(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細長状弾性部材が、両サイド部の前側寄りの箇所及び後側寄りの箇所における前記下層吸収体の背面側部分に、幅方向に沿ってそれぞれ配置された請求項1記載の吸収性物品。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間に幅の狭い括れ部分を有する場合は、いずれか一方又は両方の括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。「主吸収体の背面側部分」とは、下層吸収体に対する不透液性バックシート側の部分を意味する。
【0015】
図1〜
図5は、本発明に係る吸収パッド例200を示している。この吸収パッド200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)Mは350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より広い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0016】
吸収パッド200は、外面に外装シート32が積層された不透液性バックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。
【0017】
吸収体23の裏面側には、不透液性バックシート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。不透液性バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0018】
また、不透液性バックシート21の外面は、不織布からなる外装シート32により覆われており、この外装シート32は、所定の食み出し幅をもってバックシート21の周縁より外側に食み出している。外装シート32としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0019】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0020】
トップシート22と吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅25wは後述する上層吸収体23Uの幅L2の50〜90%程度であるのが好ましい。
【0021】
吸収パッド200の前後方向両端部では、外装シート32および透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。吸収パッド200の両側部では、外装シート32が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面にはバリヤシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、
図1では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFは、本発明の周縁部をなし、これらにより囲まれる部分が本発明の本体部をなす。外装シート32を設けない場合、外装シート32に代えて不透液性バックシート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0022】
バリヤシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0023】
バリヤシート24の幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0024】
また、両バリヤシート24,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート32内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、
図1に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤ部となる部分であり、その起立基端はバリヤシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0025】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の包装シート(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に後側の部分が前側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0026】
吸収体23は、下層吸収体23Bの上に、下層吸収体23Bの幅Lよりも幅L2が狭く且つ少なくとも股間部C2から後側部分B2にかけて前後方向に延在する上層吸収体23Uが積層された二層構造となっている。上層吸収体23Uの前後方向長さM4は下層吸収体23Bの前後方向長さM3と同じであっても良いが、70〜85%程度とするのが望ましい。また、上層吸収体23Uの全幅L2は下層吸収体23Bの全幅Lの40〜60%程度とするのが望ましい。
【0027】
吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m
2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m
2程度とするのが好ましい。より詳細には、下層吸収体23Bの繊維目付けは例えば80〜400g/m
2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば50〜400g/m
2程度とすることができ、上層吸収体23Uの繊維目付けは例えば80〜300g/m
2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば10〜200g/m
2程度とすることができる。
【0028】
下層吸収体23Bは、股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅L3は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅L1の50〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅L3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0029】
図2に示すように、主吸収体である下層吸収体23Bの中央部41を挟んだ位置には、この下層吸収体23Bの表裏面に貫通しつつ、吸収パッド200の前後方向に沿って直線状に延在している一対の第1スリットである前後方向スリット40Aが、それぞれ設けられている。これら一対の前後方向スリット40Aの前後端側は、円弧状に外側に曲がって下層吸収体23Bの括れ部分23nが終わり始める吸収体23の両側端部に繋がっている。
