(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ほ乳動物における疼痛状態を治療するためにオピオイド作動剤と組み合わせて使用するための組成物であって、前記組成物は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジン又は薬学的に許容されるその塩である、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を含み、
前記オピオイド作動剤が、疼痛状態を治療するために単独使用時に使用される用量よりも低用量で使用され、前記オピオイド作動剤が、モルヒネまたはオキシコドンである、
組成物。
ほ乳動物において鎮痛作用をもたらすためにオピオイド作動剤と組み合わせて使用するための組成物であって、前記組成物は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジン又は薬学的に許容されるその塩である、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を含み、
前記オピオイド作動剤が、鎮痛作用をもたらすために単独使用時に使用される用量よりも低用量で使用され、前記オピオイド作動剤が、モルヒネまたはオキシコドンである、
組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
定義
本発明の化合物及び方法を記述するときに、以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の意味を有する。さらに、本明細書では、単数形「a」、「an」及び「the」は、使用される文脈が異なる事項を明確に指示していない限り、対応する複数形を含む。
【0024】
「治療有効量」という用語は、治療を必要とする患者に投与したときに治療を実施するのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るのに必要な薬物量を意味する。例えば、疼痛治療の治療有効量は、例えば、疼痛の症候の軽減、抑制、除去若しくは防止に、又は疼痛の根本的原因の治療に必要な化合物量である。一方、「有効量」という用語は、所望の結果を得るのに十分な量を意味し、この結果が必ずしも治療結果である必要はない可能性がある。
【0025】
「有効量未満」又は同じく「有効用量未満」という用語は、治療有効量又は用量よりも少ない量又は用量を意味する。疼痛治療の文脈において、「有効用量未満」は、所与の鎮痛作用レベルを得るのに必要な用量よりも少ない用量である。
【0026】
本明細書では「治療すること」又は「治療」という用語は、ほ乳動物(特にヒト)などの患者において疾患又は(疼痛などの)病状を治療すること又はその治療を意味し、以下の1つ以上を含む:(a)疾患若しくは病状の発生防止、すなわち、患者の予防処置、(b)疾患若しくは病状の改善、すなわち、患者における疾患若しくは病状の解消若しくは軽減、(c)疾患若しくは病状の抑制、すなわち、患者における疾患若しくは病状の進行の遅延若しくは抑止、又は(d)患者における疾患若しくは病状の症候の緩和。
【0027】
例えば、「疼痛治療」という用語は、疼痛管理、疼痛緩和、疼痛発生防止、疼痛制御、疼痛改善、疼痛抑制及び/又は疼痛症候の緩和を含む。「患者」という用語は、治療又は疾患防止を必要とする、特定の疾患又は病状の疾患防止又は治療を現在受けている、ヒトなどのほ乳動物、並びに本発明の化合物がアッセイで評価又は使用されている被験体、例えば、動物モデルを含むものとする。
【0028】
本明細書では「併用療法」という用語は、治療剤の複合作用から有益な効果が得られるように意図された治療プロトコルの一部として、2種類以上の治療剤の投与を意味する。
【0029】
「慢性痛」という用語は、当初の傷害又は状態から予想される回復期間を超えて持続する疼痛を意味する。慢性痛の一例は、帯状ほう疹後神経痛であり、急性帯状ほう疹感染に付随する疼痛が感染自体を超えて持続する。臨床的に、「慢性痛」は、所与の期間、典型的には約3か月を超えて持続する疼痛と定義することができる。
【0030】
2種類の薬剤の組合せの効果の記述において本明細書では「相乗作用」又は「相乗効果」という用語は、個々の効果の合計よりも大きい効果を意味する。以下に示すように、相乗作用は、最大値の半分の効果が観察される用量であるED
50値の変化の統計的有意性、非重複95%信頼区間、及びアイソボログラム分析によって示される。
【0031】
4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジンとして本明細書に定義された「化合物1」という用語は、場合によっては、その用語が使用される状況に応じて、4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジンの薬学的に許容される塩も含む。
【0032】
「モルヒネ」という用語は、特に硫酸モルヒネを含めて、モルヒネのすべての薬学的に許容される塩及び投与形態を含む。
【0033】
「オキシコドン」という用語は、特にオキシコドン塩酸塩を含めて、オキシコドンのすべての薬学的に許容される塩及び投与形態を含む。
【0034】
本明細書で使用するすべての他の用語は、当業者によって理解されるその通常の意味を有することが意図される。
【0035】
前臨床モデルにおけるオピオイド作動物質との相乗作用の証明
疼痛緩和における4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジン(1)とオピオイド作動物質モルヒネ及びオキシコドンの組合せの有効性をラットホルマリン疼痛モデルにおいて評価した。ホルマリン注射によって誘発される足を引っ込める挙動を試験化合物が阻止する程度を観察した。
【0036】
化合物1は、ヒト組換え細胞アッセイにおいてin vitroで観察されたSERTとNETのIC
50値比から判定して、NETについて約4倍選択的であり、ラット脳シナプトソーム調製物を用いてin vitroで判定して約10倍選択的である。以下の実施例において詳述するように、最大値の半分の効果が観察される用量であるED
50値は、化合物1単独、モルヒネ単独、一定用量のモルヒネの存在下の化合物1、及び一定用量の化合物1の存在下のモルヒネについて用量反応曲線から決定された。用量10mg/kgの化合物1の追加によって、モルヒネ用量反応曲線は低モルヒネ用量側に大きく移行した。すなわち、化合物1とモルヒネの同時投与によって、より低用量のモルヒネで同等の効力を得ることができた。
図2aの非重複信頼区間に注意されたい。同様に、1mg/kgのモルヒネの追加によって、化合物1用量反応曲線は低化合物1用量側に大きく移行した(
図2c)。
【0037】
10mg/kgの化合物1とモルヒネの相乗的相互作用は、2種類の薬物の同時投与によって、効果が単に相加的である場合に期待されるもの以上の効果が得られる、すなわち、モルヒネ+化合物1(10mg/kg)の用量反応曲線のED
