(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム合金製のアクチュエータアームであって、該アクチュエータアームの表面には酸化物粒子による突起が存在せず、該酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みの平均径が1μm以上5μm以下であることを特徴とするアクチュエータアーム。
アルミニウム合金製のアクチュエータアームを化学研磨して該アクチュエータアームの形状を決定する形状決定工程と、前記形状決定工程後に前記アクチュエータアームとフッ化物イオンを含む溶液とを接触させて該アクチュエータアームの表面に露出する酸化物粒子を選択的に溶解する酸化物粒子溶解工程とを有し、
前記酸化物粒子溶解工程が、前記フッ化物イオンの濃度が0.8mol/L以上1.6mol/L以下で液温が15℃〜25℃の溶液で行うものであって、
前記アクチュエータアームの表面を、前記酸化物粒子による突起が存在せず、該酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成することを特徴とするアクチュエータアームの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブはコンピューターの情報記録装置の1つであり、例えば
図6に示すように、磁気ディスク101と磁気ヘッド102とを備えている。磁気ヘッド102は、アクチュエータ103の先端に設けられており、アクチュエータ103の回動動作によって磁気ディスク101上の所定の位置に移動し、磁気ディスク103に対して情報の書き込みや読み出しを行う。
【0003】
磁気ヘッド102を備えるアクチュエータ103は、通常、アーム部2とコイル部3と支持部4とで構成され、そのアーム部2は、磁気ヘッド102を先端に設けたスライダー9と、そのスライダー9を連結部8を介して接続したアクチュエータアーム1とで構成されている。コイル部3は、駆動コイル6と、駆動コイル6を保持する駆動コイル保持枠5とで構成されており、その駆動コイル6は、永久磁石7,7と共にコイルモータを構成している。支持部4は、アーム部2とコイル部3とを支持する回動軸として作用する。こうしたアクチュエータ103は、コイル部3が回動することにより、アーム部2が高速で駆動し、スライダー9の先端に設けられた磁気ヘッド102を磁気ディスク101上の所定の位置まで移動させるように動作する。
【0004】
アクチュエータアーム1は、高速駆動に耐え得る強度及び弾性係数が要求され、さらに軽量化も要求されている。そのため、構成材料としてアルミニウム合金が好ましく用いられている。アルミニウム合金製のアクチュエータアーム1は、例えば
図1に示すように、スライダー9が取り付けられる側のスイング部10と、駆動コイル6が保持される側の駆動コイル保持枠5とで構成されている。こうしたアクチュエータアーム1は、通常、プレスや切削等によって加工されるが、加工後のアクチュエータアーム1の表面には、加工によるバリやキズが存在する。バリは、アクチュエータアーム1がアクチュエータ103の一部としてハードディスクドライブに組み込まれた後、微細な金属片等となって磁気ディスク101の上に剥がれ落ちるおそれがあり、剥がれ落ちた金属片等は、磁気ディスク101に記録された情報の読み出し又は書き込みを阻害するおそれがある。キズは、アクチュエータアーム1の寸法精度に影響を及ぼすことがある。そのため、アクチュエータアーム1の表面のバリやキズは、通常、電解研磨や化学研磨等によって除去されている。
【0005】
アクチュエータアーム1の構成材料であるアルミニウム合金は、通常、ケイ素酸化物粒子等の酸化物粒子を含んでいる。こうした酸化物粒子は、電解研磨や化学研磨によっても溶解され難いという性質がある。そのため、アルミニウム合金製のアクチュエータアーム1を電解研磨や化学研磨した場合、アルミニウム合金自体は溶解するものの、酸化物粒子は溶解せずにアクチュエータアーム1の表面に残留しやすい。アクチュエータアーム1の表面に残留した酸化物粒子は、ハードディスクドライブ内でのアクチュエータアーム1の駆動時にその表面から脱落することがあり、脱落した酸化物粒子は、磁気ディスク101上に落下し、磁気ディスク101に記録された情報の読み出し又は書き込みを阻害するおそれがある。
【0006】
特許文献1には、アクチュエータアーム及びその表面処理方法が提案されている。この技術は、アルミニウム合金製のアクチュエータアームの表面を、80℃〜110℃に温度調整したリン酸及び硝酸を含む混合水溶液で化学研磨した後、フッ化物イオンを含む酸性水溶液中に5秒〜300秒間浸漬処理してアクチュエータアームの表面処理を行うものである。この技術によれば、アルミニウム合金製のアクチュエータアームの表面の成形加工時に生じたバリ、キズ及び凹凸をなくし、かつ酸化物粒子の脱落がなく、表面の清浄度が高められたアクチュエータアームを得ることができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で提案された技術は、アクチュエータアームの表面に生じたバリ、キズや凹凸等を無くすことを解決課題とし、具体的には、平均表面粗さが0.5μm以下の平滑表面を持つアクチュエータアームを得ることを目的としている。そして、そのための手段として、化学研磨したアクチュエータアームを、フッ化物イオンを含む酸性水溶液中に浸漬処理してアルミニウム合金の母相と酸化物粒子とを同時に溶解することによって、酸化物粒子を除去している。
