を達成することができる。
【0045】
ここで、第1のプロピレン系樹脂(B)と第2のプロピレン系樹脂(C)との配合量は、第1のプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して、第2のプロピレン系樹脂(C)0.3〜45重量部であることが好ましい。上記配合量とすることで、混合物自体の強度を確保し、また強化繊維との親和性も確保しやすくなるためである。より好ましくは、第1のプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して、第2のプロピレン系樹脂(C)1〜35重量部、さらに好ましくは第1のプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して、第2のプロピレン系樹脂(C)5〜25重量部、より一層好ましくは第1のプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して、第2のプロピレン系樹脂(C)7〜20重量部である。第2のプロピレン系樹脂(C)が0.3重量部より少なくなると、強化繊維との親和性が確保できなくなり、接着特性に劣る可能性がある。また第2のプロピレン系樹脂(C)が45重量部よりも多くなると、混合物自体の強度が低下する場合があり、強固な接着特性を維持出来ない可能性がある。
【0046】
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、強化繊維(A)、第1のプロピレン系樹脂(B)、第2のプロピレン系樹脂(C)および第3のプロピレン系樹脂(D)を有しており、成分(B)、成分(C)、成分(D)の重量平均分子量の序列が成分(D)>成分(B)>成分(C)となる繊維強化プロピレン系樹脂組成物である。
【0047】
これは、本発明の樹脂組成物を用いて成形加工や混練などを行う際に、成分(C)の重量平均分子量を、成分(B)および(D)の重量平均分子量よりも低くすることで、成分(C)が成分(A)〜(D)の混合物内を最も流動し、移動しやすくするためである。成分(C)は、カルボン酸塩を少なくとも含む形で変性されており、成分(B)〜(D)の中で強化繊維と最も相互作用を形成しやすい樹脂であること、かつ樹脂成分(B)〜(D)の中で最も移動しやすくなるため、成形加工や混練などの工程において強化繊維(A)の周辺に成分(C)が効率的に配置され、強化繊維(A)とプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させるように働いている。この役割を達成するうえで、成分(B)〜(D)の重量平均分子量の序列が、成分(D)>成分(B)>成分(C)であれば、成分(C)が容易に強化繊維(A)の周辺に配置可能となる。
【0048】
さらに第1のプロピレン系樹脂(B)は、第2のプロピレン系樹脂(C)と第3のプロピレン系樹脂(D)との間の重量平均分子量範囲であることが重要である。これは、成分(B)が成分(C)と成分(D)との間で親和性の橋渡しをして、樹脂成分自体を強固にするためである。第3のプロピレン系樹脂である成分(D)は、通常、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の中で最も配合割合の多い成分であり、いわばマトリックス樹脂の主成分となるものであり、重量平均分子量を高くして強度を確保する必要がある。成分(C)が変性タイプであり重量平均分子量が最も小さく、一方成分(D)は変性タイプである必要はなく重量平均分子量も大きいため、成分(B)を加えることで成分(C)と成分(D)とを含む樹脂成分を効果的に相互作用させる働きを有する。
【0049】
成分(B)の重量平均分子量(以下「Mw(b)」とも記す。)と成分(C)の重量平均分子量(以下「Mw(c)」とも記す。)との差(Mw(b)−Mw(c))は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることがさらに好ましい。また、成分(D)の重量平均分子量(以下「Mw(d)」とも記す。)とMw(b)との差(Mw(d)−Mw(b))は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることがさらに好ましい。
【0050】
上述のような構成の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、強化繊維とプロピレン系樹脂との界面接着性が良好であり、力学特性に優れた成形品が製造できる。またプロピレン系樹脂を用いているため、軽量性に優れた成形品を得ることができる。
【0051】
以下、成分(A)〜(D)について説明する。
[強化繊維(A)]
本発明に用いられる強化繊維(A)としては特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度、高弾性率繊維が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
【0052】
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法(ESCA)により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)との原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが例示できる。
【0053】
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法(ESCA)により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10
8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC
1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C
1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O
1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
【0054】
ここで、表面酸素濃度比[O/C]とは、上記O
1sピーク面積とC
1sピーク面積との比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
【0055】
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
【0056】
また、強化繊維(A)の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。強化繊維(A)の単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また強化繊維(A)の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、20,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。
