(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、プラント等から排出されたCO
2ガス(炭酸ガス)を圧縮する圧縮機として、複数段の羽根車を備えた多段圧縮機が広く用いられている。ここで圧縮機では一般的に、CO
2ガスを導入する側の吸込温度を下げれば、同じ圧力上昇を得るのに必要なヘッド(単位質量当たりの仕事量)が少なくて済み、羽根車を駆動する駆動機の軸動力を低減することができる。従って多段圧縮機では、所定段数の羽根車ごとに、前段側の羽根車から吐出されたCO
2ガスを冷却して後段側の羽根車に供給する冷却器が設けられる。
【0003】
ところで、CO
2ガスは、臨界点近傍でその物性(密度や圧縮係数や分子量等)が大きく変化する特性を有している。従って、冷却器から吐出されるCO
2ガスが臨界点に近付くと、CO
2ガスの上記特性により、CO
2ガスの濃度の変化或いは状態量(圧力や温度等)の変化に大きな影響を受けることによって羽根車のヘッドが不安定になるため、多段圧縮機を安定して運転することができない。
【0004】
従って、多段圧縮機を安定して運転するためには、最も後段側の冷却器から吐出されるCO
2ガスが臨界点に近付かないよう、その圧力及び温度を臨界点からある程度余裕を持たせて遠ざけた条件に設定する必要があった。しかし、このような設定によれば、羽根車に導入されるCO
2ガスの吸込温度が高くなるため、当該羽根車のヘッドを十分に確保するためには駆動機の軸動力を増加させる必要がある。このため、多段圧縮機全体として圧縮効率が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、最も後段側の冷却器から吐出されるCO
2ガスを臨界点からある程度近い範囲内に設定しつつ、物性が変化してもCO
2ガスが臨界点に近付かないようにするために、冷却器から吐出されるCO
2ガスの温度を一定に制御する多段圧縮機が従来提唱されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この特許文献1の
図1に示される多段圧縮機では、上段側圧縮機1と後段側圧縮機2とを接続する中間ガスライン10には、CO
2ガスを冷却する中間熱交換器3(冷却器に相当)が設けられている。また中間ガスライン10には、中間熱交換器3をバイパスしてその上流側と下流側とを連通するバイパスガスライン11が設けられるとともに、このバイパスガスライン11におけるCO
2ガスの流量を調整するバイパスコントロール弁6が設けられている。更に、中間ガスライン10における中間熱交換器3より下流側であってパイバスガスライン11の接続箇所より更に下流側には、CO
2ガスの温度を検出する温度検出器7が設けられている。そして、温度検出器7が検出したCO
2ガスの温度に基づいて温度コントローラ7がバイパスコントロール弁6の動作を制御することにより、中間熱交換器3をバイパスして中間ガスライン10に戻される高温のCO
2ガスの流量が調整される。これにより、上段側圧縮機1に導入されるCO
2ガスの温度が一定に制御される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る多段圧縮機の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る多段圧縮機10を備えたプラント1の全体構成を示す模式図である。
【0025】
プラント1は、
図1に示すように、CO
2ガス(中間ガス)を排出するプラント本体2(ガス供給源)と、このプラント本体2に電気的に接続された操作盤3と、プラント本体2に配管を介して接続されるとともに操作盤3に電気的に接続された多段圧縮機10と、を備えるものである。
【0026】
操作盤3は、オペレータがプラント本体2を操作するためのものである。より詳細には、オペレータはこの操作盤3を介することにより、プラント本体2から排出されるCO
2ガスの流量を変動させるような操作、本実施形態ではプラント本体2の負荷を変更できるようになっている。すなわち、オペレータが操作盤3を操作すると、
図1に示すように、操作盤3からプラント本体2に対して操作信号が発せられることによりプラント本体2の負荷が変更され、その結果としてプラント本体2から排出されるCO
2ガスの流量が変化する。また、オペレータがプラント本体2の負荷を変更すると、
図1に示すように、操作盤3から多段圧縮機10に対して負荷変更信号が通知されるようになっている。尚、操作盤3は、プラント本体2の負荷を変更する機能だけでなく、その他の設定を変更する機能を有していてもよい。
【0027】
多段圧縮機10は、プラント本体2から排出されたCO
2ガスを圧縮するためのものである。ここで、