【0009】
しかしながら、この技術では、酸化物粒子を溶解除去するのと同時に、アルミニウム合金の母相も溶解するので、全体の寸法が変化してしまうとともに、アルミニウム合金の母相中に埋まっている酸化物粒子が表面に現れてきてしまう。そのため、この技術では、アクチュエータアームの表面に存在する酸化物粒子をさらに少なくすることに難点があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アルミニウム合金製のアクチュエータアームの表面から脱落する酸化物粒子が極めて少ないアクチュエータアーム及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、アルミニウム合金製部材の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るアクチュエータアームは、アルミニウム合金製のアクチュエータアームであって、該アクチュエータアームの表面には酸化物粒子による突起が存在せず、該酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みの平均径が1μm以上5μm以下であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、アクチュエータアームの表面には酸化物粒子による突起が存在せず、その酸化物粒子が除去された痕跡からなる上記平均径の窪みを有するので、アクチュエータアームの表面に存在又は露出する酸化物粒子が極めて少ないものとなっている。そのため、このアクチュエータアームを使用したハードディスクドライブは、アクチュエータアームの駆動時にその表面から脱落する酸化物粒子が極めて少なく、磁気ディスク上に酸化物粒子が落下するのを極力防止できる。その結果、ハードディスクドライブの情報の読み出し又は書き込み性能をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係るアクチュエータアームにおいて、前記窪みのうち前記平均径の1/2倍〜2倍の窪みが、縦横20μmの測定領域に10個以上100個以下の範囲で存在する。
【0014】
この発明によれば、窪みのうち平均径の1/2倍〜2倍の窪みが上記測定領域に上記範囲で存在するので、微細な凹部を持つ表面になっている。その結果、アクチュエータアームの表面は、光沢面ではなく半光沢面又は曇り面になっているという構造上の特徴がある。
【0015】
本発明に係るアクチュエータアームにおいて、前記アクチュエータアームの表面の反射率が、波長500nm〜600nmの範囲で10%以上40%以下である。
【0016】
この発明によれば、アクチュエータアームの表面の反射率が上記範囲内であるので、アクチュエータアームの表面は、光沢面ではなく半光沢面又は曇り面になっているという構造上の特徴がある。
【0017】
上記課題を解決するための本発明に係るアクチュエータアームの製造方法は、アルミニウム合金製のアクチュエータアームを化学研磨して該アクチュエータアームの形状を決定する形状決定工程と、前記形状決定工程後に前記アクチュエータアームとフッ化物イオンを含む溶液とを接触させて該アクチュエータアームの表面に露出する酸化物粒子を選択的に溶解する酸化物粒子溶解工程とを有し、前記酸化物粒子溶解工程が、前記アクチュエータアームの表面を、前記酸化物粒子による突起が存在せず、該酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、アルミニウム合金製のアクチュエータアームを化学研磨してアクチュエータアームの形状を決定した後に酸化物粒子を選択的に溶解して、アクチュエータアームの表面を酸化物粒子による突起が存在せず、その酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成するように処理するので、酸化物粒子溶解工程では、アクチュエータアームの寸法を変動させることなくその表面に存在又は露出する酸化物粒子を極めて少なくすることができる。その結果、製造されたアクチュエータアームを使用したハードディスクドライブは、寸法精度に優れると共に、アクチュエータアームの駆動時にその表面から脱落する酸化物粒子が極めて少なく、磁気ディスク上に酸化物粒子が落下するのを極力防止できる。その結果、ハードディスクドライブの情報の読み出し又は書き込み性能をより向上させることができる。
【0019】
本発明に係るアクチュエータアームの製造方法において、前記酸化物粒子溶解工程を、前記フッ化物イオンの濃度が0.8mol/L以上1.6mol/L以下で液温が15℃〜25℃の溶液で行う。
【0020】
