【実施例1】
【0008】
図1は本発明の自動変速機の制御装置を搭載した実施例1のパワートレーンを表す概略図、
図3は実施例1のパワートレーンの断面図である。実施例1のパワートレーンは、駆動源であるエンジン1と、このエンジン1に駆動結合されるトルクコンバータ2と、このトルクコンバータ2に減速機構3を介して駆動結合される自動変速機4と、この自動変速機4の変速機出力軸(プロペラシャフト)5を介して駆動結合されるファイナルドライブギア機構6と、このファイナルドライブギア機構6を経て自動変速機4からの動力が出力される車輪7とを有する。自動変速機4は、無段変速機構8と副変速機構9とで構成されている。
【0009】
無段変速機構8は、減速機構3の出力軸に連結される駆動プーリ8aと、副変速機構9の入力軸9aに連結されるセカンダリプーリ8bとを有し、これらの間にベルト8cを掛け渡した既存のベルト式無段変速機構である。駆動プーリ8a及びセカンダリプーリ8bにはそれぞれ、オイルが供給されており、その油圧に応じてプーリ幅を自由に変更することができる。これにより、無段変速機構8は、駆動プーリ8aへの供給圧とセカンダリプーリ8bへの供給圧とを制御することで、変速比を無段階に変更させることができる。
【0010】
副変速機構9は、ラビニヨ遊星歯車機構の複合サンギア9bにセカンダリプーリ8bを駆動結合することで当該サンギア9bを入力とする一方、キャリア9cを変速機出力軸5に駆動結合することで当該キャリア9cを出力としている有段変速機構である。サンギア9bは、ローブレーキL/Bを介してケース部HG2に固定され、キャリア9cはハイクラッチH/Cを介してリングギア9dに駆動結合されている。更に、リングギア9dは、リバースブレーキR/Bを介してケース部HG2に固定されている。
【0011】
ローブレーキL/B、ハイクラッチH/C及びリバースブレーキR/Bにもそれぞれ、オイルを供給することができ、その油圧に応じて締結及び解放を自由に行うことができる。これにより、副変速機構9は、ローブレーキL/B、ハイクラッチH/C及びリバースブレーキR/Bへの供給圧を制御することで、前進1速、前進2速及び後進を選択することができる。
【0012】
前進1速の選択の場合は、ローブレーキL/Bを締結すると共にハイクラッチH/Cを解放する。また、前進2速の選択の場合は、ローブレーキL/Bを解放すると共にハイクラッチH/Cを締結する。なお、副変速機構9の制御にあたっての締結及び解放の関係についての詳細は、下記に示すとおりである。
前進第1速:ローブレーキL/Bのみ締結し、それ以外は解放
前進第2速:ハイクラッチH/Cのみ締結し、それ以外は解放
後進:リバースブレーキR/Bのみ締結し、それ以外は解放
これら、解放されたブレーキやクラッチもしくはラビニヨ遊星歯車機構に潤滑油を供給する。
【0013】
実施例1の車両は、自動変速機4を変速制御するための変速機コントローラ100を有する。変速機コントローラ100は、自動変速機4の目標入力回転数を算出し、この目標入力回転数に基づき、無段変速機構8の変速比を無段階に制御する無段変速制御部101と、副変速機構9の目標変速段を算出し、この目標変速段に制御する有段変速制御部102とを有する。即ち、自動変速機4全体としては、無段変速機構8の変速制御と副変速機構9の変速制御を協調させることで、目標とする変速比が実現される。
【0014】
無段変速機構8は、油圧コントロールバルブユニット10に内蔵された複数のソレノイドバルブをON,OFF制御することで、駆動プーリ8a及びセカンダリプーリ8bへの供給圧(通常は、駆動プーリ8aへの供給圧のみ)が制御される。これにより、変速比を無段階に変更することができる。副変速機構9も、同様に、油圧コントロールバルブユニット10に内蔵された複数のソレノイドバルブをON,OFF制御することで、ローブレーキL/B、ハイクラッチH/C及びリバースブレーキR/Bへの供給圧が制御され、前進1速又は前進2速が選択される。
【0015】
図2は実施例1の自動変速機の油圧回路図である。オイルポンプO/Pにより汲み上げられた油は、油圧コントロールバルブユニット10内に導入される。油圧コントロールバルブユニット10内には、複数のバルブと電磁弁等が組み込まれている。また、各バルブからドレンされた油は、油圧コントロールバルブユニット10の外側に設置されたオイルクーラー57に供給される。オイルクーラー57に供給された油は冷却された後、再度、油圧コントロールバルブユニット10に還流され、これらが潤滑油として供給される。
