(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773977
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】有機ツェナーダイオード、電子回路、および、有機ツェナーダイオードを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/329 20060101AFI20150813BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20150813BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20150813BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20150813BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20150813BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20150813BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20150813BHJP
H01L 27/28 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
H01L29/90 D
H01L29/28 100A
H01L29/28 220A
H01L27/10 448
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
H01L27/10 449
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-500067(P2012-500067)
(86)(22)【出願日】2010年3月19日
(65)【公表番号】特表2012-521076(P2012-521076A)
(43)【公表日】2012年9月10日
(86)【国際出願番号】DE2010000332
(87)【国際公開番号】WO2010105615
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年2月25日
(31)【優先権主張番号】102009013685.1
(32)【優先日】2009年3月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レオ,カール
(72)【発明者】
【氏名】原田健太郎
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】リュッセム,ビヨルン
【審査官】
須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第10209789(DE,A1)
【文献】
特表2007−528122(JP,A)
【文献】
特開2006−295192(JP,A)
【文献】
特表2005−539395(JP,A)
【文献】
特表2005−537637(JP,A)
【文献】
K.Harada et al,Realization of organic pn-homojunction using a novel n-type doping technique,Proceedings of SPIE vol.5464,米国,2004年 9月 1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/866
H01L 51/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの電極および一つの対向電極、並びに、上記電極と上記対向電極とに電気接触して形成された有機層構造を備えるツェナーダイオードであって、
上記有機層構造は、
−有機マトリクス材料とn型ドーパントとの混合物から構成された、上記電極側のn型ドープされた電荷キャリア注入層、
−上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層の有機マトリクス材料と異なる別の有機マトリクス材料と、p型ドーパントと、の混合物から構成された、上記対向電極側のp型ドープされた電荷キャリア注入層、および、
−上記電極側の上記n型ドープされた電荷キャリア注入層と、上記対向電極側の上記p型ドープされた電荷キャリア注入層と、の間に配置された、電気的に非ドープの有機中間層、を含む、ツェナーダイオード。
【請求項2】
上記n型ドーパントおよび/または上記p型ドーパントは、分子ドーパントであることを特徴とする、請求項1に記載のツェナーダイオード。
【請求項3】
上記電気的に非ドープの有機中間層は、単極性の電荷キャリア輸送特性を有しており、電子の形をした電荷キャリアの可動性と正孔の形をした電荷キャリアの可動性とが異なることを特徴とする、請求項1または2に記載のツェナーダイオード。
【請求項4】
上記電気的に非ドープの有機中間層は、両極性の電荷キャリア輸送特性を有しており、電子の形をした電荷キャリアの可動性と正孔の形をした電荷キャリアの可動性とが同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のツェナーダイオード。
【請求項5】
上記電気的に非ドープの有機中間層は、正確に一つの有機材料を含む、または、正確に一つの有機材料から構成されることを特徴とする、請求項4に記載のツェナーダイオード。
【請求項6】
上記電気的に非ドープの有機中間層は、多数の有機材料の混合物を含む、または、多数の有機材料の混合物から構成されることを特徴とする、請求項4に記載のツェナーダイオード。
【請求項7】
−上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層は、上記有機マトリクス材料および上記有機n型ドーパントを、上記有機n型ドーパントの上記有機マトリクス材料に対する比率が少なくとも1モル%となるように含み、
−上記対向電極側の上記電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層は、上記別の有機マトリクス材料および上記有機p型ドーパントを、上記有機p型ドーパントの上記別の有機マトリクス材料に対する比率が少なくとも1モル%となるように含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のツェナーダイオード。
【請求項8】
上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層、および、上記対向電極側の上記電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層は、金属イオンを介して、電気的にドープされていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のツェナーダイオード。
【請求項9】
上記電気的に非ドープの有機中間層は、1オングストローム〜100nmの層厚にて形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のツェナーダイオード。
【請求項10】