50が加成則の線の左に完全に位置することを示すアイソボログラム分析によって数学的に確認される(実施例1及び
図2d参照)。相加作用を超えることは、個々の効果の合計を同時投与の結果と比較することによっても説明することができる。10mg/kgでの化合物1の単回投与は、足を引っ込める挙動を20±7%阻害し、1mg/kgでのモルヒネの投与は、足を引っ込める挙動を13±11%阻害した。このどちらも統計的に有意とはみなされない。
図1aに示すように、有効用量未満の同時投与(10mg/kgでの化合物1と、1mg/kgでのモルヒネ)の結果生じる73±6%阻害は、効果が単に相加的である場合に期待されるものをかなり上回る。
【0038】
類似の結果は、化合物1とオキシコドンの同時投与のラットホルマリンモデルにおいても得られた。用量10mg/kgの化合物1の追加は、
図3aの非重複信頼区間によって示されるように、オキシコドン用量反応曲線を低オキシコドン用量側に大きく移行させた。10mg/kgの化合物1とオキシコドンの相乗的相互作用は、
図3bに示すアイソボログラム分析によって数学的に確認される。
【0039】
セロトニントランスポーター及びノルエピネフリントランスポーターの占有率と観測された効力の関係についても調べた。モルヒネとオキシコドンの両方との相乗作用が認められた用量である10mg/kgの化合物1を投与した動物の腰髄における占有率は、81±6%NET及び46±20%SERTであった。モルヒネ(3mg/kgの化合物1を用いて試験された唯一のオピオイド)との相乗作用が認められなかった用量である3mg/kgの化合物1を投与した動物における占有率は、77±15%NET及び23±14%SERTであった。これらの結果は、オピオイド作動物質との相乗作用が、ノルエピネフリントランスポーターとセロトニントランスポーターの両方の十分な占有率を必要とし、NETが支配的であるという仮説と一致する。さらに、SERTよりもNETにおける占有率が高いという知見は、in vitroアッセイにおけるNET選択性の知見と一致する。
【0040】
比較化合物の検討
オピオイド作動物質との相乗作用を示すSNRIに特有であるNETとSERTの活性比を更に理解するために、プロファイルの異なる化合物もラットホルマリンモデルにおいて検討した。
【0041】
アトモキセチンは、in vitroでは、ヒト組換え細胞アッセイにおいてNETについて約20倍選択的であり、ラット脳シナプトソーム調製物を用いると約30倍選択的であることが示された。10mg/kg用量のアトモキセチンは、モルヒネ用量反応曲線を低モルヒネ用量側に移行させた。さらに、1mg/kgでのモルヒネの追加も、アトモキセチン用量反応曲線を低アトモキセチン用量側に移行させた。アトモキセチンとモルヒネの相乗的相互作用は、アイソボログラム分析によって確認され(
図4)、さらに
図1bで示される。すなわち、有効用量未満の同時投与(10mg/kgでのアトモキセチンと、1mg/kgでのモルヒネ)の結果生じる阻害は、個々の効果の合計よりもかなり大きいことが示された。
【0042】
それに対して、デュロキセチンは、ヒト組換え細胞アッセイにおいてSERTについて約10倍選択的であり、ラット脳シナプトソーム調製物においてSERTについて約5倍選択的であり、モルヒネ節約効果を示さなかった。デュロキセチン10mg/kgの単回投与は、足を引っ込める挙動をかなり阻害し、10mg/kg用量のデュロキセチンはモルヒネ用量反応曲線をより低モルヒネ用量側に移行させたが、1mg/kg用量のモルヒネはデュロキセチン用量反応曲線を移行させなかった。デュロキセチン3、5又は10mg/kgにおけるモルヒネ節約効果の欠如は、アイソボログラム分析(
図5)によって確認され、有効用量未満の組合せ(5mg/kgでのデュロキセチンと、1mg/kgでのモルヒネ)について
図1cにグラフで示したが、予想される相加作用を大きくは超えなかった。
【0043】
デュロキセチン5mg/kgを投与した動物におけるトランスポーター占有率は約63%NET及び約91%SERTであった。(下記アッセイ2における表5参照)。モルヒネとの相乗作用は、SERT選択的SNRIではどの用量でも認められなかった。しかし、5−HT
3受容体拮抗物質オンダンセトロンを有効用量未満のデュロキセチン(5mg/kg)と同時投与すると、モルヒネ節約効果が認められた。この知見は、デュロキセチンによる5−HTレベルのSERT媒介性の増大が、SERT選択的二元的SNRIとモルヒネの相乗的相互作用を阻害することを示唆している。
【0044】
ヒトにおける鎮痛活性が証明された化合物は、ラットホルマリンモデルにおいて効力を示す(Le Bars(2001)Pharmacol.Rev.53:597−652;Vissersら(2006)Pharmacology,Biochemistry and Behavior 84:479−486)。例えば、本明細書に記載の実験において10mg/kgで抗侵害受容性を示したデュロキセチンは、糖尿病性末梢神経因性疼痛、線維筋痛、慢性腰痛、骨関節炎疼痛などの幾つかの慢性痛状態の治療に対して米国FDAによって認可された。(Skljarevskiら(2009)European Journal of Neurology 16:1041−1048;Chappellら(2009)Pain 146:253−260も参照されたい。)これらの結果は、SNRIが疼痛治療用オピオイド作動物質との相乗的相互作用をもたらすと期待されるかどうかを予測する方法を与える。この方法は、in vitro神経伝達物質取り込みアッセイにおいてSERT及びNET IC
50値を測定すること、並びにSERTとNETのIC
50値比が、約2から約30、約4から約30、及び約4から約10を含めて、約2から約40であるかどうかを判定することを含む。
【0045】
治療方法
したがって、SNRIである4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジン(1)及び化合物1とオピオイド作動剤、特にモルヒネ又はオキシコドンとの組合せは、特に、オピオイド薬剤が最適な鎮痛効果のために単独使用時に必要な用量よりも低用量で使用される場合、疼痛状態の治療に有用であることが期待される。併用療法は、より低用量のオピオイドを用いて同じ鎮痛作用を得ることができ、したがってオピオイドの使用に付随する有害作用を減少させることができると期待される。さらに、化合物1とオピオイド作動剤、特にモルヒネ又はオキシコドンとの組合せは、各薬剤が有効用量未満で存在する場合、疼痛状態の治療に有用であることが期待される。
【0046】
