【0013】
摂取可能組成物中の本発明の化合物の濃度は、組成物の特定のフォーマット、組成物の使用目的及び標的集団などの種々の因子によって決まる。一般的に本組成物は、遊離酸の血漿レベルを下げるのに有効な量で本発明の化合物を含むだろう。典型的に該量は、組成物を摂取する対象内のβ-ヒドロキシブチラート(bHB)及び/又はアセトアセタートの循環濃度が10μM〜20mM、好ましくは50μM〜10mM、さらに好ましくは100μM〜5mMを達成するのに必要な当該量である。一実施形態では、0.7mM〜5mM、例えば1mM〜5mMの循環濃度を達成する量を使用する。
本発明の研究対象は迅速に加水分解されて2つの天然産物、β-ヒドロキシブチラート(bHB)及び(R)-1,3-ブタンジオールになるので、食物として分類することができ、かつ食物製品の一部を形成し得る天然カロリー源である。
食物製品は、主に1種以上の多量養素タンパク質、炭水化物及び脂肪で構成され、生物の体内で使用されて成長を持続し、損傷を修復し、生命維持プロセスを助け又はエネルギーを供給する食用材料である。食物製品は、ビタミン若しくはミネラル等の1種以上の微量栄養素、又は香料及び着色料などの追加の食餌性成分を含むこともある。
本発明の化合物を添加物として中に組み込める食物製品の例として、スナックバー、食事代替バー、シリアル、菓子及びプロバイオティック製剤、例えばヨーグルトが挙げられる。
飲料及びドリンクの例として、ソフト飲料、エネルギードリンク、乾燥ドリンクミックス、栄養飲料、食事又は食物代替ドリンク、再水和用組成物(例えば運動中又は運動後)及び注入用ハーブティー又は水中浸出液用ハーブブレンドが挙げられる。
再水和用組成物は、典型的に水、糖炭水化物及び本発明の化合物を含む。本組成物は、当業者には認められるように、適切な香料、着色料及び保存料を含んでもよい。炭水化物糖はエネルギー源として存在し、かつグルコース及びトレハロースを含め、適切な糖が知られている。食事又は食物代替ドリンクは、減量計画で使用するため一般的に提唱されている型のものであってよい。このようなドリンク製剤は典型的に適量の1種以上の多量養素、すなわちタンパク質、脂肪及び/又は炭水化物の源を任意の追加成分、例えば可溶化剤、保存剤、甘味料、香味料及び着色料と共に含む。
栄養補助食品は、疾患の予防及び治療を含め、医学上又は健康上の利益を与えるとみなされる食品成分、食物サプリメント又は食物製品である。一般に栄養補助食品は、消費者に特定の健康上の利益を与えるのに特に適している。栄養補助食品は、典型的に微量栄養素、例えばビタミン、ミネラル、ハーブ又は植物化学物質を対応する正規の食物製品で見られるより高いレベルで含む。当該レベルは、典型的に単一の1人分として又は食餌計画の一部として又は栄養療法のコースとして取り込まれるたときに該栄養補助食品の意図した健康上の利益を最適化するように選択される。本発明の場合、このレベルは脂肪酸の血漿レベルを下げるのに有効なレベルであろう。
機能性食品は、消費者に純粋な栄養を供給することの健康上の利益を超える健康上の利益を与えるとして市販されている食品である。機能性食品は典型的に上述したような微量栄養素などの成分を組み入れ、それが栄養効果以外に特別な医学的又は生理学的利益を与える。機能性食品は典型的にパッケージング上に健康強調表示を載せている。
本発明によれば、栄養補助食品又は機能性食品は、典型的に上記定義どおりの本発明の化合物を対象内の遊離脂肪酸の血漿レベルを下げるのに有効な量で含む。さらに典型的には、栄養補助食品又は機能性食品は、食欲を抑制するか、肥満を治療するか又は対象の体重減少を促進するのに有効な量で本化合物を含有する。
食餌性サプリメントは、ビタミン、ミネラル、ハーブ又は他の植物学的産物、又はアミノ酸などの食餌性成分を含有する、ヒト対象の普通の食餌を補助することを意図している製品である。食餌性サプリメントは典型的に単位剤形で提供され、食物の代わりではなく、食物の前か後に消費するために設計される。従って、食餌性サプリメントは錠剤又はカプセル剤として、或いは食品の上に振りかけるため又は水若しくは飲料に添加するための乾燥粉末若しくは顆粒として提供されることが多い。
【実施例】
【0015】
実施例1:(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルの合成
