特許第5773806号(P5773806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5773806-スラスト軸受 図000002
  • 特許5773806-スラスト軸受 図000003
  • 特許5773806-スラスト軸受 図000004
  • 特許5773806-スラスト軸受 図000005
  • 特許5773806-スラスト軸受 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773806
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】スラスト軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/06 20060101AFI20150813BHJP
   F16C 21/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   F16C17/06
   F16C21/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-187594(P2011-187594)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50144(P2013-50144A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】貝漕 高明
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆
(72)【発明者】
【氏名】脇 勇一朗
(72)【発明者】
【氏名】金澤 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲平
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5879085(US,A)
【文献】 特開平10−246224(JP,A)
【文献】 特表昭55−501106(JP,A)
【文献】 特公昭44−28802(JP,B1)
【文献】 実公昭41−6325(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
21/00
23/04
25/02
33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラストカラーを軸線方向一方側から支持し、周方向に複数が併設された軸受パッドと、
前記軸受パッドを軸線方向一方側から支持し、周方向に複数が併設された複数の上レベラと、
これら上レベラの間にそれぞれ配置されて周方向に隣接する一対の上レベラに軸線方向一方側から接触する下レベラとを有するスラスト軸受において、
前記下レベラが径方向に延在する下レベラ回転支持軸回りに、回転可能にハウジングに接続されており、前記上レベラが径方向に延在する上レベラ回転支持軸回りに、回転可能にハウジングに接続されており、
前記上レベラ及び前記下レベラの回転中心と、前記下レベラと前記上レベラとの接触点とは一直線上に並ぶように配置され、前記上レベラ及び前記下レベラの回転中心は、この回転中心を挟んで周方向両側に位置する前記接触点同士を結んだ線分の中央に位置していることを特徴とするスラスト軸受。
【請求項2】
前記下レベラ回転支持軸は、転がり軸受を介して前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受。
【請求項3】
記上レベラ回転支持軸は、前記ハウジングに設けられた長穴によって、該ハウジングに対して前記軸線方向に相対移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト軸受。
【請求項4】
前記下レベラと前記上レベラとの接触点において、前記下レベラと前記上レベラとのうちの少なくとも一方に支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
【請求項5】
前記支持部材は、回転自在に固定されるボール部材であることを特徴とする請求項4に記載のスラスト軸受。
【請求項6】
前記支持部材は、径方向に延在する軸線回りに回転可能に固定されるローラ部材であることを特徴とする請求項4に記載のスラスト軸受。
【請求項7】
前記支持部材は、前記下レベラ及び前記上レベラよりも高硬度の材料よりなることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
【請求項8】
前記支持部材は、摩擦係数を低減するコーティングが施されていることを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン、遠心圧縮機、ポンプ等に用いられるスラスト軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蒸気タービン、ガスタービン、原子力タービン等の大型回転機械には、回転軸を軸方向に支持する軸受装置として、スラスト軸受が知られている。このスラスト軸受においては、スラストカラーを介して回転軸からの荷重を受ける軸受パッド(ティルティングパッド)が軸心回転方向に複数配置されている。そして、この軸受パッドの背面にはレベラ(レベリングプレート)と呼ばれる組み物が軸心回転対称に複数設置され、各軸受パッドの周方向の高低差を低減し、各軸受パッドの受ける荷重の均一化を行ない、スラスト軸受の焼損を防止している。