併用療法が有用であり得る疼痛障害としては、炎症性疼痛及び神経因性疼痛を含めた、急性疼痛障害及び慢性疼痛障害が挙げられる。より具体的には、これらとしては、以下に付随又は起因する疼痛が挙げられる:関節炎;慢性腰痛を含めた背痛;腫瘍関連疼痛(例えば、骨痛、頭痛、顔面痛又は内臓痛)及び癌治療に付随する疼痛(例えば、放射線照射後症候群)を含めた、慢性術後疼痛、癌;線維筋痛;慢性緊張性頭痛を含めた頭痛;関節リウマチ、変形性関節症、および多発性筋痛に付随する炎症;片頭痛;複合性局所疼痛症候群を含めた神経因性疼痛;術後痛;肩痛;卒中後痛を含めた中枢痛症候群、並びに脊髄傷害及び多発性硬化症に付随する疼痛;幻肢痛;パーキンソン病に付随する疼痛;内臓痛(例えば、過敏性腸症候群)、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、HIV関連神経障害、帯状ほう疹後神経痛(PHN)、及び化学療法による末梢神経障害。
【0047】
併用療法に使用する際には、化合物1はオピオイド作動剤と物理的に混合されて、両方の薬剤を含む組成物を形成するか、又は各薬剤は、別々の異なる組成物中に存在し、患者に同時に又は任意の順序で逐次的に投与される。併用療法は、別々に製剤化された場合、2種類の薬剤の実質的に同時の投与、及び異なる時間での各薬剤の投与を含む。
【0048】
例えば、化合物1は、従来の手順及び装置を使用して、第2の治療剤と組み合わせて、化合物1と第2の治療剤とを含む組成物を形成することができる。さらに、治療剤は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、化合物1、第2の治療剤及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を形成することができる。この実施形態においては、組成物の成分は、典型的には、混合又はブレンドされて、物理的混合物を生成する。次いで、物理的混合物は、後述する経路のいずれかを使用して治療有効量で投与される。
【0049】
あるいは、治療剤は、患者に投与するまで分離したままとすることができる。この実施形態においては、薬剤は、投与前に物理的に混合されず、同時に、又は別々の時間に、別々の組成物として投与される。かかる組成物は、別々にパッケージすることができ、又はキットとして一緒にパッケージすることができる。キットは、ある剤形の化合物1とある剤形のオピオイド作動剤を含む。キット中の2種類の治療剤は、同じ投与経路によって、又は異なる投与経路によって、投与することができる。例えば、化合物1は、経口投与することができ、オピオイド作動剤は、髄腔内注射、静脈内注射、皮下注射、又は経口錠剤、カプセル剤若しくは液剤などの、かかる薬剤の従来の投与経路のいずれかによって投与することができる。
【0050】
併用療法の一部として1回に投与される化合物1の量若しくは1日に投与される総量は、前もって決定することができ、又は患者の状態の性質及び重症度、治療される状態、患者の年齢、体重及び全般的健康状態、活性薬剤に対する患者の耐性、投与経路、活性薬剤の活性、効力、薬物動態学及び毒物学プロファイル、特にオピオイド作動剤の性質及び投与量などの薬理学的考慮を含めて、多数の因子を考慮して患者ごとに決定することができる。(疼痛状態などの)疾患又は病状を患っている患者の治療は、所定の投与量、又は治療する医師によって決定された投与量で開始することができ、疾患又は病状の症候を防止、改善、抑制又は軽減するのに必要な期間継続される。かかる治療を受ける患者は、典型的には、所定の手順に基づいてモニターされて療法の有効性を決定する。例えば、神経因性疼痛の治療においては、治療の有効性の尺度は、患者の生活の質の評価、例えば、患者の就眠パターンの改善、出勤状況、運動及び通院の能力などを含み得る。ポイントに基づいて管理される疼痛の度合いを使用して、患者の疼痛レベルの評価に役立てることもできる。本明細書に記載の他の疾患及び状態の指標は、当業者によく知られており、治療する医師が容易に利用することができる。医師による連続モニターは、最適量の活性薬剤が任意の所与の時間に投与されることを確実にし、治療期間の決定を容易にする。
【0051】
疼痛状態を治療するための化合物1の適切な用量は、単独使用時には、平均70kgのヒトに対して、約5から約30mg/日、約7から約20mg/日を含めて、約2から約50mg/日の範囲と予想される。
【0052】
オピオイド作動剤との併用療法の一部として使用するときには、上述した有効用量の化合物1、又は単独使用時に鎮痛に必要な用量未満である有効用量未満の化合物1を投与することができる。
【0053】
本発明による併用療法に使用することができるオピオイド作動活性を有する薬剤としては、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドール、タペンタドール、レボルファノール、メペリジン、ペチジン、メサドン、ブプレノルフィン、フェンタニル、アルフェンタニル、ブトルファノール(butrophanol)、ナルブフィン及びスフェンタニルが挙げられるが、それだけに限定されない。本発明の特定の態様においては、オピオイド作動剤はモルヒネである。本発明の別の特定の態様においては、オピオイド作動剤はオキシコドンである。
【0054】
オピオイド作動物質の適切な用量は、典型的には、治療すべき状態の重症度、選択される投与経路、投与される特定の薬剤及びその相対活性、患者の年齢、体重及び反応、並びに特にオピオイドに対する患者の耐性を含めて、関連状況を考慮して医師によって決定される。オピオイド作動物質の有効用量は、70kgのヒトに対して、ほんの10mg/日から60、120又は360mg/日の量までの範囲であることが知られている。併用療法の一部として使用するときには、オピオイド作動剤は、治療有効量、すなわち、化合物1と同時投与したときに治療上有益な効果をもたらす任意の量で投与される。この場合、かかる量は、最適な単独療法に必要な量よりも少ないことが期待される。
【0055】
薬学的組成物及び製剤
本SNRI化合物とオピオイド作動剤は、典型的には、薬学的組成物又は製剤の形態で患者に投与される。かかる薬学的組成物は、経口、直腸、膣、経鼻、吸入、(経皮を含めた)局所及び非経口投与方法を含むが、それだけに限定されない任意の許容される投与経路によって患者に投与することができる。
【0056】
薬学的組成物は、典型的には、治療有効量の活性薬剤を含む。しかし、当業者は、薬学的組成物が、治療有効量を超える量を含んでもよく(すなわち、バルク組成物)、治療有効量未満の量(すなわち、治療有効量を得るために複数回投与用に設計された個々の単位用量)を含んでもよいことを認識するであろう。
【0057】
典型的には、かかる薬学的組成物は、約0.1から約95重量%の活性薬剤、好ましくは約5から約70重量%、より好ましくは約10から約60重量%の活性薬剤を含む。
【0058】
任意の従来の担体又は賦形剤を本発明の薬学的組成物に使用することができる。特定の担体若しくは賦形剤又は担体若しくは賦形剤の組合せの選択は、特定の患者の治療に使用される投与方法、又は医学的状態若しくは疾患状態のタイプに依存するであろう。なお、特定の投与方法に適切な薬学的組成物の調製は、薬学分野の当業者の十分な範囲内である。さらに、本発明の薬学的組成物に使用される担体又は賦形剤は、商業的に入手可能である。更なる説明として、従来の製剤技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20
