(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774026
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】導電性を有する摩耗対向面とともに使用される開回路摩耗センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 3/56 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
G01N3/56 K
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-548936(P2012-548936)
(86)(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公表番号】特表2013-528781(P2013-528781A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】US2010058826
(87)【国際公開番号】WO2011087615
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2012年11月13日
(31)【優先権主張番号】12/685,766
(32)【優先日】2010年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、デイヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、アナンド エイ
【審査官】
清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭63−502129(JP,A)
【文献】
特開平10−307002(JP,A)
【文献】
特開2008−164377(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/091289(WO,A2)
【文献】
米国特許第05015990(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の摩耗対向面による摩耗を受ける面を含み、この摩耗を受ける面は前記摩耗対向面と線接触又は面接触して摩耗する、部品であって、
基板と、
前記基板上の1以上の材料層と、
前記1以上の材料層上にあって前記摩耗を受ける面を形成する摩耗面層と、
導電材料の蒸着工程により同一平面内に形成されて前記摩耗を受ける面と平行な方向に延在し且つ互いに離間して電気的に絶縁されている、摩耗センサをなす第1および第2の導電体であって、これら第1および第2の導電体のそれぞれが第1および第2の領域を有し、前記各第1の領域が前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層に配置され且つ前記各第2の領域が露出している、第1および第2の導電体と、
を備え、
前記第2の領域に摩耗警告電気回路が接続され、
前記第1および第2の導電体の厚さが、前記摩耗警告電気回路を所定の持続時間活性化させるように選択され、
上層を摩耗させた前記摩耗対向面を介して前記第1の領域が相互接続されることにより、前記摩耗警告電気回路を活性化させる、部品。
【請求項2】
前記摩耗を受ける面を摩耗させる前記摩耗対向面の移動方向に対し、前記第1および第2の導電体の一方の材料の、前記第1および第2の導電体の他方へ向かう方向のスミアリングが抑制される向きに、前記各第1の領域が延伸する、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記第1および第2の導電体の配置される前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層が導電性材料である場合に、当該第1および第2の導電体を前記導電性材料から絶縁する1以上の絶縁領域をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の部品。
【請求項4】
前記摩耗警告電気回路の無線送信器が前記第2の領域に接続され、前記摩耗対向面を介して前記第1の領域が相互接続されたときに、前記無線送信器が摩耗を示す信号を外部受信機へ送信する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部品。
【請求項5】
前記第1および第2の導電体が、前記基板に形成された溝、前記1以上の材料層に形成された溝、または前記摩耗面層に形成された溝に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部品。
【請求項6】
前記溝が誘電材料に形成されている、請求項5に記載の部品。
【請求項7】
前記溝が導電性材料に形成されており、
