(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774143
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】窒素酸化物浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20150813BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20150813BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20150813BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
B01J29/76 AZAB
B01D53/86 222
B01J29/70 A
F01N3/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-6416(P2014-6416)
(22)【出願日】2014年1月17日
(62)【分割の表示】特願2010-511856(P2010-511856)の分割
【原出願日】2008年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-76448(P2014-76448A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2008-128859(P2008-128859)
(32)【優先日】2008年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 潔
【審査官】
延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−246341(JP,A)
【文献】
特開2007−313486(JP,A)
【文献】
特開平04−215821(JP,A)
【文献】
特開平05−123577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86
B01D 53/88
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス又は金属材料からなる担体上に、希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持した二酸化チタンとを含む層を有することを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項2】
エンジン排ガス中の窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化用触媒であることを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項3】
前記担体がハニカム形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項4】
前記βゼオライトの原料がSiO2/Al2O3=10〜2000/1のモル比であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素酸化物を選択的に還元する窒素酸化物浄化用触媒、特にディーゼルエンジン排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元する窒素酸化物浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NH
3によって窒素酸化物を選択的に還元する種々の窒素酸化物浄化用触媒が開発されており、例えば窒素酸化物浄化用触媒としては、鉄及びランタンによってイオン交換されたβ型ゼオライトを含む触媒(特許文献1参照)や、Fe及び希土類金属がイオン交換されたゼオライトからなる触媒(特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
しかしながら、窒素酸化物に対するそれらの触媒の選択還元活性や耐久性は必ずしも充分であるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−177570号公報
【特許文献2】特開2006−305423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は窒素酸化物に対する選択還元活性が高く、耐久後の性能低下が小さい窒素酸化物浄化触媒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、希土類金属の酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物を担持した二酸化チタンとを併用することにより、選択還元活性が高く、耐久後の性能低下が小さい窒素酸化物浄化触媒が得られることを見出し、更に、それらに鉄の酸化物又は水酸化物を担持させることにより耐久性が更に改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の窒素酸化物浄化用触媒はセラミックス又は金属材料からなる担体上に、希土類金属の酸化物
及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物
及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持した二酸化チタンとを含む層を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、
エンジン排ガス中の窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化用触媒であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、窒素酸化物に対する選択還元活性が高く、耐久後の性能低下が小さく、特にディーゼルエンジン排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元するのに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、希土類金属の酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物を担持した二酸化チタンとを併用したものである。従来公知の希土類金属の酸化物を担持したβゼオライトに希土類金属の酸化物を担持した二酸化チタンを配合することにより、窒素酸化物に対する選択還元活性が高くなり、耐久後の性能低下が小さくなる理由については現時点では不明である。
