(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の液晶表示装置の外観模式図および部分拡大図である。
【
図2】
図1に示した液晶表示装置のII−II’線における部分断面図である。
【
図3】第1開口部および第2開口部の構造を示す模式的な平面図である。
【
図4】シミュレーション解析に用いた各開口部の条件設定について説明するための図である。
【
図5】シミュレーション解析結果(面内透過率分布)を示す図である。
【
図6】液晶層内の液晶分子のダイレクター分布を示す図である。
【
図7】Lsを0に設定した場合の第1開口部および第2開口部の構造を示す模式的な平面図である。
【
図8】Lsを0に設定した場合のシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を示す図である。
【
図9】Lsを負の値に設定した場合の第1開口部および第2開口部の構造を示す模式的な平面図である。
【
図10】Lsを負の値に設定した場合のシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を示す図である。
【
図11】液晶層のカイラルピッチpを10μmに設定したシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を示す図である。
【
図12】液晶表示装置の有効表示部を複数の領域に分割する場合について説明するための模式的な平面図である。
【
図13】比較的に表示面積が大きいセグメント表示を行う液晶表示装置において、1つのセグメント表示部を複数の領域に分割する場合について説明するための模式的な平面図である。
【
図14】ドットマトリクス型の電極構造を採用する場合において、1つの画素部において各開口部の長手方向の長さLが等しくない設定とする場合について説明するための模式的な平面図である。
【
図15】
図14に示した構造の各開口部を有する液晶表示装置を実際に作製し、その1つの画素部1を反射顕微鏡観察して得られた像を示す図である。
【
図16】
図15に示した液晶表示装置を作製した場合の電圧印加時の画素部の偏光顕微鏡観察像を示す図である。
【
図17】各開口部の形状を変更した実施態様について説明するための図である。
【
図18】
図17に示した構造の各開口部を有する液晶表示装置のシミュレーション解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、一実施形態の液晶表示装置の外観模式図および部分拡大図である。また、
図2は、
図1に示した液晶表示装置のII−II’線における部分断面図である。各図に示す本実施形態の液晶表示装置は、上側基板(第1基板)1、複数の上側電極(第1電極)2、配向膜3、下側基板(第2基板)4、複数の下側電極(第2電極)5、配向膜6、液晶層7、上側偏光板(第1偏光板)8、下側偏光板(第2偏光板)9を含んで構成されている。
【0016】
図1の部分拡大図に示すように、本実施形態の液晶表示装置では、上側電極2と下側電極5とが平面視において重なる箇所(交差領域)のそれぞれが画素部11となる。すなわち本実施形態の液晶表示装置は、当該画素部11が行方向および列方向の二方向に配列されてなるドットマトリクス型の液晶表示装置である。なお、
図1中では1つの画素部11のみが着色をして示されている。本実施形態では、上側電極2と下側電極5のそれぞれの幅は等しく、例えば0.42mmに設定されている。したがって、本実施形態における画素部11は、0.42mm四方の正方形状である。また、隣り合う2つの上側電極2の相互間距離は、例えば0.03mmに設定されている。同様に、隣り合う2つの下側電極5の相互間距離は、例えば0.03mmに設定されている。
【0017】
上側基板1および下側基板4は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。上側基板1と下側基板4との相互間には、スペーサー(粒状体)が分散して配置されている。これらのスペーサーにより、上側基板1と下側基板4との間隙が所定距離(例えば4.0μm程度)に保たれる。
