特許第5774006号(P5774006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774006組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤用組成物、表示デバイス、およびその製造方法
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  • 特許5774006-組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤用組成物、表示デバイス、およびその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774006
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤用組成物、表示デバイス、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20150813BHJP
   G02F 1/161 20060101ALI20150813BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20150813BHJP
   C08G 59/58 20060101ALI20150813BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20150813BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20150813BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150813BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   G02F1/161
   G02F1/167
   C08G59/58
   C08G59/66
   C08G59/40
   C08K3/00
   C08L63/00 C
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-526335(P2012-526335)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2011004333
(87)【国際公開番号】WO2012014499
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-170640(P2010-170640)
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】水田 康司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕明
(72)【発明者】
【氏名】五味 俊一
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/142065(WO,A1)
【文献】 特開2009−091510(JP,A)
【文献】 特開2002−338230(JP,A)
【文献】 特開2001−220498(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/039885(WO,A1)
【文献】 特開2003−026766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08G 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)23℃において液状のエポキシ樹脂と、
(2)酸無水物と、分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物とからなる群より選ばれ、23℃において液状のエポキシ樹脂硬化剤と、
(3)23℃において固体である2級アミンもしくは3級アミン、または2級アミンもしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルと、
(4)フィラーと、
を含む樹脂組成物であって、
前記23℃において固体である2級アミンまたは3級アミンは、融点が60〜180℃である、イミダゾール化合物および変性ポリアミンからなる群より選ばれる微粒子であり、かつ該微粒子の平均粒子径が0.1〜10μmであり、
前記マイクロカプセルは、イミダゾール化合物および変性ポリアミンからなる群より選ばれる一以上の2級アミンまたは3級アミンからなるコアと、前記2級アミンまたは3級アミンを内包し、融点が60〜180℃であるカプセル壁とを有し、
かつ前記マイクロカプセルの平均粒子径が0.1〜10μmであり、
前記(4)成分の含有量が、前記(1)成分、前記(2)成分および前記(3)成分の合計100重量部に対して、50〜150重量部であり、
E型粘度計により測定される、25℃、2.5rpmにおける粘度が0.5〜50Pa・sである、表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項2】
前記組成物の水分含有量が0.5重量%以下である、請求項1に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項3】
前記フィラーは、無機フィラーと、有機フィラーとを含む、請求項1又は2に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項4】
前記フィラーは、平均粒子径が0.1〜20μmの球状フィラーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項5】
前記23℃において液状のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる一以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項6】
前記(3)成分/前記(2)成分の含有比が、重量比で0.2〜1.2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項7】
前記有機フィラーは、
融点または軟化点が60〜120℃である、シリコン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、およびポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる一種類以上の微粒子、またはカルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、変性マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックスおよび変性フィッシャートロプッシュワックスからなる群より選ばれる一種類以上のワックスである、請求項3に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項8】
前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが30〜110℃である、請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項9】
前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが10〜40℃である、請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項10】
前記表示デバイスが、電気泳動方式により情報を表示するデバイスである、請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項11】
前記表示デバイスが、電子ペーパーである、請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物。
【請求項12】
表示素子と、
