(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗籠が移動している間に前記第1の検出ローラおよび前記第2の検出ローラが互いに離間したことを前記検出部が検出した場合に前記乗籠から登録されている最初の目的階に前記乗籠を停止させる制御部
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載されたエレベータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施形態のエレベータシステム1は、
図1から
図13を参照して説明する。
図1に示すエレベータシステム1は、巻上機3と、乗籠4と、釣合錘5と、メインロープ6と、コンペンセイションロープ7と、メインシーブ31と、コンペンセイションシーブ71と、交差検出装置10とを備える。このエレベータシステム1は、昇降路200の上に機械室201を備える。機械室201には、巻上機3および制御盤202が設置されている。メインシーブ31は、巻上機3の出力軸に取り付けられ、メインロープ6が捲き掛けられる。乗籠4および釣合錘5は、メインロープ6に吊下げられ、昇降路200内に鉛直に設置されたガイドレールに沿って移動する。コンペンセイションロープ7は、乗籠4および釣合錘5に吊下げられ、昇降路200の下部のピット203に配置されるコンペンセイションシーブ71に捲き掛けられる。
【0013】
メインロープ6およびコンペンセイションロープ7は、乗籠4および釣合錘5の間に渡されるロープであって、それぞれ複数本を平行に一列に並べて構成されている。乗籠4が移動することに伴ってメインシーブ31を中心とする乗籠4側のメインロープ6と釣合錘5側のメインロープ6の重量差が変化する。コンペンセイションロープ7は、この重量差を相殺するために取り付けられている。
【0014】
メインシーブ31およびコンペンセイションシーブ71は、ロープの方向を変えるために配置されるシーブの一形態である。メインシーブ31はメインロープ6の方向を変え、コンペンセイションシーブ71はコンペンセイションロープ7の方向を変える。乗籠4および釣合錘5に対して鉛直にメインロープ6が垂下されるように、逸らせシーブ32がさらに設けられている。メインロープ6は、メインシーブ31および逸らせシーブ32に捲き掛けられる。この逸らせシーブ32もまたロープの方向を変えるために配置されるシーブの一形態である。
【0015】
交差検出装置10は、
図1および
図2に示すコンペンセイションシーブ71の近傍と、
図1および
図3に示すメインシーブ31および逸らせシーブ32の近傍にそれぞれ配置されている。コンペンセイションシーブ71の近傍に配置される交差検出装置10は、
図2に示すように、コンペンセイションシーブ71を囲うケーシング72の上部に取り付けられている。ケーシング72は、ピット203に設置されたコンペンセイションシーブ71用のガイドレール73に嵌合する案内装置74を備えており、ガイドレール73に沿って鉛直方向へ移動する。また、メインシーブ31および逸らせシーブ32の近傍に配置された交差検出装置10は、
図3に示すように、巻上機3および逸らせシーブ32を支持するマシンベッド33を構成する梁の下面に取り付けられている。
【0016】
これらの交差検出装置10は、すべて同じ構成であるので、代表してコンペンセイションシーブ71の近傍に配置された交差検出装置10を説明する。この交差検出装置10は、
図4および
図5に示すように、フレーム11と、第1の検出ローラ12Aと、第2の検出ローラ12Bと、第1のアーム13Aと、第2のアーム13Bと、ロッド14と、抑制スプリング15と、中立スプリング16と、検出部17とを備える。フレーム11は、一列に並べれられた5本のコンペンセイションロープ7を取り囲むように形成されている。
【0017】
第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bは、コンペンセイションロープ7が許容される以上の振幅で振れた場合に接触するようにコンペンセイションロープ7から離れており、コンペンセイションロープ7の列を中心とする面対称に一対に配置されている。この実施形態においてロープが交差しないために許容される振幅とは、ロープが交差検出装置10を通過するときの振幅がロープの直径の2倍以下になっていることである。したがって、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間隔Sは、
図5に示すようにコンペンセイションロープ7の直径dの2倍以下に設定されている。第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bは、ベアリングを介して両端から延びるシャフト121をそれぞれ有している。
