(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773905
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】加速度センサ搭載ガスメーター
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
G01F3/22 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-27324(P2012-27324)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-164327(P2013-164327A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107490
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 博久
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晃
(72)【発明者】
【氏名】大和久 崇
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 守
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−142347(JP,A)
【文献】
特開2012−018033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22
G01F 1/00
G01V 1/00
G01V 1/16
G01V 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸方向加速度センサを搭載し、震度判定に基づいてメーター遮断する機能を備えたガスメーターであって、
ガスメーター設置時に、該加速度センサが計測する
3軸の加速度値
変動に基づいて
ガスメーターの第一の静止判定をする手段と、
第一の静止判定における加速度値変動が所定の閾値以下のときに、3軸方向の初期オフセット値(θ=θ
0、φ=φ
0)を取得する手段と、
ガスメーター供用中の地震発生時において、
地震終息後に3軸の加速度値変動に基づいてガスメーターの第二の静止判定をする手段と、
第二の静止判定における加速度値変動が所定の閾値以下のときに、地震終息後オフセット値(θ=θe、φ=φe )を取得する手段と、
地震終息後オフセット値の初期オフセット値からの変動量を求める手段と、
該変動量が第一の閾値(ε1、ε2)を超えたときは
、メータ
ー遮断する手段と、
を備えて成ることを特徴とする加速度センサ搭載ガスメーター。
但し、重力加速度Gの3軸成分をGx、Gy、Gzとして
【数1】
【請求項2】
前記初期オフセット値(θ=θ0)が第二の閾値(α0)を超えたときは警報発報する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ搭載ガスメーター。
【請求項3】
地震終息後に配管系統の安全が確認された時は、遮断されたメーターを自動的に復帰させる自動復帰機能をさらに備え、かつ、
前記変動量が前記第一の閾値を超えているときは、該自動復帰機能を稼働させない手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の加速度センサ搭載ガスメーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスメーターに係り、特に、3軸方向加速度センサを搭載したガスメーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時のガスメーター遮断装置として鉄球接触型震度スイッチが用いられている(例えば特許文献1)。震度スイッチ100は、
図6に示すように函体101内の凹円錐状内底面102に球103を転動自在に収納している。通常時は、球103は中蓋104中央部に上下方向摺動自在に保持された円盤105が、自重により球103を下方に押し付けており、円盤105と一体のプランジャ108は下降して、スイッチ機構106と接点107とをOFF状態としている。
【0003】
地震等による函体101の震動があると、球103は中央から端へと転動し、これに伴いプランジャ108が上方に押し上げられて接点107をオンにし、遮断弁(図示せず)を作動させる。
【0004】
上記震度スイッチ100の方式では、地震動と衝撃動との判別が不明確という問題があり、これを解決するため3軸方向加速度センサを搭載したガスメーターも提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−48634号公報
【特許文献2】特開平9−145444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスメーターは傾きがない正立状態で設置されていることが求められ、ガスメーター取付の際に水準器による水平確認が実施されている。
また、設置時は正立状態で取り付けられていても、設置後に地震等発生により傾きが生じる場合もある。特に、メーター周囲の地面全体が地震等の影響で著しく傾いている場合には、地中の配管に亀裂等の問題が生じている場合もあり、これを放置又は自動復帰機能を有するメーターにおいて自動復帰させることは保安上問題となる。
【0007】
