(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、風量を制御するときには、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない範囲で段階的に増加させ、風向きを制御するときには、前記冷却負荷を増加させない範囲で水平方向から鉛直方向へと段階的に下げていく、ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きを風向き上限値として設定するときには、風向きを水平方向から最も離れた下向きに設定し、段階的に角度を上げていきながら前記ショーケースの庫内温度が上昇する手前の風向きを風向き上限値として決定する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量を風量上限値として設定するときには、風量を最小に設定し、段階的に増加させていきながら前記ショーケースの庫内温度が上昇する手前の風量を風量上限値として決定する、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、1つの風向きごとに、風量を段階的に増加させていくことで、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値を試行する、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値において、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷が増加するときには、風向きを段階的に水平方向に上げていくことにより、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値を再度決定する、ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値において、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷が増加するときには、風量を段階的に減少させていくことにより、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値を再度決定する、ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値及び一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値において、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷が増加するときには、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値を再度決定してから、前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値を再度決定する、請求項1〜7の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記温度監視手段は、前記ショーケースの庫内温度の変化が所定値を超えたときには、前記庫内温度の変化が所定値を超えた旨を報知する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値及び前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値を再度設定するか否かが自動でなされているときには、手動に切り替える手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の空気調和システム。
前記制御手段は、一度設定した前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風向きである風向き上限値及び前記第1冷凍サイクルの冷却負荷を増加させない風量である風量上限値を再度設定するか否かが手動でなされているときには、自動に切り替える手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の空気調和システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る空気調和システムの実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和システム全体のレイアウト構成を概略的に示す図である。同図に示されるように、この実施の形態1は、本発明の一つの実施例としての空気調和システムをワンフロアで構成される食品店舗に適用したものである。
【0017】
すなわち、店舗の各売り場には、冷蔵及び冷凍商品売り場並びに非冷蔵及び非冷凍商品売り場が備えられている。さらに、店舗には、商品を精算するための複数のレジカウンタからなるレジコーナーが備えられている。一方、店舗の裏側にはトラックから積み下ろした商品を一時的にストックするためのバックヤード10a、10bが備えられている。
【0018】
具体的には、冷蔵及び冷凍商品売り場においては、冷蔵及び冷凍食品は一定の温度で冷却される必要があるため、継続的にそれらの食品を冷却可能なショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xに陳列させて販売されている。なお、この店舗例では、ショーケースの台数は合計26台であるが、設置箇所の特徴に基づいた説明をする観点により、その中から8台について説明している。ただし、ここで説明されていない他のショーケースについても同様の特徴を有することは言うまでもないことである。
【0019】
一方、非冷蔵及び非冷凍商品売り場においては、冷却の必要はないため、通常、冷却能力のない多段式の陳列棚等にそれらの商品が陳列されている。
【0020】
また、店舗内の空気温度を快適な状態に保つために、店舗の天井には空気調和用室内機4a、4b、4c、4d、4e、4fが所定の間隔で店舗全体に複数配設されている。これにより、店舗全体の空気温度を快適に保つようにしている。
【0021】
これらショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xと空気調和用室内機4a、4b、4c、4d、4e、4fは、それぞれの冷媒配管20a、20b、20c、20d、20e、20fのいずれかを介して、熱源機、例えば、冷蔵用または冷凍用冷凍機1a、1b、1c、1d、1e、1fや空気調和用室外機3a、3b、3cに接続されている。一方、バックヤード10a、10bにも内部空間を冷却するための装置(図示せず)が設けられており、それらも冷媒配管20a、20b、20c、20d、20e、20fのいずれかを介して、熱源機、例えば、冷蔵用または冷凍用冷凍機1a、1b、1c、1d、1e、1fのいずれかと接続されている。
【0022】
なお、熱源機の種類はさまざまであり、1つに限定されるものではなく、大まかには延床面積に対する冷房能力で分類される。例えば、延床面積が1000平方メートルまでであれば、個別分散方式が採用されてもよく、その場合には、例えば、ルームエアコン、パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン等があり、延床面積が1000平方メートルを超えれば、セントラル方式が採用されてもよく、その場合には、例えば、空冷チラー、水冷スクリューチラー、ターボ冷凍機、蒸気吸収式冷凍機等がある。
【0023】
また、冷蔵用または冷凍用冷凍機1a、1b、1c、1d、1e、1f、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2x、空気調和用室外機3a、3b、3c、空気調和用室内機4a、4b、4c、4d、4e、4f、及びバックヤード10a、10bは、店長室に設置されたシステムコントローラ50にて一括管理されており、それらは互いに有線若しくは無線等を利用した何らかの媒体を介して通信可能に接続されている。それにより、システムコントローラ50にて、空気調和用室内機4やショーケース2等の温度設定、発動、及び停止等の指令が可能となっており、それらが異常状態となったときにはシステムコントローラ50に搭載されている機器、例えば、図示しないモニタにより異常表示等がなされることで報知されることになっていてもよい。
【0024】
より具体的には、冷蔵及び冷凍商品売り場には、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2pが店舗の壁際に設置され、ショーケース2u、2xは通路の途中に設置され、それぞれ特売品等が陳列されたり、通常価格の商品等が陳列されている。また、店内改装のときには、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xの配置を変えることもある。さらに、時間帯や季節等によりいわゆる目玉商品は変動するものであり、それに伴い各ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xの近傍に図示しない平台等を設けることにより、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xに陳列した商品の付随商品等が陳列されることもある。例えば、秋刀魚が旬のときには、ショーケース2aの側に平台を置き、そこに調味料等を合わせて販売する等のことが通常行われている。さらに、それに伴うPOP等の、いわゆる飾り付けも変えられている。また、夏場であれば、例えば、西瓜等をショーケースに置いていたものの、急遽天候が変わり、別の商品に入れ替え、さらにはPOP等をその都度変えるといったことも日常行われている。
【0025】