【0018】
複数の上側電極2は、上側基板1の一面上に設けられている。各上側電極2は、帯状(ストライプ状)に形成されており、上側基板1の一面上において一方向に延在している。本実施形態では、各上側電極2は、
図1中においては上下方向(第1方向)に延在している。各上側電極2は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
【0019】
複数の下側電極5は、下側基板4の一面上に設けられている。各下側電極5は、帯状に形成されており、下側基板4の一面上において一方向に延在している。本実施形態では、各下側電極5は、
図1中においては左右方向(第2方向)に延在している。各下側電極5は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
【0020】
ここで、
図2に示すように、上側電極2は、一方向に延びた形状を有する複数の第1開口部(スリット)21を有する。各第1開口部21は、上側電極2を部分的に除去することによって形成されている。同様に、下側電極5は、一方向に延びた形状を有する複数の第2開口部(スリット)22を有する。各第2開口部22は、下側電極5を部分的に除去することによって形成されている。このような電極構造を採用することにより、各第1開口部21および各第2開口部22が配向制御要素として作用するので、各第1開口部21および各第2開口部22を境界に隣接する2つの領域における液晶層7の配向方位が異なる状態(マルチドメイン配向)が得られる。各第1開口部21および各第2開口部22の形状の詳細については更に後述する。
【0021】
配向膜3は、上側基板1の一面側に、各上側電極2を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜6は、下側基板4の一面側に、各下側電極5を覆うようにして設けられている。本実施形態においては、配向膜3および配向膜6としては、液晶層7の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を垂直配向状態に規制するもの(垂直配向膜)が用いられている。
【0022】
液晶層7は、上側基板1の各上側電極2と下側基板4の各下側電極5との相互間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)の液晶材料(ネマティック液晶材料)を用いて液晶層7が構成されている。液晶層7に図示された太線10は、電圧印加時における液晶分子の配向方向(ダイレクター)を模式的に示したものである。本実施形態の液晶表示装置においては、液晶層7の液晶分子の配向状態は初期状態(電圧無印加状態)において垂直配向しており、電圧印加により電界方向と交差するように液晶分子の配向状態が変化する。
【0023】
上側偏光板8は、上側基板1の外側に配置されている。また、下側偏光板9は、下側基板4の外側に配置されている。上側偏光板8と下側偏光板9とは、例えばクロスニコル配置とされる。
図1に示すように本実施形態では、上側偏光板8の吸収軸は3時−9時方向(下側電極5の延在方向)から45°の角度に設定され、下側偏光板9の吸収軸は上側偏光板8の吸収軸と略直交する方向に設定されている。
【0024】
次に、液晶表示装置の製造方法の一例について詳細に説明する。
【0025】
まず、一面上に透明電極を有する基板を用意する。基板としては、例えばサイズが300mm×200mm、厚さ0.7mm、シート抵抗30Ω□のITO透明導電膜付きのガラス基板を用いることができる。この基板の一面上に、ポジ型のフォトレジストをロールコーターで塗布し、その後、所定のフォトマスクを用いてフォトレジストを露光する。フォトマスクとしては、クロム金属膜によって所定の開口パターンが形成されたフォトマスクが用いられる。ここで用いられるフォトマスクには、各第1開口部21または各第2開口部22に対応する開口パターンが設けられている。
【0026】