しかしながら従来、このような状態を速やかに判定する手段はなく、検針時の目視による確認に止まっていた。また、この問題の対応に関して、特許文献1、2には何らの開示もない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、ガスメーターに搭載される加速度センサを利用して上記課題を解決する技術を完成させた。本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る加速度センサ搭載ガスメーターは、
(1)3軸方向加速度センサを搭載し、震度判定に基づいてメーター遮断する機能を備えたガスメーターであって、
ガスメーター設置時に、該加速度センサが計測する加速度値に基づいて、3軸方向の初期オフセット値(θ=θ
0、φ=φ
0)を取得する手段と、
ガスメーター供用中の地震発生時において、地震終息後オフセット値(θ=θe、φ=φe)を取得する手段と、
地震終息後オフセット値の初期オフセット値からの変動量を求める手段と、
該変動量が第一の閾値(ε1、ε2)を超えたときは、ガスメーターの供給を遮断する手段と、
を備えて成ることを特徴とする。
但し、重力加速度Gの3軸成分をGx、Gy、Gzとして
【0009】
【数1】
【0010】
本発明において、オフセット値φについては逆正接値を用いるか、及び/又は、逆正弦値及び逆余弦値を用いるかを適宜選択することができる。
【0011】
(2)上記(1)の発明において、前記初期オフセット値が第二の閾値(α0)を超えたときは警報発報する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0012】
(3)上記各発明において、地震終息後に配管系統の安全が確認された時は、遮断されたメーターを自動的に復帰させる自動復帰機能をさらに備え、かつ、
前記変動量が前記第一の閾値を超えているときは、該自動復帰機能を稼働させない手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガスメーターの傾きを定量的に取得、監視することができるため、設置時の施工の適正化が可能になるという効果がある。
【0014】
また、地震発生後のガスメーターの傾き、特に目視では判定困難な付近の地面全体が傾いているケースであっても検知できる。これにより、地中配管に亀裂等が生じているリスクを、地上から判定可能という効果がある。
【0015】
また、変動量に基づいて自動復帰機能の稼働停止を行う発明においては、地中配管の亀裂等の危険性がある場合に自動復帰機能を稼働させないため、安全性のさらなる向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一の実施形態に係る加速度センサ搭載ガスメーター1の制御ブロック構成を示す図である。
【
図2】重力加速度の3軸方向オフセット値θ、φを求める方法を示す図である。
【
図3】第一の実施形態におけるメーター傾き判定フローを示す図である。
【
図4】第二の実施形態におけるメーター傾き判定フローを示す図である。
【
図5】第三の実施形態におけるメーター傾き判定フローを示す図である。
【
図6】従来のガスメーター遮断装置100の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、
図1乃至4を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0019】
図1を参照して、加速度センサ搭載ガスメーター1は、筺体1a内のガス流路5中に配設され需要家のガス使用量を計測する流量センサ4と、ガス流路5内の圧力計測のための圧力センサ7と、緊急時にガス供給を遮断するための遮断弁6と、地震検知及びメーターの傾き検知を行う加速度センサ3と、需要家のガス使用量を表示する使用量表示部9と、メーターの傾きが後述する閾値を超えている場合にアラーム発報を行うアラーム表示部8と、これら各部と情報の授受を行って必要な指令を発する制御部2と、を主要構成として備えている。
【0020】
加速度センサ3は、互いに直交するX,Y,Z軸の加速度を検出するセンサであり、例えばピエゾ抵抗素子を用いてホイートストーンブリッジ回路を構成し、抵抗値変化を検出するデバイスを用いることができる。加速度センサ3の検出した加速度信号は、所定の周波成分を抽出するフィルター(図示せず)、検出信号をA/D変換して出力する信号変換部(図示せず)等を経由して、制御部2に取り込まれる。
【0021】
制御部2は、加速度センサ3により得た3軸加速度に基づくメーターの傾き判定、判定結果に基づく遮断弁6の開閉制御及びアラーム発報制御、等を行う機能を備えている。なお、制御部2はCPU、RAM、ROM、クロック回路、補助メモリ部等を主要構成とするマイコンにより実装可能である。
【0022】
次に、
図3を参照して、制御部2により実行されるメーター設置以降の傾き監視のフローについて説明する。メーター設置完了後に(S101)、メーター起動操作が行われる(S102)。
【0023】
次いで、加速度センサにより加速度値の測定が行われ、3軸の値変動が所定の閾値以内に収まっていることを以ってメーター静止状態を確認する(S103においてYES)。
この状態で初期オフセット値θ
0、φ
0の取得が行われる(S104)。
図2を参照して、θ
0、φ
0は、重力加速度Gの3軸成分をGx、Gy、Gzとして上記(1)、(2)式で示される。なお、表示の便宜上、重力方向を上向きに示している。
【0024】
初期オフセット値取得後に地震が発生した際には、加速度センサによる震度又は震度相当の指標値(例えばSI値)判定が行われる(S106)。なお、本フローでは省略するが、実際には所定の震度以上に相当する場合には、遮断弁6によるメーター遮断が行われる。
【0025】
さらに地震終息後にメーターの静止判定が行われる。静止判定は、3軸の加速度値変動が所定の閾値以下であるか否かにより行われる(S107)。閾値以下の場合には(S107においてYES)、上記(1)、(2)式により地震後のオフセット値