【0057】
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物に用いられる、強化繊維(A)の形態については特に限定されないが、強化繊維の力学特性を効果的に発揮させたい場合には、単繊維が一方向に配列された強化繊維束が長さ方向に亘り連続した状態であることが好ましい。この場合、強化繊維束の単繊維全てが全長に亘り連続している必要はなく、一部の単繊維が途中で分断されていても良い。このような連続した強化繊維束としては、一方向性繊維束、二方向性繊維束、多方向性繊維束などが例示できるが、生産性の観点から、一方向性繊維束がより好ましく使用できる。
【0058】
また、本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物をコンパウンド、射出成形等で使用する場合などには、強化繊維(A)の取り扱い性の観点から1〜30mmの範囲の長さに切断したチョップド糸であることが好ましい。より好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜10mmの範囲である。強化繊維(A)を前記の長さに調整することにより、コンパウンド装置や射出成形機へのフィード性および取扱性を充分に高めることができる。
【0059】
[第1のプロピレン系樹脂(B)]
本発明に用いられる第1のプロピレン系樹脂(B)は、オレフィン成分のプロピレンから導かれる構成単位が50〜99モル%のプロピレン系樹脂である。
【0060】
第1のプロピレン系樹脂(B)の具体例としては、プロピレンと少なくとも1種のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体が挙げられる。
α−オレフィンを構成する単量体繰り返し単位には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンを構成する単量体繰り返し単位にはブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられ、これらその他の単量体繰り返し単位には、1種類または2種類以上を選択することができる。
【0061】
第1のプロピレン系樹脂(B)の骨格構造としては、プロピレンと前記その他の単量体のうちの1種類または2種類以上のランダムあるいはブロック共重合体、または他の熱可塑性単量体との共重合体等を挙げることができる。例えば、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。
【0062】
とりわけ、第3のプロピレン系樹脂(D)との親和性を高めることと、結晶性を落として第2のプロピレン系樹脂(C)との親和性を高めるために、第1のプロピレン系樹脂(B)はプロピレンから導かれる構成単位を50〜99モル%有してなることが重要であり、好ましくは55〜98モル%、さらに好ましくは60〜97モル%を有してなることである。
【0063】
なお、本発明において、プロピレン系樹脂における前記単量体繰り返し単位の同定には、IR、NMR、質量分析および元素分析等の通常の高分子化合物の分析手法を用いて行うことができる。
【0064】
また、第1のプロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含んでもよいが、樹脂自体の強度を確保し、強化繊維との接着を高める観点からは、実質的に未変性であることが好ましい。ここで、実質的に未変性とは、望ましくは全く変性されていないことであるが、変性されたとしても前記目的を損なわない範囲である、例えば、変性量が−C(=O)−O−で表される基換算で0.05ミリモル当量未満であることを意味する。好ましくは0.01ミリモル当量以下、より好ましくは0.001ミリモル当量以下、さらに好ましくは0.0001ミリモル当量以下である。
【0065】
また前記したように第1のプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは、第2のプロピレン系樹脂(C)の重量平均分子量Mwよりも大きくなることが必要であり、具体的には第1のプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは30,000〜500,000の範囲であることが好ましく、35,000〜450,000の範囲であることがより好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
【0066】
第1のプロピレン系樹脂(B)は、MI(メルトインデックス:230℃)が50以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上であるものが好ましい。該分子量分布(Mw/Mn)の上限は、特に制限はないが、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
【0067】
また、第1のプロピレン系樹脂(B)は、成分(C)と成分(D)との間で親和性の橋渡しとしての役割を果たす観点から、重量平均分子量Mwが30,000以上150,000未満であるプロピレン系樹脂(B−1)を30〜100重量%と、重量平均分子量Mwが150,000以上500,000以下であるプロピレン系樹脂(B−2)を0〜70重量%とを有してなることが好ましい。プロピレン系樹脂(B−1)の重量平均分子量Mwは、より好ましくは35,000以上140,000以下である。またプロピレン系樹脂(B−2)の重量平均分子量Mwは、より好ましくは150,000以上450,000以下である。上限については重量平均分子量Mwが大きくなりすぎると、上記した親和性の橋渡しを果たすことが困難になる場合があり、上記する範囲内とすることが好ましい。なお、本発明において、上記(B)が、プロピレン系樹脂(B−1)とプロピレン系樹脂(B−2)との混合物の場合、上記(B)の重量平均分子量Mwは、各プロピレン系樹脂の重量平均分子量Mwの相加平均とする。
【0068】
第3のプロピレン系樹脂(D)が酸変性プロピレン系樹脂である場合には、前記第1のプロピレン系樹脂(B)も変性されていることが、親和性を高めるうえで好ましい。具体的には第1のプロピレン系樹脂(B)が、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも有してなることであり、その変性量が−C(=O)−O−で表される基換算で0.05ミリモル当量以上であることが好ましい。また前記したように第1のプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは第2のプロピレン系樹脂(C)の重量平均分子量Mwよりも大きくなることが必要であり、具体的には第1のプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは50,000を超えて150,000以下であることが好ましい。より好ましくは60,000〜130,000である。前記重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含む第1のプロピレン系樹脂(B)の製造方法としては、前述の第2のプロピレン系樹脂(C)と同様にして製造することができる。
