特許第5774049号(P5774049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774049キャビコール類縁体化合物およびMAPキナーゼシグナル伝達阻害薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774049
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】キャビコール類縁体化合物およびMAPキナーゼシグナル伝達阻害薬
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/21 20060101AFI20150813BHJP
   C07C 69/28 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C07C69/21CSP
   C07C69/28
   A61K31/222
   A61P35/04
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P29/00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-96251(P2013-96251)
(22)【出願日】2013年5月1日
(62)【分割の表示】特願2008-33133(P2008-33133)の分割
【原出願日】2008年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-189441(P2013-189441A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2013年5月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304026180
【氏名又は名称】株式会社ダイアベティム
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 麗子
(72)【発明者】
【氏名】萬瀬 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】村岡 修
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】安原 智久
【審査官】 江間 正起
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5309591(JP,B2)
【文献】 Akira Murakami et al.,Journal of Nutrition,2005年,Vol.135, No.12,p.2987S-2992S
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/21
A61K 31/222
A61P 29/00−29/02
A61P 35/00−35/04
A61P 43/00
C07C 69/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピル及び酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリルから選ばれることを特徴とするキャビコール類縁体化合物。
【請求項2】
下記の構造式(1−3):
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ、アルコキシ基とカルボニル基の合計の炭素数が2〜5のアルコキシカルボニルオキシ基、アルキル基とカルボニル基の合計の炭素数が2〜5のアルキルカルボニルオキシ基又はフェニルカルボニルオキシ基を表わし、
は、アセチル基が置換してもよいフェニル基を表すか、又は、水酸基が置換していてもよいフェニル基が置換した飽和もしくは不飽和の炭素数2のアルキル基を表し、
nは0又は1を表わすが、ただし
が、水酸基が置換していてもよいフェニル基が置換した飽和もしくは不飽和の炭素数2のアルキル基であり、かつ
及びRのいずれもが、アルキルカルボニルオキシ基及びフェニルカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる基であるときは、
nは0を表わす)で表わされるキャビコール類縁体化合物を含有することを特徴とするMAPキナーゼシグナル伝達阻害薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MAPキナーゼシグナル伝達阻害薬として用いられる新規なキャビコール類縁体化合物に関する。本発明は、さらに、キャビコール類縁体化合物を含有するMAPキナーゼシグナル伝達阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
がんには様々な抗がん剤が用いられており、またリウマチなどの炎症性疾患にはステロイド剤や免疫抑制剤が用いられている。
【0003】
これらの抗がん剤やステロイド剤、免疫抑制剤は、作用は強力であるが、副作用が非常に強い問題がある。これに対し、生体内で特定のシグナル伝達を遮断する薬剤は、強力な作用が期待できる反面、副作用も少ないので、その重要性が高まっている。
【0004】
MAPキナーゼ経路は細胞増殖のみならず紫外線や感染などのストレス応答、あるいは免疫、血管新生、アポトーシスなどの生体機能に深く関わっている。したがってMAPキナーゼの過剰な活性化は発癌、癌の転移や炎症、免疫異常、感染といった病態の発症にも深く関与している。すなわち、MAPキナーゼシグナルは抗がん薬や抗炎症薬、血管新生阻害薬、がんの転移治療薬など細胞増殖の異常によって引き起こされる疾患の治療薬創製のターゲットとして魅力的なシグナル伝達経路である。そこで、MAPキナーゼシグナル伝達阻害薬の開発も期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、MAPキナーゼシグナル遮断作用を有し、がんや炎症性疾患あるいは過剰な血管新生に伴う病態および疾患の治療薬として有用な新規な化合物を提供することを課題とする。本発明は、さらに、化合物のMAPキナーゼ遮断作用を利用したMAPキナーゼシグナル伝達阻害薬を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、下記構造式(A):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Acはアセチル基を表わす)
