特許第5774139号(P5774139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774139
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】成形用包装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20150813BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150813BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20150813BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20150813BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20150813BHJP
   C23C 22/05 20060101ALI20150813BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20150813BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B32B15/085 A
   B32B27/00 D
   B32B27/32 E
   B29C65/48
   H01M2/02 K
   C23C22/05
   C09J123/26
   C09J175/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-556295(P2013-556295)
(86)(22)【出願日】2013年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2013050466
(87)【国際公開番号】WO2013114934
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-19811(P2012-19811)
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】駒野 淳也
(72)【発明者】
【氏名】今堀 誠
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲伸
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−230198(JP,A)
【文献】 特開2012−012088(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133663(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/133683(WO,A1)
【文献】 特開2008−210777(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041077(WO,A1)
【文献】 特開2010−092703(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01M 2/02
B29C 65/48
C09J123/26
C09J175/04
C23C 22/05
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのポリプロピレン層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記金属箔層の少なくとも内側の面に化成処理が施され、前記金属箔層の内側の化成処理面に接着剤層を介して前記ポリプロピレン層が積層され、
前記接着剤層は、前記金属箔層の内側の化成処理面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分であり、融点が50℃〜90℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる接着剤を塗布することによって形成されたものであり、
前記接着剤における前記多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、前記ポリオレフィン樹脂が有するカルボキシル基を構成するヒドロキシル基(OH)との当量比(NCO/OH)が、0.1〜9.0であり、
前記内側層としてのポリプロピレン層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分である共重合体樹脂で構成されていることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有するものである請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記接着剤層は、前記金属箔層の内側の化成処理面に前記接着剤を塗布したのち焼き付け処理することによって形成されたものである請求項1または2に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記焼き付け処理によって形成された接着剤層の内側の面にポリプロピレンが押出ラミネート法により積層されて前記ポリプロピレン層が形成されている請求項3に記載の成形用包装材。
【請求項5】
電池ケースとして用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項6】
食品または医薬品の包装材として用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項7】
金属箔の一方の面に耐熱性樹脂フィルムを第2接着剤で接着する工程と、
前記金属箔の他方の面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分であり、融点が50℃〜90℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる第1接着剤を塗布して、第1接着剤層を形成する工程と、
前記第1接着剤層の未積層面に、内側層としてのポリプロピレン層を積層する工程と、を含み、
前記第1接着剤における前記多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、前記ポリオレフィン樹脂が有するカルボキシル基を構成するヒドロキシル基(OH)との当量比(NCO/OH)が、0.1〜9.0であり、
前記金属箔として、少なくとも前記第1接着剤を塗布する側の面に化成処理が施された金属箔を用い、
前記内側層のポリプロピレンとして、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分である共重合体樹脂を用いることを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【請求項8】
前記第1接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有することを特徴とする請求項7に記載の成形用包装材の製造方法。
【請求項9】
前記第1接着剤を塗布した後、加熱により焼き付けを行って、前記第1接着剤層を形成する請求項7または8に記載の成形用包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオン二次電池等の二次電池のケースとして好適に用いられる包装材、或いは食品、医薬品の包装材として好適な包装材に関する。
【0002】
なお、本明細書では、「カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂」を「カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂」という場合があり、また「カルボキシル基を有するポリプロピレン樹脂」を「カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂」という場合がある。
【0003】