【0069】
第1のプロピレン系樹脂(B)における、(B−1)と(B−2)との配合量は、より好ましくはプロピレン系樹脂(B−1)を35〜100重量%とし、プロピレン系樹脂(B−2)を0〜65重量%とする。
【0070】
[第2のプロピレン系樹脂(C)]
第2のプロピレン系樹脂(C)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である。プロピレン系樹脂中にカルボン酸塩が含まれると、強化繊維との相互作用を高めるうえで効果的である。
【0071】
上記第2のプロピレン系樹脂(C)は、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα−オレフィンの単独または2種類以上との共重合体に、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/またはケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。上記プロピレンとα−オレフィンの単独または2種類以上との共重合体の単量体繰り返し単位および骨格構造は、上述の第1のプロピレン系樹脂(B)と同様の考えで選定することができる。
【0072】
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、およびケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物が挙げられ、またこれらのエステル、さらにはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
【0073】
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸
TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
【0074】
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類等が挙げられる。
【0075】
これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。また、これらの中でも、酸無水物類が好ましく、さらには無水マレイン酸が好ましい。
【0076】
上記第2のプロピレン系樹脂(C)の原料は、種々の方法で得ることができるが、例えば、有機溶剤中でプロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸やオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させた後に脱溶剤する方法や、プロピレン系樹脂を加熱溶融し得られた溶融物に不飽和ビニル基を有するカルボン酸および重合開始剤を攪拌下で反応させる方法や、プロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤とを混合したものを押出機に供給して加熱混練しながら反応させる方法等を挙げることができる。
【0077】
ここで重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
また有機溶剤としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好適に用いられる。
【0079】
上記のように得られた第2のプロピレン系樹脂(C)の原料を中和またはケン化することにより、第2のプロピレン系樹脂(C)を得ることができる。中和またはケン化する場合には、上記第2のプロピレン系樹脂(C)の原料を水分散体にして処理することが容易であり好ましい。
【0080】
上記第2のプロピレン系樹脂(C)の原料の水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム等の無機アミン、アンモニア、(トリ)メチルアミン、(トリ)エタノールアミン、(トリ)エチルアミン、ジメチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物および/またはその他金属類、水酸化物、水素化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類の弱酸塩を挙げることができる。塩基物質により中和またはケン化されたカルボン酸塩の基あるいはカルボン酸エステル基としては、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩またはカルボン酸アンモニウムが好適である。
【0081】
第2のプロピレン系樹脂(C)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の50〜100%は、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩より選択される、1種または2種以上の金属塩で転化されてなるものであることが好ましく、特にアンモニウム塩で転化されてなるものであることが好ましい。
【0082】
また、中和度またはけん化度、すなわち、第2のプロピレン系樹脂(C)の原料が有するカルボン酸基の上記金属塩やアンモニウム塩等への転化率は、水分散体の安定性と、繊維との接着性の観点より、通常50〜100%、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは85〜100%である。したがって、上記第2のプロピレン系樹脂(C)におけるカルボン酸基は、上記塩基物質によりすべて中和またはケン化されていることが望ましいが、中和またはケン化されずに一部カルボン酸基が残存していてもよい。上記のような酸基の塩成分を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法や、IR、NMR、質量分析および元素分析等を用いて酸基の塩の構造を同定する方法が挙げられる。
【0083】
ここでカルボン酸基の中和塩への転化率は、加熱トルエン中にプロピレン系樹脂を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準液で滴定し、プロピレン系樹脂の酸価を下式より求め、元のカルボン酸基の総モル数と比較して算出する方法などが挙げられる。
【0084】
酸価=(5.611×A×F)/B (mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)
【0085】
上記で算出した酸価を下式により中和されていないカルボン酸基のモル数に換算する。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)。
カルボン酸基の中和塩への転化率は、別途IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸基のカルボニル炭素の定量を行って算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて下式にて算出する。