で表わされる1’S−1’−アセトキシキャビコールとその類縁体のMAPキナーゼシグナル遮断機構について検討を行うとともに、種々のキャビコール類縁体についてそのMAPキナーゼシグナル遮断作用を検討した結果、特定の種類のキャビコール類縁体が、強力なMAPキナーゼシグナル遮断作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、その第一の態様として、下記の構造式(1):
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R及びRは、それぞれ、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基)又はアルコキシカルボニルオキシ基を表わし、Rは、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表わし、nは、0又は1を表わす)で表される新規な化合物である、
プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピル、及び酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリルから選ばれることを特徴とするキャビコール類縁体化合物を提供する(請求項1)。
【0012】
これらのキャビコール類縁体化合物は、強力なMAPキナーゼシグナル伝達阻害作用を有し、抗がん剤、抗炎症剤、抗血管新生阻害剤としてがんや炎症性疾患などの治療に優れた効果を奏する化合物である。
【0013】
前記の構造式(1)で表わされる化合物は、以下に示す方法により製造することができる。
【0014】
すなわち、4−ヒドロキシベンズアルデヒドを、グリニャール試薬又は有機リチウム試薬等と反応させた後、水酸基をアシル化、アルコキシカルボニル化する方法により、下記の構造式(1−1):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R及びRは、それぞれ、アルキルカルボニルオキシ基又はアルコキシカルボニルオキシ基を表わし、nは0又は1を表わし、Rは、飽和もしくは不飽和のアルキル基を表わす)で表わされるキャビコール類縁体化合物を製造することができる。
【0017】
この製造方法においては、先ず、4−ヒドロキシベンズアルデヒドとグリニャール試薬又は有機リチウムを、以下に示すように反応をさせて、下記の構造式(3)で表されるジオール化合物を得る。この反応は、通常のグリニャール反応や有機リチウムとの反応と同様な条件で行うことができ、例えば、金属ナトリウム等で完全に脱水(乾燥)されたエーテル類、例えばエチルエーテルやテトラヒドロフラン中で行われる。
【0018】
【化4】

【0019】
そしてこのようにして得られたジオール化合物のフェノール性水酸基を、以下に示す反応でアシル化又はアルコキシカルボニル化することにより、構造式(4)で示されるアルコール化合物を得る。アシル化又はアルコキシカルボニル化は、通常のフェノール性水酸基のアシル化反応又はアルコキシカルボニル化反応と同様の条件で行うことができる。例えば、アシル化反応は無水酢酸や酸ハライド等を使用して行われる。又、アルコキシカルボニル化反応は、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
【0020】
【化5】
【0021】
そしてこのようにして得られたアルコール化合物のアルコール性水酸基を、以下に示す反応でアシル化(アルキルカルボニル化)又はアルコキシカルボニル化することにより、構造式(1)で示され、Rが、飽和もしくは不飽和のアルキル基であるキャビコール類縁体化合物を得る。このアシル化又はアルコキシカルボニル化も、通常のアルコール性水酸基のアシル化反応又はアルコキシカルボニル化反応と同様の条件で行うことができ、例えば、アシル化反応は無水酢酸や酸ハライド等を使用して行われる。又、アルコキシカルボニル化反応は、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
【0022】
【化6】
【0023】
構造式(1)と同じ構造式で表されるが、nが0であって、Rがフェニル基、p−アシルオキシフェニル基又はp−アルコキシカルボニルオキシフェニル基である化合物、すなわち下記の構造式(1−2):
【0024】
【化7】
【0025】
(式中、R及びRは、それぞれ、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニルオキシ基を表わし、Rは、水素、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニルオキシ基を表す)で表されるキャビコール類縁体化合物は、4−ヒドロキシベンゾフェノン又は4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンのフェノール性水酸基を保護基で保護した後、カルボニル基を還元し、その後、前記保護基を取り除いてジオール化合物又はトリオール化合物を得、このジオール化合物又はトリオール化合物に、アシル化又はアルコキシカルボニル化を行う方法により得ることができる。
【0026】
4−ヒドロキシベンゾフェノン又は4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンのフェノール性水酸基の適切な保護基としてはシリル基が例示される。
