(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、一般に、ベッドの寝床部の左右両端部の端辺の少なくとも一部には、被験者の寝床部上からの転落を防止する転落防止部材としての転落防止柵が、寝床部に対して立上り状に配置される。また、ベッドは、しばしば、その寝床部の左右両端部の端辺のうち一方を室内の壁に沿わせて設置される。
【0009】
このようなベッドにおいて、寝床部上の被験者の重心位置が寝床部における転落防止柵側の端部領域や壁側の端部領域へ移動した場合には、被験者は離床のために移動したものではないし、また被験者が寝床部上から転落することも殆どないので、本来は警報を報知する必要はない。
【0010】
しかしながら、従来の上記の装置では、そのような場合でも警報が報知されていた。そのため、警報を報知された介護者は、被験者に対して所定の介助や措置を行う必要がないにも拘わらず、ベッドが設置された居所へ行かなければならなかった。
【0011】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、寝床の状態に応じて警報を的確に報知することができる寝床の在床状況検出装置及び在床状況検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
[1] 寝床の周端部における予め設定された複数の監視領域候補のそれぞれについて監視領域とするか否かを設定する監視領域設定手段と、
寝床上の被験者の重心位置を演算する重心位置演算手段と、
前記監視領域設定手段により設定された監視領域と前記重心位置演算手段により演算された重心位置とに基づいて警報を報知するか否かを判定する報知判定手段と、を備えていることを特徴とする寝床の在床状況検出装置。
【0014】
[2] 前記複数の監視領域候補における各監視領域は、寝床の最端領域と、該最端領域よりも寝床の中央寄りの中央寄り領域と、を含んでおり、
前記報知判定手段は、警報を報知すると判定した場合、重心位置が監視領域における最端領域及び中央寄り領域のうちどの領域内に位置しているのかに応じて、警報の種類を決定する警報種類決定部を有している前項1記載の寝床の在床状況検出装置。
【0015】
[3] 前記監視領域設定手段は、寝床を模した図がパネル面に表示された操作パネル部を有するとともに、前記図に表された寝床における各監視領域候補に対応する位置に、当該監視領域候補を監視領域とするか否かを設定するプッシュスイッチが設けられている前項1又は2記載の寝床の在床状況検出装置。
【0016】
[4] 前記監視領域設定手段は、寝床を模した図と、該図に表された寝床における各監視領域候補に対応する位置に前記プッシュスイッチで設定された結果に対応した図と、を表示する表示部を有している前項3記載の寝床の在床状況検出装置。
【0017】
[5] 前記複数の監視領域候補は、寝床の左右両端部をそれぞれ長さ方向に二分割した領域である前項1〜4のいずれかに記載の寝床の在床状況検出装置。
【0018】
[6] 前記複数の監視領域候補は、寝床の左右両端部をそれぞれ長さ方向に三分割した領域である前項1〜4のいずれかに記載の寝床の在床状況検出装置。
【0019】
[7] 寝床の周端部における予め設定された複数の監視領域候補のそれぞれについて監視領域とするか否かを設定する監視領域設定工程と、
寝床上の被験者の重心位置を演算する重心位置演算工程と、
前記監視領域設定工程で設定された監視領域と前記重心位置演算工程で演算された重心位置とに基づいて、警報を報知するか否かを判定する報知判定工程と、を備えていることを特徴とする寝床の在床状況検出方法。
【0020】
[8] 前記報知判定工程で警報を報知すると判定された場合、警報を報知する報知工程を備えており、
前記複数の監視領域候補における各監視領域は、寝床の端寄りの領域と、該端寄り領域よりも寝床の中央寄りの領域と、を含んでおり、
前記報知判定工程では、警報を報知すると判定した場合、重心位置が監視領域における端寄り領域及び中央寄り領域のうちどの領域に存在するのかに応じて、警報の種類を決定し、
前記報知工程では、前記決定された種類の警報を報知する前項7記載の寝床の在床状況検出方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の効果を奏する。
【0022】
[1]の発明に係る寝床の在床状況検出装置は、寝床の周端部における予め設定された複数の監視領域候補のそれぞれについて監視領域とするか否かを設定する監視領域設定手段を備えている。これにより、次のような利点がある。