前記表示素子を挟持する一対の基板と、
前記一対の基板の周縁部に形成される前記一対の基板同士の隙間を封止する請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物の硬化物と、を有する、表示デバイス。
【請求項13】
前記一対の基板は、一方がガラス基板、他方が樹脂シートであり、
前記硬化物は、厚さ100μmとした際のDMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが30〜110℃である、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項14】
前記一対の基板は、両方ともにガラス基板又は樹脂シートであり、
前記硬化物は、厚さ100μmとした際のDMSにより5℃/分の昇温速度で測定される、ガラス転移温度Tgが10〜40℃である、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項15】
前記一対の基板同士の隙間が、20〜500μmである、請求項1214のいずれか一項に記載の表示デバイス。
【請求項16】
表示素子と、前記表示素子を挟持する一対の基板と、を有する積層体を得るステップと、
前記積層体の周縁部に形成された前記一対の基板同士の隙間に、請求項1〜のいずれか一項に記載の表示デバイス端面シール剤用組成物を塗布または滴下するステップと、
前記塗布または滴下した表示デバイス端面シール剤を硬化するステップと、
を有する、表示デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤、表示デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の表示デバイスとしては、液晶表示方式のデバイス、有機EL方式のデバイス、電気泳動方式のデバイス等がある。これらの表示デバイスは、一般的に、液晶素子などの表示素子と、それを挟持する一対の基板とを有する積層体であって、表示素子の周辺部がシール部材で封止された構造を有している。
【0003】
たとえば、液晶表示方式のデバイスは、(1)透明な基板の上に液晶シール剤を塗布して液晶を充填するための枠を形成し、(2)前記枠内に微小の液晶を滴下し、(3)液晶シール剤が未硬化状態のままで2枚の基板を高真空下で重ね合わせた後、(4)液晶シール剤を硬化させる方法等により製造される。
【0004】
このような液晶シール剤として、例えば液晶に対する溶解性の低いエポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂硬化剤を含む液晶シール剤が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
一方、電気泳動方式の表示デバイスとして、例えばマイクロカップ構造を有する表示デバイスが提案されている(例えば、特許文献2)。このような電気泳動方式の表示デバイスは、(1)表示素子と、それを挟持する一対の基板とを有する積層体を作製した後、(2)積層体の周縁部に形成される基板同士の隙間をシール部材で封止することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−018022号公報
【特許文献2】特表2004−536332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、電気泳動方式の表示デバイスを製造する際には、表示素子を、一対の基板で挟持した積層体を組み立てた後、基板の端部同士の間に形成される微小な隙間をシール部材で封止する。このため、シール剤の粘度は、微小な隙間にも侵入できる程度に低いこと、および低い粘度を維持できること(粘度安定性に優れること)が望まれる。
【0008】
一方、シール剤の硬化物は、表示素子が外部の水分等によるダメージを受けないようにするために、耐湿性が高いことが望まれる。このため、シール剤は、大量のフィラーを含むことが好ましいが、それによりシール剤の粘度が著しく高くなるおそれがあった。つまり、微小な隙間にも侵入できる程度の低い粘度と、粘度安定性とを有し、かつ硬化物の耐湿性が高いシール剤が望まれている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微小な隙間を埋めることができる程度の低い粘度と、粘度安定性とを有し、かつ硬化物が高い耐湿性を有する組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤、およびそれを用いた表示デバイスとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、組成物の粘度を、微小な隙間を埋め込むことができる程度に低くするために、(1)液状エポキシ樹脂と、(2)液状のエポキシ樹脂硬化剤とを用い、かつ(4)フィラーの含有量を調整することで、低粘度と硬化物の高い耐湿性とを両立できることを見出した。
【0011】
一方、液状成分を多く含む組成物は、反応性が比較的高いことから、粘度安定性が低下し、微小な隙間に対して埋め込みにくくなる。また、液状のエポキシ樹脂硬化剤のみを硬化剤として含む組成物は、硬化速度が比較的低くなりやすい。そこで組成物に、(3)固体の2級アミンもしくは3級アミン、または2級アミンもしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルをさらに含ませることで、組成物の粘度安定性を高めるとともに、硬化速度を高めうることを見出した。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
【0012】
本発明の第一は、以下の組成物に関する。
[1] (1)23℃において液状のエポキシ樹脂と、(2)酸無水物と、分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物とからなる群より選ばれ、23℃において液状のエポキシ樹脂硬化剤と、(3)23℃において固体である2級アミンもしくは3級アミン、または2級アミンもしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルと、(4)フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記(4)成分の含有量が、前記(1)成分、前記(2)成分および前記(3)成分の合計100重量部に対して、50〜150重量部であり、E型粘度計により測定される、25℃、2.5rpmにおける粘度が0.5〜50Pa・sである、組成物。
【0013】
本発明の第二は、以下の表示デバイス端面シール剤用組成物に関する。
[2]前記[1]に記載の組成物からなる、表示デバイス端面シール剤用組成物。
【0014】
[3]前記組成物の水分含有量が0.5重量%以下である[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記フィラーは、無機フィラーと、有機フィラーとを含む、[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記フィラーは、平均粒子径が0.1〜20μmの球状フィラーである、[1]ないし[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記23℃において液状のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる一以上である、[1]ないし[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記(3)成分/前記(2)成分の含有比が、重量比で0.2〜1.2である、[1]ないし[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記23℃において固体である2級アミンまたは3級アミンは、融点が60〜180℃である、イミダゾール化合物および変性ポリアミンからなる群より選ばれる微粒子であり、かつ平均粒子径が0.1〜10μmである、[1]ないし[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]前記マイクロカプセルは、イミダゾール化合物および変性ポリアミンからなる群より選ばれる一以上の2級アミンまたは3級アミンからなるコアと、前記2級アミンまたは3級アミンを内包し、融点が60〜180℃であるカプセル壁と、を有し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が、0.1〜10μmである、[1]ないし[7]のいずれかに記載の組成物。
