(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば
図15及び
図16に示すものが知られている(特許文献1、2)。同図に示すように、給電システム1は、給電部3と、受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ6と、給電側ループアンテナ6に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該給電側ループアンテナ6に電磁結合された給電側ヘリカルコイル7(=給電側コイル)と、が設けられている。上記給電側ループアンテナ6に電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル7に送られる。
【0003】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル7に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側ヘリカルコイル8(=受電側コイル)と、この受電側ヘリカルコイル8に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側ヘリカルコイル8に電磁結合された受電側ループアンテナ9と、が設けられている。給電側ヘリカルコイル7に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル8にワイヤレスで送られる。
【0004】
さらに、受電側ヘリカルコイル8に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ9に送られ、この受電側ループアンテナ9に接続された負荷に供給される。上述した給電システム1によれば、給電側ヘリカルコイル7と受電側ヘリカルコイル8との電磁共鳴により非接触で給電側から受電側に電力を供給することができる。
【0005】
そして、上述した受電部5を自動車4に設け、給電部3を道路2などに設けることにより、上述した給電システム1を利用してワイヤレスで自動車4に搭載された負荷に電力を供給することが考えられている。ところで、上述した給電システム1においては、給電側ヘリカルコイル7の中心軸C
1と、受電側ヘリカルコイル8の中心軸C
2と、が同軸となるように、自動車4を停車させることは難しく、
図17に示すように中心軸C
1、C
2にずれdが生じることがある。
【0006】
本発明者らは、上述した
図16に示す給電システム1である従来品において、上述した受電側ヘリカルコイル8を
図16中のX方向に移動して、中心軸C
1、C
2のずれdxを0mm〜2.3d
1mmの範囲で変化させたときの受電側ループアンテナ9の伝送効率をシミュレーションした。結果を
図3の点線で示す。
【0007】
なお、このとき受電側ループアンテナ9としては径R
12が0.5d
1mmのものを用い、受電側ヘリカルコイル8としては径R
22がd
1mmのものを用いている。また、給電側ループアンテナ6としては径R
11が2.67d
1mmのものを用い、給電側ヘリカルコイル7としては径R
21が3d
1mmのものを用いている。即ち、給電側ヘリカルコイル7の径R
21は受電側ヘリカルコイル8の径R
22のおよそ3倍となる。さらに、給電側ヘリカルコイル7と受電側ヘリカルコイル8との距離L
1は0.67d
1mmに固定し、給電側ループアンテナ6、受電側ループアンテナ9の特性インピーダンスは、何れも50Ωとしている。
【0008】
図3に示すように、中心軸C
1、C
2のずれdxが0mm〜d
1mmであれば、伝送効率は100%近くになるが、中心軸C
1、C
2のずれdxがd
1mmを超える伝送効率が低下しはじめ、ずれdxが大きくなるに従って伝送効率の低下も大きくなる、という問題があった。
【0009】
また、本発明者らは、上述した
図16に示す給電システム1において、上述した受電側ヘリカルコイル8を
図16中のXY平面上において中心軸C
1、C
2のずれ(dx、dy)を0mm≦dx≦1.5d
1mm、0≦dy≦1.5d
1mmの範囲で変化させたときの受電側ループアンテナ9の伝送効率をシミュレーションした。結果を
図18に示す。
【0010】
同図に示すように、中心軸C
1、C
2のずれdx、dyが0mm〜d
1mmであれば、伝送効率は100%近くになるが、中心軸C
1、C
2のずれdx、dyがd
1mmを超える伝送効率が低下しはじめ、ずれxが大きくなるに従って伝送効率の低下も大きくなる、という問題があった。