【0023】
すなわち、例えば、寝床の周端部の一端辺に転落防止部材(例:転落防止柵、転落防止板)が配置されていたり、寝床がその周端部の一端辺を室内の壁に沿わせて設置されていたりする場合には、寝床上の被験者は寝床における転落防止部材や壁が存在する側の端部から離床したり転落したりすることは殆どないので、この端部に対応する監視領域候補を監視領域としないと監視領域設定手段により設定することができ、一方、寝床上の被験者が離床したり転落したりすることがある寝床の端部に対応する監視領域候補を監視領域とすると監視領域設定手段により設定することができる。したがって、寝床の状態(詳述すると、寝床における転落防止部材の配置位置や、寝床の設置状態など)に応じて監視領域を設定することができる。
【0024】
さらに、在床状況検出装置は、監視領域設定手段により設定された監視領域と重心位置演算手段により演算された重心位置とに基づいて、警報を報知するか否かを判定する報知判定手段を備えている。そのため、例えば、寝床上の被験者の重心位置が監視領域内に位置している場合には、報知判定手段により警報を報知すると判定することができ、一方、重心位置が監視領域内に位置していない場合には、報知判定手段により警報を報知しないと判定することができる。報知判定手段により警報を報知すると判定された場合、警報が所定の報知手段により介護者に報知される。したがって、寝床の状態に応じて警報を的確に報知することができる。警報を報知された介護者は、被験者に対して所定の介助や処置を行うために、寝床が設置された居所へ行くことができる。
【0025】
[2]の発明では、報知判定手段は、警報を報知すると判定した場合、重心位置が監視領域における最端領域及び中央寄り領域のうちどの領域内に位置しているのかに応じて、警報の種類を決定する警報種類決定部を有している。そのため、警報種類決定部により決定された種類の警報が所定の報知手段により報知されると、該警報を報知された介護者は、報知された警報の種類によって、寝床上の被験者の重心位置が最端領域と中央寄り領域のどちらに位置しているのかを判断することができる。これにより、介護者は、被験者に対する所定の介助や措置を行うための緊急度を判断することができる。
【0026】
[3]の発明では、監視領域設定手段は、寝床を模した図がパネル面に表示された操作パネル部を有するとともに、図に表された寝床における各監視領域候補に対応する位置に、当該監視領域候補を監視領域とするか否かを設定するプッシュスイッチが設けられている。そのため、監視領域の設定を確実に行うことができる。
【0027】
[4]の発明では、プッシュスイッチで設定された監視領域を視覚で確認できるので、監視領域の設定を更に確実に行うことができる。
【0028】
[5]及び[6]の発明では、寝床上の被験者が寝床における離床や転落をしそうな端部を監視領域候補として確実に設定することができる。
【0029】
[7]の発明では、上記[1]の発明と同様の効果を奏する寝床の在床状況検出方法を提供できる。
【0030】
[8]の発明では、上記[2]の発明と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る寝床の在床状況検出装置1は、寝床としてのベッド寝床部3上の被験者Hの在床状況を検出するためのものであり、医療施設(例:病院)、介護施設、高齢者施設、一般家庭等で使用されるものである。本実施形態では、この装置1は例えば医療施設に用いられている。寝床部3上の被験者Hの在床状況とは、寝床部3上の被験者Hの重心位置、被験者Hの離床又は離床行動の有無、被験者Hの体動やその頻度等が挙げられる。
【0034】
ベッド2は、床面からなるベッド設置面2a上に設置されている。
図2に示すように、ベッド2の寝床部3は平面視方形状であり、詳述すると、被験者Hの身長方向に長い平面視長方形状である。被験者Hは、通常、就寝のために寝床部3上に仰臥姿勢(即ち仰向け姿勢)で臥床(在床)する。本実施形態では、寝床部3において、仰臥姿勢の被験者Hの頭側及び足側をそれぞれ寝床部3の頭側及び足側とし、被験者Hの右側及び左側をそれぞれ寝床部3の右側及び左側とする。さらに、説明の便宜上、平面視における寝床部3の任意の位置を二次元直交座標系(X、Y座標)で表示するため、寝床部3の中央を原点O(0,0)とし、寝床部3の頭方向を「+X軸方向」、足方向を「−X軸方向」、右方向を「+Y軸方向」及び左方向を「−Y軸方向」と定義する。
【0035】