[10]前記有機フィラーは、融点または軟化点が60〜120℃である、シリコン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、およびポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる一種類以上の微粒子、またはカルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、変性マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックスおよび変性フィッシャートロプッシュワックスからなる群より選ばれる一種類以上のワックスである、[4]ないし[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが30〜110℃である、[1]ないし[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]前記組成物を、80℃で60分間加熱硬化させて得られる厚さ100μmのフィルムの、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが10〜40℃である、[1]ないし[10]のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[13]前記表示デバイスが、電気泳動方式により情報を表示するデバイスである、[2]ないし[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]前記表示デバイスが、電子ペーパーである、[2]ないし[13]のいずれかに記載の組成物。
【0016】
本発明の第三は、以下の表示デバイスとその製造方法に関する。
[15]表示素子と、前記表示素子を挟持する一対の基板と、前記一対の基板の周縁部に形成される前記一対の基板同士の隙間を封止する[1]ないし[14]のいずれかに記載の組成物の硬化物と、を有する、表示デバイス。
[16]前記一対の基板は、一方がガラス基板、他方が樹脂シートであり、前記硬化物は、厚さ100μmとした際のDMSにより5℃/分の昇温速度で測定されるガラス転移温度Tgが30〜110℃である、[15]に記載の表示デバイス。
[17]前記一対の基板は、両方ともにガラス基板又は樹脂シートであり、前記硬化物は、厚さ100μmとした際のDMSにより5℃/分の昇温速度で測定される、ガラス転移温度Tgが10〜40℃である、[15]に記載の表示デバイス。
[18]前記一対の基板同士の隙間が、20〜500μmである、[15]に記載の表示デバイス。
[19]表示素子と、前記表示素子を挟持する一対の基板と、を有する積層体を得るステップと、前記積層体の周縁部に形成された前記一対の基板同士の隙間に、[1]ないし[14]のいずれかに記載の組成物を塗布または滴下するステップと、前記塗布または滴下した表示デバイス端面シール剤を硬化するステップと、を有する、表示デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微小な隙間でも埋め込める程度の低い粘度と、粘度安定性とを有し、かつ硬化物が高い耐湿性を有する組成物、この組成物からなる表示デバイス端面シール剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の表示デバイスの一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.組成物
本発明の組成物は、(1)液状エポキシ樹脂と、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤と、(3)固体状の2級アミンもしくは3級アミン、または2級アミンもしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルと、(4)フィラーとを含み、必要に応じて(5)シランカップリング剤などの任意成分をさらに含んでよい。
【0020】
(1)液状エポキシ樹脂
液状エポキシ樹脂は、23℃で液状のエポキシ樹脂である。液状エポキシ樹脂は、1分子内に2以上のエポキシ基を有し、かつ常温(23℃)で液状のエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。液状エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型、および水添ビスフェノールA型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、ビスフェノールノボラック型、ナフトールノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフチル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型、トリフェノールエタン型、トリフェノールプロパン型等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂;脂環型エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;ポリサルファイド変性エポキシ樹脂;レゾルシン型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が含まれる。
【0021】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば分子中に下記式で表されるN−グリシジル基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【化1】
さらに、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、分子中に2以上のグリシジル基を有し、かつベンゼン核を1以上有するものが好ましい。このような化合物は、芳香族アミン化合物のアミノ基に、1または2つのエピハロヒドリンを反応させて得られ、モノグリシジルアミノ基またはジグリシジルアミノ基を有する化合物である。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3ーエポキシプロポキシ)メチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0022】
上記のエポキシ樹脂のなかでも、結晶性が比較的低く、塗布性や粘度安定性が良好であるなどの観点から、2官能のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂等がより好ましい。
【0023】
液状エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、200〜700であることが好ましく、300〜500であることがより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定できる。
【0024】
液状エポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、種類や分子量の異なる2種類以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
液状エポキシ樹脂の含有量は、組成物全体に対して5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。
【0026】
