特許第5773989号(P5773989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アップル インコーポレイテッドの特許一覧

特許5773989エラー表示を送信するための可変タイマの使用
<>
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000002
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000003
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000004
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000005
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000006
  • 特許5773989-エラー表示を送信するための可変タイマの使用 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773989
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】エラー表示を送信するための可変タイマの使用
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/16 20060101AFI20150813BHJP
   H04L 29/10 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H04L1/16
   H04L13/00 309B
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-509896(P2012-509896)
(86)(22)【出願日】2010年5月4日
(65)【公表番号】特表2012-526457(P2012-526457A)
(43)【公表日】2012年10月25日
(86)【国際出願番号】US2010033524
(87)【国際公開番号】WO2010129533
(87)【国際公開日】20101111
【審査請求日】2013年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/175,092
(32)【優先日】2009年5月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ティルワニ,ナレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ナムミ,サイラメッシュ
【審査官】 谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0107053(US,A1)
【文献】 特表2004−530364(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/074771(WO,A1)
【文献】 特開2010−239377(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/079085(WO,A2)
【文献】 特表2007−511135(JP,A)
【文献】 特開2005−295558(JP,A)
【文献】 特表2005−525745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/16
H04L 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置の受信レイヤで第1のデータユニットを受信するステップと、
前記受信レイヤによって、前記第1のデータユニットよりも順序が先の第2のデータユニットが前記受信レイヤによって受信されていないことを検出するステップと、
前記検出に応答して、前記第1のデータユニットの受信に関連するパラメータに依存して変化するタイムアウト期間を有するタイマを起動するステップであって、前記タイムアウト期間は前記無線装置の中間アクセス制御(MAC)レイヤによってサポートされたHARQプロセスの数及び前記第1のデータユニットの受信の成功に関連する送信の数に基づく、ステップと、
前記第2のデータユニットの後の最後に受信されたデータユニットである第3のデータユニットを受信する到着時間を追跡するステップと、
前記タイマの終了後、前記受信レイヤによって、未だ受信されていない第4のデータユニットが、該第4のデータユニットの後の第3のデータユニットが前記受信レイヤによって受信されたにも関わらず存在するかどうかを決定するステップと、
前記第4のデータユニットが受信されていないことの決定に応答して、前記タイマを再起動するステップと、
前記追跡された到着時間を用いて、前記再起動されたタイマのタイムアウト期間を減じるステップであって、前記再起動されたタイマのタイムアウト期間は前記無線装置の中間アクセス制御(MAC)レイヤによってサポートされたHARQプロセスの数及び前記第3のデータユニットの受信の成功に関連する送信の数に基づく、ステップと、
前記減じられたタイムアウト期間に基づく前記再起動されたタイマの終了時に、前記受信レイヤがエラー表示を生成するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記タイムアウト期間に基づく前記タイマの終了時に、前記受信レイヤが、前記第2のデータユニットを受信できなかったことに関して前記エラー表示を送信するステップ
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータユニットの受信に関連する前記パラメータに基づき前記タイマの前記タイムアウト期間を動的に設定するステップ
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タイムアウト期間を動的に設定するステップは、送信の最大数と前記送信の数との間の差のK倍に基づき前記タイムアウト期間を設定することを有し、
Kは、前記無線装置のMACレイヤによってサポートされるHARQプロセスの数を表す、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記受信レイヤで前記第1のデータユニットを受信するステップは、無線リンク制御(RLC)レイヤによって前記第1のデータユニットを受信することを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エラー表示を送信無線装置における送信側RLCレイヤへ送信するステップ
を更に有する請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記無線装置は移動局である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無線装置は基地局である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
