(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774021
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】フェノール系オリゴマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 39/15 20060101AFI20150813BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20150813BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20150813BHJP
C07C 37/20 20060101ALI20150813BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
C07C39/15CSP
C08G59/32
C07C39/16
C07C37/20
!C07B61/00 300
【請求項の数】20
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-540916(P2012-540916)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2011074719
(87)【国際公開番号】WO2012057228
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-239839(P2010-239839)
(32)【優先日】2010年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591018707
【氏名又は名称】明和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(72)【発明者】
【氏名】大森 潔
(72)【発明者】
【氏名】福田 康法
(72)【発明者】
【氏名】中河 賢和
(72)【発明者】
【氏名】大上 誉志貴
(72)【発明者】
【氏名】三谷 紀幸
【審査官】
前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−084181(JP,A)
【文献】
特開昭50−035229(JP,A)
【文献】
特開2005−075866(JP,A)
【文献】
特開2000−143774(JP,A)
【文献】
特開昭52−008085(JP,A)
【文献】
特開昭51−132235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 39/00
C07C 37/00
C08G 59/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化9】
(式中、
nは、0〜15の整数であり、
Rは、アリル基であり、
a1及びa3は、それぞれ独立に、0、1、2又は3であり、
各a2は、それぞれ独立に、0、1又は2であり、
各R′は
、水素原
子であるが、
但し、a1、各a2、及びa3の少なくとも一つは2である)
で表わされるフェノール系オリゴマー。
【請求項2】
少なくとも1種の下記一般式(2)
【化10】
(式中、Rは、アリル基であり、aは、
0、1、2又は3である)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分と、
少なくとも1種の下記一般式(3)
【化11】
(式中、R′は、水素原
子である)で表されるアルデヒド化合物とを反応させる工程を含む、
下記一般式(1)
【化12】
(式中、
nは、0〜15の整数であり、
Rは、アリル基であり、
a1及びa3は、それぞれ独立に、0、1、2又は3であり、
各a2は、それぞれ独立に、0、1又は2であり、
各R′は、水素原子であるが、
但し、a1、各a2、及びa3の少なくとも一つは2である)
で表わされるフェノール系オリゴマーの製造方法。
【請求項3】
フェノール化合物成分として、さらに少なくとも1種の下記一般式(4)
【化13】
(式中、Rは、アリル基であり、bは、0、1、2又は3である)で表される1価のフェノール化合物を含む、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
フェノール化合物成分とアルデヒド化合物とのモル比が、1.2:1〜10:1である、請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
フェノール化合物成分として、アリル基置換レゾルシンを含む、請求項2〜4いずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
フェノール化合物成分として、2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンを主成分として含む、請求項2〜5いずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
フェノール化合物成分中の、4,6−ジアリルレゾルシンの割合が、15モル%〜75モル%である、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
無触媒もしくは酸触媒存在下で反応させる、請求項2〜7いずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
フェノール化合物成分として、2価フェノールの水酸基をアリルエーテル化し、次いでクライゼン転位によりアリル基をフェノール核に置換させることにより得られる2価のアリル基置換フェノール化合物を使用する、請求項2〜8いずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
請求項2〜9いずれか1項記載の製造方法により得られるフェノール系オリゴマー。
【請求項11】
25℃におけるE型粘度計による回転粘度が、0.01〜150Pa・sである、請求項1又は10記載のフェノール系オリゴマー。
【請求項12】
請求項1、10又は11記載のフェノール系オリゴマーからなる、エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項13】
請求項1、10又は11記載のフェノール系オリゴマーとエピハロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂。
【請求項14】
請求項1、10又は11記載のフェノール系オリゴマーと、請求項13記載のエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
フェノール樹脂と、請求項13記載のエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1、10又は11記載のフェノール系オリゴマーと、エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
請求項14〜16いずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項18】
請求項14〜16いずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物からなる半導体素子の封止材。
【請求項19】
請求項14〜16いずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物からなる半導体素子のアンダーフィル材。
【請求項20】
請求項18記載の封止材又は請求項19記載のアンダーフィル材を用いて封止された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種バインダー、コンパウンド、コーティング材、積層材、成形材料等のエポキシ樹脂用硬化剤として使用される他、エポキシ化ノボラック樹脂の原料として使用することができ、特に半導体封止材やアンダーフィル材に用いられるエポキシ樹脂の硬化剤として最適なフェノール系オリゴマー及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子材料用、特に半導体封止の分野では生産性、コスト等の面より樹脂封止が主流であり、作業性、成形性、電気特性、耐湿性、機械特性等に優れることから現状ではエポキシ樹脂組成物が主として用いられている。近年、電気・電子機器の軽薄短小化、多機能化が求められる為、半導体の高集積化が著しく加速しており、半導体パッケージをプリント配線板(PCB)に取り付ける際の実装方式は、従来のピン挿入方式(DIP)から表面実装方式(BGA,SOP,SiP,CSP)が主流となっている。更にはフリップチップ実装方式が高密度実装に有効な実装技術として適用され始めている。これらに用いる封止材やアンダーフィル材には、粘度や耐熱性(ガラス転移温度)の面から、ビスフェノールA又はFタイプの液状エポキシ樹脂と、酸無水物系やアミン系の硬化剤を用いた樹脂組成物が主流となっている。
