特許第5773992号(P5773992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5773992反応性溶融接着剤を有するハイブリッド部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773992
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】反応性溶融接着剤を有するハイブリッド部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 177/00 20060101AFI20150813BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20150813BHJP
   B29C 65/40 20060101ALI20150813BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20150813BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20150813BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C09J177/00
   B32B15/08 N
   B32B15/08 E
   B29C65/40
   C09J175/04
   C09J163/00
   C09J151/06
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-512267(P2012-512267)
(86)(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公表番号】特表2012-528211(P2012-528211A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2010054270
(87)【国際公開番号】WO2010136241
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年2月15日
(31)【優先権主張番号】102009026493.0
(32)【優先日】2009年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009026988.6
(32)【優先日】2009年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス パヴリク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン リストハウス
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン フリッツ
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−190917(JP,A)
【文献】 国際公開第99/035206(WO,A1)
【文献】 特表2006−504858(JP,A)
【文献】 特開2003−261847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 177/00
B29C 65/40
B32B 15/08
C09J 151/06
C09J 163/00
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及びポリマーから成るハイブリッド部材の製造方法において、
イソシアネート及びエポキシドに加えて、官能化されたポリオレフィンを含有するコポリアミドベースの溶融接着剤によって、前記金属をポリマーと結合させ
ラウリンラクタムがベースのコポリアミドを使用し、
ポリプロピレンをベースとする、又はエチレン/C3〜C12−α−オレフィンコポリマーをベースとする、官能化されたポリオレフィンを使用し、かつ
当該官能化されたポリオレフィンは、酸無水物又はマレイン酸グラフトされたポリオレフィンであることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記溶融接着剤が、ブロックトイソシアネートを2.5〜15%含有し、エポキシドを2.5〜10%含有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融接着剤が、官能化されたポリオレフィンを10〜60%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィンの官能化のために、酸無水物原子団を使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属を、溶融接着剤により全平面に又は部分的に、静電スプレーガンによって被覆し、150℃で120〜300秒の間、加熱することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
自動車構造又は航空機構造で使用するための、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法により得られるハイブリッド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が記載するのは、構造部材における反応性溶融接着剤の使用である。構造部材とは、二次的な外観要求を有する構成要素であり、当該構成要素は、自動車構造、並びに航空機構造、担持部品の分野、並びに力を受ける部品で使用され、その特徴はとりわけ、部材に特別な機械的特性を局所的に付与する、補強作用を有することである。特に傑出しているのは、従来用いられていた構成要素と比較して、さらに質量を減少させた場合のねじり剛性の向上である。
【0002】
本願で記載するハイブリッド部材の特徴は特に、当該部材が、金属を主としたポリマーとの複合材から成ることである。ここで金属部材は、射出成形法によってポリマー構造に挿入され、当該構造は部材に相応するねじれ剛性及びひび割れ剛性(Crashsteifigkeit)を、さらに比較的僅かな質量でも付与する。
【0003】
ここに記載したハイブリッド部材の弱点は、従来、金属材料に対するポリマーの結合性であった。ここで様々な材料の材料収縮及び伸張係数は異なるので、構成要素の剥離が生じ、このことが機械的特性の悪化に繋がる。構造用ハイブリッド部材は現在、射出成形技術によってポリマー材料を金属材料に射出することによって製造される。この物質結合の問題は、ポリマーと金属との移行の問題である。と言うのも、各材料は様々な機械的特性を有し、このことが、複合材の強度、例えばポリマーの収縮によって否定的に作用し、そのため、部材のねじれ剛性も、同様に否定的な影響を受ける。
【0004】