上記のようなフォトマスクを基板上のフォトレジスト面に密着した後に、紫外線を照射することにより、フォトマスク上の開口パターンがフォトレジストに焼き付けられる。次いで、フォトレジストを所定条件(例えば、120℃、10分間)にて焼成する。焼成後のフォトレジストに対して、KOH水溶液を用いてウェット現像処理を行うことにより、紫外線照射された部分のフォトレジストを除去する。次いで、さらにフォトレジストを焼成(例えば、120℃、30分間)することにより、レジストパターンの強度を向上させる。このようにして形成したレジストパターンをエッチングマスクとして用いて透明電極をエッチングする。具体的には、例えば、40℃の塩酸と硫酸の混合水溶液を用いたウェットエッチングを行う。最後に、NaOH水溶液によってフォトレジストを完全に除去する。以上により、基板上の透明電極がパターニングされる。すなわち、複数の第1開口部21を有する上側基板1、複数の第2開口部22を有する下側基板4がそれぞれ得られる。
【0027】
次いで、上側基板1の一面上に配向膜3が形成され、下側基板4の一面上に配向膜6が形成される。具体的には、垂直配向膜の材料液を上側基板1の一面上、下側基板4の一面上にそれぞれパターン印刷した後に、これを焼成する(例えば、180℃、30分間)。次いで、一方の基板上(例えば、上側基板1の一面上)にシール材を形成する。シール材は、例えば数μmの粒径のシリカ製スペーサーが混入されたものをスクリーン印刷等の方法によって塗布することによって形成される。また、他方の基板上(例えば、下側基板4の一面上)に数μmの粒径のスペーサーが散布される。プラスティックスペーサーの散布は、例えば乾式散布法によって行われる。次いで、上側基板1と下側基板4の各一面が対向するようにして両者を貼り合わせ、一定の加圧状態にて焼成することにより両者を固定する。その後、真空注入法等の方法によって、上側基板1と下側基板4の間隙に液晶材料(誘電率異方性Δε<0のもの)を注入し、当該注入に用いた注入口を封止した後に、焼成する(例えば120℃、60分間)。これにより液晶層7が形成される。その後、上側基板1の外側に第1偏光板8を貼り合わせ、かつ下側基板4の外側に第2偏光板9を貼り合わせる。また、リードフレーム等を適宜に取り付ける。以上により、液晶表示装置が完成する。
【0028】
次に、
図3に示す模式的な平面図を参照しながら、第1開口部21および第2開口部22の構造を説明する。
図3においては、上側基板1側から観察した場合の各第1開口部21および各第2開口部22の一部が平面的に示されている。図中において、各第1開口部21が実線で示され、各第2開口部22が点線で示されている。なお、以下において、第1開口部21と第2開口部22を総称して単に「開口部」という場合もある。
図3において、Sは各開口部の短手方向の長さ(短辺長さ)、Lは各開口部の長手方向の長さ(長辺長さ)、Lsは隣り合う開口部間の距離(開口部間隔)、Aは短手方向において隣り合う開口部のエッジ間隔、をそれぞれ表す。
【0029】
図3に示すように、各第1開口部21は、一方向(図示のx方向)へ延びた長方形状に形成されており、図示のx方向およびy方向に市松状に規則的に配列されている。同様に、各第2開口部22は、一方向(図示のx方向)へ延びた長方形状に形成されており、図示のx方向およびy方向に市松状に規則的に配列されている。すなわち、各第1開口部21および各第2開口部22は、各々の長手方位を略同一方向(図示のx方向)に揃えて配列されており、より詳細には互いの長辺がほぼ平行となるように配置されている。本例では、各開口部の長手方向は、液晶表示装置の左右方位に対して平行に配置されている。
【0030】
図示のように本実施形態においては、各第1開口部21、各第2開口部22ともに規則的な市松状に設けられている。また、各第1開口部21と各第2開口部22とは、各第1開口部21のそれぞれが各第2開口部22のうちの平面視において隣り合う2つの第2開口部22の間に位置するように相対的に配置されている。別言すると、各第1開口部21、各第2開口部22は、ともにx方向とy方向のそれぞれに沿って所定ピッチで配置されており、かつ互いに半ピッチだけずらして配置されている。それにより、長手方向において隣り合う2つの第1開口部21の相互間距離、長手方向において隣り合う2つの第2開口部22の相互間距離はともにL+Ls×2となる。これを上記した特許文献2に開示の液晶表示装置と比較すると、隣り合う開口部の相互間距離を大幅に拡大できる。また、最も近い2つの第1開口部21の相互間距離X、最も近い2つの第2開口部22の相互間距離Xは、ともにA/cos(tan