【0086】
転化率%=(1−r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数
また、強化繊維との相互作用を高める観点から、前記第2のプロピレン系樹脂(C)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の含有量は、第2のプロピレン系樹脂1g当たり、−C(=O)−O−で表される基換算で総量0.05〜5ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.1〜4ミリモル当量、さらに好ましくは0.3〜3ミリモル当量である。上記のようなカルボン酸塩の含有量を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸塩のカルボニル炭素の定量を行う方法が挙げられる。
【0087】
上記した強化繊維(A)の周辺への移動の観点および第1のプロピレン系樹脂(B)との分子鎖同士の絡み合いを形成し相互作用を高める観点とから、第2のプロピレン系樹脂(C)の重量平均分子量Mwは、1,000〜50,000であることが好ましい。より好ましくは2,000〜40,000、さらに好ましくは5,000〜30,000である。なお、本発明において、重量平均分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
【0088】
[第3のプロピレン系樹脂(D)]
本発明の第3のプロピレン系樹脂(D)は、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体が挙げられる。
【0089】
α−オレフィンを構成する単量体繰り返し単位には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンを構成する単量体繰り返し単位にはブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられ、これらその他の単量体繰り返し単位には、1種類または2種類以上を選択することができる。
【0090】
第3のプロピレン系樹脂(D)の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のうちの1種類または2種類以上のランダムあるいはブロック共重合体、または他の熱可塑性単量体との共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。
【0091】
ここで第3のプロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量は前記したように序列が成分(D)>(B)>(C)となることが重要である。つまり第3のプロピレン系樹脂(D)は本発明の成形材料を成形した成形品におけるいわばマトリックス樹脂としての役割を果たすため、樹脂自体の強度が要求されることから重量平均分子量を成分(B)、(C)よりも高くすることが重要である。なお、本発明において、重量平均分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
【0092】
また第3のプロピレン系樹脂(D)は得られる成形品の力学特性を向上させる観点より、変性プロピレン系樹脂であることが好ましい。好ましくは酸変性プロピレン系樹脂であり、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩の基を有してなるプロピレン系樹脂である。上記酸変性プロピレン系樹脂は、種々の方法で得ることができ、例えば前記した第2のプロピレン系樹脂(C)の原料や、第2のプロピレン系樹脂(C)の製造例と同様の方法である。
【0093】
第3のプロピレン系樹脂(D)が、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩の基を有してなるプロピレン系樹脂である場合には、該樹脂の力学特性を高く保つことと、原料コストを考慮し、無変性のプロピレン系樹脂との混合物とすることが好ましい。具体的には、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩の基を有するプロピレン系樹脂(D−1)5〜50重量%と、カルボン酸および/またはその塩の基を有しないプロピレン系樹脂(D−2)50〜95重量%とを有してなることが好ましい。より好ましくは成分(D−1)が5〜45重量%、成分(D−2)が55〜95重量%、さらに好ましくは成分(D−1)が5〜35重量%、成分(D−2)が65〜95重量%である。
【0094】
第3のプロピレン系樹脂(D)が酸変性プロピレン系樹脂である場合には、前記第1のプロピレン系樹脂(B)も変性されていることが、親和性を高めるうえで好ましい。具体的には第1のプロピレン系樹脂(B)が、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも有してなることであり、その変性量が−C(=O)−O−で表される基換算で0.05ミリモル当量以上であることが好ましい。前記重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含む第1のプロピレン系樹脂(B)の製造方法としては、前述の第2のプロピレン系樹脂(C)と同様にして製造することができる。
【0095】
前記第1〜第3のプロピレン系樹脂が重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である場合、そのカルボン酸および/またはその塩の含有量は、樹脂1g当たり−C(=O)−O−で表される基換算での総量、すなわち、樹脂1g当たり−C(=O)−O−でのミリモル当量の序列が成分(C)≧成分(B)≧成分(D)であることが好ましい。これは強化繊維の周辺に存在させる第2のプロピレン系樹脂(C)は強化繊維への密着性の観点から、より多くの酸変性量が好ましい。第3のプロピレン系樹脂(D)は、樹脂コストの観点および、一般的に酸変性量を多くすると樹脂自体が脆くなり強度が下がる傾向にあるため、第2のプロピレン系樹脂(C)よりも酸変性量が少ないことが好ましい。また、第1のプロピレン系樹脂(B)は、第2および第3のプロピレン系樹脂との橋渡しをする観点から、その酸変性量は第2のプロピレン系樹脂(C)より少なく、第3のプロピレン系樹脂(D)よりも多いことが好ましい。
【0096】
なお、本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)を有してなる複合体に、該成分(D)が接着されてなる成形材料を含まない。
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)〜(D)以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、エラストマーあるいはゴム成分などの耐衝撃性向上剤、他の充填材や添加剤を含有しても良い。これらの例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられる。
