特許第5774001号(P5774001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774001
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】組織焼灼のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   A61B17/38
【請求項の数】12
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2012-522334(P2012-522334)
(86)(22)【出願日】2010年7月22日
(65)【公表番号】特表2013-500119(P2013-500119A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】IL2010000588
(87)【国際公開番号】WO2011013118
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年7月16日
(31)【優先権主張番号】200081
(32)【優先日】2009年7月27日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】201246
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】61/307,004
(32)【優先日】2010年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/326,667
(32)【優先日】2010年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512023018
【氏名又は名称】ノヴォクセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】スラトカイン, マイケル
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−63045(JP,A)
【文献】 特開2006−192285(JP,A)
【文献】 特表2007−531578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に穴を形成するように組織を気化させるための装置であって、
気化要素と、
気化要素を200℃から600℃までの範囲の温度に加熱するように構成された加熱要素と、
穴からの予め定められた付帯的損傷距離を越える距離で組織の熱緩和時間未満の短い時間内に、気化要素を組織の特定の深さまで前進させかつ気化要素を組織から後退させるように構成された機構と
を含み、
付帯的損傷距離が、組織の熱拡散係数に、気化要素が組織に熱を提供する短い時間の平方根を掛けたものに基づく、装置。
【請求項2】
気化要素が組織中に前進されている間、組織内にある間、及び組織から後退されている間、加熱要素が、気化要素を加熱しないように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
組織と接触して配置されるように構成された保護板をさらに含み、気化要素は特定の深さを、保護板を越えて組織内に延長するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
装置内の移動要素に連結されたばねをさらに含み、移動要素は気化要素を含み、移動要素は調和振動子を含み、調和振動子は10ミリ秒から100ミリ秒の範囲の、移動要素の質量およびばねのばね定数に基づく振動周期を有する、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
気化要素の前進行程を制限するように構成されたスペーサと、機構が複数の気化要素を短時間内に前進および後退させるように構成され、かつスペーサが複数の穴を含み、そこを介して複数の気化要素を組織内に送り込むことができるようにした、複数の気化要素とをさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
特定の深さは、以下のものからなる組織の群から選択される組織に穴を形成するように組織を気化するために調整可能である、請求項に記載の装置:
鼓膜;
ファロビウス管;
表皮;
真皮乳頭層
わの付いた組織
帯;
膣頸管組織;および
歯茎組織。
【請求項7】
加熱、前進、および後退の速度は、1〜100パルス/秒の繰返し率の気化の繰返しパルスを生成する、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
気化要素が加熱される温度および短い持続時間の組合せは、付帯的損傷距離を150ミクロン未満の距離に制限するように選択される、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
気化要素の先端は気化要素の本体より細い、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
気化要素は、第一材料と、第一材料を被覆する第二生物適合性材料とを含む、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
第一材料は銅を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
気化要素が組織を気化する間に組織を延伸するための組織延伸機構をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2010年4月22日に出願した米国特許仮出願第61/326667号及び2010年2月23日に出願した米国特許仮出願第61/307004号の利益を主張し、2009年9月30日に出願したイスラエル特許出願第201246号および2009年7月27日に出願したイスラエル特許出願第200081号からの優先権を主張する。上述の出願の開示内容は参照として本明細書中に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、その一部の実施形態では、外科的方法および装置に関し、さらに詳しくは、組織の正確な焼灼のための方法および装置に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0003】
本発明は、多種多様な用途を切り開くものであり、その中の一部は歴史的にパルスレーザの使用によって実現されている。
【0004】
パルスCOレーザは一般的に、組織の非出血切開および焼灼用の精密外科器具と考えられている。「ウルトラパルス」COレーザのようなレーザは、50〜100ミクロンの付帯的熱損傷により、黒焦げを生じずに組織のクレータを気化させることができる。そのような付帯的低熱損傷は、瘢痕化が望ましくない神経外科、婦人科、および審美的皮膚再建術のような用途に望ましい。COレーザは、組織の後続層を除去することによって組織を焼灼または切開する、各層はCOレーザパルスの出力および持続時間ならびに他の考慮事項に基づいて深さ約30〜50ミクロンである。COレーザはしばしば、集束ビームのスポットサイズが50〜300ミクロンの集束モードで使用される。
【0005】
図面の図2〜17に示す本発明の一部の実施形態をより良く理解するために、気化による組織10の焼灼に使用されている先行技術のパルスCOレーザ5の簡略図である図1を最初に参照する。
【0006】
図1は、先行技術の黒焦げを生じない焼灼手術用パルスCOレーザ5の動作原理の簡略図を示す。
【0007】
COレーザ5は、図1の右上にある第1の図に示されている。第1の図は、COレーザユニット6、COレーザユニット6から組織10にレーザビーム17を向かわせるための光路または光ファイバを持つ多関節アーム7を含む。
【0008】
図1の左下にある第2の拡大図は、ビーム17の拡大図および組織10の断面図を示す。
【0009】
スポットサイズを直径50〜500ミクロンとすることのできるビーム17は、パルスCOレーザユニット6から組織10の表面に照射される。パルス持続時間は通常100マイクロ秒から5ミリ秒の間である。光ビーム17は約30〜50ミクロンの深さまでの組織10によって吸収される。吸収された光ビーム17は熱エネルギーに変換される。光ビーム17のエネルギー密度は典型的には約5ジュール/cmを超えるように選択され、それは組織10への熱の拡散率を超える率で組織10の気化を生じる。その結果、組織10にクレータ15が生じる一方、気化した組織10の大部分は蒸気13に変形され、それはフラッシングされる。クレータ15の周りの付帯的熱損傷ゾーン19は深さ約50ないし150ミクロンであり、それは数ミリ秒の期間中の組織10への熱の拡散深さである。
【0010】
組織10が皮膚である場合、図1はまた、真皮乳頭層と呼ばれる層11を表す。皮膚の外面が気化される皮膚の再建術に関する特定の用途では、瘢痕化を回避するために、真皮乳頭層の深さである約100〜150ミクロンの深さdより下の皮膚の焼灼は避けることが通常望ましい。
【0011】
他の用途、例えば非常に正確な切開、例えば眼瞼切開では、処置部位における薄層の焼灼を繰り返すことによって、組織内により深く、組織層14まで穿孔することが可能である。COレーザによる皮膚の表面の焼灼またはいずれかの組織の焼灼は典型的に、皮膚上でビームを移動させるスキャナにより上述した気化プロセスを繰り返すことによって、または大きいスポットサイズのビームを使用することによって実行される。大きいスポットサイズのビームの例として、依然として約5ジュール/cmを超えるエネルギー密度を有することのできる直径10mmのビームが挙げられる。ビームを直線経路または湾曲経路で順次移動させることにより、COレーザによって正確な切開が実行される。
【0012】
米国特許第5123028号明細書はウルトラパルスCOレーザについて記載し、米国特許第5360447号はウルトラパルスCOレーザによる毛髪移植について記載している。
【0013】
米国特許第5411502号、第5423803号、および第5655547号もまた、集束ビームによる無瘢痕切開および組織の焼灼のためのCOレーザについて記載している。COレーザビームは光ファイバを介して組織に照射することもできる。これは、椎間板切除術のような最小侵襲手技で組織を焼灼するのに特に有用である。
【0014】
約3ミクロンの波長で動作するパルス状エルビウムレーザもまた、表皮アブレータとみなされる。パルス状エルビウムレーザは大きいスポットサイズ(1〜10mm)で動作し、約10ミクロンの組織の層を気化させる。エルビウムレーザのパルス持続時間は約100〜300マイクロ秒である。パルス状エルビウムレーザは、真皮乳頭層を損傷することなく真皮乳頭層より上の層を手術する能力のため、速やかな治癒(数時間ないし1〜2日、および患者が同日に仕事に復帰することを可能にすること)を希望する場合に、皮膚の専門的剥皮術のためのツールとして使用される。国によっては、そのような剥皮術の実施は、医師よりむしろ、美容師でも許可されている。追加の背景技術としては、以下のものも挙げられる。
J Clin Laser Med Surg.1995 Apr;13(2):97‐100に発表された、「SilkTouch:a new technology for skin resurfacing in aesthetic surgery」と題するChernoff G.らによるCOレーザ皮膚再建術に関する論文;