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤
液状エポキシ樹脂硬化剤は、室温(23℃)で液状であり、かつ通常の保存条件下(室温、可視光線)ではエポキシ樹脂を急速には硬化させないが、熱を与えられるとエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は、硬化後の樹脂中に架橋基として組み込まれる。
【0027】
なかでも、80℃程度の比較的低温でエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤が好ましく、具体的な例には、酸無水物や分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物などが好ましい。
【0028】
酸無水物の例には、無水フタル酸等の芳香族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物;無水コハク酸等の脂肪族酸無水物などが含まれる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることが可能である。なかでも、室温で低粘度な液体であることから、脂環式酸無水物が好ましい。
【0029】
分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物の例には、メルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとを反応させて得られるエステル化合物が含まれる。メルカプト基含有カルボン酸の例には、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトイソ酪酸、および3−メルカプトイソ酪酸などのメルカプト基含有脂肪族カルボン酸が含まれる。
【0030】
多価アルコールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの炭素数2〜10のアルキレングリコール類、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸などが含まれ、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、および1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸など、3価以上の多価脂肪族アルコールである。
【0031】
分子内に2以上のメルカプト基を有するチオール化合物は、市販品として容易に入手できる。市販品として入手可能なチオール化合物の例には、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1 昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1 昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート(PEMP SC有機化学(株)製)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP SC有機化学(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(DPMP SC有機化学(株)製)、ビスフェノールA型チオール(QX−11 三菱化学(株)製)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC SC有機化学(株)製)、テトラエチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオネート)(EGMP−4 SC有機化学(株)製)、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン(三井化学(株)製)、チオール基含有ポリエーテルポリマー(カップキュア3−800 ジャパンエポキシレジン(株)製)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1 昭和電工(株)製)などが含まれる。
【0032】
液状エポキシ樹脂硬化剤は、組成物の適切な粘度を実現させる観点から、数平均分子量が200〜800であることが好ましい。数平均分子量が800を超えた液状エポキシ樹脂硬化剤を含む組成物は、シール剤とした際に粘度が上昇し、塗布性や隙間への埋め込み性を低下させやすい。一方で、数平均分子量が200未満の液状エポキシ樹脂硬化剤を含む組成物は、シール剤とした際に粘度が低すぎてシール形状を安定に保持できないことがある。液状エポキシ樹脂硬化剤の数平均分子量は、GPC分析などにより測定できる。
【0033】
液状エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、組成物全体に対して5〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。液状エポキシ樹脂硬化剤の含有量が上記範囲であると、組成物の粘度を低くできるだけでなく、硬化物が適度な柔軟性を有する。
【0034】
(1)液状エポキシ樹脂と(2)液状エポキシ樹脂硬化剤との合計含有量は、前記組成物全体に対して10〜90重量%であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましい。(1)成分と(2)成分の合計含有量が少なすぎると、フィラーの含有量を多くしたときの組成物の粘度上昇が大きくなりやすい。一方、(1)成分と(2)成分の合計含有量が多すぎると、室温下においても、組成物に含まれる液状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂硬化剤との反応が生じやすくなる。
【0035】
このような液状エポキシ樹脂硬化剤を含む組成物は粘度が低いため、塗布性に優れるだけでなく、微小な隙間に対して埋め込み易く、シール性が高い。
【0036】
(3)23℃で固体である2級もしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセル
23℃で固体である2級もしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルは、液状エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として機能する。
【0037】
23℃で固体である2級または3級アミンの例には、変性ポリアミン、イミダゾール化合物、ポリアミドアミン化合物、ポリアミノウレア化合物、有機酸ヒドラジド化合物および有機酸ジヒドラジド化合物等が含まれる。
【0038】
変性ポリアミンは、ポリアミンとエポキシ樹脂とを反応させて得られるポリマー構造を有する化合物である。変性ポリアミンにおけるポリアミンは、特に制限されず、1級、2級および3級アミンが含まれ、好ましくはイミダゾール化合物である。
【0039】
変性ポリアミンの例には、富士化成工業(株)製フジキュアFXR−1081、(株)ADEKA製アデカハードナーEH4339S(軟化点120〜130℃)、ADEKA製アデカハードナーEH4342および(株)ADEKA製アデカハードナーEH4357S(軟化点73〜83℃)等が含まれる。
【0040】
イミダゾール化合物の例には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等が含まれる。
【0041】
ポリアミドアミン化合物の例には、ジカルボン酸とポリアミンとを脱水縮合反応させて得られる。ポリアミドアミン化合物の具体例には、ジカルボン酸とエチレンジアミンとを脱水縮合反応させた後、環化して得られるイミダゾリンなどが含まれる。
【0042】
ポリアミノウレア化合物とは、アミンと尿素とを加熱硬化させて得られる化合物である。ポリアミノウレア化合物の例には、フジキュアFXR−1081(融点121℃)、およびフジキュアFXR−1020(融点124℃)などが含まれる。
【0043】