この発明によれば、酸化物粒子溶解工程を上記した条件の溶液を用いて行うので、アルミニウム合金の母相の溶解を抑えつつ、アクチュエータアームの表面に存在又は露出する酸化物粒子を選択的に溶解することができる。そのため、処理後のアクチュエータアームは、その表面に酸化物粒子による突起が存在せず、その酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成することができる。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係るアルミニウム合金製部材の表面処理方法は、アルミニウム合金製部材を化学研磨して該部材の形状を決定する形状決定工程と、前記形状決定工程後に前記部材とフッ化物イオンを含む溶液とを接触させて該部材の表面に露出する酸化物粒子を選択的に溶解する酸化物粒子溶解工程とを有し、前記酸化物粒子溶解工程が、前記部材の表面を、酸化物粒子による突起が存在せず、該酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、アルミニウム合金製部材を化学研磨した後に酸化物粒子の選択的な溶解を行って、該部材の表面を、酸化物粒子による突起が存在せず、その酸化物粒子が除去された痕跡からなる窪みを形成するように処理するので、部材の寸法を変動させることなくその表面に存在又は露出する酸化物粒子を極めて少なくすることができる。その結果、処理後の部材を使用した製品は、その表面から脱落する酸化物粒子が極めて少なく、その酸化物粒子に基づいた悪影響を極力防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るアクチュエータアーム及びその製造方法によれば、アクチュエータアームの表面に存在又は露出する酸化物粒子が極めて少ないものとなっているので、アクチュエータアームを使用したハードディスクドライブは、アクチュエータアームの駆動時にその表面から脱落する酸化物粒子が極めて少なく、磁気ディスク上に酸化物粒子が落下するのを極力防止できる。その結果、ハードディスクドライブの情報の読み出し又は書き込み性能をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るアクチュエータアーム及びその製造方法並びに表面処理方法を図面を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、下記の記載や図面のみに限定されるものではない。
【0026】
[アクチュエータアーム]
本発明に係るアクチュエータアーム1は、
図1〜
図3に示すように、アルミニウム合金製であり、そのアクチュエータアーム1の表面Sには、アクチュエータアーム1の母相Bに含まれる酸化物粒子30による突起50が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40の平均径Dが1μm以上5μm以下であることに特徴がある。
【0027】
アクチュエータアーム1は、
図1及び
図6に示すように、駆動コイル6及びスライダー9が取り付けられるアルミニウム合金製の成形部材である。アクチュエータアーム1は、スライダー9が取り付けられる側のスイング部10と、駆動コイル6が取り付けられる側の駆動コイル保持枠5とで構成されている。スイング部10は、積層形態で配置される複数の磁気ディスクそれぞれの上にスライダー9を個々に配置できるように、複数の多段構造となっている。こうしたアクチュエータアーム1は、例えば、アルミニウム合金を押出成形した後、その成型品を所定厚さのブロックに切断し、そのブロックを切削加工して得ることができる。なお、加工後のアーム表面Sには、
図5(A)に示すように、バリ20や微細なキズ21が存在する。
【0028】
(アルミニウム合金)
アクチュエータアーム1には、高速での駆動に耐える強度、弾性、及び軽量化が要求され、その成形材料としてアルミニウム合金が用いられている。アクチュエータアーム用のアルミニウム合金としては、通常、JIS A6063やJIS A6061等のアルミニウム合金が好ましく用いられている。これらのアルミニウム合金は、少量のケイ素を少なくとも含有し、そのケイ素等が酸化物粒子30(
図2及び
図5を参照)としてアルミニウム合金の表面S及び母相Bに存在している。本発明に係るアクチュエータアーム1では、母相Bに存在する酸化物粒子30の粒径は特に限定されないが、前記したアルミニウム合金を用いた場合、そのアルミニウム合金は、通常、1μm〜5μm程度の平均粒径の酸化物粒子30を含むものが多い。本発明に係るアクチュエータアーム1は、こうした平均粒径の酸化物粒子30を母相Bに含むものが好ましく適用される。
【0029】