上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層、上記対向電極側の上記電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層、および上記電気的に非ドープの有機中間層、のうちの少なくとも一つの層は、少なくとも一つの無機材料を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のツェナーダイオード。
【請求項11】
上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層、上記対向電極側の上記電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層、および上記電気的に非ドープの有機中間層、のうちの少なくとも一つの有機層は、オリゴマー材料とポリマー材料とから構成される有機材料の群から選択される少なくとも一つの有機材料を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のツェナーダイオード。
【請求項12】
有機ツェナーダイオードと、上記有機ツェナーダイオードと組み合わされた記憶素子と、を有する電子回路構造であって、
上記有機ツェナーダイオードは、一つの電極および一つの対向電極、並びに、上記電極と上記対向電極とに電気接触して形成された有機層構造を備えるツェナーダイオードであって、
上記有機層構造は、
−有機マトリクス材料とn型ドーパントとの混合物から構成された、上記電極側のn型ドープされた電荷キャリア注入層、
−上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層の有機マトリクス材料と異なる別の有機マトリクス材料と、p型ドーパントと、の混合物から構成された、上記対向電極側のp型ドープされた電荷キャリア注入層、および、
−上記電極側の上記n型ドープされた電荷キャリア注入層と、上記対向電極側の上記p型ドープされた電荷キャリア注入層と、の間に配置された、電気的に非ドープの有機中間層、を含む、ツェナーダイオードであることを特徴とする、電子回路構造。
【請求項13】
有機ツェナーダイオードを電子回路中で動作させる方法であって、
上記有機ツェナーダイオードは、一つの電極および一つの対向電極、並びに、上記電極と上記対向電極とに電気接触して形成された有機層構造を備えるツェナーダイオードであって、
上記有機層構造は、
−有機マトリクス材料とn型ドーパントとの混合物から構成された、上記電極側のn型ドープされた電荷キャリア注入層、
−上記電極側の上記電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層の有機マトリクス材料と異なる別の有機マトリクス材料と、p型ドーパントと、の混合物から構成された、上記対向電極側のp型ドープされた電荷キャリア注入層、および、
−上記電極側の上記n型ドープされた電荷キャリア注入層と、上記対向電極側の上記p型ドープされた電荷キャリア注入層と、の間に配置された、電気的に非ドープの有機中間層、を含む、ツェナーダイオードであり、
上記電極および上記対向電極に印加される電圧を絶縁破壊電圧の値に制限すること、および、印加された上記電圧によって生成された電流を、上記有機ツェナーダイオードを介して排出することによって、上記電子回路中で、上記有機ツェナーダイオードに直列に接続されているコンポーネントに保護状態を生成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有機ツェナーダイオード、電子回路、および、有機ツェナーダイオードを動作させる方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
超小型電子技術の着実な発展により、構造物は、所定の区域に搭載されるコンポーネントの数が増えているにもかかわらず、ますます小型化されている。この傾向は、データメモリが増え続けていることにおいても明らかである。従来のシリコンベースの半導体技術は、物理的および経済的理由のために、その限界に近づいており、まもなく、この小型化への道を進み続けることは不可能になるであろう。今日製造されているコンポーネントは、数十ナノメートルの構造サイズを有している。構造サイズを縮小させること、つまり全てのコンポーネントを数ナノメートルまでさらに小型化させることが可能な、新規の原理および材料が求められている。
【0003】
好ましくはフレキシブル基板において複数の機能性を提供する、新規かつ低コストの電子部品に対する需要が、増大し続けている。例えば、インテリジェントアドミッションカード(intelligent admission card)、極めて安価なトランスポンダラベル、または衣類に組み込まれた電子機器といったアプリケーションが想定され得る。これら全てのアプリケーションでは、他の構成要件に加えて、メモリコンポーネントが必要とされる。結晶半導体に基づく超小型電子技術では、メモリコンポーネントの機能は、限られたレベルでしか提供することができない。
【0004】
パッシブ型記憶装置の原理は、構成が比較的簡素であるため、3Dコンセプトに容易に集積することができるという利点を有している。抵抗記憶装置の原理、すなわち、様々な電気抵抗をとることができ、従って情報量を記憶可能なメモリは、分子の規模にまで縮小可能であるため、将来の大容量記憶を実現するものと考えられている。これらのコンポーネントは、クロスバー技術における簡素な構成により、安価に製造することが可能であり、3Dコンセプトに組み入れることも可能である。この構成の欠点の一つは、個々の素子をプログラムするときまたは削除するときに、隣接するセルとのクロストークを受けやすい点である。これを回避すると共に、より大きなメモリアレイを製造可能にするためには、さらなる能動素子および受動素子が必要になる。各メモリセルをそれぞれ一つのツェナーダイオードに接続することも可能である。こうすることにより、クロストークは、著しく非線形の特性曲線によって回避される。ツェナーダイオードは、実施が容易であり、電圧を安定化させるため、および、重要なモジュールが壊れないように保護するために、従来のシリコン技術において広く用いられている。ツェナーダイオードは、順方向バイアスの方向では、通常のダイオードのように機能するが、逆バイアスの方向では、抵抗が、所定の電圧、すなわち絶縁破壊電圧を超えると、突然急落する。絶縁破壊電圧は、電子伝導層および/または正孔伝導層のドーピングを選択的に変えることによって、かつ、これによって空乏層の幅が変更されることによって、3〜100Vに調節可能である。現在、ツェナーダイオードは、パッシブマトリクスメモリにおいても用いられている。これらのクロスバーメモリは、論理的には、分子レベルにまで縮小することが可能であるので、シリコン技術は、この分野においても、すぐにその限界に到達するであろう。
【0005】
従って、従来のシリコン技術に代わる他の方法および材料の探索が、世界中で集中的に行われている。
【0006】
有機電子機器は、シリコンベースの電子機器に替わる有力な代替機器として現れたものである。有機電子機器は、数ある利点の中でも特に、例えば印刷工程または低温度による蒸着工程を含む比較的簡素なプロセスを含むこと、フレキシブル基板上で動作可能であること、および、分子材料の種類が多様であること、などの利点を有する。
【0007】
有機電子機器の第1の適用分野は、有機発光ダイオード(OLED)である。
【0008】
