特許第5773861号(P5773861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773861
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】セミクローラトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/02 20060101AFI20150813BHJP
   B62D 55/10 20060101ALI20150813BHJP
   B62D 55/088 20060101ALI20150813BHJP
   B62D 55/30 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B62D55/02
   B62D55/10 Z
   B62D55/088
   B62D55/30 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-281025(P2011-281025)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129357(P2013-129357A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3410962(JP,B2)
【文献】 特開2001−239965(JP,A)
【文献】 特開平11−91645(JP,A)
【文献】 特開平11−245859(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/042022(WO,A1)
【文献】 特開2000−255464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/02
B62D 55/088
B62D 55/10
B62D 55/30
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤアクスルケースに回転自在に軸支される左右の後車軸と、
前記左右の後車軸に取り付けられる駆動輪と、
前記リヤアクスルケースの後車軸下方位置に軸支される揺動支軸と、
前記揺動支軸にホルダを介して上下揺動自在に支持されるトラックフレームと、
前記トラックフレームに設けられる前後の遊動輪と、
前記前後の遊動輪間に設けられる転輪と、
前記駆動輪、前記遊動輪及び前記転輪に巻き掛けられるクローラと、を備えるセミクローラトラクタにおいて、
前記トラックフレームは、
前記ホルダの下面に前後方向に離間して並列状に取り付けられる前後の支持板と、
前記前後の支持板の外端部に溶接される転輪取付フレームと、
前記転輪取付フレームの前部上面に溶接される前側遊動輪用の装着パイプと、
前記転輪取付フレームの後部後面に溶接される後側遊動輪用の取付ブラケットと、を備えて構成され、
前記前後の支持板間には、泥抜き孔を有する補強板が取り付けられることを特徴とするセミクローラトラクタ。
【請求項2】
前記転輪取付フレームの側板を前記駆動輪の外周に近接するように立ち上がらせ、該立ち上がり部を前記駆動輪に付着した泥を掻き落とすスクレーパとしたことを特徴とする請求項1記載のセミクローラトラクタ。
【請求項3】
前記装着パイプの後端に前記前側支持板を臨ませ、前記前側遊動輪を緊張させるテンションボルトの一端を前記前側支持板で支持することを特徴とする請求項1又は2記載のセミクローラトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前側を車輪で支持し、機体の後側をクローラで支持するセミクローラトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
機体の前側を車輪で支持し、機体の後側をクローラで支持するセミクローラトラクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。通常、この種のセミクローラトラクタでは、地面に対するクローラの追従性などを高めるために、遊動輪や転輪が設けられるトラックフレームを上下揺動自在に支持している。例えば、特許文献1に示されるセミクローラトラクタでは、リヤアクスルケースの後車軸下方位置に揺動支軸を軸支し、該揺動支軸でトラックフレームを上下揺動自在に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3410962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなセミクローラトラクタでは、通常、トラックフレームやその揺動支持部の強度を確保するために、溶接による一体構造を採用しているが、必要に応じて補強板などを設けると、形状が複雑になって泥や水が溜まり易くなり、作業後の洗車に手間が掛かるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、リヤアクスルケースに回転自在に軸支される左右の後車軸と、前記左右の後車軸に取り付けられる駆動輪と、前記リヤアクスルケースの後車軸下方位置に軸支される揺動支軸と、前記揺動支軸にホルダを介して上下揺動自在に支持されるトラックフレームと、前記トラックフレームに設けられる前後の遊動輪と、前記前後の遊動輪間に設けられる転輪と、前記駆動輪、前記遊動輪及び前記転輪に巻き掛けられるクローラと、を備えるセミクローラトラクタにおいて、前記トラックフレームは、前記ホルダの下面に前後方向に離間して並列状に取り付けられる前後の支持板と、前記前後の支持板の外端部に溶接される転輪取付フレームと、前記転輪取付フレームの前部上面に溶接される前側遊動輪用の装着パイプと、前記転輪取付フレームの後部後面に溶接される後側遊動輪用の取付ブラケットと、を備えて構成され、前記前後の支持板間には、泥抜き孔を有する補強板が取り付けられることを特徴とする。