th Edition,Lippincott Williams&White,Baltimore,Maryland(2000)、及びH.C.Anselら,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7
th Edition,Lippincott Williams&White,Baltimore,Maryland(1999)に記載されている。
【0059】
薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の代表例としては、以下が挙げられるが、それだけに限定されない:ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;微結晶性セルロースなどのセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター、坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに薬学的組成物に使用される他の無毒適合性物質。
【0060】
薬学的組成物は、典型的には、活性薬剤を薬学的に許容される担体及び1種類以上の任意に選択される成分と徹底的かつ十分に混合又はブレンドすることによって調製される。次いで、生成した均一ブレンド混合物は、従来の手順及び装置を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤などに成形又は充填することができる。
【0061】
薬学的組成物は、好ましくは、単位剤形としてパッケージされる。「単位剤形」という用語は、患者への投薬に適切な物理的に分離した単位を指す。すなわち、各単位は、所望の治療効果を単独で、又は1個以上の追加の単位と組み合わせて、もたらすように計算された所定量の活性薬剤を含む。例えば、かかる単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤など、又は非経口投与に適切な単位パッケージとすることができる。
【0062】
一実施形態においては、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適切である。経口投与に適切な薬学的組成物は、所定量の治療化合物を活性成分として各々が含む、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤の形態で、又は水性若しくは非水性液体の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型乳濁液として、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として、およびその他類するもので存在し得る。
【0063】
固体剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤などとして)の経口投与が意図されるときには、薬学的組成物は、典型的には、活性薬剤と、クエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウムなどの1種類以上の薬学的に許容される担体とを含む。場合によっては又はあるいは、かかる固体剤形は、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸などの充填剤又は増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアラビアゴムなどの結合剤;グリセロールなどの加湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリカート、及び/又は炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解遅延剤;第四級アンモニウム化合物などの吸収促進物質;セチルアルコール及び/又はモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;カオリン及び/又はベントナイトクレイなどの吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はその混合物などの潤滑剤;着色剤;並びに緩衝剤も含むことができる。
【0064】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も本発明の薬学的組成物中に存在することができる。薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート化剤などが挙げられる。錠剤、カプセル剤、丸剤などのコーティング剤としては、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナートなどの腸溶コーティングに使用されるものなどが挙げられる。コーティング剤は、タルク、ポリエチレングリコール、ヒプロメロース(hypomellose)及び二酸化チタンも含む。
【0065】
薬学的組成物は、例として、異なる割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、又は別のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを使用して、活性薬剤を徐放又は制御放出するように製剤化することもできる。さらに、薬学的組成物は、場合によっては乳白剤を含んでもよく、そして、薬学的組成物は、胃腸管の特定の部分のみでまたはその特定の部分において優先的に、活性成分を、場合によっては遅延方式で、放出するように製剤化することもできる。使用可能な埋め込み組成物の例としては、重合体物質及びワックスが挙げられる。活性薬剤は、適宜、上記賦形剤の1種類以上を用いてマイクロカプセル形態とすることもできる。
【0066】
適切な経口投与用液体剤形としては、実例として、薬学的に許容される乳濁液剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、典型的には、活性薬剤、及び例えば水などの不活性希釈剤、又はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなどの他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、並びにその混合物を含む。懸濁液剤は、活性成分に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカントなどの懸濁化剤、及びその混合物を含むことができる。
【0067】
