(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータ駆動回路の電源ラインにノイズ除去フィルタ回路を設けただけでは、上述したECUやハーネス等を含むノイズ発生源の全般に対応することが非常に困難である。また、ノイズ除去フィルタ回路を設けることによって、モータ駆動回路が大型化してしまい、車体の狭い設置空間を有効に利用することができず、しかもコストが高騰してしまうといった問題が生じていた。尚、モータ等の駆動装置をカバーで覆ってシールドすることも考えられるが、このようなシールド用のカバーを設けるスペースを確保することは非常に困難であった。
【0006】
なお、上記従来技術では、電子機器(モータ駆動回路)が発生するノイズ(放射ノイズ)を抑制することに主眼をおくものであるが、外部から飛来する外来ノイズが当該電子機器自体に与える影響(誤作動等)を抑制することにも配慮する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、安価で簡素な構成により、電子機器の耐ノイズ性を向上できる電動リトラクタ装置及びシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明の電動リトラクタ装置は、乗員を拘束するシートベルトの引き出し及び巻き取りを行う巻き取り部と、前記シートベルトの引き出し及び巻き取りの少なくとも一方をモータの駆動によって行うための電動駆動部と、前記モータを駆動制御する制御部と、を備えた電動リトラクタ装置であって、前記巻き取り部
の外部カバーと、前記電動駆動部
の外部カバーと、前記制御部の
外部カバーとを結合する、導電性の第1結合部材と、前記モータの外部カバーと、前記電動駆動部の外部カバーとを結合する、導電性の第2結合部材と、前記第1結合部材による、前記巻き取り部の外部カバー、前記電動駆動部の外部カバー、及び、前記制御部の外部カバーの結合箇所に挟み込んで設けられ、それら外部カバーをGND接続するためのアース端子と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の電動リトラクタ装置によれば、安価で簡素な構成でありながら、電子機器の耐ノイズ性を向上することができる。
【0011】
また、本発明の電動リトラクタ装置によれば、最小限度の結合構造によりそれぞれを電気的に同電位とすることができる。
【0013】
また、前記制御部が内部でGND接続されるのが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するために、第5発明のシートベルト装置は、乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを巻き取り可能なリトラクタ装置と、固定側部材に接続されたバックルと、前記シートベルトに設けられ、前記バックルと係合するタングとを有し、前記リトラクタ装置は、乗員を拘束するシートベルトの引き出し及び巻き取りを行う巻き取り部と、前記シートベルトの引き出し又は巻き取りをモータの駆動によって行うための電動駆動部と、前記モータを駆動制御する制御部と、前記巻き取り部
の外部カバーと、前記電動駆動部
の外部カバーと、前記制御部の
外部カバーとを結合する、導電性の第1結合部材と、前記モータの外部カバーと、前記電動駆動部の外部カバーとを結合する、導電性の第2結合部材と、前記第1結合部材による、前記巻き取り部の外部カバー、前記電動駆動部の外部カバー、及び、前記制御部の外部カバーの結合箇所に挟み込んで設けられ、それら外部カバーをGND接続するためのアース端子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安価で簡素な構成でありながら、電子機器の耐ノイズ性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態の電動リトラクタ装置を備えたシートベルト装置の全体構造を乗員と共に表す正面図である。
【0018】
図1において、シートベルト装置101は、シートベルト(ウェビング)102と、このシートベルト102の一方側を引き出し可能に巻き取る電動リトラクタ装置1と、シートベルト102に摺動可能に設けたタング104と、このタング104と係合するバックル装置105とを備えている。シートベルト102は、その一方側が電動リトラクタ装置1により巻き取られると共に、途中でショルダアンカ106に通され、その他方側端部が止め具107により車体108側に回動可能に接続されている。