また、前記転輪取付フレームの側板を前記駆動輪の外周に近接するように立ち上がらせ、該立ち上がり部を前記駆動輪に付着した泥を掻き落とすスクレーパとしたことを特徴とする。
また、前記装着パイプの後端に前記前側支持板を臨ませ、前記前側遊動輪を緊張させるテンションボルトの一端を前記前側支持板で支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ホルダの下面に取り付けられる前後の支持板間に補強板を取り付けてトラックフレームの支持強度を高めることができるだけでなく、補強板の泥抜き孔によって泥や水の溜まりも防止し、作業後の洗車も容易にすることができる。
また、請求項2の発明によれば、転輪取付フレームの側板を駆動輪の外周に近接するように立ち上がらせ、該立ち上がり部を駆動輪に付着した泥を掻き落とすスクレーパとしたので、専用のスクレーパ部材を設けることなく、駆動輪に付着した泥を掻き落とすことができる。また、立ち上がり部によって掻き落された泥は、補強板上に落下する可能性があるが、補強板の泥抜き孔を介して地面に落下するので、泥溜まりを生じさせる不都合もない。
また、請求項3の発明によれば、前側遊動輪を緊張させるテンションボルトの一端を前側支持板で支持するので、専用の部材で支持する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタの要部背面図である。
図3】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのリヤアクスルケース及びクローラ装置の背面断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置支持部分(駆動輪省略)を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置支持部分(駆動輪省略)を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置支持部分(駆動輪省略)を示す分解斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置支持部分(駆動輪及びホルダ省略)を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタの駆動輪を示す要部背面断面図側面図である。
図10】(A)は本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタの駆動輪(ディスク及びホイール)を示す側面図、(B)は背面断面図である。
図11】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置を示す図であり、クローラ装置のフレーム構造を示す平面図である。
図12】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置を示す図であり、スクレーパを追加した側面図である。
図13】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置を示す図であり、(A)はトラックフレームの平面図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は背面図である。
図14】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのクローラ装置を示す図であり、クローラ装置のテンション調節構造を示す一部断面側面図である。
図15】本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタのデフロック構造を示す図であり、(A)はリヤアクスルケースの要部正面図、(B)は要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はセミクローラトラクタであって、該セミクローラトラクタ1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速するミッションケース3と、左右の前車軸(図示せず)を軸支するフロントアクスルケース(図示せず)と、前車軸に取り付けられる前輪4と、左右の後車軸5を軸支するリヤアクスルケース6と、リヤアクスルケース6に取り付けられるクローラ装置7と、作業機(図示せず)が連結される作業機連結部8と、オペレータが乗車する操縦部9とを備えて構成されている。
【0009】
クローラ装置7は、左右の後車軸5に取り付けられる駆動輪10と、リヤアクスルケース6の後車軸下方位置に軸支される揺動支軸11と、揺動支軸11にホルダ12を介して上下揺動自在に支持されるトラックフレーム13と、トラックフレーム13に設けられる前後の遊動輪14、15と、前後の遊動輪14、15間に設けられる転輪16と、駆動輪10、遊動輪14、15及び転輪16に巻き掛けられるクローラ17とを備えており、駆動輪10の正逆回転に応じてクローラ17が駆動し、セミクローラトラクタ1を前後進させるようになっている。