本活性薬剤は、(例えば、静脈内、髄腔内、皮下、筋肉内又は腹腔内注射によって)非経口的に投与することもできる。非経口投与の場合、活性薬剤は、典型的には、例として、無菌水溶液、食塩水、プロピレングリコールなどの低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、オレイン酸エチルなどの脂肪酸エステルなどを含めて、適切な非経口投与用ビヒクルと混合される。非経口製剤は、1種類以上の抗酸化剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤又は分散剤を含むこともできる。これらの製剤は、無菌注射用媒体、殺菌剤、ろ過、照射又は熱の使用によって無菌にすることができる。
【0068】
あるいは、薬剤は、吸入投与用に製剤化される。適切な吸入投与用薬学的組成物は、典型的には、エアロゾル又は粉末の形態である。かかる組成物は、一般に、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、類似の送達装置などの周知の送達装置を使用して投与される。
【0069】
加圧容器を使用した吸入によって投与するときには、本発明の薬学的組成物は、典型的には、活性成分、及びジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、他の適切なガスなどの適切な噴霧剤を含む。さらに、薬学的組成物は、本発明の化合物と粉末吸入器における使用に適した粉末とを含む、(例えば、ゼラチンでできた)カプセル又はカートリッジの形態とすることができる。適切な粉末基剤としては、例として、ラクトース又はデンプンが挙げられる。
【0070】
最後に、活性薬剤は、公知の経皮送達システム及び賦形剤を使用して経皮投与することもできる。例えば、活性薬剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウラート、アザシクロアルカン−2−オンなどの透過促進剤と混合することができ、貼付剤又は類似の送達系に混ぜ込むことができる。ゲル化剤、乳化剤及び緩衝剤を含めた追加の賦形剤を必要に応じてかかる経皮組成物に使用することができる。
【0071】
疼痛治療に有用である代表的薬学的組成物としては、以下の例が挙げられるが、それだけに限定されない。化合物1は、典型的には塩酸塩として供給されるが、特定の投与方法に適した任意の形態の化合物(すなわち、遊離塩基又は薬学的塩)を以下の薬学的組成物に使用できることが理解される。
【0072】
製剤例A:経口投与用硬ゼラチンカプセル剤
化合物1(20mg)、デンプン(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)及びステアリン酸マグネシウム(2mg)を徹底的にブレンドし、次いでNo.45メッシュU.S.篩に通す。生成した組成物を硬ゼラチンカプセルに充填する(組成物200mg/カプセル)。
【0073】
製剤例B:経口投与用硬質非ゼラチン(HPMC)カプセル剤
化合物1(10mg)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(50mg)及びデンプン粉末(250mg)を徹底的にブレンドし、次いで硬質非ゼラチン(HPMC)カプセルに充填する(組成物310mg/カプセル)。
【0074】
製剤例C:経口投与用錠剤
化合物1(5mg)、微結晶性セルロース(400mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(10mg)及びステアリン酸(5mg)を徹底的にブレンドし、次いで圧縮して錠剤(組成物420mg/錠剤)を形成する。
【0075】
製剤例D:経口投与用錠剤
化合物1(10mg)、微結晶性セルロース(160mg)、ラクトース一水和物(20mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(5mg)及びステアリン酸マグネシウム(5mg)を徹底的にブレンドし、次いで圧縮して錠剤(組成物200mg/錠剤)を形成する。
【0076】
製剤例E:単一割線入り経口投与用錠剤
化合物1(15mg)、コーンスターチ(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)及びステアリン酸マグネシウム(5mg)を徹底的にブレンドし、次いで圧縮して単一割線入り錠剤(組成物215mg/錠剤)を形成する。
【0077】
製剤例F:経口投与用懸濁液剤
以下の成分
化合物1(200mg)、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、精製水(100mLになるまでの適量)
を徹底的に混合して、懸濁液10mLあたり活性成分20mgを含む経口投与用懸濁液剤を形成する。
【0078】
製剤例G:注射用製剤
化合物1(20mg)を0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(15mL)とブレンドする。生成した溶液のpHを1N塩酸水溶液又は1N水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調節する。次いで、クエン酸塩緩衝剤中の無菌等張食塩水を添加して、総体積20mLにする。
【0079】
製剤例H:単一割線入り経口投与錠剤
化合物1(5mg)、硫酸モルヒネ(5mg)、コーンスターチ(50mg)、微結晶性セルロース(15mg)、ヒドロキシプロピルセルロース(10mg)、ラクトース(120mg)及びステアリン酸マグネシウム(5mg)を徹底的にブレンドし、次いで圧縮して、単一割線入り錠剤(組成物210mg/錠剤)を形成する。
【0080】
製剤例I:経口投与用懸濁液剤
以下の成分
化合物1(50mg)、オキシコドン塩酸塩(50mg)、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、精製水(100mLになるまでの適量)
を徹底的に混合して、懸濁液10mLあたり各薬剤5mgを含む経口投与用懸濁液剤を形成する。
【実施例】
【0081】
本発明のSNRIである4−[2−(2,4,6−トリフルオロ−フェノキシメチル)−フェニル]−ピペリジン(1)とミューオピオイド作動物質であるモルヒネ及びオキシコドンとの相互作用、並びに比較SNRIアトモキセチン及びデュロキセチンとモルヒネの相互作用を疼痛のラットホルマリンモデルで評価した。
【0082】
ラットホルマリンモデル方法
