特許第5774125号(P5774125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5774125-弾性フィルム/ファイバ配合物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774125
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】弾性フィルム/ファイバ配合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20150813BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150813BHJP
   D01F 6/44 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08J5/18CER
   D01F6/44
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-547469(P2013-547469)
(86)(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公表番号】特表2014-506282(P2014-506282A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】US2011058784
(87)【国際公開番号】WO2012091792
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年7月23日
(31)【優先権主張番号】12/982,037
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510145211
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー
(73)【特許権者】
【識別番号】310007106
【氏名又は名称】キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライト,キヤスリン・ジエイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,オーマン・ピー
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−265748(JP,A)
【文献】 特表2006−514338(JP,A)
【文献】 特表2003−509563(JP,A)
【文献】 特表2006−509089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08J 5/18
D01F 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性フィルムまたはファイバに好適なエラストマー組成物であって、
50重量%から75重量%のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含有するスチレン系ブロックコポリマー、および
20重量%から50重量%のスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含み、
ここで、S−B−SポリマーおよびS−I/B−SポリマーのそれぞれのメルトフローレートはASTM D1238に従い200℃および荷重5kgで測定した場合に10分当たり5gポリマー以上であり、
組成物は場合によりさらに、
0.0から0.5重量%の一次抗酸化剤、
0.0から0.5重量%の二次抗酸化剤、および
0から0.8重量%の炭素ラジカル捕捉剤を含み、
すべての成分の総重量%は100%であり、スチレン系ブロックコポリマー組成物は窒素に400°F(204.44℃)で30分間連続暴露後に25%未満の粘度変化を示す
エラストマー組成物。
【請求項2】
エラストマー組成物を作製する方法であって、
50重量%から75重量%のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを溶融させるステップ、
20重量%から50重量%のスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを溶融させるステップ、および
溶融したスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーと溶融したスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを混合するステップ
を含み、