【0011】
また、特許文献3には、給電側コイルを自動車の進行方向に沿って複数並べて配置する給電システムが提案されている。この給電システムは、複数の給電側コイルのうち自動車の進行方向後ろ側から前側に向かって1つづつ順次電力を給電させて、自動車を進行方向に向かって移動させるものであり、自動車を停車したまま給電できるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1参考例)
以下、
第1参考例における給電システムを
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、
第1参考例における本発明の給電システムを示す図である。
図2(A)及び(B)は、
本発明の給電システムを構成する給電部及び受電部の斜視図及び側面図である。同図に示すように、給電システム1は、道路2上などに設けられた給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電部5と、を備えている。
【0028】
給電部3は、
図1及び
図2に示すように、電力が供給される2つの給電側ループアンテナ6a、6bと、この給電側ループアンテナ6a、6bに対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ6a、6bに電磁結合された給電側ヘリカルコイル7a、7b(=給電側コイル)と、が設けられている。
【0029】
この給電側ループアンテナ6a、6bはそれぞれ、円形のループ状に設けられていて、その中心軸C
11及びC
12(
図2)が道路2から自動車4の腹部分に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。上述した給電側ループアンテナ6a、6bには、交流電源V(
図1)からの交流電力が供給されている。これら給電側ループアンテナ6a、6bは互いに同一に設けられている。
【0030】
上記給電側ヘリカルコイル7a、7bは、例えば巻線を円形のヘリカル状に巻いて構成されている。この給電側ヘリカルコイル7a、7bの径はそれぞれ、給電側ループアンテナ6a、6bの径よりも大きく設けられている。また、給電側ヘリカルコイル7a、7bは、互いに同一であり、上記給電側ループアンテナ6a、6bの自動車4側に給電側ループアンテナ6a、6bと同軸上に配置されている。本実施形態では、給電側ループアンテナ6a、6bは、給電側ヘリカルコイル7a、7bの最も自動車4から離れた側の巻線と同一平面上に配置されている。
【0031】
これにより、給電側ループアンテナ6a及び給電側ヘリカルコイル7aと、給電側ループアンテナ6b及び給電側ヘリカルコイル7bと、は互いに電磁結合できる範囲内、即ち、給電側ループアンテナ6a、6bに交流電力が供給され、交流電流が流れると給電側ヘリカルコイル7a、7bに電磁誘導が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。また、上述した給電側ヘリカルコイル7a、7bは、同一平面上に互いにその並び方向Xにおいて距離L
2(
図2)だけ離間して設けられている。
【0032】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル7a、7bに対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側ヘリカルコイル8と、この受電側ヘリカルコイル8に対してその中心軸方向に対向するように配置され受電側ヘリカルコイル8に電磁結合された受電側ループアンテナ9と、が設けられている。
【0033】
上記受電側ループアンテナ9には、図示しない車載バッテリなどの負荷が接続されている。また、受電側ループアンテナ9は、円形のループ状に設けられていて、その中心軸C
2(
図2)が自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。また、上記受電側ループアンテナ9は、上述した給電側ループアンテナ6a、6bの径よりも小さな径に設けられている。
【0034】
上記受電側ヘリカルコイル8は、例えば巻線を円形のヘリカル状に巻いて構成されている。この受電側ヘリカルコイル8の径は、上記給電側ヘリカルコイル7a、7bの径よりも小さく、上記受電側ループアンテナ9の径よりも大きく設けられている。即ち、給電側ヘリカルコイル7a、7bの径は、受電側ヘリカルコイル8の径よりも大きくなるように設けられている。また、受電側ヘリカルコイル8は、上述した受電側ループアンテナ9の道路2側に、受電側ループアンテナ9と同軸上に配置されている。本実施形態では、受電側ループアンテナ9は、受電側ヘリカルコイル8の最も道路2から離れた側の巻線と同一平面上に配置されている。