さらに、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xが設置されている領域には、天井側には空気調和用室内機4a、4b、4cが設置されており、周囲の空気温度に応じて適宜負荷が変動されている。
【0026】
そのため、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2x周囲の環境は常に変動しており、それに伴いショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xに係る負荷も常に変動することとなる。
【0027】
続いて、非冷蔵及び非冷凍商品売り場には、ショーケース2a、2b、2c、2j、2k、2p、2u、2xは設置されていないが、図示しない陳列棚には所定の温度で冷却していない商品等が陳列されている。例えば、秋にはワイン等の特集コーナーが設置され、それに伴いPOP等も違うものとなる。この領域においても、天井側には空気調和用室内機4d、4e、4fが設置されており、周囲の空気温度に応じて適宜負荷が変動されている。
【0028】
続いて、レジカウンタには、レジ40a、40b、40c、40d、40eが設置されている。レジカウンタにおいても、天井側には空気調和用室内機4g、4h、4iが設置されている。また、レジカウンタは通常、店舗の出入り口の近くに設置されているため、外部空気の出入りが最も頻繁に行われる場所であり、それに伴い空気調和用室内機4の負荷も頻繁に変動することとなる。
【0029】
続いて、冷凍装置の冷媒回路について
図2を用いて説明する。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の冷媒回路の詳細を示す図である。同
図2に示されるように、冷蔵用または冷凍用冷凍機1とショーケース2とを含む冷凍装置の冷凍サイクルは、圧縮機200と、凝縮器201と、レシーバ202と、電磁弁100と、電子膨張弁101と、蒸発器102と、アキュムレータ204とが、液管401とガス管402とからなる、例えば、
図1に示される冷媒配管20aで循環するように接続されて形成されている。さらに、凝縮器201近傍には凝縮器用ファン203、ショーケース庫内には庫内用ファン103が備えられている。
【0031】
すなわち、圧縮機200により圧縮された高温高圧の冷媒は、凝縮器201にて凝縮器用ファン203の作用により凝縮された後、余剰冷媒を溜めるレシーバ202を経て、冷蔵用または冷凍用冷凍機1aからショーケース2a、2b、2cに流入する。ショーケース2a、2b、2cに流入した冷媒は、電磁弁100a、100b、100cを経て、電子膨張弁101a、101b、101cにて膨張されることにより低温低圧の冷媒になり、蒸発器102a、102b、102cにて庫内用ファン103a、103b、103cの作用によって蒸発した後、ショーケース2a、2b、2cを出て再び冷蔵用または冷凍用冷凍機1aに戻り、アキュムレータ204を経て、圧縮機200に戻る。これにより、ショーケースの庫内を冷却することができる。
【0032】
具体的には、冷蔵用または冷凍用冷凍機1aには、圧縮機200と、凝縮器201と、レシーバ202と、アキュムレータ204とが備えられており、冷蔵用または冷凍用冷凍機1aの内部状態を測定するための各種センサ、例えば、冷媒温度センサ300、301、302と、空気温度センサ310と、圧力センサ320、321とが備えられている。これらのセンサで測定した情報は適宜冷凍機用制御装置500aに集められ、冷凍機用制御装置500aは、冷蔵用または冷凍用冷凍機1aを制御するとともに、それらの情報を、
図1に示されるシステムコントローラ50にも転送させ、同時に後述するショーケース用制御装置510a、510b、510cとも相互通信がなされている。すなわち、1つの熱源機に対して複数の冷却負荷が並列に接続されており、各々が互いに通信可能であるため、各ショーケース2の目標冷却温度である設定温度を個別に設定することができ、それに基づいて各冷却対象となる商品を互いに異なる設定温度で冷却することができる。
【0033】
より具体的には、冷媒温度センサ300は圧縮機200の吸込側の冷媒温度を測定するものであり、冷媒温度センサ301は圧縮機200の吐出側の冷媒温度を測定するものであり、冷媒温度センサ302は凝縮器201の出口側の冷媒温度を測定するものである。また、空気温度センサ310は凝縮器201周囲の外気温度を測定するものである。また、圧力センサ320は冷凍サイクルの低圧側に相当する圧縮機200の吸込側の冷媒圧力を測定するものであり、圧力センサ321は冷凍サイクルの高圧側に相当する圧縮機200の吐出側の冷媒圧力を測定するものである。これらの測定された値に基づいて、後述するように冷凍用制御装置500aは冷蔵用または冷凍用冷凍機1aを駆動するための所定の制御を実行する。
【0034】
続いて、ショーケース2aには、具体的には、電磁弁100aと、電子膨張弁101aと、蒸発器102aとが備えられており、ショーケース2aの内部状態を測定するための各種センサ、例えば、入口側冷媒温度センサ110aと、出口側冷媒温度センサ111aと、吸込側空気温度センサ120aと、吐出側空気温度センサ121aとが備えられており、さらに、
図2では示されていないが、後述する吐出側庫内温度センサ130aと、吸込側庫内温度センサ131aとが備えられている。これらのセンサで測定した情報は適宜ショーケース用制御装置510aに集められ、ショーケース用制御装置510aは、ショーケース2aを制御するとともに、それらの情報を、
図1に示されるシステムコントローラ50にも転送させ、同時に冷凍機用制御装置500aとも相互通信がなされている。
【0035】
より具体的には、入口側冷媒温度センサ110aは蒸発器102aの入口側の冷媒温度を測定するものであり、出口側冷媒温度センサ111aは蒸発器102aの出口側の冷媒温度を測定するものであり、吸込側空気温度センサ120aは蒸発器102aの吸込側の空気温度を測定するものであり、吐出側空気温度センサ121aは蒸発器102の吐出側の空気温度を測定するものであり、
図2では示されていないが、後に詳述するように吐出側庫内温度センサ130aはショーケース2aの冷気吐出口側を測定するものであり、それに対して、吸込側庫内温度センサ131aは冷気吸込口側を測定するものである。これらの測定された値に基づいて、後述するようにショーケース用制御装置510aはショーケース2aを駆動するための所定の制御を実行する。
【0036】
なお、ここでは説明を省略しているが、ショーケース2b並びにショーケース2cにおいてもショーケース2aと同様の構成となっており、それらの構成により、適宜ショーケース庫内が冷却されるように制御される。
【0037】
なお、ショーケース2は後述するように用途ごとに異なる庫内温度が設定されることとなる。従って、温度帯が同一若しくは類似のショーケース2を並べて配置し、そのようなショーケース群を同一の冷蔵用または冷凍用冷凍機1に接続することにより効率よく運転することができる。すなわち、このようにすることで、冷蔵用または冷凍用冷凍機1にかかる負荷を均等化させることができる。
【0038】
具体的には、仮に、異なる温度帯の庫内温度を同一の冷蔵用または冷凍用冷凍機1に接続させると、冷蔵用または冷凍用冷凍機1は可能な負荷、すなわち、可能な冷却能力の範囲内で個々のショーケース2の庫内温度の低い方の設定値に適合させるように冷媒の目標蒸発温度が設定される。そのため、冷媒の目標蒸発温度の下げ幅が大きくなればなるほど、全体としての仕事量が増えることとなる。そのため、温度帯がなるべく同一か類似のショーケース2を複数まとめて同一の冷蔵用または冷凍用冷凍機1に接続するようにしている。このようにすることで、省エネ運転が図れるのである。また、このようないわゆるショーケース群の設定は店舗に配設時に、
図1に示されるシステムコントローラ50を介してなされてもよい。
【0039】
より具体的には、
図2に示されるように、ショーケース2a、2b、2cは同一の温度帯、例えば、庫内温度が青果用であれば、
図1に示されるように、同一の冷却負荷が複数並列に接続されることになり、それらと冷蔵用または冷凍用冷凍機1aとで冷媒配管20aを介して冷凍サイクルが形成されることとなる。このように庫内温度を均等にしたショーケース2a、2b、2cを隣接設置することにより、省エネ運転を図ることも可能である。
【0040】
また、他の場合にあっては、例えば、ショーケース2aを生鮮食品の青果用、ショーケース2bを生鮮食品の精肉用、ショーケース2cを生鮮食品の鮮魚用としてもよい。このような場合にあっては、後に詳述するように精肉用と鮮魚用との設定温度が同一であるため、その分だけ省エネ運転が図れることになる。
【0041】
続いて、空気調和機の冷媒回路について
図3を用いて説明する。
【0042】
図3は、本発明の実施の形態1における空気調和機の冷媒回路の詳細を示す図である。
図3に示されるように、空気調和用室外機3aと空気調和用室内機4a、4b、4cとを含む空気調和機の冷凍サイクルは、圧縮機600と、室外熱交換器601と、レシーバ603と、電磁弁604と、電子膨張弁605と、室内熱交換器606とが、例えば、
図1に示される冷媒配管20gで循環するように接続されて形成されている。また、
図3に示されるように、室外熱交換器用ファン602及び室内熱交換器用ファン607を備えている。
【0043】
すなわち、圧縮機600により圧縮された高温高圧の冷媒は、室外熱交換器601にて室外熱交換器用ファン602の作用により凝縮された後、余剰冷媒を溜めるレシーバ603を経て、空気調和用室外機3aから空気調和用室内機4aに流入する。空気調和用室内機4aに流入した冷媒は、電磁弁604を経て、電子膨張弁605にて膨張されることにより低温低圧の冷媒になり、室内熱交換器606にて室内熱交換器用ファン607の作用によって蒸発した後、空気調和用室内機4aを出て再び空気調和用室外機3aの圧縮機600に戻る。これにより、店舗内を冷却することができる。