【0097】
[用途]
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、各種公知の成形法により最終的な形状の製品に加工できる。成形方法としてはプレス成形、トランスファー成形、射出成形や、これらの組合せ等が挙げられる。成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品に好適である。さらに電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品も挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材なども挙げられる。このような電気・電子機器用部材では、強化繊維に導電性を有する炭素繊維を使用した場合に、電磁波シールド性が付与されるためにより好ましい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)プロピレン系樹脂の重量平均分子量測定
第1のプロピレン系樹脂(B)、第2のプロピレン系樹脂(C)および第3のプロピレン系樹脂(D)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。GPCカラムにはポリスチレン架橋ゲルを充填したものを用いた。溶媒に1,2,4−トリクロロベンゼンを用い、150℃にて測定した。分子量は標準ポリスチレン換算にて算出した。
【0099】
(2)プロピレン系樹脂の構造解析
第1、第2および第3の各プロピレン系樹脂について、有機化合物元素分析、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析、IR(赤外吸収)スペクトル分析、
1H−NMR測定および
13C−NMR測定を実施し、プロピレン系樹脂の含有元素量、官能基構造の同定、各帰属プロトン、カーボンのピーク強度より単量体構造の含有割合について評価を実施した。
【0100】
有機化合物元素分析は、有機元素分析装置2400II(PerkinElmer社製)を用いて実施した。ICP発光分析はICPS−7510(島津製作所社製)を用いて実施した。IRスペクトル分析はIR−Prestige−21(島津製作所製)を用いて実施した。
1H−NMR測定および
13C−NMR測定はJEOL JNM−GX400スペクトロメーター(日本電子製)を用いて実施した。
【0101】
(3)繊維強化プロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品の曲げ試験
ASTM D790(1997)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、"インストロン"(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。
【0102】
曲げ強度の判定は以下の基準でおこない、A〜Cを合格とした。
A:120MPa以上
B:100MPa以上120MPa未満
C:80MPa以上100MPa未満
D:80MPa未満
【0103】
(4)繊維強化プロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品のアイゾット衝撃試験 ASTM D256(1993)に準拠し、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。用いた試験片の厚みは3.2mm、試験片の水分率0.1重量%以下において、アイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
【0104】
アイゾット衝撃試験の判定は以下の基準でおこない、A〜Cを合格とした。
A:210J/m以上
B:180J/m以上210J/m未満
C:150J/m以上180J/m未満
D:150J/m未満
【0105】
(5)繊維強化プロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品の界面接着性評価
上記(3)のアイゾッド衝撃試験後の破断サンプルの破断面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察し、強化繊維表面に樹脂成分の付着があるか否かを、任意の強化繊維を5本を選択し、目視判定にて行った。また判定は以下の基準でおこない、A〜Bを合格とした。
【0106】
A:強化繊維表面のほぼ全ての領域(90%以上)に樹脂の付着が認められる
B:強化繊維表面の50%以上90%未満の領域に樹脂の付着が認められる
C:強化繊維表面に樹脂の付着が認められるのが50%未満である
【0107】
参考例1.炭素繊維1
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
【0108】
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:1.6g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.06
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0109】
ここで表面酸素濃度比は、表面酸化処理を行った後の炭素繊維を用いて、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10
8Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC
1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C
1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O
1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O
1sピーク面積とC
1sピーク面積との比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
【0110】
参考例2.炭素繊維2
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
【0111】
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:1.6g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.12
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0112】
参考例3.プロピレン系樹脂の混合物PP(1)の調製