【0019】
図2は本発明の一実施形態に関わる電動リトラクタ装置の一実施形態を示す要部の分解斜視図である。
【0020】
図2において、電動リトラクタ装置1は、上記シートベルト102の引き出し及び巻き取りを行う巻き取り部10と、引き出し状態のシートベルト102をモータ20の駆動によって強制的に巻き取る電動駆動部30と、モータ30を駆動制御する制御部(以下適宜、「ECU」と称する)50と、を備えている。
【0021】
ECU50には、例えば、CANやローカル通信(いわゆるK-lineやLIN等)などの通信ハーネス、車体各部の検出を行う各種車両センサ(衝突予知センサ、ブレーキセンサ、蛇角センサ、スプールセンサ、バックルスイッチ、及びドアスイッチ等)、上記巻き取り用のモータ、車載バッテリ等が接続され、電源供給や任意の電気信号の送受信が行われる。この例では、上記電源供給や上記電気信号の送受信が、ECU50に接続されたハーネス40を介して行われる。
【0022】
巻き取り部10は、公知のものが用いられており、通常時はシートベルト102の引き出しを許容し、急激な引き出し方向の引っ張り力に対してシートベルト102のそれ以上の引き出しを阻止(ロック)し、非使用時には引き出されたシートベルト102を巻き取る。また、これらのシートベルト102の引き出し、ロック、巻き取りの各動作を行うための構成機構は導電性金属材料から構成された外部カバーとしてのリトラクタカバー12によって必要範囲が覆われている。尚、巻き取り部10は、引き出したシートベルト102で乗員を拘束した際、その引き出して乗員を拘束した状態のシートベルト102を巻き取り方向に引っ張ることにより緩みを防止するシートベルトプリテンショナ機能として、例えば、火薬式駆動装置等のアクチュエータ14を用いても良い。
【0023】
モータ20は、電動モータ本体22と、電動モータ本体22の出力側端部並びに胴部を覆うモータカバー24と、電動モータ本体22の接続端子側端部を覆うモータベースカバー26と、電動モータ本体22をモータカバー24と一体に電動駆動部30に固定するための導電性材料からなるネジ28(結合手段)と、を備えている。尚、電動モータ本体22の出力は電動駆動部30の内部で動力伝達される。また、電動モータ本体22は、その外装そのものが外部カバーとして機能するが、モータカバー24を外部カバーとして導電性金属材料から構成すると共に、モータカバー24にモータカバー固定用のフランジ(図示せず)を形成し、電動モータ本体22を単独で保持した状態でモータカバー24を電動駆動部30に固定しても良い。
【0024】
電動駆動部30は、電動モータ本体22の動力伝達により、少なくとも通常時における巻き取り部10の各動作とは独立して巻き取り部10を強制的に駆動する駆動機構部32と、駆動機構部32を収納した外部カバーとしてのMSB筐体34と、を備えている。また、MSB筐体34は、導電性金属材料から構成されたベース36と、ベース36と協働して駆動機構部22を覆うカバー38と、を備えている。なお、上述の電動モータ本体22による巻き取り部10の強制的な駆動とは、後述するECU50の制御によって、引き出されたシートベルト102の強制的な巻き取りの他、引き出されたシートベルト102の強制的な引き出し後の巻き取りなど、一方向(巻き取り方向)のみの強制的な動作に限定されない。
【0025】
ハーネス40は、ECU50に接続される外部側コネクタ42と、車体側コネクタ(図示せず)と接続される内部側コネクタ46と、外部側コネクタ42と内部側コネクタ46とを接続するハーネス本体44と、を備えている。尚、内部側コネクタ46を接続する車体側コネクタには、例えば、車載バッテリからECU50に電源供給を行う電源回路(図示せず)との電源供給ライン、ECU50を含めた車両全般の電子機器を電子制御する主制御回路(図示せず)との制御ライン、上記各種車両センサからECU50に上記電気信号を入力するための検出信号ライン、等の種々の信号ラインが接続されている。この際、上述した各ラインは、一つのハーネス40を用いてECU50と接続しても良いし、複数のハーネスを用いてECU50と接続しても良い。また、上記車両センサからの電気信号は、検出信号ラインによりECU50に直接入力しても良いし、主制御回路を経由して制御ラインによりECU50に入力しても良い。さらに、電源回路は主制御回路で制御される車両全般の電子機器への電源供給を制御する。本実施の形態においては、この電源回路は主制御回路に含むものとし、車載バッテリからの電源供給と、車両全般の電子機器の電子制御とを、主制御回路で行っている。