【0035】
これにより、受電側ループアンテナ9と受電側ヘリカルコイル8とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側ヘリカルコイル8に交流電流が流れると受電側ループアンテナ9に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。
【0036】
上述した給電システム1によれば、自動車4の受電部5が道路2に設けた給電部3に近づいて給電側ヘリカルコイル7a、7bと受電側ヘリカルコイル8とが中心軸方向に互いに間隔を空けて対向したときに、給電側ヘリカルコイル7a、7bと受電側ヘリカルコイル8とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0037】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ6a、6bに交流電流が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル7a、7bに送られる。即ち、給電側ヘリカルコイル7a、7bには、給電側ループアンテナ6a、6bを介して電力が供給される。給電側ヘリカルコイル7a、7bに電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル8にワイヤレスで送られる。さらに、受電側ヘリカルコイル8に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ9に送られ、この受電側ループアンテナ9に接続された負荷に供給される。
【0038】
また、上述した給電システム1は、さらに
図1に示すように、給電側ループアンテナ6aと交流電源Vとの間に設けられたスイッチ10aと、給電側ループアンテナ6bと交流電源Vとの間に設けられたスイッチ10bと、これらスイッチ10a、10bのオンオフを制御するCPU11と、受電側ヘリカルコイル8の近傍に配置された送信器12と、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bの近傍にそれぞれ配置された2つの受信器13a及び13bと、を備えている。
【0039】
上記スイッチ10a及び10bは、互いに並列に接続されてる。これにより、スイッチ10aをオンして、スイッチ10bをオフすると、交流電源Vからの交流電力は、給電側ループアンテナ6aのみ供給され、給電側ループアンテナ6bには供給されない。一方、スイッチ10aをオフして、スイッチ10bをオンすると、交流電源Vからの交流電力は、給電側ループアンテナ6bのみに供給され、給電側ループアンテナ6aには供給されない。
【0040】
上記CPU11は、これらスイッチ10a及び10bと、後述する受信器13a及び13bと、に接続されていて、給電部3全体の制御を司る。上記送信器12は、受電側ヘリカルコイル8近傍に配置されるように自動車4の腹部分に設置されている。上記送信器12は、光信号を送信する発光素子や無線信号を送信する送信アンテナと、これら発光素子や送信アンテナを制御する送信回路などから構成されていて、定期的に上記光信号又は無線信号を鉛直下側に向けて送信している。
【0041】
上記受信器13aは、給電側ヘリカルコイル7a近傍に配置されるように道路2上に設置されている。受信器13bは、給電側ヘリカルコイル7b近傍に配置されるように道路2上に設置されている。上記受信器13a及び13bは、それぞれ光信号を受信する受光素子や無線信号を受信する受信アンテナと、この受信素子や受信アンテナが受信した信号を検波する受信回路などから構成されていて、上記送信器12から送られる光信号又は無線信号を受信し、その結果をCPU11に対して出力している。
【0042】
上記CPU11は、位置検出手段として働き、上記受信器13a及び13bからの受信結果に基づいて2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bのうち受電側ヘリカルコイル8に最も近い位置に配置されている1つを近接コイルとして検出する。具体的には、CPU11は、受信器13aが受信した信号レベルが受信器13bが受信した信号レベルよりも高いとき給電側ヘリカルコイル7aを近接コイルとして検出し、受信器13bが受信した信号レベルが受信器13aが受信した信号レベルよりも高いとき給電側ヘリカルコイル7bを近接コイルとして検出する。