【0016】
【化2】
【0017】
(3R)-ヒドロキシ酪酸エチル(約3kg)、(R)-1,3-ブタンジオール(約1.5kg)、及び固体担持カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB(約300g)を20リットルの回転式エバポレーターフラスコ内で混ぜ合わせて大規模Buchiエバポレーター上に置く。ジオールが消費されるまで(
1H NMR分光法で分析されるように;約3日)システムを40〜45℃で回転させながら1〜1.3kPa(8〜10トル)に減圧する。粗製材料をろ過(純粋)して酵素を分離し、過剰の(3R)-ヒドロキシ酪酸エチルをエバポレーションから除去する(0.3〜0.4kPa(2〜3トル)の最終圧及び80〜85℃の最終温度へ)。初めから終わりまで、冷却水を循環させる[反応中は-5℃、(3R)-ヒドロキシ酪酸エチルの除去中は+5℃]。活性炭(大スパーテルで8杯程度)を加え、回転式エバポレーター上での混合を15分間続けてから純粋混合物をCelite(登録商標)栓を通してろ過し、生成物(ろ液)を貯蔵用プラスチック容器に直接デカントする。Celite(登録商標)栓をエーテル(約500mL)で洗浄し、真空中で洗浄液から溶媒を除去し、残留物を貯蔵用バルクに加える。
【0018】
実施例2:(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルのin vivo試験−カロリー制御食餌
幼年成熟雄性ラット(開始体重70g)(Harlan UK Limited)(n=50)を12時間:12時間で明暗が反転する光周期で約20℃にて収容した。実験食餌を開始する前は動物に標準的な実験飼料(Chow)(SDS, Essex, UK)を与えた:(a)キロカロリーの34%が添加パルミタートに由来する普通の“Western”食餌(Western)(n=20)、(b)キロカロリーの70%が添加トウモロコシデンプンに由来する高炭水化物(CHO)(n=10)又は(c)キロカロリーの30%が(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルに由来する(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチル食餌(モノエステル)(n=20)。
3種の食餌の多量養素組成を下表1に示す。全ての食餌はkCal/gで同一エネルギーを含むが、異なる多量養素を有した。
【0019】
表1
【0020】
食餌及びモノエステルはオックスフォード大学で製造された。適宜水を供給した。この研究プロジェクトはOxford Animal Ethics Review Committees及びHome Officeによって承認された。
研究を開始する時までに孤立環境内の生活に慣れるように、実験開始前1週間はラットを個々に収容した。ラットは彼らの実験食餌を試みるまで、標準的な実験飼料chowを適宜消費した。Western及び炭水化物食餌を与えたラットには、前日モノエステルを与えたラットが消費した当該カロリーと同じカロリー数を与えた。
全てのラットを66日間飼育した。この期間後、ラットの体、心臓及び脂肪パッドの重量を測定した。結果を下表2に示す。
【0021】
表2
*P<0.05
【0022】
表2の結果は、脂肪パッドの重量が、Western(すなわち高脂肪)食餌又は炭化水素食餌のどちらかを与えたラットより、モノエステル食餌を与えたラットで66日試験の最後で有意に少なかったことを示している。体重に対する脂肪もモノエステルを与えたラットでは有意に低かった。
【0023】
実施例3:(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルのin vivo試験−食事供給食餌療法
表1に示したの同じ食物を使用するが、ラットに食事を与えて実施例2を繰り返した。従って、この実施例のラットは、実施例2におけるようにカロリー制限するのではなく、各食事でどれだけ食物を食べるか自由に選択した。
試験の最初の6日にわたって3種の各食餌群のラットについて時間に対して毎日の体重(グラム/ラット/日)をプロットした。結果のグラフを