図2は、多段圧縮機10の構成を示す模式図である。多段圧縮機10は、4個の圧縮機11と、これら4個の圧縮機11を順に接続するガス流路12と、このガス流路12において4個の圧縮機11の間の位置にそれぞれ設けられた3個の冷却器13と、最下流部の冷却器13をバイパスして設けられたバイパス流路14と、このバイパス流路14に設けられた流量調整バルブ15(流量調整手段)と、ガス流路12において最も下流側の圧縮機11の直前位置に設けられたセンサ16と、流量調整バルブ15及びセンサ16に対して電気的に接続された制御装置17と、を備えるものである。
【0028】
4個の圧縮機11は、プラント本体2から排出されたCO
2ガスを圧縮するためのものである。この4個の圧縮機11は、ガス流路12に沿って上流側から順に設けられた第1圧縮機111、第2圧縮機112、第3圧縮機113(低圧側圧縮機)、及び第4圧縮機114(高圧側圧縮機)によって構成されている。そして、4個の圧縮機11はそれぞれ回転駆動され、図に詳細は示さないが、吐出するCO
2ガスの圧力が一定になるように、その回転数が制御装置17によってそれぞれ制御されている。
【0029】
ガス流路12は、
図2に破線で示すプラント本体2から排出されたCO
2ガスが流通する経路である。このガス流路12は、プラント本体2から排出されたCO
2ガスを第1圧縮機111に導入する第1導入流路1Sと、第1圧縮機111からCO
2ガスが吐出される第1吐出流路1Dと、第2圧縮機112にCO
2ガスを導入する第2導入流路2Sと、第2圧縮機112からCO
2ガスが吐出される第2吐出流路2Dと、第3圧縮機113にCO
2ガスを導入する第3導入流路3Sと、第3圧縮機113からCO
2ガスが吐出される第3吐出流路3Dと、第4圧縮機114にCO
2ガスを導入する第4導入流路4Sと、第4圧縮機114からCO
2ガスが吐出される第4吐出流路4Dと、を有している。
【0030】
そして、第1吐出流路1Dの下流端と第2導入流路2Sの上流端とが互いに接続されている。また、第2吐出流路2Dの下流端と第3導入流路3Sの上流端とが互いに接続されている。更に、第3吐出流路3Dの下流端と第4導入流路4Sの上流端とが互いに接続されている。
【0031】
3個の冷却器13は、ガス流路12を流通するCO
2ガスを冷却するための熱交換器である。この3個の冷却器13は、第1吐出流路1Dと第2導入流路2Sの接続部分に設けられた第1冷却器131と、第2吐出流路2Dと第3導入流路3Sの接続部分に設けられた第2冷却器132と、第3吐出流路3Dと第4導入流路4Sの接続部分に設けられた第3冷却器133と、を有している。そして、第1圧縮機111が吐出するCO
2ガスを第1冷却器131が、第2圧縮機112が吐出するCO
2ガスを第2冷却器132が、第3圧縮機113が吐出するCO
2ガスを第3冷却器133が、それぞれ冷却するものとなっている。
【0032】
バイパス流路14は、第3冷却器133から吐出されたCO
2ガスに対してそれより高温のCO
2ガス(高温ガス)を混合させるための流路である。このバイパス流路14は、
図2に示すように、第3吐出流路3Dにおける第3冷却器133より上流側の位置と、第4導入流路4Sにおける第3冷却器133より下流側の位置とを配管で接続することによって設けられている。
【0033】
流量調整バルブ15は、バイパス流路14におけるCO
2ガスの流量を調整するためのものである。この流量調整バルブ15は、
図2に示すように、バイパス流路14の中間位置に設けられ、その開度が制御装置17によって制御されている。
【0034】
センサ16は、ガス流路12を流通するCO
2ガスの温度及び圧力を検出するためのものである。このセンサ16は、
図2に示すように、第4導入流路4Sにおいてバイパス流路14の接続箇所より下流側の位置、すなわち第4圧縮機114の直前位置に設置されている。これによりセンサ16は、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガス、すなわち第3冷却器133から吐出されたCO
2ガスに対してバイパス流路14から高温のCO
2ガスが混合された後のCO
2ガスの温度及び圧力を検出する。
【0035】
制御装置17は、多段圧縮機10を構成する各部の動作を制御するものである。この制御装置17は、
図2に示すように、センサ16による検出結果が検出信号として入力されるとともに、操作盤3から負荷変更信号が通知される。そして制御装置17は、これら検出信号及び負荷変更信号に基づいて、流量調整バルブ15に対して制御信号を発することによりその開度を調整する。ここで、制御装置17の内部には、流量調整バルブ15の制御に用いるためのT−S線
図171と温度変化量予想テーブル172とがそれぞれ格納されている。
【0036】
図3は、制御装置17に格納されたT−S線