前記第1および第2の導電体を前記導電性材料から絶縁する誘電材料をさらに備える、請求項5に記載の部品。
【請求項8】
前記第1の導電体が第1の溝に配置され、前記第2の導電体が第2の溝に配置され、
前記第1および第2の溝は、前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部品。
【請求項9】
前記第1および第2の溝が誘電材料に形成されている、請求項8に記載の部品。
【請求項10】
前記第1および第2の溝が導電性材料に形成されており、
前記第1の導電体を前記導電性材料から絶縁する第1の誘電材料と、前記第2の導電体を前記導電性材料から絶縁する第2の誘電材料と、をさらに備える、請求項8に記載の部品。
【請求項11】
前記摩耗警告電気回路が当該部品の外部にある、請求項1〜10のいずれか1項に記載の部品。
【請求項12】
導電性の摩耗対向面による摩耗を受ける面を含み、この摩耗を受ける面は前記摩耗対向面と線接触又は面接触して摩耗する、部品であって、
基板と、
前記基板上の1以上の材料層と、
前記1以上の材料層上にあって前記摩耗を受ける面を形成する摩耗面層と、
前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層において、前記摩耗面層の表面から下の第1の深さで同一平面内に配置され、前記摩耗を受ける面と平行な方向に延在し且つ互いに離間して電気的に絶縁されている第1の摩耗センサの導電体対と、
前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層において、前記摩耗面層の表面から下の、前記第1の深さと異なる第2の深さで同一平面内に配置され、前記摩耗を受ける面と平行な方向に延在し且つ互いに離間して電気的に絶縁されている第2の摩耗センサの導電体対と、
を備え、
前記第1の導電体対に、第1の摩耗警告を提供する第1の摩耗警告電気回路が接続されると共に、前記第2の導電体対に、第2の摩耗警告を提供する第2の摩耗警告電気回路が接続され、
前記第1および第2の導電体対の各導電体の厚さが、前記第1および第2の摩耗警告電気回路をそれぞれ所定の持続時間活性化させるように選択され、
上層を摩耗させた前記摩耗対向面を介して前記第1の導電体対が相互接続されることにより、前記第1の摩耗警告電気回路を活性化させ、
上層を摩耗させた前記摩耗対向面を介して前記第2の導電体対が相互接続されることにより、前記第2の摩耗警告電気回路を活性化させる、部品。
【請求項13】
前記第1および第2の導電体対の少なくとも一方が、前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層に形成された溝に配置されている、請求項12に記載の部品。
【請求項14】
前記第1および第2の導電体対の少なくとも一方と前記基板、前記1以上の材料層、または前記摩耗面層との間に絶縁材料をさらに備えている、請求項13に記載の部品。
【請求項15】
摩耗対向面と少なくとも断続的に線接触または面接触して摩耗する摩耗面と、
導電材料の蒸着工程により同一平面内に形成されて前記摩耗面と平行な方向に延在し且つ互いに離間して電気的に絶縁されている、前記摩耗面の下の第1および第2の導電体であって、これら第1および第2の導電体のそれぞれが第1および第2の領域を有し、前記各第2の領域が露出している、第1および第2の導電体と、
を備え、
前記摩耗対向面との接触により前記摩耗面が摩耗して前記摩耗対向面を介し前記第1および第2の導電体の前記第1の領域が電気的に相互接続されたときに摩耗を報知する回路が、前記第2の領域に接続され、
前記第1および第2の導電体の厚さが、前記摩耗を報知する回路を所定の持続時間活性化させるように選択される、部品。
【請求項16】
基板と、
前記摩耗面を規定する、前記基板上の摩耗被覆と、
を備え、
前記第1および第2の導電体が前記摩耗被覆内に形成されている、請求項15に記載の部品。
【請求項17】
前記第1および第2の導電体が前記基板の表面に配置され、当該基板表面に前記摩耗被覆が形成される、請求項16に記載の部品。
【請求項18】
前記第1および第2の導電体は、前記基板の表面に形成された誘電層の表面または該誘電層の中に配置される、請求項16に記載の部品。
【請求項19】
導電性の摩耗対向面による摩耗を受ける摩耗面を含み、この摩耗面は前記摩耗対向面と線接触又は面接触して摩耗する、部品であって、
少なくとも1つの溝を有し、露出面が前記摩耗面を含む基板と、
導電材料の蒸着工程によって同一平面内に形成され、前記少なくとも1つの溝内で前記摩耗面の下に配置されており、前記摩耗面と平行な方向に延在し且つ互いに電気的に絶縁されている離間した第1および第2の導電体であって、これら第1および第2の導電体のそれぞれが同一平面内の第1および第2の領域を有し、前記第2の領域が露出している、第1および第2の導電体と、