【0044】
具体的には、空気調和用室外機3aには、圧縮機600と、室外熱交換器601と、レシーバ603とが備えられており、空気調和用室外機3aの内部状態を測定するための図示しない各種センサ、例えば、冷媒温度センサと、空気温度センサと、圧力センサとが備えられている。これらのセンサで測定した情報は適宜空気調和機用制御装置608aに集められ、空気調和機用制御装置608aは、空気調和用室外機3aを制御するとともに、それらの情報を、
図1に示されるシステムコントローラ50にも転送させ、同時に前述した冷凍機用制御装置500aとも相互通信がなされている。このような構成により、後に詳述するように他の機器を考慮して空気調和機を制御することができるのである。
【0045】
続いて、空気調和用室内機4aには、具体的には、電磁弁604と、電子膨張弁605と、室内熱交換器606とが備えられており、空気調和用室内機4aの内部状態を測定するための図示しない各種センサ、例えば、入口側冷媒温度センサと、出口側冷媒温度センサと、吸込側空気温度センサと、吐出側空気温度センサとが備えられている。これらのセンサで測定した情報は、例えば、適宜図示しない空気調和用室内機制御装置に集められ、空気調和用室内機制御装置は、それらの情報を、空気調和機用制御装置608aに転送させることで、空気調和機用制御装置608aが空気調和機全体を統括制御することができるようになり、空気調和用室内機4aに対して、適宜指令を送り、店舗内の空気が快適な状態に調和されるようにしてもよい。
【0046】
付言すれば、空気調和機は、その設定温度が一年を通じて25(℃)前後となるように制御される傾向がある。例えば、夏場は25(℃)よりも高めの設定温度とし、それに対して冬場は25(℃)よりも低めの設定温度としている。このようにすることで、店舗へ来客した人々の感じる体感温度を抑制することができるとともに、省エネの効果を得ることができるようになる。具体的には、体感温度は、外と中との温度差による影響が高い。そのために、温度差を広げない工夫をすることにより、人は快適と感じることができるようになる。
【0047】
また、店舗の場合、夏場であれば、冷凍装置と空気調和機、すなわち、ショーケース2と空気調和用室内機4とで店舗内の空気を冷却することになる。このことは、第1の熱源機である冷蔵用または冷凍用冷凍機1と第2の熱源機である空気調和用室外機3とで同一店舗内を冷却するための仕事をしていることを意味する。そのため、詳細については後述するが、第1の熱源機と第2の熱源機とを比較したときに、より冷却効率の高い方に多くの仕事量を割り当てさせるようにすることにより、全体として省エネが図れるのである。
【0048】
なお、同図中、空気調和用室内機4b、4cについてはその詳細についての説明は省略したが、空気調和用室内機4aと同様な構成であり、同様な機能を有するものである。
【0049】
次に、ショーケース庫内の空気の流れについて
図4を用いて説明する。
【0050】
図4は、本発明の実施の形態1におけるショーケース2の空気の流れを概略的に示す図である。ショーケース2には、電磁弁100と、電子膨張弁101と、蒸発器102とが備えられている。また、ショーケース2の内部状態を測定するための各種センサ、例えば、入口側冷媒温度センサ110と、出口側冷媒温度センサ111と、吸込側空気温度センサ120と、吐出側空気温度センサ121とが備えられている。また、吐出側庫内温度センサ130と、吸込側庫内温度センサ131とが備えられている。なお、例えば、吐出側庫内温度センサ130及び吸込側庫内温度センサ131に基づいて庫内温度が算出される。
図4に示されるように、実線矢印により、庫内を循環する風の流れが示されている。すなわち、庫内用ファン103により発生させた風は蒸発器102によって冷却される。それにより、冷却された風は庫内を循環し、庫内温度を下げることとなる。また、吐出口から噴出される風は、吸込口で回収され、ショーケース庫内を循環していくことになる。このとき、同時に破線矢印で示したような外部流出空気も発生することになり、それに伴い、破線矢印で示したような庫内流入空気がショーケース庫内に流入することとなる。
【0051】
具体的には、庫内流入空気はショーケース2で発生させている空気の流れを乱すようにして外部からいわゆる強制的に侵入する風である。また、外部の空気はショーケース庫内を循環する空気よりも温度が高い。このため、このような庫内流入空気によりショーケース庫内は温められることとなる。その結果、ショーケース2の庫内温度は急激に上昇するため、ショーケース2で予め定められた設定温度を維持するために、冷蔵用または冷凍用冷凍機1の負荷を増やさなければならない。
【0052】
すなわち、ショーケース2の冷却能力は増加することとなる。このため、店舗内の他の機器、例えば、ショーケース2に対する影響を考慮せずに空気調和機、例えば、空気調和用室外機3及び空気調和用室内機4を稼働させるとショーケース2に大量に空気が流入する場合があり、そのときにはショーケース2の冷却能力は増大し、結果として省エネを図ることができないのである。逆に言えば、ショーケース2の庫内温度が急激に上昇しないように空気調和機を調整することにより、全体として、省エネを図ることができる。換言すれば、空気調和機に制約条件としての上限値を設けるようにすればよいことになる。
【0053】
具体的には、店舗内では空気調和用室外機3及び空気調和用室内機4とショーケース2との双方が空気温度を下げる仕事をしている。このとき、ショーケース2の庫内温度が上昇したときには、空気調和用室内機4の風向きもしくは風量を変更することにより、ショーケース2の庫内温度が設定温度に達するようにする。これにより、ショーケース2の中に空気調和用室内機4から発生する空気の流入を防ぐことができる。なお、これらの一連の処理は、システムコントローラ50によって統合管理されていてもよい。
【0054】
より具体的には、ショーケース2を冷却するために必要な所要熱量Qは次式(数1)で表される。
【0055】
Q=K×A×ΔT・・・(数1)
ただし、Qは所要冷凍能力、Kは熱通過率、Aは面積、ΔTは温度差を示すものとする。
【0056】
ここで、K及びAについてはショーケース2の構造が一意に決まれば固定値となる。よって、QはΔTに比例することとなる。
【0057】
次に、ΔTは庫内温度と冷媒温度との差で求められ、次式(数2)で表される。
【0058】
ΔT=庫内温度−冷媒温度・・・(数2)
【0059】
なお、ここでの庫内温度はショーケース2の吐出口側にある吐出側庫内温度センサ130とショーケース2の吸込口側にある吸込側庫内温度センサ131との測定結果に基づいて所定の演算処理をすることにより、算出される値である。
【0060】
具体的には、庫内温度は、蒸発器102に対する吸込空気温度と吐出空気温度を用いて算出される。すなわち、吸込側庫内温度センサ131により測定された吸込空気温度と吐出側庫内温度センサ130により測定された吐出空気温度とに基づいて算出されるのである。より具体的には、例えば、算術平均で求められ、次式(数3)で表される。
【0061】
庫内温度=(吸込空気温度+吐出空気温度)/2・・・(数3)
【0062】
なお、言うまでもないことであるが、庫内温度の求め方は算術平均に限られず、所定の重み付けをすることにより、算出されてもよい。
【0063】
より具体的には、所要冷凍能力は庫内流入空気の侵入外気熱量、輻射熱量、内部発熱量、及び壁面熱侵入量を加算したものである。特に、ショーケース2は構造がオープンショーケースとなっているため、大部分がエアーカーテンとしての開口部からの侵入外気熱量である。従って、周囲の空気条件がショーケース2の冷却能力に大きな影響を与える。例えば、店舗内の湿度や温度が上昇すれば、周囲空気の持つエンタルピを増大させることになる。それにより、所要冷凍能力を増大させることになる。
【0064】
従って、周囲空気の持つエンタルピを増大させないように店舗内の湿度や温度を調整することにより、ショーケースに余計な負荷を与えずに理想的な状態に近い状態で庫内温度を安定させることができる。
【0065】
すなわち、周囲空気の温度が上昇すれば、所要冷凍能力が増えるため、冷媒温度がそのままであれば、ΔTも増加し、その結果、庫内温度は上昇する。このとき、ショーケース2の冷媒温度を下げる代わりに空気調和機によって周囲空気の温度を下げるように調整することで庫内温度を安定化させるようにする。
【0066】
換言すれば、ショーケース2に庫内流入空気が生じないようにしつつも周囲空気の温度を下げるように空気調和機を調整することで、全体として省エネを図ることができる。
【0067】
要するに、後に詳述するように空気調和機がショーケース2に与える影響を考慮することにより、ショーケース2側の負荷である冷却能力を低減するために空気調和機の負荷である冷却能力を上げるようにしつつも、ショーケース2自体の冷却効果の妨害を防ぐようにすることができる。その結果、店舗全体での電力量を低減することができる。従って、空気調和機は他の機器、例えば、ショーケース2に与える影響を考慮することにより、省エネ運転をすることができるのである。
【0068】
すなわち、空気調和機を運転する際、ショーケース2を運転するときに比べて冷媒の蒸発温度は高い領域である。従って、空気調和機の運転の方が圧縮機の仕事量は小さく、かつ、冷却能力は高いため、冷却効率は高い。よって、空気調和機の冷却運転の仕事量が増えたとしても、ショーケース2の冷却運転の仕事量を減らした方が、全体としては電気量を削減することができる。
【0069】
また、ショーケースの形状は
図4に示されるような多段形に限らず、平形両面若しくはその両方からなるデュアルタイプであってもよいことも言うまでもない。
【0070】
次に、前述したショーケース用制御装置510、冷凍機用制御装置500、及び空気調和機用制御装置608のハードウェア構成の一例について
