特許第5774171号(P5774171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774171磁気回路加速度計における振動整流エラーを最小限に抑える方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774171
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】磁気回路加速度計における振動整流エラーを最小限に抑える方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/11 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   G01P15/11
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-153789(P2014-153789)
(22)【出願日】2014年7月29日
(62)【分割の表示】特願2009-63045(P2009-63045)の分割
【原出願日】2009年3月16日
(65)【公開番号】特開2014-238413(P2014-238413A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】12/050,854
(32)【優先日】2008年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ドゥワイヤー
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−331690(JP,A)
【文献】 特開2003−173914(JP,A)
【文献】 特表昭61−502072(JP,A)
【文献】 実開昭61−193330(JP,U)
【文献】 特開昭64−012273(JP,A)
【文献】 米国特許第05372041(US,A)
【文献】 特開昭63−073861(JP,A)
【文献】 特開昭61−011666(JP,A)
【文献】 特開2007−336145(JP,A)
【文献】 特開2002−058093(JP,A)
【文献】 特開昭63−003600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極片を励磁リングの第一のピースに位置合わせする工程であって、第一のピースの端部に第一の表面が画定され、磁極片の第二端部に第二の表面が画定され、磁極片の第二の表面と励磁リングの第一のピースの第一の表面との間に所定の距離を維持するように構成された定着物に、磁極片と励磁リングの第一のピースを配置することを含む、磁極片を励磁リングの第一のピースに位置合わせする工程と、
磁石を磁極片に取り付ける工程と、
磁極片を励磁リングの第一のピースに位置合わせする工程の後に、励磁リングの第二のピースを励磁リングの第一のピースに取り付ける工程と、
を備える方法。
【請求項2】
定着物を取り外す工程と、
コイルを有するプルーフ・マスを、励磁リングの第一のピースに取り付ける工程と、
ステータをプルーフ・マスに取り付ける工程と、
励磁リングの第一のピースとステータが互いに固定された状態で保持されるように、腹帯を励磁リングの第一のピースとステータに取り付ける工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
磁極片の第二の表面と第一のピースの第一の表面との間の所定の距離が、コイルのためのギャップを画定する、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
図1に示す加速度計のような従来の加速度計の磁気帰還路は、可撓性のプルーフ・マス
(proof mass;試験質量)に取り付けられたコイルと相互作用する励磁リングと磁極片の
間の空隙に磁束分布を作り出す。磁束は、コイル中の電流と相互作用して、素子(device
)が受ける加速度に比例した再バランス力を生み出す。空隙を横切る磁束密度は、実用的
な回路を構成する幾何学的な制約により、一様ではない。更に、磁気回路の磁界強度は、
電流方向の変化を伴って磁界がコイルと相互作用すると、一定ではない。磁界強度は磁石
の微小ループ勾配に追随する。素子が、磁束及び磁束自体の大きさに関してコイルの方向
性(orientation)を変化させ得る振動を受けると、素子の出力は測定される加速度とは
無関係に変化するであろう。このエラーは振動整流エラー(vibration rectification er
ror:VRE)と称されている。
【0002】
いかなる磁気回路においても、VREを最小限に抑えるコイルの最適位置が磁界中に存
在する。この問題に対処する手段が、コイルとプルーフ・マスの間に位置するスペーサを
用いて開発されてきた。しかし、スペーサは、振れ(pendulosity)を増大させ、コスト