【0016】
油圧コントロールバルブユニット10には、油路70が開口する開口部とハウジング部HG1に形成されたケース側潤滑油供給用油路71とが接続されている。ケース側潤滑油供給用油路71には流路抵抗を変更する潤滑油量変更手段80を介して副変速機構9や各摺動部を潤滑すると共に(パワートレーン潤滑)、ベルト8cと各プーリ8a,8bとの摩擦面を潤滑する(ベルト潤滑)。ここで、潤滑が必要な被潤滑要素とは、副変速機構9を構成する各要素であり、解放されているクラッチやブレーキを含め、締結しているクラッチやブレーキ及びラビニヨ遊星歯車等も含まれる。これら被潤滑要素への潤滑油量を変更する理由の詳細については後述する。
【0017】
図3は実施例1の自動変速機の断面図である。尚、この断面図は、各回転軸の中心を通る展開断面図であり、各回転軸の位置関係等は実際と異なる。自動変速機は図外のエンジンに対して取り付けられ内部にトルクコンバータ2を収容するハウジング部HG1と、該ハウジング部HG1に取り付けられ内部に無段変速機8及び副変速機構9を収容するケース部HG2と、該ケース部HG2に取り付けられ、各回転軸を軸支するベアリング等を有するカバー部HG3と、を有する。
【0018】
入力軸9aの軸内にはベルト8c及び副変速機構9に潤滑油を供給する潤滑用軸心油路9a1が貫通形成されている。この潤滑用軸心油路9a1には、複数の径方向油路9a2が形成され、入力軸9aの外周に配置された副変速機構9の回転要素や摩擦要素に潤滑油を供給する。入力軸9aに嵌合された変速機出力軸5の軸内には、ハイクラッチH/Cに締結圧を供給する締結圧供給用油路5aと、潤滑用軸心油路9a1に潤滑油を供給する潤滑油供給用油路5bとが形成されている。変速機出力軸5は、ハウジング部HG1に形成され軸方向に膨出形成された出力軸支持部C1内にベアリングを介して回転可能に支持されている。
【0019】
図4は実施例1のパワートレーンにおける出力軸支持部近傍の拡大断面図である。出力軸支持部C1には、油圧コントロールバルブユニット10内のハイクラッチ油路63からハウジング部HG1に形成されたケース側ハイクラッチ圧油路63aを通り締結圧供給用油路5aへ径方向からハイクラッチ圧を供給するための締結圧供給部C10が形成されている。この締結圧供給部C10の内周にはブッシュC11が支持されている。ブッシュC11は耐摩耗性に優れた円筒状部材であり、ケース側ハイクラッチ圧油路63aと連通する位置に径方向油路C11aが形成されている。
変速機出力軸5の端部であって径方向油路C11aと径方向から見て重なる位置の外周には円環状の溝5dが形成され、この溝5dには、締結圧供給用油路5aに向けて開口する径方向油路5eが穿設されている。また、溝5dの軸方向両側にはシール部材5cが取り付けられ、ブッシュC11内周との間で摺動接触し液密性を確保している。
【0020】
出力軸支持部C1には、締結圧供給部C10よりも軸方向外側において、油圧コントロールバルブユニット10内の油路70からハウジング部HG1に形成されたケース側潤滑油供給用油路71を通り、潤滑油供給用油路5bに潤滑油を供給する潤滑油供給部C12が形成されている。潤滑油供給部C12は、変速機出力軸5の径方向に穿設された有底円筒状の中空部C12aが形成されている。中空部C12aは、底部においてケース側潤滑油供給用油路71と接続され、この底部が形成された第1円筒部C12a1と、第1円筒部C12a1よりも大径の第2円筒部C12a2と、第2円筒部C12a
2よりも大径の第3円筒部C13a3と、第3円筒部C13a3よりも大径であって内周にねじ溝がきられた第4円筒部C13a4とを有する。第4円筒部C13a4には、プラグ部材C12bがねじ込まれることで潤滑油供給部C12を閉塞する。
【0021】