【0027】
例えば、当該保護基としてtert−ブチルジメチルシリル基を用いた場合は、以下に示すシリル化反応が行われ、4−ヒドロキシベンゾフェノンからは、下記構造式(5)の化合物であってRがHで表されるモノシリル体が、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンからはRがtert−ブチルジメチルシリルオキシ基で表されるジシリル体が得られる。このシリル化反応は、通常の水酸基のシリル化反応と同様の条件で行うことができる。
【0028】
【化8】
【0029】
水酸基のシリル化後、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)等の還元剤を使用して、4−ヒドロキシベンゾフェノン又は4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンのカルボニル基を還元し、その後TBS等の保護基が取り除かれる(脱保護)。例えば脱TBS反応には、フッ化テトラブチルアンモニウム等が用いられる。保護基がTBSの場合、この還元反応及び脱保護基反応は以下の式で示され、4−ヒドロキシベンゾフェノンからは、下記構造式(6)で表されRがHであるジオール体が、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンからはRがOHであるトリオール体が得られる。この還元反応及び脱保護基反応とも、通常のカルボニル基の還元や脱保護基反応と同様の条件で行うことができる。
【0030】
【化9】
【0031】
そしてこのようにして得られたジオール化合物あるいはトリオール化合物を、以下に示す反応でアシル化、もしくはアルコキシカルボニル化することにより、構造式(7)で示されるアルコール化合物を得る。アシル化若しくはアルコキシカルボニル化も通常のフェノール性水酸基のアシル化反応と同様の条件で行うことができ、例えば、アシル化反応は無水酢酸や酸ハライド等を使用して行われ、又、アルコキシカルボニル化反応は、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
【0032】
【化10】
【0033】
そしてこのようにして得られたアルコール化合物を、以下に示す反応でアシル化、若しくはアルコキシカルボニル化することにより、構造式(1)と同じ構造式で表されるが、nが0であって、Rがフェニル基、p−アシルオキシフェニル基又はp−アルコキシカルボニルオキシフェニル基であるキャビコール類縁体化合物を得る。アシル化若しくはアルコキシカルボニル化も通常のアルコール性水酸基のアシル化反応と同様の条件で行うことができ、例えば、アシル化反応は無水酢酸や酸ハライド等を使用して行われ、又、アルコキシカルボニル化反応は、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
【0034】
【化11】
【0035】
下記の構造式(1−3):
【0036】
【化12】
【0037】
(式中、R及びRは、それぞれ、炭素数2〜5のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基若しくはフェニルカルボニルオキシ基を表わし、nは0又は1を表わし、Rは、飽和もしくは不飽和の炭素数2のアルキル基、アセチル基が置換してもよいフェニル基、又は水酸基が置換していてもよいフェニル基が置換した飽和もしくは不飽和の炭素数2のアルキル基を表す)で表わされるキャビコール類縁体化合物は、優れたMAPキナーゼシグナル伝達阻害作用を有し、抗がん剤、抗炎症剤、抗血管新生阻害剤として、がんや炎症性疾患治療に好適に用いられる。本発明は、この構造式(1−3)で表わされるキャビコール類縁体化合物を含有することを特徴とするMAPキナーゼシグナル伝達阻害剤も提供するものである(請求項2)。
【0038】
構造式(1−3)で表わされるキャビコール類縁体化合物には、プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピル、及び酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリルも含まれるが、これらは、前記の方法により製造することができる。又、構造式(1−3)で表わされるキャビコール類縁体化合物の中で、プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピル、及び酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリル以外の化合物は、特開2007−230949号に記載の方法等により製造することができる。
【0039】
又、構造式(1−3)で表わされるキャビコール類縁体化合物は、例えば、注射等により投与することにより、MAPキナーゼシグナル伝達阻害作用を示し、抗がん剤、抗炎症剤、抗血管新生阻害剤として使用することができる。
【発明の効果】
【0040】
プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピル及び酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリルから選ばれるキャビコール類縁体化合物は、優れたMAPキナーゼシグナル伝達阻害作用を有する。
【0041】
又、構造式(1−3)で表わされるキャビコール類縁体化合物を含有することを特徴とする本発明のMAPキナーゼシグナル伝達阻害剤は、抗がん剤、抗炎症剤、抗血管新生阻害剤として、がんや炎症性疾患治療に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に本発明を実施するためのより具体的な形態を、実施例により説明する。なお、実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態へ変更することができる。