有機発光ダイオード(OLED)は、比較的短い開発期間を経て、既に多くの装置で用いられている。OLEDの効率は、研究段階にある現在でさえ、他のほとんどの光源が対抗できないような記録的な値を実現している。OLEDの発展は、有機電子機器に潜む潜在的な能力を示すものである。しかし、有機電子機器が完全に開発されたシステムとして扱われる前に、発光ダイオードだけでなく、有機トランジスタ、有機メモリ、および他のコンポーネントも製造し、これによって、製造コストが安いという利点を最大限に利用すると共に、有機電子機器と従来のシリコン技術との組み合わせへの依存を回避する必要がある。有機トランジスタに加えて、有機太陽電池も、世界中で研究の対象となっている。有機太陽電池はまだ、従来の太陽電池のレベルと同じレベルの効率性を提供することはできないが、これらは製造が簡単であり、そのようなものとして、シリコン太陽電池よりもコストが極めて低くなる可能性を有している。コンポーネントの数が増えるにつれて、有機電子機器には、主な電子機器を外部の影響から保護するためのコンポーネントも必要になってくる。電圧安定化および過電圧保護は、特に、重要な検討課題である。
【0009】
一つ以上の有機層から構成される有機薄膜ツェナーダイオードが多数知られている。US第2004/0051096 A1号には、このようなダイオードのための幾つかの異なるアプローチが記載されている。二つの電極間に、様々な材料から構成される最大三つの有機層が堆積されている。ツェナー電圧は、例えば、有機材料を適切に選択すること、すなわち電子伝導性(n型伝導性)または正孔伝導性(p型伝導性)を適切に選択することによって、調節可能である。ツェナー電圧を、有機材料の層の順番を変えることによって、変化させてもよい。この文献には、異なる電極から、異なるツェナー電圧が生じることも示されている。材料を適切に選択することによって、0.1V〜7Vの範囲のツェナー電圧を実現することが可能である。特定のツェナー電圧が必要ならば、これは、有機材料、電極、および層構造を適切に組み合わせることによって可能である。しかし同時に、順方向では、電流電圧曲線も変化してしまい、これは大きな欠点となる。順方向では、異なるツェナー電圧の場合であっても、ダイオード特性が可能な限り一定に維持されることが望ましい。他の欠点は、所定のツェナー電圧には、特定の電極材料および組み合わせしか使用できない点である。これは、デザインの自由度を著しく制限するものである。
【0010】
本形態の他の問題は、電極と有機材料との間の電気接触特性が悪い点である。有機層と金属コンタクトとの間の各境界面における電子および正孔の大きな障壁によって、電荷キャリアの注入が妨げられる。
【0011】
最終的に、ドープされていない層の導電率は、層厚に極めて敏感である(オーム性注入(ohmic injection) を前提とすると、キュービック依存性(cubic dependency)が予測される。:M.A. Lampert et. al, Current injection in solids, Academic, New York, 1970年)。結果として、US第2004/0051096 A1号に記載のこの製造方法は、製造プロセスのばらつきに影響を受けやすい。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、構成が簡素であり、絶縁破壊電圧に関して改善された性能を提供する、改善されたツェナーダイオードを提供することにある。ツェナーダイオードは、安定し、かつ、再現可能な動作を示すと共に、順方向バイアスの特性曲線を変化させることなく、絶縁破壊電圧を調節可能でなければならない。
【0013】
この目的は、独立請求項1に記載の有機ツェナーダイオードによって解決される。さらに、独立請求項13および14に記載の電子回路、並びに、独立請求項15に記載の有機ツェナーダイオードを動作させる方法も、提供される。本発明の有効な構成は、従属請求項の対象である。
【0014】
有機ツェナーダイオードの逆バイアスの絶縁破壊電圧は、中間層の厚さを変えるだけで調節可能である。選択的または追加的に、逆バイアスの絶縁破壊電圧は、正孔伝導性の電荷キャリア輸送層のドーピング濃度、および/または、電子伝導性の電荷キャリア輸送層のドーピング濃度を変更することによっても、調節可能である。ここで、逆バイアスの絶縁破壊電圧を調節しても、ダイオードの順方向バイアス動作には何の影響も与えない。このため、異なる絶縁破壊電圧を有する有機ツェナーダイオードを、容易かつ再生産可能に製造することができるという利点がもたらされる。
【0015】
従来技術に対する利点は、特に、この種の半導体コンポーネントが、標準的な製造方法を用いて低コストで製造可能だという点にもある。一つの有機層および二つの電極のみから構成される有機ツェナーダイオードでは、順方向バイアス特性曲線は制御が困難であるが、本発明によれば、絶縁破壊動作は、順方向バイアスおよび逆バイアスの方向の両方において、制御可能であり、安定であり、かつ、再現可能である。
【0016】
電荷キャリア注入層および中間層は、無機材料を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の好ましい一形態では、n型ドーパント、および/または、p型ドーパントが、分子ドーパントである。有機ツェナーダイオードの動作範囲では電流密度が比較的高いため、ドーピングイオンまたはドーピング分子が拡散することが予測される。ドーピングイオンおよびドーピング分子の寸法が異なるため、分子ドーパントが拡散される可能性が、イオンが拡散される可能性よりも数倍も低い。従って、コンポーネントを、極めて高い電流密度において、つまり高温度においても、動作させることが可能である。
【0018】
有機材料によるドーピングは、「高ギャップ」材料の使用を可能にする。エネルギーギャップが大きいこれらの材料を使用することにより、透明なコンポーネントの製造が可能になる。透明なコンポーネントの大きな利点は、可視光線が、吸収されることも、放射されることもない点である。従って、これらのコンポーネントを、直接、例えばOLEDディスプレイと組み合わせて用いることが可能になる。
【0019】
このような有機ドーパントは、例えば、EP第1988587号に記載されている。この文献の実施例1〜9に記載のドーパントを用いることが好ましい。他の好ましいp型ドーパントは、US第2005/0139810号に記載されている。好ましいn型ドーパントも、US第2005/0061231号、WO第2005/086251号、およびEP第1837926号、並びにEP第1837927号に開示されている。好ましい正孔輸送材料(p型ドーパントによってドープされることが可能であり、正孔を輸送するHTM半導体)は、例えば、EP第1988587号に記載されている。好ましい電子輸送材料(n型ドーパントによってドープされることが可能であり、電子を輸送するETM半導体)には、例えば、BPhen、BCP、または、他のフェナントロリン誘導体、Alq3、C60、PTCBI、PTCDI、TCNQ、PBD、OXD、TAZ、TPOB、BAlqが含まれる。
【0020】