−1Ls/A)と表せる。このとき、仮にLs=0としてもX=Aとなり、その距離は特許文献2に開示の液晶表示装置の場合と比較して大幅に拡大できる。
【0031】
次に、
図3に示したような各開口部を有する液晶表示装置について、電圧印加時に良好な配向状態が得られるかをシミュレーション解析した結果を説明する。
【0032】
図4は、シミュレーション解析に用いた各開口部の条件設定について説明するための図である。
図4(a)は各第1開口部21が設けられた上側電極2の構造を示し、
図4(b)は各第2開口部22が設けられた下側電極5の構造を示す。なお、図中において色づけして塗りつぶした部分が導電膜の存在する領域である。各開口部のサイズについてはL=0.0736mm、Ls=0.0097mm、A=0.0288mm、S=0.0097mmと設定した。また、液晶層7の層厚を4μm、液晶材料の屈折率異方性Δnを約0.09、誘電率異方性Δεを約−5とし、液晶分子のプレティルト角を90°と設定した。上側偏光板8および下側偏光板9の配置については上記した通りに設定した。このような条件下、下側電極5の電位を0V、上側電極2の電位を+4Vとしたときに、液晶層7の液晶分子の再配向が安定した定常状態における液晶分子の配向分布をシミュレーションによって求め、液晶表示装置を法線方向から観察したときの面内透過率分布を評価した。なお、シミュレーション解析時の要素数については、液晶表示装置の面内を60×60とし、厚さ方向は30分割とした。
【0033】
図5は、シミュレーション解析結果(面内透過率分布)を示す図である。各開口部が存在する部分においては、電極間に電圧が印加されないことから暗領域となっている。そのほか、平面視において長手方向に隣り合う第1開口部21と第2開口部22の相互間に相当する領域とその上下の領域においてクロス状の暗領域が観察されている。この暗領域は液晶分子の配向方向が180°異なる配向ドメインの境界領域と考えられ、電圧印加時に液晶分子の配向方向が回転していることに起因すると考えられる。これについて以下に説明する。
【0034】
図6は、液晶層内の液晶分子のダイレクター分布を示す図である。詳細には、
図6(a)が
図5に示したVI−VI’線方向の断面におけるダイレクター分布を示し、
図6(b)が
図5に示したVII−VII’線方向の断面におけるダイレクター分布を示す。各図において上下方向は液晶層7の層厚方向を示しており、ダイレクター分布は棒線によって表記されている。液晶層7の中央部より上側基板1または下側基板4の近い領域に着目すると、液晶分子の傾斜方向が図中左から右へ向かって周期的に180°反転する様子が観察される。ダイレクターが反転する部分には上側電極2または下側電極5に開口部が存在する。各開口部周辺に発生した電極間の斜め電界により液晶分子の配向が制御され、良好な2ドメイン配向制御が実現できている。
図6(a)、
図6(b)の各ダイレクター分布を比較すると、左右方向の同じ位置において、各開口部が配置されている部分を除くと、液晶分子の傾斜方向が180°反転していることがわかる。すなわち、各開口部の長手方向において隣接する配向ドメインはその配向方向が互いに180°反転している従来構造とは異なる配向状態であり、同じ配向方向を示す配向ドメインが市松状に配置されることがわかる。
【0035】
次に、隣り合う開口部間の距離Lsを0にした場合についてのシミュレーション解析を説明する。
図7に、Lsを0に設定した場合の第1開口部21および第2開口部22の構造を模式的な平面図により示す。図示のように、Ls=0とした場合には、各第1開口部21は、それぞれ、平面視において長手方向に隣り合う1つの第2開口部22と、互いの長手方向の一端部を揃えて配置される。すなわち、開口部同士のエッジ(短辺エッジ)が重なり合う。このときのシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を