【0043】
合成例1
4−ヒドロキシベンズアルデヒドより、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメタノール(4-(hydroxyphenylmethyl)phenylmethanol)の合成
【0044】
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(6.1g、50mmol)と乾燥テトラヒドロフラン(100mL)の混合物に、アルゴン雰囲気下、フェニルリチウムの約19%ジブチルエーテル溶液(50mL、100mmol)を、−78℃にて30分かけて滴下し10分撹拌する。飽和塩化アンモニア水溶液を加え、酢酸エチル(100mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒留去する。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1)にて精製し、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメタノール(15.5g、99%)を得た。
【0045】
得られた化合物は無色結晶であり、融点、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より得られた化合物は、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメタノールであると確認された。
【0046】
mp: 163〜165℃
IR(KBr): 3402cm−1
H−NMR(CDOD) δ: 5.69 (1H, s), 6.74 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.16 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.20-7.36 (5H, m)
13C−NMR(CDOD) δ: 76.6 (d), 116.0 (d), 127.5 (d), 128.0 (d), 129.1 (d x 2), 136.8 (s), 146.0 (s), 157.6 (s)
EI−MS m/z:200[M]
【0047】
合成例2
4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(4-(methoxycarbonyloxyphenylmethyl)phenyl methyl carbonate)の合成
合成例1で得られた4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメタノール(800mg、4mmol)と乾燥ピリジン(2mL)の混合物に、メチル炭酸クロリド(0.77mL、10.0mmol)を0℃にて加える。30分撹拌し、水を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。抽出液を10%塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(1.09mg、86%)を得た。
【0048】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートであると確認された。
【0049】
IR(neat): 1732cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 3.79 (3H, s), 3.89 (3H, s), 6.70, (1H, s), 7.15 (2H, d, J = 8.9 Hz), 7.28.10-7.39 (7H, m).
13C−NMR(CDCl)δ: 54.8 (q), 55.2 (q), 79.9 (q), 121.0 (d), 126.8 (d),128.10 (d), 128.14 (d), 128.4 (d), 137.4 (s), 139.2 (s), 150.7 (s), 153.9 (s), 154.9 (s).
FAB−MS m/z:316[M]+
HR−FAB−MS m/z:316.0943(C1716,理論値:316.0947)
【0050】
参考例1
フェニルリチウムの代わりに、4‐cis‐オクタ‐4,7‐ジエニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸を用いた以外は合成例2と同様にして、酢酸4‐cis‐1‐(4‐アセトキシフェニル)オクタ‐4,7‐ジエニルを得た。
【0051】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は酢酸4‐cis‐1‐(4‐アセトキシフェニル)オクタ‐4,7‐ジエニルであると確認された。
【0052】
IR(neat): 1740, 1360cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.79-2.22 (4H, m), 2.08 (3H, s), 2.30 (3H, s), 4.64 (2H, t, J = 6.4 Hz), 4.81-5.04 (2H, m), 5.45 (1H, m), 5.85 (2H, m), 7.06 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.6 Hz).
13C−NMR(CDCl)δ: 21.2 (q), 21.3 (q), 29.7 (t), 31.2 (t), 35.4 (t), 74.9 (d), 114.9 (t), 121.7 (d), 127.4 (d), 127.8 (d), 126.8 (d), 128.6 (d), 136.7 (t), 138.1, (s), 150.1 (s), 169.1 (s), 170.2 (s).