【0003】
しかし、酸無水物系の硬化剤を用いた場合、硬化後の封止材は、熱水が存在する条件、例えばプレッシャークッカー試験の条件で加水分解を起こして、生成した酸が銅やアルミニウム等の金属基板や配線を腐食させ、耐湿寿命が低下するという問題があった。またアミン系の硬化剤を用いた場合、強い活性を有することから反応をコントロールするのが容易ではないなどの問題があった。
【0004】
一方、従来から、フェノール系の硬化剤として、半固形や固形のフェノールノボラック樹脂を溶剤に溶解したものが用いられている。また、液状のフェノールノボラック樹脂として、アリル基含有フェノールノボラック樹脂(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)、さらには、トリヒドロキシフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂のアリル化物(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−075866号公報
【特許文献2】特開2000−143774号公報
【特許文献3】特許第3794349号
【特許文献4】特開平2−91113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フェノールノボラック樹脂は、封止材に用いるには流動性が悪い。流動性を改善するために溶剤を用いたものは、硬化後も封止材中に残留する溶剤がボイド等の原因となり、信頼性に悪影響を及ぼす為好ましくない。また、アリル基含有フェノールノボラック樹脂は、(液状であるため)流動性は良好なものの、その硬化物の耐熱性が十分でないという問題がある。さらに、トリヒドロキシフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂は、流動性が十分であるとは言えない。このように、従来のフェノールノボラック樹脂には、低粘度と硬化物の耐熱性を両立できないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、低い粘性とその硬化物の高い耐熱性を両立するフェノール系オリゴマー、その製造方法、かかるフェノール系オリゴマーからなる硬化剤、これらを使用したエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物からなる半導体用の封止材及びアンダーフィル材等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
〔1〕下記一般式(1)
【化1】
(式中、
nは、0〜15の整数であり、
Rは、アリル基であり、
a1及びa3は、それぞれ独立に、0、1、2又は3であり、
各a2は、それぞれ独立に、0、1又は2であり、
各R′は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であるが、
但し、a1、各a2、及びa3の少なくとも一つは2である)
で表わされるフェノール系オリゴマー。
〔2〕少なくとも1種の下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、アリル基であり、aは、0、1、2又は3である)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分と、
少なくとも1種の下記一般式(3)
【化3】
(式中、R′は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基である)で表されるアルデヒド化合物とを反応させる工程を含む、フェノール系オリゴマーの製造方法。〔3〕フェノール化合物成分として、さらに少なくとも1種の下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、アリル基であり、bは、0、1、2又は3である)で表される1価のフェノール化合物を含む、上記〔2〕記載の製造方法。
〔4〕フェノール化合物成分とアルデヒド化合物とのモル比が、1.2:1〜10:1である、上記〔2〕又は〔3〕記載の製造方法。
〔5〕フェノール化合物成分として、アリル基置換レゾルシンを含む、上記〔2〕〜〔4〕いずれか記載の製造方法。
〔6〕フェノール化合物成分として、2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンを主成分として含む、上記〔2〕〜〔5〕いずれか記載の製造方法。
〔7〕フェノール化合物成分中の、4,6−ジアリルレゾルシンの割合が、15モル%〜75モル%である、上記[6]記載の製造方法。
〔8〕無触媒もしくは酸触媒存在下で反応させる、上記〔2〕〜〔7〕いずれか記載の製造方法。
〔9〕フェノール化合物成分として、2価フェノールの水酸基をアリルエーテル化し、次いでクライゼン転位によりアリル基をフェノール核に置換させることにより得られる2価のアリル基置換フェノール化合物を使用する、上記〔2〕〜〔8〕いずれか記載の製造方法。
〔10〕上記〔2〕〜〔9〕いずれか記載の製造方法により得られるフェノール系オリゴマー。
〔11〕25℃におけるE型粘度計による回転粘度が、0.01〜150Pa・sである、請求項〔1〕又は〔10〕記載のフェノール系オリゴマー。
〔12〕上記〔1〕、〔10〕又は〔11〕記載のフェノール系オリゴマーからなる、エポキシ樹脂用硬化剤。
〔13〕上記〔1〕、〔10〕又は〔11〕記載のフェノール系オリゴマーとエピハロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂。
〔14〕上記〔1〕、〔10〕又は〔11〕記載のフェノール系オリゴマーと、上記〔13〕記載のエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
〔15〕フェノール樹脂と、上記〔13〕記載のエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
〔16〕上記〔1〕、〔10〕又は〔11〕記載のフェノール系オリゴマーと、エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
〔17〕上記〔14〕〜〔16〕いずれか記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
〔18〕上記〔14〕〜〔16〕いずれか記載のエポキシ樹脂組成物からなる半導体素子の封止材。
〔19〕上記〔14〕〜〔16〕いずれか記載のエポキシ樹脂組成物からなる半導体素子のアンダーフィル材。
〔20〕上記〔18〕記載の封止材又は上記〔19〕記載のアンダーフィル材を用いて封止された半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低い粘性とその硬化物の高い耐熱性を両立するフェノール系オリゴマー、その製造方法、かかるフェノール系オリゴマーからなる硬化剤、これらを使用したエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物からなる半導体用の封止材及びアンダーフィル材等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】合成例1で得られたアリル基置換レゾルシンのHPLC測定結果を示す。
【
図2】アリル基置換レゾルシンの異性体混合物からTLCで分取したサンプル(サンプル1)のGC分析結果を示す。
【
図3】アリル基置換レゾルシンの異性体混合物からTLCで分取したサンプル(サンプル2)のGC分析結果を示す。
【
図4】上記サンプル1の
1H NMR分析結果を示す。
【
図5】上記サンプル2の
1H NMR分析結果を示す。
【
図6】実施例1で得られたフェノール系オリゴマーのGPCチャートを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔フェノール系オリゴマー〕
本発明のフェノール系オリゴマーは、下記一般式(1)で表わされる。
【化5】
式中、
nは、0〜15の整数であり、
Rは、アリル基であり、
a1及びa3は、それぞれ独立に0、1、2又は3であり、
各a2は、それぞれ独立に、0、1又は2であり、
各R′は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であるが、
但し、a1、各a2、及びa3の少なくとも一つは2である。a1、各a2、及びa3の二つ以上が2であるのが好ましい。
【0012】