【0003】
このようなスラスト軸受は、例えば特許文献1に開示されており、ケース側レベラ(以下、下レベラ)とパッド側レベラ(以下、上レベラ)とからなるレベリング機構によって各軸受パッドの周方向の高低差を低減している。具体的には、周方向の他の軸受パッドよりも高さが高くなり、荷重過多となっている一つの軸受パッドからの荷重を上レベラが受けた際には、この上レベラが押し込まれ、隣接する下レベラが傾斜する。これに伴って、周方向に下レベラと上レベラとが回転していき、上レベラと下レベラとが連動して各軸受パッドの周方向の高低差を低減し、荷重の均一化を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実案平5−20892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスラスト軸受においては各レベラの回転中心は固定されておらず、必ずしも一定位置とはならない。従って、一つの上レベラが軸受パッドからの荷重を受け、この上レベラに隣接する二つの下レベラに力が伝達される際には、これら二つの下レベラの回転中心について周方向のズレが発生し、一般にはレバー比が1:1とはならない。この結果、二つの下レベラから周方向に隣接する上レベラ及び下レベラへ次々と伝達される力が不均一となる。従って、各軸受パッドに作用する荷重の均一化を図ることができず、他に比べて軸受メタル温度の高いパッドが発生するという好ましくない問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、各軸受パッドの荷重の均一化を図り、性能向上を達成できるスラスト軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係るスラスト軸受は、スラストカラーを軸線方向一方側から支持し、周方向に複数が併設された軸受パッドと、前記軸受パッドを軸線方向一方側から支持し、周方向に複数が併設された複数の上レベラと、これら上レベラの間にそれぞれ配置されて周方向に隣接する一対の上レベラに軸線方向一方側から接触する下レベラとを有するスラスト軸受において、前記下レベラが径方向に延在する下レベラ回転支持軸回りに、回転可能にハウジングに接続されており、前記上レベラが径方向に延在する上レベラ回転支持軸回りに、回転可能にハウジングに接続されており、前記上レベラ及び前記下レベラの回転中心と、前記下レベラと前記上レベラとの接触点とは一直線上に並ぶように配置され、前記上レベラ及び前記下レベラの回転中心は、この回転中心を挟んで周方向両側に位置する前記接触点同士を結んだ線分の中央に位置していることを特徴とする。
【0008】
このようなスラスト軸受においては、下レベラが下レベラ回転支持軸によって回転可能に接続されることによって、隣接する上レベラが軸受パッドからの荷重を受けて押し下げられた際には、下レベラは下レベラ回転支持軸を中心に回転する。このように、下レベラは常にこの下レベラ回転支持軸を中心に回転することとなり、回転中心が移動することがない。また、下レベラ回転支持軸は、この下レベラに隣接する上レベラとの2つの接触点の中央に位置していることによって、下レベラの回転中心からこの接触点までの距離は常に同一とされる。従って、下レベラの回転中心からこれら両接触点までの距離、即ち、レバー比は、下レベラが回転した際にも常に1:1に保持され、隣接する上レベラ及び下レベラを介して周方向の他の軸受パッドへ伝達される力の均一化を達成できる。
さらに、一般に、上レベラと下レベラの重なり長さ、即ち、下レベラの回転中心と、上記接触点との間の軸線方向距離が小さくなる程、軸受パッド間の荷重の均一化の効果は大きくなることが確認されている。従って、本発明においては下レベラの回転中心と、上レベラとの接触点とが一直線に並んでいることによって、軸受パッド間の荷重の均一化を最大限図ることが可能となる。
【0009】
また、前記下レベラ回転支持軸は、転がり軸受を介して前記ハウジングに固定されていてもよい。
【0010】
転がり軸受によって、下レベラの回転の円滑化を図ることができ、より効率的に軸受パッド毎の受ける荷重の均一化を達成できる。
【0011】
さらに、前記上レベラ回転支持軸は、前記ハウジングに設けられた長穴によって、該ハウジングに対して前記軸線方向に相対移動可能に支持されていてもよい。



【0012】
このような上レベラ回転支持軸によって上レベラが支持されることによって、回転中心から上記接触点までの距離が常に同一となり、即ちレバー比が一定に保持される。従って、隣接する下レベラ及び上レベラを介して、周方向の各軸受パッドへ伝達される力の均一化を達成できる。また、回転軸が上記長穴内を軸線方向に移動することによって、軸受パッドから軸線方向に荷重を受けた際には、上レベラ全体が軸線方向に沈み込むことが可能となり、より確実に隣接する下レベラに力を伝達することができる。