図5を用いて説明する。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態1における空気調和システムのハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
図5に示されるように、本発明の一つの実施例としての空気調和システムは、ショーケース用制御装置510a、510b、510cと、冷凍機用制御装置500aと、空気調和機用制御装置608aとを備えている。そしてこれらが互いに通信されることにより、空気調和機用制御装置608aは、
図1に示されるショーケース2a、2b、2cに与える影響を考慮して空気調和室内機4aを駆動させることができるため、店舗全体として省エネでありつつも、店舗内の空気を快適な状態に保つことができるのである。
【0072】
また、ショーケース用制御装置510a、510b、510c、冷凍機用制御装置500a、及び空気調和機用制御装置608aはそれぞれが
図1に示されるシステムコントローラ50により統合管理されてもよい。そのような場合には、システムコントローラ50にて店舗内の各機器を統合管理できるため、極めて効率良く店舗内の空気を快適な状態に保つことができるのである。
【0073】
なお、言うまでもないことであるが、ショーケース2a、2b、2cの各々の設定温度は個別に設定されてもよく、そのような場合には、例えば、
図2に示されるショーケース用制御装置510a、510b、及び510cが個別に各ショーケース2a、2b、2cを制御し、冷凍機用制御装置500aと相互通信することにより、冷凍機用制御装置500aは、冷蔵用または冷凍用冷凍機1aの負荷を変動させる。具体的には、圧縮機200の容量を制御する。
【0074】
さらに、携帯用外部端末、例えば、リモートコントローラにより空気調和用室内機4の各々の設定温度も個別に設定されてもよく、そのような場合には、図示しない空気調和用室内機制御装置がユーザからの指令を受信し、その指令を適宜空気調和機用制御装置608aに送信し、空気調和機用制御装置608aにて負荷を変動させる。具体的には、圧縮機600の容量を制御させ、それに伴い後述する空気調和用室内機4の風量と風速とを変動させていく。
【0075】
具体的には、ショーケース用制御装置510a、510b、510cは、目標温度設定手段700と、蒸発器運転決定手段701と、ファン風量制御手段702と、流動抵抗制御手段703と、庫内状況監視手段704と、通信制御手段705とを備えている。
【0076】
すなわち、例えば、
図1に示されるシステムコントローラ50に設置されている入力手段(図示せず)により入力された各種設定データ、例えば、
図4に示される蒸発器102の冷却対象の目標温度が目標温度設定手段700に格納され、その目標温度となるように、各種センサ、例えば、入口側冷媒温度センサ110、出口側冷媒温度センサ111、吸込み側空気温度センサ120、吐出側空気温度センサ121、吐出側庫内温度センサ130、及び吸込側庫内温度センサ131により測定された値に基づいて、蒸発器運転決定手段701は蒸発器102を運転させるか否かを決定する。それにより、蒸発器運転決定手段701は電磁弁100の開閉を制御し、流動抵抗制御手段703は電子膨張弁101の開度を制御し、ファン風量制御手段702は庫内用ファン103を制御する。
【0077】
また、庫内状況監視手段704は、後に詳述するように、庫内温度の変化を監視し、状況が変化したときには、通信制御手段705を介して外部に状況を伝達するとともに空気調和機用制御装置608aに制御指令を出す。
【0078】
通信制御手段702は、外部との相互通信を制御する。それにより、ショーケース用制御装置510a、510b、510cは、冷凍機用制御装置500a、空気調和機用制御装置608a、若しくはシステムコントローラ50と相互通信できる。
【0079】
続いて、冷凍機用制御装置500aは、圧縮機容量制御手段710と、ファン風量制御手段711と、通信制御手段712とを備えている。すなわち、各種センサの計測値、例えば、冷媒温度センサ300、301、302、空気温度センサ310、及び圧力センサ320、321により測定された値に基づいて、圧縮機容量制御手段710は圧縮機200の回転数を制御し、ファン風量制御手段711は凝縮器用ファン203の風量を制御する。
【0080】
通信制御手段712は、外部との相互通信を制御する。それにより、冷凍機用制御装置500aは、ショーケース用制御装置510a、510b、510c、空気調和機用制御装置608a、若しくはシステムコントローラ50と相互通信できる。
【0081】
その結果、ショーケース用制御装置510a、510b、510cと冷凍機用制御装置500aは互いに通信可能であり、それぞれの計測値及び制御される機器の情報通信を可能とする。それにより、
図2に示される冷凍装置の冷凍サイクルを効率良く制御することができる。
【0082】
続いて、空気調和機用制御装置608aは、具体的には、圧縮機容量制御手段721と、室外熱交換器用ファン風量制御手段722と、目標温度設定手段723と、室内熱交換器運転決定手段724と、室内熱交換器用ファン風量制御手段725と、流動抵抗制御手段726と、ルーバ制御手段727と、上限値制御手段729と、通信制御手段728とを備えている。
【0083】
すなわち、例えば、
図1に示されるシステムコントローラ50に設置されている入力手段(図示せず)により入力された各種設定データ、例えば、蒸発器102の冷却対象の目標温度が目標温度設定手段723に格納され、その目標温度となるように、各種センサ、例えば、図示しない冷媒温度センサ及び空気温度センサにより測定された値に基づいて、室内熱交換器運転決定手段724は室内熱交換器606を運転させるか否かを決定する。それにより、室内熱交換器運転決定手段724は電磁弁604の開閉を制御し、流動抵抗制御手段726は電子膨張弁605の開度を制御し、室内熱交換器用ファン風量制御手段725は室内熱交換器用ファン607を制御する。
【0084】
続いて、空気調和機用制御装置608aは、各種センサの計測値、例えば、図示しない冷媒温度センサ、空気温度センサ、及び圧力センサにより測定された値に基づいて、圧縮機容量制御手段721は圧縮機600の回転数を制御し、室外熱交換器用ファン風量制御手段721は室外熱交換器用ファン602の風量を制御し、ルーバ制御手段727はルーバ801の角度を制御する。この結果、
図3に示される空気調和機の冷媒回路は制御されるのである。
【0085】
通信制御手段728は、外部との相互通信を制御する。それにより、空気調和機用制御装置608aは、ショーケース用制御装置510a、510b、510c、冷凍機用制御装置500a、若しくはシステムコントローラ50と相互通信できる。
【0086】
その結果、空気調和機用制御装置608aと冷凍機用制御装置500aとは互いに通信可能であり、それぞれの計測値及び制御される機器の情報通信を可能とする。すなわち、空気調和機用制御装置608aは冷凍機用制御装置500aを介してショーケース用制御装置510a、510b、510cとも互いに通信可能であり、それぞれの計測値及び制御される機器の情報通信を可能とする。それにより、空気調和機用制御装置608a、冷凍機用制御装置500a及びショーケース用制御装置510a、510b、510cは、
図2に示される冷凍装置の冷媒回路と
図3に示される空気調和機の冷媒回路とを効率良く制御することができるとともに、互いに連動して制御することができる。そのため、空気調和機用制御装置608aと、ショーケース用制御装置510a、510b、510cとを連動して制御することができる。
【0087】
その結果、店舗内の他の機器に対する影響を考慮することができる空気調和システムを提供することができる。
【0088】
また、上限値制御手段729は、後に詳述するように、ショーケース用制御装置510a、510b、510cから制御指令が到来したときには後述する上限値設定テーブルの値に基づいて、ショーケース2a、2b、2cに影響を与えないようにしつつも店舗内の空気温度を下げるように空気調和機を制御する。また、到来した制御指令が上限値を設定する指令であるときには後述する処理に基づいて空気調和機の制約条件である上限値を設定する動作を実行する。なお、「上限値制御手段729」は、本発明における「制御手段」に相当する。
【0089】
次に、ショーケース2の用途毎の設定温度範囲並びにその場合の冷蔵用または冷凍用冷凍機1の目標蒸発温度との対応関係を
図6を用いて説明する。
【0090】
図6は、本発明の実施の形態1におけるショーケースと冷凍機との温度対応テーブルの1例である。
図6に示されるように,ショーケース2の用途は大まかに冷蔵用と冷凍用とに区分される。
【0091】
さらに、冷蔵用には食品の特性ごとに複数の区分に分類される。具体的には、青果と、日配、乳製品、及び飲料と、精肉及び鮮魚と、高鮮度が要求される精肉及び鮮魚である。青果はよく知られているように野菜や果物のことであり、例えば、設定温度の範囲は5〜10(℃)である。日配、乳製品、及び飲料はいわゆる加工食品のことであり、メーカによって生産され、冷蔵を必要とし、あまり日持ちのしない食品のことを指す。そのような食品としては、例えば、豆腐等のことである。その場合の設定温度の範囲は、例えば、2〜8(℃)である。精肉は、スライスや角切り、細切れ、挽肉などに調製した部分肉のことであり、鮮魚は、漁獲後まもない新鮮な魚のことである。これらは共通の設定温度範囲であり、例えば、−2〜2(℃)である。高鮮度な精肉及び鮮魚としては、例えば、刺身等のことであり、より厳しい鮮度が要求されるため設定温度範囲は−3〜0(℃)となっている。
【0092】