本発明の有効な一形態では、電気的に非ドープの有機中間層が、単極性の電荷キャリア輸送特性を有しており、このため、電子の形をした電荷キャリアの可動性と、正孔の形をした電荷キャリアの可動性とが、異なることが提供され得る。|μh/μe|または|μe/μh|は、好ましくは10よりも大きく、より好ましくは1000よりも大きい。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態によれば、電気的に非ドープの有機中間層は、両極性の電荷キャリア輸送特性を有しており、このため、電子の形をした電荷キャリアの可動性と、正孔の形をした電荷キャリアの可動性とは、略同一である。順方向バイアス特性曲線を急激に上昇可能にすると同時に、電圧を低い状態で維持するために、この中間層は、好ましくは、両極性の材料から構成されている。これによって、電子および正孔の両方を、確実に、順方向への電荷輸送に関与させることができる。このことは、低電圧でも、比較的高い電流が得られることを意味している。
【0022】
本発明の一形態では、電気的に非ドープの有機中間層が、好ましくは、正確に一つの有機材料を含む、または、正確に一つの有機材料から構成される。
【0023】
本発明の好ましい一形態では、電気的に非ドープの有機中間層が、幾つかの有機材料の混合物を含む、または、幾つかの有機材料の混合物から構成され得る。
【0024】
本発明の一形態は、電極側の電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層が、有機マトリクス材料と有機n型ドーパントとを含み、ここで、ドーパントのマトリクス材料に対する比率は少なくとも1モル%であり得ると共に、対向電極側の電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層が、有機マトリクス材料と有機p型ドーパントとを含み、ここで、ドーパントのマトリクス材料に対する比率は少なくとも1モル%であり得る。他の好ましい一形態では、この比率は少なくとも2モル%である。ドープされた層のドーピング濃度が少なくとも4モル%であれば、より好ましい。
【0025】
本発明の好ましい一形態では、電極側および対向電極側の各電荷キャリア注入層が、金属イオンで電気的にドープされている。
【0026】
本発明の有効な一形態によれば、一方の有機マトリクス材料と他方の有機マトリクス材料とは同一であり、電気的に非ドープの有機中間層が、この同一の有機マトリクス材料を含み得る。一構成では、注入層用の材料は、マトリクス材料として使用され、それぞれn型ドープ、または、p型ドープされる。中間層では、この材料は、ドープされずに、真性の形で用いられる。この種の組み合わせは、「ホモ接合」と呼ばれる。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態では、約1オングストローム〜約100nmの層厚、好ましくは約1nm〜約10nmの層厚を有する、電気的に非ドープの有機中間層が形成される。
【0028】
本発明の一形態は、電極側の電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層、対向電極側の電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層、および、電気的に非ドープの有機中間層、のうちの少なくとも一つの層が、少なくとも一つの無機材料を含むことが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい一構成では、電極側の電気的にn型ドープされた電荷キャリア注入層、対向電極側の電気的にp型ドープされた電荷キャリア注入層、および、電気的に非ドープの有機中間層、のうちの少なくとも一つの有機層が、オリゴマー材料とポリマー材料とから構成される有機材料の群から選択される少なくとも一つの有機材料を含み得る。
【0030】
小さいエネルギー障壁は、好ましくは0.5eVよりも小さく、より好ましくは0eVである。このエネルギー障壁は、コンポーネントが通常のダイオード動作において使用される場合に、電荷キャリア注入層の電荷キャリアが中間層に注入されることに対する障壁と見なされるものである。可能な限り低い閾値電圧および可能な限り急峻な特性曲線を得るには、障壁が低いことが好ましい。
【0031】
ここでは、二つの電極間に配置された層は、活性層と呼ばれる。活性層は、有機材料、すなわち、「低分子」(特に有機半導体の分野では、「低分子: small molecules」という技術用語が用いられる)を含み得る。活性層は、オリゴマーを含んでいてもよい。活性層は、ポリマーを含んでいてもよい。
【0032】
これらの層、特に電極、注入層、半導体層、および/または、中間層は、次の方法のうちのいずれかにより、製造されることが好ましい。
− 真空蒸着法:これは、極めて薄い層を製造するための一般的な方法である。有機層は、主に、熱蒸着またはPVD(Physical Vapour Deposition:「物理蒸着法」)によって蒸着させることが可能である。無機層は、熱蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法、噴霧熱分解法、CVD法(Chemical Vapour Deposition:「化学気相蒸着法」)、および他の方法によって成長させることが可能である。これらの方法は、必ずしも、真空において行われる必要はなく、遮蔽ガスの雰囲気下で行われてもよい。
− 湿式化学処理法または溶液からの沈殿法:これは、「スピンコーティング」、「ブレードギャップコーティング法」、「スタンピング法」、印刷法(インクジェット法)、または類似のものといった方法を含む。
− 「有機気相成長法」:この方法によって混合層を製造することは、EP第1780816 A1号(段落[0011]〜[0013]を参照)に説明されている。この方法によって、ドープされた層を製造することは、EP第1780816 A1号に記載されている(段落[0017]〜[0019]を参照)。
【0033】
層の成長は、常に、基板の上において、または、既に基板上に形成されている層の上において行われる。任意により、基板は、単に支持する機能に加えて、別の機能を果たすことも可能である。例えば、基板は、導電性であってもよく、ダイオードの電極を形成することも可能である。
【0034】
次に、本発明の他の好ましい態様について説明する。
【0035】
導電性の二つの電気コンタクトの間に、電気的にn型ドープされた有機半導体層と、電気的に非ドープの有機半導体層と、電気的にp型ドープされた有機半導体層とを含む有機ダイオードは、電流絶縁破壊時に、電流が実質的にダイオードを通って流れるように、逆バイアスに動作され得る。
【0036】
また、導電性の二つの電気コンタクト(電極)の間に、電気的にn型ドープされた有機半導体層と、電気的に非ドープの有機半導体層と、電気的にp型ドープされた有機半導体層とをこの順番に有する有機ダイオードは、電流絶縁破壊時に、電流が実質的にダイオードを通って流れるように、逆バイアスに動作され得る。
【0037】
さらに、有機半導体素子は、一つの電極および一つの対向電極、並びに、該電極と該対向電極との間に形成され、これらと電気接触した有機層構造を有する有機半導体素子、特に有機ツェナーダイオードを動作させるための方法が提供され得る。ここで、有機層構造は、以下の有機層、すなわち、電極側の電荷キャリア注入層、対向電極側の電荷キャリア注入層、および、これらの層の間に配置された中間層を含んでいる。この方法において、電圧が絶縁破壊電圧値に制限されるように絶縁破壊電圧よりも高い電圧を印加することによって、および、この印加された電圧による電流を、有機ツェナーダイオードを介して排出することによって、後のコンポーネントにとっての保護状態が実現される。
【0038】
有機ツェナーダイオードは、記憶素子と一緒に用いられることが好ましい。
【0039】