前記第1の導電体と前記溝の表面との間および前記第2の導電体と前記溝の表面との間に配置される誘電材料と、
を備え、
前記第2の領域に摩耗警告電気回路が接続され、
前記第1および第2の導電体の厚さが、前記摩耗警告電気回路を所定の持続時間活性化させるように選択され、
前記摩耗対向面により前記摩耗面が摩耗して前記第1および第2の導電体の前記第1の領域が露出すると、前記摩耗対向面を介して前記第1および第2の導電体の前記第1の領域が相互接続されることにより、前記摩耗警告電気回路を活性化させる、部品。
【請求項20】
前記溝は、前記第1および第2の導電体を配置した単一の溝である、請求項19に記載の部品。
【請求項21】
前記溝は、前記第1の導電体を配置した第1の溝および前記第2の導電体を配置した第2の溝からなる、請求項19に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械の接触面の一方または両方における面の摩耗を検出するセンサに関する。本センサにおいて、接触面の少なくとも一方は導電性材料からなる。
【背景技術】
【0002】
機械(例えば高性能機械またはエンジン)の接触する部品間の相対運動の結果、一方または両方の部品が過度に摩耗することがある。例えば、部品が高振動数および低振動数で振動すると、結果的に付属部品や合わせ面が過度に摩耗することがある。この部品摩耗が検出されないまま放置されると、部品や機械が故障することがある。例えば、燃焼タービンエンジン内のスプリングクリップは、動作振動および動的力に起因して、他の部品との接触によって面摩耗が発生する。
【0003】
用途によっては、潤滑剤を使用したり、摩耗に対して高い耐性を有する材料を用いたり、部品摩耗を引き起こす運動や接触を制限する機能を設計したりして、部品摩耗を許容レベルまで制御できる。しかしながら、ブレーキライニングや、噛合歯車、接触摺動部品、スリップフィットなどのように、相対運動をなくすことができない場合が多く、これら用途では摩耗は避けられないものである。
【0004】
重要な部品の摩耗状態を知っておくと、予期せぬ部品の故障に起因する強制停止を避けられる。また、摩耗状態を把握しておけば、都合のよい予定時刻に機械を終了させて、摩耗した部品の修復ができる。修復できないほど部品が摩耗したり、緊急停止を要求されるまで、動作を継続させなくてもよい。強制停止を避け、そして、予定停止の実行で、廃棄ではなく摩耗部品を修復できることが保証されれば、大幅なコスト削減が可能となる。
【0005】
視覚検査や寸法検査を行うことによって、摩耗の程度と、部品が動作を継続できるかについて判断できる。用途によっては、摩耗表示器が、1つ以上の接触面の中に、または接触面に近接して、埋め込まれている。例えば、ブレーキライニングの場合、所定量のライニング摩耗が発生すると、摩耗限度ノッチもしくは「キーキーと音を出すもの」が聴覚的警告を発する。
【0006】
しかしながら、例えば、人件費や検査費用、検査によるダウンタイムで生じる作業中断などの要因のため、定期的な検査を実行できない場合が多い。さらに、ガスタービンエンジンの内部部品の監視時のように、視覚的警告や聴覚的警告が常に実行可能な監視方法とは限らない。したがって部品を動作状態にしながら部品摩耗を監視できるシステムが必要とされている。
【0007】
摩耗部品の一方または両方に搭載された摩耗センサは、機械動作中の部品摩耗をリアルタイムで監視できるという利点がある。このセンサは、摩耗しやすい領域で発生する摩耗量を計測し、所定の摩耗量が発生すると作業者に通知する。このセンサは、機械の信頼性を向上させ、より正確なメンテナンス計画を可能とする。また、このような監視は安全性も向上させ、部品の損害が発生する前にメンテナンスを必要とする旨を示すことによって、操業費やメンテナンス費を抑える。また、リアルタイム摩耗監視は、予期せぬ停止を回避する。
【0008】
導電性摩耗センサは、本出願と共同所有される特許文献1、発明の名称「埋め込み導電体を用いる摩耗監視システム」に記載されている。本特許は、閉回路導電配線を含むセンサを記載しており、このセンサは、対向面がその導電配線まで摩耗させた場合に、開回路状態に変化する。このセンサには多くの用途があるけれども、摩耗対(すなわち摩耗面に沿って接触している2つの部品)の両部材は、導電性金属である場合が多い。開回路は、そのような導電性部品において検出され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,270,890号明細書
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明の摩耗センサを基板に適用する処理の一連の工程を示す。
【
図5】本発明の摩耗センサを基板に適用する処理の一連の工程を示す。
【
図6】本発明の摩耗センサを基板に適用する処理の一連の工程を示す。
【
図7】本発明の摩耗センサを基板に適用する処理の一連の工程を示す。