図1に示すように、ベッド2は、寝床部3を所定高さ位置に水平に支持する4個の脚部、即ち、頭側右脚部4、頭側左脚部4、足側右脚部4及び足側左脚部4を有している。頭側右脚部4、頭側左脚部4、足側右脚部4及び足側左脚部4は、それぞれ、寝床部3の頭側右端部、頭側左端部、足側右端部及び足側左端部を寝床部3の下方から支持している。各脚部4の下端部にはベッド移動用キャスタ4aが取り付けられている。
【0036】
ベッド2の寝床部3上には、被験者Hとして、病人、認知症患者、高齢者、健康人、乳幼児等の人が、就寝、診察、検査等のために仰臥姿勢等で臥床する(横たわる)。
【0037】
本実施形態の装置1は、
図1及び
図4に示すように、コントローラ9、報知手段29などを有している。
【0038】
報知手段29は、警報を報知対象者に音や光で報知するものであり、警報スピーカー(図示せず)、警報ランプ(図示せず)等を有している。報知対象者とは、被験者Hを監視している監視者、被験者Hを介護(介助を含む。)する介護者(例:看護師、被験者Hの家族、親類)などである。本実施形態では、報知対象者は例えば介護者とする。この報知手段29は、例えば、介護者がいる場所(例:ナースステーション、介護者の詰め所)に設置されたり、携帯電話機に搭載されたりする。本実施形態では、報知手段29は例えばナースステーションに設置されている。
【0039】
本実施形態では、
図1に示すように、報知手段29は、ナースコール装置30に予め備えられた報知手段32と兼用のものである。31は、ナースコール装置30におけるナース呼出要求を受け付ける呼出端末である。この呼出端末31に設けられた呼出スイッチをONにすると、報知手段29(32)によりナース呼出音が報知される。この呼出端末31は、寝床部3の頭側端部の端辺に寝床部3に対して立上り状に配置されたヘッドボード部7又はその近傍に配置されている。
【0040】
コントローラ9は、ベッド2毎に配置されるものである。本実施形態では、コントローラ9は、寝床部3のヘッドボード部7又はその近傍に配置されている。
図3は、コントローラ9の概略斜視図である。
【0041】
コントローラ9は、記憶部(ROM、RAM等)、CPU等を有するコンピュータを搭載している。コンピュータには所定の演算、判定、決定等を行うためのプログラムが予めインストールされている。
【0042】
このコントローラ9の構成を詳述すると、コントローラ9は、
図4に示すように、重心位置演算手段10、監視領域候補設定手段12、監視領域設定手段13、報知判定手段25等を搭載している。
【0043】
さらに、コントローラ9には、外部電源から該コントローラ9の動作電力を供給する電源ケーブル(図示せず)が接続されている。そして、コントローラ9は、電源ケーブルから供給された電源で動作するように構成されている。なお本発明では、コントローラ9は、該コントローラ9の動作電力を供給する電池を搭載しても良い。
【0044】
重心位置演算手段10は、荷重検出手段11を有している。なお、この荷重検出手段11はコントローラ9に搭載されていない。
【0045】
荷重検出手段11は、被験者Hが在床した寝床部3に掛かる荷重を所定時間毎に連続して検出するものである。本実施形態では、荷重検出手段11は4つの第1〜第4荷重検出部11a〜11dを有している。
図1に示すように、第1荷重検出部11aは、寝床部3の頭側右端部に掛かる荷重を検出するものであり、頭側右脚部4とベッド設置面2aとの間に配置されている。第2荷重検出部11bは、寝床部3の頭側左端部に掛かる荷重を検出するものであり、頭側左脚部4とベッド設置面2aとの間に配置されている。第3荷重検出部11cは、寝床部3の足側右端部に掛かる荷重を検出するものであり、足側右脚部4とベッド設置面2aとの間に配置されている。第4荷重検出部11dは、寝床部3の足側左端部に掛かる荷重を検出するものであり、足側左脚部4とベッド設置面2aとの間に配置されている。各荷重検出部11a〜11dは互いに同一構成である。また、各荷重検出部11a〜11dの荷重検出周期(即ちサンプリング周期)は、例えば0.005〜10sの範囲内に設定され、具体的には例えば0.5sに設定されている。
【0046】
各荷重検出部11a〜11dは、ロードセル式のものであり、各荷重検出部11a〜11dが検出した荷重値を各荷重検出部11a〜11dに備えられた通信部(図示せず)によってコントローラ9に送信するように構成されている。通信部は、本実施形態では無線通信部であり、無線信号でコントローラ9への送信が行われる。なお本発明では、通信部はその他に有線通信部であっても良い。