【0012】
希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持した二酸化チタンとを併用した場合には、窒素酸化物に対する選択還元活性が高くなり、耐久後の性能低下が更に小さくなる(即ち、耐久性が向上する。)。
【0013】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒で用いることができる希土類金属の酸化物については、従来公知の窒素酸化物浄化用触媒においてゼオライトに担持させて用いられている全ての希土類金属の酸化物を用いることができ、その種類については特に制限はない。例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリウム等の酸化物を用いることができる。
【0014】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、通常は、セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている希土類金属の酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物を担持した二酸化チタンとからなる窒素酸化物浄化用触媒の層、又は希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持した二酸化チタンとからなる窒素酸化物浄化用触媒の層とからなる。
【0015】
本発明で用いるセラミックス又は金属材料からなる担体の形状は、特に限定されるものではないが、一般的にはハニカム、板、ペレット等の形状であり、好ましくはハニカム形状である。また、このような担体の材質としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3−2SiO
2)、コージェライト(2MgO−2Al
2O
3−5SiO
2)等のセラミックスや、ステンレス等の金属材料が挙げられる。なお、コージェライト材料は熱膨張係数が1.0×10
-6/℃と極めて低いので特に有用である。
【0016】
セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている希土類金属の酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物を担持した二酸化チタンとからなる窒素酸化物浄化用触媒の層とからなる窒素酸化物浄化用触媒においては、βゼオライトの担持量が60〜300g/Lであり、二酸化チタンの担持量が1〜100g/Lであり、希土類金属の酸化物の担持量が1〜100g/Lであることが好ましい。各成分の担持量が上記の下限値よりも少ない場合には本発明で目的としている効果が小さく、また、各成分の担持量が上記の上限値よりも多い場合には、その増加量に見合った効果が得られないだけでなく、担体に塗り付けにくくなるので製造が困難になる傾向がある。
【0017】
また、セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に担持されている希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持したβゼオライトと希土類金属の酸化物及び鉄の酸化物又は水酸化物を担持した二酸化チタンとからなる窒素酸化物浄化用触媒の層とからなる窒素酸化物浄化用触媒においては、βゼオライトの担持量が60〜300g/Lであり、二酸化チタンの担持量が1〜100g/Lであり、希土類金属の酸化物の担持量が1〜100g/Lであり、鉄の酸化物又は水酸化物の担持量が鉄の量として(即ち鉄元素量に換算して)1〜50g/Lであることが好ましい。各成分の担持量が上記の下限値よりも少ない場合には本発明で目的としている効果が小さく、また、各成分の担持量が上記の上限値よりも多い場合には、その増加量に見合った効果が得られないだけでなく、担体に塗り付けにくくなるので製造が困難になる傾向がある。
【0018】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒を製造する際には、βゼオライト原料としてSiO
2/Al
2O
3のモル比が10〜2000/1のものを用いることが好ましい。また、二酸化チタンとなる原料として焼成により二酸化チタンとなる化合物、例えば二酸化チタンゾル、塩化チタン、硫酸チタン、チタンテトライソプロポキシドや、二酸化チタン自体等を用いることができる。
【0019】
希土類金属の酸化物となる原料として焼成により希土類金属の酸化物となる化合物、例えば希土類金属の硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩等を用いることができる。また、焼成により鉄の酸化物又は水酸化物となる化合物として、例えば硝酸鉄、塩化鉄、酢酸鉄、水酸化鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、燐酸鉄等を用いることができる。本発明においては、鉄の酸化物又は水酸化物は焼成条件によりFe
2O
3、FeOOH、Fe
3O
4、FeO等であり得る。
【0020】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は種々の方法によって調製することができる。例えば、βゼオライト、焼成により二酸化チタンとなる化合物及びバインダーを含む水性スラリーを担体にコートし、乾燥させ、焼成した後、焼成により希土類金属の酸化物となる化合物を含む水溶液、又は焼成により希土類金属の酸化物となる化合物及び焼成により鉄の酸化物又は水酸化物となる化合物を含む水溶液中に浸漬して含浸させ、水溶液から取り出した後、乾燥させ、焼成して調製することができる。また、βゼオライト、焼成により二酸化チタンとなる化合物、焼成により希土類金属の酸化物となる化合物及びバインダーを含む水性スラリー、又はβゼオライト、焼成により二酸化チタンとなる化合物、焼成により希土類金属の酸化物となる化合物、焼成により鉄の酸化物又は水酸化物となる化合物及びバインダーを含む水性スラリーを担体にコートし、乾燥させ、焼成して調製することができる。更に、βゼオライト、焼成により二酸化チタンとなる化合物、焼成により希土類金属の酸化物となる化合物及びバインダーを含む水性スラリーを担体にコートし、乾燥させ、焼成した後、焼成により鉄の酸化物又は水酸化物となる化合物を含む水溶液中に浸漬して含浸させ、水溶液から取り出した後、乾燥させ、焼成して調製することもできる。