FAB−MS m/z:302[M]+
HR−FAB−MS m/z:302.1509(C18224,理論値:302.1518)
【0053】
参考例2
フェニルリチウムの代わりに、ビニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸、イソ酪産クロリドを順次用いた以外は合成例2と同様にして、イソ酪酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルを得た。
【0054】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物はイソ酪酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルであると確認された。
【0055】
IR(neat): 1765, 1735cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.16 (3H, t, J = 7.6, 7.6 Hz), 2.34 (2H, q, J = 7.6, 7.6, 7.6 Hz), 2.35-2.70 (2H, m), 5.03-5.10 (2H, m), 5.66 (1H, ddt, J = 13.8, 10.3, 6.8, 6.8 Hz), 5.80 (1H, dd, J = 7.6, 5.9 Hz), 7.06 (2H, J = 8.4 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.4 Hz).
13C−NMR(CDCl)δ: 9.1 (q), 21.1 (q), 27.7 (t), 40.7 (t), 74.2 (d), 118.1 (t), 121.5 (d), 127.7 (d), 133.7 (d), 137.8 (s), 150.2 (s), 169.4 (s), 173.5 (s).
FAB−MS m/z:276[M]+
HR−FAB−MS m/z:276.1352(C16204,理論値:276.1362)
【0056】
参考例3
フェニルリチウムの代わりに、ビニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸、ピバリン酸クロリドを順次用いた以外は合成例2と同様にして、2,2‐ジメチルプロピオン酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルを得た。
【0057】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は2,2‐ジメチルプロピオン酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルであると確認された。
【0058】
IR(neat): 1766, 1732cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.20 (9H, s), 2.29 (3H, s), 2.42-2.68 (2H, m), 5.67 (1H, ddt, J = 17.0, 10.3, 6.8, 6.8 Hz), 5.78 (1H, dd, J = 7.6, 5.6 Hz), 7.05 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.32 (2H, d, J = 8.6 Hz).
13C−NMR(CDCl)δ: 21.1 (q), 27.0 (q), 41.1 (s), 74.0 (d), 118.1 (t), 121.5 (d), 127.3 (d), 133.2 (d), 138.1 (d), 141.1 (s), 150.1 (s), 166.5 (s), 169.4 (s).
FAB−MS m/z:290[M]+
HR−FAB−MS m/z:290.1502(C17224,理論値:290.1518)
【0059】
参考例4
フェニルリチウムの代わりに、ビニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸、安息香酸クロリドを順次用いた以外は合成例2と同様にして、安息香酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルを得た。
【0060】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は安息香酸1‐(4‐アセトキシフェニル)ブト‐3‐エニルであると確認された。
【0061】
IR(neat): 1767, 1716cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 12.33 (3H, s), 2.62-2.85 (2H, m), 5.05-5.16 (2H, m), 5.77 (1H, ddt, J = 17.0, 10.3, 6.8, 6.8 Hz), 6.05 (1H, dd, J = 7.6, 5.9 Hz), 7.08 (2H, d, J = 11.1 Hz), 7.35 (7H, m), 8.05 (2H, d, J = 8.6 Hz).
13C−NMR(CDCl)δ: 21.1 (q), 40.9 (t), 75.1 (d), 118.4 (t), 121.5 (d), 127.6 (d), 128.9 (d), 129.6 (d), 130.2 (s), 132.9 (d), 133.0 (d), 137.7 (d), 150.3 (s), 165.6 (s), 169.3 (s).