【0043】
そして、CPU11は、第1電力供給手段として働き、2つの給電側ヘリカルコイル7a及び7bのうち上述したように検出した近接コイルのみに電力を供給するようにスイッチ10a、10bのオンオフを制御する。具体的には、給電側ヘリカルコイル7aが近接コイルとして検出された場合、CPU11は、スイッチ10aをオン、スイッチ10bをオフして給電側ヘリカルコイル7aのみに交流電源Vからの電力が供給されるように制御する。一方、給電側ヘリカルコイル7bが近接コイルとして検出された場合、CPU11は、スイッチ10aをオフ、スイッチ10bをオンして給電側ヘリカルコイル7bのみに交流電源Vからの電力が供給されるように制御する。
【0044】
上述し
た給電システム1によれば、給電側ヘリカルコイル7a、7bを複数設けることにより、給電側ヘリカルコイル7a、7bと受電側ヘリカルコイル8との中心軸C
11、
12及びC
2のずれによって生じる伝送効率の低下を抑制することができる。しかも、CPU11が、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bのうち1つの近接コイルのみ電力を供給することにより、複数の給電側ヘリカルコイル7a、7bに同時に電力が供給されることによって生じる干渉がなくなり、より一層、給電側ヘリカルコイル7a、7bと受電側ヘリカルコイル8との中心軸C
11、
12及びC
2のずれによって生じる伝送効率の低下を抑制することができる。このため、給電部3から受電部5へ高効率で電力を供給することができる。
【0045】
また、上述した
第1参考例の給電システム1によれば、CPU11が、2つの受信器13a、13bにより受信された信号に基づいて近接コイルを検出するので、正確に近接コイルを検出することができる。
【0046】
次に、本発明者らは、
図16に示す給電システム1である従来品において、上述した中心軸C
1、C
2のずれdxを0〜2.3d
1mmの範囲で変化させたときの給電側ヘリカルコイル7から受電側ヘリカルコイル8への伝送効率をシミュレーションすると共に、
図2に示す給電システム1である本発明品Aにおいて、上述した中心軸C
11と中心軸C
2との並び方向Xにおけるずれdxを0mm〜3d
1mmの範囲で変化させたときの給電側ヘリカルコイル7a、7bから受電側ヘリカルコイル8への伝送効率をシミュレーションして本実施形態の効果を確認した。結果を
図3に示す。
【0047】
なお、給電側ヘリカルコイル7、7a、7bは、互いに同一であり、径R
21=3d
1mmとしている。給電側ループアンテナ6、6a、6bも、互いに同一である。受電側ヘリカルコイル8は、従来品も本発明品Aも同一であり、受電側ループアンテナ9は、従来品も本発明品Aも同一である。また、距離L
1は、従来品も本発明品Aも同じ0.67d
1mmに固定され、距離L
2は0.05d
1mmに固定されている。
【0048】
さらに、本発明品Aにおいては、ずれdxが0mm〜1.5d
1mmの場合、給電側ループアンテナ6a及び給電側ヘリカルコイル7aのみに交流電源Vが供給され、ずれdxが1.5d
1mm〜3d
1mmの場合、給電側ループアンテナ6b及び給電側ヘリカルコイル7bのみに交流電力Vが供給されるものとした。また、このシミュレーションにおいて、受電側ループアンテナ9の特性インピーダンスは50Ωに固定し、給電側ループアンテナ6a、6bのうち交流電源Vが供給される方の特性インピーダンスを50Ωとし、交流電源Vが遮断される方の特性インピーダンスを1000オームに設定し、擬似的なオープン状態とした。
【0049】
図3に示すように、従来品ではずれdxが大きくなるに従い伝送効率は次第に低下していったが、本発明品Aでは、給電の切り替えポイント付近での伝送効率の若干の低下はあるものの、それを超えた位置では再び高効率エリアとなり、高効率伝送エリアが連続的に作成できているといえる。
【0050】
(第2参考例)
次に、
第2参考例について説明する。上述した
第1参考例では、受電側ヘリカルコイル8に送信器12を近接配置し、給電側ヘリカルコイル7a、7bにそれぞれ受信器13a、13bを近接配置し、CPU11は、受信器13a、13bにより受信された送信器12からの光信号又は無線信号に基づいて近接コイルを検出していたが、
第2参考例では、これら送信器12、受信器13a、13bを廃止している。
【0051】
即ち、
第2参考例では、