実行時に無線装置に請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の方法を実行させる少なくとも1つの機械読出可能な命令を記憶する機械読出可能な記憶媒体。
【請求項10】
無線装置であって、
無線リンクを介して無線通信を行う物理レイヤと、
受信レイヤと
を有し、
前記受信レイヤは、
第1のデータユニットを受信し、
前記第1のデータユニットよりも順序が先の第2のデータユニットが前記受信レイヤによって受信されていないことを検出し、
前記検出に応答して、前記第1のデータユニットの受信に関連するパラメータに依存して変化するタイムアウト期間を有するタイマを起動し、前記タイムアウト期間は前記無線装置の中間アクセス制御(MAC)レイヤによってサポートされたHARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)プロセスの数及び前記第1のデータユニットの受信の成功に関連する送信の数に基づき、
前記第2のデータユニットの後の最後に受信されたデータユニットである第3のデータユニットを受信する到着時間を追跡し、
前記タイマの終了後、未だ受信されていない第4のデータユニットが、該第4のデータユニットの後の第3のデータユニットが前記受信レイヤによって受信されたにも関わらず存在するかどうかを決定し、
前記第4のデータユニットが受信されていないことの決定に応答して、前記タイマを再起動し、
前記追跡された到着時間を用いて、前記再起動されたタイマのタイムアウト期間を減じ、前記再起動されたタイマのタイムアウト期間は前記無線装置の中間アクセス制御(MAC)レイヤによってサポートされたHARQプロセスの数及び前記第3のデータユニットの受信の成功に関連する送信の数に基づくものであり、
前記タイムアウト期間に基づく前記再起動されたタイマの終了時に、エラー表示を生成する
よう構成される、無線装置。
【請求項11】
前記受信レイヤは、更に、前記タイムアウト期間に基づく前記タイマの終了時に、前記第2のデータユニットを受信できなかったことに関して前記エラー表示を送信するよう構成される、
請求項10に記載の無線装置。
【請求項12】
前記受信レイヤは、更に、前記第1のデータユニットの受信に関連する前記パラメータに基づき前記タイマの前記タイムアウト期間を動的に設定するよう構成される、
請求項10に記載の無線装置。
【請求項13】
前記タイマの前記タイムアウト期間を動的に設定することは、前記第1のデータユニットの受信の成功に関連するHARQ送信の数に基づき前記タイムアウト期間を変更することを有し、
前記第1のデータユニットの受信に関連する前記パラメータは、前記HARQ送信の数を表すパラメータを含む、
請求項12に記載の無線装置。
【請求項14】
前記受信レイヤは無線リンク制御(RLC)レイヤである、請求項10に記載の無線装置。
【請求項15】
前記エラー表示は、前記受信レイヤによって、送信無線装置における送信側RLCレイヤへ送信される、
請求項14に記載の無線装置。
【請求項16】
前記無線装置は基地局である、請求項10に記載の無線装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々な無線アクセス技術が提案又は実施されており、移動局が他の移動局との、又は有線ネットワークへ結合されている有線端末との通信を行うことが可能となっている。無線アクセス技術には、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)によって定義されたGSM(Global System for Mobile communications)及びUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)技術並びに3GGP2によって定義されたCDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)技術がある。CDMA2000は、HRPD(High Rate Packet Data)無線アクセスネットワークと呼ばれるパケット切り替え無線アクセスネットワークの1タイプを定義する。
【0002】
パケット切り替え無線アクセスネットワークを提供する他の更なる最近の標準には、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)による802.16(WiMAX)標準及びUMTS技術を向上しようとする3GPPによるLTE(Long Term Evolution)標準がある。LTE標準は、EUTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)とも呼ばれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概して、幾つかの実施形態に従って、無線装置の受信レイヤは特定のデータユニットを受信する。受信レイヤは、特定のデータユニットよりも順序が先の前データユニットが未だ受信されていないと検出する。検出に応答して、タイマが起動される。タイマは、特定のデータユニットの受信に関連するパラメータに依存して変化するタイムアウト期間を有する。タイムアウト期間に基づくタイマの終了時に、受信レイヤはエラー表示を生成する。
【0004】
他の又は代替の特徴は、以下の記載、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の幾つかの実施形態を組み込む無線装置の一例のブロック図である。
図2】伝送媒体を介した送信器と受信器との間のデータユニットの伝送を概略的に表す。
図3A】幾つかの実施形態に従って動的タイマを用いる無線装置における受信レイヤによるデータユニットの受信を概略的に表す。
図3B】幾つかの実施形態に従って動的タイマを用いる無線装置における受信レイヤによるデータユニットの受信を概略的に表す。
図4】幾つかの実施形態に従ってデータユニットの受信に応答する処理のフロー図である。
図5】幾つかの実施形態に従ってレコーダタイマのタイムアウトを操作する処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
幾つかの実施形態が、上記の図面に関連して記載される。
【0007】