すべての成分の総重量%は100%であり、S−B−SポリマーおよびS−I/B−SポリマーのそれぞれのメルトフローレートはASTM D1238に従い200℃および荷重5kgで測定した場合に10分当たり5gポリマー以上であり、ならびにエラストマー組成物は窒素に400°F(204.44℃)で30分間連続暴露後に25%以内の粘度を維持する方法。
【請求項3】
未架橋エラストマーフィルムまたはファイバを作製する方法であって、
50重量%から75重量%のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを、20重量%50重量%のスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマーと混合し、
混合物に0.01から0.4重量%の抗酸化剤、0.01から0.4重量%の二次抗酸化剤および0.2から0.8重量%の炭素ラジカル捕捉剤を場合により添加することによって組成物を生成するステップ、
ここで、すべての組成物成分の総重量%は100%であり、ならびにS−B−SポリマーおよびS−I/B−SポリマーのそれぞれのメルトフローレートはASTM D1238に従い200℃および荷重5kgで測定した場合に10分当たり5gポリマー以上であり、
組成物を溶融させるステップ、および
組成物を未架橋フィルムまたはファイバへと押出し、組成物は窒素に400°F(204.44℃)で30分間連続暴露後に25%以内の粘度を維持するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、驚くほど高い引張強度および良好な粘度安定性を有し、2つのスチレンブロックコポリマー(SBC)、即ちスチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン(S−I/B−S)およびスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)のブレンドをベースとする弾性フィルム/ファイバ配合物に関するものである。技術水準のSBCブレンドは、SBSとスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)との組合せである。このブレンドは、本発明に匹敵する良好な引張強度を有しているが、技術水準のブレンドはきわめて不十分な粘度安定性を有している。本明細書で説明および記載されている本発明の弾性ブレンド(SBSおよびS−I/B−S)コポリマーは、従来技術に基づくスチレン系ブロックコポリマーと同じまたはより優れた引張強度を持つ配合物を生じる。さらに本発明は、技術水準のブレンドとは異なり、高い粘度安定性を有する。加えて本発明は、ドライブレンドによって簡単に作製することができ、予備配合ステップを必要としない、2つの異なるスチレンブロックコポリマーに関するものである。ブロックコポリマー成分を溶融ブレンドすることによる予備配合は、最終形への変換前にも利用してもよい。次にブレンドをフィルム、ファイバまたは複数のファイバとして押出すことができる。
【背景技術】
【0002】
スチレン−ブタジエン−スチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブレンドは、パーソナルケア用途で使用される弾性フィルム配合物のベースとして日常的に使用されてきた。SBSおよびSISのブレンドが1600psiを超える引張強度特性を示し、同時に100%および300%の両方の良好なヒステリシスと共に、100%ヒステリシスでは70%を超える回復エネルギーおよび10%未満の永久ひずみを維持することに留意する。本発明によって、300%ヒステリシスの後に、60%を超える回復エネルギーおよび20%未満の永久ひずみが具体化される。
【0003】
SBSブロックコポリマーは溶融処理の間に粘度が上昇することが公知である。同様に、SISブロックコポリマーは溶融処理中に粘度が低下することが公知である。SBSおよびSISのブレンドを含む技術水準の配合物では、ブタジエンの架橋によって引き起こされるSBSコポリマーの分解のために、望ましくないゲル生成が概して起こる。ゲル生成によって、不体裁および不安定なフィルムの欠陥が生じる。イソプレン分解も発生することがあり、分解が生じると、分子鎖切断が起こり、イソプレン断片はこれにより粘度を低下させる。このため技術水準の組成物では、ゲル生成が断片化に対し平衡を保ち、粘度がより安定となるように、SBSおよびSISのちょうど適切な量を有することが常に平衡状態である。本平衡状態は、SBSおよびSISの分解速度が同一でないために、達成が非常に困難である。
【0004】