中空部C12a内には、有底円筒状のスリーブD1が挿入されている。スリーブD1は、その外周が第2円筒部C12a2の内周と略同径の外周を有する。また、中空部C12aの第1円筒部C12a1内周と略同径の外周を有する細径スリーブD2と、を有する。スリーブD1の底部には、ケース側潤滑油供給用油路71に開口する連通孔D4が形成されている。また、細径スリーブD2の径方向には、スリーブD1及び細径スリーブD2の内周側と、細径スリーブD2の外周と第2円筒部C12a2との間に形成された空間とを連通する貫通孔D3が形成されている。また、スリーブD1と第2円筒部C12a2との間をシールするシール部材g1が設けられている。また、スリーブD1のシール部材g1よりもプラグ部材C12b側の外周に中空部C12aの第3円筒部C12a3が形成されており、スリーブD1の外周と第3円筒部C12a3の内周との間には隙間が形成されている。この隙間には、ケース側ハイクラッチ圧油路63aと連通する油路F1が形成されている。言い換えると、ケース側ハイクラッチ圧油路63aに油圧が供給されると、油路F1を介して第3円筒部C12a3の内周側に油圧が導入される。
【0022】
スリーブD1内には、スプールバルブE1がスリーブD1内でストローク可能に収装されている。スプールバルブE1は、プラグ部材C12b側のプラグ側受圧面E22から突出したプラグ側凸部E21と、ケース側潤滑油供給用油路71側の油路側受圧面E31から突出した油路側凸部E3とを有する。油路側受圧面E31とスリーブD1の底部との間にはリターンスプリング82が介挿され、スプールバルブE1をプラグ部材C12b側に付勢している。
ここで、スリーブD1のプラグ側端部とプラグ部材C12bとの間には所定の隙間F2を有し、プラグ側凸部E21の突出方向高さは隙間F2と略同一とされている。これにより、油路F1を介して導入された油圧は、スプールバルブE1のプラグ側受圧面E22に確実に作用することができる。一方、油路側凸部E3の天面E5には、連通孔D4及び連通孔D3の開口径よりも小径の小径オリフィスE6が穿設されている。また、油路側凸部E3の側面には径方向に貫通する径方向貫通孔E4が穿設され、小径オリフィスE6と径方向貫通孔E4とが連通して形成されている。
【0023】
また、天面E5の外周径は、スリーブD1に形成された貫通孔D4の内径よりも大径とされている。これにより、スプールバルブE1がケース側潤滑油供給用油路71側に押し付けられると、天面E5とスリーブD1の底面とが当接する(または近接して非常に小さな隙間となる)ことで、ケース側潤滑油供給用油路71から供給される潤滑油は、小径オリフィスE6を経由することになる。このように、連通孔D4と貫通孔D3とが連通する状態と、スプールバルブE1の移動によって連通孔D4と貫通孔D3との間の潤滑油の流れに小径オリフィスE6を経由させる状態とを切り換えることで潤滑油量変更手段を構成する。
【0024】
次に、上記構成に基づく潤滑油量変更に係る作用について説明する。実施例1のパワートレーンでは、前進走行時において、ローブレーキL/BもしくはハイクラッチH/Cのどちらかを締結して走行する。前進第1速が選択されているときは、ローブレーキL/Bのみ締結し、それ以外は解放するため、副変速機構9内のラビニヨ遊星歯車機構は、各回転要素が相対回転し、入力軸9aの回転よりも変速機出力軸5の回転のほうが遅くなる。このように、相対回転が生じている場合には、各回転要素に対する潤滑油量は多く必要となる。一方、前進第2速が選択されているときは、ハイクラッチH/Cのみ締結し、それ以外は解放するため、副変速機構9内のラビニヨ遊星歯車機構は、各回転要素が一体回転し、入力軸9aと変速機出力軸5とは一体に回転する。このように、相対回転が生じていない場合には、各回転要素に対する潤滑油量は多く必要とせず、潤滑油量が多すぎると、却ってローブレーキL/BやリバースブレーキR/Bにおけるドラグトルクが大きくなるため、好ましくない。また、前進第2速が選択されているときは、無段変速機構8によってセカンダリプーリ側が増速されており、セカンダリプーリ側に設置されている副変速機構9は、特に高回転となることから、不要な潤滑油によるドラグトルクは燃費の悪化を招きやすいという問題もある。
【0025】
すなわち、前進走行時において、前進第1速と前進第2速とで潤滑油量を変更することが望ましいことが分かる。よって、選択された変速段に応じて潤滑油量を変更すべく、油圧コントロールバルブユニット10内において、異なるオリフィス径を有する切り換えバルブ等を備え、ハイクラッチ圧等に応じて切り換えることが考えられる。
【0026】