アルミニウム合金は、上記した要求に応えることができる合金であればよく、例えば、0.1質量%以上1.4質量%以下のケイ素を少なくとも含む組成のものであればよい。特に、JIS A6063のAl−Mg−Si系合金やJIS A6061のAl−Mg−Si系合金が好ましく適用される。JIS A6063のAl−Mg−Si系合金は、0.2質量%以上0.6質量%以下のケイ素と、0.45質量%以上0.9質量%以下のマグネシウムとを含有し、さらに、所定量のマンガン、銅、鉄、クロム、亜鉛及びチタンを含有するものとして規格化されている。また、JIS A6061のAl−Mg−Si系合金は、0.4質量%以上0.8質量%以下のケイ素と、0.8質量%以上1.2質量%以下のマグネシウムとを含有し、さらに、所定量のマンガン、銅、鉄、クロム、亜鉛及びチタンを含有するものとして規格化されている。なお、化学組成の分析方法は特に限定はされないが、例えば、原子吸光分析法、発光分光分析法、ICP発光分光法等が挙げられる。
【0030】
アルミニウム合金は、後述する形状決定工程と酸化物粒子溶解工程で処理される。各工程で処理された後のアクチュエータアーム1は、寸法精度がよく且つ表面Sに酸化物粒子30が存在しない。そして、最終的には
図6に示すように、後端側にある駆動コイル保持枠5に駆動コイル6が取り付けられ、先端側の連結部8にスライダー9が取り付けられて、アクチュエータ103を構成する。アクチュエータ103は、磁気ディスク101の近傍に設けられた軸(図示しない)に支持部4が回動自在に支持されるように取り付けられて、ハードディスクドライブ100を構成し、スライダー9を磁気ディスク101上の所定の位置に移動させるように、高速で回動駆動することになる。
【0031】
(アクチュエータアームの表面形態)
アクチュエータアーム1の表面Sは、
図2及び
図5に示すように、アクチュエータアーム1の母相Bに含まれる酸化物粒子30による突起50が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40の平均径が1μm以上5μm以下であるという形態上の特徴がある。そのため、アクチュエータアーム1の表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30が極めて少ないものとなっている。
【0032】
窪み40の平均径の測定は、
図3及び
図4に示すように、例えば2000倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定できる。平均径の算出は、縦横20μmの測定領域中に存在する20個の窪み40を大きい窪みから順に選んで穴径Dを測定し、その平均値で算出した。なお、穴径Dは、長径とその長径に直交する短径との平均値とした。
【0033】
さらに、窪み40のうち平均径の1/2倍〜2倍の窪み40が、縦横20μmの測定領域に10個以上100個以下の範囲で存在するという形態上の特徴がある。窪み40が上記測定領域に上記範囲で存在するので、微細な凹部を持つ表面Sになっている。そのため、アクチュエータアーム1の表面Sは、光沢面ではなく半光沢面又は曇り面になっている。
【0034】
上記した平均径範囲の窪み40の存在により、アクチュエータアーム1の表面Sは、反射率が波長500nm〜600nmの範囲で10%以上40%以下になっている。なお、ここでの反射率は、波長500nm〜600nmの範囲での平均で表しているが、通常この波長範囲の全域で10%以上40%以下の範囲に含まれている。アクチュエータアーム1の表面Sの反射率の平均が上記範囲内であると、アクチュエータアーム1の表面Sは光沢面ではなく半光沢面又は曇り面になっている。反射率は、各種の反射率計で測定できる。後述の実施例では、反射分光光度計(日本分光株式会社製、型番:V−570)等で測定した結果である。
【0035】
本発明に係るアクチュエータアーム1は、表面Sが光沢面ではなく半光沢面又は曇り面になっているという形態上の特徴によっても、アクチュエータアーム1の表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30が極めて少ないものになっているということができる。一方、表面Sの反射率40%を超える場合は、表面Sが十分に化学研磨等されて光沢面又は略光沢面になっているので、アクチュエータアーム1の表面Sには窪み40があまり存在しない。そのため、表面Sに酸化物粒子30の一部が露出している可能性が高く、その露出した酸化物粒子30が脱落するおそれがあり、酸化物粒子30に基づいた悪影響が起こることがある。
【0036】
なお、アクチュエータアームの表面Sの窪み40は、
図5(C)に示すように、窪み40のエッジ41が比較的尖っている(なだらかでない)場合であってもよいし、
図5(D)に示すように、窪み40のエッジ41が比較的滑らかになっている(なだらかである)場合であってもよい。
図5(C)の場合は、後述する酸化物粒子溶解工程が必要十分な時間だけ施されて酸化物粒子30が選択的に溶解した場合である。また、
図5(D)の場合は、後述する酸化物粒子溶解工程が必要十分な時間よりも長く施されて、酸化物粒子30が選択的に溶解するとともに、窪み40のエッジ41の溶解も進んだ場合である。したがって、窪み40の穴径Dの測定では、
図5(C)の穴径D1〜D4よりも、
図5(D)の穴径D1〜D4の方が若干大きく測定される。本発明に係るアクチュエータアーム1では、これらのいずれの形態を有するものであってもよい。
【0037】