図4に示すように、受電側ヘリカルコイル8に両端に接続され、この受電側ヘリカルコイル8に電力を供給して定期的に無線信号としてのパイロット信号(
図5参照)を送信させる送信手段としての送信回路14と、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bの両端にそれぞれ接続され、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bが受信したパイロット信号を検波する受信回路15a、15bと、をさらに備えている。受信回路15a、15bは、検波したパイロット信号をCPU11に対して供給する。
【0052】
CPU11は、受信回路15a、15bのうち受信したパイロット信号の受信レベルが最も高いものに対応する給電側ヘリカルコイル7a、7bを近接コイルとして検出する。即ち、CPU11は、受信回路15aによって受信されたパイロット信号の受信レベルが受信回路15bによって受信されたパイロット信号の受信レベルよりも高い場合、給電側ヘリカルコイル7aを近接コイルとして検出し、逆に、受信回路15bによって受信されたパイロット信号の受信レベルが受信回路15aによって受信されたパイロット信号の受信レベルよりも高い場合、給電側ヘリカルコイル7bを近接コイルとして検出する。
【0053】
上述した
第2参考例によれば、CPU11が、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bのうち受電側ヘリカルコイル8からのパイロット信号の受信レベルが最も高いものを近接コイルとして検出するので、給電側ヘリカルコイル7a、7bや受電側ヘリカルコイル8とは別に光信号や無線信号を送信、受信する送信器12、受信器13a、13bを設ける必要がないので、部品点数の削減を図ることができる。
【0054】
(第1実施形態)
次に、第
1実施形態について説明する。第
1実施形態においても、無線器12、受信器13a、13bを廃止している。即ち、第
1実施形態では、
図6に示すように、2つの給電側ループアンテナ6a、6bのそれぞれと交流電源Vとの間にそれぞれ設けられ、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bから給電側ループアンテナ6a、6bを介して交流電源Vに向かう反射波を検出する反射波検出手段としての反射波検出器16a、16bをさらに備えている。上記反射波検出器16a、16bとしては、方向性検出器やサーキュレータなどが考えられる。反射波検出器16a、16bは、検出した反射波をCPU11に対して出力する。
【0055】
給電側ヘリカルコイル7a、7bは、受電側ヘリカルコイル8が自身から離れると反射特性が劣化する。これを利用して、CPU11は、反射波検出器16a、16bが検出した反射波が、最も小さいものを近接コイルとして検出する。具体的には、CPU11は、第2電力供給手段として働き、まずスイッチ10a、10bを時間差を持って順次オンして、給電側ヘリカルコイル7a、7bに順番に短時間で電力を供給する。このとき、CPU11は、反射波検出器16a、16bによって検出された反射波のレベルが最も低いものを近接コイルとして検出し、検出した近接コイルのみに電力を供給するようにスイッチ10a、10bを制御する。
【0056】
その後、CPU11は、近接コイルの反射波をモニタして、反射波が一定量を下回ると、近接コイルへの給電を停止し、スイッチ10a、10bを時間差を持って順次オンして、給電側ヘリカルコイル7a、7bに順番に短時間で電力を供給する。そして、CPU11は、最初と同様に反射波検出器16a、16bによって検出された反射波のレベルが最も低いものを近接コイルとして検出し、検出した近接コイルのみに電力を供給するようにスイッチ10a、10bを制御する。以下これを繰り返す。
【0057】
上述した第
1実施形態によれば、CPU11が、2つの給電側ヘリカルコイル7a、7bのうち反射波検出器16a、16bにより検出された反射波が最も少ないものを近接コイルとして検出するので、受電側ヘリカルコイル8に定期的に信号を送信しなくても近接コイルを検出することができ、より一層、高効率で給電部3から受電部5へ電力を供給することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第
2実施形態について説明する。上述した第
1実施形態では、給電側ヘリカルコイル7a及び7bを互いに離間して配置していたが、第
2実施形態では、