有機酸ヒドラジド化合物の例には、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(PHBH 日本ファインケム(株)製、融点264℃)等が含まれる。有機酸ジヒドラジド化合物の例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、およびセバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等が含まれる。
【0044】
23℃で固体である2級または3級アミンの融点は、組成物を熱硬化させる際の熱硬化温度近傍であることが好ましく、60〜180℃であることが好ましい。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの融点が低すぎると、室温で液状エポキシ樹脂の硬化反応を生じやすく、組成物の保存安定性が低くなる。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの融点が高すぎると、上記熱硬化温度で硬化剤または硬化促進剤としての機能が得られにくい。
【0045】
23℃で固体である2級または3級アミンの平均粒子径は、後述のように微小な基板同士の隙間に埋め込めるようにするために、例えば0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
【0046】
23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量は、組成物全体に対して2〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量が少なすぎると、エポキシ樹脂の硬化速度を高める効果が十分に得られない。一方、23℃で固体である2級アミンまたは3級アミンの含有量が多すぎると、組成物の粘度が上昇しやすくなる。
【0047】
(3)23℃で固体である2級または3級アミンと、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤との含有比((3)成分/(2)成分)が、重量比で0.2〜1.2であることが好ましい。上記含有比が低すぎると、組成物に含まれる液状エポキシ樹脂硬化剤が比較的多くなるため、室温でも液状エポキシ樹脂と反応して粘度安定性が低下することがある。一方、上記含有比が高すぎると、組成物の粘度が上昇しやすくなる。
【0048】
2級または3級アミンを内包するマイクロカプセルは、2級または3級アミンからなるコアと、該コアを内包するカプセル壁とを有する。
【0049】
コアとなる2級または3級アミンは、特に制限されず、23℃で液状または固体状でありうる。コアとなる2級または3級アミンの例には、前述と同様の、変性ポリアミンおよびイミダゾール化合物等が含まれる。カプセル壁の材質は、特に制限されないが、保存時の組成物の安定性と、加熱による活性発現のバランスの点から高分子化合物であることが好ましい。例えばポリウレタン化合物、ポリウレタンウレア化合物、ポリウレア化合物、ポリビニル化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等から得られる高分子化合物でありうる。カプセル壁の融点は、組成物の熱硬化温度でマイクロカプセルを硬化剤または硬化促進剤として機能させるために、60〜180℃であることが好ましい。このようなマイクロカプセルの市販品の例には、イミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製 ノバキュアHX−3722)などが含まれる。
【0050】
マイクロカプセルの平均一次粒子径は、前述と同様に、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。マイクロカプセルの含有量は、組成物における2級または3級アミンの含有量が、前述した範囲となるように調整されればよい。
【0051】
このような23℃で固体である2級アミンもしくは3級アミン、または2級もしくは3級アミンを内包するマイクロカプセルを含む組成物は、室温において液状エポキシ樹脂との反応性が低いため、室温での保存安定性が高い。また、2級アミンまたは3級アミンを含む組成物は、硬化速度も高い。
【0052】
(4)フィラー
フィラーは、組成物の硬化物の耐湿性や線膨張性を調整しうる。フィラーは、無機フィラー、有機フィラーもしくはこれらの混合物であり、好ましくは無機フィラーと有機フィラーとの混合物である。
【0053】
無機フィラーは、特に制限されず、その例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが含まれ、好ましくは二酸化ケイ素、タルクである。
【0054】
有機フィラーは、特に制限されないが、熱硬化温度近傍で融解することによる液だれを防止する観点から、融点または軟化点が60〜120℃であるものが好ましい。そのような有機フィラーの例には、シリコン微粒子、アクリル微粒子、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン微粒子、およびポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる微粒子;およびカルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、変性マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックスおよび変性フィッシャートロプッシュワックスからなる群より選ばれるワックスなどが含まれる。
【0055】
フィラーの形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよいが、微小な隙間への埋め込み性を高める観点では、球状であることが好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。
【0056】
フィラーは、微小な隙間への埋め込み性を高める観点から、単分散よりは広分散であることが好ましい。単分散性の高いフィラーを含む組成物は、粘度が高くなり易く、微小な隙間に対する埋め込み性が低下し易いからである。
【0057】
フィラーの凝集による組成物の粘度上昇を抑制するために、フィラーには表面処理が施されてもよい。具体的には、フィラーの凝集は、フィラー同士の相互作用により生じやすいため、フィラー同士を相互作用させないようにするために、フィラー表面を不活性化(非極性化)する処理が施されていることが好ましい。
【0058】
フィラー表面を不活性化(非極性化)する処理の例には、フィラー表面に疎水性基を導入できる方法であればよく、環状シロキサン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ヘキサアルキルジシラザン等により処理する方法が含まれる。
【0059】
フィラーの含有量は、前記(1)液状エポキシ樹脂、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤および(3)2級または3級アミンの合計100重量部に対して50〜150重量部であることが好ましく、75〜125重量部であることがより好ましい。組成物が無機フィラーと有機フィラーの両方を含む場合、フィラーの含有量とは、無機フィラーと有機フィラーの合計含有量を意味する。このように、フィラーの含有量が調整された組成物は、適正な粘度が保持されており、基板に対する塗布性が高く良好である。また、かかる組成物の硬化物は吸湿しづらいので、耐湿接着信頼性が高い。
【0060】
(5)その他の添加剤
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の硬化性樹脂をさらに含んでもよい。他の硬化性樹脂の例には、組成物の耐熱性を高めるなどの観点から、固体状エポキシ樹脂などが含まれる。固体状のエポキシ樹脂としては、例えば固体状のビスA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0061】
