【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の椅子の場合、ボールは、ボールの最大外径部分よりも細くくびれた部分(以下、ネック部分と称する。)の先端に設けられているので、そのネック部分が過剰に細くなると、ネック部分の機械的強度が不足し、座体に過大な荷重がかかった際にネック部分が破損しやすくなる、という問題があった。
【0006】
特に、ボールがホルダから確実に抜け出ないようにするためには、ネック部分が通されるホルダの開口を、ボールの最大外径部分よりも十分に小径とせざるを得ず、しかも、そのように小径とされる開口内においてネック部分の傾きを変更可能とするには、ネック部分の外径を、ホルダの開口径よりもさらに小径とせざるを得ない。そのため、ボールの小径化を図ろうとすると、どうしてもネック部分が過剰に細くなりやすく、ネック部分の強度不足に陥りやすい、という問題があった。
【0007】
このような問題そのものは、ネック部分の外径を十分に太くするなどの対策により、ネック部分の強度を十分に向上させれば解消されるが、上述のような事情から、ネック部分の外径を太くすればホルダの開口径はさらに大径にせざるを得ず、しかも、ホルダの開口径が大径化すればボールの最大外径についてもホルダの開口径より大径にせざるを得ない。
【0008】
したがって、ネック部分の外径を十分に太くしたことが原因で、ボールの大径化及びホルダの大型化を招くことになり、これらボール及びホルダを含む座体支持機構全体が大型化してしまう、という問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、座体を支持体間に支持する際に、座体と支持体との間に介装されて、前記座体を使用位置及び収納位置へ変位可能な構造とするとともに、座体を支持体に取り付ける際には座体が支持体に対してある程度傾くことも許容する座体支持機構であって、従来品よりも容易に強度を確保可能で、よりコンパクトな構造とすることも可能な座体支持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の座体支持機構は、着座可能となる使用位置、及び背もたれ側に跳ね上げられた状態となる収納位置へ回動する座体と、当該座体を回動可能な状態で支持する支持体とを備えた座跳ね上げ式の椅子において、前記座体を前記支持体に対して回動可能に取り付けるために、前記座体と前記支持体との間に介装される座体支持機構であり、前記座体又は当該座体に固定された部材のいずれかである座体側部材、及び前記支持体又は当該支持体に固定された部材のいずれかである支持体側部材のうち、いずれか一方の部材に設けられる軸部材と、他方の部材に設けられる軸受け部材とを備えており、前記軸部材及び前記軸受け部材は、前記軸部材側に形成された摺接凸面と前記軸受け部材側に形成された摺接凹面が互いに摺動可能な状態で接触し、前記摺接凸面及び前記摺接凹面が摺動する状態を維持したまま、前記軸部材が一軸を中心に前記軸受け部材に対して相対的に回動する構造とされ、しかも、前記摺接凸面及び前記摺接凹面が摺動する状態を維持したまま、前記軸受け部材に対する前記一軸の傾きを
所定範囲の範囲内において変更可能
、かつ前記軸部材及び前記軸受け部材が互いの一部を当接させることにより前記傾きを前記所定範囲の範囲外へは変更不能な構造とされた座体支持機構であって、前記軸部材のうち、前記摺接凸面及び前記摺接凹面が接触する位置よりも前記他方の部材に近い位置にある部分には、前記軸受け部材側に引っ掛かることによって前記軸部材が前記軸受け部材から離間するのを防止する離間防止部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された座体支持機構によれば、摺接凸面及び摺接凹面が接触する位置よりも他方の部材に近い位置にある部分に離間防止部が設けられていて、このような位置にある離間防止部が軸受け部材側に引っ掛かることにより、軸部材が軸受け部材から離間するのを防止している。
【0012】