ここで、油圧コントロールバルブユニット10は、箱状のアルミ部材に複雑な溝を形成し、これらアルミ部材を組み合わせて油路を形成する。このような設計手順を踏んで設計される油圧コントロールバルブユニット10は、油路抵抗や、隣の油路との間に必要な厚み等を十分に考慮して設計される要素であることから、簡単に油路構成を変更することは非常に困難である。また、バルブを追加するとなると、ハイクラッチ圧を潤滑用の油路近傍に取り回してこなければならず、油路の取り回しが更に複雑化し、単に切り換えバルブを追加するだけとはいえ、油圧コントロールバルブユニット10全体に影響を及ぼし、容易ではない。
【0027】
そこで、実施例1では、締結圧供給用油路5aと、潤滑油供給用油路5bとが、変速機出力軸5の軸心内で隣接している点に着目し、油圧コントロールバルブユニット10内では特に設計変更することなく、潤滑油量を変更する構成とした。
【0028】
図4は実施例1のパワートレーンにおいて前進第1速が選択されている場合の作動を表す断面図、
図5は実施例1のパワートレーンにおいて前進第2速が選択されている場合の作動を表す断面図である。
図4,5中の矢印で油の流れを示す。
前進第1速が選択されている場合、ローブレーキL/Bに締結圧が供給されており、ハイクラッチH/Cには何ら締結圧は供給されていないため、ケース側ハイクラッチ圧油路63aには何ら圧力が生じず、油の流れも発生していない。この場合、スプールバルブE1にはリターンスプリング82による付勢力のみが作用しているため、連通孔D4と貫通孔D3とは特にオリフィス等を介することなく連通した状態である。このとき、ケース側潤滑油供給用油路71から供給された油は、連通孔D4から貫通孔D3を通って潤滑油供給用油路5bに流れ込むため、潤滑流量として大流量が供給される。
【0029】
前進第2速が選択されている場合、ハイクラッチH/Cに締結圧が供給されているため、ケース側ハイクラッチ圧油路63aには締結圧が作用し、径方向油路C11aから溝5dを通って径方向油路5eに供給され、締結圧供給用油路5aにハイクラッチ圧が供給される。このとき、スプールバルブE1にはハイクラッチ圧が作用し、リターンスプリング82の付勢力に抗してスプールバルブE1が
図5中上方に押されて移動するため、スプールバルブE1の先端、すなわち天面E5が連通孔D4を封止する。すると、ケース側潤滑油供給用油路71から供給された油は、小径オリフィスE6から径方向貫通孔E4を通って貫通孔D3から潤滑油供給用油路5bに流れ込むため、潤滑油供給用油路5bの流路抵抗が大きくなり、潤滑流量として小流量が供給される。
【0030】
このように、ハイクラッチH/Cに締結圧を供給すると、その油圧に応じて小径オリフィスE6を経由するように潤滑油の供給経路が変更されるため、潤滑油供給用油路5bの流路抵抗も変更され、潤滑油量が変更される。そして、この潤滑油量の変更は、変速機出力軸5の軸内に設けられたスプールバルブE1とリターンスプリング82とによって構成された潤滑油量変更手段80で達成されるため、油圧コントロールバルブユニット10内の構成を一切変更する必要が無く、また、ハウジング部HG1における設計変更も極僅かである。
ここで、例えば、基本的にエンジンの仕様によらず共通部品であるケース部HG2に潤滑油量変更手段を設けた場合を想定する。このとき、コスト削減のために一部機種についてスプールバルブE1を設けない自動変速機としたい場合、新たにケース部HG2を設計する必要があり、実質的に潤滑油量変更手段80を設けない機種の設定は困難である。また、同様に、機種によらず共通の部品である変速機出力軸5内に潤滑油量変更手段80を設ける構造にした場合にも選択の自由度がない。これに対し、実施例1のように仕様毎に形状が異なるハウジング部HG1に潤滑油量変更手段を設けることで、自動変速機の機種毎にスプールバルブE1を設けるか否かの選択自由度を広げることができる。
【0031】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
【0032】