さらに本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤等のカップリング剤、ゴム剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、単独で、あるいは複数種を組み合わせて用いてもよい。上記シランカップリング剤の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
なかでも、本発明の組成物は、後述のように、表示デバイス端面の耐衝撃性を高めたり、基板との密着性を高めたりするために、ゴム剤をさらに含むことが好ましい。ゴム剤の例には、シリコーン系ゴム剤、アクリル系ゴム剤、オレフィン系ゴム剤、ポリエステル系ゴム剤、ウレタン系ゴム剤などが含まれる。
【0063】
本発明の組成物の水分含有量は、0.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以下である。本発明の組成物は、後述するように、表示デバイス端面シール剤として好ましく用いられる。シール剤中の水分含有量が多い場合、そのシール剤によって封止されたデバイス内に、シール剤から水分が侵入しやすく、表示デバイスに影響が生じる可能性がある。特に、電気永動方式により情報を表示するデバイスは、水等の極性分子の影響を受けやすい。そこで本発明では、組成物の水分含有量を、0.5重量%以下とすることが好ましい。
【0064】
組成物中の水分含有量の測定は、カールフィッシャー法により行うことができる。組成物中の水分含有量を上記範囲とするためには、水分含有量の少ない原料を選択し、水分の少ない条件で組成物を調製する。また、各原料を、組成物の調製前に脱水することも好ましい。
【0065】
本発明の組成物の、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定される粘度が0.5〜50Pa・sであることが好ましく、1〜20Pa・sであることがより好ましい。組成物の粘度が0.5Pa・s未満であると、シール剤とした際にシールパターンの形状を保持し難く、液だれし易くなる。一方、組成物の粘度が50Pa・s超であると、微小な隙間に埋め込むことができず、シール性が低下しやすい。組成物の粘度は、前述の通り、(1)液状エポキシ樹脂と(2)液状エポキシ硬化剤の含有量や、(4)フィラーの形状および平均一次粒子径等により調整されうる。
【0066】
本発明の組成物は、微小な隙間に対して埋め込み易くする観点から、比較的低いせん断速度で測定した粘度と比較的高いせん断速度で測定した粘度との比(低シェア粘度/高シェア粘度)を示すチキソトロピー指数(TI値)が1に近いことが好ましい。チキソトロピー指数は、例えば組成物に含まれる(4)フィラーの平均一次粒子径等によって調整されうる。
【0067】
本発明の組成物の硬化物は、組成物を表示デバイスのシール剤として用いた際の高温での基板との接着強度を維持するために、一定以上の耐熱性を有することが好ましい。好ましい耐熱性は、表示デバイスの基板の種類によって決定される。例えば、組成物の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂シートとガラス基板との間に表示素子を挟持する表示デバイスにおいて、本発明の組成物を一対の基板の隙間を封止するシール剤として使用する場合、本発明の組成物を80℃で60分間加熱硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、30〜110℃であることが好ましい。組成物の硬化物のガラス転移温度が上記範囲であれば、各基板とシール剤との間での界面剥離等が生じる可能性が少なく、信頼性の高い表示デバイスとすることが可能となる。
【0068】
また、2枚の樹脂シートの間、もしくは2枚のガラス基板の間に表示素子を挟持する表示デバイスにおいて、本発明の組成物を一対の基板の隙間を封止するシール剤として使用する場合、本発明の組成物を80℃で60分間加熱硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、10〜40℃であることが好ましい。2枚の樹脂シートを一対の基板として使用する場合、表示デバイスにはフレキシビリティが要求されることがある。そこでこの場合、シール剤も柔軟性を有することが好ましく、組成物の硬化物のガラス転移温度を上記範囲とすることが好ましい。また、2枚のガラス基板を一対の基板として使用する場合には、ガラス基板とシール剤との線膨張係数の差によって、ガラス基板とシール剤との界面で剥離が生じる可能性がある。そこで、硬化物のガラス転移温度を上記範囲とすることで、界面剥離が生じ難いものとできる。
【0069】
なお、ここでいう樹脂シートとは、透明性が高い樹脂から構成されることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン(COC),ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ABS樹脂、透明ナイロン、透明ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0070】
また、硬化物のガラス転移温度は、本発明の組成物を、80℃で60分間熱硬化させて得られる、厚さ100μmのフィルムのガラス転移温度を、DMSにより5℃/分の昇温速度で測定することにより求められる。
【0071】
本発明の組成物を調製する方法は、特に限定されない。たとえば、前述した各成分を混合して本発明の組成物を調製することができる。各成分を混合する手段は、特に限定されず、例えば双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、および遊星式撹拌機等が含まれる。本発明の組成物は、前述の各成分を混合した後、フィルタでろ過して不純物を取り除き、さらに真空脱泡処理を施すことにより得ることができる。得られた本発明の組成物は、ガラス瓶やポリ容器に密封充填して保存される。前述のように、組成物はその水分含有量が低いことが好ましい。したがって、水分透過性の低い容器中で保存することが好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、各種表示デバイスの端面を封止するための、表示デバイス端面シール剤として用いられることが好ましい。
本発明の組成物は、適度に低粘度であるため、塗布性が高く、硬化物の耐湿性が高い。このため、液晶素子、EL素子、LED素子、電気泳動方式の表示素子等を有する各種表示デバイスのシール剤;好ましくは電気泳動方式の表示素子を有する表示デバイスの端面を封止するシール剤として用いられる。電気泳動方式の表示デバイスの例には、電子ペーパーなどが含まれる。
【0073】
2.表示デバイスとその製造方法
本発明の表示デバイスは、電気泳動方式等の表示素子と、表示素子を挟持する一対の基板とを有し、一対の基板の周縁部に形成される基板同士の隙間を、シール部材が封止する構造を有する。シール部材は、本発明の表示デバイス端面シール剤の硬化物を用いることができる。
【0074】
図1は、本発明の表示デバイスの一実施形態を示す模式図である。表示デバイス10は、電気泳動方式の表示素子12と、表示素子12を挟持する一対の基板14および16とを有し、一対の基板14および16の端部同士の間に形成される隙間18が、シール部材20で封止された構造を有する。
【0075】
表示素子12は、電気泳動方式の表示層12Aと、表示層12Aを駆動するための透明電極12Bおよび12Cと、を有する。
【0076】
基板14および16は、ガラス板または樹脂シートなどであってよいが、基板14および16のうち少なくとも表示面となる基板は、透明なガラス板または樹脂シートであることが好ましい。透明な樹脂シートの例には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂等で構成されたシートが含まれる。基板14および16の厚さは、用途にもよるが、それぞれ0.1〜3mm程度とすることができ、好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0077】