【0013】
また、前記下レベラと前記上レベラとの接触点において、前記下レベラと前記上レベラとのうちの少なくとも一方に支持部材が設けられていてもよい。
【0014】
このような支持部材を介して上レベラと下レベラとが接触することによって、接触点における摩擦を低減することが可能となり、上レベラと下レベラとを円滑に回転させ、確実に軸受パッド間の荷重の均一化が達成可能となる。
【0015】
さらに、前記支持部材は、回転自在に固定されるボール部材であってもよい。
【0016】
このようなボール部材を用いることによって、接触点における摩擦抵抗をさらに低減でき、上レベラと下レベラとを円滑に回転させ、確実に軸受パッド間の荷重の均一化が達成可能となる。
【0017】
また、前記支持部材は、径方向に延在する軸線回りに回転可能に固定されるローラ部材であってもよい。
【0018】
このようなローラ部材を用いることによって、接触点における摩擦抵抗をさらに低減でき、上レベラと下レベラとを円滑に回転させ、確実に軸受パッド間の荷重の均一化が達成可能となる。
【0019】
さらに、前記支持部材は、前記下レベラ及び前記上レベラよりも高硬度の材料よりなっていてもよい。
【0020】
このように、支持部材に高硬度の材料を適用することによって支持部材の弾性変形を回避でき、摩擦係数を低減できる。従って、上レベラと下レベラとを円滑に回転させ、確実に軸受パッド間の荷重の均一化が達成可能となる。
【0021】
また、前記支持部材は、摩擦係数を低減するコーティングが施されていてもよい。
【0022】
コーティングによって支持部材の摩擦係数を低減でき、上レベラと下レベラとを円滑に回転させ、確実に軸受パッド間の荷重の均一化が達成可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスラスト軸受によれば、下レベラ回転支持軸によって下レベラの回転中心を固定でき、またこの回転中心と上記接触点とが直線上に位置していることによって、周方向の荷重の均一化を図り、軸受の性能向上を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係るスラスト軸受の要部を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るスラスト軸受の側面展開図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るスラスト軸受の上レベラ及び下レベラの断面図であって、(a)は図2のA−A断面、(b)は図2のB−B断面を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るスラスト軸受けの下レベラの斜視図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受けの下レベラの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態に係るスラスト軸受1について説明する。
スラスト軸受1は、ガスタービン等の大型回転機械のロータを軸方向から支持する軸受装置である。そして、スラスト軸受1内においては給油装置から潤滑油が供給され、100μm程度の厚さの潤滑油膜によって非接触でロータの支持を行なうものである。
【0026】
スラスト軸受1は、スラストカラー11と、スラストカラー11を軸線P方向一方側から支持する軸受パッド12と、軸受パッド12をさらに軸線P方向一方側から支持するレベラ機構13とを有しており、これらの構成部品がハウジング23の中に収容されている。
【0027】
スラストカラー11は、図1に示すように円盤状をなす部材であり、図示しないロータに対して同軸かつ一体に固定されている。
【0028】
軸受パッド12は、扇形平板状をなす表面にホワイトメタルなどの合金が鋳込まれた部材であり、周方向に複数が軸線Pの軸心対称に配設されてスラストカラー11を軸線P方向一方側から支持するものである。また、この軸受パッド12とスラストカラー11との間には回転軸の回転の際に、図示しない給油装置により供給される潤滑油によって油膜が形成されることで、非接触でスラストカラー11を支持するように構成されている。
【0029】
次に、レベラ機構13について説明する。
レベラ機構13は、図1及び図2に示すように、周方向に複数の上レベラ21と複数の下レベラ22とが組み合わされて、各上レベラ21と下レベラ22とが軸線Pの軸心対称に配設されるものであり、各軸受パッド12の軸線P方向一方側には各上レベラ21が対向接触して配置されることによって、軸受パッド12を軸線P方向一方側から支持するように構成されている。
【0030】
そして、これら上レベラ21と下レベラ22とは、各下レベラ22が軸線P方向一方側から各上レベラ21に接触点28において当接するように、上レベラ21の間の位置に下レベラ22が配置され、上レベラ21と下レベラ22とが周方向に交互に並んでいる。
【0031】
