(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773952
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】移動通信システムにおけるユーザ装置及び再接続方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20150813BHJP
H04W 36/14 20090101ALI20150813BHJP
【FI】
H04W48/16 110
H04W36/14
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-132173(P2012-132173)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-258486(P2013-258486A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷川 博昭
(72)【発明者】
【氏名】竹田 晋也
【審査官】
齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/102531(WO,A1)
【文献】
特表2009−534952(JP,A)
【文献】
特開2003−009215(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0195643(US,A1)
【文献】
"LTE neighbourhood list and measurement organisation",3GPP TSG-RAN WG2#56, R2-063189,2006年11月10日,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_56/Documents/R2-063189.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルサーチを行うセルサーチ部と、
再接続が必要になったことを検出する検出部と、
第1の無線アクセス方式で通信が行われる第1の移動通信システム(第1のRAT)及び第2の無線アクセス方式で通信が行われる第2の移動通信システム(第2のRAT)のそれぞれについて音声パケットの通信が可能であるか否かを、複数のオペレータのそれぞれについて示すVoIPサポート情報を記憶する記憶部と、
前記検出部が音声パケットの通信について再接続が必要になったことを検出した場合に、前記VoIPサポート情報を参照することにより、前記複数のオペレータが運用している第1又は第2のRATのうち、音声パケットの通信が可能であるRATのみを、セルサーチの対象として前記セルサーチ部に通知するセルサーチ対象決定部と、
セルサーチにより発見されたセルで通信を行う通信部と
を有し、前記VoIPサポート情報は、位置登録又はアタッチの際にネットワークの交換局から通知され、前記記憶部に記憶される、ユーザ装置。
【請求項2】
前記第1のRATが第3世代方式の移動通信システムであり、前記第2のRATがLTE方式の移動通信システムである、請求項1に記載のユーザ装置。
【請求項3】
前記第1のRATに対する位置登録又はアタッチの際に前記第1のRATに対するVoIPサポート情報が取得され、前記第2のRATに対する位置登録又はアタッチの際に前記第2のRATに対するVoIPサポート情報が取得される、請求項1又は2に記載のユーザ装置。
【請求項4】
ユーザ装置が実行する再接続方法であって、
第1の無線アクセス方式で通信が行われる第1の移動通信システム(第1のRAT)及び第2の無線アクセス方式で通信が行われる第2の移動通信システム(第2のRAT)のそれぞれについて音声パケットの通信が可能であるか否かを、複数のオペレータのそれぞれについて示すVoIPサポート情報を記憶部に記憶するステップと、
音声パケットの通信について再接続が必要になったことを検出した場合に、前記VoIPサポート情報を参照することにより、前記複数のオペレータが運用している第1又は第2のRATのうち、音声パケットの通信が可能であるRATのみを、セルサーチの対象としてセルサーチ部に通知し、セルサーチにより発見されたセルで通信を行うステップ
を有し、前記VoIPサポート情報は、位置登録又はアタッチの際にネットワークの交換局から通知され、前記記憶部に記憶される、再接続方法。
【請求項5】
前記第1のRATが第3世代方式の移動通信システムであり、前記第2のRATがLTE方式の移動通信システムである、請求項4記載の再接続方法。
【請求項6】
前記第1のRATに対する位置登録又はアタッチの際に前記第1のRATに対するVoIPサポート情報が取得され、前記第2のRATに対する位置登録又はアタッチの際に前記第2のRATに対するVoIPサポート情報が取得される、請求項4又は5に記載の再接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システムにおけるユーザ装置及び再接続方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)が仕様を規定している移動通信システムにおいて、通信中の移動機がセルの圏外に出たことを検出すると、圏内に復帰するためのセルサーチが行われる。圏外に出たことは、例えば無線品質の劣化により判断できる。この復帰の際、移動機はセルサーチを行い、発見できた在圏可能なセルでネットワークとのコネクションの再確立を試みる。このような処理は「再接続」と呼ばれている。
【0003】
3GPP標準仕様においては、再接続時に行うセルサーチの詳細な方法については規定がなく、各移動機の実装に委ねられている。例えば、ある移動通信事業者(オペレータ)のネットワークがロングタームエボリューション(LTE)方式のサービスと3G方式のサービスを提供していたとする。LTEで通信中の移動機が再接続を必要とする場合、移動機は、LTEを対象としたセルサーチと3Gを対象としたセルサーチとを実行することが可能である。この場合において、LTE及び3Gのセルをどのような時間配分でどのような順序で実施するかは、移動機の実装に依存する。ただし、再接続の期間(セルサーチの期間を含む)は、3GPP仕様において再接続タイマとして定められており、その再接続タイマが満了すると呼切断となる。再接続等については特許文献1に記載されている。