【0018】
第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bの外周表面は、耐摩耗性に優れたウレタンゴムで形成されており、コンペンセイションロープ7と接触したときの衝撃および衝突音を緩和させ、かつ、ロープを傷つけることを防止する。また、移動しているコンペンセイションロープ7が第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bに接触しても、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bはベアリングを備えているので、回転することによって接触抵抗をいなす。
【0019】
第1のアーム13Aは、
図4に示すように基端がフレーム11に連結され、
図5に示すように回動端が第1の検出ローラ12Aの端部から延びたシャフト121に連結されている。同様に、第2のアーム13Bは、
図4に示すように基端がフレーム11に連結され、
図5に示すように回動端が第2の検出ローラ12Bの端部から延びたシャフト121に連結されている。第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bは、各々の基端を中心に回動することによって、それぞれ第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bをコンペンセイションロープ7の列を横切る方向へ変位させる。
【0020】
ロッド14は、
図5に示すように第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bがコンペンセイションロープ7に接触しない、かつ、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間隔Sがコンペンセイションロープ7の直径dの2倍以下になる範囲に、第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bを保持する。ロッド14の基端141は、
図6に示すように第2のアーム13Bに回動可能に連結され、先端142は、第1のアーム13Aに形成されたフィン130の第1の孔131に通されている。そして、第2のアーム13B側からフィン130に突き当たるようにロッド14の途中に装着されたナット143によって第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの距離が設定される。
【0021】
つまり、コンペンセイションロープ7の直径d、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間隔Sとすると、間隔Sは、d<S<2dとなるように設定される。このとき、コンペンセイションロープ7に対して第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bが面対称に配置されるように、第1の検出ローラ12Aとコンペンセイションロープ7との距離、および、第2の検出ローラ12Bとコンペンセイションロープ7との距離は、それぞれ、(S−d)/2となるように設定される。
【0022】
抑制スプリング15は、
図6に示すように第1のアーム13Aのフィン130の第1の孔131を通り抜けた部分のロッド14に通され、ロッド14の先端142とフィン130とを離間させる方向、つまり、フィン130をナット143に押し当てる方向に付勢する。これによって、抑制スプリング15は、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bが互いに離間するのを抑える。抑制スプリング15の拘束力よりも強い力が第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bを押し広げる方向に作用した場合は、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bは、互いに離れる方向へ変位する。
【0023】
図4および
図6に示すように第1のアーム13Aに形成されたフィン130の第2の孔132に、第1のアーム13Aが変位する方向に沿ってガイド161が通されている。このガイド161の基端162は、フレーム11に取り付けられたブラケット160に固定されている。中立スプリング16は、フィン130の両側に延びるガイド161にそれぞれ装着され、フィン130を挟むように、ブラケット160とフィン130の間、および、フィン130とガイド161の先端163との間に、それぞれ装着されている。
【0024】