また、本明細書では、樹脂の「融点」は、JIS K7121(1987年制定)「プラスチックの転移温度測定方法」に規定された方法で、DSC(示差走査熱量計)によって昇温速度10℃/分で測定されるピーク温度(融点)を意味する。
【0004】
また、本明細書では、樹脂の「MFR(メルトフローレート)」は、JIS K7210(1999年改正版)に準拠して、130℃、2.16kg荷重(21.18N)の測定条件で測定される値である。
【背景技術】
【0005】
包装材中の食品、医薬品等の内容物の化学変化、劣化、腐敗等を防止するために、酸素や水分のバリア性に優れている金属箔を使用したラミネート包装材が、従来から広く用いられている。
【0006】
一方、近年、パソコン等のOA機器、携帯電話、ゲーム機、ヘッドフォンステレオ、電子手帳等の各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、電源部の電池としても、小型化、軽量化を図る観点からリチウムイオンポリマー二次電池が多く用いられるようになってきている。このリチウムイオンポリマー二次電池は、電池内の電解液が水と反応してフッ酸が生成すると、電池の性能低下を来したり、アルミニウム箔の腐食により液漏れが発生してしまうことから、リチウムイオンポリマー二次電池のケース(収容ケース)に用いられる材料として、水蒸気バリア性に優れた金属箔を使用した密封性の高いラミネート包装材が用いられるようになってきている。
【0007】
リチウムイオンポリマー二次電池のケース用材料(包装材)としては、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、水蒸気バリア層としてのアルミニウム箔からなる中間層、内容物のポリマー電解質を密封するためのポリオレフィンフィルムからなる内層が順に積層一体化されてなるラミネート包装材が用いられている。
【0008】
上記ラミネート包装材は、ポリマー電解質を充填するべくできるだけ容量を増大させるために、張り出し成形や深絞り成形によって立体的な直方体形状等に成形して、電池ケースを製作する。
【0009】
上記ラミネート包装材の製造方法として、少なくとも基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性PP皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体であって、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の面に基材層をドライラミネート法によって接着した後、他の化成処理面に酸変性PPを塗布、焼き付けした後、前記酸変性PP面と最内層(キャストPP)とを押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層する方法(特許文献1参照)、少なくとも基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性PP皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体であって、アルミニウムの片面に化成処理を施し、該化成処理面に基材層をドライラミネート法によって接着した後、前記アルミニウムの未処理面に化成処理を施し、該化成処理面に酸変性PPを塗布、焼き付けした後、前記酸変性PP面と最内層(キャストPP)とを押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層する方法(特許文献1参照)が知られている。
【0010】
また、少なくとも基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性PP皮膜層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体であって、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理面と基材とをドライラミネート法により積層した後、別の面に酸変性PPを塗布、焼き付けした後、該酸変性PP面に最内層を熱ラミネート法により積層する方法(特許文献2参照)、少なくとも基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性PP皮膜層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体であって、アルミニウムの片面に化成処理を施し、該化成処理と基材とをドライラミネート法により積層した後、別の面に化成処理を施し、該酸変性PPを塗布、焼き付けした後、該酸変性PP面にキャストポリプロピレンを熱ラミネート法により積層する方法(特許文献2参照)も公知である。
【0011】
また、金属箔本体と、該金属箔本体の少なくとも片面にクロメート処理により形成されたクロム化成処理皮膜とからなる金属箔の、該クロム化成処理皮膜面に、酸変成ポリオレフィンを固形分とするオルガノゾルを塗布した後、該オルガノゾルを乾燥して接着性皮膜を形成せしめ、次いで、該オルガノゾル中の酸変成ポリオレフィンと同種の酸変成ポリオレフィンフィルムを該接着性皮膜に圧着して、該金属箔と該酸変成ポリオレフィンフィルムとを貼着し、該酸変成ポリオレフィンフィルムを熱封緘層とする製造方法(特許文献3参照)も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−172779号公報
【特許文献2】特開2001−176457号公報
【特許文献3】特開2000−357494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術では、いずれも、金属箔層と最内層(内側層;シーラント層)の間のラミネート強度は十分なものではなかった。
【0014】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、電解液の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することを防止できると共に、充放電の繰り返しによる発熱や包装材の膨張、収縮の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することも防止できる、層間のラミネート強度に優れた成形用包装材を提供すること、及び、このような層間のラミネート強度に優れた成形用包装材を生産性良く製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0016】
[1]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのポリプロピレン層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記金属箔層の少なくとも内側の面に化成処理が施され、前記金属箔層の内側の化成処理面に接着剤層を介して前記ポリプロピレン層が積層され、
前記接着剤層は、前記金属箔層の内側の化成処理面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる接着剤を塗布することによって形成されたものであることを特徴とする成形用包装材。
【0017】
[2]前記接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有するものである前項1に記載の成形用包装材。
【0018】
[3]前記接着剤層は、前記金属箔層の内側の化成処理面に前記接着剤を塗布したのち焼き付け処理することによって形成されたものである前項1または2に記載の成形用包装材。
【0019】
[4]前記焼き付け処理によって形成された接着剤層の内側の面にポリプロピレンが押出ラミネート法により積層されて前記ポリプロピレン層が形成されている前項3に記載の成形用包装材。
【0020】
[5]前記内側層としてのポリプロピレン層は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分である共重合体樹脂で構成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0021】
[6]電池ケースとして用いられる前項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0022】