【0021】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒はNH
3の存在下で窒素酸化物を選択的に還元浄化するものである。それで、排ガス中にNH
3を供給する必要があり、公知のようにNH
3ガスを直接供給する方法、アンモニア水を添加する方法、あるいは尿素、ヘキサメチレンテトラミンなど分解してNH
3を生成する物質を添加する方法等を採用することができる。
【0022】
以下に、実施例、比較例及び試験例に基づいて本発明を説明する。
実施例1
100質量部のβゼオライト、67質量部のTiO
2ゾル(TiO
2濃度30質量%)、100質量部のSiO
2系バインダー(SiO
2濃度50質量%)及び200質量部の純水をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリーをモデルガス評価用のコージェライト製担体(Φ25.4mm、L20mm、400セル)に、βゼオライトの担持量が100g/Lとなり、TiO
2の担持量が20g/Lとなるようにコートし、乾燥させ、500℃で焼成した。次いで、硝酸セリウム、硝酸鉄及び純水からなる水溶液中に浸漬して含浸させ、水溶液から取り出した後、乾燥させ、500℃で焼成して窒素酸化物浄化用触媒を得た。この時のCeO
2の担持量が20g/Lとなり、Feの担持量が10g/Lとなるように調整した。
【0023】
実施例2
硝酸セリウム、硝酸鉄及び純水からなる水溶液の代わりに、硝酸セリウム及び純水からなる水溶液を用いた以外は実施例1と同様に処理して窒素酸化物浄化用触媒を得た。この時のβゼオライトの担持量が100g/Lとなり、TiO
2の担持量が20g/Lとなり、CeO
2の担持量が20g/Lとなるように調整した。
【0024】
比較例1
100質量部のβゼオライト、100質量部のSiO
2系バインダー(SiO
2濃度50質量%)及び200質量部の純水をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリーをモデルガス評価用のコージェライト製担体(Φ25.4mm、L20mm、400セル)にβゼオライトの担持量が100g/Lとなるようにコートし、乾燥させ、500℃で焼成した。次いで、硝酸鉄及び純水からなる水溶液中に浸漬して含浸させ、水溶液から取り出した後、乾燥させ、500℃で焼成して窒素酸化物浄化用触媒を得た。この時のFeの担持量が10g/Lとなるように調整した。
【0025】
<排気ガス浄化性能試験>
実施例1、実施例2及び比較例1で得た各々の窒素酸化物浄化用触媒を評価装置に充填し、下記の第1表に示す組成の排気モデルガスを空間速度50000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で400℃まで昇温させ、NOの浄化率を測定した。400℃におけるモデルガスの浄化率(%)は第2表に示す通りであった。
【0028】
実施例3
100質量部のβゼオライト、67質量部のTiO
2ゾル(TiO
2濃度30質量%)、50質量部の硝酸セリウム、100質量部のSiO
2系バインダー(SiO
2濃度50質量%)及び200質量部の純水をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリーをモデルガス評価用のコージェライト製担体(φ25.4mm、L20mm、400セル)に、βゼオライトの担持量が100g/Lとなり、TiO
2の担持量が20g/Lとなり、CeO
2の担持量が20g/Lとなるようにコートし、乾燥させ、500℃で焼成した。次いで、硝酸鉄及び純水からなる水溶液中に浸漬して含浸させ、水溶液から取り出した後、乾燥させ、500℃で焼成して窒素酸化物浄化用触媒を得た。この時のFeの担持量が10g/Lとなるように調整した。
【0029】
実施例4
100質量部のβゼオライト、67質量部のTiO
2ゾル(TiO
2濃度30質量%)、50質量部の硝酸セリウム、72質量部の硝酸鉄、100質量部のSiO
2系バインダー(SiO
2濃度50質量%)及び200質量部の純水をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリーをモデルガス評価用のコージェライト製担体(φ25.4mm、L20mm、400セル)に、βゼオライトの担持量が100g/Lとなり、TiO
2の担持量が20g/Lとなり、CeO
2の担持量が20g/Lとなり、Feの担持量が10g/Lとなるようにコートし、乾燥させ、500℃で焼成して窒素酸化物浄化用触媒を得た。
【0030】
比較例2
硝酸鉄水溶液中にβゼオライトを投入し、蒸発乾固法により鉄を9質量%担持したβゼオライト(粉末A)を得た。また、アンモニア水溶液にTiO
2ゾルを添加し、次いで硝酸セリウムを添加し、ろ過し、乾燥させ、500℃で焼成してCeO
2−TiO
2複合酸化物(粉末B)を得た。この場合にCeO
2とTiO
2との質量比が1:1となるように調整した。粉末A、粉末B、SiO
2系バインダー及び純水をボールミルで混合してスラリーを得た。このスラリーをモデルガス評価用のコージェライト製担体(φ25.4mm、L20mm、400セル)に、βゼオライトの担持量が100g/Lとなり、TiO
2の担持量が20g/Lとなり、CeO
2の担持量が20g/Lとなり、Feの担持量が10g/Lとなるようにコートし、乾燥させ、500℃で焼成して窒素酸化物浄化用触媒を得た。
【0031】
<排気ガス浄化性能試験>
実施例3、実施例4及び比較例2で得た各々の窒素酸化物浄化用触媒を評価装置に充填し、上記の第1表に示す組成の排気モデルガスを空間速度50000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で400℃まで昇温させ、NOの浄化率を測定した。400℃におけるモデルガスの浄化率(%)は第3表に示す通りであった。
【0032】
また、実施例3、実施例4及び比較例2で得た各々の窒素酸化物浄化用触媒を、10質量%の酸素及び10質量%の水を含有する窒素雰囲気中、750℃で20時間耐久処理した。その後、これらの窒素酸化物浄化用触媒を評価装置に充填し、上記の第1表に示す組成の排気モデルガスを空間速度50000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で400℃まで昇温させ、NOの浄化率を測定した。400℃におけるモデルガスの浄化率(%)は第3表に示す通りであった。