Dermatol.Surg.1995 Dec;21(12):1025‐9に発表された「Skin resurfacing with the Ultrapulse carbon dioxide laser‐Observations on 100 patients」と題するLowe NJらによる論文;
様々な金属の熱伝導率係数についてのワールド・ワイド・ウェブ・サイト:www.engineeringtoolbox.com/thermal−conductivity−metals−d_858.html;
金属の熱容量についてのワールド・ワイド・ウェブ・サイト:www.engineeringtoolbox.com/specific−heat−metals−d_152.html
【発明の概要】
【0015】
本発明は、その一部の実施形態では、外科的方法および装置に関し、さらに詳しくは、組織の正確な焼灼のための方法および装置に関するが、それらに限定されない。
【0016】
先行技術は、レーザを用いて大量の熱をわずかな時間で供給して、組織を焼灼することを教示している。
【0017】
黒焦げを生じず、瘢痕化が最小限の外科的レーザビームと組織との間の相互作用は、組織の熱緩和時間より速い組織への大量の熱の高速照射に基づいており、その結果、組織内への熱拡散よりむしろ組織の気化が生じる。
【0018】
本発明は、その一部の実施形態では、気化ロッドを使用して大量の熱をわずかな時間に供給して組織を焼灼することを教示する。
【0019】
本発明の一部の実施形態の態様では、気化要素と、気化要素を加熱するように構成された加熱要素と、気化要素が組織を気化させるのに充分長くかつ穴からの予め定められた付帯的損傷距離を越える熱の拡散を制限するのに充分短い時間内に、気化要素を組織の特定の深さまで前進させかつ気化要素を組織から後退させるように構成された機構とを含む、組織の穴を気化させるための装置を提供する。
【0020】
本発明の一部の実施形態では、気化要素の先端は、気化要素が加熱されない場合、気化要素が組織を穿通しないように、安全に設計された形状を有する。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、さらに電源として電池を含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、装置は手持ち式である。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、加熱要素は気化要素と直接接触しない。本発明の一部の実施形態では、気化要素の移動中に、気化要素は加熱要素と接触しない。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は100℃ないし800℃の範囲の温度に加熱される。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は、気化要素と組織との間の温度差Tが℃単位で少なくともT>(Hν*H)/(CρL)となるような温度に加熱される。ここでHνは組織の単位体積の気化エネルギー、Hは特定の深さ、Cは気化要素の熱容量、ρは気化要素の密度である。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は80ワット/K/メートルより大きい熱伝導係数を有する材料を含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は0.3キロジュール/kg/Kより大きい比熱容量を有する材料を含む。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、気化要素の長さLはKT(Z/B)/(HνH)>L>Hν*H/(CρT)の範囲内である。ここでKは気化要素の熱伝導率の係数、Tは気化要素と組織との間の℃単位の温度差、Zは穴からの予め定められた付帯的損傷距離、Bは組織の熱拡散係数、Hνは組織の単位体積当たり気化エネルギー、Hは特定の深さ、Cは気化要素の熱容量、ρは気化要素の密度である。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、複数の気化要素をさらに含み、機構は複数の気化要素を短時間内に前進および後退させるように構成される。
【0030】
本発明の一部の実施形態では、気化要素の前進行程を制限するように構成されたスペーサをさらに含む。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、装置は、カテーテルを介して体内に挿入するように構成されたパッケージ内に配置される。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は装置から取外し可能である。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、機構が複数の気化要素を短時間内に前進および後退させるように構成され、かつスペーサが複数の穴を含み、そこを介して複数の気化要素を組織内に送り込むことができるようにした、複数の気化要素をさらに含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、スペーサは穴を含み、それを介して気化要素を組織内に送り込むことができる。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、組織と接触して配置されるように構成された保護板をさらに含み、気化要素は特定の深さを、保護板を越えて組織内に延長するように構成される。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、特定の深さは50ミクロンないし200ミクロンの範囲である。本発明の一部の実施形態では、特定の深さは調整可能である。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、保護板は、組織と接触して配置されるように構成された保護板の全範囲に沿って30ミクロン以内で平坦である。
【0038】
本発明の一部の実施形態では、組織と接触して配置されるように構成された保護板は、断熱材を含む。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、保護板は装置から取外し可能である。
【0040】
本発明の一部の実施形態では、加熱要素は高温ホイルを含む。本発明の一部の実施形態では、加熱要素は光学的熱源を含む。
【0041】
本発明の一部の実施形態では、前進および後退は1つ以上のばねによって実行される。
本発明の一部の実施形態では、前進および後退はコイルおよび磁石によって実行される。
【0042】
本発明の一部の実施形態では、短時間は、ばねおよび気化要素を含む調和振動子の振動周期によって決定される。
【0043】
本発明の一部の実施形態では、加熱、前進、および後退の速度は、1〜100パルス/秒の繰返し率の気化の繰返しパルスを支持する。
【0044】
本発明の一部の実施形態では、調和振動子をさらに含み、調和振動子は気化要素を含み、かつ調和振動子は10ミリ秒から100ミリ秒の範囲の振動周期を有する。本発明の一部の実施形態では、調和振動子の振動を1回の振動に制限する機構をさらに含む。
【0045】
本発明の一部の実施形態では、加熱要素は、組織の気化温度を超える温度に気化要素を加熱するように構成される。本発明の一部の実施形態では、加熱要素は、気化要素を200℃から600℃までの範囲の温度に加熱するように構成される。
【0046】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は、銅の熱伝導率以上の熱伝導率を持つ材料を含む。本発明の一部の実施形態では、気化要素は、銅の比熱容量以上の比熱容量を持つ材料を含む。
【0047】
本発明の一部の実施形態では、気化要素の長さは0.3mmから5mmの間である。
【0048】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は、組織の気化温度より実質的に低い温度に加熱されたときに、組織を実質的に穿通しないように形作られる。
【0049】
本発明の一部の実施形態では、気化要素が加熱される温度および短い持続時間の組合せは、組織の付帯的損傷を150ミクロン未満の距離に制限するように選択される。
【0050】
本発明の一部の実施形態では、短時間は、150ミクロンの距離の組織の熱緩和時間未満である。本発明の一部の実施形態では、短時間は5ミリ秒未満である。
【0051】
本発明の一部の実施形態の態様では、気化要素を加熱するステップと、機械的装置を使用して、気化要素を組織内の所望の深さまで前進させ、かつ短い持続時間後に気化要素を組織から後退させるステップとを含む、組織の穴を気化するための方法を提供する。
【0052】
本発明の一部の実施形態では、組織にHの深さを有する穴を生成し、熱拡散係数Bおよび単位体積当たりの気化エネルギーHνを有する組織で、付帯的損傷が穴からZ以内の距離に延びるようにするために、気化要素と組織との間の℃単位の温度差Tを使用し、KCρ>(HνHB)/(TZ)となるように気化要素を使用する。ここでKは気化要素の熱伝導係数、Cは気化要素の熱容量、ρは気化要素の密度である。
【0053】
本発明の一部の実施形態では、複数の気化要素を加熱するステップ、および機械的装置を使用して複数の要素を組織内の所望の深さまで前進させ、かつ短い持続時間後に要素を組織から後退させるステップを含む。
【0054】
本発明の一部の実施形態の態様では、複数の気化要素を含む装置により、気化要素を加熱するステップと、装置を使用して複数の気化要素を生きた皮膚内の真皮乳頭層の深さ以内の深さに前進させ、かつ短い持続時間後に生きた皮膚から気化装置を後退させるステップと、皮膚に複数のクレータを生成させて、生きた皮膚を引き締めさせるステップとを含む、生きた皮膚を引き締めさせる方法を提供する。
【0055】
本発明の一部の実施形態の態様では、神経外科、整形外科、耳外科、鼻外科、咽喉外科、婦人科、皮膚科、および歯科を含む用途群の1つのために組織を焼灼する方法であって、気化要素を加熱するステップと、機械的装置を使用して、気化要素を組織内の所望の深さまで前進させ、かつ短い持続時間後に気化要素を組織から後退させるステップとを含む方法を提供する。
【0056】
本発明の一部の実施形態の態様では、気化要素を加熱するステップと、装置を使用して、皮膚内の真皮乳頭層の深さ以内の深さに気化要素を前進させ、かつ短い持続時間後に気化要素を皮膚から後退させるステップと、皮膚にクレータを生成させるステップと、切開の経路に沿って装置を移動させながら、加熱、前進、および後退を繰り返すステップとを含む、物質切開の方法を提供する。
【0057】
本発明の一部の実施形態では、材料は生組織を含む。
【0058】
本発明の一部の実施形態の態様では、気化要素が加熱されない場合には気化要素が組織を穿通しないように、安全に設計された形状を持つ1つ以上の先端を含む、組織の穴を気化させるための気化要素を提供する。