本発明は、電極および対向電極、並びに、該電極と該対向電極との間に形成され、これらに電気接触した有機層構造を有する有機電子半導体素子の原理をさらに包含する。有機層構造は、以下の有機層、すなわち、電極側の電荷キャリア注入層と、対向電極側の電荷キャリア注入層と、これらの層の間に位置する中間層を有する層区域と、を含む。
【0040】
電極および対向電極は、例えば金属といった高導電性の材料から構成されていることが好ましい。仮に非金属性の電極材料が所定の導電率を有するならば、これらの非金属性の電極材料を用いてもよい。この種の非金属性の電極材料には、例えば、高導電性の酸化物、SnO、In:SnO(ITO)、F:SnO、ZnO、高ドープされた無機および有機半導体、例えば、a−Si、c−Siまたは類似のもの、窒化物、およびポリマーが含まれる。
【0041】
他の構成では、中間層が、異なる二つの有機材料のハイブリッド層から構成されている。このうちの一つの材料は、特に電子を伝導するために適しており、他の材料は、特に正孔を伝導するために適している。
【0042】
順方向バイアスの方向に、比較的低電圧で高電流を得るための要件は、中間層が非常に小さい「エネルギーギャップ」(「低ギャップ」)を有する材料から構成されることであり得る。この場合、電子および正孔は、電荷の輸送を阻止するエネルギー障壁を克服する必要はない。より高い電流が、より低い電圧によって実現される。
【0043】
電極側および対向電極側の電荷キャリア輸送層は、有機層構造に、電子または正孔(欠陥電子)の形の電荷キャリアを高効率に注入し、そこで、該電荷キャリアを、著しい電気損失を生じさせずに輸送するように機能する。
【0044】
有機材料のドーピングは、様々な形態において公知である。有機材料のn型ドーピングまたはp型ドーピングが提供され得る。n型ドーパントは、通常、HOMO準位(HOMO「Highest Occupied Molecular Orbital」:最高占有準位)が4.5eVよりも低い、好ましくは約2.8eVよりも低い、最も好ましくは約2.6eVよりも低い、分子または中性ラジカルから選択される。ドーピング材料のHOMO準位は、酸化電位のサイクリックボルタンメトリ測定によって算出可能である。あるいは、ドナー陽イオンの還元電位を、ドナーの塩にて算出してもよい。ドナーは、Fc/Fc
+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元対)に対する酸化電位が、約−1.5V以下、好ましくは約−2.0V以下、より好ましくは約−2.2V以下でなければならない。n型ドーピング材料のモル質量は、好ましくは約100g/モルと約2000g/モルとの間、より好ましくは約200g/モルと1000g/モルとの間である。好ましい一実施形態では、電気的n型ドーピングのモルドーピング濃度は、1:1000(アクセプタ分子:マトリクス分子)と1:2との間、好ましくは1:100と1:5との間、最も好ましくは1:100と1:10との間である。
【0045】
DE第10307125号に記載されているように、ドナーは、有機層を製造する間に、または、後に続く層を製造する工程が行われている間に、前駆体のみから形成され得る。上述の、ドナーのHOMO準位の値は、このときに生成される種に関連している。あるいは、別の方法で、有機材料のドーピングを行ってもよい。このような別の方法には、例えば、有機材料を、低い仕事関数を有する金属と一緒に蒸着させる方法が含まれる。リチウムおよびセシウムは、n型ドーピングに適した物質の例である。
【0046】
p型ドーパントは、通常、LUMO準位(LUMO「Lowest Unoccupied Molecular Orbital」:最低非占有準位)が、エネルギー的に、4.5eVよりも低い、好ましくは4.8eVよりも低い、より好ましくは5.04eVよりも低い、分子または中性ラジカルから選択される。p型ドーピングのアクセプタのLUMO準位は、還元電位のサイクリックボルタンメトリ測定により算出可能である。アクセプタは、Fc/Fc
+に対する還元電位が、少なくとも−0.3V、より好ましくは少なくとも−0.0V、最も好ましくは少なくとも0.24Vであることが好ましい。約100〜2000g/モルのモル質量、好ましくは約200〜1000g/モルのモル質量、より好ましくは約300g/モル〜2000g/モルのモル質量を有するアクセプタが好ましい。有効な一実施形態では、p型ドーピングのモルドーピング濃度は、1:1000(アクセプタ分子:マトリクス分子)と1:2との間、好ましくは1:100と1:5との間、より好ましくは1:100と1:10との間である。アクセプタは、層が製造されるまで、または、後に続く層を製造する工程が行われている間に、前駆体から形成される必要はない。上述の、アクセプタのLUMO準位は、このときに生成される種に関連している。
【0047】
このような材料の例は、DE第10347856 B8号、EP第1837926 B1号、またはUS第6,908,783 B1号に記載されている。n型ドーピングには、セシウムまたはリチウムといった金属、および他のものが用いられる。さらに、p型ドーパントとして、五酸化バナジウム(V
2O
5)または酸化モリブデン(Mo
2O
3)といった酸化物を用いてもよい。
【0048】
一実施形態は、電圧基準を生成するために、電子回路において用いられるツェナーダイオードを提供する。
【0049】
他の一実施形態は、他の有機または無機コンポーネントと一緒に用いられるツェナーダイオードを提供する。
【0050】
〔発明の好ましい実施形態の説明〕
以下に、典型的な実施形態を用いると共に図面を参照することにより、本発明をより詳細に説明する。
【0051】
図1は、有機ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。
【0052】
図2は、理想的なツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0053】
図3は、可変の輸送層を有する、
図2の有機ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。
【0054】
図4は、TCTA:TPBIの比率が1:1である5nmの厚さの中間層を有する、第1の実施形態の電流電圧曲線である。
【0055】
図5は、TCTA:TPBIの比率が1:1である10nmの厚さの中間層を有する、第2の実施形態の電流電圧曲線である。
【0056】
図6は、TCTA:TPBIの比率が1:1である様々な厚さの中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0057】
図7は、Balq:NPBの比率が1:1である5nmの厚さの中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0058】
図8は、電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される5nmの厚さの真性中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0059】
図9は、正孔伝導性注入層のドーピング濃度が様々である場合の、
図1の構造を有すると共に、電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される7nmの厚さの真性中間層を有する有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0060】