上記一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマーは、0、1、2又は3個、好ましくは1、2又は3個、より好ましくは1又は2個、さらに好ましくは2個のアリル基が置換した2価のフェノール化合物(以下、2価のアリル基置換フェノール化合物ともいう)とアルデヒド化合物との縮合単位を含む点に特徴があり、従来のアリル基が1、2又は3個置換した1価のフェノール化合物とホルムアルデヒド化合物の縮合物(例えば、特許文献1〜4)に比べて、低い粘性とその硬化物(ここで、硬化物は、本発明のフェノール系オリゴマーを硬化剤やエポキシ樹脂の原料等として使用して得られる硬化物を意図する)の耐熱性の向上を達成することができる(以下、フェノール系オリゴマー化合物を使用して得られる硬化物の耐熱性を向上する性質を、耐熱性ともいう)。
【0013】
耐熱性の観点から、上記一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマー中に存在する、2個のアリル基が置換した2価のフェノール化合物由来の構成単位(a1、a2、及びa3が、2であるもの)は、2価のフェノール化合物由来の全構成単位中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
【0014】
耐熱性の観点から、上記一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマーにおいて、アリル基が非置換の2価のフェノール化合物由来の構成単位(a1、a2、及びa3が、0であるもの)は、フェノール系オリゴマーの粘性を過度に増大させてこの組成物により製造される硬化物の耐熱性を阻害しない範囲で含まれていてよい。
【0015】
フェノール系オリゴマーの粘性を過度に増大させてエポキシ樹脂組成物の流動性低下を招かない観点から、縮重合度nは、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜7、更に好ましくは0〜5である。
【0016】
本発明のフェノール系オリゴマーの製造方法としては、2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分と、アルデヒド化合物とを縮重合反応させる方法や、2価フェノールとアルデヒド化合物とを縮重合反応させた後に、前記フェノール化合物由来の構成単位に少なくとも2個のアリル置換基を結合させる方法が挙げられる。
【0017】
本発明のフェノール系オリゴマーを半導体用の封止材及びアンダーフィル材として使用する場合、フェノール系オリゴマーを塗工する観点から、2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分と、アルデヒド化合物とを縮重合反応させる方法が好ましい。フェノール系オリゴマーに低粘性が要請される用途では、後述する本発明のフェノール系オリゴマーの製造方法により粘性が制御されたフェノール系オリゴマーとして製造することが好ましい。
【0018】
〔フェノール系オリゴマーの製造方法〕
本発明のフェノール系オリゴマーの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)は、少なくとも1種の下記一般式(2)
【化6】
(式中、Rは、アリル基であり、aは、0、1、2又は3である)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分と、少なくとも1種の下記一般式(3)
【化7】
(式中、R′は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基である)で表されるアルデヒド化合物とを反応させる工程を含むものである。
【0019】
本発明の製造方法は、フェノール化合物成分として、さらに少なくとも1種の下記一般式(4)
【化8】
(式中、Rは、アリル基であり、bは、0、1、2又は3である)で表される1価のフェノール化合物を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法において、耐熱性と得られるフェノール系オリゴマーの粘度を所定の範囲に確保する観点(以下、フェノール系オリゴマーの粘度を所定の範囲に確保する観点を、低粘性の観点ともいう)から、一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物の配合割合は、フェノール化合物成分の総量(少なくとも1種の一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物の量、あるいは、少なくとも1種の一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物の量と、存在する場合には、少なくとも1種の一般式(4)で表される1価のフェノール化合物の量との合計)に対して、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
【0021】
すなわち、本発明の製造方法において、耐熱性、低粘性及び製造効率の観点から、一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物以外のフェノール化合物成分は、前記一般式(4)で表される1価のフェノール化合物であることが好ましく、その配合割合は、フェノール化合物成分の総量に対して、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜40モル%、さらに好ましくは0〜30モル%、さらに好ましくは0〜20モル%、さらに好ましくは0〜10モル%、さらに好ましくは0〜5モル%である。
【0022】
本発明の製造方法では、フェノール化合物成分の総量に対するアルデヒド化合物の添加量を少なくすると、得られるフェノール系オリゴマーが低分子量化し、結果としてフェノール系オリゴマーの粘度を低減できる。そこで、本発明の製造方法では、低粘性の観点から、さらにこのフェノール系オリゴマーをエポキシ樹脂と反応させて得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移点や機械強度を適切に確保する観点から、フェノール化合物成分の総量と、アルデヒド化合物とのモル比が、1.2:1〜10:1、好ましくは1.3:1〜9:1、さらに好ましくは1.4:1〜8:1となるように、これらの原料化合物を添加する。
【0023】
本発明の製造方法で使用する、一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物や、一般式(4)で表される1価のフェノール化合物は、フェノールのフェノール性水酸基をアリルエーテル化し、次いでクライゼン転位によりアリル基をフェノール核に置換させることにより得てもよい。原料となるフェノールとしては、ベンゼン環にフェノール性水酸基を1個又は2個有する単環型のフェノールを使用することができる。例えば、1価フェノールとしては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、ブチルメチルフェノール等、2価フェノールとしては、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等が挙げられる。これらのうち原料として好ましいのは、本発明のフェノール系オリゴマーの耐熱性を確保するという観点から2価フェノールのレゾルシン、カテコールであり、更に好ましくはレゾルシンである。
【0024】
アリルエーテル化反応は、公知の方法で行うことができる。例えば、原料となるフェノールを有機溶媒及び/又は水に溶解した後、アルカリを添加してフェノラートとし、これに塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル等のアリルハライドを加え、室温〜100℃で、1〜10時間反応させることにより行うことができる。
【0025】
ここで使用する有機溶媒としては、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。使用する溶媒によってアリルエーテル化反応生成物の収率が変化するが、上記の有機溶媒を使用すれば通常70%以上の反応率でアリルエーテル化は進行する。目的とするフェノールの反応率によって溶媒を変えれば良いので、原料のフェノールとアリルエーテル化生成物が可溶の溶媒であれば使用できる。また、アルカリは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。その使用量はアリルエーテル化したいフェノール性水酸基に対して当量以上である。加えるアリルハライドの使用量は、アルカリに対して当量以上である。
【0026】
次いで、得られたアリルエーテル化反応生成物を約150〜250℃に加熱すると、クライゼン転位により水酸基に結合していたアリル基がフェノール核に転位し、アリル基置換フェノール化合物を得ることができる。このアリル基は、通常水酸基に対してオルト位に転位するが、オルト位がアルキル基等の置換基で塞がっている場合は、パラ位に転位するとされている。