θe,φeの取得が行われる(S108)。
【0026】
さらに、地震後オフセット値の初期オフセット値に対する変動量が求められる(S109)。具体的には、オフセット値の差の絶対値 |θe−θ
0|、|φe−φ
0| がそれぞれ所定の閾値(請求項における第一の閾値)ε1、ε2以下に収まっているか否かが判定される。閾値以下である場合には(S109においてYES)、地震によるメーター傾きなし、又は無視できると判定され、メーター遮断しない(S106へ)。
【0027】
オフセット値の差の絶対値が閾値を超えている場合には(S109においてNO)、地震による配管の傾き、又は地面全体の傾きが異常であると判定され、遮断弁の閉止によりメーター遮断が行われる。同時にアラーム表示部8にアラーム点灯が行われる。(S110)。
【0028】
なお、本実施形態では重力加速度Gの3軸成分Gx、Gy、Gzにより傾き判定する例を示したが、X成分、Y成分は非常に小さいため誤差も大きくなることを考慮して、Z成分のみに基づき判定する態様としてもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0029】
また、本実施形態では逆三角関数を用いて傾きθ、φを求める例を示したが、θ、φの三角関数cosθ、tanφの値により判定する態様としてもよい。
【0030】
また、本実施形態では初期及び地震後のオフセット変動量の判定において、オフセット値の差の絶対値)に対して異なる閾値ε1、ε2を用いる例を示したが、同一閾値であってもよい。
【0031】
また、変動量評価指標として、地震前後のオフセット値の差の絶対値を用いる例を示したが、他の評価指標、例えば両オフセット値の比θe/θ
0、φe/φ
0 等により判定する態様としてもよい。
【0032】
<第二の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、メーター起動操作に際してメーター取付時の傾きが所定の閾値以下であること条件とする態様に関する。本実施形態の構成は、上述の実施形態の構成と同様であるので重複説明を省略する。
図4を参照して、S201乃至S204については第一の実施形態のS101乃至S104と同様である。)。
【0033】
初期オフセット値 θ
0,φ
0 の取得(S204)後に、θ
0が所定の閾値(請求項における第二の閾値)α0以下に収まっているか否かの判定が行われる(S205)。閾値を超えている場合には(S205においてNO)、閾値以下となるまでメーター取付の手直しを行う(S201)。閾値以下である場合には(S205においてYES)、メーター取付の手直しは行わない(S205)。
その後のフローについては第一の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0034】
<第三の実施形態>
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、初期及び地震後のオフセット変動が所定の閾値以下であることを、メーター自動復帰の条件とする態様に関する。本実施形態の構成が上述の各実施形態と異なる点は、制御部2がメーター自動復帰可否判定機能を、さらに備えていることである。その他の構成は第一の実施形態の構成と同様であるので重複説明を省略する。
図5を参照して、S301乃至S306については第二の実施形態のS201乃至S206と同様である。
【0035】
メーター供用開始後に地震が発生した時は、加速度センサ3により震度または震度相当の指標値(例えばSI値)判定が実施される(S307)。基準値(例えば、震度5に相当する判定値)を下回る場合には(S308においてNO)、第二の実施形態のS208以下のフローが実行される。
【0036】
基準値以上の場合には(S307においてYES)、遮断弁6を閉じてメーター遮断が行われる(S309)。
その後、地震が終息した後にメーターの静止判定が行われる。静止判定は、3軸の加速度値変動が所定の閾値以下であるか否かにより行われる(S310)。閾値以下の場合には(S310においてYES)、上記(1)、(2)式により地震後のオフセット値
θe,φeの取得が行われる(S311)。
【0037】
次いで、地震後オフセット値の初期オフセット値に対する変動量が求められる(S312)。具体的には、地震前後のオフセット値の差の絶対値がそれぞれ所定の閾値(請求項における第一の閾値)ε1、ε2以下に収まっているか否かが判定される。
【0038】
閾値以下である場合には(S312においてYES)、次に流量センサ4による微小流量検知、圧力センサ7による圧力低下の有無検知により、配管漏えい有無の判定が行われる(S313)。これらの値が所定の条件を満たす場合であって(S313においてYES)、S309においてメーターが遮断となっている場合には自動復帰操作(遮断弁6開)が行われ(S314)、S307に戻る。
【0039】
一方、これらの値が基準値以下の場合には(S313においてNO)、自動復帰操作(遮断弁6開)は行われず、アラーム表示点灯となる(S315)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ガスメーターのみならず、正立状態を設置条件とする計量器等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・・加速度センサ搭載ガスメーター
2・・・・制御部
3・・・・加速度センサ
4・・・・流量センサ
5・・・・ガス流路
6・・・・遮断弁
7・・・・圧力センサ
8・・・・アラーム表示部
9・・・・使用量表示部