【0026】
ECU50は、機能的には公知のものが用いられており、例えば、図示しないエアバッグ装置用のECUとは別に設置されている。本実施の形態においては、ECU50は、その機能の一例として、電動モータ本体22を制御してシートベルト102を巻き取らせることで乗員の拘束効果を高めることができる。すなわち、ECU50は、駆動トリガとなる所定の出力信号(例えば衝突予知センサからの衝突予知信号に対応した他のECU等からの出力信号、バックルスイッチやドアスイッチ等からの出力信号等)を、上記ハーネス40を介して受信する。一方、ECU50は、ハーネス40を介して直接(又は主制御回路等を経由して間接的に)車載バッテリからの電源供給を受ける。そして、ECU50は、上記ハーネス40を介した上記出力信号の受信を契機として、上記供給された電源に基づき電動モータ本体22を駆動制御し、シートベルト102を巻き取らせる。なお、ECU50は、導電性金属材料からなる外部ケース52によって覆われている。
【0027】
そして、巻き取り部10と電動駆動部30とECU50とは、例えば、電動駆動部30のベース36に設けられた留め点36aと外部カバー52に設けられた貫通穴52aとを貫通してリトラクタカバー12に設けられたネジ孔12aと螺合する導電性材料からなるネジ36bによって連結されている。
【0028】
また、外部側コネクタ42にはGND電位への接続として、アース端子等のGNDハーネス48が設けられている。
【0029】
以上の基本構成において、本実施の形態では、電動モータ本体22、ハーネス40、ECU50が放射ノイズ源となっている。以下の説明では、適宜、これら電動モータ本体22、ハーネス40、ECU50を単に「放射ノイズ源」として総称する。本実施形態の要部は、電動リトラクタ装置1におけるこれら放射ノイズ源をGND接続することにある。以下、その接続構造の詳細を説明ずる。
【0030】
本実施形態における放射ノイズ源のGND接続は、以下のようにして実現されている。すなわち、
(A)電動駆動部30とモータ20とをネジ28によって電気的に接続する。
(B)電動駆動部30の留め点36aに、外部GND接続(外部側コネクタ42に接続)されているGNDハーネス48の丸型端子48aを接続し、モータ20をGND電位にする。
(C)電動駆動部30と巻き取り部10とを電気的に接続し、車両に組み付けられる巻き取り部10をGND接続する。
(D)ECU50を電動駆動部30とネジ36bを介して電気的に接続し、ECU50をGND接続する。
【0031】
上記(A)〜(D)の結果、本実施形態においては、巻き取り部10、モータ20、電動駆動部30、ハーネス40、及びECU50を1つのGNDハーネス48によってGND接続することができる。これにより、ノイズ発生源を含む全体がGND電位となってシールド化され、ノイズ発生源から発生するノイズの影響が軽減される。さらに、外部から飛来する外来ノイズ(静電気・電波放射等)に対する電動リトラクタ装置1への影響を防止することもできる。すなわち、ECU50に印加されるノイズ(静電気や電波)等により、誤作動が生じるのを防止することができる。特に、上記外来ノイズを防止するために従来必要であった、ECU基板のGNG基板の強化やESD保護素子の使用が不要となることから、部品点数の増大や基板サイズの大型化を回避することができる。以上の結果、本実施形態によれば、電動リトラクタ装置1から外部へ放射するノイズを防止できるとともに、電動リトラクタ装置1に対し外部から飛来するノイズも防止できるので、電動リトラクタ装置1の耐ノイズ性を向上することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、技術思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0033】