【0004】
データ通信用のパケット交換呼については、LTE及び3Gのどちらでもサービスが提供される。例えば、LTEにおいて再接続を行う場合、移動機は、LTEのセルに再接続してもよいし、或いは3Gのセルに再接続してもよい。例えば、移動機は、LTEを対象としたセルサーチを最初に実行し、所定の期間内に適切なセルが発見されなかった場合に、3Gのセルサーチを行ってもよい。セルサーチにより在圏可能なセルが発見されると、そのセルに対してコネクションが確立され、そのセルに遷移することで、データ通信を継続(復帰)することができる。
【0005】
一方、音声通話用のパケット交換呼(以下、VoIP又は音声パケットと呼ぶ)については、データ通信用のパケット交換呼と状況が異なる。VoIPの通信を可能にするには、IMS(IP Multimedia Subsystem)と呼ばれるシステムがネットワークでサポートされていなければならないが、IMSをサポートするか否かは3GPP標準仕様では規定されておらず、無線通信システム(Radio Access Technology:RAT)毎に異なるからである。したがって、例えばLTEのセルでVoIPを通信する移動機が再接続を試みる場合に、VoIPの通信が可能でない3Gのセルを発見して遷移しようとするかもしれない。その場合、遷移先の3GのセルではそもそもVoIPの通信が不可能であるので、LTEのセルからその3Gのセルに遷移しようとした時点で、再接続タイマによらず、呼切断になってしまうという問題が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-239032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、音声パケットの通信について再接続を行う場合に、早期に接続断となってしまう問題点を少なくとも緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によるユーザ装置は、
セルサーチを行うセルサーチ部と、
再接続が必要になったことを検出する検出部と、
無線通信システム(RAT)毎に音声パケットの通信が可能であるか否かを示しているVoIPサポート情報を記憶する記憶部と、
前記検出部が音声パケットの通信について再接続が必要になったことを検出した場合に、前記VoIPサポート情報を参照し、音声パケットの通信が可能であるRATのみを、セルサーチの対象として前記セルサーチ部に通知するセルサーチ対象決定部と、
セルサーチにより発見されたセルで通信を行う通信部と
を有するユーザ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音声パケットの通信について再接続を行う場合に、早期に接続断となってしまう問題点を少なくとも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】VoIPサポート情報を取得する際の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照しながら以下の観点から実施形態を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。
【0012】
1.ユーザ装置
2.動作例
2.1 VoIPサポート情報の取得
2.2 再接続
これらの項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。
【0013】
<1.ユーザ装置>
図1は本発明の実施形態において使用可能なユーザ装置UEの機能ブロック図を示す。
図1にはユーザ装置に備わる様々な処理部又は機能部のうち本実施形態に特に関連するものが示されている。ユーザ装置UEは、第3世代及びLTE方式の双方の移動通信システムにおいて通信することが可能である。ユーザ装置UEは典型的には携帯電話であるが、他の装置でもよい。例えば、ユーザ装置UEは、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ等であるが、これらに限定されない。
図1には、アプリケーション部11、再接続部13、通信部15が示されている。
【0014】
アプリケーション部11は、ユーザ装置UEで動作するアプリケーションによる処理を実行する。本願におけるアプリケーションはソフトウェア及びプログラムを含む概念である。
【0015】
再接続部13は再接続(reconnect)の処理を実行する。再接続部13は、再接続検出部131、VoIP検出部132、VoIPサポート情報記憶部133、セルサーチ対象決定部134及びセルサーチ部135を含む。
【0016】
再接続検出部131は、ユーザ装置UEが再接続の処理を行う必要があることを検出する。例えばユーザ装置UEが受信する信号の品質が所定値よりも劣化したこと等のイベントを検出することで、再接続の要否が確認されてもよい。ユーザ装置UEが通信圏外に出ると、受信する信号の品質は著しく劣化するからである。
【0017】
VoIP検出部132は、ユーザ装置UEが行っている通信が音声通話用のパケット交換呼(VoIP)の通信であることを検出する。説明の便宜上、再接続検出部131及びVoIP検出部132は別々の処理部として図示されているが、このことは必須ではない。要するに、VoIPの通信について再接続が必要であることが検出できればよいからである。
【0018】
VoIPサポート情報記憶部133は、無線通信システム(RAT)毎にVoIPの通信が可能であるか否かを示しているVoIPサポート情報を記憶する。背景技術で説明したように、VoIPによる通信が可能であるには、IMS(IP Multimedia Subsystem)が備わっている必要があり、IMSが備わっているRATだけでなく、IMSが備わっていないRATも存在する。VoIPサポート情報は、ユーザ装置UEのアタッチ又は位置登録の際にネットワークから通知され、更新される。LTE側のサポート有無はLTEでのアタッチ又は位置登録の際にネットワークから通知され、3G側のサポート有無は3Gでのアタッチ又は位置登録の際にネットワークから通知される。
【0019】