雄性Sprague Dawleyラット(動物体重範囲:150〜240g、Harlan、Indianapolis、IN)をペアで12時間明/暗サイクルに置き、食物及び水を自由に摂らせた。すべての実験は、Theravance Institutional Animal Care and Use Committeeによって認可され、International Association for the Study of Painによって確立された指針に準拠した。既報(Yakshら,(2001)J Appl Physiol.90:2386−402)のように、ホルマリン(5%)50μLの注射によって惹起される行動反応を阻害する化合物の能力を評価した。金属バンドをラットの左後足に取り付けた。各ラットをプラスチック円筒(直径15cm)内でバンドに60分間慣らした。自動侵害分析計(UCSD Anesthesiology Research、San Diego、CA)を使用して、たじろぎ数を連続して60分間数えた。抗侵害受容期間は、ホルマリン注射後15〜40分間(フェーズ2A)から決定され、これは、持続痛状態、すなわち、最初の刺激に対する反応が鎮静した後に経験する疼痛状態に対応する。試験化合物を10%Tween20の蒸留水(ビヒクル)溶液中で調製し、腹腔内(IP)又は皮下(SC)経路によって2mL/kgの体積で投与した。
【0083】
潜在的オピオイド節約効果を評価するために、モルヒネの用量反応を化合物1(3及び10mg/kg IP)、アトモキセチン(3及び10mg/kg IP)及びデュロキセチン(3、5及び10mg/kg IP)の非存在下及び存在下で決定した。モルヒネ(1mg/kg SC)の存在下で化合物1及び比較化合物の用量反応曲線も決定した。さらに、オキシコドン(SC)の用量反応を化合物1(10mg/kg IP)の非存在下及び存在下で決定した。さらに、デュロキセチン(5mg/kg、IP)をモルヒネ(1mg/kg、SC)の非存在下及び存在下でオンダンセトロン(3mg/kg、IP)と同時投与した。すべての試験化合物をホルマリン注射の30分前に投与した。
【0084】
データ解析
阻害率は、同時に試験したビヒクル処理ラットにおけるフェーズ2A中のたじろぎの総数を比較することによって以下の式に従って決定した:(ビヒクル−処理)/(ビヒクル×100)。各用量における各ラットの阻害率値を使用して、ED
50値を得た。ED
50値は、最小及び最大をそれぞれ0及び100にして、S字形の用量反応(傾き可変)曲線に一致させることによって決定した(GraphPad Prism)。データは平均±SEM(平均値の標準誤差)を意味する。
【0085】
潜在的オピオイド節約効果を評価するために、ED
50値は、モルヒネ、化合物1、デュロキセチン及びアトモキセチン単独の用量反応曲線、並びにモルヒネ(1mg/kg、SC)の存在下のSNRIの用量反応曲線又はその逆を作成することによって決定した。化合物1とオピオイド作動物質オキシコドンの同時投与の効果についても調べた。試験化合物の組合せ間の潜在的相乗作用を以下の方法の1つ以上において評価した。
【0086】
(1)オピオイド作動物質+SNRI(又はその逆)の用量反応曲線を比較した。ED
50値の変化は、非重複95%信頼区間で統計的に有意な効果であるとみなされた。
【0087】
(2)2種類の薬物の同時投与がラットホルマリンモデルにおいて相加的、相加未満(拮抗的)又は相加を超える(相乗的)抗侵害受容効果を示したかどうかをアイソボログラム分析を使用して数学的に評価した。(Tallarida RJ,(2000)Drug Synergism and Dose−effect Data Analysis,Chapman&Hall/CRC,pp5−10)。手短に述べると、各薬物(薬物A及び薬物B)単独のED
50をそれぞれx及びy軸上にプロットし、2つのED
50間の連結線を引いた(加成則の線)。一定用量の薬物Aを全範囲の用量の薬物Bと同時投与して、このペアの合算されたED
50値を得た。この合算されたED
50(と信頼区間範囲)が加成則の線の左に位置する場合、2種類の薬物の相互作用は相乗的であるとみなされる。
【0088】
(3)単なる説明のために、モルヒネ(1.0mg/kg、SC)処理に起因するたじろぎの減少%を種々の用量のSNRIを用いて得られたたじろぎの減少%に加算することによって予測される抗侵害受容の大きさ(たじろぎの減少%)を、併用療法で実測された抗侵害受容の程度と比較した。
【0089】
材料
化合物1の塩酸塩を米国特許出願第12/617,821号に記載の手順に従って調製した。その開示を参照により本明細書に援用する。アトモキセチン塩酸塩をAK Scientific,Inc.(Mountain View、CA)から購入し、デュロキセチン塩酸塩をWaterstone Technology LLC(Carmel、IN)から購入した。モルヒネ及びオキシコドンをSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。オンダンセトロンをTocris(Ellisville、MO)から購入した。すべての被験物質を10%Tween20の蒸留水溶液に溶解させた。
【0090】
(実施例1)
ラットホルマリンモデルにおける化合物1とモルヒネの組合せ
化合物1単独、モルヒネ単独、3mg/kg又は10mg/kgの化合物1の存在下のモルヒネ、及びモルヒネ1mg/kgの存在下の化合物1の用量反応曲線を決定した。
図2aに示すように、モルヒネ投与のED
50値は2.1mg/kgであり、信頼区間(CI)は1.5〜2.9mg/kgであった。化合物1(10mg/kg)とモルヒネの同時投与は、モルヒネ用量反応曲線を低モルヒネ用量側に大きく移行させ、ED
50値が0.2mg/kgであり、非重複CIが0.1〜0.4mg/kgであった。しかし、化合物1(3mg/kg)とモルヒネの同時投与は、
図2bに示すように、モルヒネ用量反応曲線をさほど移行させなかった。モルヒネ1mg/kgと組み合わせた化合物1の用量反応を
図2cに示す。単独投与時に統計的に有意な効果を示さなかったED
50値未満の用量の一定用量のモルヒネの追加は、化合物1の用量反応曲線を低い値の側に大きく移行させ、化合物1単独の20.0(14.0〜28.4)mg/kgに比べて組合せのED
50値(CI)は4.4(3.3〜5.9)mg/kgであった。化合物1とモルヒネの相乗的相互作用は、
図2dのアイソボログラムによって確認され、モルヒネ+化合物1(10mg/kg)のED
50(0.2mg/kg)及び化合物1+モルヒネ(1mg/kg)のED
50(4.4mg/kg)が加成則の線の左に完全に位置する。
【0091】
観察がホルマリン注射から15〜40分後に成された上記実験は、ヒト慢性痛状態に近いと考えられる持続痛の前臨床モデルを与える。疼痛挙動の減少は、注射後最初の10分間でも認められ(フェーズ1)、反応期間は、急性痛の処理を反映すると考えられる。したがって、前臨床データによれば、化合物1及び化合物1とモルヒネの組合せは、術後痛などの急性痛状態も軽減する。
【0092】
(実施例2)
ラットホルマリンモデルにおける化合物1とオキシコドンの組合せ
オキシコドン単独及び化合物1(10mg/kg)の存在下のオキシコドンの用量反応曲線を決定した。
図3aに示すように、オキシコドンを投与すると、ED
50値は1.1mg/kgであり、信頼区間(CI)は1.0〜1.2mg/kgであった。化合物1(10mg/kg)とオキシコドンの同時投与は、オキシコドン用量反応曲線を低オキシコドン用量側に大きく移行させ、ED