次に、冷凍用も冷蔵用と同様に食品の特性ごとに複数の区分に分類される。具体的には、チルドと、冷凍食品と、アイスクリームである。チルドはいわゆるチルド飲料やチルド食品のことであり、飲料や食品が凍結寸前の温度まで冷却された状態で保存されるものである。この場合の設定温度の範囲は、例えば、−18〜−15(℃)である。冷凍食品は冷凍状態で製造・流通・販売されている食品のことであり、設定温度の範囲は、例えば、−20〜−18(℃)である。アイスクリームの設定温度の範囲は、例えば、−22〜−20(℃)である。
【0093】
次に、ショーケース2と冷蔵用または冷凍用冷凍機1との関係について説明する。冷蔵用の区分のうち、青果並びに日配、乳製品、及び飲料は同一の目標蒸発温度として設定される。ここでは、例えば、−10(℃)である。また、精肉及び鮮魚並びに高鮮度の精肉及び鮮魚は同一の目標蒸発温度として設定される。ここでは、例えば、−13(℃)である。それに対して冷凍用の区分では、目標蒸発温度は、例えば、チルドで−30(℃)、冷凍食品で−35(℃)、アイスクリームで−38(℃)となっている。
【0094】
このことからも明らかなように、冷蔵用または冷凍用冷凍機1の目標蒸発温度の値が同一のショーケースを複数隣接して配設すれば、省エネ運転を図ることができるのである。
【0095】
次に、各空気調和機が負荷状況によっては影響を与える可能性のあるショーケースについて、
図7を用いて説明する。
【0096】
図7は、本発明の実施の形態1におけるショーケースに影響を与える空気調和機の一覧を示すショーケースと空気調和機との機器番号対応テーブルである。すなわち、
図7に示されるように、1つの空気調和機は複数のショーケース2に対して影響を与える可能性がある。例えば、機器番号No.1の空気調和機は、機器番号No.1〜9及び21〜23のショーケース2に対して影響を与える可能性のあることが機器番号対応テーブルに記載されているフラグ1によって示されている。また、機器番号No.2の空気調和機は、機器番号No.9〜12及び21〜26のショーケース2に対して影響を与える可能性のあることが機器番号対応テーブルに記載されているフラグ1によって示されている。また、機器番号No.3の空気調和機は、機器番号No.12〜20及び24〜26のショーケース2に対して影響を与える可能性のあることが機器番号対応テーブルに記載されているフラグ1によって示されている。機器番号No.4〜9の空気調和機はショーケース2が設置されていない領域の天井に設置されているため、フラグ1は存在していない。
【0097】
すなわち、この機器番号対応テーブルに記載されているフラグ1を参照することにより、各空気調和機は、どのショーケース2に対して影響を与えるか可能性があるかを識別することができるのである。それにより、影響を与える可能性のあるショーケース2の各種センサから測定される値を常時取得することにより、影響を与えてしまったとき、あるいは、その可能性があると判定されたときには、該当する空気調和機は負荷を調整するようにしてもよい。また、後述する空気調和機の制約条件、すなわち、上限値を設定するときにも機器番号対応テーブルを参照することにより、効率良く設定をすることができるのである。なお、将来影響を与える可能性があるか否かについては、例えば、各種センサの値を時系列でプロットすることにより、予測するようにしてもよい。
【0098】
また、機器番号対応テーブルは、例えば、
図1に示されるシステムコントローラ50に格納させておいてもよい。そのようにすることで、影響を与える可能性のあるショーケース2を一括管理することができる。さらに、機器番号対応テーブルのフラグについては、店内改装により、ショーケース2、POP、若しくは平台等の配置を変更したときには、その都度フラグの値を更新するようにしてもよい。そのようにすることにより、常に最新の対応関係を維持することができるため、的確な空気調和システムを提供することができる。
【0099】
次に、空気調和用室内機4の冷風吹き出し口側の構造について
図8を用いて説明する。
【0100】
図8は、本発明の実施の形態1における空気調和機の冷風吹き出し口側の表面パネル800の外観図である。
図8に示されるように、冷風吹き出し口かつその風向きを調整するルーバ801a、801b、801c、801dが吸込みグリル802の周囲を取り囲むように設置されている。ルーバ801a、801b、801c、801dは、吸込みグリル802の縁と平行となるような向きに設置されており、吸込みグリル802は略四角形状となっている。そのため、ルーバ801のいずれかが北側に位置することになれば、その他のルーバ801は東側、西側、若しくは南側のいずれかに位置することになる。
【0101】
すなわち、そのような場合にあっては、例えば、ルーバ801aを北側、ルーバ801bを西側、ルーバ801cを南側、及びルーバ801dを東側とそれぞれ定めることもできる。また、東西南北の各方位に正確でなかったとしても、各ルーバ801を北側、西側、南側、及び東側として、N、W、S、及びEとして配設方向を定義させておいてもよい。このようにすることにより、ルーバの水平方向上の配設関係が明確になり、後述するルーバ801の制御を的確にすることができる。
【0102】
また、ルーバ801aをルーバNo.1、ルーバ801bをルーバNo.2、ルーバ801cをルーバNo.3、ルーバ801dをルーバNo.4と定めておいてもよい。この場合には、後述する風向きの上限値の設定時には、ルーバの機器番号を利用することにより設定することができる。いずれにしても、どのルーバかを定義する方法はさまざまであり、一つに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0103】
次に、ルーバ801の風向きについて
図9を用いて説明する。
【0104】
図9は、本発明の実施の形態1における空気調和機のルーバによって設定可能な風向きを示した図である。
図9に示されるように、ルーバ801の風向きは、例えば、A、B、C、D、E、F、及びGの7段階に設定可能である。この風向きは、任意に調整可能であり、さらに、細かい段階に設定可能であってもよく、また、例えば、A〜CをA’、C〜EをB’、及びE〜GをC’として3段階と設定可能にしてもよい。いずれにしても、ある一定の範囲ごとに風向きを変更することができる。
【0105】
なお、ここでは、例えば、Aを天井に対して水平方向と設定し、Gを天井に対して垂直方向、すなわち、鉛直方向としてもよい。このようにすることにより、ショーケース2に与える影響を考慮して空気調和用室内機4を制御することができ、さらには、空気調和用室内機4により、店舗内を快適な環境にすることもできる。
【0106】
付言すれば、吸込みグリルの天井裏側には図示しないフィルタが着脱可能に取り付けられている。従って、フィルタを交換するときには、吸込みグリルを降下させるようにしてもよい。
【0107】
次に、本発明の要部となる空気調和機の制約条件、すなわち、上限値について
図10を用いて説明する。
【0108】
図10は、本発明の実施の形態1における空気調和機の風向きと風量の上限値を示す上限値設定テーブルである。
図10に示されるように、ショーケース2に影響を与える可能性のある空気調和機は風量と風向きについて所定の制約条件、すなわち上限値が設定される。換言すれば、以下に説明する上限値を超えなければ、ショーケース2に影響を与えることなく、つまり、ショーケースの負荷が過度に増大することがなく店舗内の環境を快適に保つことができる。従って、店舗内の他の機器に対する影響を考慮することができる空気調和システムを提供することができる。
【0109】
すなわち、同図に示されるように、風量については、例えば、機器番号No.1の空気調和機は「中」段階の風量という上限が設定され、機器番号No.2の空気調和機は「弱」段階の風量という上限が設定され、機器番号No.3の空気調和機は「中」段階の風量という上限が設定される。実際の空気調和機の駆動では、これらの上限値に基づいて、圧縮機600の容量を制御することにより、風量がいずれかの段階となる。なお、この風量の各段階は任意に定められるものであり、例えば、空気調和機の風量が「強」、「中」、及び「弱」であれば3段階となり、「5速」、「4速」、「3速」、「2速」、「1速」のように番号が大きいほど風量を強めるような設定であってもよく、この場合においては5段階となる。いずれにしても、風量の設定範囲は一つの方法で規定されるものではなくさまざまな段階であってもよいことは言うまでもないことである。
【0110】
次に、風向きについては、例えば、
図9に示されるようなA〜Gの7段階から上限が設定される。
図10に示される例においては、機器番号No.1の空気調和機はルーバの配設方向がNのときにはC、ルーバの配設方向がWのときにはA、ルーバの配設方向がSのときにはA、ルーバの配設方向がEのときにはCとなっている。また、機器番号No.2の空気調和機はルーバの配設方向がNのときにはC、ルーバの配設方向がWのときにはA、ルーバの配設方向がSのときにはA、ルーバの配設方向がEのときにはCとなっている。また、機器番号No.3の空気調和機はルーバの配設方向がNのときにはC、ルーバの配設方向がWのときにはA、ルーバの配設方向がSのときにはA、ルーバの配設方向がEのときにはCとなっている。この例においては、たまたま全ての空気調和機で各ルーバの配設方向に対しては同様の風向きであったが、もちろんこれに限定されるものではなく、後に詳述する上限値設定処理において設定されるのである。
【0111】
すなわち、これらの風量及び風向きの上限値に基づいて空気調和機が運転されるため、ショーケース2に与える影響を考慮した空気調和システムを提供することができるのである。
【0112】
次に、以上説明した空気調和システムの構成を前提として、本発明の要部である、店舗内の他の機器に対する影響を考慮することができる空気調和システムの動作について説明する。
【0113】
まず、ショーケース庫内温度が上昇したときの処理の詳細を