図2はVoIPサポート情報の一例を示す。図中、「YES」はVoIPの通信が可能である(IMSを実装している)ことを示す。「NO」はVoIPの通信が可能でない(IMSを実装していない)ことを示す。PLMN(public land mobile network)はオペレータが運用する移動通信システムを示す。図示の例の場合、オペレータA、B、Cは3G及びLTEのサービスを提供しており、オペレータAの場合、何れにおいてもVoIPの通信が可能である。オペレータBの場合、3GにおいてはVoIPの通信が可能でないが、LTEにおいてはVoIPの通信が可能である。オペレータCの場合、何れにおいてもVoIPの通信が可能でない。図示の例は一例にすぎない。
【0020】
図1のセルサーチ対象決定部134は、再接続検出部131及びVoIP検出部132が、VoIPの通信について再接続を要することを検出した場合に、VoIPサポート情報を参照し、VoIPの通信が可能であるRATのみを、セルサーチの対象としてセルサーチ部135に通知する。例えば、ユーザ装置UEがオペレータBのLTEの移動通信システムにおいてVoIPを通信していたところ、再接続が必要になったとする。この場合、セルサーチ対象決定部134は、VoIPの通信が可能であるオペレータAの3G及びLTEの移動通信システムが、セルサーチの対象に含まれ、オペレータCの移動通信システムはセルサーチの対象でないことを、セルサーチ部135に通知する。オペレータCの移動通信システムにおいてはVoIPの通信が可能でないからである。
【0021】
セルサーチ部135は、セルサーチ対象決定部134が決定したセルサーチの対象に限定してセルサーチを行う。上記の例の場合、ユーザ装置UEは、VoIPの通信が可能であるオペレータAの3G及びLTEの移動通信システムに限定してセルサーチを行う。オペレータCの移動通信システムは、セルサーチの対象外である。その結果、VoIPの通信について再接続を行う場合に、そもそもVoIPの通信が可能でないセルに遷移しようとして再接続タイマの満了前に早期に接続断となってしまう問題点を回避できる。
【0022】
通信部15は、セルサーチ部135が行ったセルサーチにより発見されたセルに対してコネクションを設定することで、VoIPの通信を引き続き行うことができる。
【0023】
<2.動作例>
<<2.1 VoIPサポート情報の取得>>
図3は
図1に示されているようなユーザ装置UEがVoIPサポート情報を取得する際の動作フローを示す。動作フローはステップ31から始まり、ステップ32に進む。
【0024】
ステップ32において、ユーザ装置UEについて、アタッチ又は位置登録が行われる。例えば電源投入時やハンドオーバの際に、ユーザ装置UEの加入者情報等が交換局に登録される。
【0025】
ステップ33において、ユーザ装置UEは、ネットワークの通信ノード(例えば、交換局)からVoIPサポート情報を取得する。VoIPサポート情報は
図2に示されているように、無線通信システム(RAT)毎に音声パケットの通信が可能であるか否かを示している。
【0026】
ステップ34において、ユーザ装置UEは、ネットワークの通信ノードから取得したVoIPサポート情報を、VoIPサポート情報記憶部133に保存する。この場合において、VoIPサポート情報記憶部133に保存されていた情報は、新しく受信したVoIPサポート情報により更新される。
【0027】
動作フローはステップ35に進み、終了する。
【0028】
<<2.2 再接続>>
図4は
図1に示されているようなユーザ装置UEが再接続を行う際の動作フローを示す。動作フローはステップ41から始まり、ステップ42に進む。
【0029】
ステップ42において、ユーザ装置UEは、例えば受信品質の劣化により、再接続が必要であることを検出する。
【0030】
ステップ43において、ユーザ装置UEは、VoIPを通信している最中であるか否かを判定する。VoIPを通信していた場合、動作フローはステップ44に進む。
【0031】
ステップ44において、ユーザ装置UEは、VoIPサポート情報記憶部133に記憶されているVoIPサポート情報を参照し、VoIPの通信が可能であるRATのみを、セルサーチ部135に通知する。VoIPサポート情報は
図3の動作例によりVoIPサポート情報記憶部133に保存されている。
【0032】
ステップ45において、ユーザ装置のセルサーチ部135は、通知された対象に限定してセルサーチを行う。以後、ユーザ装置UEは、セルサーチで発見されたセルで通信を行い、動作フローはステップ46に進み、終了する。
【0033】
一方、ステップ43において、VoIPを通信していなかった場合、動作フローはステップ47に進む。
【0034】
ステップ47においては、ユーザ装置のセルサーチ部135は、VoIPの通信が可能であるか否かによらず、接続可能な候補のセルについてセルサーチを行う。以後、ユーザ装置UEは、セルサーチで発見されたセルで通信を行い、動作フローはステップ48に進み、終了する。
【0035】
このように本実施形態によれば、移動通信システムにおいて、RATによってパケット交換ドメインのVoIPサポート状況が異なっていても、VoIP通信中に再接続が発生した際にユーザ装置のセルサーチ動作を最適化することができる。VoIP通信中の再接続時のセルサーチをVoIPに最適な動作にできるので、それにより、VoIPの接続品質の向上を期待できる。
【0036】
以上、LTE及び3Gの通信システムを例とする特定の実施形態を説明してきたが、本発明はそのような実施形態に限定されず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明はVoIPの通信を行うことが可能な適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。上記の説明における項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、通信端末及び情報処理装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明に従って動作するソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に保存されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0037】
11 アプリケーション部
13 再接続部
131 再接続検出部
132 VoIP検出部
133 VoIPサポート情報記憶部
134 セルサーチ対象決定部
135 セルサーチ部
15 通信部