図8に示す。なお、シミュレーション条件については、Lsを0とした以外は上記
図4に基づいて説明した条件と同様である。図示のように、配向ドメインが180°反転する境界部における暗領域の面積はいくぶん減少することがわかった。
【0036】
次に、隣り合う開口部間の距離Lsを負の値(Ls<0)にした場合についてのシミュレーション解析を説明する。
図9に、Lsを負の値に設定した場合の第1開口部21および第2開口部22の構造を模式的な平面図により示す。図示のように、Ls<0とした場合には、各第1開口部21は、それぞれ、平面視において長手方向に隣り合う1つの第2開口部22と、互いの長手方向の一端部を部分的に重ねて配置される。このときのシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を
図10に示す。なお、シミュレーション条件については、Lsを−0.0097mm(−9.7μm)とした以外は上記
図4に基づいて説明した条件と同様である。図示のように、配向ドメインが180°反転する境界部における暗領域の面積はLs=0の場合に比べてさほど大きく変化していない。いずれにしても、Lsの大きさは各開口部の短手方向の長さSの大きさと同程度にすれば、配向ドメインの境界部分に発生する暗領域の面積を比較的に小さくできると考えられる。
【0037】
次に、配向ドメインが180°回転する境界領域の暗領域の透過率をより上昇させるために、液晶層7にカイラル材を添加した場合について説明する。一例として、Lsを−0.0097mm(−9.7μm)とした上記の実施態様において、液晶層7のカイラルピッチpを10μmに設定してシミュレーション解析を行った。このシミュレーション解析結果(面内透過率分布)を
図11に示す。図示のように、配向ドメインの境界部分の暗領域を完全には消去できないが、透過率をより上昇させることが可能であることがわかった。しかし、液晶層7にカイラル材を添加すると、配向ドメインの境界部分以外の配向ドメイン内部の透過率がいくぶん低下する傾向も見られる。これに対しては、液晶層7の層厚dや液晶材料のΔnを比較的に大きく設定することが望ましい。暗領域の透過率を上昇させるには、d/pを0.25より大きく、好ましくは0.8以下、特に0.74以下に設定することが好適である。
【0038】
なお、上記したいくつかの実施態様においては、各開口部のL、A、Sの各パラメータを固定値にしていたが、この限りではない。Sは0.005mm〜0.03mm程度、Aは0.01mm〜0.06mm程度が好ましい。Lに関しては、下限としてはAより大きいことが好ましく、かつ0.04mmより大きいことが好ましい。Lの上限としては、上側電極2または下側電極5のパターン形状、すなわち表示サイズの1/2程度が好ましいが、概ね5mm以下程度が好ましいと考えられる。
【0039】
次に、上記した液晶表示装置の更なる実施態様について説明する。
【0040】
上記した実施形態では液晶表示装置の有効表示部の全面で各開口部が規則的に市松状に配置される場合を説明していたがその限りではない。例えば、
図12に示す模式平面図のように、液晶表示装置の有効表示部を複数の領域に分割し、それぞれの領域において各開口部の配置パラメータを異なる設定にしてもよい。例えば、有効表示領域を「ELECTRIC」を表示するキャラクタ表示領域51と5桁の7セグメント表示領域52とに分割し、キャラクタ表示領域51では各開口部の長手方向を右上がり(左下がり)に設定し、7セグメント表示領域52では各開口部の長手方向を左上がり(右下がり)に設定してもよい。また、
図13に示すように、比較的に表示面積が大きいセグメント表示を行う場合において、1つのセグメント表示部を複数の領域に分割し、それぞれの領域において各開口部の配置パラメータを異なる設定にしてもよい。図示の例においては、ハート型のキャラクタ表示部が左側領域61と右側領域62に分割されている。
【0041】
また、