【0027】
本発明の製造方法で使用する、少なくとも1種の一般式(2)で表される2価のアリル基置換フェノール化合物を含むフェノール化合物成分は、原料となる2価フェノールから上記のような反応を経て得られた化合物であってよく、単独でも2種以上の化合物の混合物であってもよい。本発明の製造方法でフェノール化合物成分として使用しうる、一般式(4)で表される1価のフェノール化合物もまた、原料となる1価フェノールから上記のような反応を経て得られた化合物であってよく、単独でも2種以上の混合物であってもよい。具体的に、1価のアリル基置換フェノール化合物としては、アリルフェノール、ジアリルフェノール、トリアリルフェノールが挙げられる。2価のアリル基置換フェノール化合物としては、モノアリルカテコール、ジアリルカテコール、トリアリルカテコール等のアリル基置換カテコール、モノアリルハイドロキノン、ジアリルハイドロキノン、トリアリルハイドロキノン等のアリル基置換ハイドロキノン、モノアリルレゾルシン、ジアリルレゾルシン、トリアリルレゾルシン等のアリル基置換レゾルシンが挙げられる。低粘性かつ耐熱性という観点から好ましいのは、アリル基置換レゾルシンであり、具体的には、モノアリルレゾルシン、ジアリルレゾルシン、トリアリルレゾルシン、好ましくはジアリルレゾルシンである。なお、3価のアリル基置換フェノール化合物(モノアリルピロガロール、ジアリルピロガロール等)も、本発明の効果を損なわない範囲で使用してよい。
【0028】
例えば、レゾルシンの水酸基をアリルエーテル化しクライゼン転位により製造すると、2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンの2種類の異性体を主成分とする2価のアリル基置換フェノール化合物の混合物(微量成分としてモノ又はトリアリル置換体などが含まれてもよい)が得られる。この場合、2種類の異性体を主成分とする2価のアリル基置換フェノール化合物の混合物から、各異性体を分離して単独で用いることもできるが、異性体を主成分とする混合物をそのまま用いても何ら問題はない。生産性の観点から異性体を主成分とする混合物をそのまま用いるのが好ましい。ここで、「2種類の異性体を主成分とする」とは、2価のアリル基置換フェノール化合物の総量に対して、2種類の異性体の合計量が、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%であることを意味する。また、本発明のフェノール系オリゴマーが低粘性になる観点から、用いられるフェノール化合物成分が2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンの2種類の異性体を主成分とする場合、4,6−ジアリルレゾルシンの割合が少ない方が好ましい。かかるフェノール化合物成分中の4,6−ジアリルレゾルシンの割合は、5〜85モル%が好ましく、10〜80モル%がより好ましく、15〜75モル%が更に好ましい。
【0029】
本発明の製造方法で使用するアルデヒド化合物においては、耐熱性と低粘性の観点から、R
3は好ましくは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。すなわち、より好ましいアルデヒド化合物は、ホルムアルデヒドである。具体的には、ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン水溶液及びパラホルムアルデヒド、アルキルアルデヒドとしては、ヘキサナール及びオクタナール、芳香族アルデヒド化合物としては、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒド及びアリルフェニルアルデヒド等が挙げられる。これらアルデヒド化合物は、単独もしくは複数含んでいても何ら問題はない。アルデヒド化合物は、取り扱い易さと、低粘性の観点から、好ましくは、取り扱いの容易なホルマリン水溶液であり、市販品の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま使用できる。
【0030】
本発明の製造方法において、縮重合反応は触媒を無添加、もしくは酸触媒を添加して行うことができる。反応に用いる酸触媒としては、特に限定はなく、塩酸、蓚酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸など公知のものを使用することができる。これらは、1種のみを使用してもよいし、2種以上併用して使用することもできる。酸触媒を用いる場合は、容易に除去できる点から、上記の中でも蓚酸、塩酸が好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、酸触媒を用いる場合の使用量は、反応をコントロールするために適切な反応速度を確保する観点から、フェノール化合物成分100重量部に対し、好ましくは0.001〜5.0重量部、より好ましくは0.001〜2.5重量部、さらに好ましくは0.001〜2.0重量部である。
【0032】
本発明の製造方法において、アルデヒド化合物を円滑に反応させ、反応をコントロールするために適切な反応速度を確保する観点から、反応温度は50〜160℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。反応時間は、反応温度や使用する触媒の種類および量により変動するが、1〜24時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜16時間がさらに好ましい。反応圧力は、通常、常圧だが、加圧ないし減圧下にて行っても何ら問題はない。
【0033】
本発明の製造方法において、未反応のアリル基置換フェノール化合物は除去しなくてもよいが、除去する場合の方法としては、減圧下であるいは不活性ガスを吹き込みながら加熱下で、未反応のアリル基置換フェノール化合物を蒸留し系外へ除去する方法が一般的である。また酸触媒の除去は、熱分解や減圧除去の他に、水洗などの洗浄による方法を用いることもできる。
【0034】
本発明の製造方法によって得られるフェノール系オリゴマーの純度は、耐熱性の観点からは100重量%が望ましいが、製造効率を考慮すると、本発明の耐熱性の効果を損なわない範囲で未反応物や微量の副生成物を含んでいてもよく、その場合、得られるフェノール系オリゴマー組成物の純度は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%であり、更に好ましくは95〜100重量%である。なお、純度の測定は後述するようにGPCの測定により算出できる。
【0035】
本発明の一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマー及び本発明の製造方法により得られるフェノール系オリゴマーは、低粘性の観点から、70℃におけるE型粘度計による回転粘度が、0.01〜100Pa・s、好ましくは0.01〜50Pa・s、より好ましくは0.01〜40Pa・s、さらに好ましくは0.01〜30Pa・s、さらに好ましくは0.01〜20Pa・s、さらに好ましくは0.01〜10Pa・sであり、さらに好ましくは0.01〜5Pa・sであり、さらに好ましくは0.01〜3Pa・sである。
【0036】
本発明の一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマー及び本発明の製造方法により得られるフェノール系オリゴマーは、低粘性の観点から、さらに、25℃におけるE型粘度計による回転粘度が、好ましくは0.01〜150Pa・s、より好ましくは0.01〜130Pa・sである、さらに好ましくは0.01〜100Pa・sであり、さらに好ましくは0.01〜80Pa・sであり、さらに好ましくは0.01〜70Pa・sであり、さらに好ましくは0.01〜60Pa・sである。
【0037】
本発明の製造方法によって、本発明の一般式(1)で表されるフェノール系オリゴマーが得られる場合、フェノール系オリゴマーのE型粘度計による回転粘度を上記の範囲にする観点から、フェノール系オリゴマーの縮重合度nが、0〜15、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜7、さらに好ましくは0〜4となるように、かつ、フェノール系オリゴマーの平均縮重合度が0〜5、好ましくは0〜4、より好ましくは0〜3となるように縮重合反応を制御することが好ましい。具体的には、フェノール化合物成分、特に2価のアリル基置換フェノール化合物と、ホルムアルデヒドとを1.2:1〜10:1、好ましくは1.3:1〜9:1、さらに好ましくは1.4:1〜8:1のモル比となるように添加すると、縮重合度や平均縮重合を上記の好適範囲に制御できる。
【0038】
上記の縮重合度及び平均縮重合度は、後述するようなGPCの測定によって求めることができる。