【0010】
次に、クローラ装置7の支持部分について、図1図8を参照して説明する。これらの図に示すように、リヤアクスルケース6の外端部には、後車軸5を軸支する軸支筒部6aを備えている。揺動支軸11は、リヤアクスルケース6に取り付けられる外側ブラケット18と内側ブラケット19とにより両持ち状に軸支され、その中間部でホルダ12を回動自在に支持している。ここで、外側ブラケット18は、リヤアクスルケース6の軸支筒部6aの先端部下面に取り付けられる軸支部材であり、内側ブラケット19は、リヤアクスルケース6の軸支筒部6aの基端部下方に取り付けられる軸支部材である。
【0011】
上記のようにトラックフレーム13を上下揺動自在に支持するセミクローラトラクタ1では、トラックフレーム13の上下揺動を所定の範囲で制限する必要がある。そこで、本発明の実施形態に係るセミクローラトラクタ1では、図5などに示すように、リヤアクスルケース6とホルダ12の対向部分に、互いに接当する接当部6b、6c、12a、12bをそれぞれ一体に設け、両接当部6b、6c、12a、12b同士の接当によってトラックフレーム13の上下揺動範囲を制限するように構成されている。
【0012】
例えば、リヤアクスルケース6の軸支筒部6aの下面前側に形成される接当部6bと、ホルダ12の上面前側に形成される接当部12aとの接当によってトラックフレーム13の前側上方への揺動を制限し、リヤアクスルケース6の軸支筒部6aの下面後側に形成される接当部6cと、ホルダ12の上面後側に形成される接当部12bとの接当によってトラックフレーム13の後側上方への揺動を制限する。
【0013】
このようにすると、リヤアクスルケース6及びトラックフレーム13にそれぞれ揺動制限用の部材を設けていた従来のものに比べ、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。また、リヤアクスルケース6やトラックフレーム13の形状を簡略化することができるので、付着した泥が落ち易くなるだけでなく、清掃、整備などのメンテナンス性も向上させることができる。
【0014】
本実施形態では、リヤアクスルケース6の軸支筒部6aを図5に示すA−A線を基準として左右対称な形状とし、左右の後車軸5の軸支筒部6aを共通化している。これにより、軸支筒部6aの後面にも、接当部6b、6cに相当する面6d、6eを備えることになるが、これらの面6d、6eには、後部取付部材20を取り付け、安全フレーム21やキャビン(図示せず)の取付部として利用することができるようになっている。
【0015】
図2図3などに示すように、リヤアクスルケース6の左右両側に取り付けられる内側ブラケット19は、連結フレーム22を介して一体的に連結されている。本実施形態の連結フレーム22は、作業機連結部8の構成部品であるロワリンク支軸23が設けられる部材であり、この部材を利用して左右の内側ブラケット19を連結することにより、部品点数の削減や構造の簡略化を図ることが可能になる。
【0016】
また、図2に示すように、ホルダ12の外周面には、後方側に向けて給脂プラグ24を取り付け、当該給脂プラグ24を介して揺動支軸11の外周面とホルダ12の内周面との間に給脂を行うようになっている。このようにすると、揺動支軸11とホルダ12との間に対する給脂をセミクローラトラクタ1の機体後側から容易に行うことが可能になる。特に、本実施形態では、図2に示すように、左右のクローラ装置7のクローラ17の内幅Bよりも内側に給脂プラグ24を配置しているので、給脂に際してクローラ装置7が邪魔になることも防止できる。
【0017】
次に、駆動輪10の構成について、図9及び図10を参照して説明する。これらの図に示すように、駆動輪10は、後車軸5のフランジ部5aに取り付けられるディスク25と、ディスク25の外周部に固着される左右のホイール26と、左右のホイール26間に取り付けられ、クローラ17の駆動突起17aに係合する複数のピン27とを備えて構成されている。
【0018】
ディスク25やホイール26は、鋼板からの打ち抜き加工や切断加工によって製造されるので、歩留まり率が低く、製造コストが上昇するという問題がある。特に、ホイール26の製造に際しては、打ち抜き加工や切断加工によって生じるホイール内周側の残余部材がすべて無駄になるので、歩留まり低下の要因となっていた。
【0019】
そこで、本発明の実施形態に係るホイール26は、鋼板からの打ち抜き加工又は切断加工によって環状に形成され、内周部に周方向に所定の間隔を存して並ぶ複数の凸部26aを有する構成とし、ディスク25は、ホイール26の打ち抜き加工又は切断加工によって生じるホイール内周側の残余部材から形成され、外周部に周方向に所定の間隔を存して並ぶ複数の凸部25aを有する構成としてある。そして、ホイール26とディスク25は、凸部26a、25a同士を側面視で重合させ、連結部材28を介して溶接により固着することで一体的に構成されるようになっている。
【0020】
このようにすると、打ち抜き加工又は切断加工によって生じるホイール内周側の残余部材からディスク25を形成するので、歩留まりを向上させて製造コストを低減させることができる。しかも、ホイール26とディスク25は、凸部26a、25a同士を側面視で重合させて固着することにより一体的に構成されるので、駆動輪10に要求される強度も容易に確保することができる。