図171を示す図である。T−S線
図171は、CO
2ガスの状態を示す図であって、縦軸が温度を、横軸がエントロピーをそれぞれ示している。そして、このT−S線
図171上におけるいわゆる臨界点Rの近傍には、図に二点鎖線で示す危険領域Kが予め設定されている。この危険領域Kとは、CO
2ガスが臨界点Rに近付いたか否かを判断するための基準として使用するものである。ここで、
図4は、
図3における危険領域Kの一部を拡大した部分拡大図である。本実施形態では、
図4で横方向に延びる等圧ラインLaと縦方向に延びる等密度ラインLmとが90°に近い角度をなす領域を、危険領域Kとして設定している。尚、T−S線
図171上における危険領域Kの設定は本実施形態に限定されず、ガスの種類や状態等に応じて適宜変更が可能である。
【0037】
また、
図3に示す8個のプロット1S,1D,2S,2D,3S,3D,4S,4Dを結ぶ線分Xは、4個の圧縮機11を通過するCO2ガスの状態変化の一例を、第1導入流路1Sから第4吐出流路4Dまで示したものである。具体的には、プロット1Sは第1圧縮機111に導入されるCO
2ガスの位置を、プロット1Dは第1圧縮機111から吐出されるCO
2ガスの位置をそれぞれ示している。また同様に、プロット2S,3S,4Sは、第2圧縮機112,第3圧縮機113,第4圧縮機114に導入されるガスの位置をそれぞれ示している。更に同様に、プロット2D,3D,4Dは、第2圧縮機112,第3圧縮機113,第4圧縮機114から吐出されるCO
2ガスの位置をそれぞれ示している。
【0038】
一方、
図5は、制御装置17に格納された温度変化量予想テーブル172を示す図である。温度変化量予想テーブル172は、プラント本体2の負荷が変更された時に、最下流部の圧縮機11すなわち本実施形態では第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度がどの程度変化するかを予想するために使用するものである。
図5に示す温度変化量予想テーブル172では、縦軸がCO
2ガスの温度変化量を、横軸がプラント本体2の負荷の変化速度をそれぞれ示している。本実施形態の温度変化量予想テーブル172は、負荷の変化速度が増加すると、これに比例して温度変化量も増加する関係にあることを示している。例えば、プラント本体2の負荷を10(%/sec)の速度で上昇させると、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度は5℃だけ低下することが予想される。尚、この温度変化量予想テーブル172の設定も、ガスの種類や状態等に応じて適宜変更が可能である。
【0039】
次に、第1実施形態に係る多段圧縮機10の作用効果、特には制御装置17による流量調整バルブ15の制御について説明する。ここで、
図6は、制御装置17による流量調整バルブ15の制御の流れを示すフローチャートである。まず制御装置17は、
図1及び
図2に示す操作盤3から負荷変更信号が通知されたか否かを判定する(S1)。その結果、負荷変更信号の通知はないと判断した場合(S1:No)、制御装置17は、後述するS7へそのまま進む。
【0040】
一方、S1での判定の結果、負荷変更信号の通知があったと判断した場合(S1:Yes)、制御装置17は、プラント本体2の負荷が変更されることによってプラント本体2から排出されるCO
2ガスの流量が変動したと判断し、
図2に示すセンサ16から、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度及び圧力をそれぞれ取得する(S2)。
【0041】
次に制御装置17は、センサ16から取得したCO
2ガスの温度及び圧力に基づいて、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの予想温度を算出する(S3)。ここで
図7は、CO
2ガスの予想温度Tyについての説明図である。予想温度Tyとは、プラント本体2の負荷が図に一点鎖線で示すように変更された場合に、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度が図に二点鎖線で示すように一瞬遅れて一時的に低下するが、この低下時の最低温度を意味している。ここで、このようにCO
2ガスの温度が一時的に低下するのは、CO
2ガスの流量の変動に対する冷却器13の応答性が悪いことに起因している。すなわち、例えば負荷が変更されることでCO
2ガスの流量が減少すると、流量に対する第3冷却器133の伝熱面積が負荷変更前より広くなるため、第3冷却器133によるCO
2ガスの冷却度合いが増すことにより、第3冷却器133から吐出されるCO
2ガスの温度が低下する。しかし、第3冷却器133から吐出されるCO