【0059】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は80ワット/K/mより大きい熱伝導係数を有する材料を含む。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は1K当たり1キログラム当たり0.3キロジュールを超える比熱容量を有する材料を含む。
【0061】
本発明の一部の実施形態では、気化要素の長さLは次の範囲内である。
【0062】
ここでKは気化要素の熱伝導率の係数であり、Tは気化要素と組織との間の℃単位の温度差であり、Zは穴からの予め定められた付帯的損傷距離であり、Bは組織の熱拡散係数であり、Hνは組織の単位体積当たりの気化エネルギーであり、Hは特定の深さであり、Cは気化要素の熱容量であり、ρは気化要素の密度である。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、先端間のギャップの総面積に対する先端の総遠位端面積の比が5%から80%の間である。
【0064】
本発明の一部の実施形態の態様では、組織と接触して配置されるように構成された保護板であって、気化要素が通過して保護板を越えて組織内に特定の深さまで延びることができるような大きさに作られた穴を含む保護板を提供する。
【0065】
本発明の一部の実施形態では、保護板は、組織と接触して配置されるように構成された全範囲に沿って30ミクロン以内で平坦である。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、保護板は断熱材を含む。
【0067】
本発明の一部の実施形態では、保護板を冷却するための冷却手段をさらに含む。
【0068】
本発明の一部の実施形態の態様では、気化要素が加熱されない場合には気化要素が組織を穿通しないように、安全に設計された形状を持つ1つ以上の先端を含む、組織に穴を気化させるための気化要素と、組織と接触して配置されるように構成された保護板であって、気化要素の1つ以上の先端が通過して保護板を越えて組織内に特定の深さまで延びることができるような大きさに作られた穴を含む保護板とを含むキットを提供する。
【0069】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0071】
図1図1は、気化による組織の焼灼に使用されている先行技術のパルスCOレーザの簡略図である。
【0072】
図2図2は、気化による組織の焼灼に使用されている本発明の実施形態の簡略図である。
【0073】
図3図3は、気化による組織の焼灼に使用されている、2つの気化ロッドを有する本発明の別の実施形態の簡略図である。
【0074】
図4A-4B】図4Aは、気化ロッドの配列を有する本発明のさらに別の実施形態により組織に穿孔された黒焦げの無いクレータの配列の簡略断面図である。図4Bは、気化ロッドの配列を有する本発明のさらに別の実施形態により組織に穿孔された黒焦げの無いクレータの配列の簡略上面図である。
【0075】
図5図5は、フラクセル皮膚再建術用に設計された、本発明のさらに別の実施形態に係る装置の簡略図である。
【0076】
図6A図6Aは、時系列で時間=0における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0077】
図6B図6Bは、時系列で時間=10における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0078】
図6C図6Cは、時系列で時間=22における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0079】
図6D図6Dは、時系列で時間=25における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0080】
図6E図6Eは、時系列で時間=27における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0081】
図6F図6Fは、時系列で時間=40における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0082】
図6G図6Gは、時系列で時間=50における図5の動作中の装置の位置の簡略図である。
【0083】
図7図7は、手持ち式フラクセル皮膚再建術用に設計された、本発明の実施形態に従って構成され動作する装置の簡略図である。
【0084】
図8図8は、手持ち式切開術用に設計された、本発明の実施形態に従って構成され動作する装置の簡略図である。
【0085】
図9図9は、気化ロッドを加熱するために光学光源を使用する実施形態の簡略図である。
【0086】
図10図10は、本発明の例示的実施形態に従って構成され動作する、1つ以上の気化ロッドに往復運動をもたらすための機構の簡略図である。
【0087】
図11図11は、内視鏡を介して送達される本発明の実施形態を使用する例示的外科処置の簡略図である。
【0088】
図12図12は、本発明の実施形態を組織アブレータとして使用する方法を示す簡略フローチャートである。
【0089】
図13図13は、皮膚表面再建術用に設計された、本発明のさらに別の実施形態に従って構成され動作する装置の簡略図である。
【0090】
図14図14は、本発明のさらに別の実施形態に従って構成され動作する、組織の一部を気化させながら組織を伸張させるのに有用な装置の簡略図である。
【0091】
図15図15は、本発明の実施形態の数学的シミュレーションに係る、気化ロッドの遠位端の温度の簡略グラフ表現である。
【0092】
図16A図16Aは、本発明の実施形態の物理的パラメータに従って動作する気化ロッドによって生じる2つのクレータの写真による記録である。
【0093】
図16B図16Bは、本発明の実施形態に従って動作する気化ロッドの配列によって皮膚表面にエクスビボで生じるクレータの組織学的断面の写真による記録である。
【0094】
図16C図16Cは、図16Bに示した組織学的断面を生じる、本発明の実施形態で利用されるカートリッジ加熱器を持つ被覆銅ロッドの配列の写真である。
【0095】
図17図17は、皮膚と接触する表面が凸面である、本発明のさらに別の実施形態に従って構成され動作する装置の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、その一部の実施形態では、外科的方法および装置に関し、さらに詳しくは、組織の正確な焼灼のための方法および装置に関するが、それに限定されない。
【0097】
本発明は、その一部の実施形態では、気化ロッドを使用して大量の熱をわずかな時間に供給し、組織を焼灼することを教示する。気化ロッドは、大量の熱をわずかな時間に供給して、組織を気化させて焼灼することができる。
【0098】
破壊すべきでない組織を破壊せずに、気化させるべき組織を気化させるために、本発明は、その一部の実施形態では、高温で熱を組織の局所的領域に加えることを教示する。
【0099】
温度は、組織を急速に気化させるのに充分な高温、すなわち組織の主成分である水の沸騰温度である100℃を超える温度とすべきである。
【0100】
好ましくは、温度は約200℃より高くすべきである。
【0101】
気化ロッドの熱容量は、組織に隣接する気化ロッドの先端が、先端に隣接する組織を気化させるのに充分な熱の料を含むようにすべきである。組織を気化させるのに必要な熱の量は、気化させる体積に依存する。気化させる体積は、先端の断面積に気化すべき深さを掛けた積に略等しい。
【0102】
非限定例として、100ミクロン×100ミクロンの面積を100ミクロンの深さまで気化するには、約3000ジュール/cmの水の気化エネルギーに基づいて、約3ミリジュールの熱が必要である。組織の熱パラメータは水の熱パラメータに非常に似ているので、組織を気化するために必要な熱は、水を気化させるのに必要な熱に実質的に近いことが注目される。
【0103】
組織に熱を供給するために、気化ロッドの熱緩和時間は、熱が気化ロッドの先端の表面に迅速に到達することができるようにする必要がある。
【0104】
熱緩和時間は、数ある要因の中でも特に、気化ロッドの熱伝導率、熱容量、および幾何学的寸法、例えば長さに依存することが注目される。
【0105】
熱供給は、組織内に多すぎる熱を拡散させることなく、隣接組織を気化させるのに充分な高速でなければならない。すなわち、緩和時間を許容または計画された深さの壊死が組織に生じる時間より実質的に短くしなければならない。概算として、熱緩和時間は水のそれより実質的に短くなるようにしなければならない。
【0106】
一部の実施形態では、気化ロッドは、非常に短い限られた時間、組織に「軽打」される。軽打は気化ロッドをごく短い時間組織に隣接させ、任意選択的に組織に接触させ、組織への熱伝導の時間を制限し、付帯的損傷を許容レベルに制限する。
【0107】
本発明の一部の実施形態では、付帯的損傷の距離は、(組織の熱拡散係数)×(熱源すなわち気化ロッドが組織に熱を提供する時間の平方根)として計算される。
【0108】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、気化ロッドが組織に隣接している間、組織に熱を提供するものとみなされる。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、気化ロッドがクレータの容積内にある間、組織に熱を提供するものとみなされる。
【0110】
一部の実施形態では、他より許容される付帯的損傷が多い。非限定例として、血管の多い生組織領域が関与する用途では、血管を焼灼するために、わずかな付帯的損傷は好ましい。血管が多くない生組織領域が関与する用途では、付帯的損傷は少ない方が望ましい。非生組織が関与する用途では、付帯的損傷の多寡も考慮事項である。
【0111】
一部の実施形態では、気化ロッドは、オーバトラベルガードによってオーバトラベルを防止する。
【0112】
一部の実施形態では、気化ロッドは、組織に「軽打」されていないときには、ガードを越えて組織に「軽打」されているときを除いて気化ロッドが組織に接触することを防ぐ組織ガードによって、組織に接触することが防止される。
【0113】
一部の実施形態では、ロッドの典型的な寸法は、用途に応じて、幅が100ミクロンから5ミリメートル、長さが2ミリメートルから10ミリメートルである。
【0114】
本発明の一部の実施形態は、複数の気化ロッドの配列を使用する。ロッドは、同じく用途に応じて、任意選択的に線形または二次元いずれかの配列状に配置される。
【0115】
気化段階で組織内に典型的に50ミクロンから500ミクロン前進する一方、ロッドの典型的な移動長は1ないし10ミリメートルである。
【0116】
移動の典型的な持続時間は、気化段階中の気化ロッドの組織内における滞留時間が用途に応じて100マイクロ秒ないし50ミリ秒になるようにする。
【0117】
本書における「気化ロッド」の一部としての用語ロッドの使用は、ロッドの形状を暗示することを意図するものではなく、「気化要素」を意味するつもりである。
【0118】
一部の実施形態では、組織の気化を実行する気化ロッドの先端の断面の形状または幾何学的形状は、用途に応じて、中実円形、中実矩形、中空円形、中空矩形、直線、曲線、波線、および種々の他の「クッキーの抜き型」の形状である。
【0119】
本発明の一部の実施形態は、気化のために金属ロッドを使用する。金属は気化のための充分な熱を含みかつ/または伝達することができ、かつ高い精度で成形することができる。