上レベラ21は、スラスト軸受1の径方向から見て略扇形状をなす金属部材であって、図3に示すように、ハウジング23に径方向に延在して設けられる上レベラ回転支持軸24によって、ニードル軸受27を介して上レベラ回転支持軸24回りに回転可能に固定されている。また、ハウジング23において上レベラ回転支持軸24の設置部分は軸線P方向を長手方向とする長穴26となっており、この長穴26によって上レベラ回転支持軸24が該長穴26の形成範囲内において軸線P方向に移動可能に支持されている。
【0032】
下レベラ22は、上レベラ21同様にスラスト軸受1の径方向から見て略扇形状をなす金属部材であって、ハウジング23に径方向に延在して設けられる下レベラ回転支持軸25によって、ニードル軸受27を介して下レベラ回転支持軸25回りに回転可能に接続されている。
【0033】
また、上レベラ21及び下レベラ22の回転中心と接触点28とは一直線上に並ぶように配置され、さらに、上レベラ21及び下レベラ22の回転中心は、この回転中心を挟んでスラスト軸受1の周方向両側に位置する接触点28同士を結んだ線分の中央に位置している。
【0034】
そして、上レベラ21と下レベラ22との上記接触点28においては、下レベラ22にボール部材(支持部材)31が設けられており、抜け止めフタ32によって全軸線回りに自在に回転可能に固定されている。
【0035】
このようなスラスト軸受1においては、各軸受パッド12の加工寸法公差等によって発生する周方向各々の軸受パッド12の厚さの差異、及び、ロータのたわみによって、各軸受パッド12がロータから受ける荷重について周方向に差異が生じる。この際、荷重過多となっている軸受パッド12が軸線P方向一方側から一方側に向かって押し込まれる。この押し込みによって上レベラ21も押し込まれ、この上レベラ21の両隣に隣接する下レベラ22の接触点28に軸線P方向一方側へ力が作用して、下レベラ22を下レベラ回転支持軸25回りに回転させる。
【0036】
具体的には、荷重を受けた上レベラ21の、図2の紙面に向かって右側に隣接する下レベラ22は反時計回りに回転し、この回転した下レベラ22の紙面に向かって右側に隣接する上レベラ21は時計回りに回転する。これによって上記の紙面に向かって右側に隣接する上レベラ21が、この上レベラ21に対向して設けられる軸受パッド12を持ち上げる。さらに、この上レベラ21の紙面右側に位置する下レベラ22、上レベラ21が次々に回転される。
【0037】
また、上記荷重を受けた上レベラ21の図2の紙面に向かって左側に隣接する下レベラ22は時計回りに、さらに、この回転した下レベラ22の紙面に向かって左側に隣接する上レベラ21は、反時計回りに、というように下レベラ22、上レベラ21が次々と回転される。
【0038】
このようにして、最初に押し下げられた軸受パッド12の荷重が周方向に伝達していき、軸受パッド12の高さを周方向に均一化し、軸受パッド12の受ける荷重を周方向に均一にすることができる。
【0039】
ここで、回転した下レベラ22は、その回転中心から上レベラ21との二つの接触点28まで距離の比、即ち、レバー比は常に1:1とされている。従って、下レベラ22が回転した際には、下レベラ22における一つの接触点28から他の接触点28に回転モーメントが増幅されることなく、周方向に隣接する上レベラ21に力が均等に伝達される。
【0040】
さらに、下レベラ22はニードル軸受27によって回転支持されているため、回転動作の円滑化を図ることができる。
【0041】
また、上レベラ21においても、下レベラ22同様に、レバー比が常に1:1とされるとともに、ニードル軸受27によって回転支持されているため円滑に回転可能とされ、上レベラ21における一つの接触点28から他の接触点28に力が均等に伝達される。
【0042】
さらに、上レベラ回転支持軸24は上記長穴26によって軸線P方向に動き自由とされているため、各軸受パッド12からの荷重を受けた際には、軸線P方向に沈み込むことが可能である。従って、確実に両隣に隣接する下レベラ22を回転させることによって、力を伝達することが可能となる。
【0043】
ここで、上レベラ21と下レベラ22との接触点28と、上レベラ21及び下レベラ22の回転中心とは一直線に並ぶように配置されているが、一般に、下レベラ22においては、下レベラ22の回転中心と、上記接触点28との間の軸線P方向距離が小さくなる程、軸受パッド12間の荷重の均一化の効果は大きくなることが確認されている。
【0044】
そして、上述の荷重均一化効果については、下レベラ22の回転中心から接触点28までの距離をL、上レベラ21と下レベラ22との重なり長さ、即ち下レベラ22と接触点28との中心間の軸線P方向の距離をS、軸受パッド12枚数をnとすると、摩擦抵抗を無視した場合、軸受パッド12の受ける最大荷重Pmaxと、最小荷重Pminとの間には、Pmin/Pmax={(L−S)/L}(n−1)の関係が成立することがわかっている。従って、S=0としたときに、Pmin/Pmax=1となり、軸受パッド12の受ける荷重が最大限均一化されることを示している。
【0045】
本実施形態においては下レベラ22と接触点28との間の軸線P方向距離S=0とされているため、軸受パッド12の受ける荷重の均一化を最大限達成することができる。