そのため、最大内径よりも小径の開口を有するホルダでボールを半球分以上保持する構造とすることによって軸部材が軸受け部材から離間するのを防止していた従来技術(上記特許文献1参照。)とは異なり、本発明の座体支持機構であれば、摺接凹面及び摺接凸面の形状そのものを、軸部材が軸受け部材から離間するのを防止可能な形状にしなくても済む。すなわち、摺接凹面については、上記従来技術のホルダとは異なり、最大内径よりも小径の開口を有する形状とする必要はなく、また、そのような小径の開口に通すためにボールの外径よりも小径とされたネック部分を、軸部材側に設ける必要もない。
【0013】
したがって、上述のようなネック部分が必要となる従来技術とは異なり、ネック部分を設けたことに起因する強度不足を招くことがない。また、従来技術では、上述のようなネック部分の強度不足を回避するためにネック部分を大径化すると、それに伴ってボールの大型化やホルダの大型化を招くが、本発明の座体支持機構であれば、上述の通り、ネック部分を設けなくてもよいので、ネック部分の強度不足対策は不要であり、そのような対策に伴う座体支持機構各部の大型化も招かないので、座体支持機構全体の構造をよりコンパクトな構造にすることができる。
【0014】
なお、以上説明した座体支持機構において、軸部材や軸受け部材は、座体側部材又は支持体側部材から取り外しができるものであってもよいし、あるいは、取り外しができないものであってもよい。
【0015】
取り外しができるものとしては、例えば、軸部材及び軸受け部材それぞれが、座体側部材や支持体側部材に対してねじ等の螺号部材でねじ止めされているものなどを挙げることができる。また、取り外しができないものとしては、例えば、軸部材や軸受け部材が座体側部材又は支持体側部材に溶接されたものや、座体側部材又は支持体側部材の成形時に軸部材や軸受け部材が金型で一体成形されたものなどを挙げることができる。
【0016】
請求項2に記載の座体支持機構は、請求項1に記載の座体支持機構において、前記軸部材は、軸部材本体と、前記摺接凸面が形成された摺接部材とを備え、前記摺接部材が前記軸部材本体に対して着脱可能な状態で取り付けられた構造とされていることを特徴とする。
【0017】
この座体支持機構において、摺接部材は、摺接凹面に対して摺動する部材なので、摺動性が高く、且つ耐摩耗性にも優れた材料(例えば、エンジニアリングプラスチックなど)で形成されていると好ましい。
【0018】
このような座体支持機構によれば、摺接部材が、摺動に伴って摩耗した場合には、摺接部材のみを取り外して交換することが可能になる。したがって、軸部材全体を交換せざるを得ない構造を採用している場合と比較して、消耗品の交換にかかるコストを抑制することができる。
【0019】
また、本発明の座体支持機構において、離間防止部の具体的構造については様々なものを考え得るが、一例としては、例えば請求項3に記載の座体支持機構のように、前記軸部材は、前記摺接凸面及び前記摺接凹面が接触する位置よりも前記他方の部材に近い位置にある部分が、前記軸受け部材を貫通する貫通孔に通されており、前記離間防止部は、前記貫通孔を挟んで前記摺接凸面とは反対側となる位置において、前記軸受け部材側に引っ掛かる構造とされている、といったものを考え得る。
【0020】
このような座体支持機構であれば、上述のような貫通孔に通される部分に離間防止部が設けられ、その離間防止部が、貫通孔を挟んで摺接凸面とは反対側となる位置において軸受け部材側に引っ掛かるので、これにより、軸部材が軸受け部材から離間するのを防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の座体支持機構は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の座体支持機構において、前記軸部材には、前記一軸の軸方向と同方向に向かって突出する嵌合凸部、前記軸部材が取り付けられる前記一方の部材には、前記嵌合凸部が嵌め込まれる嵌合凹部が、それぞれ形成され、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌め込まれた状態で、前記軸部材が前記一方の部材に対して固定されていることを特徴とする。
【0022】