第1のプロピレン系樹脂(B)として、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(B−1)(プロピレンから導かれる構成単位(以下「C3」とも記載する)=66モル%、Mw=9万)91重量部、第2のプロピレン系樹脂(C−1)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=0.81ミリモル当量)9重量部、界面活性剤として、オレイン酸カリウム3重量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは固形分濃度:45%であった。
【0113】
尚、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=0.81ミリモル当量)は、プロピレン・エチレン共重合体 96重量部、無水マレイン酸 4重量部、および重合開始剤としてパーヘキシ25B(日本油脂(株)製)0.4重量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って得られた。
【0114】
参考例4.プロピレン系樹脂の混合物PP(2)の調製
第2のプロピレン系樹脂(C−2)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン重合体(C3=98モル%、Mw=0.5万、酸含有量=0.81ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0115】
参考例5.プロピレン系樹脂の混合物PP(3)の調製
第2のプロピレン系樹脂(C−3)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン重合体(C3=95モル%、Mw=2.5万、酸含有量=0.1ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0116】
参考例6.プロピレン系樹脂の混合物PP(4)の調製
20%水酸化カリウム水溶液の供給量を90g/時間から43g/時間に変更し、第2のプロピレン系樹脂(C−4)を調製した以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0117】
参考例7.プロピレン系樹脂の混合物PP(5)の調製
20%水酸化カリウム水溶液を20%アンモニア水に変更し、供給量を90g/時間から150g/時間に変更し、第2のプロピレン系樹脂(C−5)を調製した以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0118】
参考例8.プロピレン系樹脂の混合物PP(6)の調製
第2のプロピレン系樹脂(C)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン重合体(C−6)(C3=95モル%、Mw=4万、酸含有量=0.81ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0119】
参考例9.プロピレン系樹脂の混合物PP(7)の調製
第1のプロピレン系樹脂(B)として、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(B−1)(C3=66モル%、Mw=9万)45.5重量部と、プロピレン・ブテン共重合体(B−2)(C3=81モル%、Mw=30万)45.5重量部との混合樹脂を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0120】
参考例10.プロピレン系樹脂の混合物PP(8)の調製
第1のプロピレン系樹脂(B)として、無水マレイン酸変性プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(B−3)(C3=66モル%、Mw=7万、酸含有量:0.81ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0121】
参考例11.プロピレン系樹脂の混合物PP(9)の調製
無変性のプロピレン樹脂(重量平均分子量100,000)を粉砕し、平均粒径10μmのプロピレン樹脂パウダーを得た。該パウダーをn−ヘキサン中に投入し、撹拌することで無変性プロピレン樹脂の懸濁液を調製した。固形分濃度は45重量%であった。
【0122】
参考例12.プロピレン系樹脂の混合物PP(10)の調製
第1のプロピレン系樹脂(B)として、第2のプロピレン系樹脂(C)の原料に用いた無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(B−4(C−1と同じ))(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=0.81ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0123】
参考例13.プロピレン系樹脂の混合物PP(11)の調製
第2のプロピレン系樹脂(C)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン重合体(C−7)(C3=95モル%、Mw=20万、酸含有量=0.81ミリモル当量)を用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0124】
参考例14.プロピレン系樹脂の混合物PP(12)の調製
第1のプロピレン系樹脂(B)として、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(B−1)(プロピレンから導かれる構成単位(以下「C3」とも記載する)=66モル%、Mw=9万)50重量部、第2のプロピレン系樹脂(C)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=0.81ミリモル当量)50重量部とを用いた以外は、参考例3と同様にしてエマルジョンを作製した。該エマルジョンは固形分濃度45重量%であった。
【0125】
参考例15.第3のプロピレン系樹脂(D)に用いる酸変性プロピレン樹脂の合成
プロピレン重合体 99.6重量部、無水マレイン酸 0.4重量部、および重合開始剤としてパーヘキシ25B(日本油脂(株)製)0.4重量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂(D−2)(Mw=40万、酸含有量=0.08ミリモル当量)得た。
【0126】
[実施例1]
参考例1で得られた連続炭素繊維束に、参考例3で調製した第1のプロピレン系樹脂(B−1)と第2のプロピレン系樹脂(C−1)が含まれるプロピレン系樹脂の混合物PP(1)のエマルジョンを固形分濃度27重量%に調整してローラー含浸法にて付着させた後、オンラインで210℃で2分間乾燥し、水分を除去してプロピレン系樹脂の混合物PP(1)が付着した炭素繊維束を得た。付着量は20重量%であった。
【0127】
次いで上記で得られた炭素繊維束を、カートリッジカッターにて1/4インチにカットした。