2ガスの温度は、所定の設定温度で一定に制御されているため、時間の経過と共にCO
2ガスの温度は設定温度まで上昇して、負荷変更前の状態に戻る。尚、本実施形態では、プラント本体2の負荷を低下させた場合に第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度が一時的に低下する場合を例に説明したが、これとは逆に、プラント本体2の負荷を増大させた場合に第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度が一時的に上昇してもよい。
【0042】
ここで、予想温度Tyの算出について具体的に説明すると、制御装置17はまず
図2に示す温度変化量予想テーブル172を参照することにより、操作盤3から通知された負荷の変化速度に対応する温度変化量を導き出す。そして、前述のようにセンサ16から取得したCO
2ガスの温度に、導出した温度変化量を合算することにより、予想温度Tyを算出する。
【0043】
次に制御装置17は、センサ16から取得したCO
2ガスの圧力及び算出した予想温度Tyに基づいて、
図2に示すT−S線
図171上におけるポイント4Sの位置、すなわち第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの位置を算出する(S4)。
【0044】
そして制御装置17は、算出したポイント4Sの位置がT−S線
図171上における危険領域Kの内部に位置しているか否かを判定する(S5)。その結果、ポイント4Sは危険領域Kの外部に位置していると判断した場合(S5:No)、制御装置17は、後述するS7へそのまま進む。
【0045】
一方、S5での判定の結果、ポイント4Sが危険領域Kの内部に位置していると判断した場合(S5:Yes)、制御装置17は、流量調整バルブ15の動作を制御する(S6)。すなわち制御装置17は、流量調整バルブ15の開度を大きくすることにより、
図7に示すように、バイパス流路14を流通する高温ガスの流量を一時的に増大させる。従ってプラント本体2の負荷が低下しても、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度は、
図7に太い実線で示すように、一時的に低下することなく一定に維持される。
【0046】
このように、オペレータがプラント本体2の負荷を変更したことにより、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスが臨界点Rに近付くと予想される場合には、流量調整バルブ15を制御することにより、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスが臨界点Rに近付くことが抑制される。これにより、プラント本体2の負荷が変更されることに伴って多段圧縮機10のヘッドが不安定化することを未然に防止することができる。
【0047】
その後、S1,S5,及びS6のいずれかからS7へ進んだ制御装置17は、
図2に示すセンサ16から、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度及び圧力をそれぞれ取得する(S7)。
【0048】
そして制御装置17は、センサ16から取得したCO
2ガスの温度及び圧力に基づいて、
図2に示すT−S線
図171上におけるポイント4Sの位置、すなわち第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの位置を算出する(S8)。
【0049】
次に制御装置17は、算出したポイント4Sの位置がT−S線
図171上における危険領域Kの内部に位置しているか否かを判定する(S9)。その結果、ポイント4Sは危険領域Kの外部に位置していると判断した場合(S9:No)、制御装置17は、S1へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0050】
一方、ポイント4Sは危険領域Kの内部に位置していると判断した場合(S9:Yes)、制御装置17は、流量調整バルブ15の動作を制御する(S10)。すなわち制御装置17は、流量調整バルブ15の開度を大きくすることにより、バイパス流路14を流通する高温ガスの流量を増大させる。そうすると、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度が上昇し、ポイント4SがT−S線
図171上で上方へ移動することにより、危険領域Kの内部から外部へと移動する。これにより、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスを臨界点Rから遠ざけることができるので、多段圧縮機10のヘッドが不安定化することを防止することができる。以上により、制御装置17による流量調整バルブ15の制御が終了する。