図1に示す。Tukey-Kramer多重比較検定による一元配置分散分析を利用した(n=8/群、
**p<0.001)。モノエステル食餌を与えたラットでは、3日目〜6日目に有意な体重減少が見られた。炭水化物食餌を与えた群のラットの体重は採餌プロセスの最初から最後まで高いままだった。
モノエステル食餌に関する食事供給ラットは、他の2種の食餌に関するラットより少ない食物を食べ、多く減量した。毎日の食物摂取(グラム/ラット/日)を試験の最初の7日にわたって3種の各食餌群のラットについて時間に対してプロットした。結果のグラフを
図2に示す。この場合もやはり、Tukey-Kramer多重比較検定による一元配置分散分析を利用した(n=8/群、
**p<0.001)。モノエステル食餌に関するラットは炭水化物及びWestern食餌に関するラットに比し、期間の最初から最後まで一貫して毎日の食物摂取の減少を示した。
【0024】
実施例4:(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルのin vivo試験−等窒素含有及び等カロリー食餌
28日の研究で、約350gの雄性及び雌性ウィスターラットを3つの食餌群の1つにランダム化し(n=10の雄及び10の雌/群)、炭水化物食餌(CHOD)、普通のヒト食餌(NHD)、又はケトン食餌(KD)を投与した。食餌は等窒素含有及び等カロリーであり、それらの炭水化物、脂肪、及びケトンの相対量のみが異なった。KDでは、用いたケトンは、ケトンモノエステル(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチル食餌(すなわち本発明の化合物)だった。KDでは、エネルギーの約1/3がケトンエステルに由来したが、NHD及びCHODでは、エネルギーの1/3がそれぞれパルミタート及びデンプンに由来した。実験食餌の組成(カロリーの%を単位として表す)を下表3で要約する。
【0025】
表3
【0026】
実験食餌の組成(g/100g)を下表4で要約する。
【0027】
表4
【0028】
研究の28日に、KD群の雄ラットはCHOD及びNHD群の雄ラットより有意に軽かった(それぞれ390±26g対418±15g及び413±16g)。KD群の雄ラットが増量した総量は、CHOD及びNHD群が増量した総量より有意に少なかた。KDを与えた雄では、餌の消費がCHOD及びNHD食餌を与えた雄に比べて有意に少なかった(日22〜29の間の餌の摂取:それぞれ239±17g対269±7g及び269±7g)。雄ではケトンモノエステルの平均摂取が約11g/kg(体重)/日だった。
研究の日15、22、及び28に、KD群の雌ラットはCHOD及びNHD群の雌ラットより有意に軽かった(日28:それぞれ240±13g対253±12g及び258±13g)。KD群の雌ラットが増量した総量は、CHOD及びNHD群が増量した総量より有意に少なかた。KDを与えた雌では、餌の消費がCHOD及びNHD食餌を与えた雌に比べて有意に少なかった(日22〜29の間の餌の摂取:それぞれ175±12g対191±5g及び194±7g)。雌ではケトンモノエステルの平均摂取が約13.0g/kg(体重)/日だった。
【0029】
実施例5:(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチルが神経ペプチドレベル、クレブス回路及びCoA中間体のレベル、並びに脳内の遊離ヌクレオチドのレベルに及ぼす効果
14日の研究で、体重が約250gのウィスターラットを3つの食餌群の1つにランダム化し(n=6のラット/群)、炭水化物(「デンプン」)食餌、普通のヒト(「脂肪」)食餌又はケトンエステル食餌(用いたケトンエステルはケトンモノエステル(3R)-ヒドロキシ酪酸(3R)-ヒドロキシブチル食餌(すなわち本発明の化合物)だった)のどれかを投与した。供給食事と対で1日3時間3つの食餌を食べさせた。g/100gを単位として表す食餌の組成を表5で要約し、カロリーの%を単位として表す組成を表6で要約する。
【0030】
表5
【0031】
表6
【0032】
ケトンエステル食餌に関するラットは、デンプン(炭水化物)又は脂肪で補充された食餌を食べる当該ラットより少ない食物を消費し、かつ体重増加が少ないことが分かった。この結果は実施例2〜4の結果と一致している。