本発明に係るアクチュエータアーム1は、その表面Sに酸化物粒子30が露出せず、バリやキズも存在していない。また、窪み40の内部又は底にも、酸化物粒子30を極力存在していない。
【0038】
以上、本発明に係るアクチュエータアーム1は、その表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30が極めて少ないものとなっている。そのため、このアクチュエータアーム1を使用したハードディスクドライブは、アクチュエータアーム1の駆動時にその表面から脱落する酸化物粒子30が極めて少なく、磁気ディスク上に酸化物粒子30が落下するのを極力防止できる。その結果、ハードディスクドライブの情報の読み出し又は書き込み性能をより向上させることができる。
【0039】
[製造方法]
本発明に係るアクチュエータアーム1の製造方法は、上記した本発明に係るアクチュエータアーム1を製造する方法である。その特徴は、
図5に示すように、アルミニウム合金製のアクチュエータアーム1’を化学研磨してそのアクチュエータアーム1の形状を決定する形状決定工程と、その形状決定工程後に前記アクチュエータアーム1とフッ化物イオンを含む溶液とを接触させてそのアクチュエータアーム1の表面に露出する酸化物粒子30を選択的に溶解する酸化物粒子溶解工程とを有している。そして、その酸化物粒子溶解工程が、アクチュエータアーム1の表面Sを、酸化物粒子30による突起が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40を形成する工程である。以下、各工程について説明する。
【0040】
(形状決定工程)
形状決定工程は、
図5(A)(B)に示すように、表面処理対象として準備されたアクチュエータアーム1’を化学研磨液に接触させて、アクチュエータアーム1の母相Bを積極的に溶解して、アクチュエータアーム1の形成時に発生したアーム表面Sのバリ20や微細なキズ21を溶解除去するための工程である。この工程では、化学研磨により、アクチュエータアーム1の母相Bが積極的に溶解されるので、アクチュエータアーム1の全体寸法が決まる。言い換えれば、アクチュエータアーム1の全体寸法は、化学研磨を行う形状決定工程で決まり、その後の酸化物粒子溶解工程では、アクチュエータアーム1の全体寸法が変動しないことを意味している。
【0041】
この化学研磨は、通常、金属表面Sの微細な凹凸の凸部を凹部よりも先に溶解させるので、アクチュエータアーム1を化学研磨することにより、アーム表面Sのバリ20を容易に除去できる。さらに、その化学研磨時間を調整することにより、アクチュエータアーム1の母相Bが溶解して、微細なキズ21をも溶解除去することができる。そして、アーム表面Sは、
図5(B)に示すように、バリ20やキズ21をなくすことができ、さらに、母相Bも溶解して、アーム表面Sを平滑にすることができる。
【0042】
化学研磨液は、一般的な化学研磨液が用いられる。例えばリン酸、硝酸、硫酸、酢酸、ほう酸及びクロム酸等をそれぞれ単独で又は2種以上含む化学研磨液が用いられる。なかでも、リン酸と硝酸の混合水溶液が好ましく用いられる。リン酸と硝酸の混合水溶液は、アルミニウム合金を効率良く溶解できるので、アーム表面Sのバリ20や微細なキズ21を溶解除去することができ、さらにアーム表面Sの母相Bも溶解して平滑表面を形成できる。なお、リン酸及び硝酸の混合水溶液は、リン酸の濃度が5mol/L以上14mol/L以下で、硝酸の濃度が0.1mol/L以上0.8mol/L以下である。化学研磨液は、その作用効果を損なわない限り、さらに他の添加物を含んでいてもよい。
【0043】
化学研磨は、アクチュエータアーム1に化学研磨液を接触させて行う。接触手段としては、浸漬処理やシャワー処理を例示できる。処理温度は、通常、80℃以上110℃以下である。この温度範囲で化学研磨をすることにより、アーム表面Sのバリ20や微細なキズ21を効果的に溶解除去でき、さらにアーム表面Sの母相Bも溶解して平滑表面を形成できる。また、処理時間は特に特定されないが、通常、5秒以上500秒以下である。なお、化学研磨の前に任意の前処理を行ってもよい。前処理としては、例えば、脱脂処理等が挙げられる。
【0044】
(酸化物粒子溶解工程)
酸化物粒子溶解工程は、
図5(C)に示すように、形状決定工程後にアクチュエータアーム1とフッ化物イオンを含む溶液とを接触させて、アクチュエータアーム1の表面Sに露出する酸化物粒子30を選択的に溶解する工程である。この工程では、前記した形状決定工程とは異なり、アクチュエータアーム1の寸法に影響を与える工程ではなく、アクチュエータアーム1の表面Sの存在又は露出している酸化物粒子30を選択的に溶解する工程である。
【0045】
溶液としては、フッ化物イオンと酸とを含む酸性水溶液が用いられる。この酸性水溶液は、アクチュエータアーム1の母相Bを溶解せずに、表面酸化物粒子30を選択的に溶解することができる。また、その溶解時間を長くすることにより、
図5(D)に示すように、窪み40のエッジ41が比較的滑らかになる程度に溶解することもできる。本発明では、処理条件を所定の範囲とすることによって、酸化物粒子30を選択的に溶解できることを見出し、所期の課題を解決している。