このように中立スプリング16は、第1のアーム13Aとフレーム11との間に組み付けられることによって、コンペンセイションロープ7の基準位置に対して第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bを一定の距離に配置する。ここで、「基準位置」とは、コンペンセイションロープ7が振れていないときにコンペンセイションロープ7があるべき位置のことを意味する。以降、第1の検出ローラ12A、第2の検出ローラ12B、第1のアーム13A、第2のアーム13B、メインロープ6について「基準位置」と称する場合は、いずれも、外乱がない場合にそれらが本来あるべき状態に納まっていることを指すものとする。
【0025】
検出部17は、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bが互いに離間したことを検出するように構成される。この検出部17は、
図4および
図6に示すように、スイッチ171と、カム172と、レバー173と、ストライカ174とを含む。スイッチ171は、第1のアーム13Aの回動端に取り付けられたベースプレート170に固定されている。スイッチ171は、作動子171Aが押し込まれると導通を遮断するように接続される。
【0026】
ベースプレート170は、
図7に示すように第1の軸175と第2の軸176とを有している。第1の軸175は、スイッチ171の作動子171Aが変位する方向に沿う線上に配置されている。第2の軸176は、作動子171Aが変位する方向に沿う線上から外れた位置に配置されている。
【0027】
図6および
図7に示すように、カム172は、カム面172Aを有し、第1の軸175に組み付けられている。カム面172Aは、スイッチ171の作動子171Aに接しており、第1の軸175を中心にカム172が回動することによって作動子171Aを変位させる。このカム面172Aは、突出した状態の作動子171Aに接触する第1の面172Bと、作動子171Aを押し込んだ状態に保持する第2の面172Cと、第1の面172Bから第2の面172Cへなだらかにつなぐ変位面172Dを備えている。
【0028】
第2の面172Cは、第1の軸175を中心とする同心円に形成されている。第2の面172Cで作動子171Aに接触している場合、カム172は、トルクを受けない。したがって、第2の面172Cで作動子171Aと接する姿勢まで回動すると、カム172はその姿勢に保持される。また、変位面172Dは、インボリュート曲線に沿う面に形成する。カム172が回転する角度に対して作動子171Aの変位量が一定になる。つまり、カム172を回転させるために必要なトルクが一定になるので、カム172および作動子171Aの動作が安定する。
【0029】
レバー173は、
図6および
図7に示すように第2の軸176に組み付けられ、作用端173Aと操作端173Bとを有している。作用端173Aは、カム172の回動中心から偏心した位置で連結軸177を介してカム172に連結されている。操作端173Bは、第1のアーム13Aと第2のアーム13Bが相対的に変位する方向を横切って第2の軸176から離れる方向へ延びている。
【0030】
ストライカ174は、
図6および
図7に示すようにロッド14に固定されており、フック174Aを備えている。第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bが離間する場合、すなわち、第1のアーム13Aと第2のアーム13Bが離間する場合、フック174Aは、レバー173の操作端173Bに係合し、第2の軸176を中心にレバー173を回動させる。レバー173の作用端173Aはカム172に連結されているので、
図8に示すように、レバー173が回動されると、これに伴ってカム172も第1の軸175を中心に回動される。
【0031】
本実施形態の場合、
図7に示すように第1の軸175から連結軸177までの距離よりも第2の軸176から連結軸177までの距離のほうが長いので、
図8に示すようにレバー173が回動される角度よりもカム172が回動される角度の方が大きくなる。つまり、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間の距離がほんのわずか広がるだけで、カム172は、スイッチ171を作動させるのに十分な角度まで回動される。
【0032】
また、
図4から
図6に示すようにこの交差検出装置10は、コンペンセイションロープ7の列の両端に、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bに対して立体交差するように配置される一対の補助ローラ12Cを備えている。補助ローラ12Cは、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bに沿ってコンペンセイションロープ7が振れるのを抑える。補助ローラ12Cは、ベアリングを介して支持軸121Cに組み付けられており、フレーム11に固定されている。補助ローラ12Cの外周表面は、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bと同様に、耐摩耗性に優れた部材、たとえばウレタンで形成されている。