14日間1日当たり3時間供給食事と対で3種の食餌を食べた後、脳内の種々のクレブス回路及びCoA中間体のレベルを標準技術を利用して酵素的に及び質量分光法で測定した。結果を表7に示す。
表7で見られるように、ケトンエステルを与えられたラットは脳内のマロニルCoAレベルが高いことが分かった(表中太字フォント)。マロニルCoAは、食物摂取の減少と関連することが知られている代謝物であり;それは食欲を減らすことが知られている(Wolfgang, M. J. and Lane, M. D. (2006) J. Biol. Chem. 281, 37265-37269)。これらのデータは、食欲を減少させるために本発明のケトン化合物を含む食餌を使用することと一致している。表7中の値は、μモル/g(湿重量)の平均±SEM、n=6〜8である。CoAはnmol/g(湿重量)で与えられている。
【0033】
表7:脳のクレブス回路及びCoA中間体
ap<0.05 ケトンエステルとデンプンの間
【0034】
14日間ラットに食餌を与えた後、遊離ヌクレオチドの比率及び遊離ヌクレオチド濃度を測定した。以前に開示されている(Veech, R. L. et al., J. Biol. Chem. 254: 6538-47, 1979)ように計算したラットの凍結破裂脳(freeze blown brain)及び代謝物比率について測定を行なった。結果を表8に示す。表8中の値は平均±SEMとして与えられている(n=6〜8)。サイトゾルのpHを7.2であると仮定した。
【0035】
表8:遊離ヌクレオチド比率の計算値及び遊離ヌクレオチド濃度の計算値
ap<0.05 ケトンエステルとデンプンの間、
bp<0.05 ケトンエステルと脂肪の間、両方ともマンホイットニーのU検定(Mann-Whitney U test)で判断した。
【0036】
表8の結果は、食餌の14日後に、ケトンエステルを与えたラットの脳リン酸化ポテンシャル及びATP加水分解のΔG'が、炭水化物及び脂肪食餌を与えたラットにおけるより有意に高かったことを示している。ケトンを与えたの脳内の唯一の変化はエネルギー:リン酸化及びΔGの増加だった。このエネルギー増加は、灌流された作動ラット心臓内におけるケトンの効果と一致している(Sato, K., Kashiwaya, Y., Keon, C. A., Tsuchiya, N., King, M. T., Radda, G. K., Chance, B., Clarke, K.、及びVeech, R. L. (1995) FASEB J. 9, 651-658)。しかし、ケトン灌流によって心臓内で観察される莫大な酸化還元変化は観察されない。
これらのデータは、脳の代謝効率を高め、それによって認知機能の改善を促し、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病などの神経変性疾患の作用を治療又は軽減し、或いは例えば、加齢、外傷、無酸素などによる神経変性に対して脳及び中枢神経系を保護するために本発明のケトン化合物を含む食餌を使用することと一致している。
【0037】
(本発明のケトン化合物が脳内の神経ペプチドのシグナル伝達に及ぼす効果)
脂肪、炭水化物又はケトンエステル食餌による飼育の14日後、食物摂取減少及び食欲低下に関連することが分かっている種々の神経ペプチド(「食欲抑制」ペプチド)のレベルをラット脳の視床下部の室傍核(PVN)領域内及び海馬内で調査した。ラットの区分された脳について行なう標準的な抗体技術を利用して神経ペプチドレベルを測定した。結果を
図3〜9の顕微鏡写真で示す。
測定したペプチドは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、メラニン細胞刺激ホルモン受容体4(MC4R)、及びコカイン及びアンフェタミン反応性転写物(Cocaine-and-Amphetamine Responsive Transcript)(CART)だった。これらのペプチドは食欲抑制性であるのみならず、他の重要な作用を有するので、以下の通りである:
−BDNFは、食欲を減らし、かつ大脳基底核及び興味のある他の領域内のアポトーシスを防止することも知られているので、BDNFレベルの上昇は、食欲を減らすのみならず、神経変性を阻止すると予想され;