が嵩み、製造の困難性を増大させる。また、振動状態下での出力変化を極力抑えようとす
る欲求が、極端に清浄かつ均一に製造されなければならない短コイルの発展に繋がり、空
隙を画定する構成部材との接触を避けてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に内面を機械加工及び清浄化するのが困難な一片型ユニットとして励磁リングが
製造されるため、典型的な製造技術は、清浄なまま高度に仕上げられた励磁リングを製造
するには困難性を呈する。これは、加速度計の適切な作動を阻害することがある小粒子の
残留をもたらす。更に、2片型励磁リングを使用する技術など、以前の製造技術には、コ
イル、励磁リングの上面、及びプルーフ・マスに関連して、磁極片及び磁石の幾何学的配
置に多くの起こり得るエラーの源がある。磁極片と磁石間及び磁石と励磁リング間の結合
層、並びに磁極片の高さ及び磁石の高さは、可変であり、異なる加速度計間の磁極片及び
磁石の位置変動を引き起こし、これは、加速度計の他の部品に関連して磁極片の位置が最適でないため、振動整流エラーの増大を招く。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、磁気回路加速度計における振動整流エラーを最小限に抑えるシステム及び方
法を含む。システムの一例は、下部内径を有する頂部ピースと直径が頂部ピースの下部内
径よりも小さい底部ピースとを持つ、励磁リングを備えた加速度計である。加速度計は、
また、プルーフ・マスと、励磁リングの底部ピースに取り付けられた磁石と、磁石に取り
付けられた磁極片と、励磁リングの頂部ピースと磁極片の間のギャップ内に延びると共に
プルーフ・マスに取り付けられたコイルとを含む。
【0005】
本発明の更なる態様によれば、底部ピースは、直径が頂部ピースの下部内径よりも約0
.076mm(approximately 3 mils)小さい。本発明の他の態様によれば、磁極片は、
導電性エポキシを用いて磁石に取り付けられ、磁石は導電性エポキシを用いて底部ピース
に取り付けられる。本発明のなお更なる態様によれば、加速度計は、また、プルーフ・マ
スに取り付けられたステータを含む。
【0006】
本発明の更に他の態様によれば、加速度計は、励磁リング頂部ピース及びステータに取
り付けられた腹帯を含み、励磁リング頂部ピース、プルーフ・マス、及びステータが腹帯
により互いに固定関係に保持される。本発明の更なる態様によれば、励磁リング頂部ピー
スは断面がL字形である。本発明のなお別の態様によれば、方法は、表面定着物(surfac
e fixture)を研磨する磁極片中に磁極片を配置する工程と、表面定着物を研磨する磁極
片の外側部分に励磁リング頂部ピースを配置する工程と、励磁リング頂部ピースの下部に
励磁リング底部ピースを配置する工程とを含む。
【0007】
本発明のなお更なる態様によれば、方法は、磁極片に第一の接着剤層を塗布する工程と
、第一の接着剤層に磁石を配置する工程と、磁石に第二の接着剤層を塗布して、励磁リン
グ底部ピースが励磁リング頂部ピースの下部に配置されると、励磁リング底部ピースを第
二の接着剤層に配置する工程とを含む。本発明の更に他の態様によれば、方法は、第一及
び第二の接着剤層に導電性エポキシを用いることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】先行技術の加速度計を示す。
図2】治工具を用いて組み立てられた加速度計の部分断面図である。
図3】本発明の一実施例に従って形成された加速度計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、以下に、本発明の好ましい従来例とは異なる実施例を詳細に説
明する。図2は、治工具(tooling device)30を用いて組み立てられた加速度計20の
部分断面図である。図示の実施例において、治工具30は、取付構造体(mounting struc
ture)と、ベース34と、側壁36とを含む。取付構造体は、幾つかの例では表面定着物
32を研磨する磁極片と呼ばれる得る。加速度計20は、励磁リング(E−リング)頂部
ピース40を含み、その上に励磁リング底部ピース42が位置決めされる。治工具30は
、加速度計20部品の非常に正確な位置合わせを行う。E−リング頂部ピース40は、そ
の第一端部43に研磨面41を含む。
【0010】
磁石44がE−リング底部ピース42に取り付けられ、磁極片46が磁石44に取り付
けられる。磁石44及び磁極片46は、E−リング底部ピース42から離れて、E−リン
グ頂部ピース40のギャップに向けて上方に延びる。加速度計20は、図2では、逆さま
に図示されており、E−リング底部ピース42から離れて下方に延びる磁石44及び磁極
片46が図示されている。幾つかの例では、E−リング頂部ピース40はまたE−リング
第一ピースと称されることがあり、E−リング底部ピース42はまたE−リング第二ピー