(1)GND電位をECU50の内部GNDからハーネス40を介して接続する方式
図3は、本変形例の電動リトラクタ装置を示す要部分解斜視図である。本変形例においては、
図3に示すように、GNDハーネス48が、内部側コネクタ46に接続される。
【0034】
本変形例における放射ノイズ源のGND接続は、以下のようにして実現される(上記実施形態と同等の内容には同一の項目名を付している)。すなわち、
(A)電動駆動部30とモータ20とをネジ28によって電気的に接続する。
(B′)電動駆動部30の留め点36aに、ECU50の内部GND接続(内部側コネクタ46に接続)されているGNDハーネス48の丸型端子48aを接続し、モータ20をGND電位にする。
(C)電動駆動部30と巻き取り部10とを電気的に接続し、車両に組み付けられる巻き取り部10をGND接続する。
(D)ECU50と電動駆動部30とをネジ36bを介して電気的に接続し、ECU50をGND接続する。
【0035】
上記(A)(B′)(C)(D)の結果、本変形例においても、巻き取り部10、モータ20、電動駆動部30、ハーネス40、及びECU50を1つのGNDハーネス48によってGND接続することができる。これにより、ノイズ発生源の電位がGND電位となり、全体がシールド化され、耐ノイズ性を向上することができる。
【0036】
(2)ECU50を内部でGND接続することでECU50の取り付け部を介して他とGND接続する方式(
図4参照)
図4は、本変形例の電動リトラクタ装置を示す要部分解斜視図である。
【0037】
本変形例における放射ノイズ源のGND接続は、以下のようにして実現される(上記実施形態と同等の内容には同一の項目名を付している)。すなわち、
(A)電動駆動部30とモータ20とをネジ28によって電気的に接続する。
(B″)電動駆動部30の留め点36aにECU50筐体を接続する(ECU50はECU50の内部で電気的にGND接続)することによりモータ20をGND電位にする。
(C)電動駆動部30と巻き取り部10とを電気的に接続し、車両に組み付けられる巻き取り部10をGND接続する。
(D)ECU50を電動駆動部30とネジ36bを介して電気的に接続し、ECU50をGND接続する。
【0038】
上記(A)(B″)(C)(D)の結果、本変形例においても、巻き取り部10、モータ20、電動駆動部30、ハーネス40、ECU50がGND接続される。これにより、ノイズ発生源の電位がGND電位となり、全体がシールド化され、耐ノイズ性を向上することができる。
【0039】
(3)その他
ところで、アクチュエータ駆動方式を採用した巻き取り部10の場合、アクチュエータ駆動による放射ノイズを抑制するために放射源をカットする対策として、巻き取り部10をGND接続して同電位に設定する。これにより、巻き取り部10と接続されている電動駆動部30及びECU50もGND接続されているため、放射ノイズ源のそれぞれが結果的にGND接続されてノイズシールドを構成し、耐ノイズ性を向上する構成でも良い。
【0040】
また、巻き取り部10、電動駆動部30及びECU50を同電位にする方法として、巻き取り部10とECU50とが一体になった機械・電気一体式の電動駆動部30の場合、放射ノイズ源を電気的に接続した構造設計をすることにより、放射ノイズ源の何れか一点をGND接続することにより、放射ノイズ源のそれぞれが結果的にGND接続されてノイズシールドを構成し、耐ノイズ性を向上する構成でも良い。この際、電気的な接続方式としては、導電性の金属(ネジ等)で接点を持たせるのが安価で簡素な構成とすることができるので良い。
【0041】
さらに、ECU50の外部カバー52をECUの内部でGND接続することでノイズ放射源をGND接続しても良い。この際、GND接続には、ハーネス40から直接GND接続しても良いし、ECU50の内部GNDから接続しても良い。また、直接GND接続した際に、ハーネス40に天絡等の懸念がある場合には、巻き取り部10、モータ20、電動駆動部30、ECU50の各連結部分間にコンデンサを挟み込むことにより万が一天絡等の不良が発生した場合でも過電流が流れることを防止できる。また、コンデンサの設置はハーネス間で実装しても良いし、ECU50の内部で実装しても良い。ECU50の内部で実装する場合はECUGND−コンデンサ−GNDの接続配列となる。