−CARTは、カフェイン又はモダフィニル(気分を明るくする記憶増強覚醒剤)と同様に覚醒を促し、かつ食欲を減らすので、CARTレベルの上昇は、食欲を減らすのみならず、認知機能を改善すると予想され;
−MC4Rは、大型ペプチドのメラニン細胞刺激ホルモンなどの種々のホルモンへの分解を促進し、そして食欲を制御する。MC4Rの突然変異は肥満の原因となることが知られている。
従って、これらのペプチドは、ケトンエステル摂食の、食欲の抑制に加えて多くの重要な治療態様で中心となる重要なもである。最も特に、a)覚醒(alterness)の促進及び認知機能の改善、並びにb)加齢、外傷、無酸素などの種々の原因による神経変性の阻止において重要である。
【0038】
図3の結果は、ケトン食餌で処置したラットのPVN内のBDNF陽性細胞体が、脂肪及び炭水化物食餌処置ラットに比べて有意に多いことを示している。ケトンで処置したラットの海馬内でも同様に観察される。PVNは食欲を制御することが分かっている脳の一部であり、一方で海馬は記憶にとって重要であることが知られている。従って、この結果は、本発明のケトン化合物を含む食餌を用いて食欲を減らし、神経変性を阻止し、及び認知機能改善を促進できることを支持している。
図4及び5の顕微鏡写真は、ケトン又は炭水化物(Cho)食餌で処置したラットの後側巨大細胞(pm)及び内側小細胞性(mpd)領域内のMC4R陽性細胞体の濃度が、脂肪食餌で処置したラットに比べて有意に高いことを示している。これは、本発明のケトン化合物を含む食餌を用いて食欲を減らし、かつ減量を促進できることを支持している。
図6、8及び9は、14日間脂肪食餌、炭水化物食餌又は本発明のケトン化合物を含む食餌で処置したラットの視床下部の後側室傍核(PVN)領域内のCARTレベルを示す。
図7は、視床下部の腹内側核(VMH)、弓状核(ARC)及び正中隆起(ME)領域内のCARTレベルを示す。ケトン及び炭水化物食餌で処置したラットのPVN内では、脂肪食餌で処置したラットのPVN内より有意に多数のCART陽性細胞体が見られる。ケトン食餌で処置したラットのPVN内で最大レベルのCARTが見られる。さらに、ケトン食餌で処置したラットは、視床下部の腹内側核(VMH)、弓状核(ARC)及び正中隆起(ME)領域内に最大数のCART陽性細胞体を含む。これらの結果は、本発明のケトン化合物を含む食餌を用いて食欲を減らし、神経変性を阻止し、及び認知機能の改善を促すことができることをさらに支持する。要約すれば、
図3〜9の顕微鏡写真は、ケトン食餌が以下のことをもたらすことを示している。
−室傍核及び海馬内の多くのBDNF(
図3);
−室傍核内の多くのCART(
図6〜9);及び
−室傍核内の高いMC4R活性(
図4及び5)。
これらのデータは、食欲を減らし、神経変性を阻止し、及び認知機能の改善を促すために本発明のケトン化合物を含む食餌を使用することと一致している。
【0039】
実施例6:錠剤組成物
それぞれ0.15gの重量で、かつ25mgの本発明の化合物を含有する錠剤を以下のように製造した。
(10,000錠剤の組成)
本発明の化合物(250g)
ラクトース(800g)
トウモロコシデンプン(415g)
タルク粉末(30g)
ステアリン酸マグネシウム(5g)
本発明の化合物、ラクトース及びトウモロコシデンプンの半分を混合した。この混合物を次に0.5mmメッシュサイズのふるいを通して押し出した。トウモロコシデンプン(10g)を温水(90ml)に懸濁させる。結果として生じるペーストを用いて前記粉末を造粒した。この顆粒を乾燥させ、1.4mmメッシュサイズのふるいで小フラグメントに細分化した。残存量のデンプン、タルク及びステアリン酸マグネシウムを加え、慎重に混合して錠剤に加工した。
【0040】
実施例7:シロップ製剤
本発明の化合物 250mg
ソルビトール溶液 1.50g
グリセロール 2.00g
安息香酸ナトリウム 0.005g
香料 0.0125ml
精製水を適宜加えて 5.00mlへ
本発明の化合物をグリセロールと大部分の精製水の混合物に溶かした。次いでこの溶液に安息香酸ナトリウムの水溶液を添加した後、ソルビトール溶液を加え、最後に香料を添加した。精製水で体積を埋め合わせ、よく混合した。