【0039】
〔エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物〕
本発明の一般式(1)で表わされるフェノール系オリゴマー及び本発明の製造方法により得られるフェノール系オリゴマー(以下、これらを併せて、「本発明のフェノール系オリゴマー」ともいう)は、そのままエポキシ樹脂の硬化剤としてバインダー、コーティング材、積層材、成形材料等の用途に使用することもできる。
【0040】
本発明のフェノール系オリゴマーは、エピハロヒドリンと反応させることによりエポキシ樹脂(i)とすることができる。
【0041】
本発明のフェノール系オリゴマーをエピハロヒドリンと反応させてエポキシ樹脂(i)とする方法については、例えば、エピハロヒドリンとしてエピクロルヒドリンを使用する場合、本発明のフェノール系オリゴマーに過剰のエピクロルヒドリンを加え、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に50〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で1〜10時間程度反応させる方法が挙げられる。この場合、エピクロルヒドリンの使用量は、本発明のフェノール系オリゴマーの水酸基当量に対して2〜15倍モル、好ましくは2〜10倍モルである。また、使用するアルカリ金属水酸化物の使用量は、本発明のフェノール系オリゴマーの水酸基当量に対して0.8〜1.2倍モル、好ましくは0.9〜1.1倍モルである。反応後の後処理については、反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを蒸留除去し、残留物をメチルイソブチルケトン等の有機溶剤に溶解し、ろ過し水洗して無機塩を除去し、次いで有機溶剤を留去することにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0042】
本発明のフェノール系オリゴマーと反応させるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、γ−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用できる。工業的に入手が容易であり、本発明のフェノール系オリゴマーの水酸基との反応性が良好である点から、エピクロルヒドリンを用いることが好ましい。
【0043】
本発明のフェノール系オリゴマーと、エポキシ樹脂(i)とを混合することにより、エポキシ樹脂組成物(I)を得ることができる。エポキシ樹脂組成物(I)には、硬化促進剤やその他の添加剤を添加してもよい。
【0044】
エポキシ樹脂(i)と、フェノール樹脂とを混合することにより、エポキシ樹脂組成物(II)を得ることができる。エポキシ樹脂組成物(II)には、硬化促進剤やその他の添加剤を添加してもよい。
【0045】
エポキシ樹脂組成物(II)に使用されるフェノール樹脂は、エポキシ樹脂(i)の粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物の粘度も低くなるという観点から、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、カシューノボラック樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂が好ましく挙げられ、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂がより好ましく、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂がさらに好ましい。
【0046】
フェノール系オリゴマーと、エポキシ樹脂(ii)とを混合することにより、エポキシ樹脂組成物(III)を得ることができる。エポキシ樹脂(ii)としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を混合して使用しても何ら問題ない。好ましいエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂組成物を低粘度化する観点より好ましくは70℃、より好ましくは25℃において液状状態のビスフェノールA型エポキシ樹脂、好ましくは70℃、より好ましくは25℃において液状状態のビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂組成物(III)には、硬化促進剤やその他の添加剤を添加してもよい。
【0047】
エポキシ樹脂組成物(I)〜(III)(以下、これらを併せて、「本発明のエポキシ樹脂組成物」ともいう)に添加できる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを反応させて硬化させる為の公知の硬化促進剤を用いることができる。前記硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩などを挙げることができるが、この中でも硬化性の面や低粘度化の観点より25℃において液状状態の2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填材、離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等を添加することができる。特に半導体封止用途に使用する場合、無機充填材の添加は必須となる。このような無機充填材の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどをあげることができるが、特に非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい。また、これら添加剤の配合割合は公知の半導体封止用エポキシ樹脂組成物における割合と同様でよい。
【0049】
半導体封止材としては、半導体素子と回路基板との隙間及び前記半導体素子の周囲を封止する封止材や、半導体素子と回路基板との隙間だけを封止する封止材であるアンダーフィル材等がある。封止材は、液状でもペースト状でもタブレット形状等の固体状でもよい。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、100〜350℃で反応させ、硬化させることにより、エポキシ樹脂硬化物を得ることができる。また、上記のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体を封止してなる半導体装置は、前記半導体と回路基板との隙間に上記エポキシ樹脂組成物からなるアンダーフィル材を流し込んでエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法や、前記半導体と回路基板との隙間及び前記半導体の周囲に上記エポキシ樹脂組成物からなる封止材を流し込んでエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法により得ることができる。本発明において、半導体素子の封止とは、半導体素子と回路基板との隙間にアンダーフィル材を流し込む工程と、アンダーフィル材を硬化させる工程とを含むもの又は、半導体素子と回路基板との隙間及び前記半導体の周囲に封止材を注入する工程と、封止材を硬化させる工程とを含むものである。
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本文中「部」は重量部を示す。
【実施例】
【0052】
[合成例1]
〔アリル基置換レゾルシンの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに水酸化ナトリウム100.0部(2.4モル)とN,N−ジメチルホルムアミド600mlを入れた後、予めN,N−ジメチルホルムアミド500mlで溶解したレゾルシン110.1部(1.0モル)を滴下添加した。その後、塩化アリル191.3部(2.4モル)とN,N−ジメチルホルムアミド300mlを滴下添加し30℃にて6時間反応させた。塩酸で中和し、水洗を数回行った後、150℃にて減圧することで溶媒除去と蒸留を行いアリルエーテル化レゾルシン255.0部を得た。
得られたアリルエーテル化レゾルシン255.0部を190℃にて3時間クライゼン転位させ、アリル基置換レゾルシン(2価のアリル基置換フェノール化合物)250.0部を、黄褐色液体として得た。得られたアリル基置換レゾルシンは、HPLC分析(下記の<アリル基置換フェノール化合物の分析方法>(1)参照)によれば、純度が93%であり、4,6−ジアリル置換体の割合が48%であった(%は、ピーク面積に基づく)。
【0053】
[合成例2]