【0033】
以上のように構成されたエレベータシステム1において、複数本のコンペンセイションロープ7がばらばらに動く第1のモードで振れて、隣り合う2本が交差した場合、
図9に示すようにロープの交差部7Aが交差検出装置10を通過することによって、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bの間隔Sは、交差部7Aの最大幅2dまで押し広げられる。つまり、間隔Sがd<S<2dの範囲に設定されている第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bは、それぞれ(2d−S)/2だけ変位する。
【0034】
その結果、第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bが
図10に示すように互いに離れる方向へ回動し、ストライカ174のフック174Aとレバー173の操作端173Bとの間に設定された隙間G以上に第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bが相対変位することによって、ストライカ174のフック174Aがレバー173の操作端173Bを蹴る。そして、レバー173が回動されることによって、カム172が回り、作動子171Aが押し込まれる。スイッチ171は、作動子171Aが押し込まれることによって出力がOFFになるように設定されている。
【0035】
複数本のコンペンセイションロープ7が同じ方向へ揃って動く第2のモードで振れる場合、どちらか一方の検出ローラに接触する。このとき第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bは、
図12に示すようにロッド14によって連結されており、抑制スプリング15によって第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間隔Sを維持するように構成されている。
【0036】
図11に示すように第1の検出ローラ12Aにコンペンセイションロープ7が当たると、第1の検出ローラ12Aは、コンペンセイションロープ7に押されて変位する。そして第2の検出ローラ12Bは、
図12に示すように間隔Sを保ったまま第1の検出ローラ12Aと同じ方向へ変位する。
【0037】
コンペンセイションロープ7が第2のモードで振れる場合、第1のアーム13Aと第2のアーム13Bは、間隔Sを維持するように同じ方向へ変位するので、ストライカ174のフック174Aは、レバー173の操作端173Bに接触しない。したがって、スイッチ171がOFFにならない。コンペンセイションロープ7が基準位置に戻れば、第1のアーム13Aとフレーム11との間に装着された中立スプリング16によって、第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bは元の位置に戻される。交差検出装置10は、中立スプリング16の力で第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bを元の位置に戻すことによって、コンペンセイションロープ7の振れを抑制する。
【0038】
このように交差検出装置10は、ロープを制振するとともに、
図9に示すように隣り合うロープが交差したと想定される場合にスイッチ171をOFFにし、
図11に示すように同じ方向へロープが変位する場合にスイッチ171をONのままに維持する。建物の揺れや風によってロープが揺れる場合、おおむね第2のモードであり、
図11および
図12に示すように検出部17は作動しない。
【0039】
以上のように構成されたエレベータシステム1は、
図1に示すように交差検出装置10に接続され、乗籠4を運転する制御に介入する制御部18を備える。なお、この制御部18は、独立したものではなく、エレベータシステム1の制御盤202の一部に構成されたものであってもよい。この制御部18の機能について
図13を参照して説明する。
【0040】
図13に示すフローチャートのように、エレベータシステム1のサービス運転中において、籠呼び登録または乗場呼び登録があって乗籠4が移動開始(S1)されると、制御部18は、交差検出装置10の検出部17に設けられたスイッチ171の信号の監視を開始(S2)する。制御部18は、スイッチ171の信号がOFFになったことすなわちロープの交差が検知されたか判断(S3)する。
【0041】