本発明者らによる発見により、ブタジエンはSBSコポリマー中のブタジエンほど容易に分解しないため、ランダムS−I/B−Sニートコポリマーが優れた粘度安定性を有することが公知である。しかし、S−I/B−Sのコポリマーは低い引張強度を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弾性フィルムおよびファイバ配合物の分野において市場で求められているのは、良好な粘度安定性に加えて十分な引張特性を有するSBCである。本発明は、市場のこのような要求を完全に満足する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性フィルムまたはファイバに好適なスチレン系ブロックコポリマー組成物に関するものである。組成物は:1)SBCと、2)必須ではない添加剤を含む。エラストマー組成物は、約50重量%から約75重量%のSBSコポリマーおよび約20重量%から約50重量%のS−I/B−Sランダムコポリマーを含有する。各ポリマーのメルトフローレートは、ASTM D−1238に従って200℃、荷重5kgにて測定した場合、10分に付き約5g以上である。組成物は、少量の抗酸化剤、炭素ラジカル捕捉剤および他の成分を場合により包含する。エラストマー組成物は少なくとも45重量%の、好ましくは少なくとも47重量%のブタジエン含有率を有するが、該組成物は400°F(204.44℃)での窒素への連続暴露の30分後に、初期値の20%以内の粘度(Pa・秒の単位で測定)を維持している。必須ではない添加剤は0.0重量%でもよいが、好ましくは必須ではない添加剤は組成物の約0.5重量%から12重量%(0.0重量%と12重量%との間のすべてのパーセンテージを含む。)、より好ましくは0.5重量%から1.5重量%を構成し、同時にSBCは組成物のこの他の残りを占める。組成物の全成分は合計100重量%となる。
【0007】
本発明の組成物は、実施例に記載した技法に従って測定した少なくとも1600psiの引張強度を有する。加えて、本発明の組成物は、100%ヒステリシスにて、少なくとも70%の回復エネルギーおよび10%未満の永久ひずみを有する。同様に、300%ヒステリシスでは、回復エネルギーは少なくとも70%であり、同時に永久ひずみは20%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】図は、平行平板型レオメータ内で、窒素が豊富な環境で30分後に400°F(204.44℃)にて0.1rad/秒および10%ひずみで測定した初期複素粘度(Pa・秒)および粘度安定性の棒グラフである。これらの測定には、1mmのギャップ設定を使用した。粘度安定性は、30分の期間にわたる最大パーセント変化として表される。図は、従来技術を表し、ブレンドSBSおよびSISである例1の、S−I/B−Sである例2の、ならびにSBSおよびS−I/B−Sのブレンドの本発明である実施例4の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、2つの成分、即ち:1)2つのスチレン系ブロックコポリマーの混合物ならびに2)抗酸化剤、炭素ラジカル捕捉剤および他の不活性成分を包含する他の添加剤を含む弾性組成物である。弾性スチレン系ブロックコポリマーの混合物に関して、該混合物はSBSブロックコポリマーおよびS−I/B−Sランダムブロックコポリマーを含む。特に、エラストマー組成物は、約50重量%から約75重量%(50重量%と75重量%の間のすべての重量パーセンテージを含む。)のSBSコポリマーおよび約20重量%から約50重量%の(20重量%と50重量%の間のすべての重量パーセンテージを含む。)S−I/B−Sランダムコポリマーを含有する。スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの場合、中間ブロックはランダムブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーは、ブロックコポリマーが形態S−B−SおよびS−I/B−Sを有する直鎖トリブロックコポリマーであり得る。これらのコポリマーは連続的に調製されてもよく、当業者に周知であるように、各ブロックは重合によって生成され、次いで次のブロックが生成される。同様に、これらのポリマーのどちらも、SBSブロックコポリマーが(S−B)nXの形態を有し、nが2以上のアーム数であり、Xがカップリング剤残基である、カップリングされたコポリマーでもよい。同様にS−I/B−Sブロックコポリマーは、nが2以上のアーム数であり、Xがカップリング剤残基である、(S−I/B)nXの形態をとってもよい。ゆえに多様な構成のこれらのブロックコポリマーを本発明の一部として組合せることができる。本発明のポリマーのメルトフローレートは、ASTM D−1238に従って200℃、荷重5kgにて測定した場合、約5gポリマー/10分以上である。
【0010】