次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、第3のプロピレン系樹脂(D)としてポリプロピレン樹脂(D−1)(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂)をメインホッパーから供給し、次いで、その下流のサイドホッパーから上記でカットした炭素繊維束を供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで充分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。供給は、重量フィーダーにより炭素繊維のみの含有率が20重量%になるように調整した。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状の成形材料(以下「短繊維ペレット」とも記す。)とした。当該短繊維ペレットにおいて、成分(A)は平均繊維長0.3mmで均等に分散し、成分(B)〜(D)は均一に混ざりあっていた。当該短繊維ペレットの軸心方向の断面図および軸心方向と直交する方向の断面図を、
図1に示した。
【0128】
次に押出工程で得られた短繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。評価結果を、まとめて表1に示した。得られた成形品中の炭素繊維の割合は20重量%であり、成形品中の炭素繊維の平均繊維長は0.2mmであった。
【0129】
なお、試験片中の炭素繊維の平均繊維長は、以下のように求めた。すなわち、成形品小片を電気炉で、500℃、60分間加熱処理して樹脂を分解揮発させた。残った炭素繊維100本程度を無作為抽出し、顕微鏡で長さを測定した。測定長さの平均値を炭素繊維の平均繊維長とした。
【0130】
[実施例2]
第3のプロピレン系樹脂(D)に、ポリプロピレン樹脂(D−1)(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂)50重量%と、参考例15で作製した酸変性プロピレン系樹脂(D−2)50重量%とからなる樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0131】
[実施例3]
プロピレン系樹脂の混合物PP(1)のエマルジョンの固形分濃度を10重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0132】
[実施例4]
プロピレン系樹脂の混合物PP(1)のエマルジョンの固形分濃度を45重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0133】
[実施例5]
参考例14で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(12)のエマルジョンの固形分濃度35重量%を用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0134】
[実施例6]
参考例4で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(2)のエマルジョンの固形分濃度27重量%を用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0135】
[実施例7]
参考例5で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(3)のエマルジョンを用いた以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0136】
[実施例8]
参考例6で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(4)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0137】
[実施例9]
参考例7で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(5)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0138】
[実施例10]
参考例8で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(6)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0139】
[実施例11]
参考例9で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(7)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0140】
[実施例12]
参考例10で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(8)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0141】
[実施例13]
参考例2で得られた連続炭素繊維を用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表2に記載した。
【0142】
[比較例1]
参考例1で得られた連続炭素繊維束にプロピレン系樹脂の混合物を付着させずにそのまま評価に供した。短繊維ペレット作製時に炭素繊維が毛羽立ち、これ以上プロセスを進めることができなくなった。
【0143】
[比較例2]
プロピレン系樹脂の混合物PP(1)のエマルジョンをローラー含浸法にて付着させた後に、再度炭素繊維束に同じ濃度のエマルジョンをローラー含浸法にて付着させたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表3に記載した。
【0144】
[比較例3]
参考例11で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(9)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表3に記載した。
【0145】
[比較例4]
参考例12で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(10)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表3に記載した。
【0146】
[比較例5]
参考例13で調製したプロピレン系樹脂の混合物PP(11)のエマルジョンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして短繊維ペレットを得、成形評価を行った。特性評価結果はまとめて表3に記載した。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
以上のように、実施例1〜13においては、強化繊維とプロピレン系樹脂との界面接着性に優れ、力学特性に優れた成形品を得ることができた。
【0150】
一方、比較例1においては、炭素繊維束に何も付着させておらず、成形材料(短繊維ペレット)作製が不可能であった。また、比較例2〜5では充分な力学特性を有する成形品は得られなかった。