〔アリル基置換レゾルシンの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに水酸化ナトリウム196.0部(4.8モル)とN,N−ジメチルホルムアミド1200mlを入れた後、予めN,N−ジメチルホルムアミド1000mlで溶解したレゾルシン220.2部(2.0モル)を滴下添加した。その後、塩化アリル382.7部(4.8モル)とN,N−ジメチルホルムアミド600mlを滴下添加し30℃にて6時間反応させた。塩酸で中和し、水洗を数回行った後、150℃にて減圧することで溶媒除去と蒸留精製を行いアリルエーテル化レゾルシン490.0部を得た。
得られたアリルエーテル化レゾルシン490.0部を190℃にて4時間クライゼン転位させた。得られたアリル基置換レゾルシンの内、300部を、ヴィグリュー管を用いて160℃、真空度5mmHgにて蒸留精製を行った。初留の約30部を除去した後、アリル基置換レゾルシン(2価のアリル基置換フェノール化合物)70.0部を得た。
このアリル基置換レゾルシンは、HPLC分析(合成例1と同様)によれば、純度が90%の透明色液体であり、4,6−ジアリル置換体の割合が29%であった。
【0054】
[合成例3]
〔アリル基置換レゾルシンの合成〕
合成例2の蒸留精製の残りを、さらに165℃、真空度5mmHgにて蒸留精製を行い、アリル基置換レゾルシン110.0部を得た。
このアリル基置換レゾルシンは、HPLC分析(合成例1と同様)によれば、純度が89%の透明色液体であり、4,6−ジアリル置換体の割合が43%であった。
【0055】
[合成例4]
〔アリル基置換レゾルシンの合成〕
さらに合成例3の蒸留精製の残りを175℃、真空度3mmHgにて蒸留精製を行い、アリル基置換レゾルシン(2価のアリル基置換フェノール化合物)60.0部を得た。
このアリル基置換レゾルシンは、HPLC分析(合成例1と同様)によれば、純度が88%の透明色液体であり、4,6−ジアリル置換体の割合が65%であった。
【0056】
[合成例5]
〔アリル基置換レゾルシンの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに水酸化ナトリウム49.0部(1.2モル)とN,N−ジメチルホルムアミド300mlを入れた後、予めN,N−ジメチルホルムアミド250mlで溶解したレゾルシン55.1部(0.5モル)を滴下添加した。その後、塩化アリル95.7部(1.2モル)とN,N−ジメチルホルムアミド150mlを滴下添加し30℃にて6時間反応させた。塩酸で中和し、水洗を数回行った後、150℃にて減圧することで溶媒除去と蒸留を行いアリルエーテル化レゾルシンを得た。
得られたアリルエーテル化レゾルシン125.0部を185℃にて4.5時間クライゼン転位させた。得られたアリル基置換レゾルシンを、ヴィグリュー管を用いて160℃、真空度4mmHgにて蒸留精製を行った。初留の約20部を除去し、アリル基置換レゾルシン(2価のアリル基置換フェノール化合物)50.0部を得た。
このアリル基置換レゾルシンは、HPLC分析(合成例1と同様)によれば、純度が97%の透明色液体であり、4,6−ジアリル置換体の割合が23%であった。
【0057】
[合成例6]
〔アリル基置換カテコールの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに炭酸カリウム375.2部(2.7モル)、カテコール100.9部(0.9モル)、アセトン1000mlを入れた後、臭化アリル280.8部(2.3モル)とアセトン260mlを滴下添加し、60℃にて13時間反応させた。その後、アセトン500mlを加えろ過、濃縮し、水洗を数回行った後、80℃にて減圧することでアリルエーテル化カテコールを得た。
上記で得たアリルエーテル化カテコール100.0部にジグライム40.0部と塩化亜鉛2.0部を加え、160℃にて7時間クライゼン転位させた後、蒸留精製を行い、アリル基置換カテコール(2価のアリル基置換フェノール化合物)75.4部を得た。
得られたアリル基置換カテコールは、HPLC分析(合成例1と同様)によれば、純度が87%の無色透明液体であった。
【0058】
[実施例1]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例1で得たアリル基置換レゾルシン28.5部(0.15モル)、42%ホルマリン5.4部(0.08モル)を添加し、100℃にて8時間反応させた。90℃以上の純水63.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(下記の<フェノール系オリゴマー及び硬化物の分析方法>(7)参照)によれば、純度96.2重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.8であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.54Pa・s、25℃の回転粘度は89Pa・sであった(同(1)参照)。
【0059】
[実施例2]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例1で得たアリル基置換レゾルシン57.0部(0.30モル)、42%ホルマリン10.7部(0.15モル)、酸性触媒として蓚酸0.6部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水125.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度98.5重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.6であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.55Pa・s、25℃の回転粘度は91Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0060】
[実施例3]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例1で得たアリル基置換レゾルシン57.0部(0.30モル)、42%ホルマリン5.4部(0.08モル)、酸性触媒として蓚酸0.6部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水125.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度69.7重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.5であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.05Pa・s、25℃の回転粘度は1.6Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0061】
[実施例4]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例1で得たアリル基置換レゾルシン16.7部(0.08モル)、42%ホルマリン4.2部(0.05モル)、酸性触媒として濃塩酸0.2部を添加し、100℃にて1時間反応させた。90℃以上の純水50.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度98.3重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.7であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.65Pa・s、25℃の回転粘度は124Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0062】
[実施例5]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例6で得たアリル基置換カテコール380.0部(2.00モル)、42%ホルマリン7.1部(0.1モル)、酸性触媒として蓚酸7.6部を添加し、100℃にて24時間反応させた。90℃以上の純水500.0部を投入し、水洗した後、180℃まで昇温、脱水し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度95.7重量%、縮重合度(n)が0〜6、平均縮重合度が1.2であった。また、70℃において液体、25℃において粘ちょうな固体であり、70℃の回転粘度は14.3Pa・s、25℃の回転粘度は107Pa・s以上であった(実施例1と同様)。
【0063】