図14に示すように、ドットマトリクス型の電極構造を採用する場合においては、1つの画素部11において各開口部の長手方向の長さLが等しくない設定としてもよい。すなわち、第1開口部21あるいは第2開口部22の各端部が画素部11のエッジにかかる場合には、長手方向の長さLを短くしてもよい。ただし、隣り合う開口部が存在する短辺の位置は短辺方向の一直線上にほぼ存在することが好ましい。この場合は、配向ドメインの境界領域が右上がり方向(左下がり方向)に延在しているが、この領域に配置される各開口部の長辺はそれぞれ左上がり方向(右下がり方向)に延在する直線上にほぼ沿って配置されていることがわかる。
【0042】
図15は、上記した
図14に示した構造の各開口部を有する液晶表示装置を実際に作製し、その1つの画素部11を反射顕微鏡観察して得られた像を示す図である。上記のように、液晶表示装置の上下方向に帯状の上側電極2を設け、左右方向に帯状の下側電極5を設けた(
図1参照)。そして、液晶表示装置の9時方位を基準に時計回りに略45°および3時方位を基準に時計回りに略45°回転した市松状の2ドメイン配向制御を実現するための各開口部を上側電極2および下側電極5に設けた。図示の1つの画素部は0.45mm角であり、隣り合う画素部11の相互間隔は0.03mmである。この画素部11を対角線方向に2分割して、上側電極2および下側電極5のそれぞれに各開口部が市松状に配置されている。各開口部のパラメータについては、Sが略0.007mm、Aが略0.03mm、Lsが略0.007mmである。上側偏光板8および下側偏光板9の各吸収軸については、各開口部の長手方向に対して略45°に光軸が配置されるようにした。すなわち、下側偏光板9は画素部11の左右方位、上側偏光板8は画素部11の上下方位に吸収軸が配置されるようにした。なお、液晶材料にはΔnが0.15のものを用い、液晶層7の層厚は略3.8μmとした。
【0043】
図16(a)は、カイラル材が添加されていない液晶材料を用いて
図15に示した液晶表示装置を作製した場合の電圧印加時の画素部11の偏光顕微鏡観察像を示す図である。本観察像においては、液晶表示装置の偏光板配置は上側偏光板(第1偏光板)8の吸収軸が9時−3時方位、下側偏光板(第2偏光板)9の吸収軸が6時−12時方位に設定された。配向ドメインの境界領域および画素部11のエッジ付近以外では暗領域が観察されず良好な配向状態が得られていることがわかる。外観観察により均一かつ良好な2ドメイン配向制御が実現できていることが確認された。このことから、配向ドメインは上記したシミュレーション解析の場合と同様に市松状に配置されていると考えられる。一方、配向ドメインの境界領域には暗領域が観察されるがその面積は比較的小さく、配向パターンは比較的に均一である。他の画素部11についてもほぼ同様な暗領域のパターンが観察された。
【0044】
図16(b)は、d/pが略0.6となるようにカイラル材が添加された液晶材料を用いて
図15に示した液晶表示装置を作製した場合の電圧印加時の画素部11の偏光顕微鏡観察像を示す図である。
図16(a)の場合と同様に、各配向ドメインは非常に均一な配向状態が得られており、配向ドメインの境界部分ではカイラル材を添加しない場合と比べて透過率が上昇していることが確認された。
【0045】
上記においては隣り合う開口部同士の長辺方位がほぼ同じ直線上にある場合について検討したが、実際の製造時には位置ずれが生じる場合も考えられる。そこで、隣り合う開口部同士の長辺方位が同じ直線上にない場合についても配向組織を観察した。その偏光顕微鏡観察像を
図16(c)に示す。この例では、左斜め上側に配置された開口部とこれに隣り合って右斜め下側に配置された開口部とは、各開口部の短辺に等しい程度ずれている。図示のように、配向ドメインの境界領域についてもパターンの規則性が比較的保持されており、外観上は2ドメイン配向制御が実現できていることが確認された。しかし、実際に視角特性を観察すると電圧印加時の等輝度曲線に若干の変形が認められる。開口部の配置ずれはAの距離により許容値に変動がある。Aは概ね0.02〜0.06程度が最適である。したがって、この範囲未満で開口部同士の配置ずれが生じることは許容されると考えられる。
【0046】