【0047】
各荷重検出部11a〜11dは、各荷重検出部11a〜11dを動作させる電源(図示せず)を搭載している。電源は、例えば電池であり、具体的には乾電池(例:単一〜単五乾電池)、二次電池(例:蓄電池、充電式電池)等である。
【0048】
重心位置演算手段10は、荷重検出手段11により検出された荷重値に基づいて寝床部3上の被験者Hの重心位置を演算するものである。本実施形態では、重心位置演算手段10は、第1〜第4荷重検出部11a〜11dにより検出された荷重値に基づいて寝床部3上の被験者Hの重心位置を演算するものである。この演算は、各荷重検出部11a〜11dの荷重検出周期毎に連続して行われる。重心位置の座標PのうちX座標をXp、Y座標をYpとするとき、重心位置演算手段10は、Xp及びYpをそれぞれ次式(1X)及び(1Y)により演算する。
【0049】
Xp=(W1+W2−W3−W4)×(1/WA)×(BL/2) …式(1X)
Yp=(W1+W3−W2−W4)×(1/WA)×(BW/2) …式(1Y)。
【0050】
ただし、W1〜W4、WA、BW及びBLは次のとおりである。
【0051】
W1:第1荷重検出部11aにより検出され且つ風袋処理された荷重値
W2:第2荷重検出部11bにより検出され且つ風袋処理された荷重値
W3:第3荷重検出部11cにより検出され且つ風袋処理された荷重値
W4:第4荷重検出部11dにより検出され且つ風袋処理された荷重値
WA:W1〜W4の合計値(即ち、WA=W1+W2+W3+W4)
BW:寝床部3の幅(
図2参照)
BL:寝床部3の長さ(
図2参照)。
【0052】
ここで、W1〜W4において、各荷重検出部11a〜11dにより検出され且つ風袋処理された荷重値とは、各荷重検出部11a〜11dにより検出された荷重値から風袋として寝床部3単体の荷重値を減算した値のことである。すなわち、寝床部3上に被験者Hが在床していない時に各荷重検出部11a〜11dにより検出した荷重値を、寝床部3単体(即ち風袋)の各荷重値とする。そして、各荷重検出部11a〜11dにより検出した荷重値から寝床部3単体の各荷重値を減算することにより、W1〜W4が算出される。なお本発明では、各荷重検出部11a〜11dにより検出された荷重値とは、各荷重検出部11a〜11dから出力された、荷重値に相当する電圧値等の出力値を含む。
【0053】
BWは、例えば通常300〜1200mmの範囲内である。BLは、例えば通常600〜2500mmの範囲内である。
【0054】
監視領域候補設定手段12は、寝床部3の周端部の複数の領域を、複数の監視領域候補6として予め設定するものであり、
図4に示すように監視領域候補6を記憶する記憶部12aを有している。
【0055】
本実施形態では、
図2に示すように、複数の監視領域候補6は、寝床部3の周端部のうちの左右両端部をそれぞれ寝床部3の長さ方向に均等に二分割した領域であり、すなわち、寝床部3における右端部の頭側半部領域6Aと、右端部の足側半部領域6Cと、左端部の頭側半部領域6Bと、左端部の足側半部領域6Dとからなる合計4つの領域である。
【0056】
さらに、各監視領域は、寝床部3の最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)と、該最端領域よりも寝床部3の中央寄りの中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)との二つの領域に分けられている。
図2では、最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)はドットハッチングで示されており、中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)はクロスハッチングで示されている。これらの領域(6A、6B、6C、6D)が監視領域候補6として監視領域候補設定手段12によりその記憶部12aに予め設定記憶されている。
【0057】
なお、寝床部3の周端部のうちの頭側端部の端辺及び足側端部の端辺には、一般に、それぞれヘッドボード部7及びフットボード部8が寝床部3に対して立上り状に予め配置されている。そのため、寝床部3上の被験者Hが寝床部3の頭側端部及び足側端部から離床したり転落したりすることは殆どない。したがって、本実施形態では、寝床部3の頭側端部及び足側端部を監視領域候補とは設定しない。
【0058】