【
図8】本発明の摩耗センサを含む基板の断面図を示す。
【
図9】摩耗対向面の運動によって発生する基板面の摩耗段階を示す。
【
図10】摩耗対向面の運動によって発生する基板面の摩耗段階を示す。
【
図11】摩耗対向面の運動によって発生する基板面の摩耗段階を示す。
【
図12】摩耗対向面によって摩耗した基板の断面図を示す。
【
図13】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図14】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図15】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図16】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図17】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図18】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図19】異なる用途の摩耗センサの様々な実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0012】
本発明の様々な態様に係る、導電性対向面に使用される開回路摩耗センサに関する特定の方法および装置を詳細に説明する前に、本発明は、様々な実施形態において、ハードウェアおよび方法の諸工程の新規かつ非自明の組み合わせに本来存在するものであることに留意すべきである。したがって、本明細書中の説明の恩恵を受ける当業者には既に明らかであろう詳細により本開示を分かりにくくしないように、添付の図面では、ハードウェアおよび方法の諸工程は、従来の要素によって表し、本発明に関連する詳細のみを示してある。
【0013】
以下に記載の実施形態は、本発明の構造または方法の限定を定義することを意図したものではなく、構成例を提示しているに過ぎない。実施形態は、必須のものではなく許容されるものであり、網羅的なものではなく例示的なものである。
【0014】
本発明によれば、開回路摩耗センサは、開回路配置で構成された、例えば2つの近接摩耗センサ導電体を備え、誘電性基板または導電性基板に形成される。後者の場合、摩耗センサ導電体は導電性基板から絶縁されている。いずれの場合においても、誘電層(摩耗面または摩耗被覆)が摩耗センサ導電体上に形成され、摩耗面が導電性の摩耗対向面によって摩耗すると、導電体が露出し、対向面が導電体を相互接続(ブリッジ)または短絡させる。この動作によって回路が閉成し、摩耗面が破壊されたことを示す警告(摩耗警告)が提供される。
【0015】
一般に、摩耗面(耐摩耗被覆または単に摩耗被覆とも呼ばれる)は、摩耗対向面に接触する最外側材料層として定義される。摩耗面材料は導電性または絶縁性である。本発明に適用されるように、前者の場合、摩耗センサ導電体は摩耗面の導電性材料から絶縁されている。いずれの場合においても、本発明の摩耗センサ導電体は、摩耗面下、摩耗面内、基板内、または基板と摩耗面との間の材料層内に配置される。
【0016】
誘電材料が破壊され、摩耗センサ導電体が摩耗対向面によって短絡されると、導電体に接続される摩耗表示器が給電される。摩耗表示器は、導電体が開状態にあるときには給電されない。
【0017】
各摩耗センサ導電体は、被覆または非被覆基板材料上または当該材料内、材料層上または材料層内、もしくは摩耗層材料内に配置される。例えば、摩耗センサ導電体は、材料に形成された溝に配置される。基板や摩耗層の材料は上述のとおり導電性または絶縁性であるが、摩耗対向面の材料は導電性であり(もしくは導電性領域からなる)、導電体を短絡させ、摩耗表示器を活性化させる。
【0018】
図1は、誘電性基板10と、基板10の上面10A上に形成された摩耗センサの2つの素子である平時開近接摩耗センサ導電体12,14の断面図である。誘電摩耗面層16(本摩耗面層は耐摩耗被覆層とも呼ぶ)は、上面10Aおよび導電体12,14上に形成される。以下で詳述するように摩耗対向面(不図示)は、基板10の動作中に摩耗面16を摩耗させ、導電体12,14を短絡させて、外部回路を閉じ摩耗表示器を活性化させる。
【0019】
他の実施形態によれば、導電体12,14は、上部摩耗面16Aと下部摩耗面16Bとの間において摩耗面16に配置される。
図2参照。さらに他の実施形態によれば、導電体12,14は、基板10の上面10Aと摩耗面16の下部摩耗面16Bとの間に配置される材料層の中、上または下に配置される。
【0020】
図3は、非導電性基板10内部に埋め込まれた摩耗センサ導電体12,14を図示している。面10Aが摩耗対向面により摩耗して導電体が露出すると、摩耗対向面が導電体12,14を相互接続または短絡させて、以下で説明するように、摩耗表示器を活性化させる。
【0021】