[7]食品または医薬品の包装材として用いられる前項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0023】
[8]金属箔の一方の面に耐熱性樹脂フィルムを第2接着剤で接着する工程と、
前記金属箔の他方の面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる第1接着剤を塗布して、第1接着剤層を形成する工程と、
前記第1接着剤層の未積層面に、内側層としてのポリプロピレン層を積層する工程と、を含み、
前記金属箔として、少なくとも前記第1接着剤を塗布する側の面に化成処理が施された金属箔を用いることを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【0024】
[9]前記第1接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有することを特徴とする前項8に記載の成形用包装材の製造方法。
【0025】
[10]前記第1接着剤を塗布した後、加熱により焼き付けを行って、前記第1接着剤層を形成する前項8または9に記載の成形用包装材の製造方法。
【0026】
[11]前記内側層のポリプロピレンとして、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分である共重合体樹脂を用いる前項8〜10のいずれか1項に記載の成形用包装材の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
[1]の発明では、金属箔層の内側の化成処理面に接着剤層を介してポリプロピレン層が積層され、接着剤層は、金属箔層の内側の化成処理面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる接着剤を塗布することによって形成されたものであるから、層間のラミネート強度を十分に確保できる。更に、前記接着剤層は、金属箔層とポリプロピレン層(内側層)の両者に対して親和性に優れているから、金属箔層とポリプロピレン層(内側層)との間の層間ラミネート強度をより一層向上させることができる。従って、例えば電池ケースとして用いた場合に、電解液の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することを防止できるし、充放電の繰り返しによる発熱や包装材の膨張、収縮の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することも防止できて、十分なシール性能を確保できる。また、金属箔層の少なくとも片面に化成処理が施されているから、内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
【0028】
[2]の発明では、接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有するので、層間ラミネート強度、耐電解液性及びシール性能をさらに向上させることができる。
【0029】
[3]の発明では、接着剤層は、接着剤を塗布したのち焼き付け処理することによって形成されたものであるから、一旦巻き取って次工程の加工ができる利点がある。
【0030】
[4]の発明では、焼き付け処理によって形成された接着剤層の内側の面にポリプロピレンが押出ラミネート法により積層されてポリプロピレン層が形成されているから、金属箔層とポリプロピレン層(内側層)との間の層間ラミネート強度をより一層向上させることができる。
【0031】
[5]の発明では、ポリプロピレン層(内側層)は、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有してなる融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分の共重合体樹脂で形成されているから、十分な耐熱性を確保できると共に、シール時に適度な流動性を実現できて優れたシール性能を確保できる。
【0032】
[6]の発明によれば、大きい層間ラミネート強度を有した電池ケース用材料が提供される。
【0033】
[7]の発明によれば、大きい層間ラミネート強度を有した食品包装材または大きい層間ラミネート強度を有した医薬品包装材が提供される。
【0034】
[8]の発明では、金属箔の一方の面に耐熱性樹脂フィルムを第2接着剤で接着する工程と、前記金属箔の他方の面に、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる第1接着剤を塗布して、第1接着剤層を形成する工程と、前記第1接着剤層の未積層面に、内側層としてのポリプロピレン層を積層する工程と、を含み、前記金属箔として、少なくとも前記第1接着剤を塗布する側の面に化成処理が施された金属箔を用いるので、層間のラミネート強度を十分に確保できる成形用包装材を製造できる。更に、前記第1接着剤層は、金属箔層とポリプロピレン層(内側層)の両者に対して親和性に優れているから、金属箔層とポリプロピレン層(内側層)との間の層間ラミネート強度をより一層向上させることができる。従って、得られた成形用包装材を例えば電池ケースに成形した場合に、電解液の影響を受けてラミネート強度が低下することを防止できるし、充放電の繰り返しによる発熱や包装材の膨張、収縮の影響を受けてラミネート強度が低下することも防止できて、十分なシール性能を確保できる。また、金属箔層の少なくとも第1接着剤を塗布する側の面に化成処理が施されているから、内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる成形用包装材を製造できる。
【0035】
[9]の発明では、第1接着剤は、さらに、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂を、前記有機溶媒に分散された状態で含有するから、層間ラミネート強度、耐電解液性及びシール性能をさらに向上させることができる。
【0036】
[10]の発明では、第1接着剤を塗布した後、加熱により焼き付けを行って、第1接着剤層を形成するので、一旦巻き取って次工程の加工ができる利点がある。
【0037】
[11]の発明では、ポリプロピレン(内側層)として、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分である共重合体樹脂を用いるから、十分な耐熱性を備えると共に、シール時に適度な流動性を実現できて優れたシール性能を確保できる成形用包装材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る成形用包装材の製造方法の一例を示す側面図である。
図3】本発明に係る成形用包装材の他の実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る成形用包装材の製造方法の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、例えば、上面が開口された略直方体形状等に成形されてリチウムイオンポリマー二次電池のケースとして用いられるものである。
【0040】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の一方の面に第2接着剤層11を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に第1接着剤層5を介してポリプロピレン層(内側層)3が積層一体化されてなる。
【0041】
前記金属箔層4の少なくとも内側の面(ポリプロピレン層3側の面)4aに化成処理が施され、該金属箔層4の内側の化成処理面4aに第1接着剤層5が積層されている。
【0042】
前記第1接着剤層5は、前記金属箔層4の内側の化成処理面4aに、少なくとも
(A)有機溶媒と、
(B)該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFR(メルトフローレート)が5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、
(C)多官能イソシアネート化合物と、
を含有してなる第1接着剤を塗布することによって形成されたものである。
【0043】
本実施形態では、前記第1接着剤層5は、前記金属箔層4の内側の化成処理面4aに前記第1接着剤を塗布したのち焼き付け処理することによって形成されたものである。