本実施形態では、寝床部3の右端部の頭側半部領域6Aの右端辺と足側半部領域6Cの右端辺とには、それぞれ転落防止部材としての転落防止柵5が、寝床部3に対して立上り状に配置されている。転落防止柵5は、寝床部3上の被験者Hが寝床部3から転落するのを防止するものであり、寝床部3の所定部位に取外し可能に配置されるものである。一方、寝床部3の左端部の頭側半部領域6Bの左端辺と足側半部領域6Dの左端辺とには転落防止柵は配置されていない。そのため、寝床部3上の被験者Hは、寝床部3の左端部の頭側半部領域6B及び足側半部領域6Dから離床したり転落したりする可能性がある。
【0059】
各監視領域候補6の幅は、例えば50〜500mmの範囲内である。さらに、各監視領域候補6において、最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)の幅は例えば50〜300mmの範囲内であり、中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)の幅は例えば50〜300mmの範囲内である。
【0060】
監視領域設定手段13は、監視領域候補設定手段12により設定された複数(本実施形態では4つ)の監視領域候補6のそれぞれについて監視領域とするか否かを設定するものである。
【0061】
この監視領域設定手段13は、
図3に示すように、コントローラ9の操作面の略下半部に配置された操作パネル部14と、操作面の略上半部に配置された表示部20とを有している。
【0062】
操作パネル部14のパネル面の略左半部には、ベッド2の平面視の寝床部3を模した図(絵を含む。以下同じ。)Z1と、該
図Z1に表された寝床部の中央部上に仰臥姿勢で臥床した平面視の被験者Hを模した
図Z2と、が印刷表示されている。さらに、
図Z1に表された寝床部における各監視領域候補6に対応する位置に、当該監視領域候補6を監視領域とするか否かを設定する監視領域設定/非設定用のON/OFFプッシュスイッチ15が設けられている。
【0063】
各プッシュスイッチ15の表面には、各監視領域候補6の場所の略称を意味する「右頭」、「左頭」、「右足」又は「左足」が印刷表示されている。すなわち、「右頭」プッシュスイッチ15a、「左頭」プッシュスイッチ15b、「右足」プッシュスイッチ15c及び「左足」プッシュスイッチ15dは、それぞれ、寝床部3の右端部の頭側半部領域6A、左端部の頭側半部領域6B、右端部の足側半部領域6C及び左端部の足側半部領域6Dを監視領域をするか否かを設定するものである。
【0064】
各プッシュスイッチ15は、該プッシュスイッチ15を指先等で1回押すことにより、対応する監視領域候補6を監視領域とすると設定し、該プッシュスイッチ15を更にもう1回押すと、対応する監視領域候補6を非監視領域とする(即ち監視領域としない)と設定するものである。
【0065】
操作パネル部14のパネル面の略右半部には、表面に「YES」が印刷表示された「YES」プッシュスイッチ18aと、表面に「NO」が印刷表示された「NO」プッシュスイッチ18bとが設けられている。「YES」プッシュスイッチ18aは、監視領域設定/非設定用のON/OFFプッシュスイッチ15による監視領域の設定を確定(決定)するものである。「NO」プッシュスイッチ18bは、監視領域の設定を解除するものである。
【0066】
表示部20は、液晶パネルや有機ELパネル等からなるものである。この表示部20は、ベッド2の平面視の寝床部3を模した
図Z3と、該
図Z3に表された寝床部の中央部上に仰臥姿勢で臥床した平面視の被験者Hを模した
図Z4と、前記
図Z3に表された寝床部における各監視領域候補6に対応する位置に監視領域設定/非設定用のON/OFFプッシュスイッチ15で設定された結果に対応した
図Z5と、を表示するものである。
【0067】
プッシュスイッチ15で設定された結果に対応した
図Z5とは、本実施形態では、プッシュスイッチ15で監視領域候補6を非監視領域とすると設定した場合には、転落防止柵5を模した
図Z5aであり、プッシュスイッチ15で監視領域候補6を監視領域とすると設定した場合には、点灯状態のランプを模した
図Z5bである。
【0068】
報知判定手段25は、監視領域設定手段13により設定された監視領域と重心位置演算手段10により演算された重心位置とに基づいて、警報を報知するか否かを判定するものである。
【0069】
具体的に示すと、この報知判定手段25は、重心位置演算手段10により演算された重心位置(その座標P(Xp,Yp))が監視領域設定手段13により設定された監視領域内に位置している場合、警報を報知すると判定し、一方、重心位置が監視領域内に位置していない場合、警報を報知しないと判定する。