図7に示すように、給電側ヘリカルコイル7a及び7bを一部重ねて配置している。このように、給電側ヘリカルコイル7a及び7bを一部重ねて配置することにより、交流電源Vからの電力供給を給電側ループアンテナ6aから給電側ループアンテナ6bに切り替えるポイントでの伝送効率の低下を防ぐことができる。
【0059】
次に、本発明者らは、
図7に示す構成の給電システム1において重ね幅wが互いに異なる本発明品B
1〜B
5について、上述した中心軸C
11、C
2の並び方向Xにおけるずれdxを0〜2.5d
1mmの範囲で変化させたときの給電側ヘリカルコイル7a、7bから受電側ヘリカルコイル8への伝送効率をシミュレーションして効果を確認した。結果を
図8に示す。
【0060】
なお、本発明品B
1のw=0.17d
1mm、本発明品B
2のw=0.33d
1mm、本発明品B
3のw=0.5d
1mm、本発明品B
4のw=0.67d
1mm、本発明品B
5のw=0.83d
1mmとした。また、交流電源Vからの電力供給を給電側ループアンテナ6aから給電側ループアンテナ6bに切り替えるポイントを本発明品B
1についてはx=1.42d
1mm、本発明品B
2についてはx=1.34d
1mm、本発明品B
3についてはx=1.26d
1mm、本発明品B
4についてはx=1.17d
1mm、本発明品B
5についてはx=1.09d
1mmとしている。また、本発明品B
1〜B
5における給電側ループアンテナ6a、6b、給電側ヘリカルコイル7a、7b、受電側ヘリカルコイル8、受電側ループアンテナ9は、本発明品Aと同一のものを用いている。給電側ヘリカルコイル7a及び7bの中心軸方向Zの距離L
3=0.017d
1mmとした。
【0061】
図3に示すように、上述した第1実施形態においては、交流電源Vからの電力供給を給電側ループアンテナ6aから給電側ループアンテナ6bに切り替えるポイントであるdx=1.5d
1mmで最も伝送効率が低く、65.6%であった。これに対して、
図8に示すように、重ね幅wを設けることにより、伝送効率を70%以上にすることができた。詳しく説明すると、
図8に示すように、第
2実施形態においては、0.5d
1mmまでは重ね幅wが大きくなるにつれて切り替えポイント付近で生じる伝送効率の低下が軽減されていったが、重ね幅w=0.83d
1mmでは重ね幅w=0.5d
1mmよりも伝送効率低下が大きいことが分かった。
【0062】
具体的には、第1実施形態で示す本発明品Aにおいては、最も伝送効率の低い切り替えポイントでの伝送効率は65.6%であったのに対し、重ね幅w=0.5d
1mmの場合、最も伝送効率の低い切り替えポイントでの伝送効率は85.3%となり、20%近い効率アップが見込めることが分かった。また、重ね幅wを過度に大きくすると、ずれdxに対向した高効率伝送エリアの縮小につながるため、あまり得策でないといえる。よって、重ね幅wには最適値があり、第
2実施形態においては0.5d
1mm〜0.67d
1mmの範囲に設定される。
【0063】
(第3実施形態)
次に、本発明者らは
図7に示す本発明品B
3(w=0.5d
1mm)について、並び方向X及び軸方向Zの双方に直交する直交方向Y(
図2)におけるずれdy=0mm、0.67d
1mm、d
1mmにそれぞれ固定した状態で、ずれdxを0mm〜2.3d
1mmの範囲で変化させたときの伝送効率をシミュレーションした。結果を
図9に示す。同図に示すように、ずれdy=0mmのときは伝送効率が最も低いところでも85.3%であったのに対し、ずれdy=d
1mmでは35.7%と大幅な効率低下が生じている。
【0064】
そこで、上述した
第1及び第2実施形態においては、給電側コイル及び受電側コイルとして、巻線をヘリカル状に巻いて形成した給電側ヘリカルコイル7a、7b、受電側ヘリカルコイル8を用いていたが、
第3実施形態では、
図10及び
図11に示すように、給電側コイル及び受電側コイルとして、基板などの平面上に導線をスパイラル状に巻いて形成した給電側スパイラルコイル17a、17b、受電側スパイラルコイル18を用いている。これら給電側スパイラルコイル17a、17b及び受電側スパイラルコイル18は、正方形状に巻かれている。給電側ループアンテナ6a、6b及び受電側ループアンテナ9も正方形のループ状に設けられている。給電側スパイラルコイル17a、17bとしては、
図10に示すように互いに離間させてもよいし、
図11に示すように重ねてもよい。
【0065】
上述した
第3実施形態によれば、給電側スパイラルコイル17a、17bと受電側スパイラスコイル18との並び方向X及び直交方向Yの両方向における中心軸C
11、C
12及びC