【0044】
更に、本実施形態では、前記ポリプロピレン層(内側層)3は、前記焼き付けで形成された第1接着剤層5の内側の面5aにポリプロピレンが押出ラミネート法により積層されて形成されたものである。
【0045】
上記構成の成形用包装材1は、金属箔層4の内側の化成処理面4aに第1接着剤層5を介してポリプロピレン層3が積層され、第1接着剤層5は、金属箔層の内側の化成処理面4aに、少なくとも有機溶媒と、該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる第1接着剤を塗布することによって形成されたものである上に、該第1接着剤は、金属箔層4とポリプロピレン層(内側層)3の両者に対して親和性に優れているから、金属箔層4とポリプロピレン層(内側層)3との間の層間ラミネート強度を十分に向上させることができる。従って、この包装材1を例えば電池ケースに成形した場合には、電解液の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することを防止できるし、充放電の繰り返しによる発熱や包装材の膨張、収縮の影響を受けて層間ラミネート強度が低下することも防止できて、十分なシール性能を確保できる。
【0046】
次に、本発明の成形用包装材1を製造する方法の一例について図2を参照しつつ説明する。まず、金属箔4の一方の面に耐熱性樹脂延伸フィルム(耐熱性樹脂層)2を第2接着剤11で接着する(接着工程)。例えばドライラミネート法により接着する。前記金属箔4としては、少なくとも内側の面(次工程で用いる第1接着剤を塗布する側の面)4aに化成処理が施された金属箔を用いる。この時、両面に化成処理が施された金属箔4を用いてもよい。
【0047】
前記金属箔4の他方の面(内側の面)4aに、少なくとも
(A)有機溶媒と、
(B)該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFR(メルトフローレート)が5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、
(C)多官能イソシアネート化合物と、
を含有してなる第1接着剤を塗布した後、乾燥させることによって、第1接着剤層5を形成する。好ましくは、前記第1接着剤を塗布した後、加熱により焼き付けを行って、第1接着剤層5を形成する(焼き付け処理工程)。こうして積層体30を得る(図2参照)。
【0048】
前記第1接着剤(処理液)を塗布する手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアロール法などが挙げられる。
【0049】
前記焼き付け処理の際の加熱温度は、80℃〜250℃に設定するのが好ましい。80℃以上であることで金属箔4に対する第1接着剤層5の密着性を十分に確保できると共に、250℃以下であることで第1接着剤層5の劣化を抑えることができる。
【0050】
次いで、前記積層体30の第1接着剤層5の未積層面5aにポリプロピレン層3を押出ラミネート法により積層する(押出ラミネート工程)。この押出ラミネートの際に、図2に示すように、前記積層体30及び押出ポリプロピレン3Xを、ゴムロール21と冷却ロール22とで挟圧することによって(図2参照)、図1に示すような本発明の成形用包装材1を得る。
【0051】
前記冷却ロール22の表面の材質としては、特に限定されるものではなく、例えばステンレス等の一般的な材料を使用できる。
【0052】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばPETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層で形成されていても良い。
【0053】
前記耐熱性樹脂層2の厚さは、12μm〜50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは12μm〜50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0054】
前記金属箔層4は、成形用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0055】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面4a(第1接着剤層5側の面)に、化成処理が施されている。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸、クロム酸及びフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩及び非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂又は/及びフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液
を塗工した後乾燥することにより化成処理を施す。
【0056】
前記第1接着剤層5は、前記金属箔層4の内側の化成処理面4aに、少なくとも
(A)有機溶媒と、
(B)該有機溶媒に溶解され、130℃で測定したMFR(メルトフローレート)が5g/10分〜42g/10分である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、
(C)多官能イソシアネート化合物と、
を含有する第1接着剤(処理液)を塗布したのち乾燥させることによって形成された皮膜(塗膜)である。前記第1接着剤(処理液)を塗布したのち加熱による焼き付け処理を行うことによって前記皮膜(塗膜)を形成するのが好ましい。
【0057】
前記第1接着剤(処理液)は、更に、
(D)前記有機溶媒に分散された、融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂
を含有する構成であるのが好ましい。
【0058】
前記第1接着剤(処理液)を構成する有機溶媒(A成分)としては、接着剤組成物の加熱等により、揮発させ、除去することが容易な有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、n−ヘキサン等の脂肪族系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系有機溶媒等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
中でも、前記有機溶媒(A成分)としては、アルコール系有機溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール等)を少なくとも含む構成であるのが好ましく、この場合には接着剤の貯蔵安定性を向上させることができる。さらに、前記有機溶媒の全量に対するアルコール系有機溶媒の含有比率は0.1質量%〜20質量%に設定されるのが好ましく、中でも0.3質量%〜10質量%に設定されるのが特に好ましい。
【0060】
前記カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(B成分、D成分)としては、例えば、不飽和カルボン酸又は/及びその誘導体で変性されたポリオレフィン等が挙げられる。前記変性としては、グラフト付加変性などが挙げられる。
【0061】
前記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
これらの中でも、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物でグラフト付加変性されたポリプロピレンを用いるのが好ましく、特に無水マレイン酸でグラフト付加変性されたポリプロピレンが好適である。
【0063】
前記カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(B成分、D成分)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンを有機溶媒に溶解させ、これをラジカル発生剤の存在下にカルボン酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶液法、ポリプロピレンを加熱溶融させ、これをラジカル発生剤の存在下にカルボン酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶融法等を例示できる。