交差したことが検知された場合は、スイッチ171がOFFになったこと記憶(S4)し、異常が発生したことを管理センタへ発報(S5)する。制御部18は、目的階へ到着するまでの間にスイッチ171の信号がOFFになっても乗籠4を緊急停止させることなく、乗籠4から登録されている最初の目的階まで、乗籠4を移動させて着床させる。なお、乗籠4の進行方向で最も近い乗場が着床予定階として乗場登録されている場合は、その着床予定階に乗籠4を停止させてもよい。
【0042】
制御部18は、ロープが交差したことを検出した場合も、検出しなかった場合も、乗籠4が目的階に到着したか判断(S6)し、目的階に到着していない場合は、引き続きロープ交差が検知されないか判断(S3)し続ける。目的階に到着すると、制御部18は、検出信号が記憶されているか判断(S7)する。
【0043】
検出信号が記憶されている場合、乗客に対して乗籠4の運転を中断することをアナウンスし、乗籠4のサービスを停止(S8)する。作業員が到着して状況を確認するとともに、復旧作業が完了(S9)するまで、乗籠4のサービスは停止したままになる。ロープが交差した可能性があることは、スイッチ171の信号がOFFになったときに予め管理センタへ発報(S5)されているので、作業員が到着するまでの時間は短縮されている。なお、乗籠4が目的階に着床し、サービスが停止されるときに、このエレベータシステム1の管理センタへ異常が発生したことを発報してもよい。
【0044】
ロープの点検および復旧が完了し、乗籠4のサービスが再開されると、次の呼び登録があるまで待機(S10)状態になる。また、交差したことを検出した信号が記憶されていなかった場合、そのまま、次の呼びが生じないか待機(S10)状態になる。
【0045】
このように制御部18は、乗籠4が移動している間に第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bが離間したことを検出部17で検出した場合、乗籠4から登録されている最初の目的階に乗籠4を停止させる。エレベータシステム1は、ロープが交差した程度であれば、その運転に限って目的階まで乗籠4を何の問題もなく移動させることができる。したがって、このエレベータシステム1のように、乗籠4を最初の目的階へ着床させ、乗客を速やかに降ろすほうが、乗客にとって安心である。
【0046】
なお、メインロープ6とコンペンセイションロープ7とを比較した場合、メインロープ6には乗籠4と釣合錘5を吊り下げている分だけ張力が掛かっているのに対し、コンペンセイションロープ7は、コンペンセイションシーブ71の重量程度しか張力が掛かっていない。したがって、コンペンセイションロープ7のほうが交差が発生しやすい。したがって、交差検出装置10は、コンペンセイションロープ7の交差を検出するためにコンペンセイションシーブ71の近傍に設置し、さらに加えてメインロープ6の交差を検出するためにメインシーブ31および逸らせシーブ32の近傍にも設置する。
【0047】
検出部17に設けられるスイッチ171は、第1の実施形態において作動子171Aが押し込まれた場合にOFFになるように構成されている。第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bとが2d以上に離間したことを検出部17として出力すればどのような構成であってもよい。例えば、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bとの距離が広がったことを検出した場合に、作動子171Aが突出するように構成されていてもよいし、作動子171Aが二値的に変化するレバーであってもよい。
【0048】
また、
図13のフローチャートにおいて、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bが離間したことを検出部17で検知した場合、籠呼び登録によって目的階が設定されているか判断し、目的階が設定されていない場合は、乗客が乗籠4内に居ないと判断して速やかに乗籠4の運転を停止させてもよい。また、目的階が設定されており乗籠4に乗客がいると判断された場合、乗籠4の移動速度を減速させてもよい。
【0049】
以上のように構成されたエレベータシステム1によれば、メインロープ6あるいはコンペンセイションロープ7に発生した交差部は、交差検出装置10を通過することによって早期にかつ確実に検知されるので、機器の故障が未然に防がれる。
【0050】
第2の実施形態のエレベータシステム1の交差検出装置10は、
図14を参照して説明する。第1の実施形態において示した交差検出装置10の各構成と同じ機能を有する構成は、
図14中において第1の実施形態のエレベータシステム1の構成と同一の符号を付し、対応する第1の実施形態の記載を参酌することによって、ここでの記載を省略する。また、