無線アクセスネットワークを介して互いと通信することができる無線装置においては、様々なレイヤが、無線通信に関連する様々なプロトコルを実施するために定義される。図1に示されるように、例えば、無線装置は、移動局102及び基地局104を有する。移動局102は、携帯電話機、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯型コンピュータ、ヘルスモニタ等の埋め込み型装置、防犯ブザー、又は他の装置を有する。基地局104は、移動局と無線通信するために無線アクセスネットワークへ接続された如何なるタイプの装置であってもよい。例えば、基地局104は、セルラーネットワーク基地局、何らかのタイプの無線ネットワークにおいて使用されるアクセスポイント、又はその他タイプの無線送信器/受信器を有することができる。語「基地局(base station)」は、また、基地局コントローラ又は無線ネットワークコントローラ等の関連するコントローラも包含することができる。語「基地局」は、また、フェムト基地局若しくはアクセスポイント、ミクロ基地局若しくはアクセスポイント、又はピコ基地局若しくはアクセスポイントともいう。より具体的な例では、基地局は、EUTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)アクセスネットワーク、又は他のタイプの無線ネットワークの部分であってよい。
【0008】
図1に表されている例では、移動局102の様々なプロトコルレイヤは、物理(PHY)レイヤ106、MAC(Medium Access Control;中間アクセス制御)レイヤ108、RLC(Radio Link Control;無線リンク制御)レイヤ110、及び上位レイヤ112を有する。物理レイヤ106は、基地局104と無線リンクを介して物理的インターフェースを確立するために使用される。MACレイヤ108は、アドレッシング及びチャネルアクセス制御メカニズムを提供する。RLCレイヤ110は、無線リンク上のエラー回復及びフロー制御に関与する。上位レイヤ112は、移動局102と基地局104との間の無線通信に使用される他のプロトコルを実施する。上位レイヤ112は、アプリケーションソフトウェアを更に有することができる。
【0009】
基地局104は、同様に、物理レイヤ114、MACレイヤ116、RLCレイヤ118及び上位レイヤ120を有する。
【0010】
移動局102は、記憶媒体124に接続されている1又は複数のプロセッサ122を更に有する。同様に、基地局104は、記憶媒体128に接続されている1又は複数のプロセッサ126を有する。記憶媒体124又は128は、ディスクベースの記憶媒体及び/又は集積回路若しくは半導体記憶媒体により実施されてよい。
【0011】
RLCレイヤ110又は118は、トランスペアレントモード、未承認モード、又は承認モードを含む様々なモードでデータ伝送を実行するよう構成され得る。承認モードでは、受信側RLCレイヤは、無線リンクを介したパケットの受信においてエラーが起きたことを示すよう送信側RLCレイヤへステータス制御パケットを返送することができる。「パケット(packet)」は、基地局104と移動局102との間でやり取りされ得る如何なるデータユニットにも言及するよう意図され、データユニットは制御情報又はベアラ(bearer)データを有してよい。この議論においては、「パケット」及び「データユニット(data unit)」は同義的に使用される。
【0012】
承認モードを実施するRLCレイヤは、ARQ(automatic repeat request;自動繰り返し要求)再送信を実行することができ、受信側RLCレイヤは、データユニット受信におけるエラーを送信側RLCレイヤに知らせる。HARQ(hybrid ARQ)は、HARQが、送信されるべきデータに前進型エラー訂正(forward error correction)(FEC)ビットを加える点で、ARQと相違する。
【0013】
承認モード動作に付随する課題は、ARQ再送信により無線装置間のパケットの送信において増大した端末相互間レイテンシーが存在しうる点である。従来、受信側RLCレイヤは、特定のパケットが受信されていないことを送信側RLCレイヤに返すステータス報告を生成する前に欠測データを所定時間待つことができるよう、並べ替え(reordering)タイマを設けられている。しかし、従来の並べ替えタイマは固定のタイムアウト期間を用いるので、並べ替えタイマが、受信側RLCレイヤを、送信側RLCレイヤへステータス報告を返送するにはあまりに長く待たせる場合に、性能が害されることがある。
【0014】
幾つかの実施形態に従って、図1に示されるように、動的並べ替えタイマが用いられる。図1では、移動局102のRLCレイヤ110は、動的並べ替えタイマ130及び関連する制御ロジック132を有する。基地局104のRLCレイヤ118は、同様に、動的並べ替えタイマ134及び関連する制御ロジック136を有する。動的並べ替えタイマ130又は134によれば、動的タイマのタイムアウト期間は、タイムアウト期間が、パケットの受信に関連するパラメータに依存して変更可能にされるように動的に(可変的に)設定され得る。幾つかの実施において、並べ替えタイマの動的タイムアウト期間が設定されるパラメータは、RLCレイヤによるパケットの受信の成功の前のパケットの送信の数を表すパラメータである。動的並べ替えタイマのタイムアウト期間の動的設定については、以下で更に論じる。
【0015】
並べ替えタイマの一般的な動作は、図2の例に関連して論じられる。伝送媒体202は、送信器と受信器との間に設けられている。送信器(TX)は伝送媒体の一方の側に設けられており、受信器(RX)は伝送媒体の他方の側に設けられている。送信器は移動局102及び基地局104のいずれか一方であってよく、受信器は移動局102及び基地局104のいずれか他方であってよい。送信器は送信側RLCレイヤ(RLC TX)及び送信側MACレイヤ(MAC TX)を有し、受信器は受信側MACレイヤ(MAC RX)及び受信側RLCレイヤ(RLC RX)を有する。
【0016】
図2の例では、送信側RLCレイヤは、パケットSN1及びSN2を送信する。送信側RLCレイヤによって送信されたパケットSN1及びSN2は、送信側MACレイヤを介して送信される。図2の例では、送信側MACレイヤは、最初に、送信時間インターバル1(TTI1)でパケットSN1を送信する。送信側MACレイヤは、TTI2でパケットSN2を送信する。SN1及びSN2を表す夫々のハッチングパターンは、図2においては、理解を容易にするために異なっている点に留意されたい。パケットSN1及びSN2は、受信側MACレイヤによる受信のために、伝送媒体202(例えば、移動局102と基地局104との間の無線リンク)を介して伝送される。受信側MACレイヤは、受信されたパケットを受信側RLCレイヤへ伝える。
【0017】
図2の例において、受信側RLCレイヤは、TTI0及び1で送信されたパケットSN1及びS2の受信に失敗したとする。TTI0及び1で送信されたパケットSN1及びSN2は受信側RLCレイヤによって無事に受信されなかったので、パケットSN1及びSN2は、夫々、TTI8及びTTI9で再送信される。図2の例において、TTI9で送信されたパケットSN2は、受信側RLCレイヤで無事に受信されたとする。しかし、パケットSN2は受信されたが、前のパケット(SN2よりも順序が先であるSN1)は、受信側RLCレイヤによって未だ受信されていない。順序が狂った配信を検出すると、並べ替えタイマがTTI9で起動される。なお、従来、この並べ替えタイマのタイムアウト期間は静的であり、次のように決定される:

Reorder Timer=K×HARQ伝送の最大数 (1)

Kは、MACレイヤによってサポートされるHARQプロセスの数であり、HARQ伝送の最大数は、HARQメカニズムによって実行され得る伝送の最大数を表す。Kが8であり、HARQ伝送の最大数が6であるとすると、並べ替えタイマの静的なタイムアウト期間は、48TTIに設定される。並べ替えタイマの従来の静的設定によれば、パケットSN1が、(図2の例におけるTTI16、TTI24、TTI32及びTTI40での)送信側MACレイヤからの全ての更なる送信の後、正確に受信されない場合には、並べ替えタイマは、TTI9+TTI48=TTI57として計算されるTTI57で終了する。しかし、従来の静的並べ替えタイマを用いる場合、TTI57での並べ替えタイマの終了時にエラー報告を送信する際のレイテンシーは比較的大きい点に注意すべきである(言い換えると、パケットの受信の失敗によるエラー報告を送信する際に比較的大きな遅延が存在しうる。)。
【0018】
図2の例において、SN1の最後の再送信はTTI40であったが、ステータス報告は、TTI57までは、受信側RLCレイヤから送信側RLCレイヤへ返送されない。すなわち、ステータス報告は、17TTIの遅延を有して返送される。
【0019】
幾つかの実施形態に従って、静的なタイムアウト期間を設定される静的並べ替えタイマを用いることに代えて、動的に設定可能なタイムアウト期間を有する動的並べ替えタイマが用いられる。実際上、並べ替えタイマのタイムアウト期間は、パケットの受信にエラーがあった場合における報告レイテンシーを減らすよう、所定の条件に基づき動的に調整され得る。幾つかの実施において、この所定の条件は、受信側RLCレイヤによる受信の成功の前のパケットのMACレイヤでのHARQ伝送の数に対応するパラメータによって表される。
【0020】
一般に、RLCパケットSNがN回の送信(N≧1)により受信される場合、未だ受信されていないいずれの前パケットSNx−1も、少なくともN回の送信を経るべきである。この記述は、MACレイヤでの同期伝送を用いるあらゆるシステムに当てはまる。例えば、SN1の送信がTTI0で開始される図2の場合を考える。SN2が最初に送信されるのはTTI1である。SN2の送信は、例えば、それがTTI10で開始する場合に、遅延されうる。その場合に、SN2はその最初の送信を完了している間、SN1はその2回目の送信を完了している。従って、確かに、SN1は少なくともSN2と同じ回数の送信を完了している。
【0021】
しかし、幾つかの実施形態に従うアルゴリズムは、同期システムだけに制限されない。原理は、パケット再送信が先入れ先出し(FIFO)に基づきスケジューリングされる同期HARQを用いるシステムにも適用可能である。
【0022】
並べ替えタイマ(図1の130又は134)のタイムアウト期間を動的に調整するよう、MACレイヤは、パケットの受信成功のためにそのパケットが要したHARQ伝送の数を示す値SNx_RX_Numberを提供する。SNx_RX_Numberは、RLCレイヤに報告される。次いで、RLCレイヤは、次のように動的タイムアウト期間を動的に計算する:

Reorder Timer=K×(HARQ伝送の最大数−SNx_RX_Number) (2)

SNx_RX_Numberを表すために使用されるビットの数は、HARQ伝送の最大可能数に基づく。このように、例えば、HARQ伝送の数が8である場合に、SNx_RX_Numberを表すために使用されるビットの数は3である。より一般的に、SNx_RX_Numberを表すために使用されるビットの数は、log2(HARQ伝送の最大数)として計算される。
【0023】
動的並べ替えタイマ(130又は134)の動作に関する説明は、図3Aに関連して記載される。図3Aは、受信側MACレイヤでのSN1及びSN2の受信を示す。図2の例と同様に、TTI9で送信されるパケットSN2に応答して、受信側MACレイヤは、パケットSN1を受信することなく、パケットSN2の受信に成功する。パケットSN2は、TTI9に対応する2回目の送信時に受信側RLCレイヤへMACレイヤによって無事に送信された。図3Aの例では、2回目の送信による受信側MACレイヤによるパケットSN2の受信成功に応答して、受信側MACレイヤは、SNx_RX_Numberを2に設定し、SNx_RX_Numberの値を受信側RLCレイヤに報告する。式2に基づき、受信側RLCレイヤは、以下のように動的並べ替えタイムアウトを計算する。なお、Kは8に等しく、HARQ伝送の最大数は6であるとする:

Reorder Timer=8×(6−2)=32TTI

並べ替えタイマは、(受信側RLCレイヤによるパケットSN2の受信時に)TTI9で起動される。パケットSN1が全ての送信の後に正確に受信されない場合、動的並べ替えタイマは、SN1の最後の送信がTTI40であるから、TTI9+TTI32=TTI41で終了する。並べ替えタイマがTTI41で終了すると、受信側RLCレイヤは、送信側RLCレイヤへ返送されるエラー報告を即座にトリガすることができる。エラー報告は、パケットSN1が無事に受信されなかったことを示す。
【0024】
図3Aに与えられている例によれば、ステータス報告は、静的並べ替えタイマ技術によるよりも小さいレイテンシーを有して送信側RLCレイヤへ返送されることが分かる。
【0025】
他の例が図3Bに示されており、複数のギャップがパケットの受信において起こる(SN2の前の欠測パケットSN1のためのギャップ及びSN2とSN4との間の欠測パケットSN3のためギャップ)。前パケットSN1を受信することなくパケットSN2の受信に成功した場合、動的並べ替えタイマは、図3Aに関連して先に論じられたように動的に設定されたタイムアウト期間を有して起動される。しかし、パケットSN1のための並べ替えタイマがアクティブである間、他のギャップが作られる可能性がある。それは、図3Bの例において、後続のパケットSN4及びSN5が受信側RLCレイヤによって受信されたに関わらず受信側RLCレイヤでパケットSN3が受信されていないことによるギャップである。パケットSN4は1回の送信の後に受信され、一方、パケットSN5は2回の送信の後に受信された。パケットSN1のための並べ替えタイマが終了するか、あるいは、パケットのSN1の受信成功により停止されると、受信側RLCレイヤは受信窓を動かし、他のギャップを見る(この場合には、SN2とSN4との間のギャップ)。
【0026】
結果として、以下のように式2を用いて動的タイムアウト期間を計算するとともに、受信側RLCレイヤは動的並べ替えタイマを起動する:

Reorder Timer=8×(6−2)=32TTI

この場合に、最後に無事に受信されたパケット(この場合にはパケットSN5)のSNx_RX_Numberが使用される。SN1ギャップタイマがTTI41で終了し、SN3ギャップのためのタイマがTTI41で起動されるとする。SN3パケットが全ての送信の後に正確に受信されない場合に、SN3ギャップための並べ替えタイマは、TTI41+TTI32=TTI73で終了する。パケットSN3の最後の送信はTTI47である。従って、受信側RLCレイヤは、TTI73で即座にエラー報告をトリガすることができる。
【0027】
図4は、データユニット(又はパケット)の受信に応答して行われる処理のフロー図である。図4の処理は、図1の制御ロジック132若しくは136によって(及び/又は他の制御ロジックによって)実行され得る。新しいデータユニットが受信されるとき(402)、受信側RLCレイヤは、受信されたデータユニットが順序通りであるかどうか(例えば、順序が先であるデータユニットが未だ受信されていないかどうか)を決定する(404)。受信されたデータユニットが順序通りであるならば、通常の処理が行われる。
【0028】
しかし、受信されたデータユニットが順序通りでないと決定される場合には、受信側RLCレイヤは、並べ替えタイマが既に動いているかどうかを決定する(406)。並べ替えタイマが未だ動いていない場合には、並べ替えタイマは、例えば、上記の式(2)に従って動的に設定されたタイムアウト期間を有して、起動される(408)。
【0029】
406で決定されるように、並べ替えタイマが既に動いている場合には、受信側RLCレイヤは、欠測データユニットが受信されたかどうかを決定する(410)。欠測データユニットが受信されていない場合には、処理は戻る。しかし、欠測データユニットが受信されたと受信側RLCレイヤが決定する場合には、並べ替えタイマは停止される(412)。
【0030】
図5は、並べ替えタイマの終了を操作する処理のフロー図である。並べ替えタイマの終了の検出時に(502)、受信側RLCレイヤは、データユニットの受信失敗を示すステータス報告を生成する(504)。このステータス報告は、無線リンクを介して送信側RLCレイヤへ返送される。
【0031】
受信側RLCレイヤは、次に、他のデータユニットが欠けているかどうかを決定する(506)。他のデータユニットが欠けていない場合には、並べ替えタイマは停止される(508)。しかし、例えば図3に表されている状況のように、他のデータユニットが欠けている場合には、並べ替えタイマは、上記の式(2)に従って動的に設定されたタイムアウト期間を有して、再起動される(510)。
【0032】
更なる最適化として、図3Bに表されているように複数のギャップがある場合には、より一層早く(すなわち、TTI73よりも早く)ステータス報告を送信することが可能であってよい。より早く(すなわち、TTI73よりも早く)エラーを報告しない主な理由は、受信側RLCレイヤが、その後に受信されるパケットの到着時間の追跡を保持しないためである。到着時間が追跡される場合には、その後に受信に成功したパケットの到着時間と並べ替えタイマとの間のオーバーラップ時間は除かれる。
【0033】
幾つかの実施において、受信側RLCレイヤは、受信無線装置の内部クロックに基づき絶対時間を記録することができる。受信に成功したパケットの絶対時間を基準として用いると、動的タイマは、先に失敗したパケット検出を可能にするよう調整され得る。
【0034】
他の実施においては、相対的なオフセットが、絶対到着時間よりむしろ使用される。相対的なオフセットを計算する1つの方法は、次の通りである。受信側RLCレイヤは、ギャップごとにSNx_Offset_Start及びSNx_Offset_Endを記録することができる。SNx_Offset_Startは、次のギャップが起こった場合に残っている並べ替え時間(並べ替えタイマに残された時間量)であり、SNx_Offset_Endは、タイマ終了において残された並べ替え時間を表す。
【0035】
この場合に、動的タイムアウト期間は:

Reorder Timer=[K×(HARQ伝送の最大数−SNx_RX_Number)
−(SNx_Offset_Start−SNx_Offset_End)] (3)

によって与えられる。
【0036】
図3の例によれば、SN4_Offset_Startは、パケットSN4がTTI11で到着するので、30であり、SN5_Offset_Startは21である。パケットSN1が到着しないとすると、並べ替えタイマはTTI41で終了する。タイマは終了したので、残された並べ替え時間は0である。従って、SN4_Offset_End及びSN5_Offset_Endの値は0である。式3によれば、動的並べ替えタイマは、次のように計算される:

Reorder Timer=8×(6−2)−(21−0)=11TTI

SN3ギャップのためのタイマはTTI41で起動され、SN3パケットが全ての送信の後に正確に受信されない場合には、SN3ギャップのための並べ替えタイマはTTI41+TTI11=TTI52で終了する。パケットのSN3の最後の送信はTTI47である。従って、受信側RLCレイヤは、TTI52で即座にエラー報告をトリガすることができる。
【0037】
パケットSN1がTTI24で到着した場合には、残された並べ替え時間は17である。従って、SN4_Offset_Endは17に設定され、SN5_Offset_Endは17に設定される。式3によれば、動的並べ替えタイマは、次のように計算される:

Reorder Timer=8×(6−2)−(21−17)=28TTI

SN1パケットが到着しているので、動的タイマはTTI24でSN3ギャップのために再起動される。SN3パケットが全ての送信の後に正確に受信されない場合には、SN3ギャップのための並べ替えタイマはTTI24+TTI28=TTI52で終了する。パケットのSN3の最後の送信はTTI47である。従って、受信側RLCレイヤは、TTI52で即座にエラー報告をトリガすることができる。
【0038】
図3A及び図3Bの例では、記憶される値の数を減らす簡略化されたアプローチが受信側RLCレイヤにおいて実施されてよく、受信側RLCレイヤは、ギャップごとのただ1つの受信に成功したパケットに係る変数、すなわち、SNx_RX_Number、SNx_Offset_Start、SNx_Offset_End又は絶対時間を追跡/記憶する。例えば、動的並べ替えタイマ値は、SN4又はSN5を用いて計算されてよい。これは、並べ替えタイマが前パケット(すなわち、この場合には、SN1)について依然として作動している間に、多数のパケットが正確に受信される(すなわち、全てのSN4乃至SN30のパケットが正確に受信される)場合に、複数ギャップの事例において特に有益である。
【0039】
先に記載された様々なモジュール(図1のRLCレイヤ110若しくは118又は他のレイヤを含む。)の命令は、プロセッサ(122又は126)での実行のためにロードされる。プロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセッサモジュール若しくはサブシステム、プログラム可能集積回路、プログラム可能ゲートアレイ、又は他の制御若しくは計算装置を有してよい。
【0040】
データ及び命令は、1又はそれ以上のコンピュータ可読又は機械可読記憶媒体として実施される夫々の記憶装置において記憶される。記憶媒体は、動的若しくは静的ランダムアクセスメモリ(DRAM若しくはSRAM)、消去可能及びプログラム可能読出専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能及びプログラム可能読出専用メモリ(EEPROM)並びにフラッシュメモリ等の半導体メモリ装置;固定フロッピー及びリムーバブルディスク等の磁気ディスク;テープを含む他の磁気媒体;コンパクトディスク(CD)若しくはデジタルビデオディスク(DVD)等の光学媒体;又は他のタイプの記憶媒体を含む様々な形態のメモリを有する。先に論じられた命令は、1つのコンピュータ可読又は機械可読記憶媒体で提供されてよく、あるいは、代替的に、場合により複数のノードを有する大きなシステムにおいて分散された複数のコンピュータ可読又は機械可読記憶媒体で提供されてよい。そのようなコンピュータ可読又は機械可読記憶媒体は、物(又は製品)の部分であると考えられる。物又は製品は、あらゆる製造された単一のコンポーネント又は複数のコンポーネントも表すことができる。
【0041】
以上の記載において、多数の詳細が、個々で感じされる対象の理解を提供するために挙げられている。しかし、実施は、それらの詳細の一部又は全てによらずに為されてよい。他の実施は、先に論じられた詳細からの変更及び変形を含んでよい。添付の特許請求の範囲は、そのような変更及び変形に及ぶよう意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5