【0021】
また、本実施形態のディスク25は、左右のホイール26を形成した際の残余部材から得られる2枚のプレート25bを重ね合わせて構成されている。このようにすると、ディスク25の強度を高めることができるだけでなく、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態では、2枚のプレート25bを重ね合わせてディスク25を構成するにあたり、2枚のプレート25bを周方向に若干ずらし、それにより生じる段差部を溶接することにより必要な接合強度を確保している。尚、プレート25bの中心部には、フランジ部5aの凸部5bと嵌合する嵌合孔25cが形成されるが、各プレート25bの嵌合孔25cの片面の縁部に面取り部25dを形成し、面取り部25dが外側に向くようにプレート25bを重ねて接合することにより、嵌合孔25cの両面側の縁部に面取り部25dが形成されるようになっている。
【0023】
左右のホイール26の外周部には、所定の間隔を存して半円状のピン取付部26bが突出形成されている。本実施形態のピン27は、円筒形状を有し、左右のホイール26のピン取付部26b間に掛け渡したボルト29に嵌挿して、ナット30により左右のホイール26間に締結されるようになっている。
【0024】
また、ボルト29の頭部とホイール26のピン取付部26bとの間、及びナット30とホイール26のピン取付部26bとの間には、外方側に丸みを帯び、外周がピン27及びピン取付部26bの外周と略面一になるワッシャ31を介在させてある。このようにすると、駆動輪10自体に特別な加工を施すことなく、駆動輪10においてクローラ17と接触する可能性がある部分に円みを持たせることができるので、駆動輪10のエッジ部分でクローラが損傷することを防止でき、その結果、芯金なしのゴム製クローラに適した駆動輪10を安価に製造することが可能になる。
【0025】
次に、クローラ装置7のフレーム構造について、図11図14を参照して説明する。これらの図に示すように、トラックフレーム13は、ホルダ12の下面に沿って複数のボルト32で固定されるホルダ固定板33と、該ホルダ固定板33の下面に前後方向に離間して並列状に溶接される前後の支持板34、35と、前後の支持板34、35の外端部に溶接される転輪取付フレーム36と、転輪取付フレーム36の前部上面に溶接される前側遊動輪用の装着パイプ37と、転輪取付フレーム36の後部後面に溶接される後側遊動輪用の取付ブラケット38とを備えて構成されている。
【0026】
本発明の実施形態に係るトラックフレーム13では、その強度を高めるために、前後の支持板34、35間に補強板39を溶接しているが、補強板39の中央部には、比較的開口面積が大きい長円形状の泥抜き孔39aが形成してある。このようにすると、ホルダ12の下面に取り付けられる前後の支持板34、35間に補強板39を取り付けてトラックフレーム13の支持強度を高めることができるだけでなく、補強板39の泥抜き孔39aによって泥や水の溜まりも防止し、作業後の洗車も容易にすることができる。
【0027】
前後の支持板34、35の外端部は、側面視で転輪16間に位置すると共に、転輪用スクレーパ40を取り付けるための取付孔34a、35aが設けられている。つまり、前後の支持板34、35を転輪用スクレーパ40の取付部材に兼用しているので、専用の取付部材を別途設ける場合に比べ、部品点数の削減やコストダウンを図ることが可能になる。
【0028】
また、本実施形態では、転輪取付フレーム36の内側の側板36aを駆動輪10の外周に近接するように立ち上がらせ、該立ち上がり部36bを駆動輪10に付着した泥を掻き落とすスクレーパとして機能させるようになっている。このようにすると、専用のスクレーパ部材を設けることなく、駆動輪10に付着した泥を掻き落とすことができるので、部品点数の削減やコストダウンを図ることが可能になる。また、立ち上がり部36bによって掻き落された泥は、補強板39上に落下する可能性があるが、補強板39の泥抜き孔39aを介して地面に落下するので、泥溜まりを生じさせる不都合もない。尚、本実施形態では、立ち上がり部36bの上端形状を駆動輪10の外周に沿う円弧状にしているが、立ち上がり部36bの上端形状は適宜変更することができる。
【0029】
また、本実施形態では、装着パイプ37の後端に前側の支持板34を臨ませ、前側遊動輪14を緊張させるテンションボルト41の一端を前側の支持板34で支持するようにしている。このようにすると、テンションボルト41の一端を専用の部材で支持する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化を図ることができる。
【0030】
前側遊動輪14は、取付ブラケット42に取り付けられており、取付ブラケット42から後方に延出する入れ子パイプ43は、装着パイプ37に前後摺動自在に嵌入している。入れ子パイプ43の後端部には、ナット44が回転不能に設けられており、このナット44にテンションボルト41の前端側が螺合している。テンションボルト41の後端側は、ワッシャ45を介して前側の支持板34に押し付けられ、クローラ17の荷重を受止めるようになっている。
【0031】