【0051】
このように、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度及び圧力の両方の検出結果に基づいて流量調整バルブ15を制御するので、当該CO
2ガスを正確且つ確実に臨界点Rから遠ざけることによってヘッドの不安定化を防止することができる。また、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの温度を臨界点Rに比較的近い低い温度域に設定することができるので、第4圧縮機114を駆動する駆動機の軸動力を低く抑えることができる。
【0052】
尚、以上説明した本実施形態では、プラント本体2から排出されるCO
2ガスの流量を変動させるような操作として、プラント本体2の負荷を変更する場合を例に説明した。しかし、CO
2ガスの流量が変動するような操作は、負荷の変更以外に、例えば冷却器13に汚れ等が生じた場合に予備の冷却器13に切り替える操作や、プラント本体2をシャットダウンする操作等であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、多段圧縮機10でCO
2ガスを圧縮する場合を例に説明したが、臨界点R近傍で物性が大きく変化する特性を有するガスであれば、CO
2ガス以外のガスを圧縮することに本多段圧縮機10を適用することも可能である。
【0054】
また、本実施形態では、最下流部の圧縮機11である第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスが臨界点Rに近付くのを防止する場合について説明したが、第1〜第3圧縮機111,112,113に導入されるCO
2ガスが臨界点Rに近付くのを防止する場合には、バイパス流路14及びセンサ16を設置する位置を適宜変更すればよい。また、多段圧縮機10が有する圧縮機11の個数は4個に限られず、任意の個数とすることが可能である。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る多段圧縮機の構成について説明する。
図8は、第2実施形態に係る多段圧縮機20の構成を示す模式図である。第2実施形態の多段圧縮機20は、第1実施形態の多段圧縮機10と比較すると、バイパス流路21の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるため、
図8では
図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0056】
バイパス流路21は、第3冷却器133から吐出されたCO
2ガスに対してそれより高温のCO
2ガス(高温ガス)を混合させるための流路である。このバイパス流路21は、
図8に示すように、第4導入流路4Sにおける第3冷却器133より下流側の位置と、第4吐出流路4Dとを配管で接続することによって設けられている。
【0057】
ここで、第4圧縮機114から第4吐出流路4Dへ吐出されるCO
2ガスは、第3圧縮機113から第3吐出流路3Dへ吐出されるCO
2ガスよりも高温である。従って、第4吐出流路4Dを流通するCO
2ガスの一部を高温ガスとして第4導入流路4Sへ戻す本実施形態は、第1実施形態と比較すると、第4圧縮機114に導入するCO
2ガスを臨界点Rから遠ざけるために使用する高温ガスがより少量で済むという利点がある。
【0058】
但し、本実施形態の場合、第4吐出流路4Dから第4導入流路4SへCO
2ガスを戻すことにより、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスの流量が増加することになる。ここで、圧縮機11を構成する羽根車(インペラ)は一般的にCO
2ガスの流量が増加するとヘッドが低下する流量特性を有し、ヘッドがどのような曲線を描いて低下するかは羽根車ごとに固有のものである。従って、羽根車の流量特性を予め把握し、CO
2ガスの流量増加に対してヘッドが急激に低下する領域では、第4吐出流路4Dから第4導入流路4Sへ戻すCO
2ガスの戻し流量について上限値を予め設定することが好ましい。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る多段圧縮機の構成について説明する。第3実施形態の多段圧縮機も、第1実施形態の多段圧縮機10と比較すると、バイパス流路の構成だけが異なっている。尚、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0060】