【0046】
また、接触点28において下レベラ22に設けられるボール部材31によって、上レベラ21と下レベラ22との接触摩擦抵抗を低減することが可能となる。このため、力の伝達を円滑化し軸受パッド12間の荷重の均一化を図ることが可能となる。
【0047】
本実施形態のスラスト軸受1によれば、上レベラ21及び下レベラ22の回転中心から接触点28まで距離が常に一定となるとともに、レバー比が1:1とされている。さらに、上レベラ21及び下レベラ22の回転中心と接触点28とが一直線に並ぶように配置されているため、軸受パッド12の荷重均一化を効果的に達成できる。従って、軸受パッド12の荷重の偏差による表面温度の偏差発生を抑制でき、軸受パッド12の表面のホワイトメタルの焼損等を防止することによって、スラスト軸受1の性能向上を図ることができる。
【0048】
さらに、上レべラ21及び下レベラ22がニードル軸受27によって回転支持されていること、また、接触点28において下レベラ22にボール部材31が設けられていること、そして、上レベラ回転支持軸24は上記長穴26によって軸線P方向に動き自由とされていることによって、摩擦抵抗が低減し、力の伝達効果が向上し、さらなる荷重均一化を図ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、上レベラ回転支持軸24及び下レベラ回転支持軸25の軸受としてニードル軸受27を採用しているが、設置スペースの制約に応じて、例えば玉軸受等の他の軸受を採用してもよい。
【0050】
また、ボール部材31は、接触点28において上レベラ21に設けられていてもよく、下レベラ22と上レベラ21の両方に設けられていてもよい。
【0051】
次に、図5を参照して、第二実施形態に係るスラスト軸受1について説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
スラスト軸受1は、第一実施形態のボール部材31に代えて、ローラ部材(支持部材)41が設けられている。また、このローラ部材41は接触点28において、上レベラ21及び下レベラ22Aの両方に設けられており、上レベラ21のローラ部材41と下レベラ22のローラ部材41とは対向して接触するように配置されている。
【0052】
このローラ部材41は、径方向に延在する軸線を回転中心として配置される円柱状の金属部材であり、抜け止めフタ42によって脱落しないように規制されている。
【0053】
このようなスラスト軸受1においては、各軸受パッド12の加工寸法公差等によって発生する周方向各々の軸受パッド12の厚さの差異、及び、ロータのたわみによって、各軸受パッド12がロータから受ける荷重について周方向に差異が生じてレベラ機構13が作動する際には、上レベラ21のローラ部材41と下レベラ22Aのローラ部材41とが対向して回転することによって、接触摩擦抵抗をさらに低減しながら荷重を伝達することができる。従って、軸受パッド12間の荷重のさらなる均一化を図ることができる。
【0054】
本実施形態のスラスト軸受1によれば、接触点28にローラ部材41を設けることによって、軸受パッド12への荷重の偏差による軸受パッド12の表面温度の偏差発生を抑制でき、表面のホワイトメタルの焼損等を防止可能となり、スラスト軸受1の性能向上を図ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、第一実施形態のスラスト軸受1のボール部材31、及び、第二実施形態のスラスト軸受1のローラ部材41、また、接触点28における上レベラ21及び下レベラ22、22Aの表面には、例えばSKHなどのようにクロムやモリブデン等を多く含む高硬度の鋼を用いてもよい。この場合、接触点28においてボール部材31や、ローラ部材41が弾性変形することを防止できる。従って、上レベラ21と下レベラ22、22Aとの接触摩擦抵抗をさらに低減することが可能となる。
【0056】
さらに、第一実施形態のスラスト軸受1のボール部材31、及び、第二実施形態のスラスト軸受1のローラ部材41、また、接触点28における上レベラ21及び下レベラ22、22Aの表面には、例えば、樹脂やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)のコーティングが施されてもよい。この場合、さらなる接触摩擦抵抗の低減が可能となる。
【0057】
また、接触点28においてボール部材31やローラ部材41を設ける代わりに、上述の高硬度鋼、樹脂及びDLCのコーティングのみを適用することによって、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…スラスト軸受、11…スラストカラー、12…軸受パッド、13…レベラ機構、21…上レベラ、22、22A…下レベラ、23…ハウジング、24…上レベラ回転支持軸、25…下レベラ回転支持軸、26…長穴、27…ニードル軸受、28…接触点、31…ボール部材(支持部材)、32…抜け止めフタ、41…ローラ部材(支持部材)、42…抜け止めフタ、P…軸線
図1
図2
図3
図4
図5