図11〜13を用いて説明する。
【0114】
すなわち、
図11は、本発明の実施の形態1におけるショーケース庫内温度が上昇した場合の処理の詳細を示すフローチャートであり、
図12は、本発明の実施の形態1における空気調和機制御処理の詳細を示すフローチャートであり、
図13は、本発明の実施の形態1における制御量決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0115】
まず、各種フラグ等を初期化することにより処理全体の準備をする(S100)。ここでいう各種フラグ等とは、例えば、後述するショーケース庫内温度上昇フラグ、制御量変更フラグ、及びカウンタである。もちろんフラグはこれらに限定されるものではなく、処理に利用されるあらゆるフラグが初期化の対象である。また、このときに、
図7に示す機器番号対応テーブルのデータを取得して設定する。このことにより、ショーケース2に影響を与える空気調和機に対してのみ制御を実施することができる。そのため、無関係な空気調和機に無駄な制御を実施することにはならないこととなる。
【0116】
次に、ショーケース庫内温度を取得し、ショーケース庫内目標温度を取得した後、ショーケース庫内温度とショーケース庫内目標温度の差の絶対値を算出する(S101〜S103)。
【0117】
続いて、算出した差の絶対値が第1の所定値を超えているか否かを判定する。ここでいう第1の所定値とは、ショーケース庫内温度が許容される所定の範囲内にあるか否かを判定するための値である。すなわち、ショーケース庫内目標温度に一致していなくても、許容される範囲内であれば、ショーケース庫内温度は安定していると判定させるのである。例えば、第1の所定値が3(℃)であれば、ショーケース庫内温度とショーケース庫内目標温度との差の絶対値が3(℃)を超えたか否かが判定される。また、この第1の所定値を変更することにより、その精度を変更することは可能である。なお、「第1の所定値」は、本発明における「所定値」に相当する。
【0118】
すなわち、第1の所定値を超えたときには(S104YES)、ショーケース庫内温度上昇フラグを1に設定し(S105)、処理を空気調和機制御処理(S106)へ移行させる。これに対して、第1の所定値を超えないときには(S104NO)、再びショーケース庫内状況を監視する処理を続行させる(S101〜S104)。このようにショーケース庫内温度上昇フラグを利用することにより、ショーケースの庫内温度が上昇したことを示すようにしてもよい。
【0119】
続いて、空気調和機制御処理について
図12を用いて説明する。
【0120】
まず、空気調和機の設定温度を取得し、ショーケース庫内目標温度を取得した後に、空気調和機の設定温度をショーケース庫内目標温度に近づくような値に設定する(S200〜S202)。
【0121】
次に、
図10に示される上限値設定テーブルから空気調和機の制御量を取得する(S203)。すなわち、上限値設定テーブルから取得した制約条件に基づいて空気調和機を制御することにより、店舗内の他の機器、例えば、ショーケース2に影響を与えないようにすることができる。その上、冷却効率の高い空気調和機を積極的に利用することにもなるので、店舗全体として省エネを図ることができる。
【0122】
次いで、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるか否かを判定する(S204)。すなわち、ショーケース庫内温度上昇フラグが1でないときには(S204NO)、庫内温度は安定しているため、そのまま処理を終了させる。これに対して、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるときには(S204YES)、上限値設定テーブルに基づいて空気調和機の制御量を決定する制御量決定処理へ移行する(S205)。
【0123】
図13を参照して制御量決定処理(S205)を説明する。
【0124】
まず、制御量変更フラグが1であるか否かを判定する(S300)。すなわち、制御量変更フラグが1でないときには(S300NO)、風向きを水平に設定し、上限値設定テーブルの値に基づいて風量を最小に設定し、制御量決定処理を終了させる。これに対して、制御量変更フラグが1であるときには(S300YES)、カウンタの値を+1インクリメントする(S303)。続いて、カウンタの値が奇数であるかを判定する(S304)。
【0125】
すなわち、カウンタの値が奇数であるときには(S304YES)、風量についての制御量を決定する処理を行う。具体的には、上限値設定テーブルの値に基づいて風量は上限値であるかを判定し(S305)、風量は上限値であるときには(S305YES)、そのまま制御量決定処理を終了させる。これに対して、風量は上限値でないときには(S305NO)、風量を1段階上に設定し、制御量決定処理を終了させる。
【0126】
一方、カウンタの値が奇数でないときには(S304NO)、風向きについての制御量を決定する処理を行う。具体的には、上限値設定テーブルの値に基づいて風向きは上限値であるかを判定し(S307)、風向きは上限値であるときには(S307YES)、そのまま制御量決定処理を終了させる。これに対して、風向きは上限値でないときには(S307NO)、風向きを1段階下に設定し、制御量決定処理を終了させる。
【0127】
なお、カウンタを利用することにより、初期値0から+1インクリメントした最初の段階では風量を制御し、その次には風向きを制御するようにし、それ以降は交互に制御量を決定するようにしている。これにより、ショーケース2に影響を与える要素がより大きい風向きの制御を後で実行することができる。
【0128】
次に、
図12に戻り、制御量決定処理(S205)の後の処理について説明する。
【0129】
まず、各種アクチュエータを駆動することにより、決定した制御量に基づいて空気調和機を制御する(S206)。続いて、変更させた制御量の効果を確認するために、店舗の空気温度を取得し(S207)、空気調和機の設定温度と空気温度との差の絶対値を計算し、計算結果を第2の所定値と比較することにより、空気調和機によるショーケースに与えた効果を確認する(S208、209)。付言すれば、S208及びS209の処理で判断できるのは、ショーケース2周囲の温度環境である。すなわち、空気調和機本来の役割の状態である。具体的には、ショーケース2のことを考慮せずに室内の温度を設定通りに冷やせているか否かを判断する処理である。そのため、本来であれば、ショーケース庫内が安定しているか否かはS102〜S104に基づいて判断することが好ましい。ただし、ここでの処理の流れとしては、ショーケース2の庫内状況が悪化する方向で進んでいる。そのために、敢えてS102〜S104の処理を組み込む必要がないものであり、最初にS209でYESとなったときの制御条件が最良条件である。
【0130】
続いて、第2の所定値以下であるときには(S209YES)、ショーケース庫内温度上昇フラグを0に設定し(S210)、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるかを判定させ(S204)、ショーケース庫内温度上昇フラグが1ではないので(S204NO)、空気調和機制御処理(S106)を終了させる。これに対して、第2の所定値以下でないときには(S209NO)、さらに、上限値設定テーブルに基づいて制御量は上限値であるか否かを判定させる(S211)。
【0131】
すなわち、制御量は上限値であるときには(S211YES)、これ以上制御量を上げることができないため、ショーケース庫内温度上昇フラグを0に設定した後(S210)、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるかを判定させ(S204)、ショーケース庫内温度上昇フラグが0であるため(S204NO)、空気調和機制御処理(S106)を終了させる。これに対して、制御量は上限値でないときには(S211NO)、制御量変更フラグを1に設定させてから、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるかを判定させ(S204)、ショーケース庫内温度上昇フラグが1のままであるため(S204YES)、再び、制御量決定処理(S205)へ移行する。このように制御量フラグを利用することにより、最初の制御量決定時には、最小の風量と水平の風向きが制御量として選択され、それ以降では順次上限値設定テーブルの範囲内で上限値に近づくように段階的に制御量を決定させるようにすることが可能となる。
【0132】
次に、上限値を設定するときの処理を
図14〜18を用いて説明する。
【0133】
すなわち、
図14は、本発明の実施の形態1における上限値設定処理の詳細を示すフローチャートであり、
図15は、本発明の実施の形態1における空気調和機上限値設定処理の詳細を示すフローチャートであり、
図16は、本発明の実施の形態1における安定確認処理の詳細を示すフローチャートであり、
図17は、本発明の実施の形態1における上限値試行処理の詳細を示すフローチャートであり、
図18は、本発明の実施の形態1における風量風速格納処理の詳細を示すフローチャートである。なお、ここでの処理は、例えば、空気調和機が制御の主体となっている場合を想定している。また、複数の空気調和機において、同一タイミングで再設定トリガがかかったときのことを想定している。
【0134】
まず、上限値設定指令があるか否かを判定する(S400)。すなわち、上限値設定指令がないときには(S400NO)、上限値設定指令があるまで待機する(S400)。これに対して、上限値設定指令があるときには(S400YES)、