図9は、第3実施形態に係る多段圧縮機30について、最後段の圧縮機11である第4圧縮機114の内部構造を示す概略断面図である。第4圧縮機114は、回転駆動される駆動軸31と、この駆動軸31の周面に軸方向に所定間隔で固定された3段の羽根車32と、これら3段の羽根車32を接続して設けられたガス流路33と、このガス流路33をバイパスして設けられた2本のバイパス流路34と、を有している。
【0061】
3段の羽根車32は、
図9に示すように、ガス流路33に沿って上流側から順に設けられた第1羽根車321と、第2羽根車322と、第3羽根車323とを有している。
【0062】
ガス流路33は、
図9に示すように、第1羽根車321にCO
2ガスを導入する第4導入流路4Sと、第1羽根車321から第2羽根車322へCO
2ガスを案内する第1案内流路35と、第2羽根車322から第3羽根車323へCO
2ガスを案内する第2案内流路36と、第3羽根車323からCO
2ガスが吐出される第4吐出流路4Dと、を有している。
【0063】
2本のバイパス流路34は、
図9に示すように、第1案内流路35と第4導入流路4Sとを配管で接続して設けられた第1バイパス流路341と、第2案内流路36と第4導入流路4Sとを配管で接続して設けられた第2バイパス流路342と、を有している。尚、第1バイパス流路341及び第2バイパス流路342に流量調整バルブ15(流量調整手段)がそれぞれ設けられ、流量調整バルブ15それぞれの動作が不図示の制御装置17によって制御されている点は第1実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態の2本のバイパス流路34は、第4圧縮機114に導入されるCO
2ガスを臨界点Rから遠ざけるために、第4導入流路4Sより下流側のガス流路から高温のCO
2ガスを戻す点では第2実施形態のバイパス流路21と同じである。しかし本実施形態の第1バイパス流路341及び第2バイパス流路342は、第4吐出流路4DからCO
2ガスを戻す第2実施形態と異なり、第4吐出流路4Dより上流側の第1案内流路35及び第2案内流路36からCO
2ガスを戻すものである。このような構成によれば、第4圧縮機114の構成上、第4吐出流路4DからはCO
2ガスを戻すことができない場合でも、高温のCO
2ガスを確実に確保することができるという利点がある。
【0065】
尚、本実施形態では、バイパス流路34として第1バイパス流路341及び第2バイパス流路342を設けたが、第1バイパス流路341または第2バイパス流路342のいずれか一方のみを設けた構成としてもよい。また、バイパス流路34の本数は、本実施形態の2本に限定されず、羽根車32の数に応じて適宜設計変更が可能である。
【0066】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る多段圧縮機の構成について説明する。
図10は、第4実施形態に係る多段圧縮機40について、最後段の圧縮機11である第4圧縮機114の内部構造を示す概略断面図である。本実施系形態の第4圧縮機114は、
図9に示す第3実施形態の第4圧縮機114と比較すると、バイパス流路41の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第3実施形態と同じであるため、
図9と同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0067】
本実施形態のバイパス流路41は、
図10に示すように、第1案内流路35と第4導入流路4Sとを接続して設けられている点で第3実施形態の第1バイパス流路341と同じであるが、両者を配管で接続するのではなく、ケーシング42を貫通した穴として形成されている点で第3実施形態とは異なっている。
【0068】
そして、このバイパス流路41には、その流路断面積を変化させることによってCO
2ガスの流量を調整する流量調整部材43(流量調整手段)が設けられ、この流量調整部材43の動作が不図示の制御装置17によって制御されている。尚、流量調整部材43は、バイパス流路41におけるCO
2ガスの流量を調整可能な構成であれば足り、本実施形態の構成には限定されない。
【0069】
このように構成される本実施形態のバイパス流路41によれば、第1案内流路35と第4導入流路4Sとを接続するための配管をケーシング42の外部に這わせる必要がないため、第4圧縮機114の小型化を図ることができるとともに、配管が不要となる分だけ原材料費を削減することができるという利点がある。尚、バイパス流路41は、本実施形態では第1案内流路35と第4導入流路4Sとを接続して設けたが、これに限られず、例えば第2案内流路36と第4導入流路4Sとを接続するケーシング42を貫通した穴として形成してもよい。
【0070】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。