【0070】
さらに、この報知判定手段25は、警報種類決定部26を有している。この警報種類決定部26は、報知判定手段25により警報を報知すると判定された場合、重心位置が監視領域における最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)及び中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)のうちどの領域内に位置しているのかに応じて、警報の種類を決定するものである。警報の種類としては、警報音の音高、音量、音色、メロディ等が相異するもの、警報音の発信間隔や警報ランプの点灯間隔が相異するもの、これらを組み合わせたもの等が適用される。
【0071】
そして、報知判定手段25により警報を報知すると判定された場合、重心位置が位置している領域に応じた警報の種類が警報種類決定部26により決定される。警報種類決定部26により警報の種類が決定されると、報知判定手段25は、その決定された種類の警報を報知する命令を報知手段29に送信する。この送信は、ナースコール装置30における呼出端末31から報知手段29(32)に呼出命令信号を送信する信号線33を通じて行われる。なお本発明では、この送信は、信号線33の他に無線で行われても良い。すると、報知手段29は、警報種類決定部26により決定された種類の警報を報知する。
【0072】
次に、上記実施形態の装置1を用いた在床状況検出方法について以下に説明する。
【0073】
まず、介護者がコントローラ9を片手で持ち、介護者がベッド2の寝床部3における転落防止柵5の配置位置に応じて複数(本実施形態では4つ)の監視領域候補6のそれぞれについて監視領域とするか否かを監視領域設定手段13により設定する。この工程を「監視領域設定工程」という。
【0074】
監視領域の設定方法は、介護者が指先等で各プッシュスイッチ15を押すことにより、行われる。本実施形態では、上述したように、寝床部3の右端部の頭側半部領域6Aの右端辺と足側半部領域6Cの右端辺とに、それぞれ転落防止柵5が配置されており、一方、寝床部3の左端部の頭側半部領域6Bの左端辺と足側半部領域6Dの左端辺とには転落防止柵5は配置されていない。そのため、寝床部3上の被験者Hは、寝床部3の右端部の頭側半部領域6Aと足側半部領域6Cとから離床したり転落したりする可能性は殆どないが、寝床部3の左端部の頭側半部領域6Bと足側半部領域6Dとからは離床したり転落したりする可能性がある。そこで、介護者がコントローラ9の操作パネル部14の「右頭」プッシュスイッチ15aと「右足」プッシュスイッチ15cとをそれぞれ2回押すことにより、寝床部3の右端部の頭側半部領域6Aと足側半部領域6Cとをそれぞれ非監視領域とすると設定し、一方、操作パネル部14の「左頭」プッシュスイッチ15bと「左足」プッシュスイッチ15dとをそれぞれ1回押すことにより、寝床部3の左端部の頭側半部領域6Bと足側半部領域6Dとをそれぞれ監視領域とすると設定する。
【0075】
すると、コントローラ9の表示部20には、上述したように、寝床部3を模した
図Z3と、被験者Hを模した
図Z4と、
図Z3に表された寝床部における各監視領域候補6に対応する位置にプッシュスイッチ15で設定された結果に対応した
図Z5と、が表示される(
図3参照)。
図3では、表示部20における寝床部の右端部の頭側半部領域と足側半部領域とにそれぞれ転落防止柵5を模した
図Z5aが表示されており、また寝床部の左端部の頭側半部領域と足側半部領域とにそれぞれ点灯状態のランプを模した
図Z5bが表示されている。
【0076】
全ての監視領域候補6について監視領域とするか否かを設定したら、介護者は操作パネル部14の「YES」プッシュスイッチ18aを押す。これにより、監視領域の設定が確定(決定)されて監視領域の設定が終了する。一方、監視領域の設定をやり直したい場合には、介護者は「NO」プッシュスイッチ18bを押す。これにより、監視領域の設定が解除される。
【0077】
次いで、ベッド2の寝床部3上の被験者Hの重心位置を重心位置演算手段10により演算する。この工程を「重心位置演算工程」という。この工程では、重心位置の座標P(Xp,Yp)は上記式(1X)及び(1Y)により演算される。この演算は、各荷重検出部11a〜11dの荷重検出周期毎に連続して行われる。
【0078】