50値は0.2mg/kgであり、非重複CIは0.1〜0.4mg/kgであった。化合物1とオキシコドンの相乗的相互作用は、
図3dのアイソボログラムによって確認され、オキシコドン+化合物1(10mg/kg)のED
50(0.2mg/kg)は、エラーバーを含めて、加成則の線の左に位置する。
【0093】
(実施例3)
ラットホルマリンモデルにおける比較SNRIの研究
モルヒネと一緒の、3及び10mg/kgのアトモキセチン並びに3、5及び10mg/kgのデュロキセチンの効果を下表に要約する。モルヒネに10mg/kgのアトモキセチンを追加すると、ED
50値と非重複信頼区間が減少した(表1)。モルヒネ1mg/kgの同時投与もアトモキセチンED
50値を大きく減少させた(表2)。アトモキセチンとモルヒネの相乗的相互作用は、
図4のアイソボログラムによって確認され、モルヒネ+アトモキセチン(10mg/kg)のED
50(0.6mg/kg)及びアトモキセチン+モルヒネ(1mg/kg)のED
50(3.0mg/kg)が、どちらもエラーバーを含めて、加成則の線の左に位置する。
【0094】
10mg/kgのデュロキセチンをモルヒネに追加すると、ED
50値と非重複信頼区間が減少するが(表1)、モルヒネ1mg/kgをデュロキセチンに追加しても、デュロキセチン用量反応曲線は低デュロキセチン用量側に移行せず、すなわち、デュロキセチン単独及びデュロキセチン+モルヒネ1mg/kgの表2のED
50値は、重複信頼区間を有する。
図5のアイソボログラムによれば、併用用量のデュロキセチンとモルヒネは加成則の線の左にはない。デュロキセチンは、モルヒネと相乗作用を示さなかった。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
*(n=n
1−n
2)は、用量反応曲線上の反復数範囲である。
【0097】
アッセイ1
In Vitro SERT及びNET神経伝達物質取り込みアッセイ
ヒト及びラットモノアミントランスポーターにおける試験化合物のpIC
50値をそれぞれ決定するために、神経伝達物質取り込みアッセイを使用して、各ヒト組換えトランスポーター(hSERT又はhNET)を発現する細胞中への、および、ラット脳シナプトソーム調製物中への、
3H−セロトニン(
3H−5−HT)及び
3H−ノルエピネフリン(
3H−NE)取り込みの阻害を測定した。
【0098】
細胞培養
hSERT又はhNETがそれぞれ安定に移入されたHEK−293由来の細胞系を、5%CO
2加湿恒温器中の10%透析FBS(hSERTの場合)又はFBS(hNETの場合)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン及び250μg/mlアミノグリコシド系抗生物質G418を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で37℃で増殖させた。培養が50〜80%コンフルエントに達したときに、細胞を(Ca
2+及びMg
2+を含まない)PBSで徹底的に洗浄し、5mMのEDTAのPBS溶液で剥離させた。細胞を1100rpmで5分間の遠心分離によって収集し、上清を廃棄し、HEPES(10mM)、CaCl
2(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)及びパージリン(200μM)を含むpH7.4の室温クレブス−リンゲル炭酸水素塩緩衝剤中で静かにすりつぶして、細胞ペレットを再懸濁させた。細胞懸濁液中の細胞の最終濃度は、hSERTが7.5×10
4細胞/ml及びhNETが12.5×10
4細胞/mlであった。
【0099】
シナプトソーム調製物
ラットを断頭によって安楽死させた。ラットの新たに解剖された皮質組織断片を氷冷スクロース緩衝剤中に組織湿重量100mg/緩衝剤1mLの比で懸濁させた。前もって冷却したガラス製Dounceホモジナイザーを使用して組織を20ストロークホモジナイズした。ホモジネートを1,000×g(4℃で10分間)で遠心分離した。ペレットを廃棄し、生成した上清を10,000×g(4℃で20分間)で遠心分離して、粗製シナプトソームのペレットを得た。シナプトソームをスクロース緩衝剤に再懸濁させ、タンパク質濃度をBradfordの方法(Bradford(1976)Analytical Biochemistry 72:24854)によって測定し、調製後すぐに使用した。
【0100】
神経伝達物質取り込みアッセイ
神経伝達物質取り込みアッセイを、96ウェルのアッセイプレートにおいて、アッセイ緩衝剤(HEPES(10mM)、CaCl
2(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)及びパージリン(200μM)を含むpH7.4のクレブス−リンゲル炭酸水素塩緩衝剤)中に、SERT及びNETについてはそれぞれ1.5×10
4及び2.5×10
4細胞、又は皮質シナプトソームタンパク質10μgを含む総体積400μLで実施した。試験化合物のpIC
50値を測定する阻害アッセイを10pMから100μMの範囲の11の異なる濃度で実施した。試験化合物の原液(DMSO中10mM)を調製し、段階希釈物を50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4、0.1%BSA、400μMアスコルビン酸を使用して調製した。放射性標識された神経伝達物質
3H−5−HT(最終濃度20nM)又は
3H−NE(最終濃度40nM)の添加前に、試験化合物をそれぞれの細胞又はシナプトソームと一緒に37℃で30分間インキュベートした。非特異的神経伝達物質取り込みをSERT又はNETアッセイそれぞれについて(各々希釈緩衝剤中の)2.5μMデュロキセチン又は2.5μMデシプラミンの存在下で測定した。
【0101】
放射性リガンドと一緒に37℃で10分間の細胞のインキュベーション(ラットシナプトソームの場合は6分間のインキュベーション)後、96ウェルのUniFilter GF/Bプレート上の急速ろ過によって反応を終了させ、1%BSAで前処理し、洗浄緩衝剤(氷冷PBS)650μlで6回洗浄した。プレートを乾燥させ、MicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)35〜45μlを添加し、取り込まれた放射能を液体シンチレーション測定によって定量した。阻害曲線をGraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を使用して解析した。Prism GraphPadのSigmoidal Dose Response(傾き可変)アルゴリズムを使用して濃度反応曲線から得られたIC
50値を、IC
50値の負の十進法対数pIC
50として下記表3に報告する。
【0102】
【表3】
(a)NET選択性を10
**(NET pIC
50−SERT pIC
50)として計算した。