FAB−MS m/z:311[M+H]+
HR−FAB−MS m/z:311.1246(C19194,理論値:311.1283)
【0062】
参考例5
フェニルリチウムの代わりに、n‐プロピルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸を用いた以外は合成例2と同様にして、酢酸 1‐(4‐アセトキシフェニル)ブチルを得た。
【0063】
実施例1
フェニルリチウムの代わりに、エチルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりにプロピオン酸クロリドを用いた以外は合成例2と同様にして、プロピオン酸1‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)プロピルを得た。
【0064】
参考例6
フェニルリチウムの代わりに、ビニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸を用いた以外は合成例2と同様にして、酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)アリルを得た。
【0065】
実施例2
フェニルリチウムの代わりに、3,4‐ビス(ベンジルオキシ)フェニルビニルマグネシウムブロマイドを用いた以外は合成例1と同様に、又、メチル炭酸クロリドの変わりに無水酢酸を用いた以外は合成例2と同様にして、さらに、Pd‐C触媒存在下、エタノール中、水素雰囲気下でベンジル基を脱保護することにより、酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐3‐(3,4‐ジハイドロキシフェニル)アリルを得た。
【0066】
合成例3
特開2007−230949号の実施例2の方法で、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを得た。
【0067】
合成例4
特開2007−230949号の実施例3の方法で、酢酸ビス‐(4‐アセトキシフェニル)メチルを得た。
【0068】
合成例5
特開2007−230949号の実施例4の方法で、酢酸1‐(4‐アセトキシフェニル)‐2‐フェニルエチルを得た。
【0069】
合成例6
無水酢酸の代わりに塩化プロピオニルを、メチル炭酸クロリドの代わりに塩化プロピオニルを用いた以外は、特開2007−230949号の実施例1と同様な方法によりプロピオン酸フェニル‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)メチルを得た。
【0070】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物はプロピオン酸フェニル‐(4‐プロピオニルオキシフェニル)メチルであると確認された。
【0071】
IR(neat): 1740cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.17 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.25, (3H, t, J = 7.6 Hz), 2.44 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.57 (2H, t, J = 7.6 Hz), 6.89, (1H, s), 7.45 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.26-7.35 (7H, m).
13C−NMR(CDCl)δ: 8.9 (q), 27.6 (t), 27.7 (t), 75.9 (d), 121.5 (d), 126.9 (d), 127.8 (d), 128.2 (d), 128.4 (d), 137.7 (s), 140.0 (d), 150.2 (s), 172.7 (s), 173.1 (s).
FAB−MS m/z:313[M+H]+
HR−FAB−MS m/z:312.1360(C19204,理論値:312.1362)
【0072】
合成例7
メチル炭酸クロリドの代わりにイソ酪酸クロリドを用いた以外は、特開2007−230949号の実施例1と同様な方法により、イソ酪酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルを得た。
【0073】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物はイソ酪酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルであると確認された。
【0074】
IR(neat): 1759, 1736cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.20 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.28, (3H, d, J = 6.8 Hz), 2.65 (1H, spt., J = 7.0 Hz), 2.77 (1H, spt., J = 6.8 Hz), 6.87, (1H, s), 7.04 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.22-7.35 (7H, m).
13C−NMR(CDCl)δ: 18.8 (q), 34.0 (d), 34.1 (d), 75.8 (d), 121.4 (d), 126.8 (d), 127.9 (d), 128.1 (d), 128.4 (d), 137.7 (s), 140.1 (d), 150.3 (s), 172.7 (s), 175.3 (s), 175.7, (s).
FAB−MS m/z:340[M+H]+
HR−FAB−MS m/z:340.1687(C21244,理論値:340.1675)
【0075】
合成例8
メチル炭酸クロリドの代わりにピバルクロリドを用いた以外は、特開2007−230949号の実施例1と同様な方法により、2,2‐ジメチルプロピオン酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルを得た。
【0076】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は2,2‐ジメチルプロピオン酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルであると確認された。
【0077】
IR(neat): 1732 1768cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.24 (9H, s), 2.25 (3H, s), 6.83 (1H, s), 7.05 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.23-7.35 (7H, m).
13C−NMR(CDCl)δ: 20.9 (q), 27.0 (q), 38.8 (s), 75.9 (d), 121.5 (d), 126.8 (d), 127.8 (d),128.0, (d), 128.4 (d), 150.1 (s), 169.2(s), 177.1 (s).