(1)ハウジング部HG1(自動変速機ケース)内に形成され、ハイクラッチH/C(摩擦締結要素)に対し締結圧を供給する締結圧供給用油路5aと、ハウジング部HG1内に形成され、被潤滑要素であるクラッチ,ブレーキ,ベルト8cもしくは遊星歯車等に対し潤滑油を供給する潤滑油供給用油路5bと、ハウジング部HG1に設けられ、締結圧供給用油路5a内の締結圧に応じて作動し、ハイクラッチH/Cが締結している場合には、ハイクラッチH/Cが締結していない場合よりも、潤滑油供給用油路5bの流路抵抗を大きくする潤滑油量変更手段と、を備えた。
よって、ハイクラッチH/Cの締結時のように相対回転が少なく、潤滑油量が少なくてよい場合には、ハイクラッチ圧を利用して潤滑流量が多くなり、それ以外のときは潤滑流量が少なくなるため、油圧コントロールバルブユニット等を設計変更することなく、簡易な構成で潤滑流量を制御することができる。
【0033】
ここで、仮に変速機出力軸5内にスプールを設けた場合(以下、比較例)と実施例1のようにハウジング部HG1にスプールバルブE1を設けた場合との相違点に基づく作用効果を説明する。比較例の場合、変速機出力軸5の回転中心に対して偏心した位置にスプールが配置されると、変速機出力軸5の回転数の増加に伴い、遠心力によるスプールの摺動抵抗が増加し、スプールの作動性を確保することが困難となる。これに対し、実施例1のようにハウジング部HG1内にスプールバルブE1を設けることで、回転数に関係なく安定したスプールの作動性を確保することができる。
【0034】
(2)自動変速機ケースは、自動変速機の変速機構を収容するケース部HG2と、該ケース部HG2及びエンジン(原動機)に連結されるハウジング部HG1(ハウジング)と、を備え、潤滑油量変更手段は、ハウジング部HG1に設けられる。
エンジンに連結されるハウジング部HG1は、エンジンの仕様毎に形状が異なるため、自動変速機の機種毎にスプールバルブE1を設けるか否かの選択自由度を広げることができる。
【0035】
(3)被潤滑要素はラビニヨ遊星歯車機構(遊星歯車)を含み、この遊星歯車はハイクラッチH/Cの締結により一体回転する。
すなわち、被潤滑要素である副変速機構9のラビニヨ遊星歯車機構は、ハイクラッチH/Cの締結により一体回転するため、潤滑量は少なくてよい。したがって、締結によりラビニヨ遊星歯車を一体回転させるハイクラッチH/Cの締結圧に応じて潤滑油供給油路の流路抵抗を大きくすることにより、被潤滑要素の耐久性を損なうことなく、ドラグトルクを低減することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0036】
(4)潤滑油量変更手段は、潤滑油供給用油路中に設けられたスプールバルブE1(スプールバルブ)を有し、スプールバルブE1は、一端側にハイクラッチH/Cの締結圧が作用することで他端側に摺動し、他端側に摺動したときに該スプールバルブE1によって潤滑油供給油路の断面積を小さくし、これにより流路抵抗を大きくする。言い換えると、小径オリフィスE6を経由することで、流路抵抗を大きくする。
これにより、ハウジング部HG1の一部のみ設計変更するだけで潤滑油量を変更することができ、低コストで潤滑油量を制御することができる。
【0037】
以上、実施例1について説明したが、本願発明は上記構成に限られず、他の構成であっても構わない。実施例1ではベルト式無段変速機8と副変速機構9とを備えた構成を示したが、有段式の自動変速機において潤滑油量を変更したい場合においても適用可能である。また、副変速機構9を備えた構成でなくても、単に前後進切換機構を備えた構成に適用しても有効である。すなわち、前進時等に締結要素の締結によって一体回転するような前後進切換機構の場合には、前進時における潤滑油量は少なくてよく、一方、後退時には、相対回転が生じることで潤滑油量は多くする必要があるからである。
【0038】
また、実施例1では、スプールバルブE1の移動によって小径オリフィスE6を経由する構成としたが、オリフィスを開閉する場合に限らず、スプールに潤滑油路が接続されたポートを有し、スプールの移動に応じて開度が設定されることで、流路抵抗が変化する構成としてもよい。
【0039】
また、実施例1では、自動変速機ケースのうち、ハウジング部HG1の内部にスプールバルブE1を設けた例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハウジング部HG1から変速機出力軸5への油路の受け渡し部にスリーブを嵌合させ、これにより潤滑油量変更手段を構成してもよい。