【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の状況を改善することを目的とする。
この目的を達成するために、第1に、
‐前記第1及び第2処理の両方を適用する第1段階と、
‐前記第1処理のみを適用する第2段階と、
を含む方法を提案する。
【0009】
放射性同位体
14Cは、おそらく原子結合の性質に起因して、非放射性炭素
12C及び場合によっては同位体
13C(無害または比較的無害)とは異なる特性を有し、第1処理の適用の間にその他の炭素同位体よりも高速に反応する傾向にある。
【0010】
この効果について以下で説明する。原子炉内では、熱中性子の流れにおいて、2つの反応が同位体14Cの原因となり得る。
‐第1反応
13C(n,γ):
14C及び
‐第2反応
14N(n,p):
14C
【0011】
炭素は大部分が黒鉛マトリクスを形成する一方で、窒素は主に黒鉛の細孔内に存在するため、第1反応は第2反応に対して優勢である。
【0012】
計算によって、2種類の反応に由来する同位体
14Cの反跳エネルギーが、グラファイトの構造を形成するグラフェン面内部の化学結合を破壊する程度に十分大きいことが示されている。実際、結合エネルギーは、ほとんどの場合1keVより大きく(同位体
13Cから形成された同位体
14Cの場合)、およそ40keV(同位体
14Nから形成された同位体
14Cの場合)である。従って、特に同位体14C原子の場合に、結合エネルギーが280eVに近いグラフェン面のC−C結合が破壊され、これらの原子が構造位置から移動する可能性が高い。原子炉では、これらの原子はその他の炭素原子または黒鉛中の不純物と新たな結合を形成し得るが、原子炉の作動温度は再度グラフェン面を形成する程度には高くない。
【0013】
その結果、前述の第1及び/または第2処理の間に、同位体
14Cは同位体
12Cより前に解放される。
言い換えると、第1廃棄物酸化処理段階において、炭素元素が放射性同位体
14Cの濃度よりも高い酸化炭素が最初に基本的に解放され、基本的に
12Cからなるために炭素元素の放射能が低いまたは無い酸化炭素がそれに続く。この非放射性酸化炭素は、固体沈殿物を得るための処理を行う必要がなく、大気中に直接放出することができることが理解される。
【0014】
より一般的な条件では、炭素質廃棄物が当初炭素14を含む場合には本発明による方法において、第1段階を受けて得られた固体沈殿物が基本的に炭素14を含むのに対して、第2段階からの酸化炭素が炭素14を含まないかその残存量のみを含み、その結果直接放出が可能である。従って、第2段階からの酸化炭素は、大気中に自由に放出され得る(または、一酸化炭素が大気中に放出されることを防止するために、例えば酸化によって二酸化炭素に形成され得る)。
【0015】
第1段階から第2段階へと切り替え、その結果酸化炭素を大気中に放出する好ましい時は、以下の通り決定され得る。
‐第1段階における第1処理の適用を受けて得られた酸化炭素の放射線量を測定する
‐放射線量が選択された閾値未満である場合に第2段階の適用を決定する
【0016】
しかしながら、このような実施形態を完了するためには、第1処理段階において酸化炭素のみが放射性であるべきであることを確実にする必要がある。それにもかかわらず、処理される廃棄物は、炭素以外のその他の元素、例えばトリチウム(
3H)または塩素同位体36(
36Cl)などの前記非炭素質揮発性元素、またはその他のものを含み得る。本発明との関連において標準的であるが有利な構成では、廃棄物は破砕され、湿式工程を通され、非炭素質放射性元素が湿式工程に閉じ込められ、処理される一方で、酸化炭素は湿式工程から揮発性の形態で抽出される。従って、適当に配置された放射線分析器を使用することが有利である。この場合、酸化炭素における放射線量は、湿式工程の外部に配置された分析器を使用して測定することが有利である。この分析器は、典型的に、第1処理からの酸化炭素放射能に場合によっては含まれる炭素14のβ放射能を測定することができる。
【0017】
ここで、前述の「第1処理」の目的が、廃棄物を分解して、酸化炭素、典型的に一酸化炭素Coまたは二酸化炭素CO
2を得ることであることが特定される。放射性廃棄物処理の分野において、酸化炭素を得るためのいくつかの方法が知られている。
‐特許文献1に記載されたような水蒸気改質による方法
‐不活性ガス中での焼成による方法
【0018】
水蒸気改質は、C+H
2O→CO+H
2という反応による、過熱蒸気に基づく処理であり、該反応は、以下に示すとおり、好ましくは900℃程度またはそれ以上、及び本発明においては好ましくは1200℃以上の温度で起こる。
【0019】
不活性ガス(例えば窒素N
2)中での焼成もまた、以下の反応によって、900℃程度またはそれ以上、及び本発明においては好ましくは1200℃以上の温度で好ましくは実施される。
C+1/2O
2→CO及び/またはC+O
2→CO
2及び/または上記と同じ反応
C+H
2O→CO+H
2(湿式工程(水媒体において)から得られる水と)
【0020】
本発明では、
図2を参照して以下で詳細に説明されるように、炭素14が非放射性炭素
12Cよりも先に反応して酸化物CoまたはCO
2を形成する効果が、反応温度(またはより一般的には炭素質廃棄物)が上昇するにつれて次第に際立つことを証明したことが確認されたため、これらの反応を900℃超(これらの反応に通常使用される温度)の温度で実施することが特に求められる。この場合、本発明による方法を実施するための廃棄物処理設備において、900℃の温度を超過することが可能な炉が好ましくは使用される。
【0021】
従って、第1段階の間に生成する酸化炭素の放射能分析器の使用に加えて、または代替として、酸化反応温度によって、酸化炭素発散物を野外に解放することができる時を決定するための図表を有することが有利であり得る。従って、そのような実施形態では、
‐処理される廃棄物の初期量、及び
‐第1処理を適用する間の酸化反応温度
に少なくとも応じて選択された時点で、第1段階から第2段階へと切り替えることが可能である。
【0022】
さらに、
‐(この場合は、外気中に放出することなく、得られた酸化炭素に炭酸化を適用することによって)焼成すること、及び
‐(残留する酸化炭素を大気中に自由に放出する前に、所定の時間だけ炭酸化を適用することによって)水蒸気改質による廃棄物処理を継続すること、
によって炭素酸化処理を開始することが有利である。
【0023】
従って、より一般的には、第1処理は、第1段階において、不活性ガス中での焼成を含み、第1及び第2段階において、水蒸気改質を含む。
【0024】
本発明はまた、炭素質放射性廃棄物処理設備に関し、前記設備は、本発明による方法を実施するための手段を有する。これらの手段は以下において詳細に説明される。
【0025】
さらに、本発明のその他の特徴及び利点は、以降の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって明らかとなるであろう。