図14に示した交差検出装置10は、第1の実施形態の交差検出装置10と同様に、コンペンセイションシーブ71の近傍に設置してコンペンセイションロープ7が交差したことを検出する場合、および、巻上機3のメインシーブ31および逸らせシーブ32の近傍に設置してメインロープ6が交差したことを検出する場合のいずれにも採用される。
【0051】
第2の実施形態の交差検出装置10において、検出部17は、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bの片方の端部のみならず両方の端部に設置されている。その他の構成は、第1の実施形態の交差検出装置10と同じである。したがって細部の説明、および、第2の実施形態の交差検出装置10を備えるエレベータシステム1の制御の説明については、第1の実施形態の記載を参酌する。
図14に示すように、メインロープ6またはコンペンセイションロープ7の本数が多い場合、第2の実施形態においては9本である場合、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bが長くなる。したがって、検出部17が片側にしか設けられていないと、検出部17から最も遠い位置にある2本のロープが交差した場合、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bは、その交差部が通過したことによって斜めに開くだけで交差部が通過したことを検出できない可能性が懸念される。
【0052】
第2の実施形態の交差検出装置10の検出部17は、第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの両方の端部にそれぞれ配置されるので、交差部が通過したことは、どちらか一方の検出部17が取りこぼしなく検出する。
【0053】
第3の実施形態のエレベータシステム1の交差検出装置10は、
図15を参照して説明する。第1の実施形態において示した交差検出装置10の各構成と同じ機能を有する構成は、
図15中において第1の実施形態のエレベータシステム1の構成と同一の符号を付し、対応する第1の実施形態の記載を参酌することによって、ここでの記載を省略する。
【0054】
また、
図14に示した交差検出装置10は、第1の実施形態の交差検出装置10と同様に、コンペンセイションシーブ71の近傍に設置してコンペンセイションロープ7が交差したことを検出する場合、および、巻上機3のメインシーブ31および逸らせシーブ32の近傍に設置してメインロープ6が交差したことを検出する場合のいずれにも採用される。第3の実施形態では、コンペンセイションロープ7の交差部7Aを検出するために、コンペンセイションシーブ71の近傍に交差検出装置10を設置した場合を例に説明する。
【0055】
第3の実施形態のエレベータシステム1は、
図15に示すようにコンペンセイションシーブ71の近傍に設置された交差検出装置10のほかに、振止め装置20を備えている。この振止め装置20は、コンペンセイションシーブ71に対して交差検出装置10よりも遠位となる位置に配置される。振止め装置20は、
図15に示すように、コンペンセイションシーブ71のケーシング72を案内するガイドレール73から延ばしたサポート75に固定する。振止め装置20は、コンペンセイションシーブ71のケーシング72から延ばしたサポートに固定してもよい。振止め装置20は、乗籠4または釣合錘5が昇降路200の最下部まで降りてきた場合に、これらに干渉しない範囲に設置される。
【0056】
第1の実施形態の
図9のようなコンペンセイションロープ7の交差部7Aがコンペンセイションシーブ71を通過するのを検出したいので、
図15に示すようにコンペンセイションシーブ71から接線方向に延びるコンペンセイションロープ7のどちらか片方を囲うように交差検出装置10および振止め装置20が設置されていれば良い。
【0057】
第3の実施形態における振止め装置20は、
図15に示すように、抑制ローラ21と抑制アーム22とロッド14と抑制スプリング15と中立スプリング16とを備える。抑制ローラ21は、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bと同様に、コンペンセイションロープ7の列に対して面対称に一対に配置される。また、抑制アーム22は、コンペンセイションロープ7の列を横切る方向へ変位するように抑制ローラ21を支持する。
【0058】
抑制アーム22は、コンペンセイションロープ7の基準位置に対して抑制ローラ21を一定の距離に配置するために、交差検出装置10の第1のアーム13Aおよび第2のアーム13Bと同じく、ロッド14と抑制スプリング15と中立スプリング16によって位置決めされる。一対の抑制ローラ21どうしの間隔をTとし、コンペンセイションロープ7の直径dとすると、Tは、d<T<2dとなるように設定される。
【0059】