2のずれによって生じる伝送効率の低下を抑制することができる。
【0066】
次に、本発明者らは、給電側スパイラルコイルが1つ、給電側ループアンテナが1つの比較品において、上述した受電側スパイラルコイル18をXY平面上において中心軸C
11、C
2のずれ(dx、dy)を0mm≦dx≦1.5d
1mm、0≦dy≦1.5d
1mmの範囲で変化させたときの給電側スパイラルコイル17a、17bから受電側スパイラルコイル18への伝送効率をシミュレーションした。結果を
図12に示す。
図16に示す従来品では伝送効率の分布は、
図18に示すように、ずれ(dx、dy)=(0mm、0mm)を中心に同心円だったものが、比較品での伝送効率の分布は、
図12に示すように、正方形状に近い形状となり、従来品よりも比較品の方が高効率エリアが広くなっていると言える。
【0067】
また、本発明者らは、
図10に示す構成の給電システム1において距離L
2が互いに異なる本発明品C
1、C
2について、ずれdxを0mm〜2.5d
1mmの範囲で変化させたときの給電側スパイラルコイル17a、17bから受電側スパイラルコイル18への伝送効率をシミュレーションした。また、
図11に示す構成の給電システム1において重ね幅wが互いに異なる本発明品D
1〜D
4について、ずれdxを0mm〜2.5d
1mmの範囲で変化させたときの給電側スパイラルコイル17a、17bから受電側スパイラルコイル18への伝送効率をシミュレーションした。結果を
図13に示す。
【0068】
なお、本発明品C
1、C
2、D
1〜D
4においては、給電側ループアンテナ6a、6bは、互いに同一であり、一辺L
11を2.79d
1mmとしている。給電側スパイラルコイル17a、17bも互いに同一であり、一辺L
21を本発明品A、Bの給電側ヘリカルコイル7a、7bの径R
21と同じ3d
1mmとしている。受電側スパイラルコイル18も、一辺L
12を本発明品A、Bの受電側ヘリカルコイル8の径R
22と同じd
1mmとしいる。受電側ループアンテナ9は、一辺L
12を0.35d
1mmとしている。また、距離L
2は、0.67d
1mmに固定している。
【0069】
図13から明らかなように本発明品C
1、C
2、本発明品D
1〜D
5は最低伝送効率を何れも70%以上にすることができた。特に、本発明品C
1は、最低伝送効率を83%とすることができ、最も高効率にできることが分かった。
【0070】
次に、本発明者らは、本発明品C
1(L
2=0.03d
1mm)について、ずれdy=0mm、0.67d
1mm、d
1mmにそれぞれ固定した状態で、ずれdxを0mm〜2.3d
1mmの範囲で変化させたときの伝送効率をシミュレーションて、本発明の効果を確認した。結果を
図14に示す。
図9に示すように、本発明品B
2においては伝送効率が最も低下するずれdx=1.24d
1mmの位置において、ずれdy=0mmでは85.3%、ずれdy=0.67d
1mmでは60.4%、ずれdy=d
1mmでは35.7%と直交方向Yのずれによって伝送効率の大幅な低下が起きた。これに対して、
図14に示すように、本発明品C
1では伝送効率が最も低下するずれdx=1.5d
1mmの位置において、ずれdy=0mmでは82.9%、ずれdy=0.67d
1mmでは81.5%、ずれdy=d
1mmでも76.7%と伝送効率の低下をより一層抑制できることが分かった。
【0071】
上述した
第3実施形態によれば、給電側スパイラルコイル17a、17b及び受電側スパイラルコイル18を、四角形のスパイラル状に形成し、これら2つの給電側スパイラルコイル17a、17bを、同一平面上に互いに離間して配置することにより、2つの給電側スパイラルコイル17a、17bの軸方向Zと直交するXY平面において、給電側スパイラルコイル17a、17bの並び方向X及びこの並び方向Yに直交する方向の双方での中心軸C
11、C
12及びC
2のずれによって生じる伝送効率の低下を抑制することができる。
【0072】
なお、上述した
第1〜第3実施形態によれば、2つの給電側コイルを並べていたが、本発明はこれに限ったものではない。給電側コイルとしては、3つ以上並べてよい。また、これを発展させて多数の給電側コイルを互い違いに並べることでより一層高伝送効率エリアの拡大を図ることができる。また、直線的な給電側コイルの並びだけでなく、平面的に給電側コイルを配置することで、受電側コイルの平面上の動きにも対応して電力伝送を行うことができる。
【0073】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。