この座体支持機構においては、嵌合凸部が嵌合凹部に嵌め込まれた状態で、軸部材が一方の部材に対して固定される。そのため、座体に利用者が座ったときに軸部材と一方の部材との固定箇所にかかる荷重を、嵌合凸部でも受けることができ、軸部材と一方の部材とを固定するための部材(例えば、ねじなど)に負荷が集中するのを避けることができる。
【0023】
したがって、軸部材と一方の部材とを固定するための部材については、過剰に強度の高い部材を選定する必要がなくなるので、その分だけ製造コストを抑えることができる。
請求項5に記載の座体支持機構は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の座体支持機構において、前記軸受け部材は、前記軸部材側に向かって突出して、その突出方向先端部分が開口とされた環状部を有し、当該環状部の内周面が前記摺接凹面の一部とされており、前記軸部材には、前記軸受け部材側に向かって突出して、その突出方向先端部分が開口とされた筒状部を有し、当該筒状部に囲まれた位置に前記摺接凸面を有する部分が設けられており、前記摺接凸面は、一部が前記環状部の開口から前記環状部の内側に導入されて前記摺接凹面に接触する状態とされ、且つ、前記環状部の突出方向先端部分は、前記摺接凸面と前記筒状部の内周面との間に遊嵌する状態とされており、当該遊嵌する状態が維持される範囲内で、前記軸部材が、前記一軸を中心に前記軸受け部材に対して相対的に回動可能、且つ、前記軸受け部材に対する前記一軸の傾きを変更可能な構造とされていることを特徴とする。
【0024】
この座体支持機構においては、軸部材が一軸を中心に軸受け部材に対して相対的に回動したり、軸受け部材に対する一軸の傾きが変更されたりしても、環状部の突出方向先端部分が摺接凸面と筒状部の内周面との間に遊嵌する状態が維持される。そのため、軸部材の回動や傾き変更に伴って、軸部材の摺接凸面の一部が、外側から見える位置に露呈されることはない。
【0025】
したがって、このような座体支持機構によれば、利用者の手や衣類が摺接凸面に触れてしまうおそれがなく、摺接凸面に付着しているグリスなどで手や衣類が汚れるのを防ぐことができる。
【0026】
さらに、請求項6に記載の座体支持機構は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の座体支持機構において、前記軸部材及び前記軸受け部材には、前記軸部材が前記一軸を中心に前記軸受け部材に対して相対的に回動した際に、互いに当接することにより、前記軸部材の回動する範囲を規制するストッパ部及びストッパ受け部が設けられており前記座体を前記使用位置又は前記収納位置へと回動させた際に、前記ストッパ部及びストッパ受け部が互いに当接することを特徴とする。
【0027】
このような座体支持機構によれば、上述のようなストッパ部及びストッパ受け部を備えているので、この座体支持機構とは別の回動規制手段を設けなくても、この座体支持機構を設けるだけで、座体の回動する範囲を使用位置から収納位置までの範囲内に規制することができる。
【0028】
なお、この座体支持機構において、ストッパ部は、例えば、軸部材に対して溶接されたもの、接着されたもの、一体成形されたもの、いずれであってもよい。これらはいずれも軸部材から取り外すことができないものであるが、必要があれば、ストッパ部は、軸部材から取り外し可能な構造になっていてもよく、例えば、ストッパ部がねじなどで軸部材に対して固定されていてもよい。
【0029】
さらに、請求項7に記載の座体支持機構は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の座体支持機構において、前記座体を前記収納位置から前記使用位置に回動させた際に、弾性変形するとともに、その弾性変形に伴って生じる弾性力により、前記座体を前記使用位置から前記収納位置へ回動させる方向へと付勢する弾性部材を備えることを特徴とする。
【0030】
この座体支持機構によれば、上述のような弾性部材を備えているので、利用者が立ち上がって座体に荷重がかからなくなれば、弾性部材の弾性力を利用して使用位置にある座体が収納位置まで戻される。したがって、利用者が手作業で座体を収納位置まで戻すような面倒な作業を行わなくても、座体を収納位置へ戻すことができる。