図17は、各開口部の形状を変更した実施態様について説明するための図である。
図17(a)に示すように、上側電極2に設けられる各第1開口部21aは、一方向へ延びた矩形形状に形成されており市松状に規則的に配列されている。各第1開口部21aは、長手方向の辺(外縁)と短手方向の辺(外縁)が90°ではない角度で斜めに交差しており、この点が上記した各実施態様における各第1開口部21と異なっている。また、
図17(b)に示すように、下側電極5に設けられる各第2開口部22aは、一方向へ延びた矩形形状に形成されており市松状に規則的に配列されている。各第2開口部22aは、長手方向の辺(外縁)と短手方向の辺(外縁)が90°ではない角度で斜めに交差しており、この点が上記した各実施態様における各第2開口部22と異なっている。このような構造を採用することで、配向ドメインの境界領域を各開口部の短手方向の辺とほぼ同じ方向に制御することができる。
図17では、各第1開口部21aと各第2開口部22aは、各々の短辺がほぼ平行であり、かつほぼ一直線上に存在する。また、平面視において長手方向に隣り合う第1開口部21aと第2開口部22aとが互いの長手方向の一端部を揃えて配置されている。
【0047】
図18は、
図17に示した構造の各開口部を有する液晶表示装置のシミュレーション解析結果を示す図である。なお、各パラメータについては図示の通り、Aを0.032mm、Sを0.009mm、Lを0.113mmとした。それ以外の計算条件は上記した各実施態様と同様である。
図18(a)に、液晶表示装置を法線方向から観察したときの透過率分布を示す。各解析結果においては、液晶表示装置の偏光板配置は上側偏光板(第1偏光板)8の吸収軸が9時−3時方位、下側偏光板(第2偏光板)9の吸収軸が6時−12時方位に設定された。各開口部間に存在する配向ドメインについては良好な配向均一性が得られている。また、配向ドメインの境界領域は、若干波状となっているがほぼ上下方向に沿って暗領域が発生しており、そのパターンは規則的であるから、外観上の表示不具合は生じないと考えられる。この結果から、各開口部の短手方位の辺の方向により配向ドメインの境界部分の方向を制御できることが確認された。
図18(b)に、カイラルピッチpが10μmとなるようにカイラル材を添加した液晶材料を用いて液晶層7を形成した液晶表示装置を法線方向から観察したときの透過率分布を示す。カイラル材の添加により、配向ドメインの境界部分における暗領域の透過率を上昇できることが確認された。
【0048】
なお、本シミュレーション解析では上下方向に配向ドメインの境界部分が配置されるようにしたが、各開口部の配置を左右回りに90°回転させることにより配向ドメインの境界部分を左右方向に変更できるのは明らかである。さらに、配向ドメインの境界部分に存在する各開口部の短手方向の外縁と長手方向の外縁とのなす角度を変化させることにより、配向ドメインの境界部分の延在方向を任意に設定できることも明らかである。配向ドメインの境界部分は外観上視認される場合もあるが、上記構造を用いて当該境界部分を、例えば液晶表示装置の左右方向や上下方向に制御することで外観上目立たない状態を確保することが可能となる。
【0049】
以上のような本実施形態によれば、上側電極と下側電極のそれぞれにおいて、隣り合う開口部間の距離を大幅に拡大することができる。それにより、開口部同士の結合による電極の抵抗値上昇や断線を回避し、表示品位の低下を回避することができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上述した実施形態においては、第1開口部と第2開口部とをほぼ同じ大きさとしていたが大きさは異なっていてもよい。また、各第1開口部および各第2開口部の長手方向と液晶表示装置の左右方向との相対的関係については任意に設定することができる。また、上記した各実施形態では垂直配向型の液晶層を有する液晶表示装置について説明したが、液晶層の配向状態についてはこれに限定されず、プレティルト角が0°に近い水平配向モード、例えばECBモード、TNモード、STNモードにおいても上記と同様な2ドメイン配向制御が可能である。