図7に示されるショーケース−空気調和機対応テーブル(以下、機器番号対応テーブルと称する)のデータを取得する(S401)、続いて、空気調和機番号を初期化した後に(S402)、空気調和機番号に対応するショーケースデータを取得する(S403)。具体的には、機器番号対応テーブルの中から、該当する上限値設定に必要な空気調和機の機器番号を空気調和機番号に設定し、同時に対応するショーケースの機器番号を取得する。続いて、空気調和機上限値設定処理(S404)へ移行する。
【0135】
図15を参照して空気調和機上限値設定処理(S404)を説明する。
【0136】
まず、安定確認処理へ移行させる(S500)。すなわち、
図16に示される安定確認処理へ移行する。
【0137】
具体的には、ショーケースデータをショーケース番号に基づいて昇順に並べる(S600)。次に、昇順に並べた先頭のショーケース番号を一次ショーケース番号に設定する(S601)。続いて、一次ショーケース番号に該当するショーケースを選択し(S602)、選択したショーケース庫内温度を取得する(S603)。次に、所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過していないときには(S605NO)、再びショーケース庫内温度を取得し庫内温度を格納する処理を実行する(S603、604)。これに対して、所定時間経過したときには(S605YES)、格納したショーケース庫内温度のばらつき度合いを算出する(S606)。このように所定時間の間、ショーケース庫内温度を取得し続けることにより、その間のショーケース庫内温度の時系列データを作成することができる。そして、これを利用することにより、ある一定期間、ショーケース庫内温度が安定していたか否かを判定することができる。
【0138】
なお、所定時間とは特に限定されるものではなく、適宜変更が可能であり、ショーケース庫内温度のばらつき度合いの算出方法についても一般的に当業者に知られている手法で算出すればよいので、ここではその詳細については省略する。
【0139】
次に、算出されたばらつき度合いが小さいか否かを判定する(S607)。すなわち、ばらつき度合いが小さくない、すなわち、大きいときには(S607NO)、ばらつき度合いフラグを1に設定し、安定確認処理(S500)を終了させ、
図15に示される空気調和機上限値設定処理に戻り、安定確認処理(S500)以降の処理が実行される。これに対して、ばらつき度合いが小さいときには(S607YES)、一次ショーケース番号をインクリメントし(S608)、該当ショーケース2があるか否かを判定し(S609)、該当ショーケースがないときには(S609NO)、ばらつき度合いフラグを0に設定した後に、安定確認処理(S500)を終了させ、
図15に示される空気調和機上限値設定処理に戻り、安定確認処理(S500)以降の処理が実行される。これに対して、該当ショーケース2があるときには(S609YES)、所定時間ショーケース庫内温度を取得する処理を繰り返した後(S603〜605)、ばらつき度合いを算出し、該当ショーケース2がなくなるまで、上記の処理を繰り返す(S606〜609)。そして該当するショーケース2がなくなったら(S609NO)、ばらつき度合いフラグを0に設定して安定確認処理(S500)を終了させる。
【0140】
このことにより、上限値を設定しようとする空気調和用室内機4が影響を与える全てのショーケース2の庫内温度の状態が安定しているかを確認することができる。
【0141】
次に、
図15に示される空気調和機上限値設定処理に戻り、安定確認処理(S500)以降の処理について説明する。
【0142】
すなわち、ばらつき度合いフラグが1であるかの判定をする(S501)。ばらつき度合いフラグが1であるときには(S501YES)、ショーケースの庫内温度は安定していないため、上限値設定の処理を正確にすることはできないので、空気調和機上限値設定処理(S404)を終了させ、
図14に戻り、空気調和機番号をインクリメントし(S405)、該当する空気調和機が他にあれば(S406YES)、その空気調和機に対するショーケースとの上限値を決める処理を上記のように繰り返す(S403〜406)。これに対して、該当する空気調和機がないときには(S406NO)、上限値設定処理を終了させる。
【0143】
次に、
図15に戻り、ばらつき度合いフラグが1でないときの処理について説明する。
【0144】
すなわち、ばらつき度合いフラグが1でないときには(S501NO)、ショーケース庫内目標温度を取得し(S502)、空気温度を取得し(S503)、空気温度とショーケース庫内目標温度の差の絶対値を算出し(S504)、算出結果が第3の所定値以上であるか否かを判定する(S505)。なお、ここでいう第3の所定値とは、例えば5(℃)であり、店舗内の空気温度がショーケース庫内目標温度よりもその分だけ高いことを意味する。このような条件を設けることにより、ある程度の温度差がある場合に空気調和機をどの程度まで稼働させることができるかの上限値を正確に設定することができる。具体的には、第3の所定値の判定を設けることにより、空気温度とショーケース庫内温度差が小さいときには上限値試行処理をさせないようにしている。その理由は、この状態で庫内温度が上昇しているときには、上限値を設定できる環境下ではないためである。そのため、上限値試行処理へ移行させないようにしている。
【0145】
すなわち、第3の所定値以上であるときには(S505YES)、上限値試行処理へ移行させ(S506)、第3の所定値以上でないときには(S505NO)、そのまま空気調和機上限値設定処理(S404)を終了させ、
図14に戻り、別の空気調和機がある間は、
図15に示される空気調和機上限値設定処理を繰り返す(S403〜406)。
【0146】
次に、
図17を用いて上限値試行処理について説明する。
【0147】
まず、空気調和機番号に対応する空気調和機を選択し(S700)、次に、風向きを水平方向から最も離れた下向きに設定し(S701)、風量風速格納処理へ移行する(S702)。
【0148】
風量風速格納処理(S702)は、
図18に示されるように、まず、風量を最小に設定した後(S800)、各種アクチュエータを駆動させ、空気調和機を制御する(S801)。つまり、風向きは下向きで、かつ風量が最小の状態で空気調和機を駆動させる。
【0149】
次に、一次ショーケース番号に該当するショーケースを選択し(S802)、同一風量継続時間が経過したか否かを判定する(S803)。同一風量継続時間が経過していないときには(S803NO)、経過するまでその状態で空気調和機を駆動させ続ける。一方、同一風量継続弛緩が経過したときには(S803YES)、庫内温度を確認する処理へ以降する(S804〜807)。このようにすることで、この場合においては、下向きの風向きで最小風量では庫内温度が上昇したかの判定処理が後述するようになされるのである。
【0150】
次に、選択したショーケース庫内温度を取得し(S804)、S502で取得して格納済みの庫内温度の中から現在のショーケース番号の庫内温度データを取得し(S805)、両者の庫内温度を比較する(S806)。このとき、上昇していないときには(S807NO)、風量を1段階上に設定し、再びS803に戻り、その風量で庫内温度が上昇するか否かを判定し、上限値を試行する(S803〜807)。これに対して、上昇したときには(S807YES)、上昇前の風量と風向きを格納する(S809、810)。つまり、上限値データを格納するのである。続いて、一次ショーケース番号をデクリメントし、該当するショーケースがあるときには(S812YES)、S802に戻り、以上の処理を繰り返す。これに対して、該当するショーケースがないときには(S812NO)、風量風速格納処理(S702)を終了させ、
図17に戻り、風量風速格納処理(S702)以降の処理を実行する。
【0151】
次に、全ての風向きを試行済みか否かを判定する(S703)。すなわち、全ての風向きを試行済みでないときには(S703NO)、風向きを1段階上向きに設定した後(S704)、風量風速格納処理(S702)に戻り、上記の処理を繰り返す(S702、703)。これに対して、全ての風向きを試行済みであるときには(S703YES)、格納した風量の中から最大風量を検索し(S705)、検索した最大風量に該当する風向きを検索し(S706)、検索結果を取得する(S707)。続いて、検索結果の最大風量が複数あるか否かを判定する。すなわち、検索結果の最大風量が複数ないときには(S708NO)、検索結果を風量上限値と風向き上限値として格納し(S709)、上限値試行処理(S506)を終了させ、空気調和機上限値設定処理(S404)を終了させ、
図14の上限値設定処理に戻って、他に該当する空気調和機がある間は上記の処理を繰り返す(S403〜406)。これに対して、検索結果の最大風量が複数あるときには(S708YES)、検索結果の風量を風量上限値として格納した後(S710)、複数の検索結果の中から最も水平に近い風向きを風向き上限値として格納し(S711)、上限値試行処理(S506)を終了させ、空気調和機上限値設定処理(S404)を終了させ、
図14の上限値設定処理に戻って、他に該当する空気調和機がある間は上記の処理を繰り返す(S403〜406)。
【0152】
このようにすることで、なるべくショーケース2に影響を与える可能性のある下向きかそれに近い角度の風向きを避け、影響の少ない水平に近い風向きが選択されることになる。その結果、空気調和機によるショーケース2の庫内温度の上昇を避けつつも、ショーケースの環境を改善できる上限値を設定できるのである。
【0153】
このように
図14〜18に示されるような、上限値設定処理、空気調和機上限値設定処理、安定確認処理、上限値試行処理、風量風速格納処理を順次呼び出して繰り返すことにより、
図10に示されるような上限値設定テーブルに値が設定され、これがすなわち空気調和機の制約条件となる上限値となるのである。この上限値設定テーブルを利用すれば、他の機器、例えば、ショーケースの影響を考慮した空気調和システムを実現できる。
【0154】
実施の形態2.