スチレン系ブロックコポリマー混合物(SBSおよびS−I/B−S)は、経済上の利益のために、組成物の45重量%以上の、好ましくは少なくとも47重量%のブタジエン含有率を有することが必要である。このことは、ゴム状エラストマーまたは中間ブロック部がスチレン系ブロックコポリマー混合物の主要な部分でなければならないことを意味している。これらの2つのブロックコポリマーは、各成分が溶融されて次にブレンドされる溶融ブレンドが行われて、例えばフィルムもしくはファイバへと押出しされてもよく、または2つのコポリマーは、当分野で公知であるように、フィルムまたはファイバの製造者がドライブレンドを押出機内に導入し、成分を溶融させて、確実で完全な状態のフィルムまたはファイバを押出すことができるように、ドライブレンドされてもよい。
【0011】
該方法は場合により、成分を共に溶融押出すること、当分野で公知であるように押出物を切断すること、およびブレンドされたペレット製品をフィルムまたはファイバ製造者に販売することも含むことができ、製造者は次に製品を再度溶融して、これをフィルムまたはファイバの形に押出す。フィルムまたはファイバを作製するために使用される方法にかかわらず、フィルムまたはファイバは架橋することも非架橋にすることも可能である。本発明は、非架橋フィルムまたはファイバのみに関する。組成物は、400°F(204.44℃)での窒素への連続暴露の30分後に、初期値の20%以内の粘度(Pa・秒の単位で測定)を維持している。本発明の組成物は、少なくとも1600psiの引張強度を有し、100%ヒステリシスにて少なくとも70%の回復エネルギーおよび10%未満の永久ひずみを有する。同様に、300%ヒステリシスでは、回復エネルギーは少なくとも70%であり、同時に永久ひずみは20%未満である。
【0012】
好ましいSBSブロックコポリマーは、テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマーLLCより、クレイトンDポリマーファミリとして入手してもよい。具体的には、好適なSBSのカップリングコポリマーはD1102でもよい。好適な直鎖SBSコポリマーはD1153でもよい。他の好適なSBSブロックコポリマーもデクスコから商品名ベクター、例えばベクター8508として入手できる。なお他の好適なSBSブロックコポリマーもエニケムから商品名ユーロプレンSol−T、例えば166として、ならびに韓国のクムホ石油化学株式会社からKosyn KTR 201として入手できる。なお他の好適なSBSブロックコポリマーは、台湾合成ゴム社(Taiwan Synthetic Rubber Company)からタイポール3202調達してもよい。
【0013】
好適なS−I/B−S直鎖および/またはカップリングコポリマーは、クレイトンポリマーズLLCからそれぞれD1170またはD1171として入手される。S−I−B−Sクワッドブロックコポリマーも本発明で利用してもよい(デクスコポリマーズLPより入手可能;UzeeおよびMyersによるPCT国際特許出願第2008/063807(A1)号を参照のこと。)。
【0014】
また、多様な必須ではない添加剤が本発明の組成物中にブレンドされる。一次抗酸化剤、二次抗酸化剤および炭素ラジカル捕捉剤は、本発明において一般に望ましい成分であるが、強制されるものではない。大半の抗酸化剤は、一次または二次抗酸化剤のカテゴリに分類され、異なる化学構造のために異なる官能基を有する。一次抗酸化剤は通例、ヒンダードフェノールまたはアリールアミンである。一次抗酸化剤は、アルコキシラジカルおよびペルオキシラジカルを捕捉する。スチレン系ブロックコポリマーと適合性である多くの一次抗酸化剤は、本発明の組成物中に含まれていてもよい。BASFから商品名イルガノックス、例えば1010、1076および1330で販売されている一次抗酸化剤は好適な場合がある。
【0015】
二次抗酸化剤も、一次抗酸化剤と共に使用してよい。二次抗酸化剤は通例、亜リン酸塩およびチオ相乗剤である。二次抗酸化剤は、熱および酸素に暴露されたポリマーの自動酸化サイクルの間に発生するヒドロペルオキシドを捕捉する。商品名イルガフォスで販売されている多様な組成物は、好適な場合もあり、同様にBASFが製造している。イルガフォス168などは本発明に好適な場合がある。
【0016】
炭素ラジカル捕捉剤は、第3のカテゴリの抗酸化剤と見なされる。加えて、例えば住友化学が製造している商品名スミライザーという炭素ラジカル捕捉剤を使用してもよい。スミライザーGSは実施例で使用される。
【0017】
他の必須ではない添加剤、例えばUV吸収剤、着色料および顔料、粘着付与樹脂、パラフィンオイル、低密度ポリエチレン、ポリスチレンおよび/またはタルク無機充填剤も含まれていてもよい。ポリスチレンは非常に透明度が高く、汎用ポリスチレン、例えば透明ホモポリスチレンである。すべての必須でない成分は、本発明の精神から逸脱することなく、約12重量%以下の組合されたレベルで存在してもよい。