基板14と16との間のギャップ(隙間)18は、用途にもよるが、電子ペーパーなどでは、例えば20〜500μmであり、より好ましくは25μm以下である。
【0078】
本発明の表示デバイスは、例えば以下のようにして製造されうる。表示デバイスは、1)表示素子と、表示素子を挟持する一対の基板とを有する積層体を得るステップ;2)積層体の周縁部に形成された一対の基板との隙間に、表示デバイス端面シール剤を塗布または滴下するステップ;および3)表示デバイス端面シール剤を硬化させるステップ;を経て製造される。
【0079】
積層体の周縁部に表示デバイス端面シール剤を塗布または滴下する手段は、特に制限されず、ディスペンサー、スクリーン印刷等であってよい。
【0080】
表示デバイス端面シール剤の硬化は、熱硬化でも光硬化であってもよいが、表示素子の劣化を抑制する点では、熱硬化が好ましい。表示デバイス端面シール剤を紫外線照射して光硬化させると、表示素子が紫外線照射により劣化するおそれがある。また、表示素子には光照射せずに、表示デバイス端面のシール剤のみに光照射することは、製造効率も悪いからである。
【0081】
熱硬化温度は、表示素子へのダメージを少なくする観点から、例えば60〜80℃が好ましく、60〜70℃がより好ましい。熱硬化時間は、熱硬化温度や、シール剤の量にもよるが、例えば30〜90分程度としうる。
【0082】
このように、本発明の表示デバイスの製造方法では、表示素子と、それを挟持する一対の基板とを有する積層体を組み立てた後、積層体の周縁部に形成された一対の基板との隙間を、シール剤で封止する。本発明のシール剤は、前述の通り、フィラー多く含むにもかかわらず適度に粘度が低いため、一対の基板の周縁部に形成される微小な隙間にも、精度よく埋め込むことができる。さらに、本発明のシール剤の硬化物は、高い耐湿性を有するため、得られる表示デバイスは、高温高湿下においても高い接着強度を維持することができる。
【実施例】
【0083】
実施例および比較例で用いた各成分を以下に示す。
(1)液状エポキシ樹脂(水分含有量が、0.2重量%以下である成分を用いた)
A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828、エポキシ当量184〜194g/eq)
B:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC(株)製:エピクロン830S、エポキシ当量165〜177g/eq)
C:ビスフェノールE型エポキシ樹脂(プリンテック(株)製:R710、エポキシ当量160〜180g/eq)
D:ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(東レファインケミカル(株)製:FLEP-60、エポキシ当量280g/eq)
【0084】
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤(水分含有量が100重量ppm以下である成分を用いた)
A:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)
B:テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製:リカシッドTHPA)
C:ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
D:トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)
E:トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート
F:テトラエチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオネート)
G:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
【0085】
(3)2級アミンもしくは3級アミン(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
A:イミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)
B:変性ポリアミン(富士化成工業(株)製:フジキュアFXR−1081、融点:121℃)
C:変性ポリアミン((株)ADEKA製:EH−4342、融点:80℃)
【0086】
(4)フィラー(水分含有量が1重量%以下である成分を用いた)
無機フィラー:二酸化珪素(日本触媒(株)製:S−100、平均一次粒子径1.0μm、球状)
有機フィラー:アクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F351G、平均一次粒子径0.3μm、球状)
【0087】
(5)シランカップリング剤(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製 KBM403)
【0088】
(6)その他(水分含有量が0.1重量%以下である成分を用いた)
固体エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER1001、エポキシ当量450〜500g/eq、軟化点64℃)
【0089】
(実施例1)
(1)液状エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製:JER828)を21重量部、(2)液状エポキシ樹脂硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化(株)製:リカシッドMH−700)を19重量部、(3)アミンとしてイミダゾール変性マイクロカプセル体(旭化成(株)製:ノバキュアHX−3722)を12重量部、(4)無機フィラーとして二酸化珪素(日本触媒(株)製:S−100)を45重量部、有機フィラーとしてアクリル微粒子(ガンツ化成(株)製:F351G)を2重量部、(5)シランカップリング剤としてKBM403(信越化学(株)製)を1重量部、を3本ロールで混練した。その後、混練物をフィルタによりろ過し、真空脱泡処理して組成物(以下、「シール剤」という)を得た。シール剤の調製は、液状エポキシ樹脂などの原料の水分量が増えない程度の低い湿度下で行なった。
【0090】
(実施例2〜3)
(1)液状エポキシ樹脂の種類を、表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0091】
(実施例4)
(1)液状エポキシ樹脂の種類と混合比を、表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0092】
(実施例5〜10)
(1)液状エポキシ樹脂の種類と(2)液状エポキシ樹脂硬化剤の種類を、表1および2に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0093】
(実施例11)
(4)無機フィラーの含有量を47重量部とし、有機フィラーを含まなかった以外は、実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0094】
(実施例12〜13)
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤と(3)2級または3級アミンの種類および含有量を表2に示されるように変更した以外は、実施例2と同様にしてシール剤を得た。
【0095】
(実施例14)
(1)液状エポキシ樹脂の含有量を19重量部に変更するとともに、(6)固体エポキシ樹脂を2重量部含有させた以外は、実施例2と同様にしてシール剤を得た。
【0096】
(実施例15)
(4)無機フィラーの含有量を47重量部とし、有機フィラーを含まなかった以外は、実施例6と同様にしてシール剤を得た。
【0097】
(実施例16)
実施例6と同様にしてシール剤を調製し、さらにシール剤中の水分含有量が0.6重量%となるよう、水を添加した。
【0098】
(比較例1)
(1)液状エポキシ樹脂の代わりに13重量部の固体エポキシ樹脂を含有させ、かつ(2)液状エポキシ樹脂硬化剤と(4)無機フィラーの含有量を表3に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0099】