【0046】
フッ化物イオンは、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸、フッ化鉄及びフッ化マグネシウム等から選ばれる1又は2以上のフッ化物塩により供給されるフッ化物イオンが挙げられる。また、酸は、特に限定されないが、例えば硝酸、リン酸、硫酸、酢酸、ほう酸、クロム酸等が挙げられ、これらの酸も単独であってもよいし2種以上を混合したものであってもよい。
【0047】
酸性水溶液中のフッ化物イオンの濃度は、0.8mol/L以上1.6mol/L以下である。フッ化物イオンをこの範囲内とすることにより、アルミニウム合金の母相Bの溶解を抑えてアクチュエータアーム1をその寸法変化が生じる程度に溶解することなく、アーム表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30を選択的に溶解することができる。フッ化物イオンの濃度が0.8mol/L未満の場合は、酸化物粒子30の溶解量が相対的に小さくなり、酸化物粒子30を選択的に溶解することができないことがある。一方、フッ化物イオンの濃度が1.6mol/Lを超えると、アルミニウム合金の母相Bの溶解量が相対的に増してくるので、酸化物粒子30を選択的に溶解することができなくなる。
【0048】
なお、酸性水溶液中のフッ化物イオンの濃度は各種の手段で測定できるが、例えば、ランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法、イオン電極法、イオンクロマトグラフ法等が挙げられる。
【0049】
酸性水溶液中の酸の濃度は、酸の種類によって任意に設定されるので特に限定されないが、例えば硝酸を用いた場合は、酸性水溶液中の硝酸濃度は2mol/L以上8mol/L以下である。また、例えば硝酸とリン酸の混酸を用いた場合は、酸性水溶液中の硝酸濃度は1mol/L以上8mol/L以下で、リン酸濃度は6mol/L以上9mol/L以下である。いずれの場合も、酸性水溶液中の硝酸濃度を8mol/L以下にすることで、アルミニウム合金の母相Bの溶解量を抑えることができる。その結果、この酸化物粒子溶解工程では、アクチュエータアーム1の母相Bは積極的に溶解せずに、アーム表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30を選択的に溶解することができる。
【0050】
酸性水溶液中の硝酸濃度が1mol/L未満では、酸化物粒子30の溶解量が相対的に小さくなり、酸化物粒子30を選択的に溶解することができないことがある。酸性水溶液中の硝酸濃度が8mol/Lを超えると、アルミニウム合金の母相Bの溶解量が相対的に増してくるので、酸化物粒子30を選択的に溶解することができなくなる。酸性水溶液は、その作用効果を損なわない限り、さらに他の添加物を含んでいてもよい。
【0051】
処理温度は、15℃以上25℃以下である。処理温度をこの範囲内とすることにより、アルミニウム合金の母相Bの溶解を抑えつつ、酸化物粒子30を選択的に溶解することができる。また、処理温度を18℃以上22℃以下にすることが好ましく、酸化物粒子30をより選択的に溶解することができる。処理温度が15℃未満の場合は、酸化物粒子30を溶解する作用が小さくなるので、酸化物粒子30の溶解量が相対的に小さくなり、酸化物粒子30を選択的に溶解することができない。一方、処理温度が25℃を超えると、アルミニウム合金の母相Bの溶解量が相対的に増してくるので、酸化物粒子30を選択的に溶解することができなくなる。
【0052】
処理時間は、アルミニウム合金の種類やそのアルミニウム合金の母相Bに含まれる酸化物粒子30の大きさによって任意に設定される。すなわち、処理時間は、溶解する酸化物粒子30の容量(体積)に影響を与え、処理時間が長い方がより多くの酸化物粒子30を溶解できる。そのため、処理時間は、アーム表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30の大きさと量によって任意に設定されるが、上記したJIS A6063のAl−Mg−Si系合金やJIS A6061のAl−Mg−Si系合金の場合では、通常、10秒以上100秒以下であり、好ましくは20秒以上80秒以下である。処理時間をこの範囲内とすることで、アーム表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30を十分に溶解することができる。
【0053】
酸化物粒子30の溶解工程は、アクチュエータアーム1に酸性水溶液を接触させて行う。接触手段としては、アクチュエータアーム1を酸性水溶液中に浸漬する浸漬処理や、酸性水溶液をシャワーノズルから噴出させた酸性水溶液をアクチュエータアーム1に当てるシャワー処理等が挙げられる。浸漬処理は、例えば、先ず、酸性水溶液を耐食性の樹脂製容器に入れ、マグネチックスターラーやエアーポンプを用いて酸性水溶液を攪拌しながら、市販の冷却水循環装置等で一定の温度に保つ。次いで、酸性水溶液中に化学研磨後のアクチュエータアーム1を入れ、所定の時間浸漬させる。なお、浸漬の際、耐食性のワイヤー等でアクチュエータアーム1を吊るして、このワイヤー等を市販のカソードロッカーを用いて揺動させてもよく、浸漬と同時に超音波を照射してもよい。浸漬と同時に超音波を照射することで、アーム表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30をより効率良く溶解することができる。