スと称されることがある。
【0011】
一実施例において、E−リングの頂部ピース40及び底部ピース42は、別々に製造さ
れて、加熱処理される。E−リング頂部ピース40は、次いで、少なくとも一面を所定の
仕上げ品質にまで粗研磨される。一実施例において、研磨仕上げが研磨面41に施された
後、E−リング頂部ピース40は研磨作業からの残留微粒子が取り除かれる。E−リング
底部ピース42、磁石44、及び磁極片46は、空気研磨され、E−リングの頂部ピース
40、底部ピース42、磁石44、及び磁極片46を含む全ての部品が清浄にされる。そ
の後、加速度計20が組み立てられる。一実施例において、加速度計20の組立ては、H
EPAフィルタを用いるなどして、浮遊微小粒子が空気から除去された作業台に、層流の
空気が流れる組立て作業台であるクリーン・ベンチ(清浄実験台)を用いて行われる。
【0012】
一実施例の組立工程において、磁極片46が表面定着物32を研磨する磁極片中に配置
される。次いで、銀充填の第一導電性エポキシ層48[例えば、エイブルスティーク・ラ
ボラトリーズ(Ablestik laboratories)社製のエイブルボンド(登録商標:Ablebond) 84-1
LMIT]が、磁極片46に塗布される。次に、表面定着物32を研磨する磁極片中の磁石4
4を第一エポキシ層48に配置して、磁石44が磁極片46に取り付けられる。次いで、
銀充填の第二導電性エポキシ層50(例えば、エイブルスティーク・ラボラトリーズ社製
のエイブルボンド 84-1LMIT)が、磁石44に塗布される。
【0013】
次に、E−リング頂部ピース40が、表面定着物32を研磨する磁極片の外側部分49
上の治工具30内に配置される。次いで、E−リング底部ピース42が、E−リング頂部
ピース40の第二端部51の内側において、エポキシ層50上に配置される。その後、E
−リング底部ピース42に力を加える例えば重し又はバネ等の荷重装置52を用いて、表
面定着物32を研磨する磁極片に対して、E−リング底部ピース42、磁石44、及び磁
極片46を含む堆積物を押圧する。
【0014】
一実施例において、荷重装置52は、200g以上の重しにより与えられる圧力と同等
の圧力を、E−リング底部ピース42に加える。次に、未充填の低粘度エポキシ層(例え
ば、TRA-CON 社製のTRA-BOND 931-1)54が、E−リング底部ピース42とE−リング頂
部ピース40の間に塗布される。TRA-BOND 931-1以外のエポキシ又は他の接着剤も使用で
きる。かかる代替のエポキシは、典型的には粘度が低いので、E−リング頂部ピース40
とE−リング底部ピース42間のギャップを効果的に浸潤する。このような代替のエポキ
シは、また、典型的にはE−リング頂部ピース40とE−リング底部ピース42を一緒に
保持する結合力を有し、時間の経過と共に幾何学的安定性をもたらして、磁気回路に同じ
磁束レベルを維持する。
【0015】
エポキシ層54の塗布は、例えばE−リング頂部ピース40とE−リング底部ピース4
2間のギャップに、エポキシ層54を浸潤させることにより実施され得る。エポキシ層4
8,50,54は、その後、例えば150℃で約1時間加熱することにより硬化される。
この例ではエポキシ層48,50,54が同時に硬化されるが、別の例ではエポキシ層を
順次又は異なる条件下で硬化してもよい。
【0016】
加速度計20の組立て時における表面定着物32を研磨する磁極片の使用は、表面定着
物32を研磨する磁極片の寸法を制御することにより、高い許容誤差に制御され得る表面
距離56を研磨する磁極片をもたらす。これは、このようにして製造される異なる加速度
計間に一貫性のある表面距離56を研磨する磁極片をもたらし、磁石44の高さ、磁極片
46の高さ、第一エポキシ層48の厚さ、及び第二エポキシ層50の厚さの変動を過度に
考慮することなく、表面距離56を研磨する磁極片が制御され得るようになる。
【0017】
その後、治工具30が取り外され、更なる構成部材が加速度計20に追加されて、図3
に図示された構造物を製造する。図2,3は必ずしも縮尺通りに描かれていない。図2
3は加速度計20の種々の部品を断面図で示しているが、当然のことながら部品には体積
がある。一実施例の実施の形態では、E−リング頂部ピース40及びE−リング底部ピー
ス42は円筒形である。幾つかの例では、磁石44、磁極片46等の他の構成部材も形状
を円筒形にすることができる。
【0018】
図3は、治工具30が取り外されて更なる構成部材が追加された後の、図2に示す加速
度計20の断面図である。図3は、また、E−リング頂部ピース40が、E−リング底部
ピース42の直径62よりも大きい第二端部51に、下部内径60を有することを示して
いる。これにより、図2について説明した組立て時に、E−リング底部ピース42がE−
リング頂部ピース40に差し込み可能になる。一実施例において、下部内径60は19.