[実施例6]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例3で得たアリル基置換レゾルシン57.0部(0.30モル)、42%ホルマリン10.7部(0.15モル)、酸性触媒として蓚酸0.6部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水125.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度97.9重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.6であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.32Pa・s、25℃の回転粘度は32Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0064】
[実施例7]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例2で得たアリル基置換レゾルシン57.0部(0.30モル)、42%ホルマリン10.7部(0.15モル)、酸性触媒として蓚酸0.6部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水125.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度98.5重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.5であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.28Pa・s、25℃の回転粘度は26Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0065】
[実施例8]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例4で得たアリル基置換レゾルシン45.6部(0.24モル)、42%ホルマリン8.6部(0.12モル)、酸性触媒として蓚酸0.5部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水100.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度98.2重量%、縮重合度n
1が0〜4、平均縮重合度n
2が0.6、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.51Pa・s、25℃の回転粘度は72Pa・sであった。
【0066】
[実施例9]
〔フェノール系オリゴマーの合成〕
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに合成例5で得たアリル基置換レゾルシン41.8部(0.22モル)、42%ホルマリン7.9部(0.11モル)、酸性触媒として蓚酸0.4部を添加し、100℃にて4時間反応させた。90℃以上の純水100.0部を投入し、水洗した後、120℃まで昇温し、減圧処理にて水、及び未反応成分を除去した。
得られたフェノール系オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(実施例1と同様)によれば、純度98.2重量%、縮重合度(n)が0〜4、平均縮重合度が0.5であった。また、70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.25Pa・s、25℃の回転粘度は25Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0067】
[比較例1]
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコにo−アリルフェノール670部(5.0モル)、42%ホルマリン71.4部(1.0モル)、酸性触媒として蓚酸6.7部を添加し、100℃にて5時間反応させ、90℃以上の純水00部を投入し、水洗した。その後165℃まで昇温して脱水し、減圧処理にて未反応成分を除去した。得られたフェノール系化合物組成物は70℃及び25℃において液体であり、70℃の回転粘度は0.07Pa・s、25℃の回転粘度は1.7Pa・sであった(実施例1と同様)。
【0068】
[比較例2]
先行技術文献として挙げた、特許文献4の実施例に基づき、ポリアルケニル化合物(トリス(ヒドロキシアリルフェニル)メタン型フェノールノボラック樹脂)を合成した。
<トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型フェノールノボラック樹脂の合成>
温度計、仕込み・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコにフェノール400部(4.26モル)、サリチルアルデヒド47.2部(0.38モル)、及びパラトルエンスルホン酸1.0部を入れ、窒素気流下にて130℃にて反応させ、95℃まで冷却した。25%水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行った後、90℃以上の純水400.0部を投入し、水洗した。その後、内温を150℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られた樹脂は70℃及び25℃において固形であり、150℃における溶融粘度は0.9Pa・sであった。
【0069】
<トリス(ヒドロキシアリルフェニル)メタン型フェノールノボラック樹脂のアリル化合成>
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに上記で製造したトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型フェノールノボラック樹脂100.0部、2−プロパノール250.0部を入れ、均一となるまで溶解した後、水酸化ナトリウム40.7部(1.02モル)を入れ、1時間攪拌を継続した。塩化アリル79.6部(1.02モル)を10分間で滴下添加した後、75℃にて5時間反応させ、アリルエーテル化させた。2−プロパノールを除去した後、副生した食塩を90℃以上の純水500.0部を投入し、水洗した。190℃まで昇温・脱水し、6時間クライゼン転位を行った。得られた樹脂は70℃において液体であり、25℃において半固体であり、70℃の回転粘度は1.1Pa・s、25℃における回転粘度は107Pa・s以上であった(実施例1と同様)。
【0070】
[比較例3]
<レゾルシンノボラック樹脂の合成>
温度計、仕込み・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコにレゾルシン660部(6.00モル)、42%ホルマリン42.4部(0.60モル)、酸性触媒として蓚酸0.2部を添加し、100℃にて5時間反応させた。90℃以上の純水500.0部を投入し、水洗した後、170℃まで昇温、脱水し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られたレゾルシンノボラック樹脂は固形であり、150℃における溶融粘度は0.07Pa・sであった。
【0071】
<レゾルシンノボラック樹脂のアリル化合成>
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに上記で製造したレゾルシン50.0部、2−プロパノール100.0部を入れ、均一となるまで溶解した後、水酸化ナトリウム36.5部(0.91モル)を入れ、1時間攪拌を継続した。塩化アリル75.0部(0.96モル)を10分間で滴下添加した後、60℃にて5時間反応させ、アリルエーテル化させた。2−プロパノールを除去した後、副生した食塩を90℃以上の純水500.0部を投入し、水洗した。190℃まで昇温・脱水し、6時間クライゼン転位を行った。得られた樹脂は70℃及び25℃において固体であり、150℃における溶融粘度は10Pa・s以上であった。
【0072】
<アリル基置換フェノール化合物の分析方法>
(1)HPLC
下記条件において、高速液体クロマトグラフ分析(HPLC)を行い、アリル基置換フェノール化合物の純度と、2,4−位アリル基置換体と4,6−位アリル基置換体の異性体割合を求める。
・カラム:ODS−80Ts 250×4.6mm
・検出方法:可視検出器(UV 254nm)
・移動相:アセトニトリル/水=60/40
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・サンプル調整:サンプル液を0.2gはかり取り、アセトニトリル40gで稀釈し、20μL打ち込み
図1にHPLC測定結果の1例として合成例5の場合を挙げた。各ピークは図中の
保持時間約5.4分が2,4−ジアリル置換体、
保持時間約5.9分が4,6−ジアリル基置換体に対応し、
全ピーク面積に対する前記2種のピーク面積の合計値の割合として算出したアリル基置換フェノール化合物の純度は96%であった。
また、各ピーク面積を純度で割ることによって算出した2,4−ジアリル置換体の割合は77%で、4,6−ジアリル基置換体の割合は23%であった。