図4は、本発明に係る導電性基板上または該基板内に平時開回路摩耗センサ導電体を組み入れる処理工程を示す一連の図の最初である。
図4は、導電性基板30の露出面30Aまたは基板を覆う導電性被覆を図示する。露出摩耗面30Aは基板の動作中に摩耗し、したがって摩耗センサ導電体は、露出面30A上に形成されるか、または露出面30A内に埋め込まれ、好ましくは導電性基板から絶縁される。
【0022】
図5に示すように、誘電材料領域32が露出面30A上に形成される。一実施形態によれば、誘電領域32の厚さは約1〜10ミル(mil)である。
図8の断面図も参照されたい。
【0023】
2つの摩耗センサ導電体40,42を備える摩耗センサ38(
図6参照)が誘電材料領域32の上面32A上に形成される。一実施形態によれば、導電体40,42を形成する材料の厚さは、それぞれ約1〜6ミルである。
【0024】
誘電層46(摩耗面層または摩耗被覆の役割を果たす)が摩耗センサ導電体40,42上に形成され、上面32Aの露出領域上に全体的または部分的に形成されている。
図7および
図8参照。誘電層46の厚さは、誘電層材料の耐久性、摩耗対向面の摩耗特性、動作時に誘電層46と摩耗対向面との間で発生する接触力量、に応じて選択される。摩耗面層46が所望の厚さとなるように、摩耗面層46の材料は(例えば層46を削って)除去できることが好ましい。
【0025】
図7に示すように、誘電層46は、各導電体の領域40A,42Aを覆い、領域40B,42Bは露出させて、後述するように、追加の摩耗センサ部品を接続する接続領域を形成する。
【0026】
導電体40,42の端領域40C,42Cは、誘電材料領域32の端領域近傍で終端するように
図7に図示しているが、他の実施形態によれば、これら導電体は、接触し得る基板導電性材料のいずれからも適切に絶縁されれば、基板30の端領域まで延長される。これら実施形態の場合、その導電体は、摩耗センサ38の境界を越えて延伸するように検討してもよい。
【0027】
図9〜
図11は、本発明の摩耗センサの動作を図示している。
図9は、摩耗センサ38および基板30を図示する。摩耗が発生する前は、誘電層46(摩耗面層または摩耗被覆の役割も果たすことが可能)は損傷していない。
【0028】
図10は、基板30に対する導電性摩耗対向面50の位置と、矢印52が示す摩耗動作の方向を図示している。円筒状の摩耗対向面を図示したが、円筒や平面など、摩耗対向面はどのような形状でもよく、当例に限定されない。必要なのは、動作中に基板30と摩耗対向面50が線または平面に沿って接触することのみである。球は、摩耗センサ導電体に接触して相互接続できない場合があり得るため、平面に接触する球などの点摩耗接触は、本発明の所望の機能を提供できない場合がある。線接触または面接触のインタフェースであれば、摩耗対向面50が導電体40,42に同時に接触できる(そして相互に短絡させることができる)。
【0029】
誘電摩耗面層46が最後まで摩耗すると(
図11および
図12参照)、各摩耗センサ導電体40,42の領域40D,42Dが露出して、同時に導電性摩耗対向面50と接触する。この動作によって、電源70および摩耗表示器74を含む回路が閉成する。給電された摩耗表示器74は、誘電摩耗面層46の摩耗が摩耗センサ導電体40,42の深さまで到達したことを警告する。
図11に示すように、電源70および摩耗表示器74とつながる導電体68,69が、各導電体40,42の領域40B,42Bに接続される。
【0030】
他の実施形態においては、導電体68,69が不要である。すなわち、無線送受信装置が領域40B,42Bに接続され、摩耗導電体40,42が摩耗対向面によって短絡させられたときに無線信号を送信する。この信号を、摩耗表示器を活性化させる外部受信機によって受信する。
【0031】
基板30の材料には、上述のように誘電体や金属、あるいは、セラミックやセラミックマトリックス複合材料など他の材料を使用可能である。当分野で既知なように、これらの基板材料上に摩耗センサ導電体を形成する適切な積層処理は適宜選択することができる。
【0032】
導電性層104(
図13参照)が基板30上に形成される場合、摩耗センサ導電体40,42は、誘電層106内(すなわち、誘電層106の溝)か、あるいは、誘電層106上(
図13に図示のとおり)に形成され、摩耗センサ導電体40,42を導電性層104から絶縁する。摩耗面46は、摩耗センサ導電体40,42上に形成される。上述の実施形態におけるように、摩耗面46は摩耗対向面(
図13に不図示)との接触によって摩耗する。
【0033】
図14は、基板130および摩耗面134の両方が導電性材料からなる場合を図示している。誘電層138および誘電層140は、基板130と摩耗面134との間に配置される。摩耗センサ導電体40,42は、誘電層138上で誘電層140内に配置される。誘電層138は、導電体40,42を導電性基板130から絶縁する。誘電層140は、導電体40,42を導電性摩耗面134から絶縁する。当該他の実施形態において、摩耗対向面は、摩耗面134と誘電層140を摩耗させ、摩耗センサ導電体40,42との間で回路が閉成されて、摩耗警告が発せられる。