図10は、電子伝導性注入層のドーピング濃度が様々である場合の、
図1の構造を有すると共に、電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される7nmの厚さの真性中間層を有する有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0061】
図11は、
図1の構造を有すると共に、両極性の「低ギャップ」材料であるペンタセンの単一分子によって構成される30nmの厚さの真性中間層を有する、有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0062】
図12は、
図1の構造を有すると共に、単極性の材料であるBalqおよびNPBによって構成される8nmの厚さの真性中間層を有する、有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【0063】
図1は、有機電子ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。電極1と対向電極2との間に、電極側の電荷キャリア注入層3、対向電極側の電荷キャリア注入層4、および、これらの間に配置された中間層5が、配置されている。
【0064】
図2は、理想的なツェナーダイオードの電流電圧特性曲線の概略的な図である。ここで、特徴的な電圧U
dは順方向バイアス電圧を示し、U
zは絶縁破壊電圧を示している。
【0065】
図3は、有機ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。電極21と対向電極25との間に、電極側の電荷キャリア注入層22、対向電極側の電荷キャリア注入層24、および、これらの間に配置された輸送層23が、配置されている。この場合の中間層の厚さ(x)は、可変である。
【0066】
コンポーネントが信頼性を有して動作するためには、全ての有機材料に、例えば、真空下の勾配昇華法によって得られるような極めて純度の高い形態を用いることが有効である。これによって、「トラップ状態」の結果として生じ得る漏れ電流を回避することが可能である。昇華法によって精製された有機材料は、正確、かつ、再現可能な絶縁破壊動作のために、有用である。
【0067】
第1の実施形態として、次の構造を選択した。
(21.1) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.1) 正孔用の注入層:4重量%の2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルでドープされた2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(50nm)、
(23.1) ハイブリッド中間層:TCTA:TPBi(5nm)、
(24.1) 電子用の注入層:セシウムでドープされたBPhen(50nm)、
(25.1) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0068】
全ての層は、真空蒸着プロセスによって製造されたものである。基本的に、このような層は、スピンコーティング法、ブレードギャップコーティング法、有機気相成長法、または自己組織化法(self-assembly)といった、他の方法でも製造可能である。中間層は、n型伝導性の有機材料とp型伝導性の有機材料とのハイブリッド層によって製造される。この混合比は、本実施形態では、1:1である。
【0069】
図4は、
図3に示される有機コンポーネントの電流電圧曲線を示す図である。輸送層の厚さxは、5nmである。輸送層は、正電圧がアノード(順方向バイアス)に印加されると、典型的なダイオード動作を行う。負電圧がアノード(逆バイアス)に印加されると、電流は、電圧U
zの後に、急激に増大する。絶縁破壊電圧は、通常、最大許容逆電流の約1〜5%である基準電流において、測定される。
【0070】
ツェナーダイオードの重要なパラメータは、絶縁破壊の領域における、その差動抵抗である。この差動抵抗が小さいほど、ツェナーダイオードの絶縁破壊領域における特性曲線は、急峻になる。その一つの結果として、電圧安定化が良好になる。この逆バイアスの方向における差動抵抗は、ドーパントとマトリクスとの間の分子の比率を高くすることによって、低減させることが可能である。より高いドーピングが選択されると、電流を輸送するためにより多くの自由電荷キャリアが利用可能になる。このため導電率が増大する。これは特に、逆方向において顕著である。なぜなら、順方向では、所定のドーピングを超えると、電流は導電性によって制限されることはないが、境界面における障壁によって制限されるからである。従って、図示したコンポーネント、特に注入層のドーピング比率は、さらに最適化され、各要件に適合される。
【0071】
逆方向におけるコンポーネントの動作をさらに改善するために、例えば、コンポーネントの表面積をさらに低減させてもよい。これは、容量性作用を低減するためである。差動抵抗を低下させることによって、特性を改善するための他の方法は、アノード材料であるITOを、例えば金に置き換えることである。ITOは、差動抵抗にも含まれる、比較的高い側面抵抗を有している。これは、本来直列においてアクティブであるこれらの層に、交差抵抗が印加されるからである。この抵抗が低減されるならば、コンポーネントの差動抵抗は、全体的に低減される。
【0072】
アノード側の正孔輸送層22は、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレンによって構成されている。2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルが、分子ドーパントとして用いられる。本実施形態において用いられる材料である、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレンおよび2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルの代わりに、F4−TCNQを用いてもよい。
【0073】
図1の有機ツェナーダイオードの第2の実施形態では、次の構造が提供される。
(21.2) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.2) 正孔用の注入層:4重量%の2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルでドープされた2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(50nm)、
(23.2) ハイブリッド中間層:TCTA:TPBi(10nm)、
(24.2) 電子用の注入層:セシウムでドープされたBPhen(50nm)、
(25.2) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0074】
図5は、
図1および
図3の有機電子コンポーネントの電流電圧曲線を示す図である。この場合、輸送層の厚さxは、10nmである。順方向バイアスの方向では、本実施形態は、典型的なダイオード動作を示す。5nmの中間層を有する実施形態とは異なり、得られる逆バイアス特性曲線は、負電圧の方に、大きくのびている。
【0075】
図6は、
図1および