【0064】
前記B成分及びD成分において、一般に、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂の平均分子量(重量平均分子量など)が小さくなるとMFRは大きくなり、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂の平均分子量(重量平均分子量など)が大きくなるとMFRは小さくなる。
【0065】
前記B成分に関して、130℃で測定したMFRが5g/10分未満では、層間ラミネート強度が低下するし、耐電解液性に劣ったものになり、また130℃で測定したMFRが42g/10分を超えると、層間ラミネート強度が低下するし、耐電解液性に劣ったものになる。
【0066】
また、前記B成分におけるカルボキシル基の含有量は、接着性向上の観点から、ポリオレフィン樹脂1g当たり、好ましくは0.10mmol〜2.0mmol、特に好ましくは0.15mmol〜1.0mmolである。カルボキシル基の含有量が前記好適範囲内であれば、より大きいラミネート強度を得ることができる。
【0067】
また、前記B成分の融点は、好ましくは50℃〜90℃、より好ましくは60℃〜85℃である。融点が前記好適範囲内であれば、高温下においても大きいラミネート強度を得ることができる。
【0068】
前記D成分の融点は、120℃〜170℃、好ましくは130℃〜160℃である。このようなD成分(融点が120℃〜170℃である、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂)を含む場合には、80℃程度の高い温度において層間ラミネート強度を向上させることができる。一方、融点が170℃を越えると、ラミネートの不良が発生する場合があり、また接着時の接着温度を高くする必要があり、作業性が低下する場合がある。
【0069】
また、前記D成分におけるカルボキシル基の含有量は、接着性向上の観点から、ポリオレフィン樹脂1g当たり、好ましくは0.01mmol〜2.0mmol、特に好ましくは0.1mmol〜1.0mmolである。カルボキシル基の含有量が前記好適範囲内であれば、より大きいラミネート強度を得ることができる。
【0070】
前記多官能イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば、特に限定されず、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物を用いることができる。具体例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、及びこれらの化合物をイソシアヌレート変性、ビュレット変性、トリメチロールプロパン等の多価アルコールでアダクト変性した変性物、イソシアネートをブロック剤でマスクして安定化したブロック型イソシアネート等が挙げられる。中でも、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いるのが好ましい。前記多官能イソシアネート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記第1接着剤(処理液)において、前記多官能イソシアネート化合物は、通常、有機溶媒に溶解している。
【0071】
前記第1接着剤(処理液)におけるカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂(B成分、D成分)と、多官能イソシアネート化合物との含有割合については、特に限定されないが、多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、ポリオレフィン樹脂(B成分、D成分)が有するカルボキシル基を構成するヒドロキシル基(OH)との当量比(NCO/OH)が、0.01〜12.0であるのが好ましい。前記当量比(NCO/OH)が0.01〜12.0であれば、特に初期の接着性に優れた第1接着剤組成物とすることができると共に、十分な架橋密度を有し、且つ柔軟性等に優れた硬化物(第1接着剤層)を形成することができる。中でも、前記当量比(NCO/OH)は、より好ましくは0.04〜12.0、更に好ましくは0.1〜12.0、特に好ましくは0.1〜9.0である。なお、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂としてB成分のみを含有する場合には、当量比=(NCO)/(B成分のOH)であり、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂としてB成分及びD成分を含有する場合には、当量比=(NCO)/(B成分のOH+D成分のOH)である。
【0072】
前記D成分を含有させる場合において、前記第1接着剤(処理液)におけるB成分とD成分の含有質量割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、好ましくはB成分が1質量%〜70質量%、D成分が99質量%〜30質量%であり、より好ましくはB成分が3質量%〜50質量%、D成分が97質量%〜50質量%であり、特に好ましくはB成分が5質量%〜40質量%、D成分が95質量%〜60質量%である。前記好ましい範囲内であれば、常温(25℃)及び高温下において、大きいラミネート強度を得ることができる。
【0073】
前記焼き付け処理によって形成される第1接着剤層(皮膜)5の形成量は、固形分で0.5g/m2〜5.0g/m2に設定されるのが好ましい。0.5g/m2以上であることで十分な接着力を得ることができると共に、5.0g/m2以下であることで乾燥時間が短くて済み加工効率を向上できるし、包装材1中に溶媒が残存することを防止でき、また水蒸気バリア性も向上できる。
【0074】
前記ポリプロピレン層(内側層)(シーラント層)3を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば
1)共重合成分としてプロピレンとエチレンを含有するランダム共重合体樹脂
2)共重合成分としてプロピレン、エチレン及びブテンを含有する共重合体樹脂
3)共重合成分としてプロピレンとエチレンを含有するブロック共重合体樹脂
等が挙げられる。
【0075】
前記1)〜3)の共重合体樹脂にオレフィン系の熱可塑性エラストマーがブレンドされていても良い。
【0076】
前記ポリプロピレン層(内側層)3を構成する樹脂としては、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、融点が135℃〜155℃の共重合体樹脂を用いるのが好ましい。前記融点が135℃〜155℃の共重合体樹脂とは、DSC(示差走査熱量計)によって昇温速度10℃/分で測定されるピーク温度(融点)が135℃〜155℃である樹脂を意味する。前記融点が135℃以上であることで十分な耐熱性を確保できると共に、融点が155℃以下であることで優れたシール性を確保することができる。
【0077】
前記ポリプロピレン層(内側層)3を構成する樹脂としては、共重合成分として少なくともプロピレンとエチレンを含有し、230℃で測定したMFRが6g/10分〜25g/10分の共重合体樹脂を用いるのが好ましい。MFRが6g/10分以上であることで押出ラミネートを容易に行うことができるし、MFRが25g/10分以下であることでシール時の樹脂の流動性が適度なものとなり一層優れたシール性を確保できる。
【0078】
前記ポリプロピレン層3の厚さは、10μm〜80μmであるのが好ましい。10μm以上であることで十分なシール強度を得ることができると共に80μm以下であることで端面からの水蒸気バリアを損ねることが十分に防止される。前記ポリプロピレン層3は、単層で構成されていても良いし、或いはポリプロピレンの共押出やポリプロピレンの押出ラミネートを2回行うことにより複層で構成されていても良い。後者の場合において、例えば流動性の低いポリプロピレン層の外側(最内層側)に流動性の高いポリプロピレン層を配置すれば、シール時のポリプロピレン層の異常流れによりシール厚みが極端に薄くなることを十分に防止することができる。