【0034】
代替の実施形態においては、摩耗センサ導電体が誘電層138に形成される溝内に配置される。
【0035】
本発明の摩耗センサ導電体は、基板上または耐摩耗層(例えば、金属、セラミック、またはサーメット皮膜)や他の材料層内に、例えば、plasma spraying、electron beam physical vapor deposition、chemical vapor deposition、pulsed laser deposition、mini-plasma、cold spray、direct-write、mini high velocity oxy-fuel、またはsolution plasma sprayingなどの薄膜蒸着工程を用いて形成することができる。
【0036】
本発明のある用途によれば、基板が固定され、摩耗対向面がその基板と接触しながら動く。摩耗対向面が静止基板内に配置された2つの摩耗センサ導電体間の導電性経路を閉じるので、動作する摩耗対向面内に電気回路(付随する導電体を含む)を作製して、該回路を外部電気装置(例えば電源や摩耗表示器など)に接続する必要はない。このように、本発明は、移動もしくは回転している要素(ブラシやスリップリングなど)に対して電気的に接続するために典型的に用いられる要素を不要とする。摩耗センサ導電体に関係するすべての取り付け作業およびメンテナンス作業は静止基板上で行われる。
【0037】
本欄で説明した様々なセンサ導電体は以下のように形成することができる。
1. Al
2O
3などの絶縁セラミックのように、基板が高い誘電定数を有する場合、センサ導電体は、
図1に図示したように基板上に直接形成することができる。
2. 基板が十分に高い誘電定数を示さない場合、Al
2O
3、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、MgAl
2O
4といった高い誘電/絶縁特性を有する酸化物セラミックスなどの材料を用い、電気絶縁層または誘電層が基板表面上に形成される。
3. 工程1.または2.の後、センサ導電体が、基板および対向面の動作温度において高い耐酸化性を有する導電材料を用いて形成される。例えば、Ni−Crは導電性で、およそ500°F(260℃)までの動作に適している。したがって、この材料は、500°F閾値以下で動作するガスタービン燃焼器スプリングクリップアセンブリで使用するのに適している。この場合、センサ導電体の厚さは一例としておよそ10〜50ミクロンの範囲内で、一実施形態で好ましい厚さは10〜25ミクロンである。この摩耗センサ導電体は、導電性面の減法エッチング(subtractive etching)、または、例えば溶射(spraying)による導電性材料の適用によって、形成することができる。
4. 任意に、Cr
2C
3−NiCrまたはWC−Coの合金、あるいは、Stellite6BまたはT800として知られる市販の製品などの摩耗被覆を、センサ導電体上に形成する。
【0038】
他の実施形態においては、溝(trenchまたはgroove)160が、摩耗センサ導電体170,172を収容するため、摩耗基板162に形成される。
図15参照。摩耗基板162は摩耗面174をさらに含む。溝160の幅W1は、摩耗面174の幅W2よりも小さく、摩耗基板162および摩耗面174の摩耗動作への影響を最小限に抑える。
【0039】
摩耗基板162に導電性材料が用いられている場合、溝下底領域160Aおよび溝側壁領域160B,160Cは、摩耗センサ導電体170,172を相互に絶縁するとともに導電性基板162から絶縁する電気絶縁材料166を含む。
【0040】
図16において、導電性摩耗被覆層180が摩耗基板162上にあり、摩耗被覆層180の露出面が摩耗面174を形成する。溝160は、図示するように、摩耗被覆層180内に形成される。この実施形態において、摩耗被覆層180の摩耗動作への影響を最小限とするために、溝160の深さD1は摩耗被覆層180の厚さT1より小さい。
【0041】
図15および
図16の実施形態において、溝160を形成した後、thermal spray、solution spray、direct-write、vapor deposition、またはslurry castingなどの当業者にとって既知のいずれかの手段によって、誘電材料が溝160内に形成され、底面160Aと側壁面160B,160Cを覆う。導電配線が摩耗センサ導電体170,172として使用するために形成され、追加の誘電材料がその導電配線上に形成される。誘電材料の露出面は、摩耗面174と平らになるように加工される。
【0042】
図15および
図16の実施形態において、摩耗基板162や摩耗被覆層180が導電性をもたない場合、材料166に電気絶縁材料を使用する必要はない。
