【実施例】
【0018】
図4は、本発明の実施例に係る抵抗変化型メモリの全体構成を示すブロック図である。本実施例の抵抗変化型メモリ100は、行列状に配列された複数のメモリ素子が配置されたメモリアレイ110と、外部入出力端子I/Oに接続され、入出力データを保持する入出力バッファ120と、入出力バッファ120からのアドレスデータを受け取るアドレスレジスタ130と、入出力されるデータを保持するデータレジスタ140と、入出力バッファ120からのコマンドデータ等に基づき各部を制御するコントローラ150と、アドレスレジスタ130からの行アドレス情報Axをデコードしデコード結果に基づきワード線の選択および駆動を行うワード線選択回路160と、アドレスレジスタ130からの列アドレス情報Ayをデコードしデコード結果に基づきビット線の選択および駆動を行う列選択回路170と、列選択回路170によって選択されたセルユニットから読み出された信号を検出したり、選択されたセルユニットへの書込みデータを保持するセンス回路180と、可変抵抗素子のセット、リセット、読出し動作に必要なバイアス電圧を発生させ、これをワード線選択回路160およびセンス回路180等へ供給する電圧発生回路190とを含んで構成される。
【0019】
メモリアレイ110は、
図1に示すように、行列方向に配置された複数のメモリ素子M11、M12、…Mmnを含み、1つのメモリ素子は、1つの可変抵抗素子と1つの選択用トランジスタとから構成される。ビット線BLとソース線SLとの間に、可変抵抗素子と選択用トランジスタとが直列に接続され、選択用トランジスタのゲートがワード線に接続される。
【0020】
可変抵抗素子がセットされた状態は、データ「0」または「1」のいずれかに対応し、可変抵抗素子がリセットされた状態は、データ「1」または「0」のいずれかに対応する。コントローラ150は、外部からのコマンドに基づき書込み(セット、リセット)や読出し動作等を制御する。ワード線選択回路160は、外部から受け取った行アドレス情報Axに基づきワード線を選択し、列選択回路170は、外部から受け取った列アドレス情報Ayに基づきビット線を選択する。コントローラ150の制御により、選択されたワード線、ビット線およびソース線には、書込み(セット、リセット)および読出しに応じたバイアス電圧が印加される。
【0021】
図5に、メモリ素子とセンス回路180の接続関係を示す。1つのメモリ素子は、ソース線SLとビット線BLとの間に直列に接続された可変抵抗素子Rと選択用トランジスタTとを有する。選択用トランジスタTのゲートVgには、ワード線WLが共通に接続される。
図5に示す例では、nビットのメモリ素子が行方向に配列され、nビットのメモリ素子のビット線BL1〜BLnがセンス回路180に接続される。選択されたメモリ素子の読出しが行われるとき、選択されたメモリ素子のビット線に表れる電圧または電流がセンス回路180によって検出される。また、選択されたメモリ素子への書込みが行われるとき、入出力バッファ120から入力された書込みデータがセンス回路180に転送され、センス回路180は、書込みデータ、すなわちセットまたはリセットに応じた電圧を選択されたビット線BLないしソース線SLに生成する。
【0022】
次に、可変抵抗素子への書込み(リセット、セット)について説明する。コントローラ150は、外部入出力端子から得られたコマンド等に応答して書込みを開始し、各部の動作を制御する。入出力バッファ120から得られた行アドレスAxがワード線選択回路160へ提供され、列アドレスAyが列選択回路170へ提供される。また、書込みデータは、データレジスタ140を介してセンス回路180によって保持される。さらに、電圧発生回路190は、コントローラ150からの指示に従い、書込みに必要な電圧をワード線選択回路160やセンス回路180等に供給する。センス回路180は、列選択回路170のデコード結果に基づき選択されたビット線BLおよびソース線SLに、データ「0」または「1」に対応する電圧を供給する。
【0023】
本実施例では、可変抵抗素子Rをリセットするとき、可変抵抗素子Rに急激に電流が流れないようにし、つまり可変抵抗素子Rに電流が徐々に流れるように制御する。可変抵抗素子Rに急激に電流を流すと、つまり、一度に大きなエネルギーを加えると、可変抵抗素子の金属酸化物が一気に成長され、それが原因となって過剰な電流を流す、いわゆるテールビットが発生され易くなってしまう。このため、本実施例では、可変抵抗素子Rに一気に大きな電流が流れないようにするため、選択用トランジスタTのインピーダンスが徐々に低くなるような制御を行う。