【0079】
前記第2接着剤層11を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えばポリオール成分及びイソシアネート成分を含有してなる二液硬化型のウレタン系接着剤等が挙げられる。この二液硬化型のウレタン系接着剤は、特にドライラミネート法で接着する際に好適に用いられる。前記ポリオール成分としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。前記イソシアネート成分としては、特に限定されるものではないが、例えばTDI(トリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、MDI(メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート)等のジイソシアネート類などが挙げられる。前記第2接着剤層11の厚さは、2μm〜5μmに設定されるのが好ましく、中でも3μm〜4μmに設定されるのが特に好ましい。
【0080】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、無機系や有機系のアンチブロッキング剤、アマイド系のスリップ剤が前記内側層に添加されていても良い。
【0081】
本発明に係る成形用包装材1を、例えば成形高さの深い直方体形状等の各種形状に成形(張り出し成形、深絞り成形等)することにより、電池用ケース、食品の包装材、医薬品の包装材等を得ることができる。このような成形を行って得られた電池用ケース、食品包装材、医薬品包装材は、金属箔層4と第1接着剤層5の層間に内容物が侵入することが防止されるので、例えば電池用ケースとした場合には、電解液の影響を受けてラミネート強度が低下することを防止できるし、充放電の繰り返しによる発熱や包装材の膨張、収縮の影響を受けてラミネート強度が低下することを防止できて、十分なシール性能を維持できる。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0083】
<原材料>
(合成例1)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂J
メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR:10g/10分、融点:85℃;以下、「プロピレン系ランダム共重合体A」という)100質量部、無水マレイン酸2質量部、ラウリルメタクリレート1質量部及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.5質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応させた。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂J(B成分)を合成した。このカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Jは、130℃で測定したMFRが12g/10分であり、カルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂(樹脂J)1g当たり0.4mmolであった。
【0084】
(合成例2)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂K
プロピレン系ランダム共重合体Aに代えて、メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体B(MFR:5g/10分)を用いた以外は、合成例1と同様にして、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂K(B成分)を合成した。このカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Kは、130℃で測定したMFRが8g/10分であり、カルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂(樹脂K)1g当たり0.4mmolであった。
【0085】
(合成例3)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂L
プロピレン系ランダム共重合体Aに代えて、メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体C(MFR:36g/10分)を用いた以外は、合成例1と同様にして、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂L(B成分)を合成した。このカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Lは、130℃で測定したMFRが40g/10分であり、カルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂(樹脂K)1g当たり0.4mmolであった。
【0086】
(合成例4)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂X
プロピレン系ランダム共重合体Aに代えて、メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体D(MFR:1g/10分)を用いた以外は、合成例1と同様にして、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂X(B成分)を合成した。このカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Xは、130℃で測定したMFRが3g/10分であり、カルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂(樹脂X)1g当たり0.4mmolであった。
【0087】
(合成例5)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Y
プロピレン系ランダム共重合体Aに代えて、メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体E(MFR:42g/10分)を用いた以外は、合成例1と同様にして、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Y(B成分)を合成した。このカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Yは、130℃で測定したMFRが45g/10分であり、カルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂(樹脂Y)1g当たり0.4mmolであった。
【0088】
(合成例6)カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂M
プロピレン重合体(融点:163℃)100質量部及びトルエン435質量部を撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに入れ、撹拌下、140℃に昇温し、プロピレン重合体を完全に溶解させた。この溶液を140℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を、それぞれ4時間かけて同時に滴下し、滴下終了後、更に140℃で1時間撹拌して、後反応を行い、変性重合体を得た。次いで、この変性重合体含有溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えることによって変性重合体を析出させた。析出した変性重合体を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥を行って、変性重合体を回収した。この変性重合体は、変性重合体における無水マレイン酸のグラフト量は2.8質量%であり、融点が156℃、カルボキシル基の含有量が変性重合体1g当たり0.6mmolであった。
【0089】