【0043】
さらに他の実施形態において、摩耗センサ170,172は、
図17に示すように、基板162の分離した溝190,192に形成される。
【0044】
さらに他の実施形態において、摩耗センサ170,172は、
図18に示すように、摩耗被覆層180の分離した溝193,194に形成される。
【0045】
さらに他の実施形態において、摩耗センサは2対の摩耗センサ導電体を備え、各導電体対が、被覆表面または基板表面から下の異なる深さに形成される。
図19を参照されたい。
【0046】
第1または最上部の導電体対202,204の上の材料層200が突破されると、対向面が第1の導電体対202,204を短絡させ、もしくは相互接続し、電気回路が閉じて第1の摩耗表示器を動作させ、材料層200が深さd1まで摩耗したことが示される。材料層208の上面208Aが露出した状態となる。摩耗対向面が第1の導電体対202,204を摩耗させ、そして第2の導電体対222,224の上の材料層208の部分を摩耗させ、摩耗対向面が導電体222,224を相互接続すると、異なる電気経路が閉成される。この動作によって、第2の摩耗表示器が給電され、材料層208が深さd2まで摩耗したことが示される。追加の導電体を異なる深さで配置可能であり、摩耗の深さの段階的な警告を可能とする。材料摩耗の深さに応じて様々なメンテナンス作業が実行可能である。
【0047】
2つの接触または近接部品が振動し、その振動が当該2つの部品を接触させ、部品の一方または両方を摩耗させる場合にも、本発明の教示を使用することができる。
【0048】
本発明の教示は、通常の動作時に2つの部品が近接した関係にあるシステムにおいても使用可能である。動作異常が2つの部品を接触させ、それによって動作上の障害が発生する。本発明の導電性センサは、それらの部品のうちの第1の部品に形成され、第2の部品の接触を受けたときに各導電性センサが短絡させられて、警報装置が作動する。この用途において、導電性センサは、
図15および
図16に示すように1つの溝に形成するか、もしくは
図17および
図18に示すように2つの溝に形成することが好ましい。導電性センサの上面がすり減るのであれば、追加の導電性センサ材料を使用して接触警報を発してもよい。
【0049】
さらに他の実施形態においては、摩耗導電体センサの向きを摩耗対向面が動く方向に合わせ、導電体センサの材料のスミアリング(smearing)を防ぐこともできる。このスミアリングは、導電体間の隙間をブリッジし、各導電体を短絡させて摩耗対向面の短絡機能を要無しにし得る。
【0050】
いくつかの材料層の厚さ寸法を本明細書において記載した。しかしながら、そのような寸法は本発明の機能において重要ではないことに留意を要する。摩耗センサ導電体(例えば導電体40,42)の厚さも、本発明の機能において同様に重要ではない。ただし、短絡の持続時間(導電体が摩耗によって完全に破壊される前の導電体の厚さによって決定される)は、短絡を示して摩耗面が摩耗したことを警告できるのに十分な長さが必要である。
【0051】
各種の実施形態に係る上述の様々な材料層は、遮熱層、基板層、誘電層、摩耗被覆層(耐摩耗被覆または摩耗面)、導電層、セラミック層など、当業界で既知の層を含み得る。各層の材料は、用途や近接材料、摩耗対向面の予測される摩耗の影響に基づいて選択することができる。また、摩耗面の下の材料層は、用途や近接層材料に基づいて選択される。
【0052】
本明細書で使用される用語「開」や「短絡」は、電気回路に適用される場合、各自の無限抵抗および零点抵抗を必要とするものではない。これらの用語は、電流があまり流れない非常に高い抵抗(例えばおよそ数メガオームより高い)、またはかなりの量の電流が流れる非常に低い抵抗(およそ100オームより低い)を示唆することを意図するものである。ある特定の用途における実際の抵抗値および電流値は、導電体、基板、摩耗対向面を含む材料と、電気回路の構成とによって決まる。また、本明細書で使用されている用語「相互接続」は、電流が流れることが可能な2つの導電体間の接続を必要とする。相互接続は短絡回路を必ずしも必要としない。
【0053】
本発明の用途のうちには、周囲の隔壁を摩耗させる回転タービン翼を有するガスタービンが含まれる。本発明の摩耗センサを隔壁を含む材料層に搭載すると、隔壁が翼によって摩耗センサの深さまで摩耗した場合に摩耗警告が与えられる。
【0054】
本発明の様々な実施形態を図示し、本明細書において説明したが、これら実施形態は例示目的でのみ提示されたものである。本願に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形、変更、置換が可能である。すなわち、本発明は、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲によってのみ限定されることが意図されている。