(比較例2〜3)
(2)液状エポキシ樹脂硬化剤を含有させず、かつ表3に示されるように組成を変更した以外は実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0100】
(比較例4〜5)
(4)有機フィラーを含有させず、かつ表3に示されるように組成を変更した以外は実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0101】
(比較例6)
(3)2級または3級アミンを含有させず、かつ表3に示されるように組成を変更した以外は実施例1と同様にしてシール剤を得た。
【0102】
(比較例7)
(1)液状エポキシ樹脂と、(2)液状エポキシ硬化剤と、(4)無機フィラー及び有機フィラーの量とを、表3に示されるように変更した以外は、実施例11と同様にしてシール剤を得た。
【0103】
各実施例および比較例で得られたシール剤の水分含有量、粘度、接着強度、セル歪、高温高湿信頼性およびガラス転移温度(Tg)を、以下のようにして評価した。
【0104】
1)水分含有量(重量%)
得られたシール剤の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定した。
【0105】
2)粘度
得られたシール剤の粘度を、E型粘度計により25℃、2.5rpmで測定した。
【0106】
3)接着強度
得られたシール剤に、スペーサとして平均粒子径が20μmである球状シリカを1%添加し、混合脱泡した。このスペーサ入りのシール剤を、スクリーン版を介して、25mm×45mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に直径1mmの円状のシールパターンを描画した。
【0107】
このシールパターンを描画した無アルカリガラスに、対となるアルカリガラスを重ね合わせて固定した後、80℃で60分加熱して貼り合わせた。このようにして貼り合わせた二枚のガラス板(以下「試験片」という)を、25℃、湿度50%の恒温槽にて、24時間保管した。その後、恒温槽から取り出した試験片の平面引張り強度を、引張り試験装置(インテスコ(株)製)により、引張り速度2mm/分で測定した。
【0108】
4)セル歪試験
50mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に、平均粒子径が20μmである球状スペーサを散布(配置)した。この基板上に、対となる40mm×40mmのガラス基板を重ね合わせた後、周縁部に形成された基板同士の隙間(5μm)に得られたシール剤をディスペンサーにより塗布した。その後、シール剤を、80℃で60分間加熱して硬化させて、セルを作製した。
【0109】
得られたセルの中心部にニュートンリングが発生するかどうかを観察し、歪の有無を評価した。
セルの中心部にニュートンリングがみられない:歪みなし(○)
セルの中心部にニュートンリングが発生:歪みあり(×)
【0110】
5)高温高湿信頼性試験
50mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に、10mgの乾燥した炭酸カルシウムの微粉末を載せた。この基板上に、対となる40mm×40mmのガラス基板を重ね合わせた後、その周縁部に形成された基板同士の間の隙間(100μm)に、シール剤をディスペンサーで塗布した。その後、シール剤を80℃、60分間加熱して硬化させて、セルを作製した。
【0111】
得られたセルを、(1)60℃95%RHで1000時間、(2)85℃85%RHで1000時間それぞれ放置したときの、放置前後のセル重量を測定した。放置前後のセル重量の変化が小さいほど耐湿性が高いことを示す。
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の100%以上102%以下:○
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の102%超105%以下:△
放置後のセル重量が、放置前のセル重量の105%超:×
【0112】
6)ガラス転移温度(Tg)
前記1)で調製したスペーサ入りのシール剤を、アプリケータを用いて離型紙上に100μmの膜厚に塗布した。シール剤の塗膜が形成された離型紙を、80℃の熱風乾燥オーブンで60分間保持した後、取り出して冷却した。その後、離型紙から塗膜を剥離して、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのガラス転移温度(Tg)を、セイコーインスツルメント(株)製 DMS−6100を用いて、5℃/minの昇温速度で測定した。
【0113】
実施例1〜8の評価結果を表1に、実施例9〜16の評価結果を表2に、比較例1〜7の評価結果を表3にそれぞれ示す。なお、表1〜3の組成の欄の数値の単位は、いずれも「重量部」である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0114】
表1および2に示されるように、実施例1〜16のシール剤は、いずれもフィラーの含有比が高いにもかかわらず、粘度が15Pa・s以下と低いことがわかる。このため、実施例1〜15のシール剤は、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができ、得られるセルの高温高湿下での信頼性が高いことがわかる。
ただし、実施例16については、シール剤中に含まれる水分含有量が多いため、実施例1〜15と比較して、高温高湿下での信頼性が低下する。
【0115】
一方、表3に示されるように、比較例1〜3、5、及び7のシール剤は、いずれもフィラーの含有比が比較的低いにも係わらず粘度が高いことがわかる。このため、比較例1〜3、5、及び7のシール剤は、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができず、得られるセルの高温高湿下での信頼性も低いことがわかる。
【0116】
特に、液状エポキシ樹脂を含まず、固体エポキシ樹脂を含む比較例1のシール剤や、液状エポキシ硬化剤を含まない比較例2および3のシール剤は粘度が高く、高温高湿下での信頼性が低下したり、セル歪が大きくなったりすることがわかる。また比較例4のシール剤は、フィラーの含有量が少ないため、高温高湿下での信頼性が低く、比較例5のシール剤は、フィラーの含有量が多すぎるため、隙間を均一な厚みにシールすることができず、セル歪が生じたり、シール性が低下したりしたと考えられる。比較例6のシール剤は、(3)の2級または3級アミンを含まないため、硬化物の耐熱性(Tg)が低く、高温下での信頼性も低下することがわかる。
【0117】
特に、液状エポキシ樹脂硬化剤を含まない比較例2および3において、セル歪みが生じたのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂硬化剤との反応で得られる架橋体は柔軟性があるため、セル歪を生じなかったのに対して、液状エポキシ樹脂を2級または3級アミンで開環反応させて得られる比較例2および3の架橋体(ポリエーテル)は脆いため、セル歪を生じたと考えられる。
【0118】
比較例7のシール剤は、(3)の2級アミンまたは3級アミンに対して、(2)液状エポキシ硬化剤の量が少ない。このため粘度が上昇し、基板同士の隙間を十分に埋め込むことができず、高温高湿下での信頼性が低下したと考えられる。またエポキシ樹脂硬化剤の量が少ないため、比較例2及び3と同様に架橋体の柔軟性が十分でなく、セル歪みが生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、微小な隙間にも埋め込める程度の低い粘度と、粘度安定性とを有し、かつ硬化物が高い耐湿性を有する表示デバイス端面シール剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 表示デバイス
12 表示素子
12A 表示層
12B、12C 透明電極
14、16 基板
18 隙間(ギャップ)
20 シール部材
図1