【実施例】
【0018】
例において、材料は25mm二軸押出機で製造した。266−375°F(130−190.56℃)の温度プロフィールを用いて約300rpmのスクリュ速度にて、380−400°F(193.33−204.44℃)の範囲に及ぶ溶融温度を生じさせ、材料を処理した。製造された生成物は、350−400°F(176.67−204.44℃)の温度プロフィールを用いて約50rpmのスクリュ速度にて、約400°F(204.44℃)の溶融温度を生じさせ、単軸押出機を使用して厚さ3ミルのフィルムに加工した。生じた弾性フィルムを約41°F(5℃)に設定したチルロール上で回収した。本発明の組成物の複数の特性について試験を行った。
【0019】
ASTM D−1238に従って200℃、荷重5kgにてメルトフローレートを測定し、この測定による単位は、S−B−SまたはS−I/B−Sでは10分当たりのポリマーのグラム数、または組成物では10分当たりのエラストマー組成物のグラム数(これは表1で測定した組成物のMFRである。)に基づく。このためS−B−S、S−I/B−Sおよびエラストマー組成物の両方のメルトフローレートをASTM D−1238に従って測定する(2010年6月に使用した試験)。D1102(例で用いたSBS)は、200℃、荷重5kgで測定した場合に、14g/10分のメルトフローレートを有する。D1171(例で用いたS−I/B−S)は、200℃、荷重5kgで測定した場合に、10g/10分のメルトフローレートを有する。例および本発明で用いたSBSおよびS−I/B−Sポリマーでは、MFRは、ASTM D−1238に従って200℃および荷重5kgにて測定した場合、約5gポリマー/10分以上である。
【0020】
フィルムの引張特性およびヒステリシス特性について試験を行った。引張試験は、ドッグボーン構造物を使用して、1インチゲージ長および2インチ/分のクロスヘッド速度で行った。ヒステリシス特性の試験を行い、物品の弾性特徴を決定した。ヒステリシス実験の間に、幅1/2インチおよび長さ5インチのストリップを弾性フィルムから切り出し、10インチ/分のクロスヘッド速度にて3インチゲージ長に基づいて100%、300%または400%ひずみまで伸長させる。最大ひずみに達した後、試験片をただちに負荷0に、また10インチ/分のクロスヘッド速度に戻す。このサイクルの後に、永久ひずみを負荷0におけるひずみの%として計算する。回復エネルギーは、荷重曲線下面積から、荷重曲線下面積で割った除荷曲線下面積を引いて計算し、%で表す。完全エラストマーであれば、0%の永久ひずみおよび100%の回復エネルギーを示す。本発明では、100%ヒステリシスおよび300%ヒステリシスで回復エネルギーおよび永久ひずみの試験を行った。
【0021】
最後に、複素粘度(Pa・秒で報告)および粘度安定性を、平行平板型レオメータ内で窒素が豊富な環境で30分後に400°F(204.44℃)にて0.1rad/秒および10%ひずみで測定した。これらの測定には、1mmのギャップ設定を使用した。粘度安定性は、30分の期間にわたる最大パーセント変化として表す。
【0022】
[例1]
例1は、59重量%のスチレン−ブタジエン−スチレンカップリングコポリマー(クレイトンD1102)および40重量%のスチレン−イソプレン−スチレン直鎖コポリマー(クレイトンD1114)を0.25重量%のイルガノックス1010、0.25重量%のイルガフォス168および0.50重量%のスミライザーGSとブレンドした技術水準の組成物を使用する比較例である。このため成分の総重量は100重量%に達する。本配合物では、ブタジエン%が42.2%であることに留意する。配合物中のブタジエンがこのレベルであると、粘度は安定的ではなく、54%の最大%変化を有する。大規模な商用装置で処理する場合、このような粘度の不安定性により、ゲルが生成して、結果として不十分なフィルムまたはファイバが生じる。本組成物の試験結果を表1に示す。
【0023】
[例2]
例2は、S−I/B−Sを使用する比較例である。本組成物は99重量%のD1171であり、例1で示したのと同量のイルガノックス1010、イルガフォス168およびスミライザーGSを含み、このため本組成物の成分は合計で100重量%となる。本配合物中のブタジエンは23.8%である。安定な溶融粘度を維持しながら、実質的により高いパーセントでブタジエンを含むことは困難である。本組成物は、大規模フィルムまたはファイバ生産ではゲル生成は生じないが、引張強度は例1のほぼ半分である。例2における組成物の試験結果を表1に示す。
【0024】
[実施例3]