さらに、テンションボルト41の後端は、前側の支持板34を回動自在に貫通すると共に、二面取り加工部同士の嵌合により一体的に回動するナット46が取り付けられる。このナット46を工具で回すと、テンションボルト41の回転に伴って前側遊動輪14が進退移動し、クローラ17のテンション調節を行うことが可能になる。尚、ナット46の隣接位置には、所謂ダブルナットとして機能するナット47が設けられ、該ナット47の締め込みによりテンションボルト41の回転がロックされるようになっている。
【0032】
取付ブラケット38、42は、図4に示すように、上下2本のボルト48でそれぞれ遊動輪14、15と連結されるように構成されている。ここで、本実施形態の遊動輪14、15側は、上側のボルト貫通孔14a、15aを下側のボルト貫通孔(図示せず)を中心とする円弧上に複数設けることにより、ボルト48の選択的な差し換えによって遊動輪14、15の高さを変更することができるようになっている。例えば、湿田では、泥押し低減のため、遊動輪14、15を上げた状態で使用し、また、畑では牽引力増加、傾斜地では横滑り防止のため、遊動輪14、15を下げた状態で使用することができる。
【0033】
また、本実施形態では、図4に示すように、接地面から前側遊動輪14の中心までの高さCと、接地面から後側遊動輪15の中心までの高さDとを同一としている。このようにすると、前側遊動輪14の関連部品と後側遊動輪15の関連部品との共通化が容易になる。例えば、本実施形態では、取付ブラケット38、42を共通化している。
【0034】
図15に示すように、本実施形態のリヤアクスルケース6には、デフロックペダルなどのデフロック操作具の操作に応じて回動し、デフロック用のスリーブ48を動作させるデフロック作動シフタ49が設けられている。デフロック作動シフタ49の一端は、リヤアクスルケース6から外部に突出し、デフロック操作具に連繋される操作プレート50にナット51で固定されている。リヤアクスルケース6の内部に位置するデフロック作動シフタ49の中間部には、溝部49aが形成されており、リヤアクスルケース6の外部からねじ込まれるボルト52が溝部49aに係合することにより、デフロック作動シフタ49の位置決めがなされるようになっている。このようにすると、リヤアクスルケース6の内部ぶ組み込まれる部材でデフロック作動シフタ49の位置決めを行う場合に比べ、位置決めの作業性を向上させることができる。
【0035】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、リヤアクスルケース6に回転自在に軸支される左右の後車軸5と、左右の後車軸5に取り付けられる駆動輪10と、リヤアクスルケース6の後車軸下方位置に軸支される揺動支軸11と、揺動支軸11にホルダ12を介して上下揺動自在に支持されるトラックフレーム13と、トラックフレーム13に設けられる前後の遊動輪14、15と、前後の遊動輪14、15間に設けられる転輪16と、駆動輪10、遊動輪14、15及び転輪16に巻き掛けられるクローラ17と、を備えるセミクローラトラクタ1において、トラックフレーム17は、ホルダ12の下面に前後方向に離間して並列状に取り付けられる前後の支持板34、35と、前後の支持板34、35の外端部に溶接される転輪取付フレーム36と、転輪取付フレーム36の前部上面に溶接される前側遊動輪用の装着パイプ37と、転輪取付フレーム36の後部後面に溶接される後側遊動輪用の取付ブラケット38と、を備えて構成され、前後の支持板34、35間には、泥抜き孔39aを有する補強板39が取り付けられるので、ホルダ12の下面に取り付けられる前後の支持板34、35間に補強板39を取り付けてトラックフレーム13の支持強度を高めることができるだけでなく、補強板39の泥抜き孔39aによって泥や水の溜まりも防止し、作業後の洗車も容易にすることができる。
【0036】
また、転輪取付フレーム36の側板36aを駆動輪10の外周に近接するように立ち上がらせ、該立ち上がり部36bを駆動輪10に付着した泥を掻き落とすスクレーパとしたので、専用のスクレーパ部材を設けることなく、駆動輪10に付着した泥を掻き落とすことができる。また、立ち上がり部36bによって掻き落された泥は、補強板39上に落下する可能性があるが、補強板39の泥抜き孔39aを介して地面に落下するので、泥溜まりを生じさせる不都合もない。
【0037】
また、装着パイプ37の後端に前側支持板34を臨ませ、前側遊動輪14を緊張させるテンションボルト41の一端を前側支持板34で支持するので、専用の部材で支持する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化を図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 セミクローラトラクタ
5 後車軸
6 リヤアクスルケース
7 クローラ装置
10 駆動輪
11 揺動支軸
12 ホルダ
13 トラックフレーム
14 前側遊動輪
15 後側遊動輪
16 転輪
17 クローラ
33 ホルダ固定板
34 前側支持板
35 後側支持板
36 転輪取付フレーム
36a 側板
36b 立ち上がり部
37 装着パイプ
38 取付ブラケット
39 補強板
39a 泥抜き孔
41 テンションボルト
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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