【0120】
本発明の一部の実施形態は2つ以上の気化ロッドを含み、同時に2つ以上の気化ロッドを用いて組織を焼灼する。
【0121】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは電気加熱要素によって加熱される。
【0122】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、光波による光学加熱またはマイクロ波による加熱のような、無線加熱方法によって加熱される。
【0123】
本発明の一部の実施形態では、組織は、気化ロッドの後退後に冷却される。冷却は任意選択的に、送風によって、かつ/または液状ミストを吹き付けることによって、かつ/または液体を噴射することによって、かつ/または熱電冷却装置によって、かつ/または組織に低温金属板を配置することによって、かつ/または組織から熱を追い出させることによって組織を冷却させるように適応された、気化ロッドが通過する保護板によって、かつ/または能動冷却によって実行される。能動冷却は、保護板を流動冷却するガスによって、または電気板を冷却する熱電対によって、保護板を冷却する液体冷却器とすることができる。
【0124】
気化ロッドの組織への適用が繰り返される一部の実施形態では、冷却は気化ロッドの毎回の適用の合間に実行される。一部の用途では、冷却は気化ロッドの最後の適用後に実行される。
【0125】
本発明の一部の実施形態では、加熱要素は、加熱要素からの電源の分離を可能にする電力線によって、電源に接続される。本発明の一部の実施形態では、電気加熱要素および気化ロッドは体内に挿入するのに充分小さい。一部の実施形態では、電気加熱要素および気化ロッドは、カテーテルによる挿入にさえも充分小さい。
【0126】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、焼灼される組織との電気的接触が生じないように、組織から電気的に絶縁される。
【0127】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、焼灼される組織との電気的接触が生じないように、電源から電気的に絶縁される。
【0128】
本発明の一部の実施形態は機械的トラベル制限装置を含むので、気化ロッドは、機械的トラベル制限装置を越えて特定の距離以上に進むことができない。機械的トラベル制限装置は任意選択的に、組織と接触して静止し、気化ロッドは、機械的トラベル制限装置を越えて特定の距離以上に進むことを制限され、気化ロッドが組織を焼灼することのできる深さが制限される。
【0129】
機械的トラベル制限装置は任意選択的に製造およびフェイルセーフが単純であり、レーザビームが組織に当てられる時間量を制限する一部のレーザ焼灼制限装置に比べて有利である。コストおよび/または安全性および/または信頼性の点で有利である。
【0130】
本発明の一部の実施形態は小型に(典型的な医療用COレーザよりずっと小型に)設計され、一部の実施形態は、体内に挿入できるように、カテーテルでも挿入できるように、充分小型に設計される。一部の実施形態では、加熱要素は可撓性電線によって電源に接続され、それはアブレータを可撓性カテーテルおよび可撓性電線により体内に挿入することを可能にする。COレーザは時々レーザパルスを伝達するために光ファイバを使用するが、コストは電線の場合よりずっと高くなる。
【0131】
本発明の一部の実施形態では、直径が300ミクロンの単一の気化ロッドを使用し、直径が約2ミリメートルのカテーテルを使用することが可能である。
【0132】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0133】
ここで図2を参照すると、それは、気化による組織10の焼灼に使用されている本発明の実施形態の簡略図である。
【0134】
図2は、非限定例として、図1のCOレーザと同じ効果を得るために使用されている本発明の実施形態の動作例を示す。
【0135】
図2に示す本発明の実施形態は、組織の沸点よりずっと高い温度に加熱された気化ロッド12を含む。
【0136】
ロッド12は任意選択的に箔18を介して加熱され、箔は任意選択的に電気抵抗器18aによって加熱される。
【0137】
図12の例示的実施形態に関係する一部の測定は、300ミクロンの直径を有しかつ非限定例として銅から作られた気化ロッド12を含む。ロッド12は、非限定例として約200ないし600℃の温度に加熱される。一部の実施形態では、気化ロッドは約400℃の温度に加熱されるので、気化されたクレータの壁に存在する炭素粒子は酸化され、約400℃の温度でCO蒸気に変化し、その結果黒焦げの無いクレータ壁が生じる。黒焦げの無いクレータ壁は治癒をさらに促進する。
【0138】
ロッド12は任意選択的にマイカ箔18を介して加熱される。
【0139】
ロッド12を要求温度に加熱する追加手段については、以下で図9に関連して記載する。
【0140】
ロッド12は組織10内に任意選択的に50から200ミクロンの間の予め選択された深さHまで前進し、かつ後退する。前進機構の実施例のみならず、組織内への前進の制御を確実にする方法についても、下述する。前進および後退速度は、組織内のロッド12の遠位端の滞留時間を決定するために、任意に選択される。
【0141】
場合によっては、約100マイクロ秒ないし約5ミリ秒の滞留時間が選択される。
【0142】
場合によっては、もっと多くの焼灼処置を可能にするために、滞留時間は100ミリ秒に延長される。
【0143】
場合によっては、付帯的損傷をできるだけ小さくするために、滞留時間は約100マイクロ秒である。100マイクロ秒のような短い滞留時間は、場合によっては、エルビウムレーザでしばしば発生する出血を避けるのに充分な長さではない。約1ないし5ミリ秒は、100ミクロンから150ミクロンの範囲の深さの付帯的熱壊死を生じるのに最適であると考えられ、それは例えば真皮乳頭層を残し、瘢痕化を回避することを確実にする。
【0144】
場合によっては、50ミリ秒ないし100ミリ秒のような長い滞留時間が許容され、有利でさえある。長い滞留時間は、非限定例として遅い治癒が有利な鼓膜切開術のような場合に有利である。例えば鼓膜切開術では、管を挿入することなく、鼓膜を通気させておくために、遅い治癒が有利であると考えられる。
【0145】
場合によっては、いっそう長い滞留時間が許容される。気化ロッドは組織内に送られ、組織内に残される。気化ロッドは、気化ロッドの残存熱が組織に悪影響を与えないように充分冷たくなるまで、組織を気化させる。
【0146】
本発明の一部の実施形態では、組織10内へのロッド12の穿通は任意選択的に、組織10の気化およびクレータ15の形成によってのみ可能になる。例えば注射針とは異なり、ロッド12が組織10の気化温度まで加熱されていない場合、組織10と接触している間のロッド12の速度は任意選択的に、組織を穿通しないように充分低い。
【0147】
図2に示す実施形態では、気化用熱エネルギーは、図1のCOレーザの場合と同じ時間だけ組織10に送達される。実質的に同じ付帯的熱損傷を含めて実質的に同じ組織気化効果が達成される。
【0148】
熱パラメータ、例えば温度、加熱速度、気化ロッドの素材のうちの1つ以上を選択することによって、図2の実施形態は機能し、ウルトラパルスおよび/またはスーパパルスCOレーザビームの動作を模倣することができることが注目される。
【0149】
非限定例として、図1のCOレーザは300ミクロンの焦点サイズを有し、高精度の切開および焼灼を可能にする。図2の例示的実施形態は同じ性能を達成することができる。
【0150】
気化されたクレータ15の周りに約50〜150ミクロンの最小限の付帯的熱損傷を達成するために、約5ミリ秒以内に熱エネルギーを送達することが望ましいことが注目される。面積300×300ミクロン、深さ100ミクロンのクレータ15を気化させるために必要なエネルギーは、約3000ジュール/cmの水の気化エネルギーに基づいて約30ミリジュールである。組織の熱パラメータは水の熱パラメータに非常に類似していることが注目される。図2の実施形態では、気化エネルギーは、ロッド12の遠位端Lの熱エネルギーに由来する。ロッド12の遠位端Lの熱エネルギーは、ロッド12の遠位端Lの熱容量、大きさ、および形状に依存する。
【0151】
熱容量および熱伝導率
金属の熱容量に基づいて、約400℃の直径300ミクロンの金属ロッドから組織10に約30ミリジュールを蓄熱送達するために、典型的には約300ミクロンから5000ミクロンの範囲の長さLのロッドの遠位部からエネルギーが流れなければならないことが分かる。しかし、ステンレス鋼のような多くの金属の熱伝導率は低すぎるので、上述した断面を有する上述した距離から組織に約100℃で約5ミリ秒間必要なエネルギー(30ミリジュール)を流すことができない。
【0152】
一部の金属のような一部の物質は、非限定例として銅と同程度に高い熱伝導率を有し、そのような急速な流れを可能にする。ウルトラパルスおよび/またはスーパパルスCOレーザを模倣する加熱されたロッドは、任意選択的に銅製とすることができ、任意選択的に約300〜500℃の温度に加熱する必要があり、かつ任意選択的に約5ミリ秒の組織内の滞留時間を生じる速度で、約50〜200ミクロンの深さまで、組織内に前進させる必要がある。
【0153】
気化されたクレータの壁に存在することのある炭素粒子は約400℃の温度で酸化され、二酸化炭素蒸気として廃棄され、結果的にロッドを400℃超の温度に加熱する利点が得られることが注目される。
【0154】
本発明の一部の例示的実施形態では、以下の例示的概算を使用して、大量の熱をわずかな時間に供給して組織を焼灼する単数または複数の気化ロッドの特性を選択する。例示的概算例は、選択された量の付帯的熱損傷を伴う所望の穴を組織に生成するために、例示的実施形態において単数または複数の気化ロッドに対し適切な材料、温度、および寸法をいかに選択するかを教示する。
【0155】
例えば幅dの正方形および深さHのクレータを気化するために必要なエネルギーEνは、次の通りである。
式中Hνは1立方センチメートルの組織の気化エネルギーである(約3000ジュール/cm)。
【0156】
長さL、幅d、熱伝導率K、および組織の温度より高い温度Tの方形ロッドからの熱流量Wはおおよそ次の通りである。
熱流量は時間t内のエネルギーEの組織内への流れを可能にし、E=W*tである。
【0157】
ロッドに蓄積され、組織を気化させるために利用可能なサーマルヒートEは、次式によって求められる。
式中、C=熱容量、ρ=気化ロッドの材料密度である。
【0158】
気化時間tの組織における付帯的熱損傷の広がり(距離)Zは、次式によって求められる。
式中、Bは組織の熱拡散係数である。
【0159】
以下の方程式は、組織が気化して深さZの付帯的熱損傷を有するクレータを生じる条件を記載する。
方程式7は、気化ロッドの長さの下限を決定する。
【0160】
方程式1、2、および4から次のように決定される。
方程式9は気化ロッドの長さLの上限を設定する。
【0161】
方程式7および9を使用することによって、本発明に係る気化ロッドのパラメータを選択することが可能である。
【0162】
例えば気化ロッドの長さLは、次の範囲内であることが好ましい。
【0163】
例えば、気化ロッドと組織との間の℃単位の温度差Tは、次の範囲内であることが好ましい。
【0164】