【0054】
酸化物粒子3の溶解工程は、1回行なっても2回以上行なってもよい。酸化物粒子30の溶解工程を2回以上行う場合、各回の処理方法は同じでもよいし異なっていてもよい。例えば、各回で、酸化物粒子の溶解条件を変更したり、酸性水溶液の液組成を変更したりしてもよい。このように、酸化物粒子溶解工程後のアクチュエータアーム1は、その表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30が極めて少ないものとなるので、アクチュエータアーム1の駆動時にその表面Sから脱落する酸化物粒子30が極めて少なくなる。こうして処理されたアクチュエータアーム1は、その表面Sが、酸化物粒子30による突起が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40を形成できる。
【0055】
なお、既述したように、アクチュエータアーム1の表面Sの窪み40は、酸性水溶液への接触時間等の処理条件により、
図5(C)に示すように、窪み40のエッジ41が比較的尖っている(なだらかでない)ようにすることもできるし、
図5(D)に示すように、窪み40のエッジ41が比較的滑らかになっている(なだらかである)ようにすることもできる。
図5(C)の場合は、例えば処理時間等の処理条件を必要十分なだけ施して酸化物粒子30を選択的に溶解した場合である。また、
図5(D)の場合は、例えば処理時間等の処理条件を必要十分な条件よりも長く施して、酸化物粒子30が選択的に溶解するとともに、窪み40のエッジ41の溶解も進めた場合である。
【0056】
以上、本発明に係るアクチュエータアーム1の製造方法によれば、形状決定工程でアルミニウム合金製のアクチュエータアーム1を化学研磨してアクチュエータアームの形状を決定し、その後に、酸化物粒子工程で酸化物粒子30を選択的に溶解して、アクチュエータアームの表面Sを酸化物粒子30による突起が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40を形成するように処理するので、アクチュエータアーム1の寸法を変動させることなくその表面Sに存在又は露出する酸化物粒子30を極めて少なくすることができる。その結果、製造されたアクチュエータアーム1を使用したハードディスクドライブは、寸法精度に優れると共に、アクチュエータアーム1の駆動時にその表面から脱落する酸化物粒子30が極めて少なく、磁気ディスク上に酸化物粒子30が落下するのを極力防止できる。その結果、ハードディスクドライブの情報の読み出し又は書き込み性能をより向上させることができる。
【0057】
[表面処理方法]
本発明に係るアルミニウム合金製部材の表面処理方法は、アルミニウム合金製部材を化学研磨してその部材の形状を決定する形状決定工程と、その形状決定工程後に前記部材とフッ化物イオンを含む溶液とを接触させて該部材の表面に露出する酸化物粒子30を選択的に溶解する酸化物粒子溶解工程とを有する。そして、酸化物粒子溶解工程が、前記部材の表面を、酸化物粒子30による突起が存在せず、その酸化物粒子30が除去された痕跡からなる窪み40を形成することに特徴がある。
【0058】
この表面処理方法は、上記したアクチュエータアームの製造方法を構成する形状決定工程と、酸化物粒子溶解工程とを適用したものであり、アクチュエータアーム1に対する処理を広くアルミニウム合金製部材に適用したものである。したがって、形状決定工程と酸化物粒子溶解工程は、上記したものと同じであるので、ここでは重複する部分は省略する。
【0059】
アルミニウム合金製部材としては、主に電子部品や精密部品を構成するアルミニウム合金製部材等を挙げることができ、例えば、JIS A 6061 T6等を挙げることができる。この表面処理方法をこれらの部品の処理に適用することにより、その製品品質を向上させて、酸化物粒子の脱落に基づいた悪影響を極力防止できる。
【実施例】
【0060】
実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
図1に示す形状に押出成形されたアルミニウム合金(JIS A6061 T6、三菱金属株式会社)製のアクチュエータアーム1を準備した。そのアクチュエータアーム1を、形状決定工程で化学研磨処理を行い、酸化物粒子溶解工程で酸性水溶液処理を行った。
【0062】
形状決定工程で用いた化学研磨液は、市販のリン酸試薬及び硝酸試薬をイオン交換水中に加えて混合して調製した。化学研磨液の濃度は、リン酸6.3mol/L、硝酸0.5mol/Lとした。この化学研磨液を耐食性の樹脂製容器に入れ、スターラーで強撹拌させながら、ウォーターバスで外部から加熱した。化学研磨液の温度は90℃とした。そして、アクチュエータアーム1をこの化学研磨液中に浸漬させた。アクチュエータアーム1の浸漬時間は90秒間とした。なお、浸漬の際、アクチュエータアーム1を耐食性のワイヤーで吊るし、カソードロッカーで揺動させた。