【0024】
好ましい態様では、ソース線SLに電圧VSLを印加し、ビット線BLに電圧VBLを印加し(VSL>VBL)、選択用トランジスタTのゲートVgに、0Vから電圧が徐々に大きくなるようなパルスを印加する。
図6(A)は、従来のリセット時に選択用トランジスタTのゲートに印加されるパルスP1の波形であり、
図6(B)は、本実施例の選択用トランジスタTのゲートに印加されるパルスP2の波形である。
図6(A)に示すように、矩形状のパルスP1が選択用トランジスタTのゲートVgに印加されると、選択用トランジスタTが瞬時に導通し、ソース線SLから可変抵抗素子Rに大きな電流が急激に流される。これにより、電流密度の高い金属酸化物のパスが電極間に形成され、テールビットが発生され易くなる。これに対し、
図6(B)に示すようなランプ形状のパルスP2が選択用トランジスタTのゲートVgに印加されると、パルスP2の電圧と比例するように選択用トランジスタTのコンダクタンスが徐々に大きくなり、可変抵抗素子Rへ供給されるドレイン電流が徐々に大きくなる。このため、可変抵抗素子Rには、一気に大量の電流が流れず、可変抵抗素子Rへの電流の供給を徐々に大きくすることができる。その結果、テールビットの発生を抑制することができる。
【0025】
また、本実施例の他の好ましい態様では、
図6(C)に示すように、複数のパルス列P3が選択用トランジスタTのゲートに印加されるようにしてもよい。複数のパルス列P3は、徐々に電圧が大きくなるような複数のパルスを含む。このような一連のパルス列P3が選択用トランジスタに印加された場合にも、可変抵抗素子Rに供給される電流のエネルギーは徐々に増加されるので、瞬時に電流密度の高い金属酸化物のパスが形成されるのが抑制される。
【0026】
次に、本実施例の可変抵抗素子のセット、リセットおよび読出し時の具体的なバイアス電圧の一例を
図7に示し、
図8(A)、(B)に可変抵抗素子をリセットするときの動作波形の例を示す。
【0027】
可変抵抗素子をリセットするとき、
図7、
図8(A)に示すように、選択されたメモリ素子のビット線BLにVBL=−0.5V、ソース線SLにVSL=2.6Vが印加される。次に、選択されたワード線(ゲートVg)には、0Vから4Vまで電圧が変化する、
図6(B)に示すようなランプパルスP2が約100nsの期間印加される。これにより、可変抵抗素子Rには、ソース線SLからビット線BLへ向けて電流が流され、低抵抗状態のリセットの書込みが行われる。また、
図6(C)に示すような複数のパルス列P3が用いられる場合には、
図8(B)に示すように、徐々に電圧が大きくなる複数のパルス列P3が約100nsの期間に印加される。
【0028】
一方、可変抵抗素子をセットするとき、始めに、選択されたメモリ素子のビット線BLにVBL=2.4V、ソース線SLにVSL=0Vが印加される。次に、選択されたワード線(ゲートVg)には、2.3Vのパルスが印加される。これにより、ビット線BLからソース線SLに向けて電流が流れ、可変抵抗素子Rが高抵抗状態にセットされる。
【0029】
次に、本実施例の抵抗変化型メモリのセルユニットの読出し動作を説明する。コントローラ150は、外部入出力端子からのコマンド等に応答して読出しを開始し、各部の動作を制御する。また、入出力バッファ120から得られたアドレスデータが受け取られ、行アドレスAxがワード線選択回路160へ提供され、列アドレスAyが列選択回路170へ提供される。
【0030】
図9に読出し動作時の各部の波形の例を示す。センス回路180は、列選択回路170のデコード結果に基づき選択されたメモリ素子のビット線BLにVBL=0.2V、ソース線SLにVSL=0Vを印加する。好ましくは、ビット線BLは、0.2Vにプリチャージされる。ビット線BLとソース線SL間の電位差を大きくしすぎると、可変抵抗素子に大きな電流が流れてしまう。このため、電位差は、できるだけ小さいことが望ましく、つまり、センス回路180によってその変化を検出することができる大きさである。次に、ワード線選択回路160は、行アドレスAxに基づき選択されたワード線(ゲートVg)に3Vを印加する。可変抵抗素子Rがセットされているとき、ビット線BLからソース線SLにはほとんど電流が流れず、この状態がセンス回路180によって検出される。他方、可変抵抗素子Rがリセットされているとき、ビット線BLからソース線SLに電流が流れ、この状態がセンス回路180によって検出される。
【0031】