05±0.025mm(0.75±0.001インチ)であり、直径62は18.97±0.02
5mm(0.747±0.001インチ)であって、径の差が0.076±0.051mm(0.003±0.002インチ)、即ち径の差は、0.076±0.051mm(3±2 mils)又は0.025−0.127mm(between 1 and 5 mils)となる。一実施例において、E−リング底部ピース42は、直径がE−リング頂部ピース40の下部内径よりも約0.076mm(3 mils)小さい。
【0019】
E−リング頂部ピース40は本実施例では断面がL字形であるが、E−リング頂部ピー
ス40は、別の例では、断面が1又はそれ以上の角部にアールを設けた概ねL字形状等の
別の形状であってもよい。更に、E−リング底部ピース42の直径62がE−リング頂部
ピース40の下部内径60よりも小さいという条件で、別の大きさの構造を用いることが
できる。
【0020】
治工具30が取り外された後に、プルーフ・マス64がE−リング頂部ピース40の上
面に追加され、加速度計の電子機器を含むステータ66がプルーフ・マス64の固定部分
に取り付けられる。その後、プルーフ・マス64及びステータ66は、例えば腹帯(belly
band)68を用いるなどして、E−リング頂部ピース40に関して所定の位置に保持され
る。当然のことながら、プルーフ・マス64の外側の剛性部分が、E−リング頂部ピース
40に関して所定の位置に保持され、プルーフ・マス64の他の部分が加速度計20の作
動時に屈曲するであろう。また、プルーフ・マス64から磁極片46とE−リング頂部ピ
ース40間のギャップに延びる、コイル70が図示されている。
【0021】
一実施例において、研磨面41は、また、研磨面41とプルーフ・マス64上の金属化
プレート(図示せず)との間に形成される、コンデンサの接地板として機能する。また、
図2の加速度計部分の鏡像バージョン(version)が、プルーフ・マス64の第二側部に
作り出されて取り付けられ、所定の温度範囲にわたって応力及び磁気的挙動の同相モード
相殺性能を強めることができる。幾つかの例では、加速度計20の一部又は全ての組立て
をクリーン・ルームで行うことができる。
【0022】
本発明の好ましい実施例を図面を用いて説明し記述したが、前述の通り、本発明の精神
及び範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。例えば、他の種類のエポ
キシ又はエポキシ以外の種類の接着剤を使用してもよく、幾つかの例では、接着剤の使用
以外の取付け方法及び接合方法を採用することができる。更に、片面(single sided)加
速度計について説明したが、幾つかの例では、同様の2ピース・励磁リングを用いて両面
(double sided)加速度計を形成することもできる。また、表面定着物32を研磨する磁
極片を使用する他の種類の治工具も、幾つかの例では使用することができる。
【0023】
加速度計20の組立における異なる工程順序が幾つかの例で行うことができ、又は、例
えば、表面定着物32を研磨する磁極片に挿入する前に、磁石44を磁極片46に取り付
けるなどして、幾つかの部品を予め組み立てた後に他の部品と結合してもよい。従って、
本発明の範囲は、好ましい実施例の開示により限定されるものではない。それよりむしろ
、専ら添付の特許請求の範囲を参照して本発明を確定すべきである。
図1
図2
図3