【0063】
酸性水溶液は、市販の硝酸試薬をイオン交換水中に加えて混合した後、市販のフッ化アンモニウムを添加して溶解させて調製した。酸性水溶液の濃度は、フッ化物イオン1.2mol/L、硝酸6mol/Lとした。この酸性水溶液を耐食性の樹脂製容器に入れ、スターラーで強攪拌させながら、冷却水循環装置で温度を調整した。酸性水溶液の温度は20℃とした。化学研磨後のアクチュエータアーム1をこの酸性水溶液中に浸漬させた。アクチュエータアーム1の浸漬時間は50秒間とした。なお、浸漬の際、アクチュエータアーム1を耐食性のワイヤーで吊るし、カソードロッカーで揺動させた。浸漬させたアクチュエータアーム1をイオン交換水で3回水洗いして、実施例1のアクチュエータアームを得た。
【0064】
[実施例2]
酸性水溶液の温度を25℃とし、酸性水溶液中の浸漬時間を80秒間とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のアクチュエータアームを得た。
【0065】
[実施例3]
酸性水溶液中に含まれるフッ化物イオンの濃度を0.8mol/Lとし、酸性水溶液の温度を15℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のアクチュエータアームを得た。
【0066】
[実施例4]
酸性水溶液中に含まれるフッ化物イオンの濃度を1.6mol/Lとし、酸性水溶液の温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のアクチュエータアームを得た。
【0067】
[比較例1]
酸性水溶液中に含まれるフッ化物イオンの濃度を0.6mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のアクチュエータアームを得た。
【0068】
[比較例2]
酸性水溶液中に含まれるフッ化物イオンの濃度を0.6mol/Lとし、酸性水溶液の温度を30℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のアクチュエータアームを得た。
【0069】
[比較例3]
酸性水溶液中に含まれるフッ化物イオンの濃度を0.8mol/Lとし、酸性水溶液の温度を30℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3のアクチュエータアームを得た。
【0070】
[比較例4]
酸性水溶液中にフッ化物イオンを含有させず、その酸性水溶液の温度を30℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例4のアクチュエータアームを得た。
【0071】
[評価方法]
実施例1〜4及び比較例1〜4で得たアクチュエータアームについて、(1)その表面Sの反射率、(2)表面Sに形成された窪み40の平均径、(3)窪み40のうちその平均径の1/2倍〜2倍の窪みの存在数、(4)脱落した粒子の個数、を測定した。
【0072】
反射率は、反射分光光度計(日本分光株式会社製、型番:V−570)を用い、波長500nm〜600nmの範囲の反射率の平均を求めた。その結果を表1に示した。
【0073】
窪み40の平均径は、走査型電子顕微鏡で2000倍の拡大写真を撮影し、縦横20μmの測定領域中に存在する20個の窪み40を大きい窪みから順に選んで個々の穴径Dを測定し、その平均値で算出した。なお、穴径Dは、長径とその長径に直交する短径との平均値とした。その結果を表1に示した。
【0074】
窪み40の存在数は、上記平均径を求めた写真を用い、窪み40のうちその平均径の1/2倍〜2倍の窪みの総数を求めた。その結果を表1に示した。
【0075】
アクチュエータアーム1から脱落した酸化物粒子30の個数は、表面積37cm
2を露出させ、他をマスキングしたアクチュエータアーム1を用い、そのアクチュエータアーム1を純水中で超音波洗浄(132kHz、500W、1分間)し、純水中に脱落した粒子数をカウントした。粒子数のカウントは、液体粒子計(LPC:Liquid Particle Counter)(Particle Measuring Systems社製、型番:PMS−700)を用いて測定した。測定された粒子のうち、0.5μm以上の粒子の個数が10万個以下の場合を「ランク1」とし、その個数が10万個を超え110万個以下の場合を「ランク2」とし、その個数が110万個を超える場合を「ランク3」とした。その結果を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果より、実施例1〜4のアクチュエータアーム1は、脱落した粒子数が10万個以下であり、比較例1〜4のアクチュエータアームに比べて著しく小さかった。その結果、実施例1〜4で得られたアクチュエータアーム1は、ハードディスクドライブ用のアクチュエータアーム1として好ましく用いることができる。