そして、監視領域設定工程で設定された監視領域と重心位置演算工程で演算された重心位置とに基づいて、警報を報知するか否かを報知判定手段25により判定する。この工程を「報知判定工程」という。具体的に示すと、この報知判定工程では、重心位置演算手段10により演算された重心位置が監視領域設定手段13により設定された監視領域内に位置している場合、報知判定手段25により警報を報知すると判定され、一方、重心位置が監視領域内に位置していない場合、報知判定手段25により警報を報知しないと判定される。
【0079】
報知判定手段25により警報を報知しないと判定された場合、報知判定手段25は報知手段29に警報を報知しない命令が送信されるか、あるいは何ら命令が送信されず、報知手段29は警報を報知しない。
【0080】
報知判定手段25により警報を報知すると判定された場合、重心位置が監視領域における最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)及び中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)のうちどの領域内に位置しているのかに応じて警報の種類が警報種類決定部26により決定される。この工程を「警報種類決定工程」という。そして、この工程で決定された種類の警報が報知手段29により介護者に報知される。
【0081】
警報が報知された介護者は、ベッド2が設置された居所へ行き、被験者Hに対して所定の介助や処置を行う。例えば、被験者Hが離床するために重心位置(その座標P(Xp,Yp))が監視領域内に位置している場合には、介護者は被験者Hに離床理由(離床目的)を聞く。そして、離床理由が被験者Hが例えば排便や排尿をするためである場合には、介護者は、被験者Hへの介助として被験者Hに対してトイレ誘導をする。一方、被験者Hが転落しそうな場合には、介護者は被験者Hが転落しないように被験者Hを寝床部3の中央部に移動させる処置を行う。
【0082】
なお上記実施形態では、上述したように、転落防止柵5は寝床部3の右端部の頭側半部領域6Aの右端辺と足側半部領域6Cの右端辺とにそれぞれ配置されている場合について示しているが、本発明では、寝床部3における転落防止柵5の配置位置は、これらに限定されるものではなく、その他に例えば、寝床部の右端部の頭側半部領域6A、足側半部領域6C、左端部の頭側半部領域6B及び足側半部領域6Dから選択された1〜4つの領域の各端辺であっても良い。
【0083】
また、もしベッド2がその寝床部3の周端部の一端辺(例:左端辺又は右端辺)を室内の壁に沿わせて設置されている場合には、寝床部3における壁が存在する側の端部に対応する監視領域候補6を非監視領域とすると監視領域設定手段13により設定し、一方、寝床部3における壁が存在しない側の端部に対応する監視領域候補6を監視領域とすると監視領域設定手段13により設定する。
【0084】
なお本実施形態では、装置1は、重心位置演算手段10により演算された重心位置に基づいて重心位置の移動量、移動速度、移動頻度等を演算し、これにより、被験者の体動の有無、その大きさ、その速さ、その頻度等を検出するように構成されていても良い。
【0085】
而して、上記実施形態の装置1は、次の利点がある。
【0086】
装置1は、ベッド2の寝床部3の周端部における予め設定された複数の監視領域候補6のそれぞれについて監視領域とするか否かを設定する監視領域設定手段13を備えている。したがって、例えば、寝床部3の周端部の一端辺に転落防止柵5(転落防止部材)が配置されていたり、ベッド2がその寝床部3の周端部の一端辺を室内の壁に沿わせて設置されていたりする場合には、寝床部3上の被験者Hは寝床部3における転落防止柵5や壁が存在する側の端部から離床したり転落したりすることは殆どないので、この端部に対応する監視領域候補6を非監視領域とすると監視領域設定手段13により設定することができ、一方、寝床部3上の被験者Hが離床したり転落したりすることがある寝床部3の端部に対応する監視領域候補6を監視領域とすると監視領域設定手段13により設定することができる。したがって、寝床部3の状態(詳述すると、寝床部3における転落防止柵5の配置位置や、寝床部3の設置状態など)に応じて監視領域を設定することができる。
【0087】
さらに、装置1は、監視領域設定手段13により設定された監視領域と重心位置演算手段10により演算された重心位置とに基づいて、警報を報知するか否かを判定する報知判定手段25を備えている。そのため、寝床部3上の被験者Hの重心位置が監視領域内に位置している場合には、報知判定手段25により警報を報知すると判定することができ、一方、重心位置が監視領域内に位置していない場合には、報知判定手段25により警報を報知しないと判定することができる。報知判定手段25により警報を報知すると判定された場合、警報が報知手段29により介護者に報知される。したがって、寝床部3の状態に応じて警報を的確に報知することができる。警報を報知された介護者は、被験者Hに対して所定の介助や処置を行うために、寝床部3が設置された居所へ行くことができる。