このように、振止め装置20は、交差検出装置10と比べた場合、検出部17を備えていない点を除いて、ほぼ同じ構成である。この振止め装置20は、コンペンセイションロープ7が振れた場合にこれらに抑制ローラ21を接触させることによって、コンペンセイションロープ7の振れ幅を小さく抑制する。
【0060】
したがって、コンペンセイションロープ7の振れを抑制する機能を考慮すると、中立スプリング16のバネ特性を交差検出装置10のものと変えてもよい。また、交差部7Aが通過するときの抵抗を軽減するために、抑制スプリング15のバネ強度を交差検出装置10の抑制スプリング15よりも小さいものにする。また、振止め装置20は、ロープの交差部を検出することを目的としていないので、ロッド14、抑制スプリング15、中立スプリング16の代わりに、抑制アーム22の基部に捩りコイルバネなどを取り付けて、抑制アーム22が個々に独立して動くようにしてもよい。
【0061】
第3の実施形態のエレベータシステム1によれば、建物の揺れや風に起因する第1のモードのロープの振れや第2のモードのロープの振れを振止め装置20で十分に小さくなるまで減衰させる。これにより、交差検出装置10の検出部17が作動した場合、ロープが第1のモードで振れているのかロープの交差部がシーブを通過したのかが明確になる。したがって、交差部は、単なるロープの振れにまぎれることなく、検出されやすくなる。また、振止め装置20でロープの振れ幅を小さくするので、交差検出装置10の第1の検出ローラ12Aと第2の検出ローラ12Bの間隔Sを振止め装置20の抑制ローラ21の間隔Tよりも小さく設定することで、ロープの交差部を検出しやすくなる。
【0062】
図15において、交差検出装置10および振止め装置20は、コンペンセイションシーブ71によって折り返されたコンペンセイションロープ7の片側にのみ設けている。乗籠4の移動速度が早い場合、交差部は、シーブを瞬時に通過する。したがって、シーブに捲き掛けられたロープの片側にのみ交差検出装置10が設けられている場合でも十分にその機能を果たす。第1の実施形態の交差検出装置10のようにコンペンセイションシーブ71で折り返されたコンペンセイションロープ7の両側に、交差検出装置10と振止め装置20を設置しても良い。
【0063】
以上のように、各実施形態に示した交差検出装置10は、メインロープ6またはコンペンセイションロープ7が交差したことを検出しやすくした。このエレベータシステム1は、交差部を早期段階で検出することによって、関連機器が故障するような事故につながることを未然に防止する。また、第1の検出ローラ12Aおよび第2の検出ローラ12Bの間隔Sがロープの交差部によって押し広げられたことを積極的に検出するようにし、建物の揺れや風などによる第2のモードのロープの振れを検出部17で検出しない。つまり、誤検出が低減され、交差部を検出する精度が向上する。
【0064】
そして、このエレベータシステム1は、検出部17によって交差部を検出した場合、直ちにエレベータシステム1の運転を停止させるのではなく、乗籠4や乗場から登録されている目的階のうち乗籠4の進行方向について最初の目的階まで乗籠4を移動させ、乗客を降ろすことを優先させる。つまり、このエレベータシステム1は、乗客を乗籠4内に閉じ込めないので安心である。
【0065】
なお、各実施形態における交差検出装置の検出部に採用したカムおよびレバーの構造は、スイッチを作動させるための一例である。したがって、これ以外の構成によって、ロープの交差部を検出するためにスイッチを作動させてもよい。例えば、拘束ピンで付勢部材を係止しておき、ロープの交差部が第1のローラ12Aと第2のローラ12Bの間を通過したことによって第1のアーム13Aと第2のアーム13Bが広がると、拘束ピンが外れて付勢部材がスイッチの作動子を操作する構成でもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲
や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
複数本を平行に一列に並べて乗籠から釣合錘までの間に渡されるロープと、前記ロープを張り渡す方向を変えるために配置されるシーブと、前記シーブの近傍に配置される交差検出装置と、を備え、前記交差検出装置は、前記ロープの列に対して面対称となる一対に配置される第1の検出ローラおよび第2の検出ローラと、前記ロープの列を横切る方向へ変位するように前記第1の検出ローラおよび前記第2の検出ローラをそれぞれ支持する第1のアームおよび第2のアームと、前記第1の検出ローラと前記第2の検出ローラの間隔が前記ロープの直径の2倍以下になるように前記第1のアームおよび前記第2のアームを保持するロッドと、前記第1の検出ローラおよび前記第2の検出ローラが離間したことを検出する検出部と、を備えることを特徴とするエレベータシステム。