【0073】
(2)アリル基置換の異性体の同定
アリル基置換フェノール化合物(アリル基置換レゾルシン)を下記条件にて薄層クロマトグラフィー(TLC)で分取して2種のサンプルを得た。
TLC分取条件
・TLC 1mm(Silica gel 60 F254 PLC Plates)
・展開溶媒 : ヘキサン/酢酸エチル=2/1
次に2種のサンプルをGC及び
1H NMR分析することでアリル基置換レゾルシンの異性体の同定を行った。
GC分析条件
・カラム:G−100 1.2mm I.D.×40m、膜厚 1.0 μm・カラム温度・昇温条件:100℃開始で、4℃/minにて200℃まで昇温し15min保持
・インジェクション・ディテクション温度:250℃
・ガス圧力:He=100kPa、Air=50kPa、H
2=65kPa
・サンプル調整:反応液をフィルターろ過後、0.1μL打ち込み
図2,3にGC分析結果の例を挙げた。
図2のサンプル1では保持時間約17分のピーク割合が97%のアリル基置換レゾルシンが、
図3のサンプル2では保持時間約17分が21%と19分が79%のアリル基置換レゾルシンが得られた。
更に
図4、5にそれらの
1H NMR分析結果を挙げた。
図4のサンプル1では各ピークは1ヶずつであるが、
図5のサンプル2ではピークが2本ずつあり、それぞれの積分比がGC分析結果とほぼ同割合の21:79であった。
【0074】
<フェノール系オリゴマーおよび硬化物の分析方法>
(1)回転粘度
・E型粘度計は東機産業社製TVH型を使用した。
・試料(実施例1〜9で得たフェノール系オリゴマー)約1.2mlをE型粘度計付属のカップに入れ、このカップを、温度25℃又は50℃に設定した恒温槽兼送液装置(Julabo社製F25−MP)にセットする。
・E型粘度計で上記試料の回転粘度の計測を開始し、回転粘度の指示値が安定した点での回転粘度の数値を読み取る。
【0075】
(2)OH当量
(概要;塩化アセチルでアセチル化を行い、過剰の塩化アセチルを水で分解しアルカリで滴定する方法)
・試料(実施例1〜9で得たフェノール系オリゴマー)1gを精秤し、1,4−ジオキサン10mlを加え溶解する。
・溶解を確認後、1.5mol/Lの塩化アセチル/無水トルエン溶液10mlを加え、0℃まで冷却する。
・ピリジン2mlを加え、60±1℃のウォーターバス中で1時間反応させる。
・反応後、冷却し純水25mlを加え、よく混合させることで塩化アセチルを分解させる。
・アセトン25mlと、フェノールフタレインを加える。
・1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、試料溶液が赤紫色に呈色するまで滴定を行う。
・ブランク(試料なし)について上記操作にて同時に測定を行う。
次式により計算し、求める。
OH当量[g/eq.]=(1000×W)/(f×(B−A))
ここでW、f、B、Aは、それぞれ以下のとおりである。
W:試料重量[g]
f:1mol/Lの水酸化カリウム水溶液のファクター=1.002
B:ブランク測定に要した1mol/Lの水酸化カリウム水溶液の量[ml]
A:試料測定に要した1mol/Lの水酸化カリウム水溶液の量[ml]
【0076】
(3)吸水率
・金型中で、試料(表3及び4に示す組成を有する、エポキシ樹脂組成物)を、150℃で5時間、180℃で8時間硬化させてサンプルを成型する。
サイズ;(Φ50±1)×(3±0.2)(径×厚;mm)
・サンプルの表面を良く拭き取り、試料重量を測定する。
・サンプルを100mlのサンプル瓶に入れ、純水を80mlを加える。
・95℃の熱風循環式乾燥器中にて、24時間吸水させる。
・その後、乾燥器より取り出し、低温恒温水槽に浸けて25℃に冷却する。
・冷却後、表面に付着した水分を良く拭き取り重量を測定する。
・次式により計算し、吸水率を求める。
吸水率[%]=((B−A)/A)×100
A:吸水前重量[g]
B:吸水後重量[g]
【0077】
(4)ガラス転移温度(Tg)
・金型中で、150℃で5時間、180℃で8時間硬化させた試料(表3及び4に示す組成を有する、エポキシ樹脂組成物)を下記サイズにカットしてサンプルを作成する。
サイズ;(50±1)×(40±1)×(100±1)(縦×横×高;mm)
・測定装置;TMA−60(SHIMADZU製)に試料をセットし、N
2雰囲気にて測定。
・昇温速度;3℃/分で350℃まで測定し、変曲点の温度を求めガラス転移温度(Tg)とする。
ガラス転移温度は、耐熱性の尺度であり、ガラス転移点が高いほど耐熱性に優れる。
【0078】
(5)ゲルタイム
・試料(表3及び4に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物)を試験管に入れて、150℃のオイルバスに浸し、1秒間に1回の間隔で、前記エポキシ樹脂組成物をガラス棒で撹拌した。前記撹拌の抵抗が大きくなった時間をゲルタイムとして計測した。
【0079】
(6)硬化物機械特性(弾性率・応力)
・金型中で、150℃で5時間、180℃で8時間硬化させた試料(表3及び4に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物)を下記サイズにカットしてサンプルを作成する。
・サイズ;(75±1)×(6±1)×(4±1)(縦×横×厚;mm)
・測定装置;オートグラフ (型式;AG−5000D SHIMADZU製)
ヘッドスピード;2.0mm/分、2点間距離;50mm、室温下にて圧縮曲げ試験を
行う。
【0080】
(7)GPC
下記条件において、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)を行い、フェノール系オリゴマーの縮重合度(n)とフェノール系オリゴマーの平均縮重合度を求める。
・装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
・カラム:東ソー社製TSKgel G2000HXLを4本、G3000HXLおよびG4000HXLを各1本を直列に連結
・溶離液:テトラヒドロフラン
・溶離液流量:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:可視検出器(UV)
・検量線:標準ポリスチレン物質を用いて作成
図6にGPC測定結果の1例として実施例1の場合を挙げた。各ピークは図中の
保持時間約50.5分がn=0、
保持時間約48.5分がn=1、
保持時間約47.0分がn=2、
保持時間約46.1分がn=3、及び
保持時間約45.3分がn=4に対応し、
各ピークの面積と対応する縮重合度(n)を掛けた数値の合計値をピーク合計面積で割ることによって算出した平均縮重合度は0.8であった。
また、n=0〜4の各ピークの面積の合計値をピーク合計面積で割ることによって算出した純度は、96.2%であった。
【0081】
実施例1〜9及び比較例1〜3における原料の2価のアリル基置換フェノール化合物の純度、及び4,6−ジアリル置換体の割合と、アリル基置換フェノール化合物の合成条件と、得られたフェノール系オリゴマーの性状を表1〜2に示す。
表2において、E型粘度が固形及び半固形とは、25℃又は70℃でフェノール系化合物が溶解していないため、粘度が測定できなかったことを表す。
【0082】
実施例1〜9及び比較例1〜3で得られたフェノール系オリゴマーを硬化剤として、エポキシ樹脂と硬化促進剤とを加え、エポキシ樹脂組成物を得た。前記エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828EL(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量186g/eq)を用い、前記硬化促進剤として四国化成株式会社製2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)を用いた。前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基当量と前記フェノール系オリゴマーの水酸基当量とが同じになるように配合した。エポキシ樹脂組成物の組成は、表3及び4に示すとおりである。
また、前記エポキシ樹脂組成物を150℃に加熱し、溶融混合し、真空脱泡後150℃に加熱された金型に注形し、150℃で5時間、180℃で8時間硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物の物性特性を表3及び4に併せて示す。
表3及び4において、α
1はガラス転移点(Tg)以下の温度での線膨張係数であり、α
2はガラス転移点(Tg)以上の温度での線膨張係数である。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
上記の実施例の結果より、実施例で製造した各エポキシ樹脂組成物は、半導体素子の封止材やアンダーフィル材として有用であることが分かった。