次に、前記得られた変性重合体15質量部及びトルエン85質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、130℃に加熱して変性重合体を完全に溶解させた。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で30℃まで降温して、固形分(カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂M)15質量%の乳白色の均一な分散液Pを得た。前記カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂M(D成分)の、DSCで測定した融点は156℃であった。
【0090】
(合成例7)カルボキシル基を含有しないポリプロピレン樹脂N
メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体F(MFR:12g/10分)15質量部及びトルエン85質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、撹拌下、130℃に加熱して共重合体Fを完全に溶解させた。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で30℃まで降温して、固形分(カルボキシル基を含有しないポリプロピレン樹脂N)15質量%の乳白色の均一な分散液Qを得た。
【0091】
次に、実施例1〜8及び比較例1〜4について説明する。
【0092】
<実施例1>
トルエン(有機溶媒;A成分)850g、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂J(B成分)150g、HDI(多官能イソシアネート化合物;C成分)15gを配合してなる第1接着剤E(処理液)を作製した。前記第1接着剤Eの固形分含有率は15質量%である。また、前記第1接着剤Eにおいて、B成分(カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂)は、溶媒のトルエンに溶解している。
【0093】
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が10mg/m2となるようにした後、このアルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面4aに、前記第1接着剤E(処理液)をグラビアロール法で塗布した後、200℃の熱風乾燥炉を通過させることによって、加熱による焼き付けを行って、固着量2g/m2の第1接着剤層5を形成せしめて、積層体30を得、次いで、図2に示すように、押出機の押出ダイス20から押し出したプロピレン−エチレン共重合体樹脂(DSCで測定した融点が140℃、230℃で測定したMFRが21g/10分)3Xを40μmの厚さで前記第1接着剤層5の未積層面(何も積層されていない面)5aに押出ラミネート法により積層一体化することにより、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0094】
<実施例2>
第1接着剤Eに代えて、トルエン(有機溶媒;A成分)170g、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂J(B成分)30g、HDI(多官能イソシアネート化合物;C成分)15g、合成例6で得た乳白色分散液P 800g(トルエン680g及びカルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂M120g)を配合してなる第1接着剤F(処理液)を用いると共に、押し出したプロピレン−エチレン共重合体樹脂3Xの厚さを80μmに設定した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0095】
なお、実施例2において第1接着剤Fの固形分含有率は15質量%である。この第1接着剤F(処理液)において、B成分は、溶媒のトルエンに溶解しているが、D成分(カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂M)はトルエンに溶解せずトルエン中に分散している。
【0096】
<実施例3>
前記押出樹脂3Xとして、プロピレン−エチレン共重合体樹脂(DSCで測定した融点が140℃、230℃で測定したMFRが21g/10分)に代えて、プロピレン−エチレン共重合体樹脂(DSCで測定した融点が155℃、230℃で測定したMFRが22g/10分)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0097】
<実施例4>
前記押出樹脂3Xとして、プロピレン−エチレン共重合体樹脂(DSCで測定した融点が140℃、230℃で測定したMFRが21g/10分)に代えて、プロピレン−エチレン共重合体樹脂(DSCで測定した融点が155℃、230℃で測定したMFRが25g/10分)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0098】
<実施例5>
B成分として、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Jに代えて、130℃で測定したMFRが8g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Kを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。なお、この実施例5で使用する第1接着剤では、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Kは、溶媒のトルエンに溶解している。
【0099】
<実施例6>
B成分として、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Jに代えて、130℃で測定したMFRが40g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Lを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。なお、この実施例6で使用する第1接着剤では、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Lは、溶媒のトルエンに溶解している。
【0100】
<実施例7>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が10mg/m2となるようにした後、このアルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面4aに、前記実施例1で用いた第1接着剤E(処理液)をグラビアロール法で塗布した後、200℃の熱風乾燥炉を通過させることによって、加熱による焼き付けを行って、固着量2g/m2の第1接着剤層5を形成せしめて、積層体30を得、次いで、図4に示すように、前記第1接着剤層5の未積層面(何も積層されていない面)5aに、押出機の押出ダイス20から押し出した押出ポリプロピレン樹脂12を介してプロピレン−エチレンランダム共重合体フィルム(DSCで測定した融点が140℃、厚さ60μm)3をサンドイッチラミネート法により積層一体化することにより、図3に示す成形用包装材1を得た。
【0101】
<実施例8>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が10mg/m2となるようにした後、このアルミニウム箔4の一方の面に厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム)(耐熱性樹脂層)2を二液硬化型のウレタン系接着剤11でドライラミネートし、次いでアルミニウム箔4の他方の面4aに、前記実施例1で用いた第1接着剤E(処理液)をグラビアロール法で塗布した後、200℃の熱風乾燥炉を通過させることによって、加熱による焼き付けを行って、固着量2g/m2の第1接着剤層5を形成せしめて、積層体30を得、次いで、前記第1接着剤層5の未積層面(何も積層されていない面)5aに、プロピレン−エチレンランダム共重合体フィルム(DSCで測定した融点が140℃、厚さ40μm)を熱ラミネート法(耐熱性樹脂層面を165℃の熱ロールに接触させる態様で一対の熱ロール間で挟圧する)により積層一体化することにより、成形用包装材1を得た。