本発明の実施例3は、59重量%のカップリングSBSブロックコポリマー(D1102)および40重量%のD1171のS−I/B−Sを含む。添加剤は、例1で用いたのと全く同じ商品名および量である。ブタジエンパーセントは51.8%であるが、本組成物は配合物中により高いブタジエンパーセントを有し、このことによって例2に似た安定した粘度プロフィールが生じる。加えて、本配合物は、例2と比べて85%の引張強度の上昇も示している。本ブロックコポリマー組成物の試験結果を表1に示す。
【0025】
[実施例4]
実施例4は、成分を最初にドライブレンドして、次にフィルムへと溶融押出したことを除いて実施例3の再現であり、試験結果を表1に示す。実施例3では、成分を押出機内で溶融形態で共にブレンドした。もちろん実施例4において、配合物中のブタジエンパーセントは実施例3と同じままである。
【0026】
[例5]
例5では、SBSおよびS−I/B−Sの量を実施例3および4と比べて逆転させた。このため例5は、40重量%がカップリングSBSブロックコポリマーD1102であり、59重量%のS−I/B−SがD1171を使用して用いられる比較例である。本比較組成物の添加物一式は、例1で示したものと同じである。本組成物は、1600psiの所望のレベルよりも低い引張強度を生じる。結果を表1で報告する。
【0027】
[実施例6および7]
実施例6および7は、本発明をさらに実証し、それぞれ71および51重量%のカップリングSBSブロックコポリマー(D1102)ならびにそれぞれ28および48重量%のD1171のS−I/B−Sを含む。添加剤は、例1で用いたのと全く同じ商品名および量である。ブタジエンパーセントは57.6%および48.0%であり、例2と同様の安定な粘度プロフィールを生じる。加えて、これらの配合物は、1600psiを超える引張強度と、300%ヒステリシスでの70%の回復エネルギーおよび20%の永久ひずみも示す。本ブロックコポリマー組成物の試験結果を表1に示す。
【0028】
[実施例8]
実施例8は本発明をさらに実証し、66重量%のカップリングSBSブロックコポリマー(D1102)および23重量%のD1171のS−I/B−Sおよび10%の汎用結晶性ポリスチレン(200°C、荷重5kg MFRで測定した場合に18g/10分を有するEA3710、アメリカスチレニックス(AmericasStyrenics)から入手可能なポリスチレン)を含む。添加剤は、例1で用いたのと全く同じ商品名および量である。ブタジエンパーセントは52.8%であり、1600psiを超える非常に高い引張強度と、300%ヒステリシスでの80%の回復エネルギーおよび15%の永久ひずみを持つ、ゲルを含まないフィルムを生じる。本エラストマー組成物の試験結果を表1に示す。
【0029】
図面を参照して、例1の従来組成物は非常に高い初期粘度および54%の最大粘度変化を有することに留意する。このため例1の粘度の安定性は非常に低い。スチレン系ブロックコポリマーがS−I/B−Sである比較例2は、例1よりも実質的に低い初期粘度を有し、このことによって加工が容易となり、また、わずか18%の最大変化を持つ例1よりもはるかに安定である。最後に、直鎖ブロックコポリマーSBSと直鎖ブロックコポリマーS−I/B−Sとが組合されている実施例3の初期粘度は、例2と同様であり、同時に最大変化がわずか15%で同様の粘度安定性も維持している。このため本発明に関しては、粘度安定性だけに着目すれば、例2および実施例3が望ましい。しかし、実施例3のみが所望の粘度安定性および高い引張強度属性の組合せを生じる。同様に、実施例4および6−8も、表1に示すように1600psiを超える引張強度および25%未満の最大粘度変化の所望の組合せを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
(従来)技術水準の組成物は、比較例である例1である。例1は、引張強度が非常に高いが、粘度安定性は非常に低い。比較例2は比較により、粘度安定性は非常に良好であるが、引張強度は非常に低い。実施例3、4、6および7(本発明の実施例)は、例1の技術水準の組成物と同じか、やや優れた引張強度を有し、非常に良好な粘度安定性を有し、組成物中に48重量%以上のブタジエンパーセントを有する。最後に、粘度安定性の試験を行わなかった比較例5は、例2よりもはるかに低い引張強度を有する。結果として、実施例3、4、6および7と例5との間のスチレン系ブロックコポリマー配合物の相違により、SBSカップリングブロックコポリマーは組成物の少なくとも約50重量%であるべきことが示されている。
【0032】
このため本発明により、本明細書に示した目的、意図および利点を十分に満足する物品が提供されたことが明らかである。本発明を本発明の具体的な実施形態と併せて説明したが、多くの代替形態、変更形態および変形形態が上記説明に照らして当業者には明らかになることが明白である。従って本発明は、意図される請求項の精神および広範な範囲に含まれるこのようなすべての代替形態、変更形態および変形形態を包含することが意図されている。
図1