実施の形態1では営業時間外に予め求めておいた上限値に基づいた空気調和システムであったが、実施の形態2では、営業時間中に動的に上限値を変更させる例について
図19〜21を用いて説明する。
【0155】
図19は、本発明の実施の形態2におけるショーケース庫内温度が上昇した場合の処理の詳細を示すフローチャートであり、
図20は、本発明の実施の形態2における空気調和機風向き改善処理の詳細を示すフローチャートであり、
図21は、本発明の実施の形態2における空気調和機風量改善処理の詳細を示すフローチャートである。
【0156】
ここで
図19に示されるフローチャートのうち、S900〜905においては符号は異なるものの、
図11のS100〜105と同様の処理であるため、その説明については省略する。すなわち、実施の形態1との具体的な相違点は、空気調和機風向き改善処理(S907)と空気調和機風量改善処理(S909)であり、その処理の判定に風向き改善フラグと風量改善フラグを用いている点である。
【0157】
まず、風向き改善フラグが1であるか否かの判定がなされる(S906)。すなわち、風向き改善フラグが1でないときには(S906NO)、空気調和機風向き改善処理(S907)に移行する。それに対して、風向き改善フラグが1であるときには(S906YES)、続いて、風量改善フラグが1であるか否かの判定がなされる(S908)。すなわち、風量改善フラグが1であるときには(S908YES)、そのまま処理を終了させ、風量改善フラグが1でないときには(S908NO)、空気調和機風量改善処理(S909)に移行する。
【0158】
続いて、空気調和機風向き改善処理(S907)について
図20を用いて説明する。
【0159】
まず、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるか否かの判定がなされる(S1000)。すなわち、ショーケース庫内温度上昇フラグが1でないときには(S1000NO)、空気調和機風向き改善処理(S907)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。これに対して、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるときには(S1000YES)、風向き改善カウンタが風向き改善最大値より大きいか否かの判定がなされる。すなわち、風向き改善カウンタが風向き改善最大値より大きいときには(S1001YES)、風向きを改善する選択肢が残っていないため、風向き改善済みであることを示す風向き改善フラグを1に設定し(S1005)、空気調和機風向き改善処理(S907)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。これに対して、風向き改善カウンタが風向き改善最大値以下であるときには(S1001NO)、風向きを1段階変更し(S1002)、各種アクチュエータを駆動させることにより、変更後の制御量にて空気調和機を駆動させ(S1003)、風向き改善カウンタをインクリメントし(S1004)、空気調和機風向き改善処理(S907)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。
【0160】
次に、空気調和機風量改善処理(S909)について
図21を用いて説明する。
【0161】
まず、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるか否かの判定がなされる(S1100)。すなわち、ショーケース庫内温度上昇フラグが1でないときには(S1100NO)、空気調和機風量改善処理(S909)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。これに対して、ショーケース庫内温度上昇フラグが1であるときには(S1100YES)、風量は最小であるかの判定がなされる(S1101)。すなわち、風量が最小であるときには(S1101YES)、これ以上の風量改善選択肢はないため、風量改善済みであることを示す風量改善フラグを1に設定し(S1005)、空気調和機風量改善処理(S907)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。これに対して、風量は最小でないときには(S1101NO)、風量を1段階低減し(S1102)、各種アクチュエータを駆動させることにより、変更後の制御量にて空気調和機を駆動させ(S1103)、空気調和機風量改善処理(S909)を終了させ、
図19のS901に戻り、S901〜S906の処理が繰り返される。
【0162】
このようにすることにより、POP等を入れ替えたことが原因で営業時間中に上限値が適合しなくなったとしても動的に増減値を変更できるので省エネを図ることができる。
【0163】
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0164】
実施の形態3.
次に、ショーケース庫内温度が上昇した場合に外部への報知する処理について
図22及び23を用いて説明する。
【0165】
図22は、本発明の実施の形態3におけるショーケース庫内温度が上昇した場合の処理の詳細を示すフローチャートであり、
図23は、本発明の実施の形態3におけるショーケース庫内温度が上昇した場合の処理結果を概略的に示す図である。
【0166】
ここでの実施の形態1との相違点は外部へ報知する点である。すなわち、符号は異なっているものの、S100〜S104とS1200〜S1204は同一の処理であるため、説明は省略する。
【0167】
すなわち、S1205において、外部にショーケースの状況を報知する。この報知手段としては、例えば、システムコントローラ50の図示しない表示画面に、例えば、
図23に示されるように報知させてもよい。
図23に示されるように、機器番号1のショーケースが庫内温度が異常に高くなったときには、「高温異常」や「異常モニタ」という文字をbold体で、かつ他より大きなフォントで示されるようにしてもよい。このとき同時に日付と時刻とを表示させておくことで、原因追及に役立てる情報を提供させるようにしてもよい。
【0168】
もちろん報知方法はこれに限定されるものではなく、人が認識できるあらゆる形態が可能であることは言うまでもないことである。
【0169】
なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1または2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0170】
実施の形態4.
次に、上限値の設定を手動か自動かのいずれかに切り替える処理について
図24〜26を用いて説明する。
【0171】
図24は、本発明の実施の形態4における上限値の再設定を自動か手動かのいずれかに切り替える処理の詳細を示すフローチャートであり、
図25は、本発明の実施の形態4における上限値の再設定を自動か手動かのいずれかに切り替える場合の第1の選択画面を概略的に示す図であり、
図26は、本発明の実施の形態4における上限値の再設定を自動か手動かのいずれかに切り替える場合の第2の選択画面を概略的に示す図である。
【0172】
まず、再設定開始トリガモードが到来したか否かの判定がなされる(S1300)。すなわち、再設定開始トリガモードが自動であったときには(S1300自動)、再設定待機時間経過後(S1301YES)に、
図14に示される上限値設定処理に移行する。また、再設定待機時間が経過していないときには(S1301NO)、時間が経過するまで待機する。これに対して、再設定開始トリガモードが手動であったときには(S1300手動)、再設定指令があるか否かを判定させ(S1304)、再設定指令がなかったときには(S1304NO)、設定処理が終了かを判定し(S1303)、終了であれば(S1303YES)、そのまま処理は終了する。一方、終了でなければ(S1303NO)、以上説明したS1300〜S1302の処理を繰り返す。
【0173】
ここで選択画面表示例について
図25及び26を用いて説明する。
【0174】
図25に示されるように手動操作に切り替えるか否かの選択画面が表示されている。このとき、「3.手動操作」が選択されたときには(
図24のS1300手動)、
図26に示される画面に移行し、上限値を再設定するか否かの選択画面が表示される。このとき、「開始」が選択されたときには(
図24のS1304YES)、上限値設定処理に移行する。
【0175】
このようにすることで、手動か自動かを切り替えることができる。
【0176】
なお、本実施の形態4において、特に記述しない項目については実施の形態1〜3のいずれかと同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0177】
実施の形態5.
次に、ショーケース庫内温度上昇時に、空気調和機を制御させた後に、再度ショーケース庫内温度を確認する処理について
図27及び28を用いて説明する。
【0178】
図27は、本発明の実施の形態5におけるショーケース庫内温度が上昇した場合の処理の詳細を示すフローチャートであり、
図28は、本発明の実施の形態5における空気調和機制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【0179】
ここでは、実施の形態1との相違点は再度ショーケース庫内温度を確認する点である。そのため、符号は異なるものの、S100〜105、S200〜210、S211、及びS212はS1400〜1405、S1500〜1510、S1512、及びS1513については同様の処理であるため、説明は省略する。
【0180】
まず、S1406において空気調和機制御処理に移行する。続いて、所定の処理を実行後、S1511で空気調和機制御処理終了フラグを1に設定したのち、所定の判定後に
図27のS1401〜1404の処理がなされ、S1407で空気調和機制御処理終了フラグの判定により、処理が繰り返されるか終了するかが判定される。つまり、このときには、もう一度ショーケース庫内温度を確認したことになり、第1の所定値を超えていない(S1404NO)ので、庫内温度は安定状態になったということが直接確認できる。
【0181】
なお、本実施の形態5において、特に記述しない項目については実施の形態1〜4のいずれかと同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0182】
以上のように本実施の形態の空気調和システムは、空気調和機に制約条件を設けることにより、店舗内の他の機器に対する影響を考慮することができるという効果を有する。従って、省エネを図ることができるのである。