【0088】
さらに、報知判定手段25は、警報を報知すると判定した場合、重心位置が監視領域における最端領域(6Aa、6Ba、6Ca、6Da)及び中央寄り領域(6Ab、6Bb、6Cb、6Db)のうちどの領域内に位置しているのかに応じて、警報の種類を決定する警報種類決定部26を有している。そのため、警報種類決定部26により決定された種類の警報が報知手段29により報知されると、該警報を報知された介護者は、報知された警報の種類によって、寝床部3上の被験者Hの重心位置が最端領域と中央寄り領域のどちらに位置しているのかを判断することができる。これにより、介護者は、被験者Hに対する所定の介助や措置を行うための緊急度を判断することができる。
【0089】
さらに、監視領域設定手段13は、寝床部3を模した
図Z1がパネル面に表示された操作パネル部14を有するとともに、該
図Z1に表された寝床部における各監視領域候補6に対応する位置に、当該監視領域候補6を監視領域とするか否かを設定するプッシュスイッチ15が設けられている。そのため、監視領域の設定を確実に行うことができる。
【0090】
その上、監視領域設定手段13は、所定の表示部を有しているで、プッシュスイッチ15で設定された監視領域を視覚で確認でき、そのため、監視領域の設定を更に確実に行うことができる。
【0091】
さらに、複数の監視領域候補6は、寝床部3の左右両端部をそれぞれ長さ方向に二分割した領域(即ち、6A、6B、6C、6D)であるから、寝床部3上の被験者Hが寝床部3における離床や転落をしそうな端部を監視領域候補として確実に設定することができる。
【0092】
なお本発明は、複数の監視領域候補6は寝床部3の左右両端部をそれぞれ長さ方向に二分割した領域であることに限定されるものではなく、その他に、例えば、
図5に示すように寝床部3の左右両端部をそれぞれ長さ方向に均等に三分割した領域であっても良いし、図示していないが寝床部3の左右両端部をそれぞれ長さ方向に四つ以上の分割数で分割した領域であっても良い。
【0093】
図5では、上記実施形態と同じ又は対応する要素に上記実施形態で用いた符号と同じ符号が付されている。
【0094】
図5において、監視領域候補6は、寝床部3の右端部の頭側端部領域6E、中間端部領域6G及び足側端部領域6I、並びに、左端部の頭側端部領域6F、中間端部領域6H及び足側端部領域6Jの6つの領域である。そして、寝床部3の右端部の頭側端部、中間端部及び足側端部の端辺にそれぞれ転落防止柵5が寝床部3に対して立上り状に配置されており、一方、寝床部3の左端部の頭側端部、中間端部及び足側端部の端辺には転落防止柵は配置されていない。さらに、寝床部3の6つの監視領域候補6のうち寝床部3の右端部の頭側端部領域6E、中間端部領域6G及び足側端部領域6Iがそれぞれ非監視領域として監視領域設定手段13により設定され、一方、寝床部3の左端部の頭側端部領域6F、中間端部領域6H及び足側端部領域6Jがそれぞれ監視領域として監視領域設定手段13により設定される。
【0095】
さらに
図5では、各監視領域候補6は、寝床部3の最端領域(6Ea、6Fa、6Ga、6Ha、6Ia、6Ja)と、該最端領域よりも寝床部3の中央寄りの中央寄り領域(6Eb、6Fb、6Gb、6Hb、6Ib、6Jb)との二つの領域に分けられている。
【0096】
以上で本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0097】
例えば、上記実施形態では、各監視領域候補6は、最端領域と中央寄り領域との二つの領域に分けられているが、本発明では、その他に、寝床部の端辺から寝床中央部側に並んで配置された三つ以上の領域に分けられていても良い。
【0098】
また、本発明では、荷重検出部11a〜11dは、ベッド2の寝床部3の各脚部4に設けられていても良いし、脚部4のキャスタ4a内に配置されていても良いし、ベッド2の寝床部3を昇降動作させるアクチュエータ(図示せず)内に配置されていても良い。
【0099】
もとより本発明では、寝床は、ベッドの寝床部であることに限定されるものではなく、その他の寝床であっても良いが、ベッドの寝床部であることが望ましい。