EI−MS m/z:326[M]+
HR−EI−MS m/z:326.1530(C20224,理論値:326.1518)
【0078】
合成例9
無水酢酸の代わりにメチル炭酸クロリドを用いた以外は、特開2007−230949号の実施例3と同様な方法により、ビス‐(4−メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)メチルカーボネートを得た。
【0079】
得られた化合物は無色結晶であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物はビス‐(4−メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)メチルカーボネートであると確認された。
【0080】
mp: 84-86 ℃
IR(neat): 1743, 1720cm−1
1H−NMR(CDCl3)δ: 3.15 (3H, s), 3.29 (6H, s), 6.88 (1H, s), 7.06 (4H, d, J = 8.4Hz), 7.33 (4H, d, J = 8.4 Hz).
13C−NMR(CDCl3)δ: 41.1 (q), 41.2 (q), 75.6 (d), 121.6 (d), 128.3 (d), 137.4 (s), 150.3 (s), 169.3 (s), 170 (s).
FAB−MS m/z:391[M+H]+
HR−FSB−MS m/z:391.1025(C19H19O9,理論値:391.1029)
【0081】
合成例10
メチル炭酸クロリドの代わりに塩化プロピオニルを用いた以外は、特開2007−230949号の実施例1と同様な方法により、プロピオン酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルを得た。
【0082】
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物はプロピオン酸(4‐アセトキシフェニル)フェニルメチルであると確認された。
【0083】
IR(neat): 2982, 1740cm−1
H−NMR(CDCl)δ: 1.17 (3H, t, J = 7.6 Hz), 2.28 (3H, s), 2.44 (2H, q, J = 7.6 Hz), 6.89 (1H, s), 7.05 (2H, d, J = 8.7 Hz), 7.24-7.35 (7H, m).
13C−NMR(CDCl)δ: 9.0, 21.1, 27.8, 76.0, 121.6, 127.0, 128.0, 128.3, 128.5, 137.9, 140.0, 150.2, 169.3, 173.3.
FAB−MS m/z:298[M+H]+
HR−FSB−MS m/z:298.1205(C18184,理論値:298.1183)
【0084】
実施例3 抗MAPキナーゼシグナル伝達阻害作用の検討
モデル細胞である分裂酵母カルシニューリン遺伝子ノックアウト細胞(h+ leu1 ura4-D18 ppb1::ura4+)を用い、塩化マグネシウム含有培地での生育を判定することでMAPキナーゼシグナル伝達阻害の指標とし、抗MAPキナーゼシグナル伝達阻害作用を検討した。
【0085】
分裂酵母カルシニューリン遺伝子ノックアウト細胞(h+ leu1 ura4-D18 ppb1::ura4+)を対数増殖期まで培養後(YPD液体培地)、0.11MのMgClを添加したYPD寒天培地に、カルシニューリン遺伝子ノックアウト細胞を、2.0×10cells/plateずつ播種した。plateに円形のろ紙(直径3mm)を置き、ろ紙上にDMSOに溶解させた試験化合物を5μL(20 nmol)ずつ添加した。対照として、化合物を含まないDMSO溶液もろ紙上に添加し、plateを30℃で培養した。
【0086】
3日間培養した後、細胞増殖の程度を判定した。表1にその結果を示す。ろ紙の周囲に細胞増殖が顕著に認められた場合++、軽度に細胞増殖が認められた場合+、わずかに細胞増殖が認められた場合±と判定した。化合物を含まないDMSOのみを添加した場合にはろ紙周囲の細胞増殖は認められない(判定−)。
【0087】
表1に示す結果より明らかなように、構造式(1−3)で表される化合物を加えた場合は、カルシニューリンノックアウト細胞増殖括性が示され、抗MAPキナーゼシグナル伝達阻害作用があることが示された。
【0088】
【表1】