【0030】
さらに、下層吸収体23Bには、この下層吸収体23Bの表裏面に貫通する各一対の第2スリットである斜方向スリット40Bが、前後方向スリット40Aから下層吸収体23Bの側端部に向かって先端側の間隔が狭くなるように、相互に逆方向の斜めにそれぞれ延在している。
従って、本実施の形態では、一対の前後方向スリット40A及び各一対の斜方向スリット40Bにより、一対の分割スリット40が構成されているが、この分割スリット40が、下層吸収体23Bの少なくとも括れ部分23nにおける幅方向中央線の左右両側において、下層吸収体23Bを分割している。
【0031】
このことで、下層吸収体23Bが、下層吸収体23Bの中央に位置する中央部41及び、この中央部41の両側部に位置して一対の斜方向スリット40Bに挟まれている両サイド部42に、それぞれ分割されている他、両サイド部42の前後に位置して、前後方向スリット40Aの円弧状に形成された部分と斜方向スリット40Bとの間が、補助分割部43に分割されている。
【0032】
これに伴い、前後方向スリット40A及び斜方向スリット40Bによって両サイド部42がそれぞれ分割されて設けられているが、これら両サイド部42は、一対の斜方向スリット40Bが相互に逆方向の斜めに形成されていることから、三角形状になっているものの、台形状としても良く、また、一対の斜方向スリット40Bは直線でなく曲線として三角形や台形に似た形状としても良い。
【0033】
つまり、下層吸収体23Bの股間部C2付近に分割スリット40を入れることで、股間をも含めた内腿に吸収体23の形状が沿うように、下層吸収体23Bが分割されることになる。このことで、下層吸収体23Bの中央部41及び両サイド部42が個々に変形して、
図7に示すように下層吸収体23Bが立体的に立ち上がり易くなり、股間をも含めた内腿に下層吸収体23Bが沿うようになるだけでなく、装着者の動きにより追従するようになることで尿の漏れ出しが防止できるようになる。
【0034】
尚この際、
図6に示すように下層吸収体23Bと上層吸収体23Uとの間には、透液性の層間紙46が配置されていて、前後方向スリット40A及び斜方向スリット40Bの部分で、この層間紙46が不透液性バックシート21の表面にホットメルト接着剤、ヒートシール等による接着点46Aでしっかりと接着されている。この為、上記の両サイド部42及び補助分割部43が不用意にずれることがない。
【0035】
また、分割スリット40を股間から臀部にかけて配置することから、下層吸収体23Bが立体的に立ち上がり易くなるのに伴い、吸収パッド200の立体形状を維持し易くなると共に、上層吸収体23Uをも含めた吸収体23によれや割れが発生し難くもなる結果として、股間部C2における漏れ出しが確実に防止されて尿の漏れ出しが改善される。
以上より、本実施の形態によれば、立体形状を維持できると共に、よれや割れを防止して、漏れ出しが軽減される吸収パッド200となる。
【0036】
さらに、下層吸収体23Bの中央部41の
図6における下側に位置する不透液性バックシート21と外装シート32との間の部分であって、
図3に示す両サイド部42の前側寄りの箇所及び後側寄りの箇所には、この中央部41がより立体的に立ち上がるよう糸ゴムである細長状弾性部材45が吸収パッド200の幅方向に沿って、例えば各4本ずつ配設されている。このことで、細長状弾性部材45の弾性により内腿の窪みに沿って吸収体23の中央部41が立体的に立ち上がり、下層吸収体23Bの中央部分がより隆起し易くなって立体形状が一層維持し易くなり、この結果として尿の漏れ出しが更に軽減される。
【0037】
つまり、細長状弾性部材45の弾性により、
図6(A)に示す状態から装着に伴い、
図6(B)に示すように股間に沿って前後方向スリット40Aの部分で折り曲がり、最終的に
図7に示す状態のようになって、吸収体23が立体的にカーブしつつ立ち上がり、装着者の体に沿うことになる。
【0038】
この一方、本実施の形態の吸収パッド200であれば、下層吸収体23Bが分割されていて分割スリット40の部分で折れやすくなっているので、股間部C2に対応する部分が分かりやすく、誰でも簡単に装着できるようになる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳説する。尚、第1の実施の形態と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図8に示すように本実施の形態は第1とほぼ同一の構造を有している。但し、本実施の形態では、上層吸収体23Uの幅方向中央部分であって両サイド部42の前側の箇所に、第3スリットである横方向スリット50が3本設けられており、また、上層吸収体23Uの幅方向中央部分であって両サイド部42の後側の箇所にも、横方向スリット50が3本設けられている。
【0040】
そして、これら各横方向スリット50は、各上層吸収体23Uの表裏面に貫通しつつ、幅方向に沿ってそれぞれ延在されるような構造とされている。但し、これら前側の箇所及び後側の箇所の各3本の横方向スリット50は、円弧状に外側に曲がっている前後方向スリット40Aの前後端側に対応してこの前後方向スリット40Aに重ならないように、外側の横方向スリット50から内側の横方向スリット50に向かって順次短く形成されている。
【0041】
第1の実施形態では、股間部C2の下層吸収体23Bを残した状態で下層吸収体23Bに分割スリット40を設けて下層吸収体23Bを分割する事で、吸収体23の形状を内腿により確実に沿うようにさせているが、装着時に脚によって押されて装着者の腹側部分から吸収パッド200が浮いてしまい、吸収パッド200と体との間に隙間が発生する事も考えられた。これに対して本実施の形態では、上記のように更に上層吸収体23Uの幅方向中央部分であって両サイド部の前側の箇所及び後側の箇所に、幅方向に沿ってそれぞれ延在された横方向スリット50を上層吸収体23Uに設けている。
【0042】
このことで、横方向スリット50により吸収体23の柔軟性が高まってより立体的に立ち上がり易くなって、装着者の腹側の吸収パッド200の浮き上がりが防止されると共に、装着者の動きにより確実に追従できるようになる。これに伴い、上層吸収体23Uがより立体的に立ち上がり易くなる結果として、吸収体23のよれや割れを更に抑制して、尿の漏れ出しが一層軽減されるようになる。
【0043】
尚、上記実施の形態においては、吸収体23が下層吸収体23Bと上層吸収体23Uとからなる二層構造となっているが、吸収体23を下層吸収体23Bのみの一層構造としても良い。また、細長状弾性部材45としては、他の細長状弾性部材と同様に、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0044】
他方、上記実施の形態における不織布の材質としては、スパンレース、エアスルー、ポイントボンド、エアレイド、ニードルパンチ等が考えられ、その他の構成する素材としては、レーヨンやコットン等のセルロール繊維、PPやPE等のポリオレフィン、PET等のポリエステルやそれらの複合体が考えられる。