【0102】
<実施例9>
第1接着剤Eに代えて、トルエン(有機溶媒;A成分)846g、イソプロピルアルコール(有機溶媒;A成分)4g、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂J(B成分)150g、HDI(多官能イソシアネート化合物;C成分)15gを配合してなる第1接着剤Pを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。なお、前記第1接着剤Pの固形分含有率は15質量%である。また、前記第1接着剤Pにおいて、B成分(カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂)は、有機溶媒に溶解している。
【0103】
<実施例10>
第1接着剤Eに代えて、トルエン(有機溶媒;A成分)842g、イソプロピルアルコール(有機溶媒;A成分)8g、130℃で測定したMFRが8g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂K(B成分)150g、HDI(多官能イソシアネート化合物;C成分)15gを配合してなる第1接着剤Qを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。なお、前記第1接着剤Qの固形分含有率は15質量%である。また、前記第1接着剤Qにおいて、B成分(カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂)は、有機溶媒に溶解している。
【0104】
<比較例1>
第1接着剤Eに代えて、ポリオール成分及びイソシアネート成分を含有してなる二液硬化型のウレタン系第1接着剤Zを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0105】
<比較例2>
第1接着剤Eに代えて、合成例7で得た乳白色分散液Qを1000g(トルエン850g及びカルボキシル基を含有しないポリプロピレン樹脂N 150g)、HDI(多官能イソシアネート化合物)15gを配合してなる第1接着剤Wを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。なお、前記第1接着剤Wにおいて、カルボキシル基を含有しないポリプロピレン樹脂Nは、トルエンに溶解せずトルエン中に分散している。
【0106】
<比較例3>
B成分として、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Jに代えて、130℃で測定したMFRが3g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Xを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0107】
<比較例4>
B成分として、130℃で測定したMFRが12g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Jに代えて、130℃で測定したMFRが45g/10分である、カルボキシル基含有ポリプロピレン樹脂Yを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0108】
なお、上記各実施例、各比較例の説明で記載した融点は、株式会社島津製作所製の自動示差走査熱量計(品番:DSC−60A)を用いて昇温速度20℃/分で測定した融点である。
【0109】
上記のようにして得られた各成形用包装材について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
<ラミネート強度評価法>
成形用包装材を15mm幅にカットして測定片を作成し、80℃の雰囲気下で前記測定片のラミネート強度(第1接着剤層5とポリプロピレン層(内側層)3とのラミネート強度)を引張試験機で測定した。
(判定基準)
「◎」…5N/15mm幅以上のラミネート強度を有する
「○」…3N/15mm幅以上5N/15mm幅未満のラミネート強度を有する
「×」…ラミネート強度が3N/15mm幅未満である。
【0114】
<耐電解液性評価法>
成形用包装材を15mm幅にカットして測定片を作成し、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを1:1の容量比で混合した混合溶媒に対して六フッ化リンリチウム塩を1モル/Lの濃度となるように溶解せしめた溶液及び前記測定片を四フッ化エチレン樹脂製の広口ボトルに入れて85℃のオーブン中に1週間保存した後、測定片を取り出して第1接着剤層5とポリプロピレン層(内側層)3の界面で剥離して両者間のラミネート強度(接着強度)を測定した。
(判定基準)
「◎」…測定された接着強度が、初期接着強度に対して保持率90%以上
「○」…測定された接着強度が、初期接着強度に対して保持率60%以上95%未満
「△」…測定された接着強度が、初期接着強度に対して保持率30%以上60%未満
「×」…測定された接着強度が、初期接着強度に対して保持率30%未満(浸漬中に層間剥離したものを含む)。
【0115】
<シール性能評価法>
株式会社オリエンテック製のテンシロンRTA−100及び株式会社ボールドウィン製の恒温槽TCF−III1−Bを用いて25℃及び80℃の条件下でシール剥離試験を行いシール性能の評価を行った。シール条件は、各成形用包装材について、シール幅5mm、シール圧0.3MPa、シール時間1秒、シール温度160℃及び180℃両面加熱で行った。
(シール性能判定基準)
「◎」…160℃でシールし25℃でシール剥離試験を行った場合及び180℃でシールし80℃でシール剥離試験を行った場合のいずれにおいても30N/15mm以上の強度が得られたもの
「○」…160℃でシールし25℃でシール剥離試験を行った場合及び180℃でシールし80℃でシール剥離試験を行った場合のいずれにおいても25N/15mm以上30N/15mm未満の強度が得られたもの
「×」…上記に該当しなかったもの(シール性能が悪い)。
【0116】
<接着剤(処理液)の貯蔵安定性評価法>
各実施例、各比較例で使用した第1接着剤(処理液)の貯蔵安定性を次のようにして評価した。即ち、内容量110mLの各ガラス製容器内にそれぞれ各第1接着剤(処理液)約100mLを入れたものを25℃の温度条件下で1ヶ月間静置した。1ヶ月間静置後の接着剤液の状態を目視により観察し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…白濁や増粘がなく、外観や液の状態が初期と変わらなかった(変化がなかった;合格)
「○」…僅かな白濁や僅かな増粘が認められたが、流動性を維持していた(接着剤として問題なく使用できる;合格)
「×」…白濁し、固化していた。
【0117】
表1、2から明らかなように、本発明の実施例1〜10の成形用包装材は、十分な層間ラミネート強度が得られ、耐電解液性、シール性能に優れていた。また、実施例1〜10で使用した第1接着剤は、貯蔵安定性が良好であった。
【0118】
これに対し、第1接着剤としてウレタン系接着剤を用いた比較例1の成形用包装材では、耐電解液性に劣っていた。また、第1接着剤としてカルボキシル基を有しないポリオレフィン樹脂を含むものを用いた比較例2の成形用包装材では、層間ラミネート強度、耐電解液性、シール性能のいずれも劣っていた。また、第1接着剤として、130℃で測定したMFRが5g/10分〜42g/10分の範囲を逸脱するカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂を含むものを用いた比較例3、4の成形用包装材では、層間ラミネート強度、シール性能に劣っていた。
【0119】
本願は、2012年2月1日付で出願された日本国特許出願の特願2012−19811号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
1…成形用包装材
2…耐熱性樹脂層(外側層)
3…ポリプロピレン層(内側層)
4…金属箔層
4a…金属箔層の内側の化成処理面
5…接着剤層(第1接着剤層)
5a…接着剤層の内側の面
11…第2接着剤(層)
図1
図2
図3
図4