気化ロッドを設計する際に、温度差Tは、気化ロッドの温度がロッド素材の融点を超えないように、気化ロッドの温度がロッド素材をいかなる形でも損傷させないように、かつ気化ロッドの長さLが任意選択的に方程式10の制約条件を守るように、他の適正なパラメータと共に考慮されるパラメータであることが注目される。
【0165】
例えば、組織にHの深さを有する穴を生成し、熱拡散係数Bおよび単位体積当たりの気化エネルギーHνを有する組織で、付帯的損傷が穴からZ以内の距離に延びるようにするために、気化ロッドと組織との間の℃単位の温度差Tを使用し、次式のような熱パラメータKCρを有する気化ロッドを選択する。
【0166】
気化要素と組織との間の温度差Tの設定は、典型的には2つの制約条件、すなわち組織を気化しかつ組織の黒焦げ化を回避するという要望によって決定されることが注目される。2つの制約条件から温度差Tは約400℃に決定される。
【0167】
非限定例として、付帯的損傷の深さを100ないし150ミクロンとして、真皮乳頭層の深さまで皮膚を気化する特定の場合、1ないし5ミリ秒の滞留持続時間を要し、気化ロッドを製造する素材として銅を使用すると、L〜650ミクロンの長さおよびT〜400℃に制限される。
【0168】
場合によっては、気化の深さは組織内に約40ミクロンに維持され、付帯的熱損傷は約40ミクロンに維持され、美容師が皮膚の表層を剥皮する場合に行うことと同様に、真皮乳頭層に影響を及ぼすことなく、実質的に表皮のみの剥離が可能になることが注目される。そのような場合、滞留時間は約250マイクロ秒とすることができ、気化ロッドの温度は300ないし500℃の範囲とすることができ、気化ロッドの長さはおおよそ200ないし300ミクロンの範囲とすることができる。ロッドは任意選択的に、熱伝導率の高い非金属素材、例えば非限定例として人工ダイヤモンドから製造することができる。
【0169】
気化ロッドによって気化されたクレータの深さは必ずしも、ロッドの穿通深さと同一ではないことが注目される。熱がロッドから組織内に拡散され、気化ロッドの先の組織を気化させる。しかし、上記の方程式は、気化ロッドのパラメータを選択するためのガイドラインを提供する。
【0170】
器官の周囲の脂肪層の除去のような一部の用途では、除去しようとする脂肪層の熱特性は、水分の多い組織の熱特性とは異なる。しかし、上記の方程式は、Hνの適切な値、組織の気化エネルギー、および組織における熱拡散係数Bを考慮に入れて、気化ロッドの物理的パラメータを選択するためのガイドラインを提供する。
【0171】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは2つの金属の組合せから作られる。例えば、銅ロッドを、熱伝導率がかなり低い金属、例えばステンレス鋼の厚さ約5ミクロンの薄層で被覆する。ステンレス鋼は生体適合性に有用である。
【0172】
本発明の一部の実施形態では、気化要素は中実のロッドではなく、加熱された流体であり、それが、組織を気化させることのできる温度で組織に強制的に噴射される。加熱流体を噴射した後、任意選択的に冷却流体が噴射される。加熱流体は任意選択的に、身体に安全なシリコーン流体とすることができる。
【0173】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは中空であり、約0.1ミリグラムないし5ミリグラムのような少量の化学反応物質を組み入れる。該物質は任意選択的に発熱反応で反応し、それにより、気化ロッドの温度を上昇させるために必要な熱を発生する。そのような手法は任意選択的に、反応物質が再充填されるかまたは廃棄される前に、気化ロッドが一度加熱される場合に使用される。1つのそのような使用例として、用途例8に関連して以下でさらに説明する鼓膜切開術の場合がある。
【0174】
発熱反応は、非限定例として、「テルミット」反応とも呼ばれる酸化鉄とアルミニウムとの間の反応とすることができる。一部の実施形態では、反応物質は任意選択的に電気によって活性化される。一部の実施形態では、反応物質は任意選択的に、気化ロッドが組織から離れている間に、点火温度より低い温度まで予熱され、気化ロッドが組織に向かって前進するときに、任意選択的に電気によって点火される。
【0175】
テルミット反応は、1500℃を超える非常に高い温度を発生する。中空ロッドは任意選択的に、反応温度より高い溶融温度を持つ物質、例えば非限定例としてチタンから製造される。反応熱は組織内に流入し、組織を気化させる。気化ロッドは任意選択的に、約200ミクロンから800ミクロンの範囲の内径、および約300ミクロンから900ミクロンの範囲のより大きい外径を持つように製造される。
【0176】
ここで図3を参照すると、それは、気化による組織の焼灼に使用されている2つの気化ロッドを有する、本発明の別の実施形態の簡略図である。
【0177】
図3は、2つ以上のロッド12を同時に組織10内に前進させる、本発明の実施形態を示す。図3のロッド12は任意選択的に分離しているので、組織10内に前進させたときに、2つのクレータ15が生成される。
【0178】
皮膚再建術のような一部の実現のためには、多数のクレータが望ましい。図3の実施形態は2つの気化ロッドの実施例であり、複数の気化ロッドを使用できることを教示する。
【0179】
本発明の一部の実施形態では、複数の気化ロッドは気化ロッドの配列として配置される。
【0180】
ここで図4Aを参照すると、それは、気化ロッドの配列を有する本発明のさらに別の実施形態によって組織に穿孔された、黒焦げの無いクレータの配列の簡略断面図である。
【0181】
図4Aは、非限定例として各々50ないし150ミクロンの範囲の幅の付帯的熱損傷ゾーン111がある2つのクレータ112と、長さLの健康な非処理部分115とを持つ組織10の断面を示す。
【0182】
そのような構成は、フラクセルと呼ばれる技術による皮膚再建術に使用することができる。フラクセル技術は、非処理部分115が処置された部分内に成長することを可能にする。フラクセル技術は、組織10の治癒の加速を可能にする。
【0183】
ここで図4Bを参照すると、それは、気化ロッドの配列を有する本発明のさらに別の実施形態によって組織に穿孔された、黒焦げの無いクレータの配列の簡略上面図である。
【0184】
図4Bは、非限定例として、300ミクロンの直径を有し、700ミクロンの距離ずつ離れた4×5のクレータの配列を示す。このクレータの配列は、20個のロッドの配列を使用することによって生成することができる。別の実施例として、10×10のアレーの配列もフラクセル皮膚再建術に簡便に使用されるはずである。
【0185】
非限定例として、図4Aに示すクレータ110 112は、図4Bにも参照されている。
【0186】
ここで図5を参照すると、それは、フラクセル皮膚再建術用に設計された本発明のさらに別の実施形態に係る装置49の簡略図である。
【0187】
図5は、「フラクセル」皮膚再建術で使用することのできる、10×10の銅ロッド52の配列を有する皮膚再建用装置49として使用される、本発明の実施形態の詳細を示す。種々の実現の詳細を、図5の実施形態に関連して提供する。実現の詳細は実施例として意図されたものであり、限定を意図するものではない。
【0188】
約10mm×10mmの大きさのマイカ箔加熱器50は任意選択的に、300℃から600℃の範囲の温度に加熱される。加熱は電源57によって付勢される。一部の実施形態では電源57は電池とすることができ、一部の実施形態では電源57は、50/60Hzの電源コンセントに接続することができる。
【0189】
本発明の一部の実施形態は、完全な手持ち式であることが注目される。手持ち式の実施形態の一部において、該実施形態のための電源は、焼灼装置内に収容される電池である。
【0190】
銅板51はマイカ箔加熱器50に隣接して示される。本発明の一部の実施形態では、銅板51はマイカ箔加熱器51と接触するか、あるいは任意選択的に、マイカ箔加熱器51から約20ミクロン未満の距離に配置することができる。
【0191】
銅ロッド52の配列は任意選択的に、銅板51に一体的に結合される。加熱器50と板51との間に任意選択的に存在する小さい間隙は、加熱器50から板51への充分に迅速な熱伝達を確実にし、図5の実施例では、毎秒1処置の率で実施形態の動作を可能にする。
【0192】
板51およびロッド52を含む組立体は、1秒未満以内に約500℃に加熱される。
【0193】
板51の厚さは約50ミクロンであり、ロッドは各々、長さが5ミリメートル、幅が300×300ミクロンである。
【0194】
保持ロッド56を備えたソレノイドおよびばね組立体55は、1つ以上のばね59が負荷される間、板およびロッド組立体51 52を筐体58内の所定の位置に保持する。保持ロッド56は任意選択的に磁石とすることができ、かつ/または鉄ロッドのように磁石の影響を受ける何らかの他のロッドとすることができることが注目される。
【0195】
ボタンおよび/またはスイッチ61が皮膚再建用装置のオペレータによって作動されると、ソレノイドおよびばね組立体55のソレノイドは保持ロッド56を後退させ、ばね59は板およびロッド組立体51 52を皮膚表面64に向かって加速する。
【0196】
ばね59は任意選択的に、ばね59ならびに板およびロッド組立体51 52の質量から構成される調和振動子の振動周期が約100ミリ秒になることを確実にするばね定数を有するように選択される。
【0197】
穴付き保護板54は、ロッド52の配列が保護板54を貫通して皮膚表面64でクレータの配列を気化させることを確実にする。
【0198】
ロッド52の振動振幅は、皮膚が最大振幅の近くに位置し、ロッド52の配列が低速度で皮膚に到達することを可能にするように設計される。随意のスペーサ60は任意選択的に、組織の穿通を予め選択された約100ミクロンの深さに制限することを確実にする。ロッド組立体52は、略正確な深さ100ミクロンのクレータの配列を気化させる。
【0199】
保護板54は任意選択的に、セラミック材のような低熱伝導材料から製造される。保護板54はまた任意選択的に、皮膚の熱保護を確実にする。本発明の一部の実施形態では、保護板54は水により、または熱電冷却装置により冷却することもできる。
【0200】
単数または複数のばね59のばね定数および板およびロッド組立体51 52の質量の適切な選択によって決定される振動運動は、遠位100ミクロンの部分における前後運動の持続時間が約5ミリ秒となることを確実にする。これはクレータ配列を約5ミリ秒以内に気化させる。
【0201】
クレータを気化して引き返す途中で、板およびロッド組立体51 52は保持ロッド56にぶつかり、保持ロッド56を越えて、その原係止位置に達する。
【0202】
その原位置に戻った後、板51は任意選択的に箔50によって再び加熱され、任意選択的に1秒未満以内に次の処置部位で使用することができる状態になる。皮膚表面上のクレータ配列の生成後、気化プロセスで生じた蒸気および/または煙を除去し、かつ/または板54を冷却するために、一吹きの空気が任意選択的に板54の上に吹き付けられる。一吹きの空気は任意選択的に、単数または複数の管53を介してもたらされる。
【0203】
本発明の一部の実施形態では、ばね59がロッド52を組織に軽打させる代わりに、任意選択的に板およびロッド組立体51 52に接続された磁石に対するソレノイドの作用によって、ソレノイド(図示せず)がロッドを組織に軽打させ、ロッド52を組織から後退させる。