図3の有機ツェナーダイオードの幾つかの電流電圧曲線を示す図である。中間層の厚さxは、5nmと8nmとの間で変動している。絶縁破壊電圧は、3Vの辺りで変動している。
【0076】
図1の有機ツェナーダイオードの第3の実施形態では、次の構造が提供される。
(21.3) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.3) 正孔用の注入層:4重量%の2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルでドープされたMeo−TPD(50nm)、
(23.3) ハイブリッド中間層:Balq:NPB(5nm)、
(24.3) 電子用の注入層:セシウムでドープされたBPhen(50nm)、
(25.3) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0077】
図7は、
図1の有機電子コンポーネントの電流電圧曲線を示す図である。ここでは、輸送層の厚さxは5nmである。順方向において、本実施形態は、典型的なダイオード動作を示している。逆方向では、所定のU
zにおいて、電流の急上昇が観察される。
【0078】
図1の有機ツェナーダイオードの第4の実施形態では、次の構造が提供される。
(21.4) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.4) 正孔用の注入層:RE68、2重量%の2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリル(50nm)、
(23.4) ハイブリッド中間層:RE68(5nm)、
(24.4) 電子用の注入層:RE68、2重量%のテトラキス(1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリイミド(pyrimido)[1,2−a]ピリイミジナト(pyrimidinato))ジタングステン(II)(50nm)、
(25.4) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0079】
本実施形態は、カソード側の注入層がn型ドープされた材料から構成されている点、中間層が同一の材料である真性の形の材料から構成されている点、および、アノード側の注入層が同一の材料ではあるが、p型ドーピングを有する材料から構成されている点において、上述の複数の実施形態とは異なる有機ツェナーダイオードに関する。
図8は、本実施形態の電流電圧特性曲線を示す図である。本実施形態でも、逆バイアス特性曲線は、中間層の真性の厚さを変えることによって、変化させることが可能である。
【0080】
図9は、真性層の厚さが7nmである第4の実施形態に係るコンポーネントの電流電圧特性曲線を示す図である。正孔伝導性注入層の様々なドーピング条件下の、特性曲線が示されている。
【0081】
図10は、真性層の厚さが7nmである第4の実施形態に係るコンポーネントの電流電圧特性曲線を示す図である。電子伝導性注入層の様々なドーピング条件下の、特性曲線が示されている。
【0082】
図1の有機ツェナーダイオードの第5の実施形態では、次の構造が提供される。
(21.4) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.4) 正孔用の注入層:2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルでドープされた4重量%のペンタセン(50nm)、
(23.4) ハイブリッド中間層:ペンタセン(30nm)、
(24.4) 電子用の注入層:セシウムでドープされたBPhen(50nm)
(25.4) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0083】
本実施形態は、アノード側の注入層がp型ドープされた有機低ギャップ材料によって構成されている点において上述の複数の実施形態とは異なる、有機ツェナーダイオードに関する。中間層は、これと同一の材料から構成されているが、真性の中間層として存在している。カソード側の電荷キャリア注入層は、金属イオンでドープされた有機高ギャップ材料によって構成される。本実施形態でも、逆バイアス特性曲線は、真性中間層を変更することによって、および、注入層のドーピングを変更することによって、変動させることが可能である。
【0084】
図11は、真性層の厚さが30nmである第4の実施形態のコンポーネントの電流電圧特性曲線を示す図である。中間層の30nmの厚さの真性ペンタセン層の特性曲線が示されている。
【0085】
図1の有機ツェナーダイオードの第6の実施形態では、次の構造が提供される。
(21.4) アノード:インジウムスズ酸化物(ITO)、
(22.4) 正孔用の注入層:2,2’−(ペルフルオロナフタリン−2,6−ジイリデン)−ジマロジニトリルでドープされた4重量%のMeo−TPD(50nm)、
(23.4) ハイブリッド中間層:BAlq(8nm)および/またはNPB(8nm)、
(24.4) 電子用の注入層:セシウムでドープされたBPhen(50nm)、
(25.4) カソード:アルミニウム(100nm)。
【0086】
本実施形態は、真性の有機中間層が単極性の材料のみによって構成される点において上述の複数の実施形態とは異なる、有機ツェナーダイオードに関する。本実施形態でも、逆バイアス特性曲線は、真性の中間層を変更することによって、および、注入層のドーピングを変更することによって、変化させることが可能である。
【0087】
図12は、真性層の厚さが8nmである第6の実施形態のコンポーネントの電流電圧特性曲線を示す図である。電子伝導性材料がBAlqであり、正孔伝導性材料がNPBである場合の、8nmの厚さの中間層の特性曲線が、示されている。
【0088】
第1の実施形態に関連して説明した最適化の方法を、提示した他の全ての実施形態に用いてもよい。
【0089】
電荷キャリア注入層または単に注入層とは、多数の電荷キャリアを、一方の側に配置された一つの層から、反対側に配置された別の層へ輸送することを助長する層である。
【0090】
エネルギー障壁とは、コンポーネントが通常のダイオード動作(順方向バイアス)にて用いられているときに、電荷注入層から中間層へ電荷キャリアを注入することに対する障壁のことを意味する。
【0091】
オリゴマーとは、多数の同一または類似の単位から構成される分子である。オリゴマーには、二量体、三量体、および、30単位未満の高分子が含まれる。同一または類似の30単位以上から構成される分子は、ポリマーと呼ばれる。
【0092】
順方向バイアスおよび逆バイアスは、従来のダイオードの使用に関して用いられる通常の技術用語である。
図4では、ダイオードは、正電圧で動作されるときに、順方向バイアスで動作する。このダイオードは、負電圧で動作されるときには、逆バイアスで動作する。
【0093】
逆バイアスにおけるダイオードの電流絶縁破壊は、負電圧の範囲によって規定される。この負電圧の範囲の後には、電流が実質的にダイオードを通って流れる。この範囲は、
図4では、約−2.5V以上から、より高い負電圧までの範囲によって示されている。これも、ツェナー動作と呼ばれる。
【0094】
ツェナーダイオードが動作しているときに、逆バイアス電流が高くなりすぎると、これによってダイオードが破壊されないように、該逆バイアス電流を制限しなければならないことに留意されたい。このことは、通常のダイオードの場合の、順方向バイアスの方向にも当てはまる。
【0095】