次に、本実施例の更なる好ましい態様について説明する。本実施例の好ましい態様では、可変抵抗素子への書込み(リセット、セット)が行われた時、その合否を判定する書込みベリファイが実施される。可変抵抗型メモリは、メモリ素子をビット単位でアクセスし、アクセスされたメモリ素子の読出しや書込みを行うことが可能である。それ故、ある1つの態様では、1つのメモリ素子への書込みが行われたときに、当該1つのメモリ素子への書込みベリファイを行うことが可能である。また、別の態様では、1つのページ(1つのワード線)内の複数のメモリ素子への書込み(セット、リセット)が同時または連続的に行われたとき、当該ページ内の複数のメモリ素子の個々のベリファイが同時にまたは連続的に実施される。例えば、外部入出力端子が×16のデータ幅を有し、16ビットのデータの書込みが同時に行われたとき、あるいは1つのページが2Kバイトであるとき、そのページ内に連続的に複数データの書込みが行われたような場合に、書込みが行われたページのメモリ素子への書込みベリファイが行われる。
【0032】
図10は、ページ内の複数の可変抵抗素子がリセットされたときのベリファイを示すフローであり、
図11は、ページ内の複数の可変抵抗素子がセットされたときのベリファイのフローである。便宜上、
図10、
図11に個別にリセット、セットのベリファイのフローを示しているが、実際には、1つのページ内の複数の可変抵抗素子がリセットおよびセットされたときにこれらのベリファイが同時に実施され得る。
【0033】
外部入出力端子から得られた書込みデータに基づき、選択された可変抵抗素子のリセット、セットが行われる(S100、S200)。リセットおよびセットのバイアス条件は、上記した
図7に示す通りである。
【0034】
リセット、セットが終了すると、次に、ベリファイが実施される(S102、S202)。リセットおよびセットのベリファイ時のバイアス条件は、それぞれ読出し動作のときと同じである。次に、ページ内の書込みが行われた個々のメモリ素子の合否が判定される(S104、S204)。リセットが合格と判定された場合、ビット線BLの電圧がVBL=2.6に変更される(S106)。これにより、ビット線BLとソース線SLとが同電位となり、可変抵抗素子にはこれ以上電流が流されない。他方、不合格と判定された場合、ステップS100と同じバイアス条件が維持され、さらにランプパルスP2またはパルス列P3がもう1回印加される(S108)。
【0035】
セットが合格であると判定された場合、ビット線BLの電圧がVBL=0Vに変更される(S206)。これにより、ビット線BLとソース線SLとが同電位となり、可変抵抗素子にはこれ以上電流が流されない。他方、不合格と判定された場合には、ステップS200のときよりも若干電圧が低く設定されたVBL=2.2Vがビット線BLに印加される(S208)。こうして、ページ内に書込みが行われたすべての可変抵抗素子へのベリファイが実施される。
【0036】
このように本実施例によれば、リセットされる可変抵抗素子への急激な電流の供給を抑制することで、電流密度の高い金属酸化物のパスが一気に形成されることを防ぎ、リセットされた可変抵抗素子が過剰な電流を流す、テールビットの発生を低減させることができる。それ故、リセットされた可変抵抗素子を通常のバイアス条件でセットすることが容易となり、信頼性の高い書込みを行うことができる。さらに、テールビットの発生を抑制することで、素子の故障を抑制し、素子の長寿命化を図ることができる。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0038】
上記実施例では、
図5に示すように、可変抵抗素子Rの一方の端子がビット線BLに接続され、他方の端子が選択用トランジスタTの一方の端子に接続され、選択用トランジスタTの他方の端子がソース線SLに接続される例を示したが、これ以外にも、可変抵抗素子Rの極性等に応じて、
図12(A)に示すように、選択用トランジスタTの一端がビット線BLに接続され、可変抵抗素子Rの他方の端子がソース線SLに接続されるような構成にも本発明を適用することができる。
【0039】
さらに上記実施例では、メモリ素子が1トランジスタ+1可変抵抗素子から構成される例を示したが、これ以外にも、
図12(B)に示すように、2トランジスタT1、T2+2可変抵抗素子R1、R2からなるコンプリメンタリーのメモリ素子であってもよい。コンプリメンタリーのメモリ素子は、可変抵抗素子R1、R2がそれぞれ相補的なデータを記憶(セット、リセット)を記憶するものであり、ビット線BL、/BLには、相補的なデータが出力される。