【0204】
ここでさらに図6A〜6Gを参照すると、それらは図5の動作中の装置49の位置の時系列の簡略図である。
【0205】
装置49は、皮膚表面64に配置される。
【0206】
図6A〜6Gは、板およびロッド組立体51 52が解放された瞬間から、板およびロッド組立体51 52がその原位置に戻る瞬間までに生じる事象を、任意選択的にミリ秒単位で測定された時系列で示す。
【0207】
図6A〜6Gの各図の右側に、時系列の開始からの時間がミリ秒単位で言及されている。
【0208】
図6A〜6Gは各々、図5に示した構成要素を、同一参照番号を用いて示す。
【0209】
図6Aは時間0における装置49を示し、そのときにソレノイドおよびばね組立体55が起動され、板およびロッド組立体51 52が皮膚表面64に向かって自由に前進できる状態になる。
【0210】
図6Bは10ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときに板51は保持ロッド56を通過している。板51およびロッド52は皮膚表面64に向かって移動中である。
【0211】
保持ロッド56は、板51がそれを通過すると、ロッドの原位置に戻ることができる。保持ロッド56は、動作周期における後の時点で原位置に戻ることができることが注目される。
【0212】
図6Cは22ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときに銅ロッド52は皮膚表面64を穿通し始め、かつクレータ63を気化し始める。皮膚への熱伝達はクレータ壁の周りの100ミクロンゾーンに制限され、かつ蒸気は実質的に捕捉され、実質的に凝縮しないことが注目される。
【0213】
図6Dは25ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときに銅ロッド52は最大深さに達する。銅ロッド52の皮膚表面64に対する初期衝撃から約3ミリ秒後のこの時点で、蒸気は依然として実質的に凝縮することなく、実質的に捕捉される。
【0214】
図6A〜6Gの実施例では、板51がスペーサ60に衝撃を与えることが注目される。衝撃は約10Gになると計算される。
【0215】
図6Eは27ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときにロッド52は戻り始めている。銅ロッド52の皮膚表面64に対する初期衝撃から約5ミリ秒後のこの時点で、蒸気は依然として実質的に捕捉されることが注目される。
【0216】
図6Fは40ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときに板およびロッド組立体51 52は、初期位置に戻る途中の保持ロッド56を押し始める。
【0217】
この時点で蒸気はクレータ63から自由に逸出するようになることが注目される。
【0218】
図6Gは50ミリ秒の時間における装置49を示し、そのときに蒸気は任意選択的に、一吹きの空気により管53を介して追い出される。
【0219】
上述の通り、短時間内のクレータの気化のために適量のエネルギーの送達を確実にするために、ロッドは任意選択的に、銅の熱伝導率と実質的に等しいかそれより高い熱伝導率を持つ材料から製造される。
【0220】
本発明の一部の実施形態では、ロッドの熱伝導率は、生体適合性のために、非限定例として約5ミクロンのステンレス鋼の薄層で被覆される。
【0221】
全てのロッドは図5の保護板54から略正確に100ミクロン突出しなければならないので、保護板54上のスペーサ60の配置の幾何学的精度は、筐体58の幅1センチメートル当たり約50ミクロンでなければならないことが注目される。そのような幾何学的精度は約5ミリラジアンに相当し、それは充分に安価な生産の実用的範囲内である。
【0222】
ここで図7を参照すると、それは、手持ち式フラクセル皮膚再建術用に設計された本発明の実施形態に従って構築されかつ作動する装置71の簡略図である。
【0223】
図7は、顔76の皮膚再建術用の手持ち式装置71の利用の略図を示す。小型の装置71は手72で保持され、部位73および74の皺75を処置する。本発明に使用される技術に基づいて、装置71のコストはパルスCOレーザのコストよりはるかに小さいが、同様の臨床結果をもたらす。
【0224】
ここで図8を参照すると、それは、手持ち式切開術用に設計された本発明の実施形態に従って構築されかつ作動する装置81の簡略図である。
【0225】
図8は、黒焦げの無い非出血高精度切開を行うためのメスとして使用される、本発明の別の実施形態を示す。
【0226】
装置81は、緻密に合焦されたCOレーザナイフによって行われる切開と実質的に同等の切開を実行する。
【0227】
装置81は任意選択的に、手82によって切開の経路に沿って駆動される。
【0228】
小径、例えば50ミクロンから300ミクロンの範囲の直径の銅ロッド85は、加熱要素88によって300℃から500℃の範囲内の温度に加熱される。ロッド85は任意選択的に、アクチュエータ87によって上下方向に振動される。加熱要素88およびアクチュエータ87は任意選択的に、電池86によって、かつ/またはコンセントへの接続によって電力を供給される。
【0229】
ロッド85は、随意の保護板80の穴を介して、予め選択された最大深さ、非限定例として約100ミクロンまで穿通する。
【0230】
装置81は組織83の表面に配置される。加熱要素88およびアクチュエータ87が作動すると、高温のロッド85は深さ100ミクロンのクレータ89を気化させる。ロッド85の振動は任意選択的に約10Hzの繰返し率、すなわちロッド85の各往復に約100ミリ秒の率に設定される。ロッド85の行程の遠位100ミクロンの端部は任意選択的に、約5ミリ秒間に発生する。ロッド85の組織83内の滞留時間は任意選択的に約5ミリ秒続き、ウルトラパルスおよび/またはスーパパルスCOレーザによって生成されるクレータと同様の黒焦げの無いクレータが生成される。
【0231】
ロッド振動の高い繰返し率は、円滑な切開線を可能にする。繰返し率はより高くすることができることが注目される。非限定例として、組織内の気化ロッドの滞留時間が5ミリ秒である場合、10ミリ秒の振動に相応する約100Hzの繰返し率が考えられる。100Hzの繰返し率は、組織における5ミリ秒の滞留時間の2倍であり、気化ロッドが組織の外にある5ミリ秒の持続時間を可能にする。
【0232】
図8に示す実施形態の場合、約5ミリ秒の持続時間内に100ミクロンまでの深さに充分な熱エネルギーを送達することを可能にするために、ロッド85は、銅の熱伝導率に略等しいかそれ以上の熱伝導率を持つ任意の金属から製造できることが注目される。
【0233】
例えば10Hzの繰返し率でサーマルヒートの送達を可能にするために、銅ロッド85の長さは任意選択的に約2〜3ミリメートルである。
【0234】
本発明に従って製造された熱メスは、数ある外科的用途の中でも、眼瞼手術、神経外科、声帯の切開、歯科、および歯肉外科のような皮膚の外科手術に使用することができる。
【0235】
ここで図9を参照すると、それは、気化ロッドを加熱するために光学光源を使用する実施形態の簡略図である。
【0236】
図9の実施形態では、図5の加熱要素50の代わりに、光学加熱要素に取り替えられる。
【0237】
図9は、光源120と共に、光を板123に集中させる光学レンズ121を示す。板123は、光の吸収をよくするために、任意選択的に黒鉛および/または黒色耐熱塗料のような黒色材料で被覆される。板123は熱をロッド124に伝達し、ロッドは任意選択的に組織130を気化させ、図3に関連して上述した通り、クレータ135および蒸気131を生成する。
【0238】
光源120を用いて板123を加熱する1つの利点は、図5のマイカ箔50を板51に近接させるのに要求される寸法精度に比較して、要求される寸法精度が軽減されることである。
【0239】
一部の実施形態では、加熱用光源は、ドイツ国Osramによって製造された50ワットのスポットライトのような安価なハロゲンランプである。一部の実施形態では、加熱用光源は、任意選択的にLEDの配列として配置された1つ以上のLEDを含む。一部の実施形態では、加熱用光源は500ワットの1つ以上のフラッシュランプを含む。一部の実施形態では、加熱用光源はHamamatsu Corporationによって製造されているようなショート・アーク・ランプである。
【0240】
ロッド124を光源120により加熱する別の利点は任意選択的に、ロッド124に横から直接照射することによって、加熱板123の使用を全く回避する可能性があることである。森林の水平方向の透明性の欠如と同様に、多数のロッドを適切に配置することにより、ロッドが光源からの光を全部実質的に完全に遮断して吸収するように構成することが可能である。
【0241】
板123を使用しないことによって、移動質量が軽減されることが注目される。
【0242】
水平方向の照明の選択肢を持つことにより、組織気化装置の設計に追加的自由度がもたらされることが注目される。
【0243】
ここで図10を参照すると、それは、本発明の実施形態に従って構築されかつ作動する1つ以上の気化ロッド1002の往復運動をもたらすための機構の簡略図である。
【0244】
図10は、ミシンにおける針アクチュエータの動作と同様に、モータを用いて往復運動をもたらす機構を示す。
【0245】
ソレノイド1007および作動ロッド1006は任意選択的に、トリガ1010の使用により、パルス発生器1009から電気パルスを供給され、直線方向に移動することができる。作動ロッド1006は1列のはめ歯1004を含む。作動ロッド1006が直線的に移動するとき、例えば右に移動するときに、はめ歯1004は、対応するはめ歯(図示せず)を有するアクスル1005を回転させる。
【0246】
回転アクスル1005ははめ歯歯車1001に接続され、該はめ歯歯車は、気化ロッド1002および加熱板1051に接続されたはめ歯1003を押し引きする。
【0247】
ロッド1002は、組織1000のクレータを気化させるために求められる振動運動を実行する。
【0248】
上述の通り、ロッド1002は、組織の気化温度より高い温度、約200ないし500℃に加熱される。
【0249】
図10はまた、随意の代替的実施形態として、ロッド1002および加熱板1051によって吸収されかつロッド1002および加熱板1051を加熱する光を放出する光源1030をも示す。
【0250】
図10はまた、随意の代替的実施形態として、気化されたクレータの正確な深さを確実にするために使用されるスペーサ要素1008をも示す。
【0251】
図10の機構は、単一の気化ロッド、多重気化ロッドアブレータ、および外科用熱メスと共に使用するのに適していることが注目される。
【0252】
ソレノイド1007は非限定例として10Hzの繰返し率で繰返し作動させることができるので、かつ図10の設計は小型化することができるので、図10の構成は熱メス用に特に魅力的であることが注目される。
【0253】
別の実施形態では、気化ロッドは、コイルおよび磁石機構の代わりに、空圧機構(図示せず)を用いて駆動されることが注目される。
【0254】
本発明の別の実施形態では、組織の穿通深さの制限を確実にするために、センサ(図示せず)が追加される。非限定例として、光学符号器(図示せず)は気化ロッドの前進を検出し、ひとたびロッドが特定の距離に達すると後方移動を起動させる。