用いた技術用語について、以下に説明する。
【0096】
ITO:インジウムスズ酸化物
HTM:正孔を輸送する半導体材料(p型導体とも呼ばれ、p型ドープされ得る)
ETM:電子を輸送する半導体材料(n型導体とも呼ばれ、n型ドープされ得る)
Bphen:4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
BCP:2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(通常ETMとして用いられる)
Alq3:アルミニウム−トリス(8−ヒドロキシキノリン)(通常ETMとして用いられる)
C60:フラーレンC60(ETMとして用いられる)
PTCBI:3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール
PTCDI:3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド
TCNQ:テトラシアノキノジメタン
F4−TCNQ:2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(強力な有機アクセプタ、通常ドーピングHTMのために用いられる)
PBD:2−(4−ビフェニルイル)−5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール
OXD:1,3−ビス[(p−tert−ブチル)フェニル−1,3,4−オキサジアゾリル]ベンゼン
TAZ:3−(ビフェニル−4−イル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール
TPOB:1,3,5−トリス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)−ベンゼン
TCTA:4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾール)−トリフェニルアミン
TPBI:2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]
NPB:N,N’−ビス(ナフタリン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン
MeO−TPD:(N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン)
RE68:トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)
トラップ状態:電子を捕獲する、伝導帯における電子の最低状態(LUMO)。正孔の場合は、正孔を捕獲する、価電子帯における最高状態(HOMO)。
【0097】
ドナー:n型ドーパント
アクセプタ:p型ドーパント
マトリクス分子:ドーパント分子が組み込まれた層を形成するマトリクス材料,マトリクス分子
HOMO:最高占有準位(Highest Occupied Molecular Orbital)
LUMO:最低非占有準位(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)
前駆体:修飾されるまで、アクティブな分子に変換されない物質
「高ギャップ」材料:材料を実質的に透明にするような寸法の光学バンドギャップを有する材料。ギャップは、典型的には、2eVよりも大きい。
【0098】
「低ギャップ」材料:十分な厚みの層のために、材料を実質的に不透明にする寸法の光学バンドギャップを有する材料。バンドギャップは、典型的には、2eV以下である。
【0099】
ホモ接合:接合、典型的にはpn接合であって、両側(pおよびn)は、実質的には同一の輸送材料から生成されている。
【0100】
ツェナーダイオード:比較的低い逆バイアスの絶縁破壊電圧、および順方向バイアスの方向において急峻な特性曲線を有するダイオード。これらのダイオードは、通過方向では、通常のダイオードのように動作するが、遮断する方向では、所定の電圧、すなわち阻止電圧または絶縁破壊電圧よりも高い電圧において、該ダイオードの抵抗は、突然急下降する。
【0101】
正孔用の注入層:順方向バイアスされた電圧下の電子デバイスにおいて、多数の電荷キャリアとしての正孔を有し、これらを別の層に注入する層。
【0102】
電子用の注入層:順方向バイアスされた電圧下の電子デバイスにおいて、多数の電荷キャリアとしての電子を有し、これらを別の層に注入する層。
【0103】
有機気相成長("organic vapor phase deposition"):有機気相成長。
【0104】
上述の明細書、特許請求の範囲、および図面において開示した本発明の特徴は、本発明を、その様々な実施形態において実現するために、単独、または、任意の組み合わせにおいて用いることが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】有機ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。
【
図2】理想的なツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図3】可変の輸送層を有する、
図2の有機ツェナーダイオードの層の順番を示す概略的な図である。
【
図4】TCTA:TPBIの比率が1:1である5nmの厚さの中間層を有する、第1の実施形態の電流電圧曲線である。
【
図5】TCTA:TPBIの比率が1:1である10nmの厚さの中間層を有する、第2の実施形態の電流電圧曲線である。
【
図6】TCTA:TPBIの比率が1:1である様々な厚さの中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図7】Balq:NPBの比率が1:1である5nmの厚さの中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図8】電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される5nmの厚さの真性中間層を有する、
図1の有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図9】正孔伝導性注入層のドーピング濃度が様々である場合の、
図1の構造を有すると共に、電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される7nmの厚さの真性中間層を有する有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図10】電子伝導性注入層のドーピング濃度が様々である場合の、
図1の構造を有すると共に、電荷キャリア注入層のマトリクスとして用いられる材料と同じ材料によって構成される7nmの厚さの真性中間層を有する有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図11】
図1の構造を有すると共に、両極性の「低ギャップ」材料であるペンタセンの単一分子によって構成される30nmの厚さの真性中間層を有する、有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。
【
図12】
図1の構造を有すると共に、単極性の材料であるBalqおよびNPBによって構成される8nmの厚さの真性中間層を有する、有機ツェナーダイオードの電流電圧曲線である。