Evonik Degussa GmbHのEP1808468には、ラウリンラクタムベースで合成される溶融接着剤で金属部材を予備被覆することによって、2つの成分の基本的により良好な結合が得られ、ハイブリッド部材の腐食耐性が改善することが記載されている。使用する溶融接着剤にさらにブロックトイソシアネート(分子中で合成作用をもたらす)、及びエポキシド(接着改善及び架橋作用をもたらす)を添加すれば、これらの効果はさらに改善可能である。分子量合成は、腐食保護の理由から部材に必要なカソード浸漬塗装(KTL)によって促進される。と言うのも、150℃超での浸漬塗装後、25分超の滞留時間により、この部材に必要とされる結合強度及び付着強度が高まるからである。仮に純粋に熱可塑性の溶融接着剤であったとすれば、上記温度負荷で既に熱的に分解し、このため部材の機械的特性は、否定的な影響を受けたであろう。ここに記載された溶融接着剤は一般的に、金属材料に対して相性が非常に良好であり、ハイブリッド部材で金属とポリマーとの間の接着改善剤として使用される。
【0005】
EP1808468によれば、使用される反応性溶融接着剤によって腐食耐性も改善される。この改善は、金属材料と射出成形材料との間の収縮性の差違が平衡化されることによって起こり、これにより腐食しやすい亀裂の形成が回避できる。
【0006】
EP1808468に記載されたプライマー系は、極性射出成形材料(例えばポリアミド6、又は66)の場合に、特に作用する。ますます現れる非極性射出成形材料、例えば長繊維で強化されたポリプロピレンは、極性差により不充分な接着が予測される。さらに、このような非極性射出成形材料を有するハイブリッド部材の場合には、KTL処理が行われない。このため、KTL処理により達成可能な結合強度及び付着強度の向上が、省略される。よって本発明の課題は、(150℃超で浸漬塗装後25分超の)KTL処理無しでポリオレフィン射出成形材料に対する良好な接着性を満たす接着プライマー系の開発であった。
【0007】
意外なことに本願請求項によれば、EP1808468に記載のコポリアミドベースの反応性接着剤(イソシアネート及びエポキシドを含むもの)に、官能化されたポリオレフィンを添加することにより、前記課題が解決されることが判明した。
【0008】
このためEP1808468に記載された、ラウリンラクタム含有コポリアミドベースの粉末混合系に、ブロックトイソシアネートを2.5〜15%、好適には4〜6%、エポキシドを2.5〜10%、好適には4〜7.5%、特に好適には4〜6%、さらに官能化されたポリオレフィン粉末を10〜60%、好適には20〜50%加える。基本的には、ここに記載された粉末混合物も、塗料調製物で使用できる。
【0009】
官能化されたポリオレフィンは、最も単純な場合、ポリプロピレンベースである。しかしながら、エチレン/C3〜C12−α−オレフィンコポリマーも適している。C3〜C12−α−オレフィンとしては例えば、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、又は1−ドデセンを使用する。さらにエチレン/C3〜C12−α−オレフィンコポリマーは、オレフィンジエン(例えばエチリデンノルボルネン又は1,4−ヘキサジエン)も最大約10質量%含むことができる。官能化として好適には、酸無水物原子団を用い、この原子団は公知の方法で、主鎖ポリマーと不飽和ジカルボン酸無水物又は不飽和ジカルボン酸との熱反応又はラジカル反応により導入されるものである。適切な反応試薬は例えば、無水マレイン酸、又は無水イタコン酸である。この方法で0.1〜4質量%がグラフトされ、これは他のモノマー、例えばスチレンとともに行うことができる。
【0010】
マレイン酸グラフトされたポリオレフィンを用いることにより、とりわけ耐衝撃性変性のため、又はブレンド及び機械的特性が強化された系における相容性改善剤として、工業的な適用がさらに広がることが判明している(Polymer, 2001 , 42, 3649-3655、及びそこで引用された文献)。上記情報源は例えば、このような官能化されたポリオレフィンの製造も記載している。
【0011】
官能化されたポリオレフィンの典型的な代表例は、酸無水物グラフトされた、ポリプロピレンベースAdmer QB 520 E(三井化学)である。また、やや流動性のあるマレイン酸グラフトされたポリプロピレン(Kometra社製、例えばSCONA TPPP 8012)も原則的に使用できる。
【0012】
官能化するためのさらなる可能性は、反応性の相容性改善剤を有する非官能化されたポリオレフィンの溶融混合物であり、この混合物はエポキシド原子団又は無水カルボン酸原子団を有するものである。その典型例は、エチレンと、無水マレイン酸若しくはグリシジルメタクリレートを有する1つ又は複数の非反応性アクリルモノマーとから成るコポリマーである。
【0013】
変性されたポリオレフィン成分は好ましくは、粉砕された形で、反応性溶融接着剤粉末混合物で使用する。原則的にはまた、コポリアミド成分を官能化されたポリオレフィンと溶融物で混合し、引き続き粉砕して、エポキシド粉末及びイソシアネート粉末と混合することができる。
【0014】
この適用法の特徴は、金属異形材をまずコポリアミド溶融接着剤で全平面に又は部分的に、静電スプレーガンによって、若しくは適切な塗料系によって被覆し、引き続き約150℃で120〜300秒間、好ましくは約150秒間加熱し、接着剤を溶融させることである。それ以降の工程で、ポリマー構造体を射出成形技術によって射出成形する。
【0015】
本発明によるハイブリッド部材は、自動車構造、航空機産業、鉄道構造などに適用でき、典型的な適用は、フロントエンド(バンパー)、又は屋根枠の領域である。
【0016】
実施例
粉末混合物の典型例は、以下ように構成されている:
VESTAMELT X1027 45%、
VESTAGON BF 1320 7.5%、
Araldit GT7004 7.5%、
Admer QB 520 E 40%。
【0017】
使用物質は第一工程でそれぞれ、Alpine社のピンミルで常温で粉砕し、Sweco社の空気放射式篩い(Luftstrahlsieb)を用いて分級し(〜80μmの粒径範囲)、そしてDiosna社の高速ミキサによって混合する。
【0018】
それから静電式スプレーガンを用いて、U鋼板を反応性粉末混合物で被覆し、150秒間150℃で処理した。
【0019】
均一な表面を呈示し、接着値のばらつきを最小化するため、金属部材は被覆前に脱脂するのが望ましい。さらに、金属部材を60〜80℃に予熱することが、濡れ性のために有利である。
【0020】
最後にハイブリッド部材は、KrausMaffeiの射出成形機(LM125-390-160CZ型)を用いて製造し、ここでStamax 30YM240(Sabic社のPP-LGF30)をプラスチック成分として射出成形した。比較として、被覆されていない鋼板を有するハイブリッド部材も製造した。
【0021】
その後、得られたハイブリッド部材でねじれ性試験を行った(試験用品:Schenck社の回転シリンダー、PD1 F型、製品番号1 PKT2920(回転モーメント測定器PM1 DF型付き、Mmax=1kNm)、角度測定器、PDF型、製品番号P202039.01、測定可能角度100°、制御電機部品、Schenck社のS59型)。ここで最大約90°のねじれ角度まで、1.5°/秒の角速度で負荷をかけた。記録の剛性は、5Nm〜50Nmの間のモーメント/回転角度の特徴値を線形回帰することにより測定した。以下の比較によれば、本発明によるプライマー系の使用により、機械的特性が著しく改善することがわかる(それぞれ、3つの試験体を用いた)。
【表1】
【表2】