【0103】
アッセイ2
Ex Vivo SERT及びNETトランスポーター占有率の研究
SERT及びNETトランスポーター占有率を、化合物1又はデュロキセチンが腹腔内(IP)経路で投与されたラットから調製された皮質又は腰髄ホモジネートにおいて測定した。SERT及びNETトランスポーター占有率をモニターするために、ex vivo占有率アッセイを使用した。組織ホモジネートに対するSERT又はNET選択的放射性リガンドのそれぞれの会合の初速度をモニターした。放射性リガンドの会合の初速度は、遊離(非占有)トランスポーターレベルに正比例する。
【0104】
組織収集
ラットを化合物投与から1.25時間後に断頭によって安楽死させた。断頭後、脳を除去し、氷上の清浄な金属ブロック上に置いた。脳全体を正中線の約4mm側方で矢状面に平行に切断した。外側の皮質部分を廃棄した。脳全長にわたって正中矢状面で切断した。次いで、正中矢状面が最上部になるように、各半球に対応する脳の塊をそれぞれの側方の割面上に置いた。脳梁に平行に脳梁の約1mm背側を1回切断して皮質部分を除去した。皮質部分をドライアイスで凍結後、−80℃で貯蔵した。脊髄をPBSの水圧で押し出して収集した。18ゲージ針を腸骨稜近くの脊柱に挿入し、緩衝剤を脊柱に注射し、脊髄を無傷で押し出した。腰髄(長さ約1〜1.5cm)を迅速に解剖し、ドライアイスで凍結後、−80℃で貯蔵した。
【0105】
凍結組織断片を秤量し、ホモジナイズするまでドライアイス上に維持した。脊髄組織をアッセイ緩衝剤(凍結組織100mg当たり0.154mL)中にPolytronホモジナイザー(モデル:PT2100、設定19 10秒間)を用いてホモジナイズした。粗製ホモジネートをex vivo結合アッセイの開始直前に調製した。
【0106】
放射性リガンド結合アッセイ
放射性リガンド結合アッセイを96ウェルのポリプロピレンアッセイプレートにおいて膜タンパク質約25μgを含む全アッセイ体積200μLで実施した。いずれの場合においても、最終アッセイ緩衝剤は、50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、0.025%BSA、100μMアスコルビン酸、pH7.4であった。
【0107】
全体及び非特異的結合を放射性リガンド単一濃度(括弧内)で測定した:SERT及びNETでは、それぞれ[
3H]−シタロプラム(3nM)及び[
3H]−ニソキセチン(5nM)。[
3H]−シタロプラム及び[
3H]−ニソキセチンの非特異的結合を、それぞれ1μMデュロキセチン又は1μMデシプラミンの存在下で測定した。6つの時点で皮質又は脊髄ホモジネートを添加してex vivo結合アッセイを開始して、SERTの場合は0.4、1.0、1.5、2.0、2.5及び3分間のインキュベーション時間、又はNETの場合は0.25、0.5、1.25、1.75及び2.25分間のインキュベーション時間の時間コースを作成した。0.3%ポリエチレンイミンに予浸した96ウェルGF/Bガラス繊維ろ板(Packard BioScience Co.,Meriden、CT)での急速ろ過によって反応を終了させた。ろ板を洗浄緩衝剤(氷冷50mM Tris−HCl、0.9%NaCl、4℃)で6回洗浄して結合していない放射能を除去した。プレートを乾燥させ、Microscint−20液体シンチレーション流体(Packard BioScience Co.,Meriden,CT)35〜45μLを各ウェルに添加し、プレートをPackard Topcount液体シンチレーションカウンター(Packard BioScience Co.,Meriden,CT)で数えた。
【0108】
データ解析
特異的結合を、(試験化合物の非存在下で)全体及び(上述したように決定された)非特異的結合を使用して同じプレートから以下のように計算した:特異的結合=値−非特異的結合。次いで、データをGraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を使用して線形回帰分析によって解析した。直線の傾きに等しい[
3H]−シタロプラム又は[
3H]−ニソキセチンの会合の初速度を、データポイントの特異的結合(cpm)対時間(分)をフィッティングすることによって決定した。ビヒクルを投与した動物から[
3H]−シタロプラム会合又は[
3H]−ニソキセチン会合の初速度の平均を計算した。試験化合物を投与した動物のNET又はSERTトランスポーター占有率(%)を以下の式によって計算する:トランスポーター占有率(%)=100×(1−[(化合物が投与された動物の会合の初速度)/(ビヒクルが投与された動物の会合の平均初速度)])。化合物1のIP投与後の脊髄における占有率を下記表4に報告する。
【0109】
【表4】
*±標準誤差
デュロキセチンのIP投与後の皮質における占有率を下記表5に報告する。用量5mg/kgの占有率は、3mg/kgと10mg/kgの各値のほぼ平均であると予想される。別の研究では、脊髄と皮質の占有率で類似の値が観察された。
【0110】
【表5】
*±標準誤差
アトモキセチンのIP投与後の皮質における占有率を下記表6に報告する。
【0111】
【表6】
*±標準誤差
アッセイ3
薬物動態試験
SNRIを単独で又はオピオイド作動物質と組み合わせて投与したラットの血しょう中濃度を測定して、薬物−薬物相互作用の可能性を評価した。
【0112】
化合物1(3mg/kg)、デュロキセチン(10mg/kg)又はアトモキセチン(10mg/kg)をモルヒネ(3mg/kg、SC)又はビヒクル(SC)と組み合わせてIP投与した。SNRIの血しょう中濃度は、化合物1、アトモキセチン若しくはデュロキセチンを単独で又はモルヒネと組み合わせて投与したラットにおいて同等であった。化合物1(10mg/kg、IP)はオキシコドン(3mg/kg、SC)と組み合わせても投与された。両方の薬剤の血しょう中濃度は、化合物1若しくはオキシコドンを単独又はそれらの組合せを投与したラットにおいて同等であった。これらのデータによれば、ホルマリンアッセイにおける高い鎮痛効力の証拠が、同時投与時のオピオイド作動物質又はSNRIの血しょう中曝露の増加の作用であるとは考えられない。すなわち、実測された薬理効果を薬物−薬物相互作用に帰することはできない。
【0113】
本発明をその具体的実施形態に関連して記述したが、当業者は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を加えることができ、等価物で置換できることを理解すべきである。さらに、多数の改変を加えて、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスステップ(単数又は複数)を本発明の目的、精神及び範囲に適合させることができる。すべてのかかる改変は、添付した特許請求の範囲内にあるものとする。さらに、すべての上記刊行物、特許及び特許文献は、参照によって個々に援用されたかのごとく、参照により全体が本明細書に援用される。