【0255】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドおよび/または保護板もしくは組織と接触している表面は着脱可能であり、かつ/または使い捨てであり、かつ/または滅菌することができることが注目される。
【0256】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、組織焼灼装置の他の部品とは別個に使用者/医師に供給することができることが注目される。
【0257】
本発明の一部の実施形態では、保護板は、組織焼灼装置の他の部品とは別個に使用者/医師に供給することができることが注目される。
【0258】
本発明の一部の実施形態では、気化ロッドは、単数または複数の適合する保護板と共にキットとして、組織焼灼装置の他の部品とは別個に使用者/医師に供給することができることが注目される。
【0259】
ここで図11を参照すると、それは、内視鏡を介して送達される本発明の実施形態を使用する例示的外科処置の簡略図である。
【0260】
図11に示す外科処置の非限定例は、400℃の温度に加熱され、5Hzの繰返し率で各段階で100ミクロンの距離ずつ前進する、300ミクロンの気化ロッド1112により実行されるファロビウス管141の繊細かつ正確な非出血切開である。
【0261】
気化ロッド1112は、組織上に配置され、切開の深さを徐々に増大していく間のケースの前進を容易にするために、円錐状端部145を持つケース144内に配置される。ケース144およびロッド1112のみならず、組立体を作動させるロッド(図示せず;図8に示す実施形態と同様であり、任意選択的にそれより小さい)も、膨張した腹部140内に挿入される腹腔鏡142内部に配置され、かつ任意選択的にTVモニタ143で観察される。
【0262】
切開には1つのロッドしか使用されないので、本発明の一部の実施形態は、標準5mm腹腔鏡内に挿入される小型の加熱組立体で、ロッドおよび加熱板1118を加熱する。
【0263】
気化ロッドに往復運動をもたらすための小型の機械的機構146は、小管腔腹腔鏡内に挿入することができることが注目される。
【0264】
図11の実施形態は、任意のタイプの内視鏡内に挿入することができることが注目される。
【0265】
図11の実施形態は、カテーテル内に挿入することができることが注目される。
【0266】
ここで図12を参照すると、それは、本発明の実施形態を組織アブレータとして使用する方法を示す簡略流れ図である。
【0267】
組織アブレータの電源を投入する(1205)。
【0268】
気化ロッドを任意選択的に加熱する(1210)。気化ロッドは使用前に加熱することができるが、電源投入後すぐに加熱する必要はなく、組織を焼灼するために使用する直前に加熱すればよい。
【0269】
アブレータを処置部位(焼灼の部位)に配置する(1215)。処置部位への配置は加熱前に行うこともでき、また電源投入前に行うこともできる。
【0270】
次にアクチュエータを作動させる(1220)。例えばボタンを押すか、あるいはスイッチを入れる。アクチュエータは図5のボタンおよび/またはスイッチ61の効果と同様の効果をもたらし、図5のソレノイドおよびばね組立体55を解放する。
【0271】
アクチュエータを作動させると、図5のソレノイドおよびばね組立体55のような保持機構が気化ロッドを解放して前進させる(1230)。
【0272】
ロッド組立体は前進し(1235)、保持機構は任意選択的にその初期位置に戻り(1240)、ロッド組立体が戻ってきたときにロッド組立体を捕捉することができる状態になる。保持機構は、ロッド組立体が後退するまで、初期位置に戻る必要は無いことが注目される。したがって、初期位置への復帰は後で行うことができる。
【0273】
しばらくして気化ロッドは組織に衝突し、組織を気化させる(1245)。
【0274】
気化ロッドは組織を気化させ、ロッド組立体が随意のスペーサ(1250)と衝突するまで、かつ/またはロッド組立体が可能なトラベルの端部に到達するなど何らかの他の方法で停止するまで、組織内により深く掘り下げていく。
【0275】
この時点でロッドは最大トラベルに達する(1255)。
【0276】
ロッドが気化させた組織からの蒸気がクレータ内に捕捉される(1260)。
【0277】
ロッド組立体は後退し始める(1265)。
【0278】
保持機構は、ロッドがその出発位置に戻ったときにロッド組立体(1270)を捕捉し、任意選択的に、組織を気化する次のサイクルに備えて再加熱される(1275)。
【0279】
この時点で、アクチュエータを作動させると、気化サイクル(1230、1235、1240、1245、1250、1255、1260、1265、1270、および1275)が再び開始され、アクチュエータを作動させなければ、サイクルは停止する(1225)。
【0280】
ここで図13を参照すると、それは、皮膚再建術用に設計された本発明のさらに別の実施形態に従って構築されかつ動作する装置1300の簡略図である。
【0281】
装置1330は、一定速度V1301でモータ182によって皮膚表面1310上を駆動されるローラ180を含み、気化ロッド1312の線形配列にクレータ186を順次気化させる。
【0282】
速度V1301は、組織における気化ロッド1312の滞留時間が約5ミリ秒になるのを確実にするように設定される。
【0283】
気化ロッド1312は任意選択的に300ミクロンの直径で銅製であり、任意選択的に、生体適合性のために約5ミクロンのステンレス鋼層で被覆される。
【0284】
直線状板1318が気化ロッド1312の各線形配列に接続され、約400℃の温度に加熱される。
【0285】
随意の加熱要素は、直線状板1318の各々に集束される光185を放射する直線状ランプ184である。直線状板1318の幅は約1mmであり、直線状ランプ184はLEDの配列、1つ以上のハロゲンランプ、または500ワットのフラッシュランプとすることができる。
【0286】
気化ロッド1312の線形配列の長さは任意選択的に10ミリメートルであり、各配列は任意選択的にロッドを含む。1ミリメートルずつ離れたクレータ186の配列を生成するために、各配列におけるロッドの先端間の距離は任意選択的に1ミリメートルである。クレータ186間の距離および組織内の滞留時間が速度Vを決定する。1mmの距離および約5ミリ秒の滞留時間の場合、前進速度V1301は5ミリ秒当たり1ミリメートル=毎分20センチメートルである。
【0287】
装置1300は任意選択的に手187によって保持され、前進速度V1301は一定であり、モータ182によって決定される。
【0288】
本発明の一部の実施形態では、ローラ180が有する各配列におけるロッドの先端間の距離は、クレータ186の所望の中心間距離より大きい。そのような実施形態では、ローラ180は皮膚表面1310を2回以上通過し、1回のパスのクレータと次回のパスのクレータとの間の所望の離隔距離を可能にする。
【0289】
本発明の一部の他の実施形態では、ローラ180が有する各配列におけるロッドの先端間の距離は、クレータ186の所望の中心間距離より大きい。そのような実施形態では、皮膚表面1310上を通過したときに、ローラ180の内の1つのローラのクレータとローラ180のうちの別のローラ(図示せず)のクレータとの間に所望の離隔距離を置いて、2組以上のクレータ186が生成されるように、2つ以上のローラ180が装置1300内に組み込まれる。
【0290】
ここで図14を参照すると、それは、本発明のさらに別の実施形態に従って構築されかつ動作する、組織の一部を気化しながら組織を伸張させるのに有用な装置1400の簡略図である。
【0291】
装置1400は任意選択的に、アブレータ193が皮膚1910に押し付けられている間に、皮膚1910のような組織を伸張させる。皮膚1910の伸張は、しわの多い皮膚を処置するときに、アブレータ193の遠位表面191が遠位表面191の全長に沿って皮膚1910の全部によく接触できない場合に、時折有利である。皮膚1910全体に沿ってよく接触していなければ、気化ロッド1912によって気化されたクレータの深さにばらつきが生じることがある。皮膚1910を伸張させることによって、遠位表面191と皮膚1910との良好な接触が確保される。
【0292】
伸張機構の実施例として、アブレータ193に摺動可能に取り付けられ、アブレータ193が皮膚1910に当接配置されるたびに下向きに押し込まれる要素192から構成される組立体がある。要素192を皮膚1910に押し付けることにより、粗い遠位表面を有し、かつ皮膚1910と接触する要素190に対する力F1911が誘発され、皮膚1910を伸張させる。
【0293】
ここで図17を参照すると、それは、皮膚と接触する表面が凸状である、本発明のさらに別の実施形態に従って構築されかつ動作する装置の簡略図である。
【0294】
図17は、本発明のさらに別の実施形態に従って構築されかつ動作する、組織の一部を気化させる間、遠位端541と皮膚表面641との間に良好な接触を得るのに有用な装置502を示す。図17の遠位端541は任意選択的に凸状断面を有し、その結果、装置502を皮膚上に配置しかつ任意選択的にそれを皮膚表面に少し押し付ける間、皮膚の伸張、および向きに対する最小感度の両方が得られる。非限定例として、遠位要素541の曲率半径は5〜30mmとすることができる。図17の気化ロッドは任意選択的に均等な長さではなくすることができ、遠位要素541の中心付近をより長く、縁部付近をより短くすることができ、結果的に凸状要素からの均等な突出距離が得られる。これは、選択された一定深さのクレータ配列の気化を確実にする。非限定例として、全てのロッドは、皮膚と接触する凸面から200ミクロンの距離突出することができる。図17は、皮膚に最も近いその随意の位置にある板511がスペーサ610によって停止している状態で、皮膚内部における組織気化段階の気化ロッド522を示す。
【0295】
図17はまた、ロッド522が任意選択的にそれらの上方の位置にある(皮膚から最も遠い)ときに任意選択的に板511を加熱する、随意の金属加熱要素500をも示す。随意の高電力筒状加熱器501は任意選択的に、銅製の立方体の要素とすることのできる要素500の内部に挿入される。非限定例として、要素500は5〜30mmの大きさにすることができる。装置502に使用するのに適した加熱要素の非限定例として、米国マサチューセッツ州Dalton Electric Heating Co.によって製造された直径8mm、長さ1インチ、50ワットのWatt‐FlexR加熱器カートリッジがある。
【0296】
本発明に従って構築されかつ動作する組織アブレータの実施形態を使用する臨床処置の一部の非限定的適用例を下に列挙する。
【0297】
適用例1:上述した10x10の気化ロッドの配列によるフラクセル皮膚再建術。ロッドは長さ5mmであり、300ミクロンの直径を有し、中心間距離で1ミリメートルずつ離れている。ロッドは銅製であり、5ミクロンのステンレス鋼層で被覆される。ロッドは、マイカ箔から20ミクロンの近接位置にある厚さ50ミクロンの銅板を介して、1平方インチ当たり100ワットのマイカHEATFLEX箔によって400〜600℃の温度に加熱される。マイカ加熱箔は、米国カンザス州のHEATRONによって製造されたマイカ加熱器と同様である。ロッドの配列は25ミリ秒以内に皮膚に当接され、皮膚の100〜300ミクロンの深さに5〜10ミリ秒間滞留し、25ミリ秒以内にその原位置に戻る。
【0298】
適用例で使用することのできる解放ソレノイドの例として、英国のNSF Controlsによって製造されたSDT1327L‐2XX型管状ソレノイドがある。
【0299】
適用例2:眼瞼手術における眼瞼の正確な切開のための手持ち式切開術アブレータ。切開アブレータ装置は、寸法および素材が適用例1のロッドと同様の単一の気化ロッドを使用する。
【0300】
切開装置の遠位端は、遠位直径が600ミクロンの円錐形の形状である。円錐形の形状は、同一位置で〜100ミクロンの深さの繰返し焼灼を可能にし、結果的に、非限定例として深さ2ミリメートルの切開のようなより深い切開が得られる。切開装置は10Hzの繰返し率で動作する。切開装置は、通常短パルスCOレーザにより達成される成果である、出血を生じることなく、熱壊死を約100ミクロンのみにとどめて、組織を5ミリメートルより深く切開することが可能である。
【0301】
適用例3:腹腔鏡手術、例えばファロビウス管の切開、および癒着の解離。切開装置は、適用例2の切開装置と一般的に同様であるが、標準的5mm腹腔鏡内への挿入を可能にするためにより小さい直径で構築される。
【0302】
適用例4:神経外科。ロッドは、脳室流動を妨げる閉塞を開放するために利用される。神経内視鏡を脳室に接触させ、ロッドが、脳室を閉塞する膜で穴を気化させる。切開装置の動作は、適用例2に関連して記載した動作と同様であるが、任意選択的に定位脳手術装置を活用する。
【0303】
適用例5:声帯の小さい病変の焼灼。単一の気化ロッドが任意選択的に5Hzの繰返し率で動作し、声帯を損傷することなく、かつ出血を生じることなく、小結節および他の病変を生体から除去する。これは、歌手または職業上声帯を使用する他の人々にとって、特に重要である。手術結果は、現在多くのENT外科手術群で実行されているCOレーザ手術と同一である。
【0304】
適用例6:膣頸管検査。手持ち式切開アブレータは任意選択的に、HPVの存在の可能性を示すPAPスメア結果が陽性であった場合に、頚部切開に使用される。そのような場合、頚部収縮を回避するために、頚部手術で黒焦げの無い最小熱損傷切開を行うことが重要である。そのような切開は、本発明に従って構築されかつ動作する切開装置により達成される。結果は、パルスCOレーザにより一般的に実行される同様の外科手術の場合と同様である。
【0305】
適用例7:歯科および口腔顎顔面手術。付帯的熱壊死が最小限の黒焦げの無い切開のための本発明の実施形態、および組織の表面気化のための実施形態も、歯科および口腔顎顔面手術に適用することができる。該実施形態は、速やかな治癒および術後の痛みの軽減の両方に有利であることが周知の高精度COレーザにとって代わることができる。適用は、非限定例として、歯茎切開、歯科インプラントの準備における組織切開、および色素沈着した歯茎の焼灼を含む。
【0306】
適用例8:高い繰返し率を使用する部分的な皮膚の若返り法
実施例1に記載した実施形態と一般的に同様の部分的皮膚再建術ユニットは、毎秒2処置部位ないし3秒当たり1処置部位、またはより遅い例示的速度で動作する。毎秒2処置部位の処置速度は一般的に高速とみなされる。本発明に係る装置の処置速度の1つの制限は、気化ロッドが気化直後に組織から上昇した後、熱が気化ロッドの遠位端に拡散するのに要する時間である。
【0307】
ここで図15を参照すると、それは、本発明の実施形態の数学的シミュレーションによる気化ロッドの遠位端の温度の簡略グラフ表現である。図15は、気化ロッドの遠位端の熱再供給のプロセスの数学的シミュレーションの結果を示す。
【0308】
図15は、X軸1515が時間を表わし、Y軸1520が温度を表すグラフ1510を示す。線1525は、以下のパラメータを使用したミュレーション例における、時間の関数としての気化ロッドの遠位端の温度を表す。
【0309】
同じく上記のDalton Electric Heating Co.によって製造された100W加熱器は、気化[ロッド]を400℃の最高温度に加熱する。気化ロッドは、10mmの総ロッド長さを有する。シミュレーションは、気化ロッドの遠位600ミクロンからの熱消耗のシミュレーションである。ロッドによるクレータの気化は各々、10ミリ秒の滞留時間中に発生する。シミュレーションの結果は、2つの処置部位/秒の処置速度が達成可能であることを示す。
【0310】
適用例9:椎間板切除術
気化ロッドは、カテーテルを介して張り出した椎間板内に挿入され、椎間板で穴を気化させる。
【0311】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する外科用レーザが開発されることが予想され、レーザの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0312】
本明細書中で使用される用語「約」は、−50%〜+100%、すなわち半分から二倍までの範囲を示す。
【0313】
用語「含む/備える(comprising)」は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0314】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0315】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0316】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「装置(a unit)」または用語「少なくとも1つの装置」は、その組み合わせを含めて、複数の装置を包含し得る。
【0317】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0318】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0319】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0320】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0321】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0322】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0323】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0324】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0325】
ここで図16Aを参照すると、それは、本発明の実施形態の物理的パラメータに従って動作する気化ロッドによって生成された2つのクレータの写真記録である、
【0326】
図16Aは、本発明の実施形態の物理的パラメータに従って形成された、肉1600の表面における2つのクレータの写真、および測定のためにクレータの隣に置かれた物差しとを示す。肉1600は鶏肉である。
【0327】
直径が1ミリメートルの金属気化ロッド(図示せず)を、金属気化ロッドの色によって測定される約400〜600℃の温度に加熱した。ロッドを加熱するたびに、ロッドを肉1600から15ミリメートルの距離に保持し、肉1600に接触させ、かつ肉1600から後退させた。肉1600を高温気化ロッドと接触させる各プロセスは合計して0.1秒続き、気化ロッドは約5〜10ミリ秒間肉と接触した。
【0328】
図16Aは、第1クレータA1610の側面図を示し、クレータA1610の深さが約200ミクロンであり、クレータA1610の周りに約150ミクロンの凝固ゾーン1630があることが分かる。
【0329】
同様の結果は第2クレータB1620でも示され、それは第2クレータB1620の上面図としてより分かり易い。
【0330】
赤熱状態のときにクレータを生成するために使用される同じ気化ロッドが、加熱されていないときには肉を穿通することができないことが注目される。
【0331】
ここで図16Bを参照すると、それは、本発明の実施形態に従って動作する気化ロッドの配列によって、皮膚表面1635にエクスビボで生成されたクレータ1630の組織学的断面の写真記録である。
【0332】
図16Bは、飼育白ブタの皮膚で実施されたエクスビボテストで生じたクレータ1630の組織学を表す。
【0333】
さらに図16Cを参照すると、それは、被覆された銅ロッド1655の配列と、図16Bに示した組織学的断面を生じた本発明の実施形態で利用されるカートリッジ加熱器1660の写真である。
【0334】
図16Cは、銅ブロック1670に組み込まれた3×3の気化ロッド1655の配列が、本発明に従って直径1/4インチ、長さ1.25インチの100ワット加熱カートリッジ(米国Dalton Electric社製)によって、熱電対で測定された400℃の温度に加熱されたことを示す。各々の気化ロッド1655の長さおよび幅はそれぞれ10mmおよび1.5mmであった。銅ブロック1670は、生体適合性のために厚さ1ミクロンのロジウム層(図示せず)で被覆された。気化ロッド間の距離は1mmであった。
【0335】
図16Bに示された結果を出すために、5〜10ミリ秒の滞留時間に、2分の1秒に1回接触する繰返し率で、気化ロッドの配列を皮膚の30の異なる処置部位に30回接触させた。深さ約250ミクロンの付帯的損傷ゾーン1640を伴う深さ約200ミクロンの気化されたクレータが生成された。付帯的損傷ゾーン1640は部分的に深さ約150ミクロンの凝固層であり、かつ部分的に、生体細胞を見ることのできる深さ100ミクロンの追加的熱拡散層である。
【0336】
気化ロッドの長さを約5〜20mmの範囲で変化させ、かつ上述した接触作動機構の振動の持続時間を約10〜200ミリ秒に変化させることによって、事実上広範囲の臨床パラメータ、すなわち10ミクロンないし500ミクロンの気化の深さ、約0.1ミリ秒ないし10ミリ秒の気化滞留時間、および20ミクロンないし約300ミクロンの付帯的熱損傷をカバーすることが可能であることが注目される。
【0337】
パラメータの最適な選択は、気化ロッド間の間隙の総面積に対する遠位端総面積の比率と定義することのできる、気化[ロッド]の配列における気化ロッドの相対密度にも依存することが注目される。一部の実施形態では、比率は5%から80%の間で変化することができる。好適な最適密度は10%から50%の間で変化することができる。
【0338】
気化ロッドの温度、気化の深さ、付帯的損傷の深さ、ロッド幅、およびロッド密度の組合せは、黒焦げの無い組織修復効率のみならず治癒時間の両方に影響することが注目される。本発明によると、これらのパラメータは制御可能である。
【0339】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0340】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

図1
図4A-4B】
図7
図8
図12
図2
図3
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図9
図10
図11
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17